JP2002321916A - 硫化カドミウム超微粒子及びその製造方法 - Google Patents

硫化カドミウム超微粒子及びその製造方法

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JP2002321916A JP2001131505A JP2001131505A JP2002321916A JP 2002321916 A JP2002321916 A JP 2002321916A JP 2001131505 A JP2001131505 A JP 2001131505A JP 2001131505 A JP2001131505 A JP 2001131505A JP 2002321916 A JP2002321916 A JP 2002321916A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 吸収帯及び発光体の半値幅が狭く、且つ発光
効率の優れた硫化カドミウム超微粒子を提供する。 【解決手段】 半値幅が35nm以下のエキシトン吸収
帯を与え、かつ半値幅が30nm以下のエキシトン発光
帯を与える硫化カドミウム超微粒子。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は硫化カドミウム結晶
を含有する超微粒子に関する。詳しくは、優れた吸収及
び発光特性を有する、種々の光学材料として応用可能な
新規材料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】半導体超微粒子は量子閉じこめ効果によ
りバルクとは異なる性質を示す事が知られており、発光
材料や記憶材料としての使用が期待されている。この半
導体超微粒子は、エネルギー準位の量子化によりエネル
ギー準位が互いに離れた状態となり、かつそれらが結晶
粒径の関数として制御されるようになる。よって、半導
体超微粒子において、半導体結晶の基礎吸収(Fund
amental absorption)の長波長側吸
収端よりもわずかに低エネルギーに現れるエキシトン
(Exciton、励起子)吸収帯のピーク位置は半導
体超微粒子の粒径を変えることで制御することができ
る。その中でも硫化カドミウム超微粒子は比較的製造の
容易な物質であるため、古くから各種の製造法が報告さ
れている(Ber.Bunsenges.Phys.C
hem.,第88巻,969頁(1984)等)。この
硫化カドミウム超微粒子は合成方法や合成条件によって
粒径を制御することで吸収帯や発光帯のピーク波長を3
30nm〜480nm程度まで変化させることができ
る。
【0003】このようなエキシトン吸収帯の特徴は、例
えば、該吸収帯での光吸収飽和特性を利用して光ディス
クにおける入射光ビーム径を実効的に絞って高密度記録
を達成せしめる超解像技術に応用されている。そのた
め、吸収効率をより高めるために、半値幅の狭い吸収帯
を与える硫化カドミウム超微粒子の合成方法の確立は必
須である。また、発光材料として用いる際には、所望の
波長幅に発光エネルギーを絞ることが重要である。しか
し、これまで半値幅の狭い吸収帯及び発光帯を同時に実
現することは困難であった。
【0004】これまでに多くの硫化カドミウム超微粒子
に関する報告がなされてきたが、エキシトン発光を持つ
硫化カドミウム超微粒子の合成例は非常に少ない。例え
ばL.Qiら;Nano Lett.,1巻,61頁
(2001)に見られるように、ブロックコポリマーを
含むメタノール中で塩化カドミウムと硫化ナトリウムか
らエキシトン吸収帯の半値幅が36nmの硫化カドミウ
ム超微粒子を合成しているが、エキシトン発光を全く示
していない。また、エキシトン発光帯を持つ硫化カドミ
ウム超微粒子の合成法がF.Wuら;Chem.Phy
s.Lett.,330巻,237頁(2000)に見
られる。ここでは、ヘキサメタリン酸水溶液中で過塩素
酸カドミウムと硫化水素から硫化カドミウム超微粒子を
合成し、その後pHを10.5まで上げ、過剰なカドミ
ウムイオンを加えることで、硫化カドミウム結晶の表面
に水酸化カドミウムのシェルを作り、半値幅45nmの
エキシトン発光を持つ硫化カドミウム超微粒子を合成し
ている。しかし、この硫化カドミウム超微粒子の吸収ス
ペクトルははっきりとしたピークを持たないことから、
粒径分布がかなり広いと思われる。
【0005】その他にL.Spanhelら;J.A
m.Chem.Soc.,109巻,5649頁(19
87)にも見られる。ここでは、塩基性水溶液中で一旦
吸収端を500nmに与える硫化カドミウムゾルを合成
し、安定化剤としてヘキサメタリン酸ナトリウムを加
え、紫外光を照射することでCdSと溶存酸素を反応さ
せて硫化カドミウム結晶を分解し、より小さな硫化カド
ミウム結晶としている。ここで合成された硫化カドミウ
ム超微粒子は吸収帯の半値幅44nm、発光帯の半値幅
36nmと比較的吸収帯と発光帯の両方の半値幅の狭い
ものが合成されているが、この方法では硫化カドミウム
結晶を分解するという工程を含むため著しい生産性の低
下が予測され工業的には不利な製造方法だと思われる。
また、合成した超微粒子の有機溶媒や高分子マトリクス
への分散性が低いという問題点も抱えていた。
【0006】また、D.Diazら;J.Phys.C
hem.B,103巻,9854頁(1999)にも見
られる。ここでは、カドミウム(II)のカルボン酸塩と
硫化ナトリウムとを原料としジメチルスルホキシド(D
MSO)を溶媒とした合成が報告されており、反応直後
は510nmにピークを持ち半値幅が100nmのブロ
ードな発光帯を示すものの、反応液を暗所で保存すると
3週間程度かけて402nmにピークを持ち半値幅が4
0nmの鋭い発光帯に変化することが報告されている。
しかし、吸収帯の半値幅は64nmとかなり広い。ま
た、このような好ましい発光帯の変化を達成するために
長期間の暗所保存が必要であるため工業生産に適してい
ないだけでなく、かかる好ましい発光挙動を示す生成物
が得られてもこの性質を保持するためには引き続き暗所
保管を要すると該文献に記されているように、発光特性
が不安定である点に問題を残していた。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記実情に鑑
みてなされたものであり、その目的は、吸収帯及び発光
帯の半値幅が共に狭い硫化カドミウム超微粒子とその応
用手段、及びかかる超微粒子の工業的に有利な製造方法
を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者は上記目的を達
成するため鋭意検討を重ねた結果、特に硫化カドミウム
結晶の核発生をカルボン酸類の存在下で行い、生成した
後硫化カドミウム結晶を液相中においてホスホン酸類と
接触させることで吸収帯及び発光帯の半値幅が狭い硫化
カドミウム超微粒子を製造することができることを見い
だして、本発明に到達した。
【0009】即ち本発明の第一の要旨は、半値幅が35
nm以下のエキシトン吸収帯を与え、かつ半値幅が30
nm以下のエキシトン発光帯を与える硫化カドミウム超
微粒子、に存する。本発明の第二の要旨は、200〜3
50℃に予め調温された液相に硫化カドミウムの原料溶
液を添加して硫化カドミウム結晶の核発生を行う際に、
反応液相中にカルボン酸類を存在させる第一工程と、第
一工程で生成した硫化カドミウム結晶を液相中において
ホスホン酸類と接触させる第二工程とを含む前記硫化カ
ドミウム超微粒子の製造方法、に存する。本発明の第三
の要旨は、前記硫化カドミウム超微粒子を含有する光学
材料及び薄膜状成形体、に存する
【0010】
【発明の実施の形態】以下、本発明につき詳細に説明す
る。 [硫化カドミウム超微粒子]本発明の硫化カドミウム超微
粒子は、半値幅が35nm以下のエキシトン吸収帯及び
半値幅が30nm以下のエキシトン発光帯を与えるもの
である。該吸収帯及び発光帯の半値幅は小さければ小さ
いほど特定波長での吸収効率及び発光効率が増大するの
で好ましい。ここで吸収帯の半値幅とはピーク波長での
吸光度を1に規格化したときに、吸光度0.5の値を取
るピーク波長より長波長側の波長の値からピーク波長の
値を引き、その値を2倍にしたものと定義する。より好
ましい吸収帯の半値幅は33nm以下であり、更に好ま
しくは31nm以下、最も好ましくは29nm以下であ
る。また、発光帯の半値幅とはピーク波長での発光強度
の半分の値を取る波長間の幅と定義する。より好ましい
発光帯の半値幅は28nm以下であり、更に好ましくは
26nm以下、最も好ましくは24nm以下である。
【0011】また、本発明の硫化カドミウム超微粒子
は、エキシトン発光帯のピーク発光強度がそれより長波
長側に位置する発光帯のピーク発光強度に比べて1.8
倍以上であることが好ましい。この値は、2.0倍以上
であることがより好ましく、2.5倍以上であることが
最も好ましい。本発明の硫化カドミウム超微粒子は、例
えば硫化カドミウム結晶の量子効果により制御される吸
収発光特性を利用するものであるので、該超微粒子がか
かる吸収及び発光能力を有する限りにおいて、任意の他
の結晶構造を含有していても良い。特に、硫化カドミウ
ムよりもバンドギャップエネルギーの大きな物質(例え
ば、酸化亜鉛、硫化亜鉛、セレン化亜鉛、セレン化マグ
ネシウム等のカルコゲン元素含有化合物半導体)を硫化
カドミウム結晶の外殻(シェル)として有する超微粒子
は、優れた発光特性の安定性を示す場合がある。
【0012】本発明の硫化カドミウム超微粒子は、粒子
表面どうしの凝集による粗大粒子の生成を避けるため
に、通常、後述する配位性化合物由来の有機構造を硫化
カドミウム結晶表面に含有するものである。前記の半値
幅が35nm以下のエキシトン吸収帯及び半値幅が30
nm以下のエキシトン発光帯は、半導体種のバルク状態
でのバンドギャップ(以下、Egで表す)と量子閉じこ
め効果(粒径の関数)により定まる量子準位に由来する
と考えられる。従ってそのピーク波長は、Egで決まる
波長よりも高エネルギー側、即ち短波長となると予想さ
れる。例えば硫化カドミウムのEgは、測定温度により
変化するものの300Kにおいて2.42eVであるの
で、該波長は512nm程度以下であると計算される。
従って、前記の半値幅が35nm未満の発光帯のピーク
波長は、通常330〜510nm、好ましくは360〜
480nm、更に好ましくは380〜470nm、最も
好ましくは390〜450nm、の範囲に制御される。
また、前記の半値幅が30nm未満の発光帯のピーク波
長は、通常350〜510nm、好ましくは370〜4
80nm、更に好ましくは380〜460nm、最も好
ましくは390〜450nm、の範囲に制御される。
【0013】かかる量子準位に由来すると考えられるエ
キシトン吸収帯及びエキシトン発光帯の半値幅を狭くす
るためには、超微粒子の粒径分布が狭いことが有効であ
る。従って本発明の硫化カドミウム結晶を含有する超微
粒子の粒径分布は、TEMで観察される超微粒子の粒径
の標準偏差が30%以下であることが好ましく、更に好
ましくはこの値が20%以下、最も好ましくは10%以
下である。
【0014】本発明の硫化カドミウム超微粒子の粒子の
大きさは、汎用的な透過型電子顕微鏡(TEM)で観察
される平均粒子直径として、通常2〜30nm、好まし
くは2〜20nm、更に好ましくは2〜10nmであ
る。ただし、TEMで観察される粒子径は超微粒子中の
半導体結晶部分が観察されているものであり、実際には
結晶の表面には後述の有機成分が結合している場合があ
る。
【0015】[硫化カドミウムの原料]本発明の硫化カ
ドミウム超微粒子は、該硫化カドミウム組成を与える原
料として、有機カドミウム化合物及び硫黄含有化合物と
から好ましく製造される。有機カドミウム化合物として
は、後述するように、高温下で熱分解あるいは何らかの
反応により硫化カドミウム組成を与えるカドミウム源に
変化する化合物が好ましく、例えばジメチルカドミウ
ム、ジエチルカドミウム、ジイソプロピルカドミウム、
ジブチルカドミウム、ジヘキシルカドミウム、ジオクチ
ルカドミウム、ジデシルカドミウム等の炭素数1〜10
のジアルキルカドミウム類、塩化メチルカドミウム、臭
化メチルカドミウム、ヨウ化メチルカドミウム、ヨウ化
エチルカドミウム等のハロゲン化モノアルキルカドミウ
ム類、二塩化カドミウム、二臭化カドミウム、二ヨウ化
カドミウム、塩化ヨウ化カドミウム等のジハロゲン化カ
ドミウム類、あるいはブタン酸カドミウム、ヘキサン酸
カドミウム、2−エチルヘキサン酸カドミウム、ドデカ
ン酸カドミウム、ステアリン酸カドミウムなどの炭素数
4〜20のカドミウムカルボン酸塩類が挙げられる。こ
れらのうち、ジメチルカドミウム、ジエチルカドミウ
ム、ジブチルカドミウム、ジヘキシルカドミウム等の炭
素数1〜6のジアルキルカドミウム類、塩化メチルカド
ミウム、臭化メチルカドミウム、ヨウ化メチルカドミウ
ム等のハロゲン化モノアルキルカドミウム類、あるいは
2−エチルヘキサン酸カドミウム、ドデカン酸カドミウ
ム、ステアリン酸カドミウム等のカドミウムカルボン酸
塩類が特に好適に用いられ、中でもジメチルカドミウ
ム、ジエチルカドミウム、あるいはジ−n−ブチルカド
ミウム等の炭素数1〜4のジアルキルカドミウム類が最
適である。これらの有機カドミウム化合物は、必要に応
じて複数種を併用しても良い。またこれらの有機カドミ
ウム化合物の取り扱いをし易くするために、ヘキサン、
ヘプタン等の脂肪族系炭化水素、ベンゼン、トルエン、
キシレン等の芳香族系炭化水素、あるいはトリブチルホ
スフィン、トリへキシルホスフィン、トリオクチルホス
フィン等のトリアルキルホスフィン等の希釈溶媒を有機
カドミウムと同時に存在させても良い。これらの希釈溶
媒は、必要に応じて複数種を併用しても良い。なお、こ
れらの有機カドミウム化合物の取り扱いは、好ましくな
い分解や副反応を避けるため、乾燥した不活性雰囲気
(例えば窒素やアルゴン等の希ガス)で行うのが好まし
い。
【0016】一方、硫黄含有化合物としては、反応時の
高温下でカドミウム源と反応し硫化カドミウム組成を生
成する物が好ましく、例えばビス(トリメチルシリル)
スルフィド、ビス(tert−ブチルジメチルシリル)
スルフィド、ビス(tert−ブチルジフェニルシリ
ル)スルフィド等のアルキルシリル基を有する化合物、
硫黄単体、硫化ナトリウム等のアルカリ金属硫化物、あ
るいは硫化水素等が挙げられる。これらの硫黄含有化合
物は、必要に応じて複数種を併用しても良い。またこれ
らの硫黄含有化合物の取り扱いをし易くするために、前
述した有機カドミウム化合物の場合と同様に、希釈溶媒
を同時に存在させても良い。なお、これらの硫黄含有化
合物の取り扱いは、好ましくない分解や副反応を避ける
ため、乾燥した不活性雰囲気(例えば窒素やアルゴン等
の希ガス)で行うのが好ましい。
【0017】[硫化カドミウム超微粒子の製造方法]本発
明の硫化カドミウム超微粒子は、例えば、溶融したホス
フィンオキシド類等の液相において、有機カドミウム化
合物と硫黄含有化合物とを必須原料とする反応を特定の
温度条件で実施することで特に好ましく製造されるが、
該超微粒子が前記の用件を満たす限りにおいてその製造
方法に制限はない。かかる好ましい製造方法を、本発明
では以下ホットソープ法と呼ぶ。
【0018】ホットソープ法での必須原料である有機カ
ドミウム化合物は、制御された熱分解を起こして活性な
反応種を生成し、共存する硫黄含有化合物と反応すると
考えられている。従って、ここで使用される液相を構成
する溶媒としては、該有機カドミウム化合物の熱分解温
度を越えて加熱可能な物質、具体的には大気圧において
150℃以上程度の沸点を有する物質が通常使用され
る。この時、前記の原料物質に対して該液相が望ましく
ない作用(例えば、加溶媒分解等の熱分解以外の望まな
い分解反応、あるいは溶解度不足による原料成分の析出
等)をもたらさない物質の選択が好ましい。
【0019】かかる条件に合致する液相を構成する溶媒
としては、ノナン、デカン、ドデカン、ヘキサデカン、
オクタデカン、あるいは流動パラフィン等の脂肪族炭化
水素類、キシレン、ナフタレン、アントラセン等の芳香
族炭化水素類、あるいは下記一般式(1)で表されるホ
スフィンオキシド類等が例示される。
【0020】
【化1】R123P=O (1) 一般式(1)中、R1,R2,及びR3はいずれも独立に
炭素数20以下のアルキル基またはアリール基を表す。
かかるアルキル基の炭素数は通常1〜20、好ましくは
3〜16、更に好ましくは4〜12、最も好ましくは6
〜10であり、具体的にはイソプロピル基、n−ブチル
基、イソブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル
基、ドデシル基等が例示でき、中でもヘキシル基、オク
チル基、及びデシル基が好適である。該アルキル基の分
子量が小さすぎる場合にはホスフィンオキシド類の沸点
が低すぎるため好適な高温反応への適用に支障を来す場
合があり、逆に該アルキル基の分子量が高すぎる場合に
は後述するホスフィンオキシド類の配位力が著しく低下
する場合がある。一方前記の一般式(1)におけるアリ
ール基としては、フェニル基、2−メチルフェニル基、
3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、クミル
基等が例示できる。
【0021】前記のホットソープ法における液相は、生
成する硫化カドミウム結晶を含有する半導体組成への配
位能力を有する化合物を含有するのが望ましい。かかる
配位性化合物の作用機構と実際に超微粒子において存在
している化学構造は未だ完全に理解されていないが、半
導体組成の構成元素との配位結合あるいは共有結合等の
何らかの化学結合により、1つの超微粒子においてその
表面層を成す有機構造として導入され、その結果、超微
粒子どうしの凝集を防ぐ効果があると推測される。かか
る配位性化合物として、前記の一般式(1)で表される
ホスフィンオキシド類を含む液相の使用が最適であり、
その配位力を高めるためには、酸素原子の電子供与性を
低減しないものが好ましい。
【0022】前記一般式(1)で表されるホスフィンオ
キシド類として、具体的にはトリブチルホスフィンオキ
シド、トリヘキシルホスフィンオキシド、トリオクチル
ホスフィンオキシド(以下、TOPOと略)、トリデシ
ルホスフィンオキシド等のトリアルキルホスフィンオキ
シド類が例示され、中でもTOPOは最も一般的に用い
られる。
【0023】これら有機カドミウム化合物及び硫黄含有
化合物のホットソープ法の液相反応系への加え方に特に
制限はなく、あらかじめ前記の希釈溶媒中で混合してお
く方法、有機カドミウム化合物次いで硫黄含有化合物の
順に加える方法、あるいはその逆の順に加える方法等が
例示できる。これらのうち、あらかじめ前記の希釈溶媒
中で混合しておく方法が、粒径の制御等の点で好ましい
結果を与える場合がある。かかる混合は比較的低温で行
われ、その温度は通常0〜100℃、好ましくは5〜8
0℃、更に好ましくは10〜70℃、最も好ましくは1
5〜60℃程度とする。
【0024】有機カドミウム化合物及び硫黄含有化合物
のホットソープ法の液相反応系へ加えるときの初期液相
温度(硫化カドミウムの核発生時の温度)の範囲は、2
00℃〜350℃、より好ましくは250℃〜350
℃、更に好ましくは270〜330℃、最も好ましくは
280℃〜320℃とする。使用する有機カドミウム化
合物及び硫黄含有化合物の比は、元素のモル比として通
常0.5≦Cd/S≦10、粒径制御の点で好ましくは
1≦Cd/S≦7、更に好ましくは1.5≦Cd/S≦
5、最も好ましくは好ましくは2≦Cd/S≦3とす
る。
【0025】前記のホットソープ法の実施に際して、硫
化カドミウム組成を与える原料である有機カドミウム化
合物及び硫黄含有化合物の使用量に特に制限はないが、
カドミウム(Cd:式量=112.41)の液相反応液
全体中における重量百分率(wt%)として、通常0.
001〜10wt%、粒径制御と生産性の点で好ましく
は0.01〜8wt%、更に好ましくは0.05〜6w
t%、最も好ましくは0.1〜5wt%程度とする。
【0026】本発明の第二の要旨である、特に硫化カド
ミウム結晶の核発生を行う際に反応液相中にカルボン酸
類を存在させる第一工程と、生成した硫化カドミウム結
晶を液相中においてホスホン酸類と接触させる第二工程
を行うことで狭い半値幅のエキシトン吸収帯及びエキシ
トン発光帯を与える硫化カドミウム超微粒子の好適な製
造方法について、以下説明する。
【0027】前記のホットソープ法において、予め調温
された液相に硫化カドミウムの原料溶液を添加して硫化
カドミウム結晶の核発生を行う際に、液相反応系内にカ
ルボン酸類を存在させることで吸収帯の半値幅及びピー
ク波長の制御に非常に良好な結果を与える。これを第一
工程とする。この理由は定かでないが、例えばカルボン
酸類の硫化カドミウム結晶に対する吸着力がホスフィン
オキシド類に比べると強いために、硫化カドミウム結晶
の核発生期間と粒子成長期間の区別が明確に起こるため
と推測される。なお、カルボン酸類の添加方法として
は、硫化カドミウム結晶の核発生時において反応系内に
カルボン酸類が存在していれば何れの方法も採用するこ
とができるが、例えば硫化カドミウム原料溶液中、また
は予め調温された液相中のどちらかにカルボン酸類を添
加しておくことが好ましい。
【0028】添加するカルボン酸類の濃度範囲は、液相
の重量に対して0.1〜20wt%、より好ましくは
0.2〜15wt%、さらに好ましくは0.5〜10w
t%、最も好ましくは1〜5wt%とする。また、加え
るカルボン酸類としては、ヘキサン酸、2−エチルヘキ
サン酸、ドデカン酸、ステアリン酸、オレイン酸等の脂
肪酸、安息香酸、4−ヘキシル安息香酸等の芳香族カル
ボン酸、シュウ酸、マレイン酸等のジカルボン酸が挙げ
られる。これらのうち、ヘキサン酸、2−エチルヘキサ
ン酸、ステアリン酸等の脂肪酸、4−ヘキシル安息香酸
等の芳香族カルボン酸が好適に用いられ、中でも2−エ
チルヘキサン酸、ステアリン酸等の炭素鎖6〜20の脂
肪酸が最適である。
【0029】本発明の製造方法においては、硫化カドミ
ウム組成を含有する原料の添加後、220〜350℃の
温度範囲で硫化カドミウム結晶を成長させることが好ま
しい。この温度範囲に満たない低温では反応が極端に遅
くなる場合があり、逆にこの温度範囲を越える高温では
粒径制御が困難となる場合がある。かかる結晶の成長温
度範囲は、より好ましくは230〜330℃、最も好ま
しくは240〜320℃とする。
【0030】本発明の製造方法における反応時間は、最
初の原料添加時点から計測して、通常、1秒〜500
分、粒径制御と生産性の点で好ましくは5秒〜300
分、更に好ましくは10秒〜150分、最も好ましくは
20秒〜60分の範囲とする。前記の第一工程では、半
値幅の狭い吸収帯の硫化カドミウム超微粒子を製造する
ことができるが、発光特性の面においてはエキシトン発
光帯に比べて長波長側の発光帯のピーク発光強度の方が
大きくなりやすいという傾向がある。そこで、第二工程
として硫化カドミウム結晶を液相中においてホスホン酸
類と接触させることで、発光特性を非常によく改善する
ことができる。この理由は定かでないが、ホスホン酸類
が硫化カドミウム結晶の表面に配位することにより硫化
カドミウム結晶の表面準位を埋めるために、エキシトン
発光帯の発光強度が増大するものと推測される。なお、
カドミウム結晶とホスホン酸類との接触時点は、第一工
程で硫化カドミウム結晶の核発生が起こった後であれば
特に限定されず、結晶成長する段階で系内にホスホン
酸類を存在させる方法、結晶成長後の反応液相中に添
加する方法、あるいは、結晶成長後の硫化カドミウム
超微粒子を一旦精製・分離した後で再度液相中ホスホン
酸類と接触させる方法のいずれも採用することができる
が、前記またはの方法が、発光特性をより顕著に向
上させることができるので好ましい。特にの例とし
て、例えば第一工程で製造した硫化カドミウム超微粒子
を後述する精製方法で精製したものとホスホン酸類と
を、トルエン、ベンゼン、キシレン等の芳香族炭化水
素、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水
素、クロロホルム、塩化メチレン等のハロゲン化炭化水
素、ピリジン、キノリン等の複素環アミン、N,N−ジ
メチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等のアミド
系非プロトン性極性溶媒などの有機溶媒中に溶解する方
法が好ましく用いられる。
【0031】ここでいうホスホン酸類とはホスホン酸基
を有する有機化合物であり、該液相の温度において揮発
あるいは熱分解等により著しくその添加量が減少しない
限りにおいてその構造に制限はないが、例えばヘキシル
ホスホン酸、オクチルホスホン酸、デシルホスホン酸、
ドデシルホスホン酸、テトラデシルホスホン酸、ヘキサ
デシルホスホン酸、オクタデシルホスホン酸等の炭素数
6〜18程度のアルキルホスホン酸類、ベンゼンホスホ
ン酸やナフタレンホスホン酸等のアリールホスホン酸類
等が挙げられ、中でもオクチルホスホン酸、デシルホス
ホン酸、ドデシルホスホン酸、テトラデシルホスホン酸
等の炭素数8〜14程度のアルキルホスホン酸類が沸点
と安定性の点で好ましく用いられ、テトラデシルホスホ
ン酸は更に好ましく用いられる。かかるホスホン酸の使
用量は、硫化カドミウム超微粒子の重量に対して、通常
0.1〜10倍、好ましくは0.2〜5倍、さらに好ま
しくは0.3〜1倍程度とする。
【0032】ホスホン酸類を硫化カドミウム結晶に接触
させるときの温度としては、通常20〜250℃、好ま
しくは40〜200℃、さらに好ましくは50〜150
℃とする。また、接触時間は通常、1分〜24時間、好
ましくは5分〜12時間、さらに好ましくは10分〜6
時間である。
【0033】[超微粒子中の有機成分]上述した製造方
法により得られる硫化カドミウム超微粒子は、ホスフィ
ンオキシド類、ホスフィン類、カルボン酸類、ホスホン
酸類等の有機化合物やカルコゲン含有化合物中に含まれ
る有機成分、あるいは原料溶液に使用した溶媒成分等に
由来する有機成分を通常含有している。かかる有機成分
は、後述する精製工程を経た後も本発明の超微粒子に残
留しているものである。従って、かかる有機成分は、本
発明の超微粒子中の半導体組成を構成する元素との配位
結合や共有結合等の何らかの化学結合を成している場合
だけでなく、ファンデアワールス力、疎水相互作用、水
素結合、あるいはクーロン力等の任意の引力相互作用で
可逆的に吸着している場合もありえる。かかる有機成分
量は、超微粒子同士の凝集を防ぎ、単一粒子で存在させ
るため、あるいは酸素や水分等、粒子を取り巻く環境か
らの好ましくない要因による粒子の劣化を避けるのに必
要な量以上が存在するのが好ましい。
【0034】これらの条件により、本発明の硫化カドミ
ウム結晶を含有する超微粒子における有機成分含有量は
通常5〜90重量%、好ましくは10〜80重量%、更
に好ましくは15〜70重量%、最も好ましくは20〜
60重量%である。 [超微粒子の精製方法]上述した方法により得られる硫
化カドミウム超微粒子は、反応系より抜き出した後その
まま冷却して使用しても良いが、該超微粒子中の硫化カ
ドミウム結晶の構成比を挙げる方法として、ホットソー
プ法の反応液相の溶媒物質や原料の希釈溶媒等の溶解度
は高いが生成した超微粒子の溶解度は低い溶剤、例えば
メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロ
ピルアルコール、n−ブタノール、tert−ブタノー
ル等のアルコール類等と混合する方法もある。この場
合、超微粒子が析出した懸濁液が生成するので、遠心分
離等の分離方法により、精製された硫化カドミウム超微
粒子を分離する。
【0035】[薄膜状成形体]上述した本発明の硫化カド
ミウム超微粒子は常法により成形して様々な用途に応用
可能であるが、一例としては薄膜状成形体が挙げられ
る。かかる薄膜状成形体は、前記の製造方法で得られる
本発明の硫化カドミウム結晶を含有する超微粒子を適当
な溶剤(例えばトルエン等の芳香族系溶剤、ヘキサン等
の脂肪族炭化水素、アセトン等のケトン系溶剤、テトラ
ヒドロフラン等のエーテル系溶剤、あるいはクロロホル
ム、塩化メチレンやクロロベンゼン等のハロゲン化溶剤
等)に溶解あるいは分散し、これを所望の基板、例えば
ガラス基板、インジウムドープ錫酸化物(通称ITO)
や金属あるいはグラファイト等の導電性基板、シリコン
等の半導体基板、ポリメチルメタクリレート(PMM
A)やポリスチレンあるいは芳香族ポリカーボネート等
の樹脂基板等の上に流延塗布することにより、成形可能
である。
【0036】かかる流延塗布による成形時、あらかじめ
適当な有機バインダ成分、例えばポリメチルメタクリレ
ート(PMMA)やポリスチレンあるいは芳香族ポリカ
ーボネート等の樹脂類、ワックス類やシリコーン油脂等
を溶媒に溶解させておくことも可能である。この場合の
有機バインダ成分の量は、該超微粒子との総和に対して
通常1〜90重量%、膜の機械的強度や輝度・吸光度・
光線透過度等の光学特性の点で好ましくは5〜80重量
%、更に好ましくは10〜70重量%、最も好ましくは
15〜60重量%である。
【0037】さらに本発明の薄膜状成形体には、その効
果を著しく損なわない限りに於いて、任意の添加剤、例
えば熱安定剤、紫外線等の光線吸収剤、酸化防止剤、酸
素補捉剤、吸湿剤等を添加することも可能である。該薄
膜状成形体は、平面状あるいは任意曲率の曲面状に成形
されていても構わない。その厚膜には制限は特にない
が、例えば0.003〜5000μm程度、輝度や吸光
度あるいは光線透過度の点で好ましくは0.004〜1
000μm程度、更に好ましくは0.005〜500μ
m程度、最も好ましくは0.005〜100μm程度で
ある。
【0038】また、薄膜状成形体の片側あるいは両側に
追加機能を有する層(例えば機械的損傷に対する保護
層、ガスバリアー層、光線遮断層、断熱層、電極層等)
を必要に応じ設けることもできる。上述した本発明の薄
膜状成形体は、該超微粒子の発光特性を生かしたディス
プレイや照明器具等に用いられる面状発光体、あるいは
吸収発光特性を生かした高密度記録層等の光学材料とし
て産業上有用である。
【0039】
【実施例】以下に実施例により本発明の具体的態様を更
に詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限
り、これらの実施例によって限定されるものではない。
なお、原料試薬は、特に記載がない限り、Aldric
h社より供給されたものを精製を加えず使用した。但
し、無水メタノールはAldrich社より供給された
無水(「Anhydrous」)グレードを使用した。
また、トルエンは、純正化学(株)から供給されたもの
を濃硫酸、水、飽和重曹水、更に水の順序で洗浄後、無
水硫酸マグネシウムで乾燥次いで濾紙で濾過し、五酸化
二リン(P 25)を加えてそこから大気圧にて直接蒸留
して得たものを用いた。
【0040】吸収スペクトルは、HEWLETT PA
CKARD社製 HP8453型紫外・可視吸光光度計
において、溶液サンプルを光路長1cmの石英セル中で
測定した。発光スペクトルは、(株)日立製作所製のF
4500形分光蛍光光度計において、溶液サンプルを光
路長1cmの石英セル中で測定した。また、測定の際に
はスペクトル補正のモードを用い、サンプル固有のスペ
クトルを求めた。
【0041】実施例1[硫化カドミウム超微粒子の合
成] ・第一工程 乾燥窒素雰囲気のグローブボックス内で、Strem
Chemicals社製トリブチルホスフィン(以下T
BPと略記;2.25g)、Strem Chemic
als社製ジメチルカドミウムの10重量%n−ヘキサ
ン溶液(0.56g)、Fluka社製ビス(トリメチ
ルシリル)スルフィド(0.033mL)及び東京化成
社製2−エチルヘキサン酸(0.17g)をガラス瓶中
にて混合し、ゴム栓(Aldrich社から供給される
セプタム)で封をした(この混合液を以下「原料溶液
A」と呼ぶ)。この原料溶液Aとは別に、反応容器とし
て、空冷式のリービッヒ還流管と反応温度調節のための
熱電対を装着した褐色のパイレックス(登録商標)ガラ
ス製3口フラスコ(内容積50mL)にTOPO(純度
90%、6.5g)を入れ、室温で15分減圧乾燥し
た。そして、乾燥アルゴンガスで内部を大気圧に復圧し
次いで再度減圧する内部雰囲気の置換操作を3回行い、
最後に乾燥アルゴンガス雰囲気とした。その後300℃
に昇温し、前記の原料溶液Aを注射器で一気に注入し、
この時点を反応の開始時刻とした。反応開始5分後に熱
源を除去し約60℃に冷却された時点で無水メタノール
(0.6mL)を加えて希釈し室温まで放冷した。この
反応液を乾燥窒素雰囲気において、無水メタノール(2
2.5mL)中に注入して室温で5分間攪拌し、不溶物
を生じさせた。この不溶物を遠心分離(3500rp
m)し、デカンテーションにより上澄み液を除去して黄
色い固体を得た。この固体は精製トルエン(1mL)に
溶解し、無水メタノール(15mL)中に注入し、室温
で5分間攪拌して前記同様の遠心分離とデカンテーショ
ンにより黄色い固体沈殿を分離した。この固体を室温で
乾燥窒素気流下乾燥後、室温で一晩真空乾燥して黄色固
形粉体(22.2mg)を得た。こうして得た黄色固形
粉体はトルエンに可溶であり、吸収スペクトルを測定し
たところピーク波長を408nmに持ち、半値幅28n
mであった。また、発光スペクトルを測定したところ二
つの発光帯が確認され、ピーク波長はそれぞれ430n
mと587nmであった。二つの発光帯のピーク発光強
度の比は1(430nm):1.46(587nm)で
あった。 ・第二工程 第一工程で製造した硫化カドミウム超微粒子(3.2m
g)とAVOCADOResearch Chemic
als社製テトラデシルホスホン酸(1.6mg)をト
ルエン(3mL)に溶解し、オイルバス中において10
0℃で30分間加熱した。室温まで放冷後、0.2μm
のフィルターで濾過し、窒素フロー下でトルエンを蒸発
させ溶液を0.5mLとし、無水メタノール(20m
L)へ注入した。室温で5分間撹拌して不溶物を生じさ
せ、この不溶物を遠心分離(3500rpm)し、デカ
ンテーションにより黄色い固形粉体を分離した。この固
体を室温で一晩真空乾燥して黄色固形粉体(3.0m
g)を得た。こうして得た黄色固形粉体はトルエンに可
溶であり、吸収スペクトルを測定したところピーク波長
を408nmに持ち、半値幅28nmであった。また、
発光スペクトルを測定したところ二つの発光帯が確認さ
れ、ピーク波長は431nmと580nmであり、エキ
シトン発光帯の半値幅は22nmであった。第一工程で
得られたものに比べて、エキシトン発光帯のピーク発光
強度は4.75倍、長波長側の発光帯のピーク発光強度
は1.72倍になった。二つの発光帯のピーク発光強度
の比は1.90(431nm):1(587nm)であ
った。
【0042】実施例2[硫化カドミウム超微粒子の合
成] ・第一工程 乾燥窒素雰囲気のグローブボックス内で、Strem
Chemicals社製TBP(2.25g)、Str
em Chemicals社製ジメチルカドミウムの1
0重量%n−ヘキサン溶液(0.56g)、及びFlu
ka社製ビス(トリメチルシリル)スルフィド(0.0
33mL)をガラス瓶中にて混合し、実施例1の記載同
様にゴム栓で封をした(この混合液を以下「原料溶液
B」と呼ぶ)。この原料溶液Bとは別に、反応容器とし
て、空冷式のリービッヒ還流管と反応温度調節のための
熱電対を装着した褐色のパイレックスガラス製3口フラ
スコ(内容積50mL)にTOPO(純度90%、6.
5g)及びキシダ化学社製ステアリン酸(0.130m
g)を入れ、室温で15分減圧乾燥した。そして、乾燥
アルゴンガスで内部を大気圧に復圧し次いで再度減圧す
る内部雰囲気の置換操作を3回行い、最後に乾燥アルゴ
ンガス雰囲気とした。その後300℃に昇温し、前記の
原料溶液Bを注射器で一気に注入し、この時点を反応の
開始時刻とした。反応開始5分後に熱源を除去し約60
℃に冷却された時点で無水メタノール(0.6mL)を
加えて希釈し室温まで放冷した。この反応液を乾燥窒素
雰囲気において、無水メタノール(22.5mL)中に
注入して室温で5分間攪拌し、不溶物を生じさせた。こ
の不溶物を遠心分離(3500rpm)し、デカンテー
ションにより上澄み液を除去して黄色い固体を得た。こ
の固体は精製トルエン(1mL)に溶解し、無水メタノ
ール(15mL)中に注入し、室温で5分間攪拌して前
記同様の遠心分離とデカンテーションにより黄色い固体
沈殿を分離した。この固体を室温で乾燥窒素気流下乾燥
後、室温で一晩真空乾燥して黄色固形粉体(41.9m
g)を得た。こうして得た黄色固形粉体はトルエンに可
溶であり、吸収スペクトルを測定したところピーク波長
を404nmに持ち、半値幅31nmであった。また、
発光スペクトルを測定したところ二つの発光帯が確認さ
れ、ピーク波長はそれぞれ428nmと577nmであ
った。二つの発光帯のピーク発光強度の比は1(428
nm):1.71(577nm)であった。 ・第二工程 第一工程で製造した硫化カドミウム超微粒子(10.0
mg)とAVOCADO Research Chem
icals社製テトラデシルホスホン酸(5.0mg)
をトルエン(3mL)に溶解し、オイルバス中において
100℃で1時間加熱した。室温まで放冷後、0.2μ
mのフィルターで濾過し、窒素フロー下でトルエンを蒸
発させ溶液を0.3mLとし、無水メタノール(20m
L)へ注入した。室温で5分間撹拌して不溶物を生じさ
せ、この不溶物を遠心分離(3500rpm)し、デカ
ンテーションにより黄色い固形粉体を分離した。この固
体を室温で一晩真空乾燥して黄色固形粉体(9.9m
g)を得た。こうして得た黄色固形粉体はトルエンに可
溶であり、吸収スペクトルを測定したところピーク波長
を404nmに持ち、半値幅31nmであった。また、
発光スペクトルを測定したところ二つの発光帯が確認さ
れ、ピーク波長は428nmと553nmであり、エキ
シトン発光帯の半値幅は27nmであった。第一工程で
得られたものに比べて、エキシトン発光帯のピーク発光
強度は8.93倍、長波長側の発光帯のピーク発光強度
は2.17倍になった。二つの発光帯のピーク発光強度
の比は2.40(428nm):1(553nm)であ
った。
【0043】比較例1[硫化カドミウム超微粒子の合
成] 乾燥窒素雰囲気のグローブボックス内で、Strem
Chemicals社製TBP(2.25g)、Str
em Chemicals社製ジメチルカドミウムの1
0重量%n−ヘキサン溶液(0.56g)、及びFlu
ka社製ビス(トリメチルシリル)スルフィド(0.0
33mL)をガラス瓶中にて混合し、実施例1の記載同
様にゴム栓で封をした(この混合液を以下「原料溶液
C」と呼ぶ)。この原料溶液Cとは別に、反応容器とし
て、空冷式のリービッヒ還流管と反応温度調節のための
熱電対を装着した褐色のパイレックスガラス製3口フラ
スコ(内容積50mL)にTOPO(6.5g)とAV
OCADO Research Chemicals社
製テトラデシルホスホン酸(0.13g)を入れ、室温
で15分減圧乾燥した。そして、乾燥アルゴンガスで内
部を大気圧に復圧し次いで再度減圧する内部雰囲気の置
換操作を3回行い、最後に乾燥アルゴンガス雰囲気とし
た。その後300℃に昇温し、前記の原料溶液Cを注射
器で一気に注入し、この時点を反応の開始時刻とした。
反応開始5分後に熱源を除去し約60℃に冷却された時
点で無水メタノール(0.6mL)を加えて希釈し室温
まで放冷した。この反応液を乾燥窒素雰囲気において、
無水メタノール(22.5mL)中に注入して室温で5
分間攪拌し、不溶物を生じさせた。この不溶物を遠心分
離(3500rpm)し、デカンテーションにより上澄
み液を除去して黄色い固体を得た。この固体は精製トル
エン(1mL)を、無水メタノール(15mL)中に注
入し、室温で5分間攪拌して前記同様の遠心分離とデカ
ンテーションにより黄色い固体沈殿を分離した。この固
体を室温で乾燥窒素気流下乾燥後、室温で一晩真空乾燥
して黄色固形粉体(45.5mg)を得た。こうして得
た黄色固形粉体はトルエンに可溶であり、吸収スペクト
ルを測定したところピーク波長を409nmに持ち、半
値幅44nmであった。また、発光スペクトルを測定し
たところ二つの発光帯が確認され、ピーク波長は436
nmと558nmであり、短波長側の発光帯の半値幅は
27nmであった。二つの発光帯のピーク発光強度の比
は8.28(436nm):1(558nm)であっ
た。
【0044】
【発明の効果】本発明の硫化カドミウム超微粒子は、粒
度分布が狭くかつ光吸収の波長選択性や発光効率に優れ
るため、種々の光学材料として応用可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1〜2及び比較例1で得られた硫化カド
ミウム超微粒子の吸収スペクトル図である。
【図2】実施例1〜2及び比較例1で得られた硫化カド
ミウム超微粒子の吸収スペクトル図である。

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 半値幅が35nm以下のエキシトン吸収
    帯を与え、かつ半値幅が30nm以下のエキシトン発光
    帯を与える硫化カドミウム超微粒子。
  2. 【請求項2】 硫化カドミウム結晶に有機配位子が結合
    されてなるものである請求項1に記載の硫化カドミウム
    超微粒子。
  3. 【請求項3】 エキシトン発光帯のピーク発光強度がそ
    れより長波長側に位置する発光帯のピーク発光強度に比
    べて1.8倍以上である請求項1または2に記載の硫化
    カドミウム超微粒子。
  4. 【請求項4】 200〜350℃に予め調温されたホス
    フィンオキシド類を含有する液相に硫化カドミウムの原
    料溶液を添加することを特徴とする請求項1〜3のいず
    れかに記載の硫化カドミウム超微粒子の製造方法。
  5. 【請求項5】 硫化カドミウム結晶の核発生を行う際
    に、反応液相中にカルボン酸類を存在させる第一工程
    と、第一工程で生成した硫化カドミウム結晶を液相中に
    おいてホスホン酸類と接触させる第二工程とを含む請求
    項4に記載の硫化カドミウム超微粒子の製造方法。
  6. 【請求項6】 請求項1〜3のいずれかに記載の硫化カ
    ドミウム超微粒子を含有してなる薄膜状成形体。
  7. 【請求項7】 請求項1〜3のいずれかに記載の硫化カ
    ドミウム超微粒子を含有してなる光学材料。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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