JP2002053319A - 硫化物シェルを有するカルコゲン化亜鉛半導体超微粒子 - Google Patents

硫化物シェルを有するカルコゲン化亜鉛半導体超微粒子

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JP2002053319A
JP2002053319A JP2001138102A JP2001138102A JP2002053319A JP 2002053319 A JP2002053319 A JP 2002053319A JP 2001138102 A JP2001138102 A JP 2001138102A JP 2001138102 A JP2001138102 A JP 2001138102A JP 2002053319 A JP2002053319 A JP 2002053319A
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zinc
group
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sulfide
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JP2001138102A
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Manabu Kawa
学 加和
Takeshi Otsu
猛 大津
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Mitsubishi Chemical Corp
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Mitsubishi Chemical Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 従来にない高い発光性と化学的安定性、及び
有機媒質への優れた溶解性を有する半導体超微粒子を提
供する。 【解決手段】 カルコゲン化亜鉛結晶コアと硫化物シェ
ルから構成されるコア−シェル粒子であって、該粒子表
面に有機配位子が結合されてなる半導体超微粒子。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、半導体超微粒子に
関する。詳しくは、従来にない高い発光性と安定性、及
び有機媒質への優れた溶解性を有するセレン化亜鉛に代
表されるカルコゲン化亜鉛超微粒子に関する。本発明の
硫化物シェルを有するカルコゲン化亜鉛超微粒子は、デ
ィスプレイや照明器具等に用いられる面状発光体の原料
として使用可能な材料である。
【0002】
【従来の技術】半導体の超微粒子は、量子閉じこめ効果
によるバルク材料では見られない吸光発光特性を有する
ため、新しい光機能材料としての産業上の利用が強く求
められている。かかる性質を有する超微粒子は、コロイ
ド粒子、ナノ結晶(Nanocrystal)、ナノ粒
子(Nanoparticle)、あるいは量子ドット
(Quantum dot)等とも呼称される場合があ
る。
【0003】従来かかる半導体超微粒子は、分子ビーム
エピタキシー法あるいはCVD法等の高真空プロセスに
より様々な組成により製造されている。しかし、かかる
高真空プロセスにより得られる超微粒子は原理的に基板
上に堆積し強固に付着するため有機物による配位が一般
に困難であり、有機溶剤や透明樹脂等の有機媒質への分
散性に欠けるという欠点があった。更に、かかる製造プ
ロセスはホスフィンやアルシン等の有毒気体を原料とす
る場合があり、且つ高価な製造装置を要するので生産性
の点で産業上の利用に制限がある。
【0004】一方、より産業利用に好適と考えられる液
相化学合成により有機物による配位を受けた半導体超微
粒子を得る研究例として、M.A.Hinesら著;
J.Phys.Chem.B,102巻,3655−3
657(1998)には、セレン化亜鉛(ZnSe)の
ナノ結晶の合成と吸光発光特性に関する記述がある。こ
こでのZnSeナノ結晶合成の代表的方法は、セレンの
トリオクチルホスフィン(以下TOPと略)溶液とジエ
チル亜鉛(以下ZnEt2と略)とを室温にてあらかじ
め混合し、アルゴンガス雰囲気で310℃に加熱したヘ
キサデシルアミン中に急速に注入し次いで270℃で熟
成させる方法である。この方法により、トルエンやヘキ
サン等の有機溶剤への溶解性を有するZnSe超微粒子
が得られる。そして、ヘキサン希釈溶液中での吸収スペ
クトルの極大が345〜420nm程度、発光スペクト
ルの極大が365〜430nm程度の範囲となるZnS
eナノ結晶が得られると報告されている。しかし、こう
して得られるZnSeナノ結晶は光安定性や化学的安定
性等の耐環境安定性に乏しく、容易に発光強度が低下す
る欠点があった。
【0005】この例のような配位性有機物(以下「有機
配位子」と称する)中で生成する半導体ナノ結晶は、該
有機物でその表面を配位することにより、有機溶剤への
溶解性と改良された発光特性が付与されるだけでなく、
ナノ結晶どうしの凝集による粗大粒子生成を抑制できる
ことが既に良く知られている。例えば、上記のHine
sら著の文献、あるいはJ.E.B.Katariら
著;J.Phys.Chem.,98巻,4109−4
117(1994)に報告されているように、セレン化
カドミウム(CdSe)や硫化カドミウム(CdS)の
ナノ結晶の合成における優れた配位子として、トリオク
チルホスフィンオキシド、上記したTOP、あるいはこ
れらの混合物等が知られている。このような有機配位子
中で半導体原料を熱分解させる合成方法を、以下「ホッ
トソープ法」と称する。
【0006】このように数種の化合物半導体ナノ結晶に
ついて有機物による配位の効果が知られているが、従来
の技術水準ではZnSe等のカルコゲン化亜鉛結晶はC
dSeやCdS等のカルコゲン化カドミウム結晶に比べ
てはるかに発光の耐環境安定性が低い。この原因は完全
に解明されていないが、半導体ナノ結晶表面の状態の制
御、例えば該結晶終端(つまり結晶粒子表面)の構造制
御あるいは有機配位子の選定等が、未だ満足できる水準
にないことが一因と考えられる。
【0007】前記の高真空プロセスによる半導体技術に
おいては、半導体の発光特性の改良手段として、例えば
硫化アンモニウムのような硫化物による半導体表面の改
質が経験的に衆知であり、かかる改質はパッシベーショ
ン(Passivation)と呼ばれている。この効
果機構も完全には解明されていないが、半導体結晶表面
における硫化物の形成により結晶表面欠陥が被覆され、
かかる表面欠陥に起因する励起エネルギーの非発光緩和
の寄与を低減する機構が推定されている。
【0008】一方、WO 9926299号公報には前
記ホットソープ法により合成されるカルコゲン化カドミ
ウム半導体超微粒子を内核(コア;Core)としカル
コゲン化亜鉛半導体を外殻(シェル;Shell)とし
たコア−シェル型と通称されている半導体超微粒子が開
示されており、前記のような有機配位子による表面改質
に比べて発光の量子収率と化学的安定性に優れると報告
されている。しかし、青色〜赤色といった比較的長波長
の可視領域に発光帯を有するカルコゲン化カドミウム半
導体超微粒子は、より短波長での光技術が急速に進展し
ている記録メディア産業等の技術的要求を必ずしも満足
するものではない。従って、より大きなバンドギャップ
エネルギーを有する近紫外から可視短波長領域の発光体
として有用なカルコゲン化亜鉛結晶を主体とした安定性
に優れた半導体超微粒子が強く求められている。
【0009】なお、発光強度の向上(即ち発光の量子収
率の向上)効果を示すコア−シェル半導体超微粒子の合
成例としては、硫化亜鉛(ZnS)やCdS等の硫化物
シェルを逆ミセル法や水溶液反応等の半導体超微粒子が
水と接触する反応方法により形成する例が報告されてい
る。即ち、B.S.Zouら;Internation
al Journal of Quantum Che
mistry,72巻,439−450(1999)に
はCdSコアへのZnSシェルの形成について(他にC
d(OH)2とCdOをシェル材料として検討)、L.
Xuら;J.Mater.Sci.,35巻,1375
−1378(2000)にはCdSeコアへのCdSシ
ェルの形成について、どちらもエキシトン準位からの発
光能と発光強度の向上が報告されている。しかし、かか
る合成方法による半導体超微粒子は前記ホットソープ法
により合成されるものと異なり有機配位子を表面に結合
していないので、溶媒や高分子等の有機媒質への分散性
が制限されているという欠点があった。
【0010】このように、前記ホットソープ法による合
成だけでなく、含水反応により合成されるコア−シェル
半導体超微粒子も発光能の改良効果を示すが、前記いず
れの従来技術においても、ZnSe等のカルコゲン化亜
鉛結晶コアと硫化物シェルから構成されるコア−シェル
超微粒子に関して、その発光能と有機媒質への分散性と
をともに改良することはできなかった。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記実情に鑑
みてなされたものであり、その目的は、従来にない高い
発光強度、化学的安定性、及び溶剤溶解性を与えるカル
コゲン化亜鉛半導体超微粒子とその製造方法、及び産業
上有用な用途の提供にある。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明者は上記の目的を
達成すべく鋭意検討を重ねた結果、特にセレンのホスフ
ィン類溶液及びジアルキル亜鉛とを加熱反応させてZn
Se等のカルコゲン化亜鉛ナノ結晶を生成させ、次いで
該ナノ結晶を分散したホスフィンオキシド類等の配位性
有機化合物を主体とする液相に硫黄含有化合物を加える
二段階の工程を経ることで、硫化物シェルを有しかつ単
離可能な大きさに成長したカルコゲン化亜鉛超微粒子が
得られ、これが高度な化学的安定性と溶剤溶解性を有す
るのみならず従来の知見では全く予想できなかった格段
に大きな発光強度を有することを見いだして本発明に到
達した。
【0013】即ち、本発明の第1の要旨は、カルコゲン
化亜鉛結晶コアと硫化物シェルから構成されるコア−シ
ェル粒子であって、該粒子表面に有機配位子が結合され
てなる半導体超微粒子、に存する。また本発明の第2の
要旨は、カルコゲン化合物のホスフィン類溶液とジアル
キル亜鉛とを液相で加熱反応させる第一工程と、第一工
程の生成物を含有するホスフィンオキシド類を主体とす
る液相に硫黄含有化合物を添加して反応させる第二工程
とを含む、上記半導体超微粒子の製造方法、に存する。
【0014】さらに本発明の第3の要旨は、上記半導体
超微粒子を含有する薄膜状成形体、に存する。
【0015】
【発明の実施の形態】以下、本発明につきさらに詳細に
説明する。 [半導体超微粒子]本発明の半導体超微粒子は、亜鉛と
周期表第6族元素(即ちカルコゲニド元素)からなるカ
ルコゲン化亜鉛半導体結晶である内核(コア)の表面に
後述する硫化物の外殻(シェル)を有するコア−シェル
粒子を主体とし、且つ後述する有機配位子をその表面に
結合したものである。
【0016】本発明の超微粒子におけるカルコゲン化亜
鉛の組成としては、酸化亜鉛(ZnO)、硫化亜鉛(Z
nS)、セレン化亜鉛(ZnSe)、及びテルル化亜鉛
(ZnTe)等が挙げられるが、350〜450nm程
度の発光波長を与えるZnSeが中でも重要である。前
記の有機配位子は本発明の超微粒子に溶剤溶解性を付与
するに不可欠であり、これについては後述する。
【0017】本発明のカルコゲン化亜鉛半導体超微粒子
において、前記のコア−シェル粒子部分の粒径は、数平
均粒径として通常0.5〜20nm、量子閉じこめ効果
による吸発光帯波長の制御性の点で好ましくは1〜15
nm、更に好ましくは2〜10nmである。かかる粒径
は、透過型電子顕微鏡(TEM)によりカルコゲン化亜
鉛の結晶構造が通常観察されるので決定可能であるが、
電子線によるコントラストが得にくい場合には、原子間
力顕微鏡(AFM)による観察や溶液での光散乱や中性
子散乱測定に元素分析等の組成分析結果を組み合わせて
見積もることもできる。
【0018】かかるコア−シェル粒子部分の粒径分布は
前記の平均粒径の範囲内である限りにおいて制限はな
く、例えば、この部分の量子効果による光吸収や発光特
性を利用する場合、かかる粒径分布を変えることで必要
とする発光の波長幅を変化させることができる。なお、
かかる波長幅を狭くする必要がある場合には該粒径分布
を狭くするが、通常、標準偏差として±40%以内、好
ましくは±30%以内、更に好ましくは±20%以内、
最も好ましくは±10%以内である。この標準偏差の範
囲を超えた粒径分布の場合、量子効果による発光波長幅
を狭くする目的を十分に達成することが困難となる。
【0019】[硫化物シェル]本発明における硫化物シ
ェルとは、硫黄を必須構成元素とする化合物あるいは化
学構造を含有し、前記のカルコゲン化亜鉛結晶コアの終
端を包含する外殻をなす領域を意味する。かかる硫化物
シェルの化学組成例としては、金属硫化物、硫黄含有有
機物、硫黄単体結晶等が挙げられる。
【0020】本発明におけるかかる硫化物シェルの作用
機構は完全に解明されていないが、該シェルの硫黄原子
がカルコゲン化亜鉛結晶コア終端に存在する亜鉛原子と
の間に形成するS−Zn結合の存在が、該結晶コア終端
の任意の異常構造(例えば結晶格子欠陥や不純物の付着
等)に由来するいわゆる表面準位の好ましくない影響
(例えば、量子効果により制御されるエキシトン準位か
らの発光の阻害)を低減する機構、あるいはカルコゲン
化亜鉛結晶コアよりもバンドギャップエネルギー(E
g)が大きな硫化物シェルの形成によりエネルギー障壁
を形成して量子閉じこめ効果を顕著にする機構等が推測
される。かかる作用機構は、従来の高真空プロセスにお
けるパッシベーションによる半導体表面改質技術おける
機構と類似と考えられる。かかる硫化物シェルを形成す
る原料としては、単体の硫黄やこれがホスフィン類と反
応して生じるホスフィンスルフィド類の他、後述する硫
黄含有有機物や、有機亜鉛化合物と硫黄含有有機物の組
み合わせ等が例示される。
【0021】本発明の超微粒子における硫化物シェルを
形成可能な金属硫化物を組成式で示すと、Sn(II)Sn
(IV)S3)、SnS2、SnS、PbS等の周期表第14
族元素の硫化物、Al23、Ga23、In23等の周
期表第13族元素の硫化物、ZnS、CdS、HgS等
の周期表第12族元素の硫化物、As23、Sb23
Bi23等の周期表第15族元素の硫化物、Cu2S、
AgS等の周期表第11族元素の硫化物、NiS、Pd
S等の周期表第10族元素の硫化物、CoS等の周期表
第9族元素の硫化物、FeS等の周期表第8族元素の硫
化物、MnS等の周期表第7族元素の硫化物、Mo
2、WS2等の周期表第6族元素の硫化物、VS、VS
2、Ta25等の周期表第5族元素の硫化物、TiS2
の周期表第4族元素の硫化物、MgS、CaS、Sr
S、BaS等の周期表第2族元素の硫化物、CuCr2
4等のカルコゲンスピネル類等が例示される。これら
のうち、Al23、Ga23等の周期表第13族元素の
硫化物、ZnS等の周期表第12族元素の硫化物、Mg
S、CaS等の周期表第2族元素の硫化物はバンドギャ
ップエネルギーが大きい化合物半導体であるため、特に
好適であり、中でもZnSは最も好適に用いられる。か
かる硫化物半導体をシェルとする場合に特に好適なコア
−シェル半導体結晶組成の組み合わせ例として、ZnS
e−ZnS、ZnSe−MgS、ZnTe−ZnS、Z
nTe−MgS、ZnTe−CdS等が挙げられる。
【0022】カルコゲン化亜鉛結晶コアと反応して本発
明の超微粒子における硫化物シェルを与える硫黄含有有
機物として、後述の有機配位子における硫黄含有化合物
の他、ビス(トリメチルシリル)スルフィド、ビス(t
−ブチルジメチルシリル)スルフィド等の陽イオンとし
ての脱離性に優れた有機基を硫黄原子が連結したスルフ
ィド類、チオ尿素、チオアセタミド等のチオカルボニル
基を有する化合物、チオシアン酸アンモニウム等のチオ
シアン酸塩類等の硫化剤が例示される。かかる硫黄含有
有機物がカルコゲン化亜鉛結晶コアとの反応により硫化
物シェルを形成しその有機構造の一部又は全部が該結晶
コア表面に残る場合、かかる有機物はそのまま後述する
有機配位子としても機能することになる。
【0023】なお、前記WO 9926299号公報に
報告されているホットソープ法により形成されるZnS
等カルコゲン化亜鉛シェルも、本発明の超微粒子におい
て代表的なシェルとして利用可能であり、かかるカルコ
ゲン化亜鉛シェルは、ジメチル亜鉛、ジエチル亜鉛、ジ
ブチル亜鉛等の有機亜鉛化合物と、前記ビス(トリメチ
ルシリル)スルフィド等の陽イオンとしての脱離性に優
れた有機基を硫黄原子が連結したスルフィド類とを原料
として形成される。
【0024】硫化物シェルにおける硫黄の存在は、蛍光
X線分析、X線光電子分光スペクトル(XPS)、XA
FS(X−ray absorption fine
structure)等の手法による元素分析により確
認される。本発明の半導体超微粒子における硫化物シェ
ルの厚さは、通常0.2〜5nm程度、好ましくは0.
3〜4nm程度、更に好ましくは0.4〜3nm程度、
最も好ましくは0.5〜2nm程度である。本発明の半
導体超微粒子におけるコア−シェル粒子は、本発明の効
果を発現する限りにおいて該シェルの一部に硫化物以外
の組成を含有していても構わない。また、該シェルは該
結晶コア終端の全体を被覆している必要は必ずしもない
が、前記の理由でかかる被覆の割合は大きいほど好まし
く、その被覆率は、通常50〜100%、好ましくは6
0〜100%、更に好ましくは70〜100%、最も好
ましくは80〜100%であるが、カルコゲン化亜鉛結
晶コアのエキシトン準位からの発光効率を低下させる前
記表面準位の存在を極力抑制するために全体を被覆して
いるのが好ましい。
【0025】本発明の超微粒子におけるコア又はシェル
を構成する任意の半導体や金属硫化物の組成には、必要
に応じて微量のドープ物質(故意に添加する不純物の意
味)として例えばAl、Mn、Cu、Zn、Ag、C
l、Ce、Eu、Tb、Er等の元素を加えてもよい。 [有機配位子]前記の有機配位子とは、後述する配位官
能基により前記カルコゲン化亜鉛結晶コア又は硫化物シ
ェルに任意の結合様式(例えば、配位結合、共有結合、
イオン結合、水素結合等)で結合する有機分子を意味す
る。かかる有機配位子は、本発明の超微粒子に有機媒質
への分散性や非凝集性を付与する機能を果たす。かかる
効果を満足する限りにおいて該有機配位子の化学構造に
制限はなく、また複数種の有機配位子を併用しても構わ
ない。
【0026】またかかる有機配位子は、半導体結晶を反
応性に富む低分子(特に酸素、オゾン、水、アンモニ
ア、二酸化炭素等)等の外界からの悪影響から遮蔽して
保持する効果(以下「遮蔽効果」と呼ぶ)をも有する。
かかる遮蔽効果の点では、該有機配位子は炭素数4以上
のメチレン基連鎖を含有するものであることが好まし
く、特に後述する薄膜状成形体の製造に水やエタノール
等のプロトン性溶媒を溶液塗布製膜に用いる場合にその
効果を顕著に発揮する。これは、該メチレン基連鎖がそ
の疎水性により一種の疎水障壁を半導体結晶表面に形成
し、プロトン性溶媒分子等の極性化学種が半導体結晶表
面に接近して半導体結晶を形成する金属元素を溶出する
あるいは酸化する等の悪影響を妨げる、といった機構に
よるものと推測される。かかる炭素数4以上のメチレン
基連鎖を有する有機配位子の使用により、具体的には、
半導体結晶粒子の量子効果の安定化が見られる場合が多
い。このメチレン基連鎖の炭素数は通常4〜20、好ま
しくは5〜16、最も好ましくは6〜12程度とする。
【0027】該有機配位子が、アクリロイル基、メタク
リロイル基、マレオイル基、ビニルフェニル基、ビニル
エステル基、ビニルアミノ基等の重合反応性官能基をそ
の化学構造中に含有してもよい。前記有機配位子がその
化学構造中に含有する配位官能基には、半導体結晶表面
への結合能力を有する限りにおいて制限はないが、通常
周期表第15又は16族元素を含有する官能基を用い
る。その具体例としては、1級アミノ基、2級アミノ
基、3級アミノ基、ニトリル基やイソシアネート基等の
含窒素多重結合を有する官能基、ピリジン環やトリアジ
ン環等の含窒素芳香環等の窒素含有官能基、1級ホスフ
ィン基(−PH2)、2級ホスフィン基(−PHR)、
3級ホスフィン基(−PR12)、1級ホスフィンオキ
シド基(−PH2=O)、2級ホスフィンオキシド基
(−PHR=O)、3級ホスフィンオキシド基(−PR
12=O)、同様にホスフィンセレニド基(−PR12
=Se等)、リン酸基、亜リン酸基等のリン含有官能基
等の周期表第15族元素を含有する官能基、水酸基、エ
ーテル結合、カルボニル基、アルデヒド基、カルボキシ
ル基等の酸素含有官能基、メルカプト基(別称はチオー
ル基;−SH)、スルフィド結合、ジスルフィド結合、
チオ酸基(−COSH)、ジチオ酸基(−CSSH)、
硫酸基、キサントゲン酸基、キサンテート基、イソチオ
シアネート基、チオカルバメート基、チオフェン環等の
硫黄含有官能基、同様に−SeH等のセレン含有官能基
等の周期表第16族元素を含有する官能基等が例示され
る。これらのうち好ましく利用されるのは、ピリジン環
等の窒素含有官能基、3級ホスフィン基、3級ホスフィ
ンオキシド基、3級ホスフィンセレニド基等のリン含有
官能基等の周期表第15族元素を含有する官能基、メル
カプト基やスルフィド結合等の硫黄含有官能基等の周期
表第16族元素を含有する官能基であり、中でも3級ホ
スフィン基、3級ホスフィンオキシド基等のリン含有官
能基、あるいはメルカプト基等の硫黄含有官能基等は更
に好ましく用いられる。
【0028】半導体結晶表面への前記例示の有機配位子
の具体的な配位化学構造は十分に解明されていないが、
本発明においては前記に例示した配位官能基は必ずしも
そのままの構造を保持していなくても良い。例えば、メ
ルカプト基の場合、半導体結晶終端に存在する金属元素
M(例えばII−VI族化合物半導体における亜鉛やカドミ
ウム、III−V族化合物半導体におけるガリウムやイン
ジウム等)との共有結合を形成した構造(例えばS−M
なる構造)への変化、ホスフィンオキシド基(P=O)
の場合、金属元素Mとの共有結合を形成した構造(例え
ばP−O−Mなる構造)への変化等も考えられる。
【0029】前記例示の配位官能基を有する有機配位子
の具体例を以下に挙げる。 (a)硫黄含有化合物・・・メルカプトエタン、1−メ
ルカプト−n−プロパン、1−メルカプト−n−ブタ
ン、1−メルカプト−n−ヘキサン、メルカプトシクロ
ヘキサン、1−メルカプト−n−オクタン、1−メルカ
プト−n−デカン、1−メルカプト−n−ドデカン等の
メルカプトアルカン類、6−メルカプト−n−ヘキサノ
ール等のω−メルカプトアルコール類、チオフェノー
ル、4−メチルチオフェノール、4−tert−ブチル
チオフェノール、4−ヒドロキシチオフェノール等のチ
オフェノール誘導体、ジエチルスルフィド、ジブチルス
ルフィド、ジヘキシルスルフィド、ジオクチルスルフィ
ド、ジデシルスルフィド等のジアルキルスルフィド類、
ジメチルスルホキシド、ジブチルスルホキシド、ジヘキ
シルスルホキシド、ジオクチルスルホキシド、ジデシル
スルホキシド等のジアルキルスルホキシド類、ジブチル
ジスルフィド、ジデシルジスルフィド等のジアルキルジ
スルフィド類、11−メルカプトウンデカン酸や4−メ
ルカプト安息香酸等のメルカプトカルボン酸類、前記メ
ルカプトカルボン酸類のエステル類(該エステルを形成
するアルコール類としては例えばメタノール、エタノー
ル、エチレングリコール、トリエチレングリコール、エ
チレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレング
リコールモノメチルエーテル等)下記一般式(1)に示
す片末端がメルカプト基となったポリエチレングリコー
ル類、チオ尿素、チオアセタミド等のチオカルボニル基
を有する化合物、チオフェン等の硫黄含有芳香族化合物
等。、チオ尿素、チオアセタミド等のチオカルボニル基
を有する化合物、チオフェン等の硫黄含有芳香族化合物
等。
【0030】
【化1】R−(OCH2CH2n−SH (1) 但し、一般式(1)においてRは水素原子又は炭素数1
0以下の炭化水素基(例えばメチル基、エチル基、n−
プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチ
ル基、ヘキシル基、オクチル基、ノニル基、フェニル基
等であり、好ましくはメチル基あるいはエチル基であ
る)を表し、nは重合度を表す自然数であり通常2≦n
≦30程度、過度の立体的障害を避ける観点で好ましく
は2≦n≦20程度、更に好ましくは2≦n≦10程
度、最も好ましくは2≦n≦5程度である。 (b)リン含有化合物・・・トリブチルホスフィン、ト
リヘキシルホスフィン、トリオクチルホスフィン、トリ
デシルホスフィン、トリス(3−ヒドロキシプロピル)
ホスフィン等のトリアルキルホスフィン類、トリブチル
ホスフィンオキシド、トリヘキシルホスフィンオキシ
ド、トリオクチルホスフィンオキシド、トリデシルホス
フィンオキシド、トリス(3−ヒドロキシプロピル)ホ
スフィンオキシド等のトリアルキルホスフィンオキシド
類、トリフェニルホスフィンやトリフェニルホスフィン
オキシド等の芳香族ホスフィンあるいは芳香族ホスフィ
ンオキシド類等。 (c)窒素含有化合物・・・ピリジンやキノリン等の窒
素含有芳香族化合物、トリエチルアミン、トリブチルア
ミン、トリヘキシルアミン、トリオクチルアミン、トリ
デシルアミン、トリフェニルアミン、メチルジフェニル
アミン、ジエチルフェニルアミン、トリベンジルアミ
ン、トリエタノールアミン等の3級アミン類、ジエチル
アミン、ジブチルアミン、ジヘキシルアミン、ジオクチ
ルアミン、ジデシルアミン、ジフェニルアミン、ジベン
ジルアミン、ジエタノールアミン等の2級アミン類、ヘ
キシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ドデシ
ルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミン、
フェニルアミン、ベンジルアミン、2−アミノエタノー
ル等の1級アミン類、α−アミノ酸類やニトリロ三酢酸
等のアミノ基を有するカルボン酸類、ニトリロ三酢酸ト
リエチルエステル等のアミノ基を有するカルボン酸エス
テル類等。
【0031】これら例示した有機配位子のうち好ましい
のは、1−メルカプト−n−ブタン、1−メルカプト−
n−ヘキサン、メルカプトシクロヘキサン、1−メルカ
プト−n−オクタン、1−メルカプト−n−ドデカン等
の炭素数4〜12のメルカプトアルカン類、6−メルカ
プト−n−ヘキサノール等の炭素数6〜12のω−メル
カプトアルコール類、チオフェノール、4−メチルチオ
フェノール等のチオフェノール誘導体、ジブチルスルホ
キシド等の炭素数4〜12のアルキル基を有するジアル
キルスルホキシド類、11−メルカプトウンデカン酸の
前記エステル類等の硫黄含有化合物、トリブチルホスフ
ィン、トリヘキシルホスフィン、トリオクチルホスフィ
ン等の総炭素数12〜24のトリアルキルホスフィン
類、トリブチルホスフィンオキシド、トリヘキシルホス
フィンオキシド、トリオクチルホスフィンオキシド等の
総炭素数12〜24のトリアルキルホスフィンオキシド
類、トリフェニルホスフィンやトリフェニルホスフィン
オキシド等の芳香族ホスフィンあるいは芳香族ホスフィ
ンオキシド類等のリン含有化合物、ピリジン等の窒素含
有芳香族化合物、ドデシルアミン、ヘキサデシルアミ
ン、オクタデシルアミン等の炭素数12〜18の1級ア
ミン類等の窒素含有化合物であり、中でも1−メルカプ
ト−n−オクタン、1−メルカプト−n−ドデカン等の
炭素数8〜12のメルカプトアルカン類、11−メルカ
プトウンデカン酸の両親媒性エステル類(例えばトリエ
チレングリコールのエステルやトリエチレングリコール
モノメチルエーテルのエステル等)、トリブチルホスフ
ィン、トリヘキシルホスフィン、トリオクチルホスフィ
ン等の総炭素数12〜24のトリアルキルホスフィン
類、トリブチルホスフィンオキシド、トリヘキシルホス
フィンオキシド、トリオクチルホスフィンオキシド等の
総炭素数12〜24のトリアルキルホスフィンオキシド
類、ドデシルアミン、ヘキサデシルアミン等の炭素数1
2〜16の1級アミン類等が更に好適である。
【0032】本発明の超微粒子における前記有機配位子
の含量は、超微粒子の表面積(即ち粒径に関連)にもよ
るが、後述する単離精製工程を経て十分に精製された状
態で通常5〜60重量%、超微粒子の化学的安定性や発
光特性の点で好ましくは10〜50重量%、更に好まし
くは15〜40重量%、最も好ましくは20〜30重量
%である。該有機配位子含量は、例えば窒素等の不活性
気流下での熱重量分析、あるいは元素分析により測定さ
れる。
【0033】[カルコゲン化亜鉛結晶コアの製法]従来
行われている下記の半導体結晶超微粒子の液相製造方法
等、任意の方法を使用して構わない。 (1)原料水溶液を非極性有機溶媒中の逆ミセルとして
存在させ該逆ミセル相中にて結晶成長させる方法(以
下、逆ミセル法と呼ぶ)であり、例えばB.S.Zou
ら;Int.J.Quant.Chem.,72巻,4
39(1999)に報告されている方法である。汎用的
な反応釜において公知の逆ミセル安定化技術が利用で
き、しかも水の沸点を超えない比較的低温で行われるた
め工業生産に適した方法である。 (2)熱分解性原料を高温の液相有機媒体(好ましくは
トリオクチルホスフィンオキシドやヘキサデシルアミン
等の前記有機配位子)に注入して結晶成長させる方法、
即ち前記ホットソープ法であり、例えば前記C.B.M
urrayら著の文献に報告されている方法である。逆
ミセル法に比べて粒径分布と純度に優れた半導体結晶が
得られ、該有機配位子の効果により有機溶剤に通常可溶
である特徴がある。かかるホットソープ法の液相成分と
して好適に使用される有機配位子の例としては、トリブ
チルホスフィン、トリヘキシルホスフィン、トリオクチ
ルホスフィン等のトリアルキルホスフィン類、トリブチ
ルホスフィンオキシド、トリヘキシルホスフィンオキシ
ド、トリオクチルホスフィンオキシド、トリデシルホス
フィンオキシド等のトリアルキルホスフィンオキシド
類、オクチルアミン、デシルアミン、ドデシルアミン、
テトラデシルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタデシ
ルアミン等のω−アミノアルカン類、ヘキサメチレンジ
アミン、ノナメチレンジアミン等のジアミのアルカン
類、ラロミン等の脂肪族環状アミン類、アニリン等の芳
香族アミン類、ジメチルスルホキシドやジブチルスルホ
キシド等のジアルキルスルホキシド類、ジブチルスルホ
ン等のジアルキルスルホン類等が挙げられる。これらの
うち、トリブチルホスフィンオキシドやトリオクチルホ
スフィンオキシド等のトリアルキルホスフィンオキシド
類やドデシルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタデシ
ルアミン等の炭素数12以上のω−アミノアルカン類等
が好適であり、中でもトリオクチルホスフィンオキシド
等のトリアルキルホスフィンオキシド類、及びヘキサデ
シルアミン等の炭素数16以上のω−アミノアルカン類
は最適である。 (3)前記のホットソープ法と類似の半導体結晶成長を
伴う溶液反応(ゾル−ゲル法とも呼ばれる)であるが、
酸塩基反応を駆動力として比較的低い温度で行う方法が
古くから知られている(例えばP.A.Jackso
n;J.Cryst.Growth,3−4巻,395頁
(1968)等)。最近ではD.Diazら;J.Ph
ys.Chem.B,103巻,9854頁(199
9)には、カドミウム(II)のカルボン酸塩と硫化ナト
リウムとを原料としジメチルスルホキシド(DMSO)
を溶媒とした硫化カドミウム(CdS)ナノ結晶の合成
が例示される。
【0034】これら例示の方法のうち、(2)のホット
ソープ法は本発明において最も好ましく用いられる。本
発明に特に好ましいホットソープ法の操作は、後述する
カルコゲン化合物のホスフィン類溶液及びジアルキル亜
鉛を原料化合物とし、これを前記のω−アミノアルカン
類を含有する通常150℃以上の液相に注入するもので
ある。該カルコゲン化合物は、好ましくはセレン単体あ
るいはビス(トリメチルシリル)スルフィドであり、該
ホスフィン類は好ましくはトリブチルホスフィンあるい
はトリオクチルホスフィン等の総炭素数12〜24のト
リアルキルホスフィンである。また該液相は好ましくは
ヘキサデシルアミンであり、その温度は好ましくは15
0〜350℃、より好ましくは180〜340℃、更に
好ましくは200〜330℃、最も好ましくは好ましく
は230〜320℃である。該カルコゲン化合物のホス
フィン類溶液及びジアルキル亜鉛はあらかじめ混合して
おいても構わない。
【0035】前記(1)〜(3)に例示した好ましい液
相製造方法において、一定容量の反応器中に一定量の原
料を仕込む回分(バッチ)法、あるいは管状反応器中に
液相を所定の速度で流して一定の反応滞留時間を確保し
ながら連続的に原料を供給する流通法のいずれにも適用
可能である。反応系は、乾燥アルゴン等の乾燥希ガスや
乾燥窒素等の不活性気体雰囲気下とするのが、大気の混
入による熱酸化や加水分解を防ぐ目的で好ましい。いず
れの場合も、生成する超微粒子の粒径は、例えば少量の
反応液を適宜抜き出して吸収スペクトルや発光スペクト
ルを測定することで監視することが可能である。
【0036】カルコゲン化亜鉛半導体結晶の原料化合物
となる亜鉛含有化合物の例としては、ジメチル亜鉛、ジ
エチル亜鉛、ジ−n−プロピル亜鉛、ジイソプロピル亜
鉛、ジ−n−ブチル亜鉛、ジイソブチル亜鉛、ジ−n−
ヘキシル亜鉛、ジシクロヘキシル亜鉛等のジアルキル亜
鉛類、塩化メチル亜鉛、臭化メチル亜鉛、ヨウ化メチル
亜鉛、ヨウ化エチル亜鉛等のアルキルハロゲン化亜鉛
類、二塩化亜鉛、二臭化亜鉛、二ヨウ化亜鉛、塩化ヨウ
化亜鉛等のジハロゲン化亜鉛類、蟻酸亜鉛、酢酸亜鉛、
プロピオン酸亜鉛、シュウ酸亜鉛等の亜鉛のカルボン酸
塩、硝酸亜鉛、硫酸亜鉛、リン酸亜鉛等の亜鉛の鉱酸塩
等が挙げられる。これらのうち前記のホットソープ法の
原料に好適なのは、ジメチル亜鉛、ジエチル亜鉛、ジ−
n−プロピル亜鉛、ジイソプロピル亜鉛、ジ−n−ブチ
ル亜鉛、等の総炭素数8以下のジアルキル亜鉛類であ
り、中でもジメチル亜鉛又はジエチル亜鉛が最適であ
る。
【0037】カルコゲン化亜鉛半導体結晶の原料化合物
となるカルコゲン化合物の例としては、硫黄、セレン、
テルル等の周期表第16族元素の単体、硫化水素、セレ
ン化水素、テルル化水素等の周期表第16族元素の水素
化物、ビス(トリメチルシリル)スルフィドやビス(t
−ブチルジメチルシリル)スルフィド等の陽イオンとし
ての脱離性に優れた有機基を硫黄原子が連結したスルフ
ィド類、あるいはビス(トリメチルシリル)セレニド等
の周期表第16族元素のシリル化物、硫化ナトリウム、
セレン化ナトリウム等の周期表第16族元素のアルカリ
金属塩、水硫化ナトリウム(NaHS)、水セレン化ナ
トリウム(NaHSe)等の周期表第16族元素の水素
化物のモノアルカリ金属塩、硫化アンモニウム等が挙げ
られる。これらのうち、反応性や化合物の安定性・操作
性の点で、硫黄、セレン、テルル等の周期表第16族元
素の単体、硫化水素等の周期表第16族元素の水素化
物、ビス(トリメチルシリル)スルフィド等の周期表第
16族元素のシリル化物、硫化ナトリウム、セレン化ナ
トリウム等の周期表第16族元素のアルカリ金属塩が特
に好適に用いられる。
【0038】カルコゲン化亜鉛半導体結晶の原料化合物
が複数種ある場合、これらをあらかじめ混合しておいて
も良く、あるいはこれらをそれぞれ単独で反応液相に注
入しても良い。これら原料は、適当な希釈溶媒を用いて
溶液にして使用しても構わない。前記ホットソープ法に
よりカルコゲン化亜鉛結晶コアを合成する場合に前記原
料化合物を反応液相へ供給する速度に制限はないが、生
成する該結晶コアの粒径分布を狭くする場合には0.1
〜60秒程度の短時間に所定量を注入することが好適な
場合がある。また、原料溶液の注入後の適切な結晶成長
反応時間(流通法の場合には滞留時間)は、半導体種や
所望の粒径あるいは反応温度により変動するが、代表的
な条件としては例えば200〜350℃程度のヘキサデ
シルアミン中で1分〜10時間程度である。
【0039】[カルコゲン化亜鉛結晶コアの精製方法]
前記ホットソープ法ではカルコゲン化亜鉛結晶コアの成
長反応終了後、精製を行っても構わない。濾過、沈殿と
遠心分離の併用、蒸留、昇華等の任意の方法で精製して
構わないが、特に有効なのは、カルコゲン化亜鉛結晶コ
アの比重が通常の有機化合物より大きいことを利用した
沈殿と遠心分離の併用である。遠心分離は、カルコゲン
化亜鉛結晶コアの貧溶媒(通常、例えば水やメタノー
ル、エタノール、n−プロパノール、イソプロピルアル
コール、n−ブタノール等の低級アルコール類を使用す
る)中に投入し、生成する沈殿を含む懸濁液を遠心分離
して行われる。得られた沈殿は、デカンテーション等に
より上澄み液と分離し、必要に応じ溶媒洗浄や再溶解と
再沈殿/遠心分離を繰り返して精製度を向上させる。該
貧溶媒は混合溶媒としても構わない。遠心分離の回転数
は、通常毎分100〜8000回転程度、好ましくは毎
分300〜6000回転程度、更に好ましくは毎分50
0〜4000回転程度、最も好ましくは毎分700〜3
000回転程度とし、温度は通常−10〜100℃程
度、好ましくは0〜80℃程度、更に好ましくは10〜
70℃程度、最も好ましくは20〜60℃程度の範囲で
行う。また、かかる精製工程も、酸化等の副反応を避け
るため、窒素やアルゴン等の不活性気体雰囲気において
行うのが望ましい場合もある。
【0040】[硫化物シェルの形成方法]前記で説明し
たカルコゲン化亜鉛結晶をコアとし、この表面に任意の
方法により前記硫化物シェルを形成して構わないが、好
ましい硫化物シェルの形成方法は、前記のカルコゲン化
合物のホスフィン類溶液とジアルキル亜鉛とを液相で加
熱反応させる第一工程と、この第一工程の生成物を含有
するホスフィンオキシド類を主体とする液相に硫黄含有
化合物を加えて反応させる第二工程とを含む方法であ
る。この方法は、該第一工程により所望の粒径にカルコ
ゲン化亜鉛結晶コアをまず成長させ、次いで該第二工程
によりこの結晶コアの表面に硫化物シェルを形成するこ
とを意図するものである。
【0041】該第一工程は、好ましくは前記ホットソー
プ法により実施される。該第二工程では、特に金属硫化
物や硫化物半導体からなる硫化物シェルを形成する目的
で、硫黄含有化合物の他に任意の陽性元素含有化合物を
併用して加えても構わない。かかる陽性元素含有化合物
としては、ジエチルマグネシウムやジ−n−ブチルマグ
ネシウム等の周期表第2族元素のジアルキル化物、塩化
メチルマグネシウム、臭化メチルマグネシウム、ヨウ化
メチルマグネシウム、塩化エチニルマグネシウム等の周
期表第2族元素のアルキルハロゲン化物、ヨウ化マグネ
シウム等の周期表第2族元素のジハロゲン化物、四塩化
チタン(IV)、四臭化チタン(IV)、四ヨウ化チタン
(IV)等の周期表第4族元素のハロゲン化物、二塩化バ
ナジウム(II)、四塩化バナジウム(IV)、二臭化バナ
ジウム(II)、四臭化バナジウム(IV)、二ヨウ化バナ
ジウム(II)、四ヨウ化バナジウム(IV)、五塩化タン
タル(V)、五臭化タンタル(V)、五ヨウ化タンタル
(V)等の周期表第5族元素のハロゲン化物、三臭化ク
ロム(III)、三ヨウ化クロム(III)、四塩化モリブデ
ン(IV)、四臭化モリブデン(IV)、四ヨウ化モリブデ
ン(IV)、四塩化タングステン(IV)、四臭化タングス
テン(IV)等の周期表第6族元素のハロゲン化物、二塩
化マンガン(II)、二臭化マンガン(II)、二ヨウ化マ
ンガン(II)等の周期表第7族元素のハロゲン化物、二
塩化鉄(II)、三塩化鉄(III)、二臭化鉄(II)、三
臭化鉄(III)、二ヨウ化鉄(II)、三ヨウ化鉄(III)
等の周期表第8族元素のハロゲン化物、二塩化コバルト
(II)、二臭化コバルト(II)、二ヨウ化コバルト(I
I)等の周期表第9族元素のハロゲン化物、二塩化ニッ
ケル(II)、二臭化ニッケル(II)、二ヨウ化ニッケル
(II)等の周期表第10族元素のハロゲン化物、ヨウ化
銅(I)等の周期表第11族元素のハロゲン化物、ジメ
チル亜鉛、ジエチル亜鉛、ジ−n−プロピル亜鉛、ジイ
ソプロピル亜鉛、ジ−n−ブチル亜鉛、ジイソブチル亜
鉛、ジ−n−ヘキシル亜鉛、ジシクロヘキシル亜鉛、ジ
メチルカドミウム、ジエチルカドミウム、ジメチル水銀
(II)、ジエチル水銀(II)、ジベンジル水銀(II)等
の周期表第12族元素のジアルキル化物、塩化メチル亜
鉛、臭化メチル亜鉛、ヨウ化メチル亜鉛、ヨウ化エチル
亜鉛、塩化メチルカドミウム、塩化メチル水銀(II)等
の周期表第12族元素のアルキルハロゲン化物、二塩化
亜鉛、二臭化亜鉛、二ヨウ化亜鉛、二塩化カドミウム、
二臭化カドミウム、二ヨウ化カドミウム、二塩化水銀
(II)、塩化ヨウ化亜鉛、塩化ヨウ化カドミウム、塩化
ヨウ化水銀(II)、臭化ヨウ化亜鉛、臭化ヨウ化カドミ
ウム、臭化ヨウ化水銀(II)等の周期表第12族元素の
ジハロゲン化物、トリメチルホウ素、トリ−n−プロピ
ルホウ素、トリイソプロピルホウ素、トリメチルアルミ
ニウム、トリエチルアルミニウム、トリ−n−ブチルア
ルミニウム、トリ−n−ヘキシルアルミニウム、トリオ
クチルアルミニウム、トリ−n−ブチルガリウム(II
I)、トリメチルインジウム(III)、トリエチルインジ
ウム(III)、トリ−n−ブチルインジウム(III)等の
周期表第13族元素のトリアルキル化物、塩化ジメチル
アルミニウム、塩化ジエチルアルミニウム、塩化ジ−n
−ブチルアルミニウム、臭化ジエチルアルミニウム、ヨ
ウ化ジエチルアルミニウム、塩化ジ−n−ブチルガリウ
ム(III)、塩化ジ−n−ブチルインジウム(III)等の
周期表第13族元素のジアルキルモノハロゲン化物、二
塩化メチルアルミニウム、二塩化エチルアルミニウム、
二臭化エチルアルミニウム、二ヨウ化エチルアルミニウ
ム、二塩化n−ブチルアルミニウム、二塩化n−ブチル
ガリウム(III)、二塩化n−ブチルインジウム(III)
等の周期表第13族元素のモノアルキルジハロゲン化
物、三塩化ホウ素、三臭化ホウ素、三ヨウ化ホウ素、三
塩化アルミニウム、三臭化アルミニウム、三ヨウ化アル
ミニウム、三塩化ガリウム(III)、三臭化ガリウム(I
II)、三ヨウ化ガリウム(III)、三塩化インジウム(I
II)、三臭化インジウム(III)、三ヨウ化インジウム
(III)、二塩化臭化ガリウム(III)、二塩化ヨウ化ガ
リウム(III)、塩化二ヨウ化ガリウム(III)、二塩化
ヨウ化インジウム(III)等の周期表第13族元素のト
リハロゲン化物、四塩化ゲルマニウム(IV)、四臭化ゲ
ルマニウム(IV)、四ヨウ化ゲルマニウム(IV)、二塩
化錫(II)、四塩化錫(IV)、二臭化錫(II)、四臭化
錫(IV)、二ヨウ化錫(II)、四臭化錫(IV)、二塩化
二ヨウ化錫(IV)、四ヨウ化錫(IV)、二塩化鉛(I
I)、二臭化鉛(II)、二ヨウ化鉛(II)等の周期表第
14族元素のハロゲン化物、トリメチルアンチモン(II
I)、トリエチルアンチモン(III)、トリ−n−ブチル
アンチモン(III)、トリメチルビスマス(III)、トリ
エチルビスマス(III)、トリ−n−ブチルビスマス(I
II)等の周期表第15族元素のトリアルキル化物、二塩
化メチルアンチモン(III)、二臭化メチルアンチモン
(III)、二ヨウ化メチルアンチモン(III)、二ヨウ化
エチルアンチモン(III)、二塩化メチルビスマス(II
I)、二ヨウ化エチルビスマス(III)等の周期表第15
族元素のモノアルキルジハロゲン化物、三塩化砒素(II
I)、三臭化砒素(III)、三ヨウ化砒素(III)、三塩
化アンチモン(III)、三臭化アンチモン(III)、三ヨ
ウ化アンチモン(III)、三塩化ビスマス(III)、三臭
化ビスマス(III)、三ヨウ化ビスマス(III)等の周期
表第15族元素のトリハロゲン化物等が挙げられる。
【0042】これらのうち好適なのは、ジエチルマグネ
シウムやジ−n−ブチルマグネシウム等の周期表第2族
元素のジアルキル化物、塩化メチルマグネシウム、臭化
メチルマグネシウム、ヨウ化メチルマグネシウム等の周
期表第2族元素のアルキルハロゲン化物、ジメチル亜
鉛、ジエチル亜鉛、ジ−n−プロピル亜鉛、ジイソプロ
ピル亜鉛、ジ−n−ブチル亜鉛、ジイソブチル亜鉛、ジ
−n−ヘキシル亜鉛、ジメチルカドミウム、ジエチルカ
ドミウム等の周期表第12族元素のジアルキル化物、塩
化メチル亜鉛、臭化メチル亜鉛、ヨウ化メチル亜鉛、ヨ
ウ化エチル亜鉛、塩化メチルカドミウム等の周期表第1
2族元素のアルキルハロゲン化物、三ヨウ化アルミニウ
ム、三塩化ガリウム(III)、三臭化ガリウム(III)、
三ヨウ化ガリウム(III)、三塩化インジウム(III)、
三臭化インジウム(III)、三ヨウ化インジウム(III)
等の周期表第13族元素のトリハロゲン化物等であり、
中でもジメチル亜鉛、ジエチル亜鉛、ジ−n−プロピル
亜鉛、ジイソプロピル亜鉛、ジ−n−ブチル亜鉛、ジメ
チルカドミウム、ジエチルカドミウム等の周期表第12
族元素のジアルキル化物、三塩化ガリウム(III)、三
塩化インジウム(III)等の周期表第13族元素のトリ
ハロゲン化物等が最適である。
【0043】また、該第一工程で生成しているカルコゲ
ン化亜鉛結晶コアの表面に存在する亜鉛原子に直接硫黄
原子を作用させてS−Zn結合を形成する意図で、該第
二工程において前記の陽性元素含有化合物を併用せずに
硫黄含有化合物のみを加える方法は、前記の陽性元素含
有化合物を併用する方法に比べて異種半導体超微粒子の
生成がないこと及び単離精製の必要がないワンポット反
応である点で有効である。この場合、第一工程における
カルコゲン元素/亜鉛のモル比を1未満とすることで、
該第一工程で生成するカルコゲン化亜鉛半導体結晶の表
面にカルコゲン元素よりも亜鉛原子を多く存在させる意
図が有効である場合がある。かかる意図において、第一
工程におけるカルコゲン元素/亜鉛のモル比は好ましく
は0.2〜1、更に好ましくは0.3〜0.9、最も好
ましくは0.4〜0.8程度である。
【0044】該第二工程において用いられる硫黄含有化
合物としては、前記のカルコゲン化合物の例示中の硫黄
含有化合物が全て使用可能であるが、好ましいのは硫黄
の単体あるいはこれをトリブチルホスフィンやトリオク
チルホスフィン等のトリアルキルホスフィン類に溶解し
て生成する硫黄単体のホスフィン類複合体(使用したト
リアルキルホスフィンのリン原子が硫黄原子との二重結
合を形成した相当するホスフィンスルフィドが系中に生
成している場合がある)、硫化水素、ビス(トリメチル
シリル)スルフィド、硫化アンモニウム等であり、中で
も硫黄の単体あるいはそのホスフィン類複合体は化合物
の安定性や安価である点で有利に用いられる。
【0045】また、該第一工程で生成するカルコゲン化
亜鉛結晶コアを前記の半導体結晶の精製方法により一度
単離しても良い。硫化物シェルを形成する前記の第二工
程の反応は、通常−10〜350℃程度の温度範囲で行
われ、有機物の熱劣化や交換反応の未完結を避けるため
好ましくは0〜330℃程度、更に好ましくは10〜3
10℃程度である。該第二工程の反応時間は原料や温度
にもよるが、通常1分〜100時間、好ましくは5分〜
70時間、更に好ましくは10分〜50時間、最も好ま
しくは10分〜30時間程度である。また、酸化等の副
反応を避けるため、窒素やアルゴン等の不活性気体雰囲
気において該第二工程行うのが望ましく、遮光条件での
製造が好ましい場合もある。
【0046】[硫化物シェル形成時の好ましい反応条
件]前記第二工程において反応温度を50〜150℃の
幅で昇温させることによって半導体超微粒子の発光特性
や有機溶媒への溶解性が改善される場合がある。この効
果は前記第一工程で生成したカルコゲン化亜鉛結晶コア
表面において硫化物シェルの生成や有機物の吸着が促進
されるためと推測されるが、詳細な機構は明らかでな
い。かかる第二工程における昇温の開始温度は、例えば
150〜250℃、好ましくは170〜230℃程度で
あり、該昇温の終了温度は、例えば250〜350℃、
好ましくは270〜330℃程度である。また該昇温に
要する時間は温度条件にもよるが、通常1〜30時間、
好ましくは2〜20時間、更に好ましくは3〜15時間
程度である。かかる昇温の温度変化は連続的でもあるい
は段階的でもよく、これが連続的である場合にはその昇
温速度は必ずしも一定でなくてもよく、またこれが段階
的である場合は各段階の設定温度や段階数にはともに制
限はない。
【0047】前記第二工程において硫黄含有化合物を分
割又は連続して添加すると、半導体超微粒子の発光特性
や有機溶媒への溶解性が改善される場合がある。この効
果は前記第一工程で生成したカルコゲン化亜鉛結晶コア
表面において硫化物シェルの生成や有機物の吸着が促進
されるためと推測されるが、詳細な機構は明らかでな
い。例えば、ジエチル亜鉛とビス(トリメチルシリル)
スルフィドとを含んだ溶液を該第二工程において加えて
ZnSシェルを形成させる場合、通常1分〜10時間、
好ましくは5分〜8時間、更に好ましくは10分〜5時
間程度の時間をかけて分割又は連続して添加すると非常
に好適な場合がある。これは、一括あるいは短時間での
添加の場合かかるシェル原料がシェル形成以外の反応
(例えば前記ZnSシェル形成原料の場合にはZnS結
晶を新たに生成する反応)に消費されることが予想され
るので、こうした有効にシェルを形成しないばかりか好
ましくない副生成物を生じる反応を顕著に抑制する効果
があるものと推測される。
【0048】前記第二工程において、反応液相に光を照
射することにより得られる半導体超微粒子の発光特性が
改善される場合がある。この効果は、前記の第一工程で
生成したカルコゲン化亜鉛結晶コア表面において何らか
の光化学反応が進行して硫化物シェルの形成が促進さ
れ、その結果該シェルの構造がより緻密化あるいは安定
化されるためと推測されるが、詳細な機構は明らかでな
い。照射する好ましい光の波長は通常200〜700n
mの範囲であり、必ずしも単一波長の光である必要はな
い。この波長範囲は、より好ましくは250〜600n
m、更に好ましくは270〜500nm、最も好ましく
は300〜450nmである。照射する光の強度は、反
応液相の体積1立方センチメートル当たりに照射する出
力として通常0.01〜500ワット、好ましくは0.
05〜300ワット、更に好ましくは0.1〜200ワ
ット、最も好ましくは0.5〜100ワット程度であ
る。光照射の時間と反応温度は、前記記載の第二工程の
反応条件の範囲内において任意であるが、例えば、温度
は100〜300℃、前記照射効果の点で好ましくは1
50〜270℃程度であり、一方時間は0.5〜30時
間、好ましくは1〜20時間程度である。
【0049】かかる光照射に使用可能な光源としては、
水銀ランプ、ハロゲンランプ、キセノンランプ、白熱電
球、蛍光灯、ブラックライト、太陽光等が例示され、そ
の発光原理にも制限はなく、例えばフィラメント発光、
アーク発光等が挙げられる。かかる光照射は、光源を製
造装置に設けられた窓の外から照射しても良く、あるい
は耐化学反応性や耐熱性を確保する措置を施した光源を
反応装置内部、場合によっては反応液相内に挿入して照
射しても構わない。また、任意の光源から特定波長の光
を遮断あるいは減衰する目的で、遮光光学装置(例えば
カラーフィルター、NDフィルター、誘多膜フィルタ
ー、誘多膜ダイクロイックミラー、干渉フィルター、フ
ロスト型やオパール型等の拡散板、偏光板、褐色ガラス
等)を併用しても構わない。
【0050】[配位子交換反応]前記有機配位子は、配
位力の強弱や化学当量の制御等を利用した配位子交換反
応により変換することが可能である場合がある。例えば
前記ホットソープ法により結合されるヘキサデシルアミ
ン、トリオクチルホスフィン、あるいはトリオクチルホ
スフィンオキシド等は、より強力な配位力を有するメル
カプト基を有する前記有機配位子により置換することが
可能である。かかる置換は、置換後の超微粒子を溶解す
る適当な溶媒(例えばエタノール、トルエン、テトラヒ
ドロフラン、クロロホルム等)中で好適に行われる。
【0051】また、同じ配位官能基を有する2種以上の
有機配位子を液相で共存させると、化学当量の大きなも
のが平衡によりより多く超微粒子表面に結合すると考え
られる。従って、かかる平衡原理によりもともと結合し
ている有機配位子の一部を所望の新有機配位子で置換す
ることも可能である。かかる置換も、前記同様置換後の
超微粒子を溶解する適当な溶媒中で好適に行われる。
【0052】[超微粒子を含有する薄膜状成形体]本発
明の超微粒子が有する任意の有用な性質を利用する目的
で、薄膜状成形体とすることが非常に有効である。かか
る有用な性質としては、紫外・可視・近赤外・赤外領域
等での吸発光、これら種々の波長領域の光のみならずエ
ックス線やガンマ線等を含む電磁波一般を吸収、散乱、
回折、干渉する性質、あるいは電子線や中性子線等の素
粒子線を吸収、散乱、回折、干渉する性質等が例示され
る。
【0053】かような薄膜状成形体を得る方法に特に制
限はないが、例えば本発明の超微粒子を含有する液体を
基材上に塗布及び乾燥するような汎用的な方法(必要に
応じ加熱・変形等任意の工程を付加する)により好適に
製造できる。かかる液体は、目視で均一な溶液あるいは
乳化液や懸濁液でも構わない。かかる液体の調製に使用
される溶剤は、使用する超微粒子に対する必要な親和性
を有する限りにおいて特に制限はない。
【0054】また本発明の超微粒子を含有する液体中の
該超微粒子の濃度は特に限定されるものではなく、塗布
方法や目的とする膜厚等により異なるが、通常0.01
〜1000mg/mL、好ましくは0.1〜100mg
/mL程度である。用いられる基材には特に制限はない
が、例えば、金属、金属酸化物、セラッミックス、化合
物半導体などの無機物質、及び各種ポリマーや紙などの
有機物質、あるいは水、アルコール類、水銀等の液体表
面を使用することができる。中でも、金属、金属酸化
物、セラッミックス、化合物半導体などの無機物質を用
いるのが得られる薄膜の安定性の点で好ましい。
【0055】基材への塗布方法としては、スピンコーテ
ィング法、ディップコーティング法、ウェッティングフ
ィルム法、スプレーコーティング法等の一般的な方法を
用いることができる。かかる薄膜状成形体は、ポリスチ
レン等のスチレン系樹脂、ポリメチルメタクリレート等
のアクリル系樹脂、あるいは芳香族ポリカーボネート樹
脂等の透明樹脂マトリクス、あるいはテトラエトキシシ
ラン等の金属アルコキシド類の加水分解縮合(いわゆる
ゾル−ゲル法)により合成されるシリカ等のガラスマト
リクス等の透明マトリクス材料中に本発明の半導体超微
粒子を分散して得られる組成物を製膜して製造されても
構わない。この場合、透明樹脂等のマトリクス物質を、
前記の本発明の超微粒子を含有する液体にあらかじめ溶
解しておき次いでこれを基材上に塗布及び乾燥して製膜
しても構わず、あるいは本発明の半導体超微粒子をテト
ラエトキシシラン等の金属アルコキシド類を含む溶液に
あらかじめ溶解あるいは分散しておき次いでゾル−ゲル
法反応を進行させてガラスマトリクス組成物として製膜
しても構わない。また、前記で触れたように、本発明の
超微粒子の有機配位子としてかかるマトリクス物質の原
料となるモノマー類(例えばスチレン、メチルメタクリ
レート、テトラエトキシシラン等)をあらかじめ添加し
ておき、次いで前記の製膜工程を行うとともに(あるい
は製膜工程の後で)重合させる方法が良質の薄膜を得る
上で有効である場合がある。
【0056】上述したような方法の他、使用される超微
粒子自身あるいはこれを透明樹脂マトリクス等に分散し
た組成物が熱可塑性を有する場合には、Tダイ成形法、
ブロー成型法、インフレーション成型法等の汎用的な加
熱溶融押し出し製膜法の適用も可能である。このように
して得られる薄膜の膜厚、大きさ、形状、面の性質(例
えば平面、球面、曲面、凹面、凸面、多孔質の面、平滑
性、あるいは厚さの分布等の属性)には特に制限はない
が、例えば膜厚は、通常、1〜100,000nm、好
ましくは1〜10,000nm、より好ましくは1〜
1,000nm程度である。
【0057】前記のようにして得られる本発明の超微粒
子を含有する薄膜状成形体に、任意の添加剤、例えば酸
化防止剤、熱安定剤、あるいは光安定剤等の安定剤類、
ガラス繊維、ガラスビーズ、マイカ、タルク、カオリ
ン、粘土鉱物、炭素繊維、カーボンブラック、黒鉛、金
属繊維、金属粉等のフィラー類、帯電防止剤、離型剤、
可塑剤、紫外線吸収剤等の添加剤類、顔料や染料等の着
色剤類、ゴムやエラストマー等の耐衝撃性付与剤、熱可
塑性樹脂等、必要に応じて任意の添加物を混合すること
も可能である。
【0058】
【実施例】以下、実施例により本発明の具体的態様を更
に詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限
り、これらの実施例によって限定されるものではない。
なお、原料試薬は特に記載がない限り、Aldrich
社製のものを精製を加えず使用した。スペクトル測定と
精製に使用したトルエンは、濃硫酸、水、飽和重曹水、
更に水の順序で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥次
いで濾紙で濾過し、五酸化二リン(P2O5)から蒸留し
た脱水精製品を使用した。精製に使用したメタノール
は、硫酸カルシウムと水素化カルシウムで乾燥した後更
に水素化ナトリウムを加えて直接蒸留した乾燥精製品を
使用した。精製に使用したn−ブタノールは、硫酸カル
シウムと酸化カルシウムで乾燥し直接蒸留した乾燥精製
品を使用した。また、波長365nmの紫外線を発生す
る水銀ランプ(消費電力9ワット)を発光能試験と実施
例2における紫外線照射反応に用いた。
【0059】[実施例1:硫化物シェルとZnSe結晶
コアを有する超微粒子]空冷式のリービッヒ還流管と反
応液温測定用の熱電対を装着した3口フラスコにヘキサ
デシルアミン(HDAと略、4.442g)を入れ、真
空下125℃に加熱しながらマグネティックスターラー
で3時間攪拌して予備乾燥した。この間数回、乾燥アル
ゴンガスで内部を置換した。別途、乾燥窒素雰囲気のグ
ローブボックス内で、ジエチル亜鉛の1規定濃度n−ヘ
キサン溶液(0.71mL)、セレン(単体)のトリオ
クチルホスフィン(TOPと略)溶液(溶液濃度:0.
78ミリモル/g、0.607g)、及び追加のTOP
(2mL)を混合し第1原料溶液とした。また、硫黄
(単体)のTOP溶液(溶液濃度:0.78ミリモル/
gであり0.212gを使用)を更にTOP(1.5m
L)で希釈して第2原料溶液Aとした。これら原料溶液
における元素比はZn/Se/S=1/0.67/0.
23である。
【0060】第一工程・・・反応系をアルミニウム箔で
包んで遮光し、HDAの入ったフラスコはアルゴンガス
雰囲気下でほぼ大気圧に保ちながら330℃に昇温し、
攪拌を継続しながら前記の第1原料溶液を注射器で一気
に注入し、この時点を反応時間の開始とした。この時、
n−ヘキサンや原料からの分解生成物等の低沸点有機物
が一気に気化して還流管を通過するので注意を要する。
直ちに温度を290℃に設定して約60分攪拌を継続し
た後、温度を300℃に設定し、延べ460分反応を継
続した。
【0061】第二工程・・・第2原料溶液Aを注射器で
一気に注入した。該第2原料溶液A注入の前後で少量の
反応液を注射器で採取し過剰量のトルエンに溶解して3
50nmの波長の紫外光で励起したところ共に鋭い発光
帯が観測され、そのピーク波長はそれぞれ416nm及
び414nmであり、発光強度はほぼ同等であり、しか
も後者の測定でこれ以外の発光帯は観測されなかった。
従って、硫黄を含む該第2原料溶液Aの添加によりそれ
以前に系内に生成していたと考えられる416nmの発
光帯ピークを与えるZnSeのナノ結晶の表面が硫化さ
れ、その結果有効ZnSe径が減少して発光帯ピークが
414nmにシフトしたものと考えられ、しかもこの時
に別種類のナノ結晶(例えば余剰亜鉛原料と硫黄原料と
の反応によるZnS)は実質的に生成しなかったと考え
られた。更に約30分反応を継続してから、あらかじめ
別途125℃真空下で加熱攪拌して乾燥したトリオクチ
ルホスフィンオキシド(TOPOと略、2mL)を加え
て熱源を除去して空冷した。TOPO添加直後に前記同
様のサンプリングを行ったところ、350nmの波長の
紫外光励起での発光帯ピーク波長は414nmで不変で
あった。反応液が70℃程度まで冷却されたところでト
ルエン(2mL)を注射器で加えて希釈後室温まで冷却
した。この溶液をメタノール/n−ブタノール(それぞ
れ20mL/30mL)混合溶媒中に乾燥窒素雰囲気下
で滴下し、不溶物を遠心分離(3000回転/分、3分
間)した。デカンテーションにより上澄み液を除去して
得た沈殿物をトルエン(10mL)に再度溶解し、メタ
ノール/n−ブタノール(それぞれ10mL/15m
L)混合溶媒中に乾燥窒素雰囲気下で滴下し、不溶物を
前記同様に遠心分離した。デカンテーションにより上澄
み液を除去して得た沈殿物をトルエン(4mL)に再度
溶解し、メタノール/n−ブタノール(それぞれ8mL
/12mL)混合溶媒中に乾燥窒素雰囲気下で滴下し、
不溶物を前記同様に遠心分離した。こうして得た超微粒
子は、トルエンへの溶解性が良好であり透明な溶液を与
え、この溶液を大気中室温でガラス板に塗布して乾燥し
た薄膜は、大気暴露下で蛍光灯で照明された室内に数日
放置しても、前記の水銀ランプを照射すると塗布直後同
様に発光し発光能の低下は認められなかった。また、乾
燥固化させた超微粒子粉末のX線回折測定をリガク
(株)製RINT1500(X線源:銅Kα線、波長
1.5418Å)にて行ったところ、ZnSe結晶の2
20面と311面に帰属される回折ピークを観測したこ
とからZnSeナノ結晶構造の存在を確認した。この超
微粒子を日立製作所(株)製H−9000UHR型透過
電子顕微鏡(加速電圧300kV、観察時の真空度約
7.6×10-9Torr)で観察したところ、重量平均
粒子径約5nmの超微粒子であり、半導体結晶格子が超
微粒子像を構成していた。このZnSe超微粒子中の有
機化合物の含有量をセイコー(株)TG−DTA320
熱重量分析計(窒素気流下室温〜600℃、20℃/分
昇温)により測定したところ、50重量%であった。
【0062】[実施例2:硫化物シェル形成工程におけ
る紫外線照射の効果]実施例1と同様な遮光反応装置を
使い、HDA(12.43g)をフラスコに入れ、実施
例1同様の予備乾燥操作を行った。別途、乾燥窒素雰囲
気のグローブボックス内で、ジエチル亜鉛の1規定濃度
n−ヘキサン溶液(2.38mL)、実施例1と同一の
セレン(単体)のTOP溶液(2.038g)、及び追
加のTOP(3mL)を混合し第1原料溶液とし、実施
例1と同一の硫黄(単体)のTOP溶液(0.721
g)をTOP(2mL)で更に希釈して第2原料溶液B
とした。これら原料溶液における元素比は実施例1と同
じである。
【0063】第一工程・・・実施例1同様に330℃に
昇温し、攪拌を継続しながら前記の第1原料溶液を注射
器で一気に注入し、この時点を反応時間の開始とした。
この時、n−ヘキサンや原料からの分解生成物等の低沸
点有機物が一気に気化して還流管を通過するので注意を
要する。直ちに温度を310℃に設定して327分反応
を継続した。
【0064】第二工程・・・第2原料溶液Bを注射器で
一気に注入した。該第2原料溶液B注入の前後で実施例
1同様に発光スペクトルを測定したところ、発光帯のピ
ーク波長はそれぞれ419nm及び414nmであり、
発光強度はほぼ同等であり、しかも後者の測定でこれ以
外の発光帯は観測されなかった。従って、硫黄を含む該
第2原料溶液Bの添加によりそれ以前に系内に生成して
いたと考えられる419nmの発光帯ピークを与えるZ
nSeのナノ結晶の表面が硫化され、その結果有効Zn
Se径が減少して発光帯ピークが414nmにシフトし
たものと考えられ、しかもこの時に別種類のナノ結晶
(例えばZnS)は実質的に生成しなかったと考えられ
た。反応開始から延べ412分で熱源を除去したが、第
二工程継続の間に発光スペクトル測定における発光帯強
度の増大が観察された。室温まで冷却後、遮光状態のア
ルゴン雰囲気下で保存した。
【0065】紫外線照射・・・遮光用アルミニウム箔を
除去し、実施例1と同一の硫黄(単体)のTOP溶液
(1.18g)を追加し、内温を250℃に設定した。
内温が250℃で安定したところで、前記の水銀ランプ
をフラスコの外壁に密着固定して紫外線の照射を開始
し、478分間紫外線照射と250℃での加熱を継続し
た。この間、前記同様に発光スペクトルを観察したとこ
ろ、発光帯強度の増大と発光帯の長波長側の裾が消失す
る形での半値幅の顕著な減少が見られた。このことか
ら、生成したZnSe結晶が有すると考えられる表面準
位を経由する長波長側の望ましくない発光が、特に紫外
線照射下における硫化物シェルの形成により顕著に消失
し、エキシトン準位からの発光効率が向上したものと考
えられた。熱源を除去して空冷し、実施例1同様の沈殿
・遠心分離・再溶解を繰り返す精製を行った。こうして
得た超微粒子は、トルエンへの溶解性が良好であり透明
な溶液を与え、この溶液を大気中室温でガラス板に塗布
して乾燥した薄膜は、大気暴露下で蛍光灯で照明された
室内に数日放置しても、前記の水銀ランプを照射すると
塗布直後同様に発光し発光能の低下は認められなかっ
た。また、乾燥固化させた超微粒子粉末のX線回折測定
を実施例1同様に行ったところ、ZnSe結晶の220
面と311面に帰属される回折ピークを観測したことか
らZnSe結晶構造の存在を確認した。この超微粒子を
実施例1同様に透過電子顕微鏡観察を行ったところ、重
量平均粒子径約5nmの超微粒子であり、半導体結晶格
子が超微粒子像を構成していた。このZnSe超微粒子
中の有機化合物の含有量をセイコー(株)TG−DTA
320熱重量分析計(窒素気流下室温〜600℃、20
℃/分昇温)により測定したところ、55重量%であっ
た。
【0066】[実施例3:ZnSシェルとZnSe結晶
コアを有する超微粒子]空冷式のリービッヒ還流管と反
応液温測定用の熱電対を装着した3口フラスコにHDA
(9.0g)を入れ、真空下160℃に加熱しながらマ
グネティックスターラーで1時間攪拌して予備乾燥し
た。この間数回、乾燥アルゴンガスで内部を置換した。
別途、乾燥窒素雰囲気のグローブボックス内で、ジエチ
ル亜鉛の1規定濃度n−ヘキサン溶液(1.22m
L)、セレン(単体)のTOP溶液(溶液濃度:0.7
80ミリモル/g、この溶液を1.214g;セレンと
して0.946ミリモル)、及び追加のTOP(4m
L)を混合し第1原料溶液とした。また、ジエチル亜鉛
の1規定濃度n−ヘキサン溶液(1.07mL)、ビス
(トリメチルシリル)スルフィド(0.2257mL)
及びTOP(3mL)を混合して第2原料溶液Cとし
た。
【0067】第一工程・・・反応系をアルミニウム箔で
包んで遮光し、HDAの入ったフラスコはアルゴンガス
雰囲気下でほぼ大気圧に保ちながら330℃に昇温し、
攪拌を継続しながら前記の第1原料溶液を注射器で一気
に注入し、この時点を反応時間の開始とした。この時、
n−ヘキサンや原料からの分解生成物等の低沸点有機物
が一気に気化して還流管を通過するので注意を要する。
直ちに温度を290℃に再設定して、この時点を反応の
開始時刻とした。反応開始から5時間後にTOPO(4
g)を加え熱源を除去し約60℃に冷却された時点で無
水n−ブタノール(3mL)加えて希釈した。この反応
溶液を沈殿溶媒である無水メタノール/無水ブタノール
の2/3容量比混合液(100mL)に室温で注入して
沈殿を生成させこれを遠心分離(4000rpm)し、
上澄み液をデカンテーションにより除去した。こうして
得た固体沈殿をトルエン(1mL)に溶解し前記の沈殿
溶媒(20mL)に注入し前記同様に遠心分離とデカン
テーションを行い、得た固体を真空乾燥してZnSe結
晶粒子の固体粉末(0.2172g)を得た。こうして
得た固体粉末はトルエン、クロロホルムに可溶であり、
365nm波長の励起光を照射するとピーク波長が41
2nmである発光帯を与えた。
【0068】第二工程(ZnSシェル原料を滴下し次い
で昇温する製造方法例)・・・反応系として第一工程と
同様の装置を組み褐色パイレックス(登録商標)ガラス
製の3口フラスコ中にTOPO(4g)を入れ、180
℃で1時間減圧乾燥後、該反応系内温を60℃とし乾燥
アルゴン雰囲気とした。ここに、TOP(0.4mL)
と第一工程で得たZnSe結晶粒子の固体粉末(40m
g)をn−ヘキサン(2mL)に溶解したものを加え、
1時間減圧してn−ヘキサンを留去し、次いで乾燥アル
ゴンガス雰囲気として反応系内温を250℃とした。こ
こに第2原料溶液Cを13分間で滴下し終えた時点で温
度設定を200℃として数分で実温200℃に到達させ
た。第2原料溶液Cの滴下終了時から2時間後に温度設
定を250℃とし、以後同4時間後に280℃、同6時
間後に300℃にそれぞれ温度設定を変更し、同7時間
後に熱源を除去して室温まで放冷し、乾燥アルゴンガス
雰囲気下で一晩放置した。翌日、更に300℃での加熱
を更に1時間行った。これらの昇温反応に伴い、サンプ
リングした微量の反応液のトルエン溶液の励起波長36
5nmでの発光帯(ピーク波長416nm)の強度が顕
著に大きくなることが観察され、第2原料溶液C添加直
前のZnSeの発光帯のピーク発光強度に比べて、反応
終了後のZnSeの発光帯のピーク強度は11倍になっ
た。これは、ZnSe結晶コアの表面にZnSシェルが
形成され該コアの表面準位等を経由する非発光過程の寄
与が抑制されて発光強度が増大したものと考えられた。
この反応溶液を、沈殿溶媒である無水メタノール/無水
n−ブタノールの2/3容量比混合液(75mL)中に
室温で注入して沈殿を生成させこれを遠心分離(400
0rpm)し、上澄み液をデカンテーションにより除去
する単離操作を行った。こうして得た固体沈殿をトルエ
ン(2.5mL)に溶解し前記の沈殿溶媒(40mL)
に注入し、前記同様に遠心分離とデカンテーションを行
い、得た固体を真空乾燥してZnSシェルを有するZn
Se結晶粒子の固体粉末(0.0872g)を得た。原
料のZnSe結晶粒子と比較しての重量増加もZnSシ
ェル形成の傍証と考えられた。こうして得た固体粉末は
クロロホルムとトルエンに可溶であり、トルエン溶液は
励起波長365nmにおいて416nmの発光帯を与え
た。こうして得た超微粒子をトルエンへ溶解し、この溶
液を大気中室温でガラス板に塗布して乾燥した薄膜は、
大気暴露下で蛍光灯で照明された室内に数日放置して
も、大きな発光能の低下は認められなかった。 [比較例1:硫化物シェルのないZnSe結晶超微粒
子]実施例1の合成手順において、460分の時点で第
2原料溶液Aを加えず、代わりに実施例1で用いたと同
様にあらかじめ別途125℃真空下で加熱攪拌して乾燥
したTOPO(2mL)を加えた。波長350nmの紫
外光励起での発光帯ピークは直ちに386nmまで大き
く短波長シフトした。TOPO添加後、直ちに実施例1
同様に熱源を除去し、同様の沈殿・遠心分離・再溶解を
繰り返す精製を行った。乾燥固化させた超微粒子粉末の
X線回折測定を実施例1同様に行ったところ、ZnSe
結晶の220面と311面に帰属される回折ピークを観
測したことからZnSe結晶構造の存在を確認した。こ
の超微粒子を実施例1同様に透過電子顕微鏡観察を行っ
たところ、重量平均粒子径約5nmの超微粒子であり、
半導体結晶格子が超微粒子像を構成していた。このZn
Se超微粒子中の有機化合物の含有量を実施例1同様に
測定したところ、65重量%であった。こうして得た超
微粒子のトルエン溶液を、大気中室温でガラス板に塗布
して乾燥した薄膜は、大気暴露下で蛍光灯で照明された
室内に数日放置したところ波長365nmの紫外線を発
生する水銀ランプ照射での発光能が大きく低下した。
【0069】
【発明の効果】本発明の超微粒子は、セレン化亜鉛に代
表されるカルコゲン化亜鉛結晶コアとその表面に形成さ
れた硫化物シェルを有し、しかも有機配位子を結合した
ものであるので、従来にない高い発光性、改善された化
学的安定性等の耐環境安定性、及び有機媒質への優れた
溶解性を有する。従って、ディスプレイや照明器具等に
用いられる面状発光体の原料として使用可能な材料であ
る。

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 カルコゲン化亜鉛結晶コアと硫化物シェ
    ルから構成されるコア−シェル粒子であって、該粒子表
    面に有機配位子が結合されてなる半導体超微粒子。
  2. 【請求項2】 有機配位子がホスフィンオキシド類であ
    る請求項1に記載の半導体超微粒子。
  3. 【請求項3】 超微粒子の有機配位子含量が5〜60重
    量%である請求項1又は2に記載の半導体超微粒子。
  4. 【請求項4】 カルコゲン化亜鉛がセレン化亜鉛である
    請求項1〜3のいずれかに記載の半導体超微粒子。
  5. 【請求項5】 カルコゲン化合物のホスフィン類溶液と
    ジアルキル亜鉛とを液相で加熱反応させる第一工程と、
    第一工程の生成物を含有するホスフィンオキシド類を主
    体とする液相に硫黄含有化合物を添加して反応させる第
    二工程とを含む、請求項1〜4のいずれかに記載の半導
    体超微粒子の製造方法。
  6. 【請求項6】 第一工程におけるカルコゲン元素/亜鉛
    のモル比が1未満である請求項5に記載の半導体超微粒
    子の製造方法。
  7. 【請求項7】 硫黄含有化合物が単体の硫黄又はそのホ
    スフィン類複合体である請求項5又は6に記載の半導体
    超微粒子の製造方法。
  8. 【請求項8】 第二工程の反応液相に光を照射する請求
    項5〜7のいずれかに記載の半導体超微粒子の製造方
    法。
  9. 【請求項9】 第二工程において反応温度を50〜15
    0℃昇温させる請求項5〜8のいずれかに記載の半導体
    超微粒子の製造方法。
  10. 【請求項10】 第二工程において硫黄含有化合物を分
    割又は連続して添加する請求項5〜9のいずれかに記載
    の半導体超微粒子の製造方法。
  11. 【請求項11】 請求項1〜4のいずれかに記載の半導
    体超微粒子を含有する薄膜状成形体。
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