JP3835135B2 - アミノ基を結合してなる半導体超微粒子 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、特定の連結有機残基を介してアミノ基を結合した半導体超微粒子に関する。本発明の半導体超微粒子は、該連結有機残基の効果により、耐水性等、超微粒子の主体を成す半導体結晶の吸光あるいは発光特性が外界の影響から保護されたものであり、しかも該アミノ基の反応性を利用して所望の化学構造を結合することができる。従って、例えば抗体タンパク質等の基質特異的親和性を有する化学構造を結合した場合、生物学的分析等の基質特異的分析試薬として利用される。あるいは親水性基を結合した場合、水性又はアルコール性溶剤等の対環境安全性に優れた溶媒に可溶な半導体超微粒子となるので、水性又はアルコール性の吸光性あるいは発光性塗料原料として利用される。
【0002】
【従来の技術】
量子効果による制御された吸光あるいは発光特性(以下、吸発光特性と呼ぶ)を有する半導体超微粒子は、分析プローブとして活用される。例えば米国特許5990479号(1999)には、半導体ナノ結晶表面に、特定の物質(Substance)との親和力を有する「親和性分子」(Affinity molecules:例えば抗体、核酸、タンパク質、多糖類、あるいは糖、ペプチド、薬剤、配位子等の低分子)を「連結剤」(Linking agent)を介して結合した、生物学的応用を主な目的とする半導体ナノ結晶プローブの概念が開示されている。この特許公報では、「親和性分子」を将来結合可能な官能基(例えばカルボキシル基、アミノ基、あるいは尿素基−NHCONH2、等)を有する「連結剤」を半導体ナノ結晶表面に結合した半導体超微粒子の合成までを実施例とし、これら官能基に「親和性分子」としてアビジン(Avidin)やストレプトアビジン(Streptavidin)等のアビジン類が結合可能であること、更に、生物学的分析において既に広く用いられているアビジン類とビオチン(Biotin)残基との特異的親和力を利用することにより、ビオチン残基で標識した任意の基質が原理的に分析可能であるとの概念を述べている。
【0003】
しかし、この技術における前記の「連結剤」の構造は半導体ナノ結晶の発光強度に大きな影響を及ぼすにもかかわらず十分な検討がなされておらず、分析試薬として有用な輝度を得られない場合があった。即ち、例えばアミノ基を末端に結合した該「連結基」として、N−(3−アミノプロピル)3−メルカプトベンズアミド等の芳香環が半導体ナノ結晶に隣接する構造のように半導体ナノ結晶の量子効果による吸発光特性をクエンチ(消光)する場合がある構造、あるいは3−アミノプロピルトリメトキシシランや3−ヒドラジドプロピルトリメトキシシラン等の炭素数が高々3程度の比較的短い脂肪鎖を含有する構造のように該吸発光特性を外界の影響から保護するに不十分な構造等のみが例示されていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、多様な化学構造を連結可能なアミノ基を結合し、かつ、耐水性等、半導体結晶の量子効果による吸発光特性が安定化された半導体超微粒子の提供にある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者は上記の目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、アミノ基を、例えば11−メルカプトウンデカン酸等のω−メルカプト脂肪酸の残基を介して半導体結晶表面に結合した場合、該半導体結晶の優れた吸発光能を維持可能であることを見いだし、本発明に到達した。
【0006】
即ち本発明の要旨は、半導体結晶が、下記一般式(1)で表されるω−メルカプト脂肪酸アミドアミンを配位子として有するものであり、半導体結晶表面に、ω−メルカプト脂肪酸残基を介してポリアルキレングリコール残基を結合してなる半導体超微粒子。
【化3】
HS−(CH 2 ) n −CONR 2 −R 1 −NHR 2 (1)
(但し一般式(1)において、nは5〜17以下の自然数を、R 1 は炭素数2〜18のアルキレン基又は炭素数6〜18のアリーレン基を、R 2 は水素原子又は炭素数6以下のアルキル基を、それぞれ表す。)に存する。
【0007】
【発明の実施の形態】
[連結有機残基]
本発明の半導体超微粒子においては、アミノ基が、炭素数5〜40の連結有機残基を介して後述する半導体結晶の表面に結合される。ここでいう連結有機残基は、アミノ基と半導体結晶の両者を連結することを目的とする任意の有機構造を有する2価の残基であり、これが含有する5〜40の炭素原子は、アルカン(飽和脂肪族)、あるいはアルケンやアルキン(不飽和脂肪族)等任意の脂肪族構造、ベンゼン環やナフタレン環等の炭化水素芳香環、ピリジン環等の含窒素芳香環、フラン環やチオフェン環等の含カルコゲン芳香環等任意の芳香族構造、カルボニル基(ケトン基、カルボキシル基、エステル結合、アミド結合、カーボネート結合、ウレタン結合、尿素結合等の任意の含カルボニル基構造を含む)等、任意の有機構造を形成していて構わない。また、本発明の半導体超微粒子は、複数種の連結有機残基を結合していても構わない。
【0008】
本発明における連結有機残基に結合したアミノ基とは、1級アミノ基又は2級アミノ基を意味する。これは、該アミノ基が有する活性水素を置換する反応により、所望の化学構造を将来結合するためである。
かかる連結有機残基の役割は、一定の距離の疎水的環境を介してアミノ基を半導体結晶表面に結合し、その結果として半導体結晶の量子効果による吸発光能を有用に制御する点にある。かかる効果の源泉は、半導体結晶の吸発光収率を阻害する任意の外界の化学種、例えば電子受容能のある化学種、あるいはプロトン酸、アルカリ、イオン等の高い極性や電荷を有する特に水溶性化学種の半導体結晶表面への接近を抑制する点に存するものと推測される。かかる理由により、前記の連結有機残基は、電子受容能のあるπ電子系構造、特に芳香環を含有しないことが望ましい。
【0009】
連結有機残基の含有する炭素原子数は、好ましくは6〜30、更に好ましくは7〜25、最も好ましくは8〜20とする。
該連結有機残基に含有させるのに好ましい構造単位としては、n−ブチレン基、n−ヘキシレン基、イソヘキシレン基、n−ヘプチレン基、イソヘプチレン基、n−オクチレン基、イソオクチレン基、n−デシレン基、n−ウンデシレン基、n−トリデシレン基、n−ペンタデシレン基、n−ヘプタデシレン基等の炭素数が4〜17のアルキレン基が挙げられ、中でもn−ヘプチレン基、n−オクチレン基、n−デシレン基、n−ウンデシレン基、n−トリデシレン基等の炭素数が7〜13の直鎖状アルキレン基が更に好適である。
【0010】
前記の連結有機残基が半導体結晶に結合する様式に制限はないが、通常、配位結合、共有結合、あるいはイオン結合による。具体的には、例えば該連結有機残基の片方の末端に半導体結晶の含有元素に対する配位能力を有する官能基、例えば、メルカプト基(別称チオール基:−SH)、スルフィド結合(別称チオエーテル結合:−S−)、ジスルフィド結合(−S−S−)、チオフェン環、チオカルボニル基(C=S)等の硫黄含有基、ホスフィンオキシド基(P=O)やホスフィン基等のリン含有基、ニトリル基、アミノ基、アミド結合(−CONH−)、ピリジン環等の窒素含有基、水酸基やカルボニル基等の酸素含有基等を結合することにより、これらの官能基の配位力を利用して該連結有機残基の片方の末端を半導体結晶の表面に結合させることが可能である。これらの官能基のうち好適に用いられるのはメルカプト基とホスフィンオキシド基であり、特にメルカプト基は最適である。メルカプト基等の前記に例示した配位能力を有する官能基と半導体結晶表面との実際の結合構造は明らかではないが、例えばメルカプト基の硫黄原子の配位結合、あるいは金属元素と該硫黄原子との共有結合あるいはイオン結合等の存在が推定される。
【0011】
本発明に好適に用いられる前記の連結有機残基として、下記一般式(1)で表されるω−メルカプト脂肪酸アミドアミンの残基が例示される。
【0012】
【化4】
HS−(CH2)n−CONR2−R1−NHR2 (1)
但し一般式(1)において、nは17以下の自然数を、R1は炭素数2〜18のアルキレン基又は炭素数6〜18のアリーレン基を、R2は水素原子又は炭素数6以下のアルキル基を、それぞれ表す。なおここで接頭語「ω−」は、分子末端に結合することを示す化学構造命名法における一般的な接頭語である。一般式(1)の構造において、メルカプト基は半導体結晶表面への結合を目的とするものである。
【0013】
かかるω−メルカプト脂肪酸アミドアミンは、アミド基の優れた化学的安定性のため、耐加水分解性等の耐水性に優れた構造である。これは、ω−メルカプト脂肪酸及びジアミン類とのアミド化反応により合成され、前者は一般式(1)の構造における「HS−(CH2)n−CO」部分構造に誘導され、後者は同じく「NH−R1−NHR2」部分構造に誘導される。かかるアミド化反応は、具体的には、ω−メルカプト脂肪酸又はそのエステル(好ましくはメチルエステル又はエチルエステル)に対して、過剰当量のジアミン類(好ましくは溶媒として使用する)を混合して加熱して縮合することで行う。この場合、精製する水又はアルコールを減圧除去することで反応の平衡を移動させることが好ましい。また、ω−メルカプト脂肪酸又はそのエステルの代わりに、ω−メルカプト脂肪酸の酸塩化物等の酸ハロゲン化物、あるいは酸無水物等を適当な塩基存在下で縮合する方法も可能である。これらの方法のうち、ω−メルカプト脂肪酸又はそのエステルを過剰当量のジアミン類と減圧下で縮合する方法が大量合成の点で好ましく、中でも該エステルを使用する方法は反応速度が大きく比較的低温で進行する点では最適である。
【0014】
一般に、前記一般式(1)で表される構造中の総炭素数が少ない場合、即ち該式中の自然数nとR1の炭素数との総和が小さい場合、半導体結晶の発光能が低下する場合がある。これは、半導体結晶表面が、外界化学種の接近を受けやすくなるためと推測される。
前記のω−メルカプト脂肪酸アミドアミンを得るアミド化反応に使用されるω−メルカプト脂肪酸としては、メルカプト酢酸、3−メルカプトプロパン酸、4−メルカプトブタン酸、5−メルカプトペンタン酸、6−メルカプトヘキサン酸、7−メルカプトヘプタン酸、8−メルカプトオクタン酸、9−メルカプトノナン酸、10−メルカプトデカン酸、11−メルカプトウンデカン酸、12−メルカプトドデカン酸、14−メルカプトテトラデカン酸、16−メルカプトヘキサデカン酸、18−メルカプトオクタデカン酸等が例示される。これらのうち好ましいのは4−メルカプトブタン酸、6−メルカプトヘキサン酸、7−メルカプトヘプタン酸、8−メルカプトオクタン酸、9−メルカプトノナン酸、10−メルカプトデカン酸、11−メルカプトウンデカン酸、12−メルカプトドデカン酸、14−メルカプトテトラデカン酸等の炭素数4〜14のω−メルカプト脂肪酸であり、更に好ましいのは6−メルカプトヘキサン酸、7−メルカプトヘプタン酸、8−メルカプトオクタン酸、9−メルカプトノナン酸、10−メルカプトデカン酸、11−メルカプトウンデカン酸、12−メルカプトドデカン酸等の炭素数6〜12のω−メルカプト脂肪酸であり、最も好ましいのは8−メルカプトオクタン酸、9−メルカプトノナン酸、10−メルカプトデカン酸、11−メルカプトウンデカン酸等の炭素数8〜11のω−メルカプト脂肪酸である。
【0015】
前記のω−メルカプト脂肪酸アミドアミンを得るアミド化反応に使用されるジアミン類としては、1,2−ジアミノエタン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン、1,12−ジアミノドデカン、1,14−ジアミノテトラデカン、1,16−ジアミノヘキサデカン、1,18−ジアミノオクタデカン等の炭素数2〜18のω,ω’−ジアミノアルカン類、これら例示のω,ω’−ジアミノアルカン類の任意の炭素原子が炭素数1〜8のアルキル基を結合し総炭素数が2〜18である分岐構造を有するジアミノアルカン類、1,4−ジアミノベンゼン(別称p−フェニレンジアミン)、1,3−ジアミノベンゼン(別称m−フェニレンジアミン)、ジアミノナフタレン類、ジアミノピリジン類等の芳香族ジアミン類、これら例示の芳香族ジアミン類の任意の芳香環の水素原子が炭素数1〜8のアルキル基で置換され総炭素数が2〜18である置換芳香族ジアミン類、1,4−ビス(アミノメチル)ベンゼン、1,3−ビス(アミノメチル)ベンゼン等のアミノ基を結合しない芳香環を含有するジアミン類、更に、前記に例示した任意のジアミン類のアミノ基の1つの水素原子が炭素数6以下のアルキル基(好ましくはメチル基、エチル基、n−プロピル基、及びイソプロピル基等の炭素数3以下のアルキル基)で置換された2級ジアミン類等が例示される。これらのうち好ましいのは、1,2−ジアミノエタン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン、1,12−ジアミノドデカン、1,14−ジアミノテトラデカン等の炭素数2〜14のω,ω’−ジアミノアルカン類、更に好ましいのは1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン等の炭素数3〜10のω,ω’−ジアミノアルカン類、最も好ましいのは1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノヘキサン等の炭素数3〜6のω,ω’−ジアミノアルカン類である。
【0016】
なお、前記例示の任意のω−メルカプト脂肪酸分子中の、任意のメチレン基が炭素数6以下程度のアルキル基を分岐として結合した分岐ω−メルカプト脂肪酸類(例えば2−メルカプトプロパン酸)や、メルカプトコハク酸(別称チオリンゴ酸)等のメルカプト基を有する多価脂肪族カルボン酸類等も、前記例示のω−メルカプト脂肪酸と同様に使用可能である場合がある。
【0017】
本発明に好適に用いられる前記の連結有機残基である前記一般式(1)で表されるω−メルカプト脂肪酸アミドアミンの残基の特に好適な具体構造として、下記一般式(2)の11−メルカプトウンデカン酸アミドアミンの残基が例示される。
【0018】
【化5】
HS−(CH2)10−CONH−(CH2)m−NH2 (2)
(但し一般式(2)においてmは3〜10の整数であり、好ましい整数mの範囲は3〜8、更に好ましくは3〜6である。)
かかる11−メルカプトウンデカン酸アミドアミンの残基は、実際には、下記一般式(3)で表される末端アミノ基がアルコキシカルボニル基により保護されていても構わない11−メルカプトウンデカン酸アミドとして半導体結晶表面に結合されるのが最も好ましい。かかるアルコキシカルボニル基は、後に選択的に除去されアミノ基を再生することが可能である。
【0019】
【化6】
HS−(CH2)10−CONH−(CH2)m−NHL (3)
(但し一般式(3)においてmは3〜10の整数であり、Lは水素原子又は炭素数10以下のアルコキシカルボニル基を表す。)
前記一般式(3)におけるLとして使用される炭素数10以下のアルコキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、ジイソプロピルメチルオキシカルボニル基、イソブチルオキシカルボニル基、tert−ブチルオキシカルボニル基(以下、BOC基と略)、ベンジルオキシカルボニル基(以下、CBZ基と略)等のアルコキシカルボニル基、2,2,2−トリクロロエチルオキシカルボニル基、2−ヨードエチルオキシカルボニル基、1,1−ジメチル−2−クロロエチルオキシカルボニル基等の2−ハロエチルオキシカルボニル基、1,1−ジメチル−2−シアノエチルオキシカルボニル基、1,1−ジメチル−2−ニトロエチルオキシカルボニル基等の電子吸引性基を結合したBOC基、2,4−ジクロロベンジルオキシカルボニル基、p−ニトロベンジルオキシカルボニル基、p−シアノベンジルオキシカルボニル基等の耐酸性を向上しBOC基の脱保護条件での安定性を向上したCBZ基誘導体、ビニルオキシカルボニル基、アリルオキシカルボニル基等の不飽和結合を有するアルコキシカルボニル基等が例示され、これらのうち、BOC基や1,1−ジメチル−2−シアノエチルオキシカルボニル基等のBOC基誘導体、CBZ基、2,4−ジクロロベンジルオキシカルボニル基、p−ニトロベンジルオキシカルボニル基、p−シアノベンジルオキシカルボニル基等のCBZ基誘導体等が好適に用いられ、中でもBOC基とCBZ基が最も好適に用いられる。
【0020】
前記一般式(3)におけるLとして使用されるアルコキシカルボニル基の除去は、例えばBOC基の場合、通常酸性条件や加熱により行われ、かかる酸性条件としては、例えば、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、塩酸等の強酸、あるいは酢酸や蟻酸等の弱酸を溶液に適量添加する方法、あるいはスルホン酸基やカルボキシル基を担持した酸性イオン交換樹脂を溶液中で作用させる方法等により達成可能であるが、酸性度が強すぎる場合、半導体超微粒子の表面が好ましくない変化を受けてその吸発光能が低下する場合がある。一方、保護基がCBZ基の場合、溶液において常法のパラジウム担持炭素(Pd−C)触媒による水素添加反応により脱保護反応を行う。いずれの場合も、通常−50〜100℃程度、好ましくは−30〜70℃程度、更に好ましくは−10〜50℃程度、最も好ましく−5〜30℃程度の温度範囲で反応を行う。
【0021】
[半導体超微粒子]
本発明の半導体超微粒子は、後述するような半導体結晶を主体とし、その表面に、アミノ基を前記の連結有機残基を介して結合したものである。従って、本発明の半導体超微粒子は、半導体結晶本体、その表面に結合した前記の連結有機残基、及びアミノ基の3者を必須構成成分とする。
【0022】
本発明に用いられる半導体結晶は、ナノメートル(nm)レベルの超微粒とすることで、量子効果により生ずる量子準位エネルギーギャップの存在に起因する電磁波の吸収及び/又は発生(以下、吸発光と呼称する)現象を示すものであるのが好ましい。応用上特に有用な吸発光波長範囲は遠紫外〜赤外領域の光であり、通常150〜10000nm、好ましくは180〜8000nm、更に好ましくは200〜6000nm、最も好ましくは220〜4000nm程度の範囲である。前記の量子準位エネルギーギャップは、現象論的には該半導体結晶の粒径に依存する。
【0023】
該半導体結晶は、半導体単結晶、複数半導体結晶組成が相分離した混晶、相分離の観察されない混合半導体結晶のいずれでも構わず、後述するコア−シェル構造をとっていても構わない。
かかる半導体結晶の粒径は、重量平均粒径として通常0.5〜20nm、吸発光等の電磁気学的特性の点で好ましくは1〜15nm、更に好ましくは2〜12nm、最も好ましくは2〜10nmとする。半導体結晶の量子効果による吸発光特性はかかる粒径により制御され、これは透過型電子顕微鏡(TEM)による観察で通常決定可能である。半導体結晶が含有する元素の原子番号が小さく電子線によるコントラストが得にくい場合には、半導体超微粒子の原子間力顕微鏡(AFM)による観察や溶液での光散乱や中性子散乱測定に、元素分析、熱重量分析(TG)、並びにNMR等の組成・構造分析結果を組み合わせても見積もることができる(例えば、S.A.Majetichら;J.Phys.Chem.,98巻,13705頁(1994)におけるプロトンNMRの利用を参照)。
【0024】
該半導体結晶の粒径分布に制限はないが、半導体結晶の量子効果による吸発光特性を利用する場合、かかる分布を変えることで必要とする吸発光波長幅を変化させることができる。なお、かかる波長幅を狭くする必要がある場合には該粒径分布を狭くするが、通常、標準偏差として±40%以内、好ましくは±30%以内、更に好ましくは±20%以内、最も好ましくは±10%以内とする。この標準偏差の範囲を超えた粒径分布の場合、量子効果による発光波長幅を狭くする目的を十分に達成することが困難となる。
【0025】
[半導体結晶の組成]
本発明における半導体超微粒子に含まれる半導体結晶組成には特に制限はない。具体的な組成例としては、炭素、ケイ素、ゲルマニウム、錫等の周期表第14族元素の単体、リン(黒リン)等の周期表第15族元素の単体、セレン、テルル等の周期表第16族元素の単体、炭化ケイ素(SiC)等の複数の周期表第14族元素からなる化合物、酸化錫(IV)(SnO2)、硫化錫(II,IV)(Sn(II)Sn(IV)S3)、硫化錫(IV)(SnS2)、硫化錫(II)(SnS)、セレン化錫(II)(SnSe)、テルル化錫(II)(SnTe)、硫化鉛(II)(PbS)、セレン化鉛(II)(PbSe)、テルル化鉛(II)(PbTe)等の周期表第14族元素と周期表第16族元素との化合物、窒化ホウ素(BN)、リン化ホウ素(BP)、砒化ホウ素(BAs)、窒化アルミニウム(AlN)、リン化アルミニウム(AlP)、砒化アルミニウム(AlAs)、アンチモン化アルミニウム(AlSb)、窒化ガリウム(GaN)、リン化ガリウム(GaP)、砒化ガリウム(GaAs)、アンチモン化ガリウム(GaSb)、窒化インジウム(InN)、リン化インジウム(InP)、砒化インジウム(InAs)、アンチモン化インジウム(InSb)等の周期表第13族元素と周期表第15族元素との化合物(あるいはIII−V族化合物半導体)、硫化アルミニウム(Al2S3)、セレン化アルミニウム(Al2Se3)、硫化ガリウム(Ga2S3)、セレン化ガリウム(Ga2Se3)、テルル化ガリウム(Ga2Te3)、酸化インジウム(In2O3)、硫化インジウム(In2S3)、セレン化インジウム(In2Se3)、テルル化インジウム(In2Te3)等の周期表第13族元素と周期表第16族元素との化合物、塩化タリウム(I)(TlCl)、臭化タリウム(I)(TlBr)、ヨウ化タリウム(I)(TlI)等の周期表第13族元素と周期表第17族元素との化合物、酸化亜鉛(ZnO)、硫化亜鉛(ZnS)、セレン化亜鉛(ZnSe)、テルル化亜鉛(ZnTe)、酸化カドミウム(CdO)、硫化カドミウム(CdS)、セレン化カドミウム(CdSe)、テルル化カドミウム(CdTe)、硫化水銀(HgS)、セレン化水銀(HgSe)、テルル化水銀(HgTe)等の周期表第12族元素と周期表第16族元素との化合物(あるいはII−VI族化合物半導体)、硫化砒素(III)(As2S3)、セレン化砒素(III)(As2Se3)、テルル化砒素(III)(As2Te3)、硫化アンチモン(III)(Sb2S3)、セレン化アンチモン(III)(Sb2Se3)、テルル化アンチモン(III)(Sb2Te3)、硫化ビスマス(III)(Bi2S3)、セレン化ビスマス(III)(Bi2Se3)、テルル化ビスマス(III)(Bi2Te3)等の周期表第15族元素と周期表第16族元素との化合物、酸化銅(I)(Cu2O)、セレン化銅(I)(Cu2Se)等の周期表第11族元素と周期表第16族元素との化合物、塩化銅(I)(CuCl)、臭化銅(I)(CuBr)、ヨウ化銅(I)(CuI)、塩化銀(AgCl)、臭化銀(AgBr)等の周期表第11族元素と周期表第17族元素との化合物、酸化ニッケル(II)(NiO)等の周期表第10族元素と周期表第16族元素との化合物、酸化コバルト(II)(CoO)、硫化コバルト(II)(CoS)等の周期表第9族元素と周期表第16族元素との化合物、四酸化三鉄(Fe3O4)、硫化鉄(II)(FeS)等の周期表第8族元素と周期表第16族元素との化合物、酸化マンガン(II)(MnO)等の周期表第7族元素と周期表第16族元素との化合物、硫化モリブデン(IV)(MoS2)、酸化タングステン(IV)(WO2)等の周期表第6族元素と周期表第16族元素との化合物、酸化バナジウム(II)(VO)、酸化バナジウム(IV)(VO2)、酸化タンタル(V)(Ta2O5)等の周期表第5族元素と周期表第16族元素との化合物、酸化チタン(TiO2、Ti2O5、Ti2O3、Ti5O9等)等の周期表第4族元素と周期表第16族元素との化合物、硫化マグネシウム(MgS)、セレン化マグネシウム(MgSe)等の周期表第2族元素と周期表第16族元素との化合物、酸化カドミウム(II)クロム(III)(CdCr2O4)、セレン化カドミウム(II)クロム(III)(CdCr2Se4)、硫化銅(II)クロム(III)(CuCr2S4)、セレン化水銀(II)クロム(III)(HgCr2Se4)等のカルコゲンスピネル類、バリウムチタネート(BaTiO3)等が挙げられる。なお、G.Schmidら;Adv.Mater.,4巻,494頁(1991)に報告されている(BN)75(BF2)15F15や、D.Fenskeら;Angew.Chem.Int.Ed.Engl.,29巻,1452頁(1990)に報告されているCu146Se73(トリエチルホスフィン)22のように構造の確定されている半導体クラスターも同様に例示される。
【0026】
これらのうち、後述する半導体超微粒子の製造方法に適した実用的に重要なものを組成式で示すと、例えばSnS2、SnS、SnSe、SnTe、PbS、PbSe、PbTe等の周期表第14族元素と周期表第16族元素との化合物、GaN、GaP、GaAs、GaSb、InN、InP、InAs、InSb等のIII−V族化合物半導体、Ga2O3、Ga2S3、Ga2Se3、Ga2Te3、In2O3、In2S3、In2Se3、In2Te3等の周期表第13族元素と周期表第16族元素との化合物、ZnO、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdO、CdS、CdSe、CdTe、HgO、HgS、HgSe、HgTe等のII−VI族化合物半導体、As2O3、As2S3、As2Se3、As2Te3、Sb2O3、Sb2S3、Sb2Se3、Sb2Te3、Bi2O3、Bi2S3、Bi2Se3、Bi2Te3等の周期表第15族元素と周期表第16族元素との化合物、MgS、MgSe等の周期表第2族元素と周期表第16族元素との化合物であり、中でも、GaN、GaP、InN、InP、Ga2O3、Ga2S3、In2O3、In2S3、ZnO、ZnS、CdO、CdS等は毒性の高い陰性元素を含まないので耐環境汚染性や生物への安全性の点で好ましく、この観点で毒性の指摘される金属元素を含まないZnO及びZnSは更に好ましく、ZnSは後述する様々なドープ物質による発光波長可変性により最も好ましい。
【0027】
本発明に用いられる半導体超微粒子の主体である半導体結晶は、例えばA.R.Kortanら;J.Am.Chem.Soc.,112巻,1327頁(1990)あるいは米国特許5985173号公報(1999)に報告されているように、その半導体結晶の吸発光特性を改良する目的で内核(コア)と外殻(シェル)からなるいわゆるコア−シェル構造としても構わない。この場合、コアの半導体結晶構造よりもバンドギャップエネルギーの大きな半導体結晶構造をシェルとして起用することにより、該コア結晶の量子効果による理想的な発光効率を減衰させる表面準位や結晶格子欠陥準位等を経由する非発光エネルギー損失を防ぐことが可能な場合がある。かかるシェルに好適用いられる半導体結晶構造としては、コア半導体結晶のバンドギャップエネルギーにもよるが、バルク状態のバンドギャップが温度300Kにおいて2.0電子ボルト以上であるもの、例えば窒化ホウ素(BN)、砒化ホウ素(BAs)、窒化ガリウム(GaN)やリン化ガリウム(GaP)等の周期表第13族元素と周期表第15族元素との化合物(III−V族化合物半導体)、酸化亜鉛(ZnO)、硫化亜鉛(ZnS)、セレン化亜鉛(ZnSe)、テルル化亜鉛(ZnTe)、酸化カドミウム(CdO)、硫化カドミウム(CdS)等の周期表第12族元素と周期表第16族元素との化合物(II−VI族化合物半導体)、硫化マグネシウム(MgS)、セレン化マグネシウム(MgSe)等の周期表第2族元素と周期表第16族元素との化合物等が好適に用いられる。これらのうちより好ましいシェルとなる半導体結晶組成は、BN、BAs、GaN等のIII−V族化合物半導体、ZnO、ZnS、ZnSe、CdSII−VI族化合物半導体、MgS、MgSe等の周期表第2族元素と周期表第16族元素との化合物等のバルク状態のバンドギャップが温度300Kにおいて2.3電子ボルト以上のものであり、最も好ましいのはBN、BAs、GaN、ZnO、ZnS、ZnSe、MgS、MgSe等のバルク状態のバンドギャップが温度300Kにおいて2.5電子ボルト以上のものである。
【0028】
前記で例示した任意の半導体結晶組成には、必要に応じて微量のドープ物質(故意に添加する不純物の意味)として例えばAl、Mn、Cu、Zn、Ag、Cl、Ce、Eu、Tb、Er、Tm等の元素を加えても構わない。かかるドープ物質の添加により半導体結晶の発光強度や発光波長等の特性が実用上好ましく改善される場合があり、特にZnSに対してMnやCu等の遷移金属元素、TbやEu等のランタノイド元素をドープした半導体結晶組成は、可視領域での発光能の点で前記のコア結晶組成として非常に好ましい。
【0029】
[ポリアルキレングリコール残基]
本発明の半導体超微粒子は、末端にアミノ基を結合した前記の連結有機残基以外の有機成分として、ポリアルキレングリコール残基を結合せしめると、水溶性並びに基質特異的親和性の向上の点で優れた性質を発揮する場合がある。
ここで言うポリアルキレングリコール残基とは、下記一般式(4)で表される重合体である。
【0030】
【化7】
−(R1O)p−R2 (4)
(但し一般式(4)において、R1は炭素数2〜6のアルキレン基を、R2は水素原子、炭素数1〜7のアルキル基、及び炭素数10以下のアリール基からなる群から任意に選択される構造を、pは50以下の自然数をそれぞれ表す。)
一般式(4)におけるR1の具体例としては、エチレン基、n−プロピレン基、イソプロピレン基、n−ブチレン基、イソブチレン基、n−ペンチレン基、シクロペンチレン基、n−ヘキシレン基、シクロヘキシレン基等が挙げられ、水溶性の点で好ましくはエチレン基、n−プロピレン基、イソプロピレン基、n−ブチレン基等の炭素数2〜4のアルキレン基が、更に好ましくはエチレン基、n−プロピレン基、イソプロピレン基等の炭素数2又は3のアルキレン基が、最も好ましくはエチレン基が使用される。一般式(4)において、1残基中に複数種のR1が混在していても構わず、この場合の共重合順序(シークエンス)にも制限はない。
【0031】
一般式(4)におけるR2に使用されるアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、ベンジル基等が挙げられ、水溶性の点で好ましくはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基等の炭素数3以下のアルキル基が、更に好ましくはメチル基又はエチル基が、最も好ましくはメチル基が使用される。該R2に使用されるアリール基の具体例としては、フェニル基、トルイル基(モノメチルフェニル基)、ジメチルフェニル基、エチルフェニル基、イソプロピルフェニル基、4−tert−ブチルフェニル基、ピリジル基、モノメチルピリジル基、ジメチルピリジル基等が挙げられ、水溶性の点で好ましくはフェニル基あるいはピリジル基が使用される。水溶性の点で水素原子もR2として好適に使用されるが、この場合末端の水酸基を形成し水素結合におけるプロトン供与体となるので、ペプチド、タンパク質、DNAやRNA等の核酸類、あるいは糖質等の水素結合形成性の生体物質等との非特異的吸着が増大する場合があり、本発明の半導体超微粒子の基質特異的親和性が低下する場合がある。
【0032】
一般式(4)における自然数pは、好ましくは40以下、より好ましくは30以下、更に好ましくは20以下、最も好ましくは10以下である。
一般式(4)の特に好ましい構造として、トリエチレングリコール残基(R1がエチレン基、p=3)が挙げられ、更に好ましいのはR2がメチル基又はエチル基であるトリエチレングリコールモノアルキルエーテル残基であり、最も好ましいのはR2がメチル基であるトリエチレングリコールモノメチルエーテル残基(以下MTEG残基と略記)である。
【0033】
かかるポリアルキレングリコール残基が半導体結晶表面に結合する様式に制限はなく、前記の連結有機残基が半導体結晶に結合する様式に関する記述がそのまま適用される。即ち、例えばポリアルキレングリコール残基の片方の末端に半導体結晶の含有元素に対する配位能力を有する前記例示の官能基を結合することによって行われる。これらの官能基のうち好適に用いられるのはメルカプト基とホスフィンオキシド基であり、特にメルカプト基は最適である。
【0034】
本発明の半導体超微粒子は、複数種のポリアルキレングリコール残基を結合していても構わない。
本発明においてポリアルキレングリコール残基は、ω−メルカプト脂肪酸残基を介して特に好ましく半導体結晶表面に結合される。ここで言うω−メルカプト脂肪酸の概念と具体例は、前記のω−メルカプト脂肪酸アミドアミンを得るアミド化反応に使用されるものの場合と同一である。
【0035】
ポリアルキレングリコール残基とω−メルカプト脂肪酸残基との結合様式には制限はないが、通常、エステル結合、アミド結合、あるいは炭素−炭素単結合のいずれかとする。即ち、エステル結合とする場合、前記一般式(4)における左端R1の炭素原子とω−メルカプト脂肪酸残基におけるカルボニル基の炭素原子とが例えば1つの酸素原子を介して結合する様式が、あるいはアミド結合とする場合は同様に1つの窒素原子を介して結合する様式等が例示される。かかるアミド結合には1級アミドと2級アミドの両者が可能である。
【0036】
配位子として好ましく使用されるポリアルキレングリコール残基とω−メルカプト脂肪酸残基とが結合した分子構造としては、ω−メルカプト脂肪酸のトリエチレングリコールエステル類が例示される。特に好ましい具体的化合物としては、下記式(5)の11−メルカプトウンデカン酸MTEGエステルが例示される。
【0037】
【化8】
ω−メルカプト脂肪酸のエステル類は、例えば、3−メルカプトプロパン酸や11−メルカプトウンデカン酸等のω−メルカプト脂肪酸と過剰当量のポリアルキレングリコールとを硫酸やp−トルエンスルホン酸等の酸触媒存在下脱水エステル化させる方法(必要に応じ加熱や減圧脱水を施し平衡反応を加速する)、該ω−メルカプト脂肪酸のメチルエステルやエチルエステル等の低級アルキルエステルと過剰当量のポリアルキレングリコールとを硫酸やp−トルエンスルホン酸等の強酸やルイス酸等の触媒存在下エステル交換反応させる方法(必要に応じ加熱や減圧を施し平衡反応を加速する)、該ω−メルカプト脂肪酸を相当する酸塩化物や酸無水物等の活性種に変換し次いで塩基存在下ポリアルキレングリコールと縮合反応させる方法等により合成される。
【0038】
本発明の半導体超微粒子におけるポリアルキレングリコール残基の含有量は、通常、全有機成分における重量百分率として0〜99%、半導体超微粒子の基質特異的親和性や水溶性の制御の点で好ましくは3〜90%、更に好ましくは5〜80%、最も好ましくは10〜70%とする。かかる重量百分率は、半導体超微粒子の元素分析、熱重量分析(TG)、あるいは核磁気共鳴スペクトル(NMR)や赤外吸収スペクトル(IR)等のスペクトル測定を組み合わせて決定される。
【0039】
[補助的配位子]
本発明の半導体結晶超微粒子は、凝集等の好ましくない作用を抑制して安定化させる目的で、前記の末端にアミノ基を結合した連結有機残基やポリアルキレングリコール残基以外の構造を、補助的配位子としてその表面に有していても構わない。かかる補助的配位子を以下例示する。
(a)硫黄含有化合物・・・メルカプトエタン、1−メルカプト−n−プロパン、1−メルカプト−n−ブタン、1−メルカプト−n−ヘキサン、メルカプトシクロヘキサン、1−メルカプト−n−オクタン、1−メルカプト−n−デカン等のメルカプトアルカン類、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト基を有するアルコキシシラン類、チオフェノール、4−メチルチオフェノール、4−tert−ブチルチオフェノール等のチオフェノール誘導体、ジメチルスルフィド、ジエチルスルフィド、ジブチルスルフィド、ジヘキシルスルフィド、ジオクチルスルフィド、ジデシルスルフィド等のジアルキルスルフィド類、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド、ジブチルスルホキシド、ジヘキシルスルホキシド、ジオクチルスルホキシド、ジデシルスルホキシド等のジアルキルスルホキシド類、ジメチルジスルフィド、ジエチルジスルフィド、ジブチルジスルフィド、ジヘキシルジスルフィド、ジオクチルジスルフィド、ジデシルジスルフィド等のジアルキルジスルフィド類、チオ尿素、チオアセタミド等のチオカルボニル基を有する化合物、チオフェン等の硫黄含有芳香族化合物等。
(b)リン含有化合物・・・トリエチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリヘキシルホスフィン、トリオクチルホスフィン、トリデシルホスフィン等のトリアルキルホスフィン類、トリエチルホスフィンオキシド、トリブチルホスフィンオキシド、トリヘキシルホスフィンオキシド、トリオクチルホスフィンオキシド、トリデシルホスフィンオキシド等のトリアルキルホスフィンオキシド類、トリフェニルホスフィンやトリフェニルホスフィンオキシド等の芳香族ホスフィンあるいは芳香族ホスフィンオキシド類等。
(c)窒素含有化合物・・・ピリジンやキノリン等の窒素含有芳香族化合物、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリヘキシルアミン、トリオクチルアミン、トリデシルアミン、トリフェニルアミン、メチルジフェニルアミン、ジエチルフェニルアミン、トリベンジルアミン等の3級アミン類、ジエチルアミン、ジブチルアミン、ジヘキシルアミン、ジオクチルアミン、ジデシルアミン、ジフェニルアミン、ジベンジルアミン等の2級アミン類、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ドデシルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミン、フェニルアミン、ベンジルアミン等の1級アミン類、3−アミノプロピルトリエトキシシラン等のアミノ基を有するアルコキシシラン類、ニトリロ三酢酸トリエチルエステル等のアミノ基を有するカルボン酸エステル類等。
【0040】
これら例示した補助的配位子のうち好ましいのは、メルカプトエタン、1−メルカプト−n−プロパン、1−メルカプト−n−ブタン、1−メルカプト−n−ヘキサン、メルカプトシクロヘキサン等の炭素数6以下のメルカプトアルカン類、チオフェノール、4−メチルチオフェノール、4−tert−ブチルチオフェノール等のチオフェノール誘導体、ジメチルスルフィド、ジエチルスルフィド、ジブチルスルフィド等の総炭素数8以下のジアルキルスルフィド類、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド、ジブチルスルホキシド等の総炭素数8以下のジアルキルスルホキシド類等の硫黄含有化合物、トリブチルホスフィン、トリヘキシルホスフィン、トリオクチルホスフィン等の総炭素数24以下のトリアルキルホスフィン類、トリエチルホスフィンオキシド、トリブチルホスフィンオキシド、トリヘキシルホスフィンオキシド、トリオクチルホスフィンオキシド等の総炭素数24以下のトリアルキルホスフィンオキシド類、トリフェニルホスフィンやトリフェニルホスフィンオキシド等の芳香族ホスフィンあるいは芳香族ホスフィンオキシド類等のリン含有化合物、及びピリジン等の窒素含有芳香族化合物であり、中でもメルカプトエタン、1−メルカプト−n−ブタン等の炭素数4以下のメルカプトアルカン類、チオフェノール、4−メチルチオフェノール、4−tert−ブチルチオフェノール等のチオフェノール誘導体、ジメチルスルフィド、ジエチルスルフィド、ジブチルスルフィド等の総炭素数8以下のジアルキルスルフィド類、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド、ジブチルスルホキシド等の総炭素数8以下のジアルキルスルホキシド類等の硫黄含有化合物、トリブチルホスフィン、トリヘキシルホスフィン等の総炭素数18以下のトリアルキルホスフィン類、トリエチルホスフィンオキシド、トリブチルホスフィンオキシド、トリヘキシルホスフィンオキシド等の総炭素数18以下のトリアルキルホスフィンオキシド類、トリフェニルホスフィンやトリフェニルホスフィンオキシド等の芳香族ホスフィンあるいは芳香族ホスフィンオキシド類等のリン含有化合物が更に好適である。
【0041】
[半導体結晶の製造方法]
従来行われている下記の半導体結晶の製造方法等、任意の方法を使用して構わない。
(a)分子ビームエピタキシー法あるいはCVD法等の高真空プロセス。この方法により組成が高度に制御された高純度の半導体超微粒子が得られるが、ホスフィンやアルシン等の有毒気体を原料とする場合があり、且つ高価な製造装置を要するので生産性の点で産業上の利用に制限がある。
(b)原料水溶液を非極性有機溶媒(例えばn−ヘプタン、n−オクタン、イソオクタン等のアルカン類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素等)中の逆ミセルとして存在させ該逆ミセル相中にて結晶成長させる方法(以下、逆ミセル法と呼ぶ)であり、例えばB.S.Zouら;Int.J.Quant.Chem.,72巻,439(1999)に報告されている方法である。汎用的な反応釜において公知の逆ミセル安定化技術が利用でき、しかも水の沸点を超えない比較的低温で行われるため工業生産に適した方法である。逆ミセル法で合成された半導体結晶は、逆ミセルを構成する溶媒を留去する方法、あるいはメルカプト基やホスフィンオキシド基等の強配位性官能基を有する有機物(例えばチオフェノールやn−オクタンチオール等のメルカプト基を含有する化合物、トリブチルホスフィンオキシドやトリオクチルホスフィンオキシド等のホスフィンオキシド類等)を逆ミセルに添加して該半導体結晶表面に配位せしめこれを沈殿させる方法等、任意の方法で単離精製可能である。
(c)熱分解性原料を高温の液相有機媒体に注入して結晶成長させる方法(以下、ホットソープ法と呼ぶ)であり、例えばX.Pengら;J.Am.Chem.Soc.,119巻,7019頁(1997)、あるいはM.A.Hinesら;J.Phys.Chem.B,102巻,3655頁(1998)に報告されている方法である。逆ミセル法に比べて粒径分布と純度に優れた半導体結晶が得られ、生成物は有機溶剤に通常可溶である特徴がある。ホットソープ法における液相での結晶成長の過程の反応速度を望ましく制御する目的で、半導体構成元素に適切な配位力のある配位性有機化合物が液相成分として選択される。かかる配位性有機化合物の例としては、トリブチルホスフィン、トリヘキシルホスフィン、トリオクチルホスフィン等のトリアルキルホスフィン類、トリブチルホスフィンオキシド、トリヘキシルホスフィンオキシド、トリオクチルホスフィンオキシド、トリデシルホスフィンオキシド等のトリアルキルホスフィンオキシド類、オクチルアミン、デシルアミン、ドデシルアミン、テトラデシルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミン等のω−アミノアルカン類、ジメチルスルホキシドやジブチルスルホキシド等のジアルキルスルホキシド類等が挙げられる。これらのうち、トリブチルホスフィンオキシドやトリオクチルホスフィンオキシド等のトリアルキルホスフィンオキシド類やドデシルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミン等の炭素数12以上のω−アミノアルカン類等が好適であり、中でもトリオクチルホスフィンオキシド等のトリアルキルホスフィンオキシド類、及びヘキサデシルアミン等の炭素数16以上のω−アミノアルカン類は最適である。
(d)前記のホットソープ法と類似の半導体結晶成長を伴う溶液反応であるが、酸塩基反応を駆動力として比較的低い温度で行う方法が古くから知られている(例えばP.A.Jackson;J.Cryst.Growth,3−4巻,395頁(1968)等)。最近ではD.Diazら;J.Phys.Chem.B,103巻,9854頁(1999)には、カドミウム(II)のカルボン酸塩と硫化ナトリウムとを原料としジメチルスルホキシド(DMSO)を溶媒とした硫化カドミウム(CdS)ナノ結晶の合成が例示される。また、無機蛍光体産業において「共沈法」として古くから行われている水溶液あるいは含水溶液中で半導体結晶を析出せしめる方法もこの範疇に該当する。
【0042】
前記(b)〜(d)に例示した好ましい液相製造方法において、一定容量の反応器中に一定量の原料を仕込む回分(バッチ)法、あるいは管状反応器中に液相を所定の速度で流して一定の反応滞留時間を確保しながら連続的に原料を供給する流通法のいずれにも適用可能である。反応系は、乾燥アルゴン等の乾燥希ガスや乾燥窒素等の不活性気体雰囲気下とするのが、大気の混入による熱酸化や加水分解を防ぐ目的で好ましい。いずれの場合も、生成する超微粒子の粒径は、例えば少量の反応液を適宜抜き出して吸収スペクトルや発光スペクトルを測定することで監視することが可能である。
【0043】
かかる液相製造方法に使用可能な半導体原料物質としては、周期表第2〜15族から選ばれる陽性元素を含有する物質と、周期表第15〜17族から選ばれる陰性元素を含有する物質が挙げられる。なお周期表第15族元素は、例えば理化学辞典(第4版、岩波書店、1987年)に記載の硫化ビスマスやテルル化ビスマスのように3価の陽性元素としても半導体を構成することが知られている。
【0044】
半導体原料物質が複数種ある場合、これらをあらかじめ混合しておいても良く、あるいはこれらをそれぞれ単独で反応液相に注入しても良い。これら原料は、適当な希釈溶媒を用いて溶液にして使用しても構わない。
半導体原料物質となる陽性元素含有物質の例としては、マグネシウム、チタン、バナジウム、タンタル、クロム、モリブデン、タングステン、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、カドミウム、水銀、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、インジウム、錫、鉛、アンチモン、ビスマス等の単体、ジエチルマグネシウムやジ−n−ブチルマグネシウム等の周期表第2族元素のジアルキル化物、塩化メチルマグネシウム、臭化メチルマグネシウム、ヨウ化メチルマグネシウム、塩化エチニルマグネシウム等の周期表第2族元素のアルキルハロゲン化物、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、ヨウ化マグネシウム、塩化カルシウム、臭化カルシウム、ヨウ化カルシウム等の周期表第2族元素のジハロゲン化物、硝酸マグネシウム、酢酸マグネシウム、過塩素酸マグネシウム、マグネシウムテトラフルオロボレート[Mg(BF4)2]、マグネシウムヘキサフルオロホスフェート[Mg(PF6)2]、硝酸カルシウム、酢酸カルシウム、過塩素酸カルシウム、カルシウムテトラフルオロボレート[Ca(BF4)2]、カルシウムヘキサフルオロホスフェート[Ca(PF6)2]等の周期表第2族元素の塩類、四塩化チタン(IV)、四臭化チタン(IV)、四ヨウ化チタン(IV)等の周期表第4族元素のハロゲン化物、二塩化バナジウム(II)、四塩化バナジウム(IV)、二臭化バナジウム(II)、四臭化バナジウム(IV)、二ヨウ化バナジウム(II)、四ヨウ化バナジウム(IV)、五塩化タンタル(V)、五臭化タンタル(V)、五ヨウ化タンタル(V)等の周期表第5族元素のハロゲン化物、三臭化クロム(III)、三ヨウ化クロム(III)、四塩化モリブデン(IV)、四臭化モリブデン(IV)、四ヨウ化モリブデン(IV)、四塩化タングステン(IV)、四臭化タングステン(IV)等の周期表第6族元素のハロゲン化物、二塩化マンガン(II)、二臭化マンガン(II)、二ヨウ化マンガン(II)等の周期表第7族元素のハロゲン化物、二塩化鉄(II)、三塩化鉄(III)、二臭化鉄(II)、三臭化鉄(III)、二ヨウ化鉄(II)、三ヨウ化鉄(III)等の周期表第8族元素のハロゲン化物、二塩化コバルト(II)、二臭化コバルト(II)、二ヨウ化コバルト(II)等の周期表第9族元素のハロゲン化物、二塩化ニッケル(II)、二臭化ニッケル(II)、二ヨウ化ニッケル(II)等の周期表第10族元素のハロゲン化物、ヨウ化銅(I)等の周期表第11族元素のハロゲン化物、ジメチル亜鉛、ジエチル亜鉛、ジ−n−プロピル亜鉛、ジイソプロピル亜鉛、ジ−n−ブチル亜鉛、ジイソブチル亜鉛、ジ−n−ヘキシル亜鉛、ジシクロヘキシル亜鉛、ジメチルカドミウム、ジエチルカドミウム、ジメチル水銀(II)、ジエチル水銀(II)、ジベンジル水銀(II)等の周期表第12族元素のジアルキル化物、塩化メチル亜鉛、臭化メチル亜鉛、ヨウ化メチル亜鉛、ヨウ化エチル亜鉛、塩化メチルカドミウム、塩化メチル水銀(II)等の周期表第12族元素のアルキルハロゲン化物、二塩化亜鉛、二臭化亜鉛、二ヨウ化亜鉛、二塩化カドミウム、二臭化カドミウム、二ヨウ化カドミウム、二塩化水銀(II)、塩化ヨウ化亜鉛、塩化ヨウ化カドミウム、塩化ヨウ化水銀(II)、臭化ヨウ化亜鉛、臭化ヨウ化カドミウム、臭化ヨウ化水銀(II)等の周期表第12族元素のジハロゲン化物、硝酸亜鉛、酢酸亜鉛、過塩素酸亜鉛、亜鉛テトラフルオロボレート[Zn(BF4)2]、亜鉛ヘキサフルオロホスフェート[Zn(PF6)2]、硝酸カドミウム、酢酸カドミウム、過塩素酸カドミウム、カドミウムテトラフルオロボレート[Cd(BF4)2]、カドミウムヘキサフルオロホスフェート[Cd(PF6)2]、硝酸水銀(II)、酢酸水銀(II)、過塩素酸水銀(II)、水銀(II)テトラフルオロボレート[Hg(BF4)2]、水銀(II)ヘキサフルオロホスフェート[Hg(PF6)2]等の周期表第12族元素の塩類、トリメチルホウ素、トリ−n−プロピルホウ素、トリイソプロピルホウ素、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリ−n−ブチルアルミニウム、トリ−n−ヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、トリ−n−ブチルガリウム(III)、トリメチルインジウム(III)、トリエチルインジウム(III)、トリ−n−ブチルインジウム(III)等の周期表第13族元素のトリアルキル化物、塩化ジメチルアルミニウム、塩化ジエチルアルミニウム、塩化ジ−n−ブチルアルミニウム、臭化ジエチルアルミニウム、ヨウ化ジエチルアルミニウム、塩化ジ−n−ブチルガリウム(III)、塩化ジ−n−ブチルインジウム(III)等の周期表第13族元素のジアルキルモノハロゲン化物、二塩化メチルアルミニウム、二塩化エチルアルミニウム、二臭化エチルアルミニウム、二ヨウ化エチルアルミニウム、二塩化n−ブチルアルミニウム、二塩化n−ブチルガリウム(III)、二塩化n−ブチルインジウム(III)等の周期表第13族元素のモノアルキルジハロゲン化物、三塩化ホウ素、三臭化ホウ素、三ヨウ化ホウ素、三塩化アルミニウム、三臭化アルミニウム、三ヨウ化アルミニウム、三塩化ガリウム(III)、三臭化ガリウム(III)、三ヨウ化ガリウム(III)、三塩化インジウム(III)、三臭化インジウム(III)、三ヨウ化インジウム(III)、二塩化臭化ガリウム(III)、二塩化ヨウ化ガリウム(III)、塩化二ヨウ化ガリウム(III)、二塩化ヨウ化インジウム(III)等の周期表第13族元素のトリハロゲン化物、硝酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、過塩素酸アルミニウム、アルミニウムテトラフルオロボレート[Al(BF4)2]、アルミニウムヘキサフルオロホスフェート[Al(PF6)2]硝酸ガリウム(III)、酢酸ガリウム(III)、過塩素酸ガリウム(III)、ガリウム(III)テトラフルオロボレート[Ga(BF4)2]、ガリウム(III)ヘキサフルオロホスフェート[Ga(PF6)2]、硝酸インジウム(III)、酢酸インジウム(III)、過塩素酸インジウム(III)、インジウム(III)テトラフルオロボレート[In(BF4)2]、インジウム(III)ヘキサフルオロホスフェート[In(PF6)2]等の周期表第13族元素の塩類、四塩化ゲルマニウム(IV)、四臭化ゲルマニウム(IV)、四ヨウ化ゲルマニウム(IV)、二塩化錫(II)、四塩化錫(IV)、二臭化錫(II)、四臭化錫(IV)、二ヨウ化錫(II)、四臭化錫(IV)、二塩化二ヨウ化錫(IV)、四ヨウ化錫(IV)、二塩化鉛(II)、二臭化鉛(II)、二ヨウ化鉛(II)等の周期表第14族元素のハロゲン化物、トリメチルアンチモン(III)、トリエチルアンチモン(III)、トリ−n−ブチルアンチモン(III)、トリメチルビスマス(III)、トリエチルビスマス(III)、トリ−n−ブチルビスマス(III)等の周期表第15族元素のトリアルキル化物、二塩化メチルアンチモン(III)、二臭化メチルアンチモン(III)、二ヨウ化メチルアンチモン(III)、二ヨウ化エチルアンチモン(III)、二塩化メチルビスマス(III)、二ヨウ化エチルビスマス(III)等の周期表第15族元素のモノアルキルジハロゲン化物、三塩化砒素(III)、三臭化砒素(III)、三ヨウ化砒素(III)、三塩化アンチモン(III)、三臭化アンチモン(III)、三ヨウ化アンチモン(III)、三塩化ビスマス(III)、三臭化ビスマス(III)、三ヨウ化ビスマス(III)等の周期表第15族元素のトリハロゲン化物等が挙げられる。
【0045】
これらのうち、特に前記のホットソープ法の陽性元素含有原料に好適なのは、ジエチルマグネシウムやジ−n−ブチルマグネシウム等の周期表第2族元素のジアルキル化物、塩化メチルマグネシウム、臭化メチルマグネシウム、ヨウ化メチルマグネシウム等の周期表第2族元素のアルキルハロゲン化物、ジメチル亜鉛、ジエチル亜鉛、ジ−n−プロピル亜鉛、ジイソプロピル亜鉛、ジ−n−ブチル亜鉛、ジイソブチル亜鉛、ジ−n−ヘキシル亜鉛、ジメチルカドミウム、ジエチルカドミウム等の周期表第12族元素のジアルキル化物、塩化メチル亜鉛、臭化メチル亜鉛、ヨウ化メチル亜鉛、ヨウ化エチル亜鉛、塩化メチルカドミウム等の周期表第12族元素のアルキルハロゲン化物、三ヨウ化アルミニウム、三塩化ガリウム(III)、三臭化ガリウム(III)、三ヨウ化ガリウム(III)、三塩化インジウム(III)、三臭化インジウム(III)、三ヨウ化インジウム(III)等の周期表第13族元素のトリハロゲン化物等であり、中でもジメチル亜鉛、ジエチル亜鉛、ジ−n−プロピル亜鉛、ジイソプロピル亜鉛、ジ−n−ブチル亜鉛、ジメチルカドミウム、ジエチルカドミウム等の周期表第12族元素のジアルキル化物、三塩化ガリウム(III)、三塩化インジウム(III)等の周期表第13族元素のトリハロゲン化物等が最適である。
【0046】
一方、前記の逆ミセル法の陽性元素含有原料に好適なのは、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、ヨウ化マグネシウム、塩化カルシウム、臭化カルシウム、ヨウ化カルシウム等の周期表第2族元素のジハロゲン化物、硝酸マグネシウム、酢酸マグネシウム、過塩素酸マグネシウム、マグネシウムテトラフルオロボレート[Mg(BF4)2]、マグネシウムヘキサフルオロホスフェート[Mg(PF6)2]、硝酸カルシウム、酢酸カルシウム、過塩素酸カルシウム、カルシウムテトラフルオロボレート[Ca(BF4)2]、カルシウムヘキサフルオロホスフェート[Ca(PF6)2]等の周期表第2族元素の塩類、二塩化亜鉛、二臭化亜鉛、二ヨウ化亜鉛、二塩化カドミウム、二臭化カドミウム、二ヨウ化カドミウム、二塩化水銀(II)、塩化ヨウ化亜鉛、塩化ヨウ化カドミウム、塩化ヨウ化水銀(II)、臭化ヨウ化亜鉛、臭化ヨウ化カドミウム、臭化ヨウ化水銀(II)等の周期表第12族元素のジハロゲン化物、硝酸亜鉛、酢酸亜鉛、過塩素酸亜鉛、亜鉛テトラフルオロボレート[Zn(BF4)2]、亜鉛ヘキサフルオロホスフェート[Zn(PF6)2]、硝酸カドミウム、酢酸カドミウム、過塩素酸カドミウム、カドミウムテトラフルオロボレート[Cd(BF4)2]、カドミウムヘキサフルオロホスフェート[Cd(PF6)2]、硝酸水銀(II)、酢酸水銀(II)、過塩素酸水銀(II)、水銀(II)テトラフルオロボレート[Hg(BF4)2]、水銀(II)ヘキサフルオロホスフェート[Hg(PF6)2]等の周期表第12族元素の塩類、三塩化ホウ素、三臭化ホウ素、三ヨウ化ホウ素、三塩化アルミニウム、三臭化アルミニウム、三ヨウ化アルミニウム、三塩化ガリウム(III)、三臭化ガリウム(III)、三ヨウ化ガリウム(III)、三塩化インジウム(III)、三臭化インジウム(III)、三ヨウ化インジウム(III)、二塩化臭化ガリウム(III)、二塩化ヨウ化ガリウム(III)、塩化二ヨウ化ガリウム(III)、二塩化ヨウ化インジウム(III)等の周期表第13族元素のトリハロゲン化物、硝酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、過塩素酸アルミニウム、アルミニウムテトラフルオロボレート[Al(BF4)2]、アルミニウムヘキサフルオロホスフェート[Al(PF6)2]硝酸ガリウム(III)、酢酸ガリウム(III)、過塩素酸ガリウム(III)、ガリウム(III)テトラフルオロボレート[Ga(BF4)2]、ガリウム(III)ヘキサフルオロホスフェート[Ga(PF6)2]、硝酸インジウム(III)、酢酸インジウム(III)、過塩素酸インジウム(III)、インジウム(III)テトラフルオロボレート[In(BF4)2]、インジウム(III)ヘキサフルオロホスフェート[In(PF6)2]等の周期表第13族元素の塩類等であり、中でも塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、塩化カルシウム、臭化カルシウム等の周期表第2族元素のジハロゲン化物、硝酸マグネシウム、酢酸マグネシウム、マグネシウムテトラフルオロボレート[Mg(BF4)2]、硝酸カルシウム、酢酸カルシウム、カルシウムテトラフルオロボレート[Ca(BF4)2]等の周期表第2族元素の塩類、二塩化亜鉛、二臭化亜鉛、二塩化カドミウム、二臭化カドミウム、二塩化水銀(II)等の周期表第12族元素のジハロゲン化物、硝酸亜鉛、酢酸亜鉛、過塩素酸亜鉛、亜鉛テトラフルオロボレート[Zn(BF4)2]、硝酸カドミウム、酢酸カドミウム、過塩素酸カドミウム、カドミウムテトラフルオロボレート[Cd(BF4)2]、硝酸水銀(II)、酢酸水銀(II)、過塩素酸水銀(II)、水銀(II)テトラフルオロボレート[Hg(BF4)2]等の周期表第12族元素の塩類、三塩化ホウ素、三臭化ホウ素、三塩化アルミニウム、三臭化アルミニウム、三塩化ガリウム(III)、三臭化ガリウム(III)、三塩化インジウム(III)、三臭化インジウム(III)等の周期表第13族元素のトリハロゲン化物、硝酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、アルミニウムテトラフルオロボレート[Al(BF4)2]、硝酸ガリウム(III)、酢酸ガリウム(III)、過塩素酸ガリウム(III)、ガリウム(III)テトラフルオロボレート[Ga(BF4)2]、硝酸インジウム(III)、酢酸インジウム(III)、過塩素酸インジウム(III)、インジウム(III)テトラフルオロボレート[In(BF4)2]等の周期表第13族元素の塩類は更に好適であり、塩化マグネシウム、塩化カルシウム等の周期表第2族元素のジハロゲン化物、硝酸マグネシウム、酢酸マグネシウム、硝酸カルシウム、酢酸カルシウム等の周期表第2族元素の塩類、二塩化亜鉛、二塩化カドミウム、二塩化水銀(II)等の周期表第12族元素のジハロゲン化物、硝酸亜鉛、酢酸亜鉛、亜鉛テトラフルオロボレート[Zn(BF4)2]、硝酸カドミウム、酢酸カドミウム、カドミウムテトラフルオロボレート[Cd(BF4)2]、硝酸水銀(II)等の周期表第12族元素の塩類、三塩化ホウ素、三塩化アルミニウム、三塩化ガリウム(III)、三塩化インジウム(III)等の周期表第13族元素のトリハロゲン化物、硝酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、硝酸ガリウム(III)、酢酸ガリウム(III)、ガリウム(III)テトラフルオロボレート[Ga(BF4)2]、硝酸インジウム(III)、酢酸インジウム(III)、インジウム(III)テトラフルオロボレート[In(BF4)2]等の周期表第13族元素の塩類は最も好適である。
【0047】
なお、四塩化ゲルマニウム(IV)、四臭化ゲルマニウム(IV)、四ヨウ化ゲルマニウム(IV)、二塩化錫(II)、四塩化錫(IV)、二臭化錫(II)、四臭化錫(IV)、二ヨウ化錫(II)、四臭化錫(IV)、二塩化二ヨウ化錫(IV)、四ヨウ化錫(IV)、二塩化鉛(II)、二臭化鉛(II)、二ヨウ化鉛(II)等の周期表第14族元素のハロゲン化物は、単独でゲルマニウムや錫等の周期表第14族元素の単体半導体の超微粒子の原料として使用可能な場合がある。
【0048】
半導体原料物質となる陰性元素含有物質の例としては、窒素、リン、砒素、アンチモン、ビスマス、酸素、硫黄、セレン、テルル、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等の周期表第15〜17族元素の単体、アンモニア、ホスフィン(PH3)、アルシン(AsH3)、スチビン(SbH3)等の周期表第15族元素の水素化物、トリス(トリメチルシリル)アミン、トリス(トリメチルシリル)ホスフィン、トリス(トリメチルシリル)アルシン等の周期表第15族元素のシリル化物、硫化水素、セレン化水素、テルル化水素等の周期表第16族元素の水素化物、ビス(トリメチルシリル)スルフィド(別称ヘキサメチルジシラチアン:Hexamethyldisilathiane)、ビス(トリメチルシリル)セレニド等の周期表第16族元素のシリル化物、硫化ナトリウム、セレン化ナトリウム等の周期表第16族元素のアルカリ金属塩、トリブチルホスフィンスルフィド、トリヘキシルホスフィンスルフィド、トリオクチルホスフィンスルフィド、トリブチルホスフィンセレニド、トリヘキシルホスフィンセレニド、トリオクチルホスフィンセレニド等のトリアルキルホスフィンカルコゲニド類、フッ化水素、塩化水素、臭化水素、ヨウ化水素等の周期表第17族元素の水素化物、トリメチルシリルクロリド、トリメチルシリルブロミド、トリメチルシリルヨージド等の周期表第17族元素のシリル化物が挙げられる。これらのうち、反応性や化合物の安定性・操作性の点で、リン、砒素、アンチモン、ビスマス、硫黄、セレン、テルル、ヨウ素等の周期表第15〜17族元素の単体、トリス(トリメチルシリル)ホスフィン、トリス(トリメチルシリル)アルシン等の周期表第15族元素のシリル化物、硫化水素、セレン化水素、テルル化水素等の周期表第16族元素の水素化物、ビス(トリメチルシリル)スルフィド、ビス(トリメチルシリル)セレニド等の周期表第16族元素のシリル化物、硫化ナトリウム、セレン化ナトリウム等の周期表第16族元素のアルカリ金属塩、トリブチルホスフィンスルフィド、トリヘキシルホスフィンスルフィド、トリオクチルホスフィンスルフィド、トリブチルホスフィンセレニド、トリヘキシルホスフィンセレニド、トリオクチルホスフィンセレニド等のトリアルキルホスフィンカルコゲニド類、トリメチルシリルクロリド、トリメチルシリルブロミド、トリメチルシリルヨージド等の周期表第17族元素のシリル化物等が好適に用いられ、中でもリン、砒素、アンチモン、硫黄、セレン等の周期表第15及び16族元素の単体、トリス(トリメチルシリル)ホスフィン、トリス(トリメチルシリル)アルシン等の周期表第15族元素のシリル化物、ビス(トリメチルシリル)スルフィド、ビス(トリメチルシリル)セレニド等の周期表第16族元素のシリル化物、硫化ナトリウム、セレン化ナトリウム等の周期表第16族元素のアルカリ金属塩、トリブチルホスフィンスルフィド、トリオクチルホスフィンスルフィド、トリブチルホスフィンセレニド、トリオクチルホスフィンセレニド等のトリアルキルホスフィンカルコゲニド類等が特に好適に用いられる。
【0049】
特に前記の逆ミセル法の陰性元素含有原料として特に好ましいのは、水溶性を有するもの、即ち、アンモニア、ホスフィン(PH3)、アルシン(AsH3)、スチビン(SbH3)等の周期表第15族元素の水素化物、硫化水素、セレン化水素、テルル化水素等の周期表第16族元素の水素化物、硫化ナトリウム、セレン化ナトリウム、硫化カリウム、セレン化カリウム、水硫化ナトリウム(NaHS)、水セレン化ナトリウム(NaHSe)等の周期表第16族元素のアルカリ金属塩、フッ化水素、塩化水素、臭化水素、ヨウ化水素等の周期表第17族元素の水素化物等が挙げられる。
【0050】
特に好ましい液相製造方法であるホットソープ法における前記原料化合物の反応液相への供給速度には制限はないが、生成する半導体結晶の粒径分布を狭くする場合には0.1〜60秒程度の短時間に所定量を注入することが好適な場合がある。また、原料溶液の注入後の適切な結晶成長反応時間(流通法の場合には滞留時間)は、半導体種や所望の粒径あるいは反応温度により変動するが、代表的な条件としては200〜350℃程度の反応温度で1分〜10時間程度である。
【0051】
かかるホットソープ法では半導体結晶の成長反応終了後、通常単離精製を行う。この方法としては、液相成分の濃縮、あるいは沈殿法が好適である。沈殿法の好ましい代表的な手順は以下の通りである。即ち、反応液の固化温度に至らない程度に冷却後トルエンやヘキサン等を添加して室温での固化性を抑制し、次いで半導体超微粒子の貧溶媒、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール等の低級アルコール類、あるいは水と混合して半導体超微粒子を析出せしめ、これを遠心分離やデカンテーション等の物理的な手段で分離する手順である。こうして得られる析出物をトルエンやヘキサン等に再度溶解し析出・分離の手順を繰り返すことで更に精製度を上げることが可能である。沈殿溶媒は混合溶媒としても構わない。
【0052】
[配位子交換による有機成分組成の制御]
前記に例示したような任意の製造方法で得られる半導体結晶に、前記の末端にアミノ基を結合した連結有機残基、ポリアルキレングリコール残基、あるいは補助的配位子を所望量導入する目的で、合成された半導体結晶表面での配位子交換反応を行うことが可能である。具体的には、例えば、前記のホットソープ法により得られるトリオクチルホスフィンオキシド等の配位性有機化合物を表面に有する半導体超微粒子に対して、前記の末端にアミノ基を結合した連結有機残基やポリアルキレングリコール残基を含有する配位子(以下、「機能配位子」と呼ぶ)を液相で接触させる配位子交換反応が可能である。この場合、必要に応じて後述するような溶剤を使用した液相としても良く、使用する機能配位子が反応条件において液体である場合には、それ自身を溶媒とし他の溶剤を添加しない反応形式も可能である。
【0053】
かかる配位子交換反応条件としては、例えば、X.Pengら;Angew.Chem.Int.Ed.Engl.,36巻,145頁(1997)に記載の方法に準じてメタノール等アルコール類中で行う方法、M.Bruchez Jr.ら;Science,281巻,2013頁(1998)に記載の方法に準じてジメチルスルホキシドとメタノール等アルコール類の混合溶媒中で行う方法、あるいはC.W.Warrenら;Science,281巻,2016頁(1998)に記載の方法に準じてクロロホルム等ハロゲン化溶剤中で行う方法等が挙げられる。また、前記のX.Pengら;J.Am.Chem.Soc.,119巻,7019頁(1997)に報告されているように、前記のホットソープ法により得られるトリオクチルホスフィンオキシド等の配位性有機化合物を表面に有する半導体超微粒子をピリジン等の弱配位性化合物(通常溶媒として大過剰量用いる)含む液相に分散して該配位性有機化合物を除去する方法も応用可能である。即ちピリジン等の弱配位性化合物中で配位性有機化合物を除去する第一工程、次いで、機能配位子を加える第二工程からなる二段階反応である。
【0054】
かかる配位子交換反応に用いられる溶剤に制限はないが、例えば、ピリジン、ルチジン、コリジン、あるいはキノリン等の含窒素芳香族化合物、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化アルキル類、ベンゼン、トルエン、キシレン、ナフタレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等の芳香族炭化水素類、n−ペンタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、n−オクタン、イソオクタン等のアルカン類、ジエチルエーテルやテトラヒドロフラン等の脂肪族エーテル類、アセトンやメチルエチルケトン等の脂肪族ケトン類、酢酸メチルや酢酸エチル等のエステル系溶剤、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、エチレングリコール等のアルコール類、フェノールやクレゾール等のフェノール類、及び水等の水酸基を有する化合物、ブチルアミン、ヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ドデシルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミン、フェニルアミン、アニリン等の炭素数20以下程度の1級アミン類、ジエチルアミン、ジブチルアミン、ジヘキシルアミン、ジオクチルアミン、ジデシルアミン、ジフェニルアミン、メチルフェニルアミン、ピロリジン、ピペリジン、モルホリン、メチルアニリン等の炭素数20以下程度の2級アミン類、トリエチルアミン、トリブチルアミン、エチルジイソプロピルアミン、トリヘキシルアミン、フェニルジメチルアミン、メチルジフェニルアミン、N−メチルピロリジン、N−メチルピペリジン、N−メチルモルホリン、ジメチルアニリン等の炭素数20以下程度の3級アミン類、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N−メチルピロリドン(NMP)等のアミド系非プロトン性溶剤、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類、あるいは水や二硫化炭素等の極性溶媒等が例示される。これらの溶剤は、半導体超微粒子やその生成物等の溶解度調整等の必要に応じて、任意の種類・組み合わせ・比において混合して使用して構わない。
【0055】
前記の配位子交換反応において、使用する各機能配位子の量を制御することにより、半導体結晶表面に所望量の各機能配位子を結合することが可能である。かかる機能配位子の結合量の制御により、本発明の半導体超微粒子の親水性、水溶性、あるいは基質特異的親和性を制御することが可能である。
前記の配位子交換反応は、通常−10〜250℃程度の温度範囲で行われ、有機物の熱劣化や交換反応の未完結を避けるため好ましくはこの温度範囲を0〜200℃程度、更に好ましくは10〜150℃程度、最も好ましくは20〜120℃程度とする。一方反応時間は原料や温度にもよるが、通常1分〜100時間、好ましくは5分〜70時間、更に好ましくは10分〜50時間、最も好ましくは10分〜30時間程度である。また、かかる配位子交換反応において、半導体超微粒子と機能配位子を反応液に加える順序に制限はない。
【0056】
かかる配位子交換反応は、酸化等の副反応を避けるため、窒素やアルゴン等の不活性気体雰囲気において行うのが望ましい。また、かかる配位子交換反応だけでなく超微粒子製造の後処理工程は、遮光条件が好ましい場合もある。
かかる配位子交換反応の後、製品を単離するには、濾過、沈殿と遠心分離の併用、蒸留、昇華等の任意の方法を使用して構わないが、特に有効なのは、半導体結晶の比重が通常の有機化合物より大きいことを利用した沈殿と遠心分離の併用である。遠心分離は、配位子交換反応の生成物を含有する溶液を、機能配位子を結合した本発明の半導体超微粒子の貧溶媒(例えばn−ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン等の炭化水素を含む有機溶剤)中に投入し、生成する沈殿を含む懸濁液を遠心分離して行われる。得られた沈殿は、デカンテーション等により上澄み液と分離し、必要に応じ溶媒洗浄や再溶解と再沈殿/遠心分離を繰り返して精製度を向上させることも可能である。遠心分離の回転数は、通常毎分100〜8000回転程度、好ましくは毎分300〜6000回転程度、更に好ましくは毎分500〜4000回転程度、最も好ましくは毎分700〜3000回転程度とし、温度は通常−10〜100℃程度、好ましくは0〜80℃程度、更に好ましくは10〜70℃程度、最も好ましくは20〜60℃程度の範囲で行う。また、かかる精製工程も、酸化等の副反応を避けるため、窒素やアルゴン等の不活性気体雰囲気において行うのが望ましい場合もある。
【0057】
[アミノ基への化学構造の結合]
本発明の半導体超微粒子が結合するアミノ基には、例えばアミド化反応やアルキル化反応等の該アミノ基の活性水素が置換される任意の反応により、所望の化学構造を結合可能である。特に好適な反応は、カルボキシル基とのアミド化反応であり、これにより、カルボキシル基を有する任意の化学構造、例えばタンパク質等の有用な生物学的物質を結合することができる。
【0058】
かかるアミド化反応は、カルボキシル基あるいはその誘導基(エステル、酸無水物、酸塩化物に代表される酸ハロゲン化物等)と、本発明の半導体超微粒子が結合するアミノ基の縮合により行われる。酸無水物や酸ハロゲン化物を用いる場合には塩基を共存させる。カルボン酸のメチルエステルやエチルエステル等のエステルを用いる場合には、生成するアルコールを除去するために加熱や減圧が有効である場合がある。カルボキシル基を直接アミド化する場合には、任意のアミド化試薬、縮合添加剤、あるいは活性エステル剤等のアミド化反応を促進する物質を、反応に共存させたりあらかじめ予備反応させておいても良い。アミド化試薬としては、例えばN,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(通称DCC)、N,N’−ジイソプロピルカルボジイミド、1−シクロヘキシル−3−(2−モルホリノエチル)カルボジイミドmetho−p−トルエンスルホナート(通称Morpho−CDI)、1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミドメチオジド、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(通称Water−solubleカルボジイミド)等のカルボジイミド類が代表的であり、中でも1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩は、含水系やアルコール性の反応系で好ましく用いられる。また、縮合添加剤として3,4−ジヒドロキシ−3−ヒドロキシ−4−オキソ−1,2,3−ベンゾトリアジン、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(通称HBT)、N−ヒドロキシ−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミド等が例示され、活性エステル剤としては、N,N’−ジスクシンイミジルカーボネート、N,N’−ジスクシンイミジルオキサレート、N−ヒドロキシフタルイミド、N−ヒドロキシスクシンイミド、等のイミジルエステルを与える化合物、p−ニトロフェニルトリフルオロアセテート等の電子吸引性基を結合したフェニルエステルを与える化合物、あるいはペンタクロロフェノール、ペンタフルオロフェノール、2,4,5−トリクロロフェノール等のハロフェノール類等が例示される。
【0059】
【実施例】
以下に実施例により本発明の具体的態様を更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、これらの実施例によって限定されるものではない。
なお、原料試薬は、特に記載がない限り、Aldrich社より供給されるものを精製を加えず使用した。但し、市販の溶剤を以下のような精製操作により精製溶媒とした。
【0060】
精製トルエン・・・濃硫酸、水、飽和重曹水、更に水の順序で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥次いで濾紙で濾過し、五酸化二リン(P2O5)を加えて大気圧にて蒸留した。
精製メタノール・・・硫酸カルシウムと水素化カルシウムで乾燥した後更に水素化ナトリウムを加え、ここから大気圧にて直接蒸留した。
【0061】
精製塩化メチレン・・・五酸化二リン(P2O5)で乾燥した後、ここから大気圧にて直接蒸留した。
[測定装置と条件等]
(1)核磁気共鳴(NMR)スペクトル:日本電子(株)製JNM−EX270型FT−NMR( 1H:270MHz,13C:67.8MHz)。溶媒は特に断らない限り重水素化クロロホルムを溶媒として使用し、テトラメチルシランを0ppm対照として23℃にて測定した。
(2)赤外吸収(IR)スペクトル:日本分光工業(株)製FT/IR−8000型FT−IR。23℃にて測定した。
(3)X線回折(XRD)スペクトル:リガク(株)製RINT1500(X線源:銅Kα線、波長1.5418Å)。23℃にて測定した。
(4)透過型電子顕微鏡(TEM)観察:日立製作所(株)製H−9000UHR型透過電子顕微鏡(加速電圧300kV、観察時の真空度約7.6×10-9Torr)にて行った。
(5)光励起発光(PL)スペクトル:日立製作所(株)製F−2500型分光蛍光光度計にて、スキャンスピード60nm/分、励起側スリット5nm、蛍光側スリット5nm、フォトマル電圧400Vの条件で、光路長1cmの石英製セルを用いて測定した。
【0062】
合成例1<CdSeナノ結晶の合成>
空冷式のリービッヒ還流管と反応温度調節のための熱電対を装着した無色透明のパイレックスガラス製3口フラスコにトリオクチルホスフィンオキシド(以下TOPOと略記;4g)を入れ、マグネチックスターラーで攪拌しながら乾燥アルゴンガス雰囲気で360℃に加熱した。別途、乾燥窒素雰囲気のグローブボックス内で、セレン(単体の黒色粉末;0.1g)をトリブチルホスフィン(以下TBPと略記;6.014g)に溶解した液体に更にジメチルカドミウム(Strem Chemical社;97%;0.216g)を混合溶解した原料溶液Aを、ゴム栓(Aldrich社から供給されるセプタム)で封をしアルミニウム箔ですき間なく包んで遮光したガラス瓶中に調製した。この原料溶液Aの一部(2.0mL)を、前記のTOPOの入ったフラスコに注射器で一気に注入し、この時点を反応の開始時刻とした。反応開始20分後に熱源を除去し約50℃に冷却された時点で精製トルエン(2mL)を注射器で加えて希釈し、更に前記の精製メタノール(10mL)を注入して不溶物を生じさせた。この不溶物を遠心分離(3000rpm)し、デカンテーションにより上澄み液を除去して分離し、室温にて約14時間真空乾燥して固形粉体を得た。
【0063】
この固形粉体のXRDスペクトルにおいて、Wurtzite型CdSe結晶の002面及び110面に帰属される回折ピークを観測したことからCdSeナノ結晶の生成を確認した。また、このCdSeナノ結晶の平均粒径は、TEM観察によれば約4nmであった。このCdSeナノ結晶は、精製トルエン溶液において、366nm波長の励起光を照射すると赤色の発光帯(ピーク波長595nm、半値幅43nm)を与えた。
【0064】
合成例2<ZnSシェルを有するCdSeナノ結晶の合成>
B.O.Dabbousiら;J.Phys.Chem.B,101巻,9463頁(1997)に記載の方法に準じて行った。これを以下説明する。
乾燥アルゴンガス雰囲気の褐色ガラス製の3口フラスコ中にTOPO(15g)を入れ、減圧下130〜150℃での溶融状態で約2時間攪拌した。この間、残留する空気や水分を置換する目的で、乾燥アルゴンガスにより大気圧に復圧する操作を数回行った。温度設定を100℃として約1時間後、合成例1で得たCdSeナノ結晶の固形粉体(0.094g)のトリオクチルホスフィン(1.5g、以下TOPと略記)溶液を加えて、CdSeナノ結晶を含む透明溶液を得た。これを100℃の減圧下で更に約80分間攪拌後、温度を180℃に設定して乾燥アルゴンガスで大気圧に復圧した。別途、乾燥窒素雰囲気のグローブボックス内で、ジエチル亜鉛の1N濃度n−ヘキサン溶液(1.34mL;1.34ミリモル)とビス(トリメチルシリル)スルフィド(0.239g;1.34ミリモル)とをTOP(9mL)に溶解した原料溶液Bを、合成例1で使用のセプタムで封をしアルミニウム箔ですき間なく包んで遮光したガラス瓶中に調製した。この原料溶液Bを、注射器により、前記の180℃のCdSeナノ結晶を含む透明溶液に20分間かけて滴下し、90℃に降温後約1時間攪拌を継続した。室温で約14時間静置した後、再び90℃で3時間加熱攪拌した。熱源を除去し、Aldrich社から供給される無水グレード(99.8%)のn−ブタノール(8mL)を反応液に加えて室温まで冷却して、透明な赤色溶液を得た。
【0065】
この赤色溶液には、原料のビス(トリメチルシリル)スルフィド等の硫黄化合物の臭気はなく、代わりにセレン特有のニラ様臭気があった。合成例1で得たCdSeナノ結晶の溶液にはこのようなセレン臭はなかったので、該CdSeナノ結晶表面での意図した硫化物生成反応の進行とともに、該ナノ結晶表面における硫黄原子によるセレン原子の置換反応等何らかの機構によるセレンの遊離があったものと推測され、前記文献記載同様にZnSシェルを有するCdSeナノ結晶が生成したものと考えられた。
【0066】
この赤色溶液の一部(8mL)を、乾燥窒素気流下、室温で精製メタノール(16mL)中に滴下し20分間攪拌を継続する沈殿操作により赤色不溶物を得た。この赤色不溶物を合成例1同様に遠心分離及びデカンテーションにより分離し、精製トルエン(14mL)に再溶解した。この再溶解トルエン溶液を用いて、再び同様の沈殿操作、遠心分離、及びデカンテーションの一連の精製操作を行って固体生成物を得た。この固体生成物は、1mLの精製メタノールと振り混ぜて洗浄後、デカンテーションで分離した。この固体生成物は透明赤色の精製トルエン溶液を与え、ここに468nm波長の励起光を照射すると赤色の発光帯(ピーク波長597nm、半値幅41nm)を与えた。この発光は同程度の溶液濃度において、合成例1で得たCdSeナノ結晶の場合よりも明らかに発光強度が大きかったことから、ZnSシェルを有するCdSeナノ結晶に変換され、表面準位等を経由する非発光過程の寄与が抑制されたものと考えられた。また、この生成物のIRスペクトルは、TOPOのアルキル基に由来すると考えられる3つの鋭い吸収ピークを2940,2920,及び2850cm-1に与えた。
【0067】
合成例3<11−メルカプトウンデカン酸MTEGエステルの合成>
11−メルカプトウンデカン酸(1.70g)と東京化成(株)から供給されたトリエチレングリコールモノメチルエーテル(以下TEGMMEと略記:50mL)、及び濃硫酸(国産化学(株);5滴)を乾燥窒素雰囲気のフラスコ内に混合し、60℃で攪拌しながら30mmHg以下の圧力での減圧脱水を延べ約36時間行った。反応液を大量の氷水に攪拌しながら徐々に加えて得た析出物をn−ヘキサン/酢酸エチル(5/1容量比)混合溶媒で抽出し、この有機相を飽和重曹水、次いで水で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥後濾過して濃縮した。この生成物は、IRスペクトルにおいて1730cm-1にエステル基、及び2870cm-1のピークと2820cm-1の肩を含む3050〜2650にかけてのブロードな領域にTEGMME由来の炭化水素構造にそれぞれ帰属される吸収帯を与えたことから、前記式(5)に該当する11−メルカプトウンデカン酸MTEGエステル(以下HS−C11−MTEGと略記)の生成を確認した。
【0068】
実施例1<N−(3−アミノプロピル)−11−メルカプトウンデカンアミドの合成>
11−メルカプトウンデカン酸(6.73g)を純正化学(株)から供給されたエタノール(99.5%;75g)と濃硫酸(0.35g)の共存溶液中で加熱還流した。反応液は、3割程度の容量まで減圧濃縮して生成する水をエタノールとともに除去する操作を数時間おきに数回繰り返し、更に、乾燥窒素雰囲気で加熱活性化したモレキュラーシーブズ3Aを円筒濾紙に入れたSoxlet連続抽出管を通じた加熱還流による連続脱水を行って、11−メルカプトウンデカン酸エチルエステルを生成せしめた(IRスペクトルにおいて1730cm-1にエステル基の吸収を確認)。ここに、キシダ化学(株)から供給された1,3−ジアミノプロパン(30mL)を加え、大気圧での蒸留によりエタノールを留去し、更に60℃で攪拌しながら30mmHg以下の圧力での減圧を延べ約22時間行い、脱エタノールによるエステル交換アミド化反応を行った。60℃の反応液を約900mLの氷水に激しく攪拌しながら徐々に加えて得た析出物を、濾紙により濾別した。濾別した固体は、水、希水酸化ナトリウム水溶液、希塩酸、最後に水の順で洗浄し、真空乾燥した。この生成物のIRスペクトルにおいて、1635cm-1にアミド基、3440cm-1と3300cm-1に1級アミノ基の吸収帯がそれぞれ観測され、かつ1730cm-1のエステル基の吸収が消失したことから、前記式(2)においてm=3に該当するN−(3−アミノプロピル)−11−メルカプトウンデカンアミド(以下HS−C11−NH2と略記)の生成を確認した。
【0069】
実施例2<HS−C11−NH2のBOC基による保護>
実施例1で得たHS−C11−NH2(1当量)を純正化学(株)から供給されたn−ブタノールに溶解し、東京化成(株)から供給されたトリエチルアミン(1当量)を混合し、ここに東京化成(株)から供給された汎用のBOC化試剤であるジ−tert−ブチルジカーボネート(1.1当量)を加えた。室温で1晩放置した後、減圧濃縮した。こうして得た生成物は、1H−NMRスペクトルにおいて、BOC基のtert−ブチル基に典型的なメチル基のシングレットシグナルを与え、更にIRスペクトルにおいてアミド基に帰属される吸収帯を与えたことから、HS−C11−NH2のアミノ基がBOC基によるカーバメート結合により保護された化合物(以下HS−C11−NHBOCと略記)の生成を確認した。
【0070】
実施例3<HS−C11−NH2を配位子として含有する半導体超微粒子の合成>
合成例2で得たZnSシェルを有するCdSeナノ結晶を、アルミニウム箔で隙間なく包んで遮光したガラス容器内で乾燥窒素雰囲気下、精製塩化メチレン溶液(約10mL)とした。これを室温で攪拌しながら、合成例3で得たHS−C11−MTEGと実施例2で得たHS−C11−NHBOCとの2:1のモル比混合物を反応液中に存在するCd原子の当量に対して大過剰量となるように加えて、室温遮光条件で延べ24時間攪拌した。ここに触媒量のトリフルオロ酢酸を加えて室温で1晩放置した後、反応液を減圧濃縮して塩化メチレンとトリフルオロ酢酸を留去した。こうして得た残渣を精製トルエンに溶解し、トリエチルアミンを触媒量加え、0.5μmのメンブレンフィルターで濾過した後、9倍容量のn−ヘキサンと混合し、得られた不溶物を遠心分離とデカンテーションにより分離する精製操作を行った。こうして分離した不溶物を再度精製トルエンに溶解し、同様な精製操作(約9倍容量のn−ヘキサン添加、次いで遠心分離及びデカンテーション)を繰り返して固体生成物を得た。こうして得た固体生成物は、水溶性と発光能を兼ね備えていた。また、こうして得た固体生成物のIRスペクトルは、HS−C11−MTEG由来のエステル基、HS−C11−NH2由来のアミド基にそれぞれ帰属される吸収帯を与え、しかも前記の合成例2で述べたTOPOのアルキル基に由来すると考えられる3つの鋭い吸収ピークは観測されなかった。また、後述する応用例のように、この固体生成物はアミド化反応を受けることから、TOPOがHS−C11−MTEGとHS−C11−NH2で置換された半導体超微粒子が得られたものと考えられた。
【0071】
応用例<半導体超微粒子への保護されたアミノ酸のアミド化反応>
実施例3で得た半導体超微粒子をエタノールに溶解し、アミノ基がCBZ基で保護されたグリシン(以下CBZ化グリシンと呼ぶ)を、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩の存在下で室温で作用させるアミド化反応を行った。反応液を減圧濃縮後、精製トルエンに溶解し、0.5μmのメンブレンフィルターで濾過した後、9倍容量のn−ヘキサンと混合し、得られた不溶物を遠心分離とデカンテーションにより分離する精製操作を行った。こうして分離した不溶物を再度精製トルエンに溶解し、同様な精製操作(約9倍容量のn−ヘキサン添加、次いで遠心分離及びデカンテーション)を繰り返して固体生成物を得た。こうして得た固体生成物は、水溶性と発光能を兼ね備えていた。また、こうして得た固体生成物のIRスペクトルは、HS−C11−MTEG由来のエステル基、HS−C11−NH2由来のアミド基にそれぞれ帰属される吸収帯を与え、1H−NMRスペクトルにおいてCBZ基のベンゼン環に帰属されるシグナルを与えたことから、CBZ化グリシンが半導体超微粒子にアミド結合されたものと考えられた。
【0072】
【発明の効果】
本発明の連結有機残基を介してアミノ基を結合した半導体超微粒子は、該連結有機残基の効果により、耐水性等、超微粒子の主体を成す半導体結晶の吸光あるいは発光特性が外界の影響から保護されたものであり、しかも該アミノ基の反応性を利用して所望の化学構造を結合することができる。従って、例えば抗体タンパク質等の基質特異的親和性を有する化学構造を結合した場合、生物学的分析等の基質特異的分析試薬として利用される。あるいは親水性基を結合した場合、水性又はアルコール性溶剤等の対環境安全性に優れた溶媒に可溶な半導体超微粒子となるので、水性又はアルコール性の吸光性あるいは発光性塗料原料として利用される。
Claims (5)
- 半導体結晶が、下記一般式(1)で表されるω−メルカプト脂肪酸アミドアミンを配位子として有するものであり、半導体結晶表面に、ω−メルカプト脂肪酸残基を介してポリアルキレングリコール残基を結合してなる半導体超微粒子。
【化1】
HS−(CH2)n−CONR2−R1−NHR2 (1)
(但し一般式(1)において、nは5〜17以下の自然数を、R1は炭素数2〜18のアルキレン基又は炭素数6〜18のアリーレン基を、R2は水素原子又は炭素数6以下のアルキル基を、それぞれ表す。) - ω−メルカプト脂肪酸アミドアミンが、下記一般式(2)で表されるものである請求項1に記載の半導体超微粒子。
【化2】
HS−(CH2)10−CONH−(CH2)m−NH2 (2)
(但し一般式(2)においてmは3〜10の整数である。) - 半導体結晶がII−VI族化合物半導体組成又はIII−V族化合物半導体組成を主体とするものである請求項1又は2に記載の半導体超微粒子。
- 半導体結晶が硫化亜鉛(ZnS)組成を主体とするものである請求項3に記載の半導体超微粒子。
- 半導体結晶がコア−シェル構造をなすもものである請求項1〜4のいずれかに記載の半導体超微粒子。
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