JP2004075464A - 半導体超微粒子及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】従来にない高い発光強度、粒径分布の単分散性、良好な溶剤溶解性及び優れた塗膜性を兼ね備えた付活剤により付活した亜鉛と16族の元素からなる半導体超微粒子を提供する。
【解決手段】ホスフィンオキシド類及びアルキルアミン類を配位子として含有し、付活剤により付活された、亜鉛と16族元素とからなる半導体超微粒子、及びこれを含有する薄膜状成形体、ならびに、アルキルアミン類中で、付活剤により付活された、亜鉛と16族元素とからなる半導体微結晶を合成する第一工程と、第一工程によって得られる半導体微結晶にホスフィンオキシド類を接触させる第二工程とを含む半導体超微粒子の製造方法。
【選択図】 なし
【解決手段】ホスフィンオキシド類及びアルキルアミン類を配位子として含有し、付活剤により付活された、亜鉛と16族元素とからなる半導体超微粒子、及びこれを含有する薄膜状成形体、ならびに、アルキルアミン類中で、付活剤により付活された、亜鉛と16族元素とからなる半導体微結晶を合成する第一工程と、第一工程によって得られる半導体微結晶にホスフィンオキシド類を接触させる第二工程とを含む半導体超微粒子の製造方法。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高い発光強度、粒径分布の単分散性、良好な溶剤分散性、及び優れた塗膜性を兼ね備えた半導体超微粒子及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体ナノ結晶等の半導体超微粒子は、エネルギー準位の量子化によりバルク結晶とは異なる特異的な光学特性を示す(量子サイズ効果)ことが注目されている。例えば、半導体超微粒子は、半導体結晶の基礎吸収の長波長側吸収端よりもわずかに低エネルギーに現れるエキシトン(励起子)吸収帯のピーク位置を、粒径を変えることで制御することができる。また、付活剤により付活された半導体超微粒子も同様な特性を持ち、特にバルクよりも優れた発光能を持つことから注目されている。このように、半導体超微粒子はバルクとは異なる電磁波の吸収及び発生能(以下、吸発光能という)を示すことから、発光材料や記憶材料としての利用が期待されている。
【0003】
半導体超微粒子の特性を利用した用途としては、例えば、薄膜状のディスプレイパネル、発光ダイオード、光ディスクの超解像膜、光導波路等、様々なものが考えられるが、これらのものに応用するためには、粒径分布が狭く、量子サイズ効果による吸発光能を維持したまま、有機溶剤への良好な分散性、及び優れた塗膜性をもつ半導体超微粒子が必要である。
【0004】
有機溶剤への良好な分散性を有する半導体微粒子の製造方法としては、CdSeやCdSのナノ結晶に対する配位子としてトリオクチルホスフィンオキシドを用いて合成する方法が報告されている(例えば、J.E.B.Katariら;J.Phys.Chem.,98巻,4109−4117(1994)参照)。また、ヘキサデシルアミン中でZnSe超微粒子を合成し、そこへトリオクチルホスフィンオキシドを加えることで良好な溶剤分散性を持つZnSe超微粒子を合成する方法も紹介されている(例えば、特開2001−262138号公報参照)。
【0005】
これらの半導体超微粒子は良好な発光特性を示すが、すべてバンドギャップ間遷移由来の発光である。バンドギャップ間遷移由来の発光は半導体超微粒子の粒径を変化させることでその発光波長を変化させることができる。しかし、それと同時に吸収帯の波長も変化するため、特定波長の励起光で励起させたいときに問題が生じる場合がある。例えば、次世代レーザーとして有力な窒化ガリウムを用いて作られる405nm波長の紫色半導体レーザーを励起光として用いた場合、量子サイズ効果によりバンドギャップが増大することにより吸収帯の波長が405nmよりも小さくなると、荷電子帯の電子が励起されず全く発光しなくなるという問題が生じることとなる。
【0006】
吸収帯の波長を一定にして発光帯のピーク位置を変化させる方法としては、付活剤により付活された半導体超微粒子が挙げられ、発光サイトとなる付活剤の種類を変えることで吸収帯の波長を変えずに発光帯の波長を変化させることが可能となる。このような付活剤により付活した半導体超微粒子の製造例としては、有機金属を前駆体として高温のヘキサデシルアミン中でMnにより付活されたII−VI族半導体超微粒子を製造する方法が提案されている(例えば、特開2002−97100号公報参照)。しかし、ヘキサデシルアミンのようなアルキルアミン類は結晶化し易く、この手法で製造された半導体超微粒子は配位子が結晶化するため、薄膜化した場合に透明性が低下するという問題があった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は前記の実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、高い発光強度、粒径分布の単分散性、良好な溶剤分散性及び優れた塗膜性を兼ね備えた半導体超微粒子の提供にある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者は上記の目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、特定の化合物を配位子として含有し、特定の付活剤により付活された半導体超微粒子とすることで、高い発光強度、粒径分布の単分散性、良好な溶剤分散性及び優れた塗膜性を兼ね備えた半導体超微粒子とすることに成功し本発明に到達した。即ち本発明の要旨の一つは、ホスフィンオキシド類及びアルキルアミン類を配位子として含有し、付活剤により付活された、亜鉛と16族元素とからなる半導体超微粒子、及びこれを含有する薄膜状成形体に存する。
また、溶融したアルキルアミン類中で付活剤により付活された半導体超微結晶を合成し、次いでその微結晶にホスフィンオキシド類を接触させることにより、高い発光強度、粒径分布の単分散性、良好な溶剤分散性及び優れた塗膜性を兼ね備えた半導体超微粒子を合成することに成功し本発明に到達した。即ち本発明の別の要旨は、アルキルアミン類中で、付活剤により付活された、亜鉛と16族元素とからなる半導体微結晶を合成する第一工程と、第一工程によって得られる半導体微結晶にホスフィンオキシド類を接触させる第二工程とを含む半導体超微粒子の製造方法に存する。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について、詳細に説明する。
[半導体超微粒子]
本発明の半導体微粒子は、ホスフィンオキシド類及びアルキルアミン類を配位子として含有し、付活剤により付活された、亜鉛と16族元素とからなる半導体超微粒子である。ここで、亜鉛と16族元素とからなる半導体微粒子とは、主として亜鉛と16族元素との化合物からなる結晶粒子から構成されるものである。さらに、本発明の半導体微粒子は、付活剤により付活されており、ホスフィンオキシド類およびアルキルアミン類を配位子としてその表面に結合されたものである。
【0010】
ホスフィンオキシド類及びアルキルアミン類は通常、亜鉛原子に配位結合し、かかる配位結合の存在はX線光電子分光スペクトルあるいはこれらと核磁気共鳴スペクトルや赤外吸収スペクトル等の有機化合物で用いられるスペクトル法との併用により確認が可能である。なお、亜鉛と16族元素とからなる結晶粒子の表面に結合したホスフィンオキシド類やアルキルアミン類は、必ずしもその分子構造がそのまま保たれていなくてもよい。
【0011】
本発明における亜鉛と16族元素とからなる結晶粒子の具体的組成としては、ZnO、ZnS、ZnSe、ZnTeのような化合物が挙げられ、これらの粒子の混合物や混合結晶粒子であってもよい。中で、ZnS、ZnSeが合成の容易性の点で好ましく、特に無毒性の点でZnSが好ましい。
本発明の半導体超微粒子は後述する付活剤を含有するが、本発明の効果を損なわない範囲で、該付活剤以外の他の化合物や元素を半導体微粒子中に含んでいてもよい。
【0012】
本発明の半導体超微粒子の大きさは、透過型電子顕微鏡(TEM)で観察される亜鉛と16族元素とからなる結晶粒子の数平均粒径として、通常1nm以上、好ましくは1.5nm以上、更に好ましくは2nm以上であり、通常10nm以下、好ましくは8nm以下、更に好ましくは5nm以下である。数平均粒径が前記範囲未満である場合は、原子数が少なすぎるために半導体としての特徴を示さない場合があり、前記範囲を超過する場合は、超微粒子特有の量子サイズ効果を示さない場合がある。なお、TEMで観察される粒子像は、有機配位子を含まない部分(結晶粒子)に由来するものと考えられる。
【0013】
また、本発明の半導体超微粒子の粒径分布の標準偏差は、数平均粒径に対して通常20%以下、好ましくは18%以下、さらに好ましくは15%以下とする。標準偏差が前記範囲を超過する場合は、吸収帯の幅が広くなり、十分な吸収能を発揮しない場合がある。ここで、標準偏差(σ)とは、TEMの観察写真より測定した各々の超微粒子の粒径(di)から数平均粒径(d)を引いたものの2乗の総和を粒子数(n)で割った値の平方根をいい、式(1)で表される。なお、前記の数平均粒径および標準偏差は、TEMの観察写真より実測にて求めることが出来るが、画像解析処理装置等を用いてもよい。
【0014】
【式1】
本発明の半導体超微粒子は、200〜700nm域に吸収スペクトルのピークを有する吸収帯をもち、かつ、該吸収帯の半値幅が、好ましくは35nm以下、更に好ましくは30nm以下、特に好ましくは25nm以下である場合がよい。該吸収帯の半値幅が小さいほど特定波長での吸収効率が増大するので好ましい。ここで半値幅とはピーク波長での吸光度を1に規格化したときに、吸光度0.5の値を取るピークより長波長側の波長の値からピーク波長の値を減じ、その値を2倍にした値と定義する。
[付活剤]
本発明において付活剤とは、蛍光体中に微量含まれ、禁制帯の中にある準位を形成し、その準位が発光中心となる性質を有する化合物を意味し、具体的には、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Ag、Al等の遷移金属、F、Cl等のハロゲン原子、及びLa、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Dy、Ho、Er、Tm、Yb等の希土類元素等の元素を含む化合物が挙げられる。これらの中でも、発光色の点からMn、Ag、Cu、Ce、Tb、Eu、Tmが好ましく、Mnが特に好ましい。また、これらの元素を複数種含んでいてもよい。付活剤は、前記の元素を有し、前記の付活剤としての特性を示すものであれば、化合物の構造は限定されない。また、付活剤はその特性を示せば結晶粒子の内部に存在していても、結晶粒子表面に存在していてもよい。
【0015】
付活剤の含有量は、亜鉛と16族元素とからなる結晶粒子中の亜鉛元素に対して、通常20モル%以下、好ましくは10モル%以下、さらに好ましくは5モル%以下の範囲である。付活剤の含有量が前記範囲を超える場合は濃度消光(付活剤濃度を増加していくと、ある濃度以上では発光強度が低下する現象)を起こす場合があるため好ましくない。
[配位子]
本発明における亜鉛と16族元素とからなる結晶粒子に配位している配位子の構成成分としては、ホスフィンオキシド類、及びアルキルアミン類を必須の成分とする。ホスフィンオキシド類は一般式(1)で表される。
【0016】
【化1】
R1R2R3P=O (1)
上記式(1)中、R1,R2,及びR3は互いに独立な任意のアルキル基又はアリール基を表す。かかるアルキル基の炭素数は通常1〜20、好ましくは3〜16、更に好ましくは4〜12、最も好ましくは6〜10であり、具体的にはイソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基等が例示でき、中でもヘキシル基、オクチル基、及びデシル基が好適である。アリール基としては、フェニル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、クミル基等が例示できる。好適なホスフィンオキシド類としては、トリブチルホスフィンオキシド、トリヘキシルホスフィンオキシド、トリオクチルホスフィンオキシド(TOPO)、トリデシルホスフィンオキシド等が例示でき、中でもTOPOが最も好適に用いられる。なお、複数種のホスフィンオキシド類を併用してもよい。
【0017】
また、アルキルアミン類は、1級、2級、3級アミンの何れでもよいが、中でも1級アミンが好適である。アルキル基の炭素数は通常2〜30、好ましくは5〜25、更に好ましくは7〜20、最も好ましくは8〜18であり、具体的にはイソブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、ヘキサデシル基等が例示でき、中でもオクチル基、デシル基、ドデシル基、ヘキサデシル基が好適である。好適なアミン類としては1−デシルアミン、1−ドデシルアミン、1−ヘキサデシルアミン等が例示できる。なお複数種のアルキルアミン類を併用してもよい。
【0018】
ホスフィンオキシド類は、一般式(1)の構造より、酸素原子を頂点とした三角錐形の分子構造をもつため、半導体に配位する際に立体障害による隙間が生じてしまい、粒子を十分に被覆することができないといった問題が生じるが、アルキルアミン類を同時に含むことでホスフィンオキシド類の間にアルキルアミン類が入り込むため、半導体結晶表面の欠陥をより多く被覆し、表面欠陥に起因する励起エネルギーの非発光緩和への寄与を低減することができる(パッシベーション)。一方、アルキルアミン類は結晶化しやすいため、配位子中にホスフィンオキシド類を含まない場合は、結晶粒子表面でアルキルアミンが結晶化してしまい、この結果、例えばスピンコート法等により薄膜状としたときに濁りが生じる(透明性が低下する)という問題があるが、ホスフィンオキシド類を同時に含むことで薄膜状としたときの濁りを防ぐことが可能となる。
【0019】
本発明の半導体超微粒子は、ホスフィンオキシド類及びアルキルアミン類を配位子として含有する限りにおいて、その製造工程で使用される任意の有機化合物、例えばホスフィン類等が結合されていてもよいが、ホスフィンオキシド類の割合は、半導体超微粒子に配位結合している総配位子中の20〜80モル%が好ましく、25〜70モル%が更に好ましく、30〜60モル%が特に好ましい。ホスフィンオキシド類の割合が前記範囲であると、塗膜性が良好であるため好ましい。また、アルキルアミン類の割合は、半導体超微粒子に配位結合している総配位子中の10〜70モル%が好ましく、15〜60モル%が更に好ましく、20〜55モル%が特に好ましい。アルキルアミン類の割合が前記範囲であると、粒子表面の被覆率が高くなるため好ましい。また、配位子におけるN/Pの元素組成は、0.3〜3が好ましく、0.5〜2が更に好ましい。N/Pの元素組成が前記範囲である場合は、良好な塗膜性と高い粒子表面の被覆率を兼ね備えるため好ましい。これら、配位子中のホスフィンオキシド類の量比、アルキルアミン類の量比、N/Pの元素組成等は、元素分析等により確認することができる。
【0020】
なお、本発明の半導体超微粒子における有機成分含有量は、該超微粒子の粒径あるいは表面積にもよるが、後述する単離精製工程を経て十分に精製された半導体超微粒子の状態で、通常10〜70重量%、有機溶剤への溶解性や塗膜性の点で好ましくは20〜60重量、更に好ましくは30〜50重量%程度である。該有機成分含量は、例えば窒素ガス等の不活性気体気流下での熱重量分析により測定される。
[原料]
本発明の半導体超微粒子の合成に好ましく用いられる原料を以下に記載する。
【0021】
亜鉛源としては、反応により16族元素と結合可能な亜鉛化合物であれば限定されないが、具体的には、ジメチル亜鉛、ジエチル亜鉛等のジアルキル亜鉛類、塩化メチル亜鉛、臭化メチル亜鉛、ヨウ化メチル亜鉛等のアルキルハロゲン化亜鉛類、二塩化亜鉛、二臭化亜鉛、二ヨウ化亜鉛、塩化ヨウ化亜鉛等のジハロゲン化亜鉛類、蟻酸亜鉛、酢酸亜鉛、プロピオン酸亜鉛、シュウ酸亜鉛等の亜鉛のカルボン酸塩、硝酸亜鉛、硫酸亜鉛、リン酸亜鉛等の亜鉛の鉱酸塩等が挙げられる。これらのうち、後述するホットソープ法の原料に好適なのは、ジメチル亜鉛、ジエチル亜鉛、ジ−n−プロピル亜鉛等の総炭素数5以下のジアルキル亜鉛類であり、中でもジメチル亜鉛又はジエチル亜鉛が最適である。
【0022】
一方、16族元素源としては、熱等で分解し、反応により亜鉛と結合可能な化合物であれば限定されないが、例えば硫黄、セレン、テルル等の周期律表16族元素の単体、硫化水素、セレン化水素、テルル化水素等の周期律表16族元素の水素化物、ビス(トリメチルシリル)スルフィド、ビス(トリメチルシリル)セレニド等の周期律表16族元素のシリル化物、硫化ナトリウム、セレン化ナトリウム等の周期律表16族元素のアルカリ金属塩、水硫化ナトリウム(NaHS)、水セレン化ナトリウム(NaHSe)等の周期律表16族元素の水素化物のモノアルカリ金属塩、硫化アンモニウム等が挙げられる。これらのうち、反応性や化合物の安定性、操作性の点で、硫黄、セレン、テルル等の周期律表16族元素の単体、硫化水素等の周期律表16族元素の水素化物、ビス(トリメチルシリル)スルフィド等の周期律表16族元素のシリル化物、硫化ナトリウム、セレン化ナトリウム等の周期律表16族元素のアルカリ金属塩が特に好適に用いられる。
【0023】
また、付活剤の原料としては前記した付活剤に用いられる元素の塩化物、カルボン酸塩、鉱酸塩、アセチルアセトナト錯体等のβ−ジケトン錯体、アルキル化物等が挙げられる。これらのうち、反応性や化合物の安定性、操作性の点で、塩化物、カルボン酸塩、β−ジケトン錯体が特に好適に用いられる。
さらに、本発明の半導体超微粒子は、本発明の効果を損なわない範囲で、その他の化合物や元素を原料として添加することもできる。
[製造方法]
本発明の半導体超微粒子は、溶液法や真空法等の任意の方法により製造されるが、熱分解性原料を高温の液相有機媒体に注入して結晶成長させる、いわゆるホットソープ法が最も好適に用いられる。
【0024】
ホットソープ法による製造方法としては、例えば、亜鉛化合物半導体源及び付活剤源をアルキルアミン類中に供給し、付活剤により付活された亜鉛化合物微結晶を合成する第一工程と、第一工程によって得られた亜鉛化合物微結晶にホスフィンオキシド類を接触させる第二工程とを含む製造方法により好適に得ることが出来る。
【0025】
前記の第一工程は、付活剤により付活された亜鉛化合物微結晶の結晶成長過程であり、アルキルアミン類の亜鉛化合物への配位力が適度であるため、粒径分布が狭く単分散に近い亜鉛化合物微結晶が生成する。
第一工程において、アルキルアミン類は、溶融状態または溶液であることが好ましい。原料化合物を供給する供給速度には制限はないが、生成する半導体結晶の粒径分布を狭くする場合には、短時間に所定量の原料化合物を注入することが好ましく、通常60秒以内、好ましくは30秒以内、更に好ましくは10秒以内がよい。また、原料化合物を供給後の適切な結晶成長反応時間(流通法の場合には滞留時間)は、化合物種や所望の粒径あるいは反応温度により変動するが、代表的な条件としては、200〜350℃程度の反応温度で1分〜10時間程度である。
【0026】
アルキルアミン類中へ供給する原料化合物は、化合物をそのまま供給してもよいが、例えばホスフィン類や炭化水素類や芳香族炭化水素類等の適当な希釈溶剤を用いて溶液として供給してもよい。特にホスフィン類はカルコゲン化合物や金属と複合体を形成するため、有用な希釈溶剤となる場合がある。半導体結晶の原料化合物が複数種ある場合は、これらをあらかじめ溶液中に混合しておいても良く、あるいはこれらをそれぞれ単独で供給してもよい。
【0027】
前記の第二工程は、ホスフィンオキシド類が亜鉛化合物微結晶へ配位する過程であり、付活剤により付活された亜鉛化合物微結晶にホスフィンオキシド類が配位することにより、発光強度の増大、有機溶剤への分散性、及び塗膜性を向上することが出来る。第二工程を施すことによって発現する発光強度の増大は、前述したようなホスフィンオキシド類とアルキルアミン類のパッシベーションによる表面欠陥を埋めてエネルギー損失を埋める効果、及びその損失低下分がホスフィンオキシド類のP=O基を介して付活剤のサイトへ供給されることが原因と推測される。
【0028】
第二工程において、付活剤により付活された亜鉛化合物微結晶とホスフィンオキシド類との接触時期は、第一工程で付活剤により付活された亜鉛化合物微結晶の結晶成長が起こった後であれば特に限定されず、結晶成長後の反応液相中にホスフィンオキシド類を添加する方法、あるいは、結晶成長後の亜鉛化合物超微粒子を一旦精製・分離した後で再度液相中のホスフィンオキシド類と接触させる方法等を採用することができるが、結晶成長後の反応液相中にホスフィンオキシド類を添加する方法の方が製造工程が簡便となるため好ましい。
【0029】
また、結晶成長後の反応液相中にホスフィンオキシド類を添加する場合の添加量は、反応系に存在するアルキルアミン類のモル量に対して、通常0.05〜10倍、好ましくは0.1〜8倍、更に好ましくは0.3〜5倍のモル量とする。ホスフィンオキシド類を亜鉛化合物微結晶に接触させるときの温度としては、通常60〜300℃、好ましくは80〜260℃、さらに好ましくは100〜220℃とする。また、接触時間は通常、1分〜24時間、好ましくは5分〜12時間、さらに好ましくは10分〜6時間である。
【0030】
さらに、第二工程では、ホスフィンオキシド類100重量%に対し、0.1〜20重量%のホスホン酸類またはホスフィン酸類を含有させることができる。ホスホン酸類またはホスフィン酸類を前記の範囲で含有することにより、発光効率が向上する場合がある。この際に用いるホスホン酸類としては、ブチルホスホン酸、オクチルホスホン酸、デシルホスホン酸、テトラデシルホスホン酸等が挙げられ、ホスフィン酸類としては、ジブチルホスフィン酸、ジオクチルホスフィン酸、ジデシルホスフィン酸、ジテトラデシルホスフィン酸等が挙げられる。これらホスホン酸類またはホスフィン酸類は、第二工程でホスフィンオキシド類とともに添加することも出来るが、前記の通り、第一工程にて原料化合物を溶解する溶剤として添加しておくこともでき、更には、原料化合物を添加する前のアルキルアミン中に添加しておくことも出来る。
【0031】
得られた本発明の半導体超微粒子は、通常、遠心分離、デカンテーション、濾過、溶剤置換、溶剤洗浄、乾燥等の工程を経て精製される。精製された半導体超微粒子は、乾燥固体として得ることもできるが、未反応物などを置換除去することにより分散液として得ることもできる。
[薄膜状成形体]
本発明の半導体超微粒子は、常法により成形して様々な用途に応用可能であるが、一例としてはその優れた塗膜性を利用した薄膜状成形体が挙げられる。
【0032】
かかる薄膜状成形体は、前記の製造方法で得られる本発明の半導体超微粒子を適当な溶剤に分散し、これを所望の基板の上に流延塗布することにより成形可能である。ここで溶剤とは、本発明の半導体超微粒子を分散可能な液体を意味し、半導体超微粒子を溶解する液体を意味するものではない。半導体超微粒子を分散する溶剤は限定されないが、例えばトルエン等の芳香族系溶剤、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶剤、あるいはクロロホルム、塩化メチレンやクロロベンゼン等のハロゲン化溶剤、ヘキサン、オクタン等の炭化水素系溶剤、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール系溶剤等が挙げられ、これらの2種以上を混合して用いてもよい。さらには、水と相溶する溶剤の場合は、水を添加することもできる。塗布する基板は限定されないが、例えば、ガラス基板、インジウムドープ錫酸化物(通称ITO)や金属あるいはグラファイト等の導電性基板、シリコン等の半導体基板、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル樹脂、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリオレフィン系樹脂等の樹脂シートやフィルム、板材等が挙げられ、これらの積層体であってもよい。塗布手段としては、スピンコーター、ナイフコータ、ロールコータ、スプレー、刷毛、ローラーによる方法等があり、何れの手段をも採用することが出来る。
本発明の半導体超微粒子を含有する分散液中の該超微粒子の濃度は特に限定されるものではなく、塗布方法や目的とする膜厚等により異なるが、通常0.01〜1000mg/mL、好ましくは0.1〜100mg/mL程度である。
【0033】
また、かかる薄膜状成形体は、ポリメチルメタクリレート樹脂(PMMA)、ポリスチレン樹脂、スチレン−アクリロニトリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、透明ポリオレフィン系樹脂等の透明樹脂マトリクス、あるいはテトラエトキシシラン等の金属アルコキシド類の加水分解縮合(いわゆるゾル−ゲル法)により合成されるシリカ等のガラスマトリクス等の透明マトリクス材料中に、本発明の半導体超微粒子を分散して得られる組成物を製膜して製造されてもよい。この場合、これらのマトリクス物質を、本発明の超微粒子を含有する分散液にあらかじめ溶解しておき、次いでこれを基材上に塗布及び乾燥して製膜してもよく、あるいは本発明の半導体超微粒子をテトラエトキシシラン等の金属アルコキシド類を含む溶液にあらかじめ溶解あるいは分散しておき、次いでゾル−ゲル法反応を進行させてガラスマトリクス組成物として製膜してもよく、更には、溶融したマトリクス物質中に半導体超微粒子を分散したものを冷却固化して製膜することもできる。
【0034】
また、前記のマトリクス物質の原料となるモノマー類(例えばスチレン、メチルメタクリレート、テトラエトキシシラン等)を、半導体超微粒子を分散した溶剤中に添加し、該モノマーを重合することで組成物としてもよく、モノマーの重合は製膜の前であっても製膜後であってもよい。該モノマーは、本発明の半導体超微粒子を合成時に第一工程または第二工程の溶液に添加することも出来るが、化合物半導体の合成温度に重合が適さない場合がある。
【0035】
上述したような方法の他、使用される超微粒子自身あるいはこれを透明樹脂マトリクス等に分散した組成物が熱可塑性を有する場合には、溶剤を用いた塗布を行わずに、Tダイ成形法、ブロー成型法、インフレーション成型法等の汎用的な加熱溶融押し出し製膜法の適用も可能であり、更には、射出成形や圧縮成形によって薄膜状成形体を得ることも出来る。
【0036】
このようにして得られる薄膜の膜厚、大きさ、形状、表面および内部の性質(例えば平面、球面、曲面、凹面、凸面、多孔質の面、平滑性、あるいは厚さの分布等の属性)には特に制限はないが、例えば膜厚は、通常1nm以上(半導体微粒子の単層)であり、通常100μm以下、好ましくは10μm以下、より好ましくは1μm以下程度である。
【0037】
本発明の薄膜状成形体には、その効果を著しく損なわない限りにおいて、任意の添加剤、例えば熱安定剤、紫外線等の光線吸収剤、酸化防止剤、酸素補捉剤、吸湿剤等を添加することも可能である。
上述した本発明の薄膜状成形体は高い発光強度を有するため、該超微粒子の発光特性を生かしたディスプレイや照明器具等に用いられる面状発光体等の光学材料として産業上有用である。
【0038】
【実施例】
以下に実施例により本発明の具体的態様を更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、これらの実施例によって限定されるものではない。
なお、原料試薬は、特に記載がない限り、市販の試薬を精製を加えず使用した。
[測定装置と条件等]
(1)吸収スペクトル: 紫外・可視吸光光度計(HEWLETT PACKARD社製 HP8453型)を使用し、溶液サンプルを光路長1cmの石英セル中で測定した。
(2)発光スペクトル: 分光蛍光光度計((株)日立製作所製 F4500型)を使用し、溶液サンプルを光路長1cmの石英セル中で測定した。測定の際にはスペクトル補正のモードを用い、サンプル固有のスペクトルを求めた。
(3)透過型電子顕微鏡(TEM)観察: 透過電子顕微鏡((株)日立製作所製 H−9000UHR型)を使用し、加速電圧200kVにて観察した。数平均粒径及び標準偏差は電子顕微鏡写真の粒子像をノギスで200個以上測定して算出した。
(4)熱重量分析(TG): セイコーインスツルメンツ(株)製TG−DTA320型により、200mL/分の窒素気流下、アルミニウム皿の上で、昇温速度10℃/分で昇温し、140℃で30分間保持した後、次いで最高設定温度590℃(サンプル直下の実測温度は602〜603℃程度)で120分間保持した。
(5)膜厚測定: 断面、表面粗さ微細形状測定装置(ケーエルエー・テンコール社製 P−15型)を使用し、走査長さ10mm、走査速度0.2mm/秒、針圧0.2〜1.0mgの条件で行った。
【0039】
実施例1
空冷式のリービッヒ還流管と反応液温測定用の熱電対を装着した褐色ガラス製の3口フラスコにヘキサデシルアミン(東京化成社製。以下、HDAと略記。)4.5gを入れ、30分間アルゴンガスをフローすることで内部をアルゴンガス置換した。別途、乾燥窒素雰囲気のグローブボックス内で、ジエチル亜鉛(Aldrich社製)の1規定濃度のn−ヘキサン溶液0.61mLと塩化マンガン(Aldrich社製)3.6mgとをトリオクチルホスフィン(Aldrich社製。以下TOPと略記。)7.0mLに溶かした溶液の一部1.5mLと、ビス(トリメチルシリル)スルフィド(Fluka社製)0.1287mLをTOP2.0mLに溶解した原料溶液とを、セプタムで封をしたガラス瓶中に調製した。
【0040】
第一工程・・・反応系をアルミニウム箔で包んで遮光し、HDAの入ったフラスコはArガス雰囲気下でほぼ大気圧に保ちながら330℃に昇温し、攪拌を継続しながら前記の原料溶液を注射器で一気に注入し、この時点を反応時間の開始とした。この時、n−ヘキサンや原料からの分解生成物等の低沸点有機物が一気に気化して還流管を通過するので注意を要する。原料溶液を添加後、直ちに温度を300℃に設定して60分攪拌を継続した。
【0041】
第二工程・・・第一工程で製造した反応溶液の温度を200℃まで下げ、加熱して溶融したトリオクチルホスフィンオキシド(Strem Chemical社製、純度90%。以下TOPOと略記)3.0gを加え、200℃での加熱を60分継続した。ここで、少量の反応液を注射器で採取し、過剰量のヘキサンに溶解して250nm波長の紫外光で励起したところMn2+由来の発光帯が観測され、そのピーク波長580nmの発光強度は第一工程終了時に比べて約6倍に増大していた。
【0042】
その後、熱源を除去し反応液が70℃程度まで冷却されたところで無水n−ブタノール(Aldrich社製)10mLを注射器で加えて希釈後室温まで冷却した。この溶液を無水メタノール(Aldrich社製)25mL中に滴下し、遠心分離(3000回転/分、5分間)した。デカンテーションにより上澄み液を除去して得た沈殿物をトルエン30mLに再度分散した後、前記同様の遠心分離によって副生成物と思われる不溶物を除去した後、N2フローによって20mLまで溶液を濃縮した。この溶液を無水メタノール/無水n−ブタノール(それぞれ15mL/10mL)混合溶剤中に滴下し、不溶物を前記同様に遠心分離した。デカンテーションにより上澄み液を除去して得た沈殿物をトルエン6.0mLに再度分散し、孔径0.2μmのメンブランフィルターで濾過してN2フローで溶液を2.0mLまで濃縮した後に無水メタノール/無水n−ブタノール(それぞれ15mL/10mL)混合溶剤中に滴下し、前記同様に遠心分離した。得られた不溶物を一晩真空乾燥することで、茶色固体106mgを得た。
こうして得た茶色固体は、ヘキサン、トルエン、クロロホルム、テトラヒドロフラン等に均一分散することが可能であった。ヘキサンに分散した分散液の吸収スペクトルを測定した結果、ピーク波長はZnS超微粒子の吸収帯である286nmに持ち、該吸収帯の半値幅は24nmであった(図1を参照)。また、励起光250nmで発光スペクトルを測定した結果、Mn2+サイト由来の発光帯と一致するオレンジ色の発光帯(ピーク波長579nm)を与えた(図2を参照)。これらのことから、得られた茶色固体がMn2+により付活されたZnS半導体超微粒子であることを確認した。
【0043】
得られた半導体超微粒子を透過電子顕微鏡で観察したところ、単分散な超微粒子が観察され、また半導体結晶格子が超微粒子像を構成していた。半導体超微粒子の数平均粒径は2.4nmであり、数平均粒径に対する標準偏差は13%であった。半導体超微粒子中の有機配位子の含有量を測定するために熱重量分析を行ったところ、45重量%であった。また元素分析により分析したN/Pの元素組成が1.52であったことから、配位子中60%がHDA、40%がTOPOであった。
実施例2
実施例1の塩化マンガン3.6mgをシクロヘキシル酪酸マンガン(Aldrich社製)12mgに変更した以外は実施例1と同様の原料および操作にて、実施例1における第一工程を行った。
【0044】
第二工程・・・第一工程で製造した反応溶液の温度を200℃まで下げ、加熱して溶融したTOPO3.0gとテトラデシルホスホン酸90mgを加え、200℃での加熱を60分継続した。ここで、少量の反応液を注射器で採取し、過剰量のヘキサンに溶解して250nm波長の紫外光で励起したところMn2+由来の発光帯が観測され、そのピーク波長580nmの発光強度は第一工程終了時に比べて約9倍に増大していた。
【0045】
その後、熱源を除去し反応液が80℃程度まで冷却されたところで無水n−ブタノール10mLを注射器で加えて希釈後40℃まで冷却した。この溶液を無水メタノール25mL中に滴下し、遠心分離(3000回転/分、5分間)した。デカンテーションにより上澄み液を除去して得た沈殿物をトルエン50mLに再度分散した後、前記同様の遠心分離によって副生成物と思われる不溶物を除去した後、エバポレーターによって20mLまで溶液を濃縮した。この溶液を無水メタノール/無水n−ブタノール(それぞれ15mL/10mL)混合溶剤中に滴下し、不溶物を前記同様に遠心分離した。デカンテーションにより上澄み液を除去して得た沈殿物をクロロホルム5.0mLに再度分散し、孔径0.2μmのメンブランフィルターで濾過してN2フローで溶液を2.0mLまで濃縮した後に無水メタノール/無水n−ブタノール(それぞれ15mL/10mL)混合溶剤中に滴下し、前記同様に遠心分離した。得られた不溶物を一晩真空乾燥することで、茶色固体114.8mgを得た。
こうして得た茶色固体は、ヘキサン、トルエン、クロロホルム、テトラヒドロフラン等に均一分散することが可能であった。ヘキサンに分散した分散液の吸収スペクトルを測定した結果、ピーク波長はZnS超微粒子の吸収帯である285nmに持ち、該吸収帯の半値幅は24nmであった。また、励起光250nmで発光スペクトルを測定した結果、Mn2+サイト由来の発光帯と一致するオレンジ色の発光帯(ピーク波長578nm)を与えた。これらのことから、得られた茶色固体がMn2+により付活されたZnS半導体超微粒子であることを確認した。
【0046】
比較例1
実施例1と同様の原料および操作にて、実施例1における第一工程を行った。第一工程の300℃、60分間の攪拌を行った後、熱源を除去し、反応液が80℃程度まで冷却されたところで無水n−ブタノール10mLを注射器で加えて希釈後、室温まで冷却した。この溶液を無水メタノール25mL中に滴下し、不溶物を遠心分離(3000回転/分、5分間)した。デカンテーションにより上澄み液を除去して得た沈殿物をトルエン25mLに再度溶解し、遠心分離によって副生成物と思われる不溶物を除去して、N2フローによって10mLまで溶液を濃縮した。この溶液を無水メタノール/無水n−ブタノール(それぞれ15mL/10mL)混合溶剤中に滴下し、不溶物を前記同様に遠心分離した。デカンテーションにより上澄み液を除去して得た沈殿物をトルエン8mLに再度溶解し、孔径0.2μmのメンブランフィルターで濾過してN2フローで溶液を5mLまで濃縮した後に無水メタノール/無水n−ブタノール(それぞれ15mL/10mL)混合溶剤中に滴下し、不溶物を前記同様に遠心分離した。この不溶物を一晩真空乾燥することで茶色固体99.9mgを得た。
【0047】
こうして得た茶色固体はヘキサン中に分散しようとすると均一分散しない凝固物が多数生じた。遠心分離を行い、その上澄みの吸収スペクトルを測定した結果、ピーク波長を293nmに持つ吸収帯が見られ、該吸収帯の半値幅は24nmと、実施例1とほぼ同様であった(図1を参照)。励起光250nmで発光スペクトルを測定した結果、オレンジ色の発光帯(ピーク波長582nm)を与えたが、発光強度は実施例1に比べて半分程度であった(図2を参照)。
得られた半導体超微粒子は凝固物が生じたため、透過電子顕微鏡による観察で粒径および粒径分布を測定することが困難であった。
【0048】
比較例2
実施例1のヘキサデシルアミン4.5gをTOPO4.5gに変更し、原料溶液を添加する前のTOPO温度を325℃とした以外は実施例1と同様の原料および操作にて、実施例1における第一工程を行った。第一工程の300℃、60分間の攪拌を行った後、熱源を除去し、反応液が80℃程度まで冷却されたところで無水n−ブタノール10mLを注射器で加えて希釈後、室温まで冷却した。この溶液を無水メタノール25mL中に滴下し、不溶物を遠心分離(3000回転/分、5分間)した。デカンテーションにより上澄み液を除去して得た沈殿物をトルエン6mLに再度溶解し、孔径0.2μmのメンブランフィルターで濾過してN2フローで溶液を2mLまで濃縮した後に無水メタノール/無水n−ブタノール(それぞれ20mL/5mL)混合溶剤中に滴下し、不溶物を前記同様に遠心分離した。この不溶物をを一晩真空乾燥することで茶色固体61.3mgを得た。
【0049】
こうして得た茶色固体はヘキサンに分散し、吸収スペクトルを測定したところブロードな吸収スペクトルを示して明確なピークは確認出来ず、吸収帯の半値幅を求めることができなかった。(図1を参照)。これは粒径分布が多分散であるためであり、合成した半導体超微粒子の粒径が多分散であることを表している。励起光250nmで発光スペクトルを測定した結果、オレンジ色の発光帯(ピーク波長585nm)を与えたが、ピーク波長での発光強度は実施例1に比べて2/3程度であった(図2を参照)。
【0050】
実施例3
実施例1にて得られた半導体超微粒子の1.2mgをトルエン20μLに溶解し、石英基板上に500rpmでスピンコートして透明な薄膜を得た。この塗膜は、実施例1の溶液と同様の吸収・発光スペクトルを与え、平均膜厚は約200nmであった。こうして得られた薄膜の吸収スペクトルから求めた600nmでの透過率は98%であった。
比較例3
比較例1にて得られた半導体超微粒子の1.2mgをトルエン20μLに溶解し、石英基板上に500rpmでスピンコートした結果、目視で白濁した薄膜が得られた。平均膜厚は約200nmであったが、実施例2と比べて非常に粗い表面状態であった。この薄膜の吸収スペクトルから求めた600nmでの透過率は64%であった。
【0051】
【発明の効果】
本発明によれば、高い発光強度と粒径分布の単分散性を有する半導体超微粒子及びその製造方法を提供することができる。また、本発明の半導体超微粒子は良好な溶剤分散性と優れた塗膜性を有するため、容易に薄膜状成形体とすることができる。本発明の半導体超微粒子を含有する薄膜状成形体は、高い発光強度を有するため、該超微粒子の発光特性を生かしたディスプレイや照明器具等に用いられる面状発光体等の光学材料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1、2、比較例1、2で得られた半導体超微粒子のヘキサン溶液での吸収スペクトル図である。
【図2】実施例1、2、比較例1、2で得られた半導体超微粒子の250nmの励起光で励起した際のヘキサン溶液での発光スペクトル図である。
【発明の属する技術分野】
本発明は、高い発光強度、粒径分布の単分散性、良好な溶剤分散性、及び優れた塗膜性を兼ね備えた半導体超微粒子及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体ナノ結晶等の半導体超微粒子は、エネルギー準位の量子化によりバルク結晶とは異なる特異的な光学特性を示す(量子サイズ効果)ことが注目されている。例えば、半導体超微粒子は、半導体結晶の基礎吸収の長波長側吸収端よりもわずかに低エネルギーに現れるエキシトン(励起子)吸収帯のピーク位置を、粒径を変えることで制御することができる。また、付活剤により付活された半導体超微粒子も同様な特性を持ち、特にバルクよりも優れた発光能を持つことから注目されている。このように、半導体超微粒子はバルクとは異なる電磁波の吸収及び発生能(以下、吸発光能という)を示すことから、発光材料や記憶材料としての利用が期待されている。
【0003】
半導体超微粒子の特性を利用した用途としては、例えば、薄膜状のディスプレイパネル、発光ダイオード、光ディスクの超解像膜、光導波路等、様々なものが考えられるが、これらのものに応用するためには、粒径分布が狭く、量子サイズ効果による吸発光能を維持したまま、有機溶剤への良好な分散性、及び優れた塗膜性をもつ半導体超微粒子が必要である。
【0004】
有機溶剤への良好な分散性を有する半導体微粒子の製造方法としては、CdSeやCdSのナノ結晶に対する配位子としてトリオクチルホスフィンオキシドを用いて合成する方法が報告されている(例えば、J.E.B.Katariら;J.Phys.Chem.,98巻,4109−4117(1994)参照)。また、ヘキサデシルアミン中でZnSe超微粒子を合成し、そこへトリオクチルホスフィンオキシドを加えることで良好な溶剤分散性を持つZnSe超微粒子を合成する方法も紹介されている(例えば、特開2001−262138号公報参照)。
【0005】
これらの半導体超微粒子は良好な発光特性を示すが、すべてバンドギャップ間遷移由来の発光である。バンドギャップ間遷移由来の発光は半導体超微粒子の粒径を変化させることでその発光波長を変化させることができる。しかし、それと同時に吸収帯の波長も変化するため、特定波長の励起光で励起させたいときに問題が生じる場合がある。例えば、次世代レーザーとして有力な窒化ガリウムを用いて作られる405nm波長の紫色半導体レーザーを励起光として用いた場合、量子サイズ効果によりバンドギャップが増大することにより吸収帯の波長が405nmよりも小さくなると、荷電子帯の電子が励起されず全く発光しなくなるという問題が生じることとなる。
【0006】
吸収帯の波長を一定にして発光帯のピーク位置を変化させる方法としては、付活剤により付活された半導体超微粒子が挙げられ、発光サイトとなる付活剤の種類を変えることで吸収帯の波長を変えずに発光帯の波長を変化させることが可能となる。このような付活剤により付活した半導体超微粒子の製造例としては、有機金属を前駆体として高温のヘキサデシルアミン中でMnにより付活されたII−VI族半導体超微粒子を製造する方法が提案されている(例えば、特開2002−97100号公報参照)。しかし、ヘキサデシルアミンのようなアルキルアミン類は結晶化し易く、この手法で製造された半導体超微粒子は配位子が結晶化するため、薄膜化した場合に透明性が低下するという問題があった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は前記の実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、高い発光強度、粒径分布の単分散性、良好な溶剤分散性及び優れた塗膜性を兼ね備えた半導体超微粒子の提供にある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者は上記の目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、特定の化合物を配位子として含有し、特定の付活剤により付活された半導体超微粒子とすることで、高い発光強度、粒径分布の単分散性、良好な溶剤分散性及び優れた塗膜性を兼ね備えた半導体超微粒子とすることに成功し本発明に到達した。即ち本発明の要旨の一つは、ホスフィンオキシド類及びアルキルアミン類を配位子として含有し、付活剤により付活された、亜鉛と16族元素とからなる半導体超微粒子、及びこれを含有する薄膜状成形体に存する。
また、溶融したアルキルアミン類中で付活剤により付活された半導体超微結晶を合成し、次いでその微結晶にホスフィンオキシド類を接触させることにより、高い発光強度、粒径分布の単分散性、良好な溶剤分散性及び優れた塗膜性を兼ね備えた半導体超微粒子を合成することに成功し本発明に到達した。即ち本発明の別の要旨は、アルキルアミン類中で、付活剤により付活された、亜鉛と16族元素とからなる半導体微結晶を合成する第一工程と、第一工程によって得られる半導体微結晶にホスフィンオキシド類を接触させる第二工程とを含む半導体超微粒子の製造方法に存する。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について、詳細に説明する。
[半導体超微粒子]
本発明の半導体微粒子は、ホスフィンオキシド類及びアルキルアミン類を配位子として含有し、付活剤により付活された、亜鉛と16族元素とからなる半導体超微粒子である。ここで、亜鉛と16族元素とからなる半導体微粒子とは、主として亜鉛と16族元素との化合物からなる結晶粒子から構成されるものである。さらに、本発明の半導体微粒子は、付活剤により付活されており、ホスフィンオキシド類およびアルキルアミン類を配位子としてその表面に結合されたものである。
【0010】
ホスフィンオキシド類及びアルキルアミン類は通常、亜鉛原子に配位結合し、かかる配位結合の存在はX線光電子分光スペクトルあるいはこれらと核磁気共鳴スペクトルや赤外吸収スペクトル等の有機化合物で用いられるスペクトル法との併用により確認が可能である。なお、亜鉛と16族元素とからなる結晶粒子の表面に結合したホスフィンオキシド類やアルキルアミン類は、必ずしもその分子構造がそのまま保たれていなくてもよい。
【0011】
本発明における亜鉛と16族元素とからなる結晶粒子の具体的組成としては、ZnO、ZnS、ZnSe、ZnTeのような化合物が挙げられ、これらの粒子の混合物や混合結晶粒子であってもよい。中で、ZnS、ZnSeが合成の容易性の点で好ましく、特に無毒性の点でZnSが好ましい。
本発明の半導体超微粒子は後述する付活剤を含有するが、本発明の効果を損なわない範囲で、該付活剤以外の他の化合物や元素を半導体微粒子中に含んでいてもよい。
【0012】
本発明の半導体超微粒子の大きさは、透過型電子顕微鏡(TEM)で観察される亜鉛と16族元素とからなる結晶粒子の数平均粒径として、通常1nm以上、好ましくは1.5nm以上、更に好ましくは2nm以上であり、通常10nm以下、好ましくは8nm以下、更に好ましくは5nm以下である。数平均粒径が前記範囲未満である場合は、原子数が少なすぎるために半導体としての特徴を示さない場合があり、前記範囲を超過する場合は、超微粒子特有の量子サイズ効果を示さない場合がある。なお、TEMで観察される粒子像は、有機配位子を含まない部分(結晶粒子)に由来するものと考えられる。
【0013】
また、本発明の半導体超微粒子の粒径分布の標準偏差は、数平均粒径に対して通常20%以下、好ましくは18%以下、さらに好ましくは15%以下とする。標準偏差が前記範囲を超過する場合は、吸収帯の幅が広くなり、十分な吸収能を発揮しない場合がある。ここで、標準偏差(σ)とは、TEMの観察写真より測定した各々の超微粒子の粒径(di)から数平均粒径(d)を引いたものの2乗の総和を粒子数(n)で割った値の平方根をいい、式(1)で表される。なお、前記の数平均粒径および標準偏差は、TEMの観察写真より実測にて求めることが出来るが、画像解析処理装置等を用いてもよい。
【0014】
【式1】
本発明の半導体超微粒子は、200〜700nm域に吸収スペクトルのピークを有する吸収帯をもち、かつ、該吸収帯の半値幅が、好ましくは35nm以下、更に好ましくは30nm以下、特に好ましくは25nm以下である場合がよい。該吸収帯の半値幅が小さいほど特定波長での吸収効率が増大するので好ましい。ここで半値幅とはピーク波長での吸光度を1に規格化したときに、吸光度0.5の値を取るピークより長波長側の波長の値からピーク波長の値を減じ、その値を2倍にした値と定義する。
[付活剤]
本発明において付活剤とは、蛍光体中に微量含まれ、禁制帯の中にある準位を形成し、その準位が発光中心となる性質を有する化合物を意味し、具体的には、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Ag、Al等の遷移金属、F、Cl等のハロゲン原子、及びLa、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Dy、Ho、Er、Tm、Yb等の希土類元素等の元素を含む化合物が挙げられる。これらの中でも、発光色の点からMn、Ag、Cu、Ce、Tb、Eu、Tmが好ましく、Mnが特に好ましい。また、これらの元素を複数種含んでいてもよい。付活剤は、前記の元素を有し、前記の付活剤としての特性を示すものであれば、化合物の構造は限定されない。また、付活剤はその特性を示せば結晶粒子の内部に存在していても、結晶粒子表面に存在していてもよい。
【0015】
付活剤の含有量は、亜鉛と16族元素とからなる結晶粒子中の亜鉛元素に対して、通常20モル%以下、好ましくは10モル%以下、さらに好ましくは5モル%以下の範囲である。付活剤の含有量が前記範囲を超える場合は濃度消光(付活剤濃度を増加していくと、ある濃度以上では発光強度が低下する現象)を起こす場合があるため好ましくない。
[配位子]
本発明における亜鉛と16族元素とからなる結晶粒子に配位している配位子の構成成分としては、ホスフィンオキシド類、及びアルキルアミン類を必須の成分とする。ホスフィンオキシド類は一般式(1)で表される。
【0016】
【化1】
R1R2R3P=O (1)
上記式(1)中、R1,R2,及びR3は互いに独立な任意のアルキル基又はアリール基を表す。かかるアルキル基の炭素数は通常1〜20、好ましくは3〜16、更に好ましくは4〜12、最も好ましくは6〜10であり、具体的にはイソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基等が例示でき、中でもヘキシル基、オクチル基、及びデシル基が好適である。アリール基としては、フェニル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、クミル基等が例示できる。好適なホスフィンオキシド類としては、トリブチルホスフィンオキシド、トリヘキシルホスフィンオキシド、トリオクチルホスフィンオキシド(TOPO)、トリデシルホスフィンオキシド等が例示でき、中でもTOPOが最も好適に用いられる。なお、複数種のホスフィンオキシド類を併用してもよい。
【0017】
また、アルキルアミン類は、1級、2級、3級アミンの何れでもよいが、中でも1級アミンが好適である。アルキル基の炭素数は通常2〜30、好ましくは5〜25、更に好ましくは7〜20、最も好ましくは8〜18であり、具体的にはイソブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、ヘキサデシル基等が例示でき、中でもオクチル基、デシル基、ドデシル基、ヘキサデシル基が好適である。好適なアミン類としては1−デシルアミン、1−ドデシルアミン、1−ヘキサデシルアミン等が例示できる。なお複数種のアルキルアミン類を併用してもよい。
【0018】
ホスフィンオキシド類は、一般式(1)の構造より、酸素原子を頂点とした三角錐形の分子構造をもつため、半導体に配位する際に立体障害による隙間が生じてしまい、粒子を十分に被覆することができないといった問題が生じるが、アルキルアミン類を同時に含むことでホスフィンオキシド類の間にアルキルアミン類が入り込むため、半導体結晶表面の欠陥をより多く被覆し、表面欠陥に起因する励起エネルギーの非発光緩和への寄与を低減することができる(パッシベーション)。一方、アルキルアミン類は結晶化しやすいため、配位子中にホスフィンオキシド類を含まない場合は、結晶粒子表面でアルキルアミンが結晶化してしまい、この結果、例えばスピンコート法等により薄膜状としたときに濁りが生じる(透明性が低下する)という問題があるが、ホスフィンオキシド類を同時に含むことで薄膜状としたときの濁りを防ぐことが可能となる。
【0019】
本発明の半導体超微粒子は、ホスフィンオキシド類及びアルキルアミン類を配位子として含有する限りにおいて、その製造工程で使用される任意の有機化合物、例えばホスフィン類等が結合されていてもよいが、ホスフィンオキシド類の割合は、半導体超微粒子に配位結合している総配位子中の20〜80モル%が好ましく、25〜70モル%が更に好ましく、30〜60モル%が特に好ましい。ホスフィンオキシド類の割合が前記範囲であると、塗膜性が良好であるため好ましい。また、アルキルアミン類の割合は、半導体超微粒子に配位結合している総配位子中の10〜70モル%が好ましく、15〜60モル%が更に好ましく、20〜55モル%が特に好ましい。アルキルアミン類の割合が前記範囲であると、粒子表面の被覆率が高くなるため好ましい。また、配位子におけるN/Pの元素組成は、0.3〜3が好ましく、0.5〜2が更に好ましい。N/Pの元素組成が前記範囲である場合は、良好な塗膜性と高い粒子表面の被覆率を兼ね備えるため好ましい。これら、配位子中のホスフィンオキシド類の量比、アルキルアミン類の量比、N/Pの元素組成等は、元素分析等により確認することができる。
【0020】
なお、本発明の半導体超微粒子における有機成分含有量は、該超微粒子の粒径あるいは表面積にもよるが、後述する単離精製工程を経て十分に精製された半導体超微粒子の状態で、通常10〜70重量%、有機溶剤への溶解性や塗膜性の点で好ましくは20〜60重量、更に好ましくは30〜50重量%程度である。該有機成分含量は、例えば窒素ガス等の不活性気体気流下での熱重量分析により測定される。
[原料]
本発明の半導体超微粒子の合成に好ましく用いられる原料を以下に記載する。
【0021】
亜鉛源としては、反応により16族元素と結合可能な亜鉛化合物であれば限定されないが、具体的には、ジメチル亜鉛、ジエチル亜鉛等のジアルキル亜鉛類、塩化メチル亜鉛、臭化メチル亜鉛、ヨウ化メチル亜鉛等のアルキルハロゲン化亜鉛類、二塩化亜鉛、二臭化亜鉛、二ヨウ化亜鉛、塩化ヨウ化亜鉛等のジハロゲン化亜鉛類、蟻酸亜鉛、酢酸亜鉛、プロピオン酸亜鉛、シュウ酸亜鉛等の亜鉛のカルボン酸塩、硝酸亜鉛、硫酸亜鉛、リン酸亜鉛等の亜鉛の鉱酸塩等が挙げられる。これらのうち、後述するホットソープ法の原料に好適なのは、ジメチル亜鉛、ジエチル亜鉛、ジ−n−プロピル亜鉛等の総炭素数5以下のジアルキル亜鉛類であり、中でもジメチル亜鉛又はジエチル亜鉛が最適である。
【0022】
一方、16族元素源としては、熱等で分解し、反応により亜鉛と結合可能な化合物であれば限定されないが、例えば硫黄、セレン、テルル等の周期律表16族元素の単体、硫化水素、セレン化水素、テルル化水素等の周期律表16族元素の水素化物、ビス(トリメチルシリル)スルフィド、ビス(トリメチルシリル)セレニド等の周期律表16族元素のシリル化物、硫化ナトリウム、セレン化ナトリウム等の周期律表16族元素のアルカリ金属塩、水硫化ナトリウム(NaHS)、水セレン化ナトリウム(NaHSe)等の周期律表16族元素の水素化物のモノアルカリ金属塩、硫化アンモニウム等が挙げられる。これらのうち、反応性や化合物の安定性、操作性の点で、硫黄、セレン、テルル等の周期律表16族元素の単体、硫化水素等の周期律表16族元素の水素化物、ビス(トリメチルシリル)スルフィド等の周期律表16族元素のシリル化物、硫化ナトリウム、セレン化ナトリウム等の周期律表16族元素のアルカリ金属塩が特に好適に用いられる。
【0023】
また、付活剤の原料としては前記した付活剤に用いられる元素の塩化物、カルボン酸塩、鉱酸塩、アセチルアセトナト錯体等のβ−ジケトン錯体、アルキル化物等が挙げられる。これらのうち、反応性や化合物の安定性、操作性の点で、塩化物、カルボン酸塩、β−ジケトン錯体が特に好適に用いられる。
さらに、本発明の半導体超微粒子は、本発明の効果を損なわない範囲で、その他の化合物や元素を原料として添加することもできる。
[製造方法]
本発明の半導体超微粒子は、溶液法や真空法等の任意の方法により製造されるが、熱分解性原料を高温の液相有機媒体に注入して結晶成長させる、いわゆるホットソープ法が最も好適に用いられる。
【0024】
ホットソープ法による製造方法としては、例えば、亜鉛化合物半導体源及び付活剤源をアルキルアミン類中に供給し、付活剤により付活された亜鉛化合物微結晶を合成する第一工程と、第一工程によって得られた亜鉛化合物微結晶にホスフィンオキシド類を接触させる第二工程とを含む製造方法により好適に得ることが出来る。
【0025】
前記の第一工程は、付活剤により付活された亜鉛化合物微結晶の結晶成長過程であり、アルキルアミン類の亜鉛化合物への配位力が適度であるため、粒径分布が狭く単分散に近い亜鉛化合物微結晶が生成する。
第一工程において、アルキルアミン類は、溶融状態または溶液であることが好ましい。原料化合物を供給する供給速度には制限はないが、生成する半導体結晶の粒径分布を狭くする場合には、短時間に所定量の原料化合物を注入することが好ましく、通常60秒以内、好ましくは30秒以内、更に好ましくは10秒以内がよい。また、原料化合物を供給後の適切な結晶成長反応時間(流通法の場合には滞留時間)は、化合物種や所望の粒径あるいは反応温度により変動するが、代表的な条件としては、200〜350℃程度の反応温度で1分〜10時間程度である。
【0026】
アルキルアミン類中へ供給する原料化合物は、化合物をそのまま供給してもよいが、例えばホスフィン類や炭化水素類や芳香族炭化水素類等の適当な希釈溶剤を用いて溶液として供給してもよい。特にホスフィン類はカルコゲン化合物や金属と複合体を形成するため、有用な希釈溶剤となる場合がある。半導体結晶の原料化合物が複数種ある場合は、これらをあらかじめ溶液中に混合しておいても良く、あるいはこれらをそれぞれ単独で供給してもよい。
【0027】
前記の第二工程は、ホスフィンオキシド類が亜鉛化合物微結晶へ配位する過程であり、付活剤により付活された亜鉛化合物微結晶にホスフィンオキシド類が配位することにより、発光強度の増大、有機溶剤への分散性、及び塗膜性を向上することが出来る。第二工程を施すことによって発現する発光強度の増大は、前述したようなホスフィンオキシド類とアルキルアミン類のパッシベーションによる表面欠陥を埋めてエネルギー損失を埋める効果、及びその損失低下分がホスフィンオキシド類のP=O基を介して付活剤のサイトへ供給されることが原因と推測される。
【0028】
第二工程において、付活剤により付活された亜鉛化合物微結晶とホスフィンオキシド類との接触時期は、第一工程で付活剤により付活された亜鉛化合物微結晶の結晶成長が起こった後であれば特に限定されず、結晶成長後の反応液相中にホスフィンオキシド類を添加する方法、あるいは、結晶成長後の亜鉛化合物超微粒子を一旦精製・分離した後で再度液相中のホスフィンオキシド類と接触させる方法等を採用することができるが、結晶成長後の反応液相中にホスフィンオキシド類を添加する方法の方が製造工程が簡便となるため好ましい。
【0029】
また、結晶成長後の反応液相中にホスフィンオキシド類を添加する場合の添加量は、反応系に存在するアルキルアミン類のモル量に対して、通常0.05〜10倍、好ましくは0.1〜8倍、更に好ましくは0.3〜5倍のモル量とする。ホスフィンオキシド類を亜鉛化合物微結晶に接触させるときの温度としては、通常60〜300℃、好ましくは80〜260℃、さらに好ましくは100〜220℃とする。また、接触時間は通常、1分〜24時間、好ましくは5分〜12時間、さらに好ましくは10分〜6時間である。
【0030】
さらに、第二工程では、ホスフィンオキシド類100重量%に対し、0.1〜20重量%のホスホン酸類またはホスフィン酸類を含有させることができる。ホスホン酸類またはホスフィン酸類を前記の範囲で含有することにより、発光効率が向上する場合がある。この際に用いるホスホン酸類としては、ブチルホスホン酸、オクチルホスホン酸、デシルホスホン酸、テトラデシルホスホン酸等が挙げられ、ホスフィン酸類としては、ジブチルホスフィン酸、ジオクチルホスフィン酸、ジデシルホスフィン酸、ジテトラデシルホスフィン酸等が挙げられる。これらホスホン酸類またはホスフィン酸類は、第二工程でホスフィンオキシド類とともに添加することも出来るが、前記の通り、第一工程にて原料化合物を溶解する溶剤として添加しておくこともでき、更には、原料化合物を添加する前のアルキルアミン中に添加しておくことも出来る。
【0031】
得られた本発明の半導体超微粒子は、通常、遠心分離、デカンテーション、濾過、溶剤置換、溶剤洗浄、乾燥等の工程を経て精製される。精製された半導体超微粒子は、乾燥固体として得ることもできるが、未反応物などを置換除去することにより分散液として得ることもできる。
[薄膜状成形体]
本発明の半導体超微粒子は、常法により成形して様々な用途に応用可能であるが、一例としてはその優れた塗膜性を利用した薄膜状成形体が挙げられる。
【0032】
かかる薄膜状成形体は、前記の製造方法で得られる本発明の半導体超微粒子を適当な溶剤に分散し、これを所望の基板の上に流延塗布することにより成形可能である。ここで溶剤とは、本発明の半導体超微粒子を分散可能な液体を意味し、半導体超微粒子を溶解する液体を意味するものではない。半導体超微粒子を分散する溶剤は限定されないが、例えばトルエン等の芳香族系溶剤、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶剤、あるいはクロロホルム、塩化メチレンやクロロベンゼン等のハロゲン化溶剤、ヘキサン、オクタン等の炭化水素系溶剤、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール系溶剤等が挙げられ、これらの2種以上を混合して用いてもよい。さらには、水と相溶する溶剤の場合は、水を添加することもできる。塗布する基板は限定されないが、例えば、ガラス基板、インジウムドープ錫酸化物(通称ITO)や金属あるいはグラファイト等の導電性基板、シリコン等の半導体基板、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル樹脂、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリオレフィン系樹脂等の樹脂シートやフィルム、板材等が挙げられ、これらの積層体であってもよい。塗布手段としては、スピンコーター、ナイフコータ、ロールコータ、スプレー、刷毛、ローラーによる方法等があり、何れの手段をも採用することが出来る。
本発明の半導体超微粒子を含有する分散液中の該超微粒子の濃度は特に限定されるものではなく、塗布方法や目的とする膜厚等により異なるが、通常0.01〜1000mg/mL、好ましくは0.1〜100mg/mL程度である。
【0033】
また、かかる薄膜状成形体は、ポリメチルメタクリレート樹脂(PMMA)、ポリスチレン樹脂、スチレン−アクリロニトリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、透明ポリオレフィン系樹脂等の透明樹脂マトリクス、あるいはテトラエトキシシラン等の金属アルコキシド類の加水分解縮合(いわゆるゾル−ゲル法)により合成されるシリカ等のガラスマトリクス等の透明マトリクス材料中に、本発明の半導体超微粒子を分散して得られる組成物を製膜して製造されてもよい。この場合、これらのマトリクス物質を、本発明の超微粒子を含有する分散液にあらかじめ溶解しておき、次いでこれを基材上に塗布及び乾燥して製膜してもよく、あるいは本発明の半導体超微粒子をテトラエトキシシラン等の金属アルコキシド類を含む溶液にあらかじめ溶解あるいは分散しておき、次いでゾル−ゲル法反応を進行させてガラスマトリクス組成物として製膜してもよく、更には、溶融したマトリクス物質中に半導体超微粒子を分散したものを冷却固化して製膜することもできる。
【0034】
また、前記のマトリクス物質の原料となるモノマー類(例えばスチレン、メチルメタクリレート、テトラエトキシシラン等)を、半導体超微粒子を分散した溶剤中に添加し、該モノマーを重合することで組成物としてもよく、モノマーの重合は製膜の前であっても製膜後であってもよい。該モノマーは、本発明の半導体超微粒子を合成時に第一工程または第二工程の溶液に添加することも出来るが、化合物半導体の合成温度に重合が適さない場合がある。
【0035】
上述したような方法の他、使用される超微粒子自身あるいはこれを透明樹脂マトリクス等に分散した組成物が熱可塑性を有する場合には、溶剤を用いた塗布を行わずに、Tダイ成形法、ブロー成型法、インフレーション成型法等の汎用的な加熱溶融押し出し製膜法の適用も可能であり、更には、射出成形や圧縮成形によって薄膜状成形体を得ることも出来る。
【0036】
このようにして得られる薄膜の膜厚、大きさ、形状、表面および内部の性質(例えば平面、球面、曲面、凹面、凸面、多孔質の面、平滑性、あるいは厚さの分布等の属性)には特に制限はないが、例えば膜厚は、通常1nm以上(半導体微粒子の単層)であり、通常100μm以下、好ましくは10μm以下、より好ましくは1μm以下程度である。
【0037】
本発明の薄膜状成形体には、その効果を著しく損なわない限りにおいて、任意の添加剤、例えば熱安定剤、紫外線等の光線吸収剤、酸化防止剤、酸素補捉剤、吸湿剤等を添加することも可能である。
上述した本発明の薄膜状成形体は高い発光強度を有するため、該超微粒子の発光特性を生かしたディスプレイや照明器具等に用いられる面状発光体等の光学材料として産業上有用である。
【0038】
【実施例】
以下に実施例により本発明の具体的態様を更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、これらの実施例によって限定されるものではない。
なお、原料試薬は、特に記載がない限り、市販の試薬を精製を加えず使用した。
[測定装置と条件等]
(1)吸収スペクトル: 紫外・可視吸光光度計(HEWLETT PACKARD社製 HP8453型)を使用し、溶液サンプルを光路長1cmの石英セル中で測定した。
(2)発光スペクトル: 分光蛍光光度計((株)日立製作所製 F4500型)を使用し、溶液サンプルを光路長1cmの石英セル中で測定した。測定の際にはスペクトル補正のモードを用い、サンプル固有のスペクトルを求めた。
(3)透過型電子顕微鏡(TEM)観察: 透過電子顕微鏡((株)日立製作所製 H−9000UHR型)を使用し、加速電圧200kVにて観察した。数平均粒径及び標準偏差は電子顕微鏡写真の粒子像をノギスで200個以上測定して算出した。
(4)熱重量分析(TG): セイコーインスツルメンツ(株)製TG−DTA320型により、200mL/分の窒素気流下、アルミニウム皿の上で、昇温速度10℃/分で昇温し、140℃で30分間保持した後、次いで最高設定温度590℃(サンプル直下の実測温度は602〜603℃程度)で120分間保持した。
(5)膜厚測定: 断面、表面粗さ微細形状測定装置(ケーエルエー・テンコール社製 P−15型)を使用し、走査長さ10mm、走査速度0.2mm/秒、針圧0.2〜1.0mgの条件で行った。
【0039】
実施例1
空冷式のリービッヒ還流管と反応液温測定用の熱電対を装着した褐色ガラス製の3口フラスコにヘキサデシルアミン(東京化成社製。以下、HDAと略記。)4.5gを入れ、30分間アルゴンガスをフローすることで内部をアルゴンガス置換した。別途、乾燥窒素雰囲気のグローブボックス内で、ジエチル亜鉛(Aldrich社製)の1規定濃度のn−ヘキサン溶液0.61mLと塩化マンガン(Aldrich社製)3.6mgとをトリオクチルホスフィン(Aldrich社製。以下TOPと略記。)7.0mLに溶かした溶液の一部1.5mLと、ビス(トリメチルシリル)スルフィド(Fluka社製)0.1287mLをTOP2.0mLに溶解した原料溶液とを、セプタムで封をしたガラス瓶中に調製した。
【0040】
第一工程・・・反応系をアルミニウム箔で包んで遮光し、HDAの入ったフラスコはArガス雰囲気下でほぼ大気圧に保ちながら330℃に昇温し、攪拌を継続しながら前記の原料溶液を注射器で一気に注入し、この時点を反応時間の開始とした。この時、n−ヘキサンや原料からの分解生成物等の低沸点有機物が一気に気化して還流管を通過するので注意を要する。原料溶液を添加後、直ちに温度を300℃に設定して60分攪拌を継続した。
【0041】
第二工程・・・第一工程で製造した反応溶液の温度を200℃まで下げ、加熱して溶融したトリオクチルホスフィンオキシド(Strem Chemical社製、純度90%。以下TOPOと略記)3.0gを加え、200℃での加熱を60分継続した。ここで、少量の反応液を注射器で採取し、過剰量のヘキサンに溶解して250nm波長の紫外光で励起したところMn2+由来の発光帯が観測され、そのピーク波長580nmの発光強度は第一工程終了時に比べて約6倍に増大していた。
【0042】
その後、熱源を除去し反応液が70℃程度まで冷却されたところで無水n−ブタノール(Aldrich社製)10mLを注射器で加えて希釈後室温まで冷却した。この溶液を無水メタノール(Aldrich社製)25mL中に滴下し、遠心分離(3000回転/分、5分間)した。デカンテーションにより上澄み液を除去して得た沈殿物をトルエン30mLに再度分散した後、前記同様の遠心分離によって副生成物と思われる不溶物を除去した後、N2フローによって20mLまで溶液を濃縮した。この溶液を無水メタノール/無水n−ブタノール(それぞれ15mL/10mL)混合溶剤中に滴下し、不溶物を前記同様に遠心分離した。デカンテーションにより上澄み液を除去して得た沈殿物をトルエン6.0mLに再度分散し、孔径0.2μmのメンブランフィルターで濾過してN2フローで溶液を2.0mLまで濃縮した後に無水メタノール/無水n−ブタノール(それぞれ15mL/10mL)混合溶剤中に滴下し、前記同様に遠心分離した。得られた不溶物を一晩真空乾燥することで、茶色固体106mgを得た。
こうして得た茶色固体は、ヘキサン、トルエン、クロロホルム、テトラヒドロフラン等に均一分散することが可能であった。ヘキサンに分散した分散液の吸収スペクトルを測定した結果、ピーク波長はZnS超微粒子の吸収帯である286nmに持ち、該吸収帯の半値幅は24nmであった(図1を参照)。また、励起光250nmで発光スペクトルを測定した結果、Mn2+サイト由来の発光帯と一致するオレンジ色の発光帯(ピーク波長579nm)を与えた(図2を参照)。これらのことから、得られた茶色固体がMn2+により付活されたZnS半導体超微粒子であることを確認した。
【0043】
得られた半導体超微粒子を透過電子顕微鏡で観察したところ、単分散な超微粒子が観察され、また半導体結晶格子が超微粒子像を構成していた。半導体超微粒子の数平均粒径は2.4nmであり、数平均粒径に対する標準偏差は13%であった。半導体超微粒子中の有機配位子の含有量を測定するために熱重量分析を行ったところ、45重量%であった。また元素分析により分析したN/Pの元素組成が1.52であったことから、配位子中60%がHDA、40%がTOPOであった。
実施例2
実施例1の塩化マンガン3.6mgをシクロヘキシル酪酸マンガン(Aldrich社製)12mgに変更した以外は実施例1と同様の原料および操作にて、実施例1における第一工程を行った。
【0044】
第二工程・・・第一工程で製造した反応溶液の温度を200℃まで下げ、加熱して溶融したTOPO3.0gとテトラデシルホスホン酸90mgを加え、200℃での加熱を60分継続した。ここで、少量の反応液を注射器で採取し、過剰量のヘキサンに溶解して250nm波長の紫外光で励起したところMn2+由来の発光帯が観測され、そのピーク波長580nmの発光強度は第一工程終了時に比べて約9倍に増大していた。
【0045】
その後、熱源を除去し反応液が80℃程度まで冷却されたところで無水n−ブタノール10mLを注射器で加えて希釈後40℃まで冷却した。この溶液を無水メタノール25mL中に滴下し、遠心分離(3000回転/分、5分間)した。デカンテーションにより上澄み液を除去して得た沈殿物をトルエン50mLに再度分散した後、前記同様の遠心分離によって副生成物と思われる不溶物を除去した後、エバポレーターによって20mLまで溶液を濃縮した。この溶液を無水メタノール/無水n−ブタノール(それぞれ15mL/10mL)混合溶剤中に滴下し、不溶物を前記同様に遠心分離した。デカンテーションにより上澄み液を除去して得た沈殿物をクロロホルム5.0mLに再度分散し、孔径0.2μmのメンブランフィルターで濾過してN2フローで溶液を2.0mLまで濃縮した後に無水メタノール/無水n−ブタノール(それぞれ15mL/10mL)混合溶剤中に滴下し、前記同様に遠心分離した。得られた不溶物を一晩真空乾燥することで、茶色固体114.8mgを得た。
こうして得た茶色固体は、ヘキサン、トルエン、クロロホルム、テトラヒドロフラン等に均一分散することが可能であった。ヘキサンに分散した分散液の吸収スペクトルを測定した結果、ピーク波長はZnS超微粒子の吸収帯である285nmに持ち、該吸収帯の半値幅は24nmであった。また、励起光250nmで発光スペクトルを測定した結果、Mn2+サイト由来の発光帯と一致するオレンジ色の発光帯(ピーク波長578nm)を与えた。これらのことから、得られた茶色固体がMn2+により付活されたZnS半導体超微粒子であることを確認した。
【0046】
比較例1
実施例1と同様の原料および操作にて、実施例1における第一工程を行った。第一工程の300℃、60分間の攪拌を行った後、熱源を除去し、反応液が80℃程度まで冷却されたところで無水n−ブタノール10mLを注射器で加えて希釈後、室温まで冷却した。この溶液を無水メタノール25mL中に滴下し、不溶物を遠心分離(3000回転/分、5分間)した。デカンテーションにより上澄み液を除去して得た沈殿物をトルエン25mLに再度溶解し、遠心分離によって副生成物と思われる不溶物を除去して、N2フローによって10mLまで溶液を濃縮した。この溶液を無水メタノール/無水n−ブタノール(それぞれ15mL/10mL)混合溶剤中に滴下し、不溶物を前記同様に遠心分離した。デカンテーションにより上澄み液を除去して得た沈殿物をトルエン8mLに再度溶解し、孔径0.2μmのメンブランフィルターで濾過してN2フローで溶液を5mLまで濃縮した後に無水メタノール/無水n−ブタノール(それぞれ15mL/10mL)混合溶剤中に滴下し、不溶物を前記同様に遠心分離した。この不溶物を一晩真空乾燥することで茶色固体99.9mgを得た。
【0047】
こうして得た茶色固体はヘキサン中に分散しようとすると均一分散しない凝固物が多数生じた。遠心分離を行い、その上澄みの吸収スペクトルを測定した結果、ピーク波長を293nmに持つ吸収帯が見られ、該吸収帯の半値幅は24nmと、実施例1とほぼ同様であった(図1を参照)。励起光250nmで発光スペクトルを測定した結果、オレンジ色の発光帯(ピーク波長582nm)を与えたが、発光強度は実施例1に比べて半分程度であった(図2を参照)。
得られた半導体超微粒子は凝固物が生じたため、透過電子顕微鏡による観察で粒径および粒径分布を測定することが困難であった。
【0048】
比較例2
実施例1のヘキサデシルアミン4.5gをTOPO4.5gに変更し、原料溶液を添加する前のTOPO温度を325℃とした以外は実施例1と同様の原料および操作にて、実施例1における第一工程を行った。第一工程の300℃、60分間の攪拌を行った後、熱源を除去し、反応液が80℃程度まで冷却されたところで無水n−ブタノール10mLを注射器で加えて希釈後、室温まで冷却した。この溶液を無水メタノール25mL中に滴下し、不溶物を遠心分離(3000回転/分、5分間)した。デカンテーションにより上澄み液を除去して得た沈殿物をトルエン6mLに再度溶解し、孔径0.2μmのメンブランフィルターで濾過してN2フローで溶液を2mLまで濃縮した後に無水メタノール/無水n−ブタノール(それぞれ20mL/5mL)混合溶剤中に滴下し、不溶物を前記同様に遠心分離した。この不溶物をを一晩真空乾燥することで茶色固体61.3mgを得た。
【0049】
こうして得た茶色固体はヘキサンに分散し、吸収スペクトルを測定したところブロードな吸収スペクトルを示して明確なピークは確認出来ず、吸収帯の半値幅を求めることができなかった。(図1を参照)。これは粒径分布が多分散であるためであり、合成した半導体超微粒子の粒径が多分散であることを表している。励起光250nmで発光スペクトルを測定した結果、オレンジ色の発光帯(ピーク波長585nm)を与えたが、ピーク波長での発光強度は実施例1に比べて2/3程度であった(図2を参照)。
【0050】
実施例3
実施例1にて得られた半導体超微粒子の1.2mgをトルエン20μLに溶解し、石英基板上に500rpmでスピンコートして透明な薄膜を得た。この塗膜は、実施例1の溶液と同様の吸収・発光スペクトルを与え、平均膜厚は約200nmであった。こうして得られた薄膜の吸収スペクトルから求めた600nmでの透過率は98%であった。
比較例3
比較例1にて得られた半導体超微粒子の1.2mgをトルエン20μLに溶解し、石英基板上に500rpmでスピンコートした結果、目視で白濁した薄膜が得られた。平均膜厚は約200nmであったが、実施例2と比べて非常に粗い表面状態であった。この薄膜の吸収スペクトルから求めた600nmでの透過率は64%であった。
【0051】
【発明の効果】
本発明によれば、高い発光強度と粒径分布の単分散性を有する半導体超微粒子及びその製造方法を提供することができる。また、本発明の半導体超微粒子は良好な溶剤分散性と優れた塗膜性を有するため、容易に薄膜状成形体とすることができる。本発明の半導体超微粒子を含有する薄膜状成形体は、高い発光強度を有するため、該超微粒子の発光特性を生かしたディスプレイや照明器具等に用いられる面状発光体等の光学材料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1、2、比較例1、2で得られた半導体超微粒子のヘキサン溶液での吸収スペクトル図である。
【図2】実施例1、2、比較例1、2で得られた半導体超微粒子の250nmの励起光で励起した際のヘキサン溶液での発光スペクトル図である。
Claims (11)
- ホスフィンオキシド類及びアルキルアミン類を配位子として含有し、付活剤により付活された、亜鉛と16族元素とからなる半導体超微粒子。
- 配位子の20〜80mol%がホスフィンオキシド類である請求項1に記載の半導体超微粒子。
- 配位子のN/Pの元素組成が0.3〜3である請求項1または2に記載の半導体微粒子。
- 16族元素が硫黄である請求項1乃至3の何れかに記載の半導体超微粒子。
- 付活剤がマンガンである請求項1乃至4の何れかに記載の半導体超微粒子。
- 半導体超微粒子が、透過型電子顕微鏡で観察される数平均粒径として1nm以上、10nm以下であることを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の半導体微粒子。
- 数平均粒径に対する標準偏差の割合が20%以下であることを特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載の半導体微粒子。
- 吸収スペクトルのピーク波長が200〜700nmにあり、半値幅が35nm以下である吸収帯をもつことを特徴とする請求項1乃至7の何れかに記載の半導体微粒子。
- 請求項1乃至8の何れかに記載の半導体超微粒子を含有する薄膜状成形体。
- アルキルアミン類中で、付活剤により付活された、亜鉛と16族元素とからなる半導体微結晶を合成する第一工程と、第一工程によって得られる半導体微結晶にホスフィンオキシド類を接触させる第二工程とを含む半導体超微粒子の製造方法。
- 第二工程において、ホスフィンオキシド類100重量%に対し、0.1〜20重量%のホスホン酸類またはホスフィン酸類を含有させることを特徴とする、請求項10に記載の半導体超微粒子の製造方法。
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