JP3836362B2 - ミシンの糸調子装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、糸に張力を付与するミシンの糸調子装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、ミシンには、糸に張力を付与する糸調子装置が配設されている。このミシンの糸調子装置の一種として、糸を挟持可能な環状に形成された一対の糸調子皿と、皿押えと、皿押えを取り付ける駆動ロッドを具備し皿押えを糸調子皿へ押し付けるための駆動機構とを備えたミシンの糸調子装置が知られている。このようなミシンの糸調子装置においては、皿押えを糸調子皿へ押し付けた場合、皿押えと糸調子皿との接触部位が円環状をなす線接触、あるいは円環状をなす面接触となるように形成されるのが一般的である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前述した従来のミシンの糸調子装置においては、糸の張力が不安定になるという問題点があった。
【0004】
すなわち、従来のミシンの糸調子装置においては、糸調子皿と対向する皿押えによって、糸調子皿の内孔の稜部を駆動ロッドの軸心を法線とする平面にて押し付けるように構成されているために、皿押えが傾いた場合、糸調子皿を押し付ける皿押えの押え力が不均一になる。その結果、糸の張力が不安定になる。
【0005】
本発明はこの点に鑑みてなされたものであり、常に安定した糸の張力を得ることのできるミシンの糸調子装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
前述した目的を達成するため特許請求の範囲の請求項1に係る本発明のミシンの糸調子装置の特徴は、糸を挟持可能な一対の糸調子皿と、前記糸調子皿と当接する皿押えと、皿押え位置決めナットを介して前記皿押えを押圧する駆動ロッドを具備し前記皿押えを前記糸調子皿へ押し付けるための駆動機構とを備え、前記皿押えの外周縁には3以上の当接突起を備え、この当接突起で前記糸調子皿と接触し、前記皿押え位置決めナットは前記皿押えと当接する端面が截頭円錐状に形成することにより、前記皿押えが、前記駆動機構の駆動ロッドに首振り自在に取り付けられている点にある。そして、このような構成を採用したことにより、皿押えを糸調子皿に対して押し付けると、糸調子皿を押し付ける皿押えは、その姿勢を糸調子皿の姿勢に応じて、糸調子皿を押し付ける皿押えの押え力が均一になるように自動的に変化する。したがって、常に安定した糸の張力を得ることができる。
【0007】
また、請求項2に係る本発明のミシンの糸調子装置の特徴は、請求項1において、皿押えの回転を防止する回転防止手段が設けられている点にある。そして、このような構成を採用したことにより、一対の糸調子皿の相互間を通過する糸が糸調子皿から外れるのを確実に防止できる。
【0008】
また、請求項3に係る本発明のミシンの糸調子装置の特徴は、請求項1または請求項2において、皿押えが糸調子皿へ押し付けられていない皿開放状態における皿押えの姿勢を制御する姿勢制御手段が設けられている点にある。そして、このような構成を採用したことにより、皿開放状態における皿押えの姿勢を一定にできる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図面に示す実施形態により説明する。
【0010】
まず、本発明に係るミシンの糸調子装置の実施形態について、図1から図5により説明する。
【0011】
図1に示すように、本実施形態の糸調子装置1は、上糸(図2)を挟持可能な環状に形成された一対の糸調子皿2A,2Bを有している。これらの糸調子皿2(符号2は一対の糸調子皿2A,2Bを総称する)は、図2および図3に示すように、糸調子棒3によって支持されている。この糸調子棒3は、図2および図4に示すように、外周面が4段の段付き円筒状に形成されており、それぞれの外周面は、図4における右側から順に回り止め取付部3a、皿取付部3b、糸取りばね取付部3cおよび台取付部3dとされている。また、糸調子棒3の外周面は、糸取りばね取付部3cが最も大径に形成されており、皿取付部3b、回り止め取付部3aの順に小径とされ、台取付部3dが最も小径に形成されている。そして、図2および図5に示すように、各糸調子皿2の中心部に厚さ方向に貫通するように形成されたそれぞれの皿内孔2a,2b(図3)を、糸調子棒3の皿取付部3bに挿入することによって、糸調子皿2は、糸調子棒3の皿取付部3bに対して軸方向移動自在および回転自在に取着されている。また、糸調子棒3の内孔には、図2に示すように、駆動ロッド4が軸方向に往復移動可能に支持されている。この駆動ロッド4は、後に詳述するように、ミシンMのミシン頭部MFAHの両側壁RW,LWを左右方向に貫通するように水平方向に配設されている。
【0012】
前記糸調子棒3の糸取りばね取付部3cには、従来公知の糸取りばね5が装着されている。この糸取りばね5は、図4に示すように、全体としてねじリコイルばねとなっており、左端には、係止腕5aが内部へと突出形成されている。この係止腕5aは、先端が糸取りばね5の内部で右側に向かって軸方向に沿って延在するほぼL字状に形成されており、この係止腕5aを糸調子棒3の糸取りばね取付部3cの外周面の左端面から軸方向に沿って形成された係止溝3eに装着することによって、糸取りばね5が糸取りばね取付部3cの外周面上に係止されている。また、糸取りばね5の右端には、糸掛け部5bが径方向外側に向かって延出形成されており、その上端は、糸としての上糸T(図2)が掛けられるようにほぼU字状に形成されている。
【0013】
図2に示すように、前記糸調子棒3の台取付部3dには、糸調子棒台6が装着されている。この糸調子棒台6は、全体として内孔が2段の段付きの円筒状に形成されている。そして、小径内孔部6aが左端に配置され、この小径内孔部6aの右側位置には、糸調子棒3の糸取り取付部3cに装着されている糸取りばね5を覆う大きさの大径内孔部6bが同軸に形成されている。また、図2および図5に示すように、糸調子棒台6の外周面の左側で小径内孔部6aに向かって螺入される第1止めねじ7の先端を糸調子棒3の台取付部3dの外周面に当接させることによって、糸調子棒台6の内側に糸調子棒3が固着されている。また、図4に示すように、糸調子棒台6の外周面の右側には、糸取りばね5の糸掛け部5bが挿通される厚さ方向に貫通するばね挿通孔6cが周方向に沿って所定長さに形成されている。
【0014】
前記糸掛け部5bは、ばね挿通孔6cの図4における上方の端面に、糸取りばね5の付勢力によって常に押し付けられるように取り付けられており、糸掛け部5bに加わる外力(上糸Tの作用)によってばね挿通孔6cの形成範囲内において周方向に移動可能になっている。この糸取りばね5がばね挿通孔6cの端面に押し付けられる力は、第1止めねじ7を緩めて糸調子棒3を糸調子棒台6に対して回転することで調整される。すなわち、糸調子棒3を糸調子棒台6に対して図4における反時計回りに回転すると、糸掛け部5bの付勢力は大きくなり、時計回りに回転すると、小さくなる。
【0015】
前記糸調子棒台6の図2の右端面には、糸調子皿2Bの左端面のほぼ径方向中央部分が当接されるように形成されており、糸調子皿2が糸調子棒3の皿取付部3bにおいて軸方向に移動する際の図2左方に向かう軸方向左側への最大移動位置を規制している。さらに、糸調子棒台6の左端部は、後に詳述するように、ミシンMのミシン頭部MFAHの右側壁RWに突設された糸調子棒台取付部41の大径内孔部41abに固着されている。
【0016】
前記糸調子棒3の回り止め取付部3aには、ほぼ円筒状に形成された回り止め8が装着されている。この回り止め8の外周面には、図3に示すように、軸方向に延在する3つの爪係止溝8aが中心から相互に等しい角度を隔てるように配置されている。そして、図2に示すように、爪係止溝8aの底部に螺入される第2止めねじ9の先端を糸調子棒3の回り止め取り付け部3aの外周面に当接させることによって、回り止め8が糸調子棒3の回り止め取付部3aに固着されている。また、回り止め8の右端面には、ばね装着溝8bが全体として環状をなすように形成されており、このばね装着溝8bには、圧縮ばねからなる皿押え保持ばね10が装着されている。なお、図2に示すように、回り止め8の外周面には、ほぼ有底筒状に形成されている保護カバー11の開口側が第3止めねじ12によって取り付けられており、回り止め8および回り止め8の右側に配置されている部分を覆っている。
【0017】
図2に示すように、前記駆動ロッド4の糸調子棒3の配設位置の右隣りには、皿押え13が配設されている。図3に示すように、この皿押え13は、円環状に形成された基体部13aを有しており、この基体部13aの中心部に形成されている内孔13aaが駆動ロッド4の外周面によって支持されている。そして、基体部13aの図2の左側に位置する左端面には、皿押え保持ばね10の右端が当接されており、皿押え13は、皿押え保持ばね10の付勢力によって、常には図2の右側に示す糸調子棒3から離間する方向へ付勢されている。このため、駆動ロッド4には、皿押え位置決めナット14が螺着されており、これにより、駆動ロッド4に取着されている皿押え13の駆動ロッド4上における図2の右側に位置する右端側への移動位置が規制されている。
【0018】
本実施形態における皿押え位置決めナット14は、図2の左側に位置する左端側の外周面が截頭円錐状に形成されており、左端面を形成する細い環状面が、基体部13aの図2の右側に位置する右端面の内周縁部にほぼ線接触をなすように当接されている。また、基体部13aの内孔13aaは、駆動ロッド4の外周面に緩く挿入されるとともに、皿押え13は、回り止め8から所定間隔離間しているので、駆動ロッド4の外周面に皿押え13を支持した状態で、その姿勢を変位させることができるように形成されている。すなわち、皿押え13は、駆動ロッド4に首振り自在に取り付けられている。
【0019】
また、前述したように、皿押え保持ばね10は、皿押え13の基体部13aの外周縁上に当接して、皿押え13を皿押え位置決めナット14に押圧しているので、皿押え13の自由状態(皿押え13の後述する爪部13bが糸調子皿2に接触していない状態)における姿勢が、基体部13aの面方向が駆動ロッド4の軸線に対して直交するように制御される。
【0020】
前記駆動ロッド4の右端部には、皿押え位置決めナット14と協働して二重ナットを形成するための支持ナット15が皿押え位置決めナット14の右端面に当接するようにして螺着されており、駆動ロッド4に対する皿押え位置決めナット14の取付位置を固定することができる。
【0021】
なお、皿押え13を駆動ロッド4に首振り自在に取り付けるための構成としては、駆動ロッド4に従来公知の球面すべり軸受組みを適用してもよい。すなわち、球状の内輪を取着し、皿押え13に内輪と略同径の凹部を有する外輪を取着する構成としてもよい。
【0022】
前記皿押え保持ばね10により、本実施形態の皿押え13が糸調子皿2へ押し付けられていない皿開放状態における皿押え13の姿勢を制御する姿勢制御手段16が構成されている。
【0023】
前記皿押え13の基体部13aの外周縁には、当接突起としての3つの爪部13bが形成されている。これらの爪部13bは、ほぼ平板状に形成されているとともに、中心から相互に等しい角度を隔てるように配置されている。さらに、各爪部13bは、皿押え保持ばね10の外周面を覆うようにして基体部13aの厚さ方向に沿って相互に平行に延出されており、各爪部13bを前記回り止め8の爪係止溝8aの内部に配置することで、皿押え13が周方向に回転するのを爪係止溝8aの側面に当接させることで防止できるようになっている。さらに、各爪部13bの長さは、回り止め8の厚みよりも長く形成されており、通常、各爪部13bの先端部は、糸調子皿2Aから離間しているが、皿押え13が、皿押え保持ばね10のばね圧に抗して回り止め8方向へと移動したときに、各爪部13bの先端部は、回り止め8の左端面を越えて糸調子皿2Aの右端面のほぼ径方向中央部分に当接するように形成されている。また、各爪部13bの外周面は、前記回り止め8の外周面より径方向内側に位置するように形成されている。
【0024】
なお、当接突起としては、平板状の爪部13bに限らず、断面が円、半円、楕円、四角、多角などの各種の形状の柱状の突起などから選択使用できる。また、当接突起の数としては、3以上とすることもできる。
【0025】
前記皿押え13の各爪部13bを前記回り止め8の爪係止溝8aの内部に配置する構成により、本実施形態の皿押え13の回転を防止する回転防止手段17が構成されている。
【0026】
図2に示すように、前記駆動ロッド4の左端部には、駆動機構18の駆動源としての電磁ソレノイド20が配設されている。この電磁ソレノイド20は、後に詳述するように、ミシンMのミシン頭部MFAHの左側壁LWに配設されたソレノイド支持部43に取着されており、軸方向に進退運動する出力軸20aの先端部には、平板状の板の両端部を厚さ方向に沿って上方に折り曲げた形状をなすナットホルダ21の図2の左側に示す左折曲板状部21Lが固定ねじ22により取着されている。また、ナットホルダ21の図2の右側に示す右折曲板状部21Rには、駆動ロッド4の左端部が挿通されており、駆動ロッド4の右折曲板状部21Rより左側に突出された端部にホルダ位置決めナット23が螺着されている。また、電磁ソレノイド20の出力軸20aの駆動ロッド4と対向する面の反対側の端部には、ストッパカラー24がねじ25(図8,図9)により固着されており、ストッパカラー24の取付位置によって出力軸20aのストロークを規制することができるようになっている。
【0027】
本実施形態における駆動源としての電磁ソレノイド20は、電源入力オンのときに出力軸20aが後退し、皿押え保持ばね10の付勢力に抗して皿押え13の爪部13bが糸調子皿2Aに当接して一対の糸調子皿2を図2の左側に押し付け、これにより一対の糸調子皿2の対向面が当接して、一対の糸調子皿2の対向面において上糸Tを挟持できるように構成されている。すなわち、本実施形態における電磁ソレノイド20は、引き動作の単動タイプのものが用いられている。なお、電磁ソレノイド20としては、電源入力オフのときに出力軸20aが前進する押し動作の単動タイプのものを用いてもよい。この場合、電磁ソレノイド20が図2に示す右側に配置して、駆動ロッド4の右端を出力軸20aに接続する構成とし、電源入力オンにより駆動ロッド4を右から左へと駆動する。また、駆動源としては、多少高価ではあるが、出力軸20aの前進と後退とを制御できる往復動タイプのものを用いてもよい。
【0028】
前記駆動ロッド4、皿押え13および電磁ソレノイド20により、本実施形態の皿押え13を糸調子皿2へと押し付けるための駆動機構18が構成されている。
【0029】
本実施形態におけるホルダ位置決めナット23は、前記皿押え位置決めナット14と同一形状に形成されている。すなわち、ホルダ位置決めナット23は、図2の右側に位置する右端側の外周面が截頭円錐状に形成されており、右端面を形成する細い環状面が、ナットホルダ21の右折曲板状部21Rの駆動ロッド4が挿通される挿通孔21Ra(図3)の周縁部にほぼ線接触をなすように当接されている。また、右折曲板状部21Rに形成されている駆動ロッド4が挿通される挿通孔21Raは、駆動ロッド4の外周面に緩く挿入されており、駆動ロッド4の外周面にナットホルダ21を支持した状態で、ナットホルダ21の姿勢を変位させることができるように形成されている。ところで、ナットホルダ21が首振り自在でない場合には、電磁ソレノイド20の出力軸20aの軸心が、駆動ロッド4の軸心の延長線上に位置するように、取付位置を正確に位置決めする必要があり、取り付けに多大な手間を要することになる。しかしながら、本実施形態のナットホルダ21は、駆動ロッド4に首振り自在に取り付けられているので、ナットホルダ21と駆動ロッド4との取り付けを容易に行うことができるようになっている。
【0030】
前記駆動ロッド4の左端部には、ホルダ位置決めナット23と協働して二重ナットを形成するための支持ナット26がホルダ位置決めナット23の左側端面に当接するようにして螺着されており、駆動ロッド4に対するホルダ位置決めナット23の取付位置を固定することができる。なお、ナットホルダ21を駆動ロッド4に首振り自在に取り付けるための構成としては、駆動ロッド4に従来公知の球面すべり軸受組みを適用する構成としてもよい。
【0031】
つぎに、前述した構成からなる本実施形態のミシンの糸調子装置1を備えたミシンの実施形態について、図6から図9により説明する。
【0032】
図6に示すように、本実施形態の糸調子装置1を備えたミシンMのミシンフレームMFは、下部にベッド部MFBが配設されるとともに、上部にベッド部MFBと平行に延在するアーム部MFAが配設されている構成となっている。そして、ベッド部MFBとアーム部MFAとはベッド部MFBの図6の右側に示す基端部側に配設されたアーム支持部MFCにより連結され、全体として正面ほぼコ字状に形成されている。そして、前述した実施形態の糸調子装置1は、アーム部MFAの図6の左側に示す自由端側に位置するミシン頭部MFAHに配設されており、天秤31より上糸供給源側において上糸Tに張力を付与するようになっている。
【0033】
また、実施形態の糸調子装置1は、図6および図7に示すように、天秤31の右下に配置されるとともに、糸調子装置1からの上糸Tが直接天秤31へと供給されるように構成している。すなわち、上糸Tの張力に最も影響を与える部分に設けられている。
【0034】
本実施形態のミシンMにおいては、図8に示すように、アーム部MFA、詳しくはミシン頭部MFAHの図8の右側に示す右側壁RWに、糸調子棒台取付部41が形成されており、左側壁LWに、ホルダ配置部42およびソレノイド支持部43が設けられている。
【0035】
前記糸調子棒台取付部41は、図6から図8に示すように、ミシンMのアーム部MFA、詳しくはミシン頭部MFAHの右側壁RWに突設されている。また、糸調子棒台取付部41は、図2に想像線にて示すように、内孔41aの軸心が水平に延在するほぼ円筒形状に形成されている。この糸調子棒台取付部41の内孔41aは2段の段付きに形成されている。そして、ミシン頭部MFAHの内部側に位置する糸調子棒台取付部41の内孔41aは、小径内孔部41aaとされており、駆動ロッド4の右端部側が挿通されている。また、糸調子棒台取付部41の右端側の内孔41aは、大径内孔部41abとされており、糸調子棒台6の左端部側の外周面が装着されている。そして、糸調子棒台取付部41の外周面から螺入された図示しない止めねじの先端を糸調子棒台6の外周面に当接させることによって、糸調子棒台取付部41の大径内孔部41abの内部に、糸調子棒台6が固着されている。
【0036】
前記ホルダ配置部42は、図8および図9に示すように、ミシンMのアーム部MFA、詳しくはミシン頭部MFAHの左側壁LWに配設されている。ホルダ配置部42には、図2に想像線にて示すように、駆動ロッド4の左端部が挿入される水平方向に延在する挿通孔42aが形成されている。また、図2に示すように、ホルダ配置部42の左側面には、電磁ソレノイド20がオフのときに右側への移動位置にあるナットホルダ21の右折曲板状部21Rが当接しないように凹状の逃げ部42bが形成されている。
【0037】
なお、糸調子棒台取付部41の小径内孔部41aaと、ホルダ配置部42の挿通孔42aとは、同軸上に形成されており、駆動ロッド4を水平に配置できるようになっている。
【0038】
前記ソレノイド支持部43は、図7から図9に示すように、ミシンMのアーム部MFA、詳しくはミシン頭部MFAHの左側壁LWに配設されており、電磁ソレノイド20を取り付けるための平板状の取付ベース44と、取付ベース44と左側壁LWとの間に介在される図示しない固定ベースとを有している。図示しない固定ベースが左側壁LWに所望の固定方法にて固定されており、この固定ベースに対して取付ベース44が複数のねじ44a(図8および図9に一部のみ図示)により固定されており、また、取り付けベース44には、複数のねじ45(図8および図9に一部のみ図示)によって、電磁ソレノイド20が固着されている。
【0039】
その他の構成は従来のミシンMと同様とされているので、その詳しい説明は省略する。
【0040】
なお、本実施形態に示すミシンMは、袖付け、鞄などの立体縫製に用いられるポスト型ミシンを示しているが、電子サイクルミシン、本縫いミシンなどの従来公知の各種のミシンに用いることができる。
【0041】
つぎに、前述した構成からなる本実施形態の作用について説明する。
【0042】
図2は、本実施形態の糸調子装置1における一対の糸調子皿2の対向面において上糸Tを挟持して上糸Tに適正な張力を付与する皿閉じ状態を示している。この皿閉じ状態においては、電磁ソレノイド20に対する電源入力はオンとされており、出力軸20aが後退して駆動ロッド4は左側に移動している。そして、駆動ロッド4の移動にともなって皿押え位置決めナット14も左側に移動しており、皿押え13が皿押え保持ばね10の付勢力に抗して左側に移動している。この皿押え13の左側への移動により、皿押え13の当接突起としての3つの爪部13bが糸調子皿2Aに当接して一対の糸調子皿2を図2の左側に押し付けて糸調子棒台6の右端に当接させている。これにより一対の糸調子皿2の対向面間において上糸Tを挟持して適正な張力を付与している。
【0043】
この時、本実施形態の糸調子装置1によれば、皿押え13が、駆動機構18の駆動ロッド4に首振り自在に取り付けられているので、皿押え13を糸調子皿2Aに対して押し付けると、糸調子皿2Aを押し付ける皿押え13は、その姿勢を糸調子皿2の姿勢に応じて、糸調子皿2Aを押し付ける皿押え13の押え力が均一になるように自動的に変化する。したがって、常に安定した糸の張力を得ることができる。
【0044】
また、本実施形態の糸調子装置1によれば、皿押え13の糸調子皿2Aと対向する部位に、糸調子皿2に当接される当接突起としての3つの爪部13bが設けられているので、糸調子皿2間に糸が挟持されることによって糸調子皿2Aの姿勢が糸調子皿2Bに対して傾いたとしても、皿押え13の3つの爪部13bが糸調子皿2Aに対して必ず3点接触するので、糸調子皿2Aを押し付ける皿押え13の押え力を糸調子皿2の全周に亘って略均一にできる。したがって、常に安定した糸の張力を得ることができる。
【0045】
さらに、本実施形態の糸調子装置1によれば、各爪部13bが中心から相互に等しい角度を隔てるように配置されているので、糸調子皿2Aを押し付ける皿押え13の押え力をより均一にできる。
【0046】
さらにまた、本実施形態の糸調子装置1によれば、皿押え13の回転を防止する回転防止手段17、詳しくは皿押え13の各爪部13bを回り止め8の爪係止溝8aの内部に配置する構成が設けられているので、糸調子皿2が回転することなく、安定した糸の張力を得ることができるとともに、糸調子皿2が回転することによって、上糸Tが糸調子皿2間から外れてしまうという事態を防止することができる。
【0047】
一方、電磁ソレノイド20に対する電源入力をオフすると、出力軸20aが前進して駆動ロッド4は図2の状態から右側に移動する。なお、駆動ロッド4の右側への移動は、皿押え保持ばね10の付勢力によって行われる。すなわち、出力軸20aが右側に移動すると、これに固定されるナットホルダ21が右側に移動するが、ナットホルダ21の右折曲板状部21Rには、駆動ロッド4が移動可能に挿通しているので、ナットホルダ21の移動による力は、駆動ロッド4へとほとんど伝達されない。一方、皿押え保持ばね10は、皿押え13を介して皿押え位置決めナット14を右側へと付勢しているので、電磁ソレノイド20に対する電源入力がオフされると、皿押え位置決めナット14を介して駆動ロッド4を右側へと移動する。この皿押え13の右側への移動により、皿押え13の当接突起が糸調子皿2から離間して一対の糸調子皿2の対向面間に隙間が生じ、皿押え13が糸調子皿2Aへ押し付けられていない皿開放状態になる。
【0048】
この時、本実施形態の糸調子装置1によれば、皿押え13が糸調子皿2へ押し付けられていない皿開放状態における皿押え13の姿勢を制御する姿勢制御手段16、詳しくは皿押え13の基体部13aを皿押え位置決めナット14に向けて押し付ける皿押え保持ばね10が設けられているので、皿開放状態における皿押え13の姿勢を一定にできる。これにより、皿押え13を糸調子皿2に押し付ける際の皿押え13の姿勢を一定にすることができるため、皿押え13の各爪部13bが糸調子皿2Aにほぼ同時に当接するので、各爪部13bが糸調子皿2に片当たりして押えむらを生じることがなく、糸調子皿2Aに当接した直後から均一な押え力を付与でき、常に安定した張力を上糸Tに付与できる。また、皿開放状態において、爪部13bが糸調子皿2Aに当接することがないので、皿開放状態における糸に掛かる張力を確実になくすことができる。
【0049】
また、本実施形態の糸調子装置1における皿開放状態と皿閉じ状態との切換は、電磁ソレノイド20に対する電源入力のオンオフによって容易に行うことができる。
【0050】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、必要に応じて種々変更することができる。例えば、下糸に張力を付与するものとして用いてもよい。
【0051】
【発明の効果】
以上説明したように請求項1に係る本発明のミシンの糸調子装置によれば、皿押えを糸調子皿に対して押し付けると、糸調子皿を押し付ける皿押えは、その姿勢を糸調子皿の姿勢に応じて、糸調子皿を押し付ける皿押えの押え力が均一になるように自動的に変化する。したがって、常に安定した糸の張力を得ることができるなどの極めて優れた効果を奏する。
【0052】
また、請求項2に係る本発明のミシンの糸調子装置によれば、一対の糸調子皿の相互間を通過する糸が糸調子皿から外れるのを確実に防止できるなどの極めて優れた効果を奏する。
【0053】
また、請求項3に係る本発明のミシンの糸調子装置によれば、皿開放状態における皿押えの姿勢を一定にできるなどの極めて優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係るミシンの糸調子装置の構成を示す外観斜視図
【図2】 図1の糸調子装置の一部切断正面図
【図3】 図1の糸調子装置の分解斜視図
【図4】 図1の糸調子装置の糸取りばねの近傍を示す拡大分解斜視図
【図5】 図1の糸調子装置の糸調子皿の近傍を示す一部切断拡大斜視図
【図6】 図1の糸調子装置を備えたミシンの外観斜視図
【図7】 図6のミシンのミシン頭部の近傍の要部を示す拡大斜視図
【図8】 図7の正面図
【図9】 図7を斜め左から見て示す斜視図
【符号の説明】
1 糸調子装置
2、2A、2B 糸調子皿
3 糸調子棒
4 駆動ロッド
5 糸取りばね
6 糸調子棒台
8 回り止め
10 皿保持ばね
13 皿押え
13b (当接突起としての)爪部
16 姿勢制御手段
17 回転防止手段
18 駆動機構
20 電磁ソレノイド
31 天秤
41 糸調子棒台取付部
42 ホルダ配置部
43 ソレノイド支持部
44 取付ベース
M ミシン
MFA アーム部
MFAH ミシン頭部
T 上糸

Claims (3)

  1. 糸を挟持可能な一対の糸調子皿と、
    前記糸調子皿と当接する皿押えと、
    皿押え位置決めナットを介して前記皿押えを押圧する駆動ロッドを具備し前記皿押えを前記糸調子皿へ押し付けるための駆動機構とを備え、
    前記皿押えの外周縁には3以上の当接突起を備え、この当接突起で前記糸調子皿と接触し、前記皿押え位置決めナットは前記皿押えと当接する端面が截頭円錐状に形成することにより、前記皿押えが、前記駆動機構の駆動ロッドに首振り自在に取り付けられていることを特徴とするミシンの糸調子装置。
  2. 前記皿押えの回転を防止する回転防止手段が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のミシンの糸調子装置。
  3. 前記皿押えが前記糸調子皿へ押し付けられていない皿開放状態における前記皿押えの姿勢を制御する姿勢制御手段が設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のミシンの糸調子装置。
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