JP3829689B2 - 車両のフロントエンド構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両のフロントエンド構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
一般的に、ラジエータは防振ゴム等の弾性支持部材を介して車両ボディの一部をなすアッパビーム及びロアビームに弾性支持固定され、また、ラジエータに冷却風を送風する送風機は、シュラウドを介してラジエータに組み付けられている。
【0003】
なお、シュラウドとは、送風機とラジエータとの隙間を覆うことにより送風機によって誘起された空気流がラジエータを迂回して流れることを抑制するもので、通常、送風機を車両に組み付けるブラケットを兼ねている。
【0004】
ところで、図4に示すように、シュラウド120をラジエータ200に直接に組み付ければ、送風機400とラジエータ200との隙間から送風機400によって誘起された空気流がラジエータ200を迂回して流れることを抑制することができるものの、ラジエータ200が組み付けられたアッパビーム510及びロアビーム520とラジエータ200との隙間、並びにラジエータ200とサイドピラー530から走行風による冷却風がラジエータ200を迂回して流れてしまう。
【0005】
そこで、発明者等は、車両幅方向に拡がるフロントエンドパネルにシュラウドを一体化するとともに、このフロントエンドパネルにラジエータを組み付けることによって、走行風による冷却風がラジエータを迂回して流れることを防止するフロントエンドパネルを試作検討したが、この検討品では、以下のような問題が新たに発生するおそれがある。
【0006】
すなわち、この構造では、ラジエータはフロントエンドパネルに弾性支持固定されることとなるので、ラジエータはフロントエンドパネルに対して変位する。このため、シュラウドとフロントエンドパネルとを一体化すると、ラジエータはフロントエンドパネル、つまりシュラウドに対して変位せざるを得ない。
【0007】
このとき、シュラウドに対するラジエータの振動変位を吸収すべく、シュラウドとラジエータとの間に隙間を設けると、この隙間から送風機によって誘起された空気流がラジエータを迂回して流れてしまうので、シュラウド本来の機能が損なわれ、ラジエータの冷却能力が低下する。
【0008】
これに対して、ラジエータとシュラウドとの隙間にゴムやスポンジ等の弾性変形可能なパッキンを介在させるといった手段が考えられが、この手段では、フロントエンド部の組み立て工数の増大を招いてしまう。
【0009】
また仮に、シュラウドとラジエータとを隙間無く接触させると、ラジエータがシュラウドに対して変位してシュラウド、つまりフロントエンドパネルとラジエータとが擦れ合うので、特にラジエータ側が摩耗すると、ラジエータから冷却水が漏れ出すといった不具合が発生するおそれがある。
【0010】
本発明は、上記点に鑑み、上記問題を解決してフロントエンドパネルとシュラウドとを一体化することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明では、車両前端部にて車両ボディに固定されて車両幅方向に拡がるフロントエンドパネル(100)、弾性支持された熱交換器(200)、及び熱交換器(200)に冷却風を送風する送風機(400)からなる車両のフロントエンド構造であって、
フロントエンドパネル(100)には、送風機(300)と熱交換器(200)との隙間を覆うことにより送風機(300)によって誘起された空気流が熱交換器(200)を迂回して流れることを抑制するシュラウド(120)が一体形成されており、
フロントエンドパネル(100)のうち熱交換器(200)の外縁部側と対向するパネル側対向部(130)には、熱交換器(200)の外縁部に向けて突出する突起部(141、142)が設けられ、
パネル側対向部(130)と、熱交換器(200)のうちパネル側対向部(130)と対向する熱交換器側対向部(201)との間には、突起部(141、142)にて空気通路が蛇行することにより迷路構造化された隙間(140)が設けられていることを特徴とする。
【0012】
これにより、熱交換器(200)がフロントエンドパネル(100)に対して振動変位しても、熱交換器(200)とフロントエンドパネル(100)とが擦れ合うことなく、送風機(400)と熱交換器(200)との隙間を送風機(400)によって誘起された空気流が熱交換器(200)を迂回して流れることを抑制できる。
【0013】
したがって、シュラウド(120)をフロントエンドパネル(100)に一体化することにより走行風による冷却風が熱交換器(200)を迂回して流れることを防止しつつ、熱交換器(200)とフロントエンドパネル(100)との隙間にパッキンを介在させることなく、熱交換器(200)とフロントエンドパネル(100)との隙間を有効に封止することができる。
【0014】
延いては、フロントエンドパネル(100)と熱交換器(200)とが擦れ合ってししまうことを防止できるので、摩耗により熱交換器(200)から流体が漏れ出すといった不具合が発生することを防止でき、熱交換器(200)を含めたフロントエンド構造を信頼性を高めることができる。
【0015】
なお、請求項2に記載の発明のごとく、突起部(141、142)は、具体的には熱交換器(200)の外縁部全周を縁取るように形成すればよい。
また、請求項3に記載の発明のごとく、突起部(141、142)は、具体的にはパネル側対向部(130)に一体形成すればよい。
【0016】
ところで、熱交換器(200)及びフロントエンドパネル(100)の寸法バラツキや想定外の大きな加振力により、突起部(141、142)と熱交換器(200)と干渉するおそれがある。
【0017】
これに対して、請求項4に記載の発明では、突起部(141、142)と熱交換器(200)との隙間寸法のうち、突起部(142)とサイドプレート(230)との隙間寸法(X)は、突起部(141)とサイドプレート(230)以外の部位との隙間寸法(Y)より小さいことを特徴としている。
【0018】
これにより、サイドプレート(230)と対向する突起部(142)が、熱交換器(200)のうちサイドプレート(230)以外の部位と対向する突起部141より先に熱交換器(200)と干渉する。
【0019】
このとき、前記突起部(142)が干渉するサイドプレート(230)は、流体が流れておらず、かつ、流体の熱交換に直接的寄与する部材ではないので、前記突起部(142)がサイドプレート(230)と干渉して擦れ合っても、摩耗によって流体が漏れ出すといった問題は発生しない。したがって、熱交換器(200)を含めたフロントエンド構造を信頼性を更に高めることができる。
【0020】
因みに、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【0021】
【発明の実施の形態】
図1は本実施形態に係る車両のフロントエンド構造を示す斜視図である。
【0022】
フロントエンドパネル100は、車両前端部にて車両ボディに固定されて車両幅方向に拡がるものであり、このフロントエンドパネル100は、略矩形枠状のフレーム部110、フレーム部110の上方側梁部111の長手方向端部に設けられて車両サイドボディ側に延びる第1取付部112、フレーム部110の側柱部113に設けられた第2取付部114等から構成されたものである。
【0023】
そして、フレーム部110の上方側梁部111及び下方側梁部115には、ラジエータ200を組み付けるための取付部116が設けられており、ラジエータ200は、防振ゴム等の弾性変形可能な弾性支持部材(図示せず)を介してフロンドパネル100に弾性支持される。
【0024】
なお、車両用空調装置のコンデンサ300は、ラジエータ200に固定された状態でフロントエンドパネル100に固定される。このため、ラジエータ200及びコンデンサ300は、一体的にフロントエンドパネル100に対して振動変位する。
【0025】
因みに、ラジエータ200は、冷却水が流通する複数本のチューブ211及びフィン212からなる冷却水と空気とを熱交換させるコア部210、各チューブ211の長手方向両端部に位置して各チューブ211と連通するヘッダタンク220、並びにコア部210の端部に位置してコア部210を補強するサイドプレート230を有して構成されたマルチフロー型の熱交換器であり、サイドプレート230は、図3に示すように、コの字状断面形状を有してチューブ211の長手方向と同一方向に延びる梁状の補強部材である。
【0026】
そして、フレーム部110の後方側には、ラジエータ200及びコンデンサ300に冷却風を送風する電動式の送風機400が、フロントエンドパネル100に一体形成されたシュラウド120を介してフロントエンドパネル100に組み付けられている。なお、本実施形態では、フロントエンドパネル100及びシュラウド120は、ガラス繊維又は炭素繊維にて機械的強度が向上させた樹脂にて成型されている
そして、図2、3に示すように、フロントエンドパネル100のうちラジエータ200の外縁部側と対向するパネル側対向部130と、ラジエータ200のうちパネル側対向部130と対向するラジエータ側対向部201との間には、迷路構造化された隙間140が設けられている。
【0027】
ここで、迷路構造化された隙間140とは、パネル側対向部130及びラジエータ側対向部201のうち少なくとも一方側に、他方側に向けて突出して突起部141、142を形成することにより、空気通路をなす隙間140を蛇行させて隙間140を空気が流れる際に発生する圧力損失を大きくし、ラジエータ200を迂回した空気が隙間140を流れて送風機400に吸引されることを防止する、メカニカルシールの一種である。
【0028】
なお、本実施形態では、突起部141、142は、ラジエータ200の外縁部全周を縁取るように連続的にフロントエンドパネル100に一体形成されている。具体的には、一方の突起部141は図1に示すように車両幅方向(水平方向)に延びるものであり、他方の突起部142は車両上下方向に延びるものである。この両突起部141、142の組み合わせによってラジエータ200の外縁部全周を縁取る形状が形成される。
【0029】
そして、突起部141、142は、サイドプレート230と対向する部位に位置する突起部142とサイドプレート230との隙間寸法Xが、サイドプレート230以外の部位(つまり、図2に示すようにラジエータコア部230の上下端部)と対向する突起部141との隙間寸法Yより小さくなるように選定されている。
【0030】
次に、本実施形態の特徴を述べる。
【0031】
本実施形態によれば、フロントエンドパネル100のうちラジエータ200の外縁部側と対向するパネル側対向部130と、ラジエータ200のうちパネル側対向部130と対向するラジエータ側対向部201との間に、迷路構造化された隙間140を設けているので、シュラウド120と一体化されたフロントエンドパネル100にラジエータ200及びコンデンサ300を弾性支持部材によりフローティングマウントしても、ラジエータ200とフロントエンドパネル100とが擦れ合うことなく、送風機400とラジエータ200との隙間を送風機400によって誘起された空気流がラジエータ200を迂回して流れることを抑制できる。
【0032】
したがって、シュラウド120をフロントエンドパネル100に一体化することにより走行風による冷却風がラジエータ200を迂回して流れることを防止しつつ、ラジエータ200とフロントエンドパネル100との隙間にパッキンを介在させることなく、ラジエータ200とフロントエンドパネル100との隙間を有効に封止することができる。
【0033】
延いては、フロントエンドパネル100とラジエータ200とが擦れ合ってししまうことを防止できるので、摩耗によりラジエータ200から冷却水が漏れ出すといった不具合が発生することを防止でき、ラジエータ200を含めたフロントエンド構造の信頼性を高めることができる。
【0034】
また、ラジエータ200及びコンデンサ300をフロントエンドパネル100にフローティングマウントすることができるので、ラジエータ200、コンデンサ300及びフントエンドパネル100の寸法バラツキを吸収しつつ、ラジエータ200及びコンデンサ300を動吸振器の錘部材として利用することもできる。
【0035】
ところで、本発明は、パネル側対向部130とラジエータ側対向部201との間に迷路構造化された隙間140を設けて、ラジエータ200とフロントエンドパネル100との隙間から空気が漏れることを防止しつつ、ラジエータ200とフロントエンドパネル100とが擦れ合うことを防止するものであるが、ラジエータ200及びフロントエンドパネル100の寸法バラツキや想定外の大きな加振力により、突起部141、142にラジエータ200が干渉するおそれがある。
【0036】
しかし、本実施形態では、サイドプレート230と対向する部位に位置する突起部142とサイドプレート230との隙間寸法Xが、サイドプレート230以外の部位と対向する突起部141との隙間寸法Yより小さくなっているので、突起部142が突起部141より先にラジエータ200と干渉する。
【0037】
このとき、突起部142が干渉するサイドプレート230は、冷却水が流れておらず、かつ、冷却水の熱交換に直接的寄与する部材ではないので、突起部142がサイドプレート230と干渉して擦れ合っても、摩耗によって冷却水が漏れ出すといった問題は発生しない。したがって、ラジエータ200を含めたフロントエンド構造を信頼性を更に高めることができる。
【0038】
(その他の実施形態)
上述の実施形態では、コンデンサ300がラジエータ200に組み付けられていたが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えばコンデンサ300をフロントエンドパネル100にフローティングマウントしてもよい。
【0039】
また、本発明に係る熱交換器は、コンデンサ300又はラジエータ200に限定されるものではない。
【0040】
また、上述の実施形態では、ラジエータ200は弾性支持部材を介してフロントエンドパネル100に弾性支持されていたが、本発明は、熱交換器であるラジエータ200がフロントエンドパネル100に対して変位可能であればよいので、車両前端側の車両ボディに弾性支持された状態であってもよい。
【0041】
また、上述の実施形態では、フロントエンドパネル100を樹脂製としたが、本発明はこれに限定されるものではなく、アルミニウムやマグネシウム等の金属製であってもよい。
【0042】
また、上述の実施形態では、フロントエンドパネル100に突起部141、142を設けて隙間140を迷路構造化したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えばラジエータ200側に突起部141、142を設ける、又はパネル側対向部130に凹凸を設ける等して隙間140を迷路構造化してもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係る車両のフロントエンド構造を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係る車両のフロントエンド構造の上下方向断面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る車両のフロントエンド構造の水平方向断面図である。
【図4】(a)は従来の技術に係る車両のフロントエンド構造の上下方向断面図であり、(b)は従来の技術に係る車両のフロントエンド構造の水平方向断面図である。
【符号の説明】
100…フロントエンドパネル、120…シュラウド、140…隙間、
141、142…突起部、200…ラジエータ、400…送風機。
Claims (4)
- 車両前端部にて車両ボディに固定されて車両幅方向に拡がるフロントエンドパネル(100)、弾性支持された熱交換器(200)、及び前記熱交換器(200)に冷却風を送風する送風機(400)からなる車両のフロントエンド構造であって、
前記フロントエンドパネル(100)には、前記送風機(300)と前記熱交換器(200)との隙間を覆うことにより前記送風機(300)によって誘起された空気流が前記熱交換器(200)を迂回して流れることを抑制するシュラウド(120)が一体形成されており、
前記フロントエンドパネル(100)のうち前記熱交換器(200)の外縁部側と対向するパネル側対向部(130)には、前記熱交換器(200)の外縁部に向けて突出する突起部(141、142)が設けられ、
前記パネル側対向部(130)と、前記熱交換器(200)のうち前記パネル側対向部(130)と対向する熱交換器側対向部(201)との間には、前記突起部(141、142)にて空気通路が蛇行することにより迷路構造化された隙間(140)が設けられていることを特徴とする車両のフロントエンド構造。 - 前記突起部(141、142)は、前記熱交換器(200)の外縁部全周を縁取るように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の車両のフロントエンド構造。
- 前記突起部(141、142)は、前記パネル側対向部(130)に一体形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の車両のフロントエンド構造。
- 前記熱交換器(200)は、流体が流通するチューブ(211)及びフィン(212)からなる熱交換コア部(210)、並びに前記熱交換コア部(210)の端部に設けられて前記熱交換コア部(210)を補強するサイドプレート(230)を有して構成されており、
前記突起部(141、142)と前記熱交換器(200)との隙間寸法のうち、前記突起部(142)と前記サイドプレート(230)との隙間寸法(X)は、前記突起部(141)とサイドプレート(230)以外の部位との隙間寸法(Y)より小さいことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の車両のフロントエンド構造。
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