JP3826463B2 - サンプルホールド回路 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はサンプルホールド回路に係り、特に、高速動作を要求されるバイポーラトランジスタを用いたサンプルホールド回路において、速度を損なうことなく、ホールディングモード時における入力信号の寄生容量を介した出力信号への漏れを抑制し、常に安定した電位を出力できるサンプルホールド回路に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、バイポーラトランジスタ素子を用いたサンプルホールド回路として、エミッタ共通差動トランジスタ対により電圧フォロア回路を構成し、その共通エミッタ電流を断続する回路が知られている。図3には、第1の従来例として、この従来のサンプルホールド回路の回路図を示す。
【0003】
図3において、サンプリング端子に供給されるサンプリング信号SAMPが”H”レベルの時、NPNトランジスタQ5及びQ6で構成されるエミッタ共通増幅回路において、NPNトランジスタQ6が選択され、PNPトランジスタQ1,Q2及びNPNトランジスタQ3,Q4で構成される電圧フォロアにより出力信号OUTの電位を決定する。
【0004】
また、コンデンサC1には、出力信号OUTの電位が入力信号INの電位に追随すべく電荷がチャージまたはディスチャージされる。ホールディング端子に供給されるホールディング信号HLDが”H”レベルになり、NPNトランジスタQ5が選択された時、PNPトランジスタQ1,Q2及びNPNトランジスタQ3,Q4はオフ状態となり、コンデンサC1が電荷量を保持することにより出力信号OUTの電位を一定に保つこととなる。
【0005】
また、C2及びC3は、それぞれNPNトランジスタQ3及びQ4についての回路上の構成要素ではないベースエミッタ間接合容量(以下、寄生容量という)を示す。NPNトランジスタQ3及びQ4がオン状態にある時、ベースエミッタ間の電圧は一定のため寄生容量による回路動作への影響はない。しかしながら、ホールディングモード時でNPNトランジスタQ3及びQ4がオフ状態にある時、入力信号INの電位が変化すると、寄生容量C2及びC3を経由してコンデンサC1から電荷がチャージまたはディスチャージされる。この時、コンデンサC1は接地されているため、コンデンサC1の電荷量の変化は出力信号OUTの電位変化となり、ホールディング時における信号の漏れとなって現れることとなる。
【0006】
このホールディングモード時の入力信号INの電位変化が出力信号OUTの電位への漏れとして現れる現象について、図を参照して説明する。図5は、ホールディングモード時に入力信号INの電位が高くなる方向に変化した場合の入力信号INの電位と、その影響を受けた出力信号OUTの電位のそれぞれの波形を示す。同図に示すように、入力信号INの電位の上昇は、寄生容量C2及びC3を介してコンデンサC1に電荷を注入することとなって、入力信号INの電位変化が出力信号OUTの電位への漏れとして現れる。
【0007】
また、図6は、ホールディングモード時に入力信号INの電位が低くなる方向に変化した場合の入力信号INの電位と、その影響を受けた出力信号OUTの電位のそれぞれの波形を示す。この場合には、入力信号INの電位の下降は、寄生容量C2及びC3を介してコンデンサC1から電荷を引き抜くこととなって、入力信号INの電位変化が出力信号OUTの電位への漏れとして現れる。
【0008】
コンデンサC1の容量を大きくすると、出力信号OUTへの信号漏れは低くなるが、回路の動作速度に影響を及ぼすことになる。従ってこの現象は、コンデンサC1の容量を比較的大きく設定することが可能で、それ程高速性が要求されないサンプルホールド回路においては、致命的な欠点とはならないが、非常に高速な動作を要求されるサンプルホールド回路においては致命的な欠点となる。
【0009】
別の従来技術として、図4には、第2の従来例のサンプルホールド回路の回路図を示す。同図に示すように、第2の従来例のサンプルホールド回路は、NPNトランジスタQ7によるエミッタフォロアを介して、出力信号OUTをNPNトランジスタQ4のベースに帰還するものである。
【0010】
第1の従来例(図3)において、次段に出力信号OUTを供給するには、入力インピーダンスが高く、オフセット電圧が小さなバッファ回路を介して行う必要がある。第2の従来例では、NPNトランジスタQ7がその役割を果たし、且つ該NPNトランジスタQ7がループ内に含まれることから、オフセットの影響を考える必要がない。
【0011】
この第2の従来例における入力信号INの出力信号OUTへの漏れは、第1の従来例とは少し異なったものとなる。即ち、入力信号INの電位が上昇する方向の変化に対しては、寄生容量C2及びC3を介して移動する電荷は、図4に示した経路i41により出力端子(OUT)に流入するのみで、コンデンサC1の電荷には影響を与えない。これに対して、入力信号INの電位が下降する方向の変化に対しては、NPNトランジスタQ4のベースエミッタ間電圧を増やすことにより、大部分の電荷は、NPNトランジスタQ4のコレクタ電流としてi42の経路によりコンデンサC1から引き抜かれる。このように、第2の従来例のサンプルホールド回路は、入力信号INの電位が下降する方向についてのみ、上記漏れ現象が現れる。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
以上のように、上記従来のエミッタ共通差動増幅回路の共通エミッタ電流を断続させる方式のサンプルホールド回路においては、ホールディングモード時の入力信号INの電位変化が出力信号OUTの電位への漏れとして現れ、該出力信号OUTへの信号漏れは、コンデンサC1の容量を大きくすることにより低く抑えることができるが、高速な動作を要求されるサンプルホールド回路においては致命的な欠点となるという事情があった。
【0013】
本発明は、上記従来の事情に鑑みてなされたものであって、高速動作を要求されるバイポーラトランジスタを用いたサンプルホールド回路において、速度を損なうことなく、ホールディングモード時における入力信号の寄生容量を介した出力信号への漏れを抑制し、常に安定した電位を出力できるサンプルホールド回路を提供することを目的としている。
【0014】
また本発明の他の目的は、高速動作のために蓄積容量を極限まで減じても、ホールディングモード時における入力信号の寄生容量を介した出力信号への漏れを抑制でき、ホールディング信号の誤差を抑制し得るサンプルホールド回路を提供することである。
【0015】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明のサンプルホールド回路は、ベースに当該サンプルホールド回路の入力信号が印加される第1導電型の第1トランジスタと、ベースに当該サンプルホールド回路の出力信号が帰還される第1導電型の第2トランジスタとを備える第1のエミッタ共通差動トランジスタ対と、コレクタが前記第1導電型の第2トランジスタのコレクタと接続され、該第1導電型の第2トランジスタの電流源負荷となる第2導電型の第1トランジスタと、コレクタが前記第2導電型の第1トランジスタのエミッタと接続され、ベースにホールディングモードである旨を示す信号が印加される第1導電型の第3トランジスタと、コレクタが前記第1のエミッタ共通差動トランジスタ対の共通エミッタと接続され、ベースにサンプリングモードである旨を示す信号が印加される第1導電型の第4トランジスタとを備える第2のエミッタ共通差動トランジスタ対と、一端が前記第1導電型の第2トランジスタのコレクタに接続される蓄積容量素子と、前記第1導電型の第2トランジスタのコレクタ出力を入力して、当該サンプルホールド回路の出力信号を得る電圧フォロア回路とを具備するサンプルホールド回路であって、ベースに前記ホールディングモードである旨を示す信号が印加される第1導電型の第5トランジスタと、ベースに前記サンプリングモードである旨を示す信号が印加される第1導電型の第6トランジスタとを備える第1導電型の第3のエミッタ共通差動トランジスタ対と、エミッタが前記第1のエミッタ共通差動トランジスタ対の共通エミッタに接続される第1導電型の第7トランジスタと、当該サンプルホールド回路の出力端子の電位に第1の固定電圧または第2の固定電圧を重畳して前記第1導電型の第7トランジスタのベースに印加する電圧重畳手段とを具備し、前記電圧重畳手段は、サンプリングモード時に前記第1導電型の第7トランジスタがカットオフする第1の固定電圧を、ホールディングモード時に前記第1のエミッタ共通差動トランジスタ対のベースエミッタ間電圧が逆バイアスの方向にバイアスされる第2の固定電圧を、前記第1導電型の第3のエミッタ共通差動トランジスタ対のコレクタ電流による切り換えで、それぞれ設定するものである。
【0016】
また、本発明のサンプルホールド回路は、前記電圧重畳手段に、ベースに前記電圧フォロア回路からの信号が印加される第1導電型の第8トランジスタと、一端が前記第1導電型の第8トランジスタのエミッタに、他端が前記第1導電型の第5トランジスタのコレクタにそれぞれ接続される第1の抵抗素子と、一端が前記第1抵抗素子の他端に、他端が前記第1導電型の第7トランジスタのベースにそれぞれ接続される第2の抵抗素子とを具備するものである。
【0017】
本発明のサンプルホールド回路では、エミッタ共通差動トランジスタ対の共通エミッタ電流を断続させる方式のサンプルホールド回路であって、電圧重畳手段において、サンプリングモード時には、第1導電型の第7トランジスタがカットオフするような第1の固定電圧に電圧重畳手段の出力電圧を増加させ、また、ホールディングモード時には、第1導電型の第7トランジスタによって第1導電型の第1のエミッタ共通差動トランジスタ対の共通エミッタをプルアップするよう電圧重畳手段の出力電圧を第2の固定電圧に設定する。
【0018】
このように、ホールディングモード時に第1導電型の第1のエミッタ共通差動トランジスタ対の共通エミッタを第1導電型の第7トランジスタによりプルアップすることにより、入力トランジスタのベース電位が変動することによる出力信号への影響を軽減することができ、高速動作を要求されるサンプルホールド回路において速度を損なうことなく、ホールディングモード時に入力信号の変化が起きたときも常に安定した電位を出力できる。
【0019】
また、入力信号の電位変化は蓄積容量素子の電荷には影響を与えず、出力電位に影響を与えないので、高速動作のために蓄積容量を極限まで減じても、ホールディングモード時における入力信号の寄生容量を介した出力信号への漏れを抑制でき、ホールディング信号の誤差を抑制できる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のサンプルホールド回路の実施形態について、〔実施形態1〕,〔実施形態2〕の順に図面を参照して詳細に説明する。
【0021】
〔実施形態1〕
図1は本発明の実施形態1に係るサンプルホールド回路の構成図である。同図において、図4(第2の従来例)と重複する部分には同一の符号を附する。
【0022】
図1において、本実施形態のサンプルホールド回路は、第1のエミッタ共通差動NPNトランジスタ対Q3及びQ4、抵抗R1及びR2、PNPトランジスタQ1及びQ2、第2のエミッタ共通差動NPNトランジスタ対Q5及びQ6、電流源I1、蓄積容量素子C1、NPNトランジスタQ7、電流源I2、ダイオードQ12及びQ13、電流源I4、第3のエミッタ共通差動NPNトランジスタ対Q10及びQ11、電流源I3、NPNトランジスタQ8、抵抗R3及びR4、NPNトランジスタQ9を備えて構成されている。尚、図中のC2は、NPNトランジスタQ3についての回路上の構成要素ではないベースエミッタ間接合容量(以下、寄生容量という)である。また、Vccは電源、GNDは接地電位である。
【0023】
第1のエミッタ共通差動トランジスタ対は、NPNトランジスタQ3及びQ4からなり、NPNトランジスタQ3のベースには入力信号INが、コレクタにはPNPトランジスタQ1のコレクタがそれぞれ接続され、NPNトランジスタQ4のベースには出力信号OUTが、コレクタにはPNPトランジスタQ2のコレクタがそれぞれ接続され、更にNPNトランジスタQ3及びQ4の共通エミッタにはNPNトランジスタQ6のコレクタが接続されている。
【0024】
また、抵抗R1及びR2並びにPNPトランジスタQ1及びQ2はカレントミラーを構成しており、PNPトランジスタQ1及びQ2のベースは相互に接続され、またPNPトランジスタQ1のベースはコレクタに接続され、更に、PNPトランジスタQ1のエミッタは抵抗R1を介して、PNPトランジスタQ2のエミッタは抵抗R2を介して、それぞれ電源電位Vccに接続されている。
【0025】
また、第2のエミッタ共通差動トランジスタ対は、NPNトランジスタQ5及びQ6からなり、NPNトランジスタQ5のベースにはホールディング信号HLDが、コレクタにはPNPトランジスタQ2のエミッタがそれぞれ接続され、また、NPNトランジスタQ6のベースにはサンプリング信号SAMPが、コレクタには第1のエミッタ共通差動NPNトランジスタ対Q3及びQ4の共通エミッタがそれぞれ接続され、更に、NPNトランジスタQ5及びQ6の共通エミッタには電流源I1の一端が接続されている。尚、電流源I1の他端は接地電位GNDに接続されている。
【0026】
また、蓄積容量素子C1は、NPNトランジスタQ4のコレクタと接地電位GND間に接続されている。また、NPNトランジスタQ7のベースはNPNトランジスタQ4のコレクタに、コレクタは電源電位Vccに、エミッタは電流源I2の一端に、それぞれ接続されている。ダイオードQ12及びQ13は直列接続されて、ダイオードQ12のアノードは電流源I4の一端に接続され、ダイオードQ13のカソード側は出力端子(OUT)に接続されている。尚、電流源I2の他端は接地電位GNDに、電流源I4の他端は電源電位Vccにそれぞれ接続されている。
【0027】
また、第3のエミッタ共通差動トランジスタ対は、NPNトランジスタQ10及びQ11からなり、NPNトランジスタQ10のベースにはホールディング信号HLDが、コレクタには抵抗R3及びR4の接続点がそれぞれ接続され、NPNトランジスタQ11のベースにはサンプリング信号SAMPが、コレクタにはNPNトランジスタQ8のベース及び抵抗R4の他端がそれぞれ接続され、更に、NPNトランジスタQ10及びQ11の共通エミッタには電流源I3の一端が接続されている。尚、電流源I3の他端は接地電位GNDに接続されている。
【0028】
また、NPNトランジスタQ8のエミッタは第1のエミッタ共通差動NPNトランジスタ対Q3及びQ4の共通エミッタと接続され、コレクタには電源電位Vccが、ベースにはNPNトランジスタQ11のコレクタがそれぞれ接続されている。また、NPNトランジスタQ9のコレクタには電源電位Vccが、エミッタには抵抗R3の一端が、ベースには電流源I4とダイオードQ12の接続点がそれぞれ接続されている。更に、抵抗R3の他端と抵抗R4の一端が接続され、抵抗R4の他端はNPNトランジスタQ8のベースに接続されている。
【0029】
尚、抵抗R3及びR4の両端電圧VXには、第3のエミッタ共通差動NPNトランジスタ対Q10及びQ11のコレクタ電流により、サンプリングモード時には、NPNトランジスタQ8がカットオフするような第1の固定電圧が設定され、ホールディングモード時には、第1のエミッタ共通差動NPNトランジスタ対Q3及びQ4のベースエミッタ間電圧がより逆バイアスの方向にバイアスされるような第2の固定電圧が設定される。
【0030】
即ち、サンプリングモード時には、NPNトランジスタQ8がカットオフするように、抵抗R3及びR4の両端電圧VXを増加させ第1の固定電圧とする。また、ホールディングモード時には、NPNトランジスタQ8によって第1のエミッタ共通差動NPNトランジスタ対Q3及びQ4のエミッタ(ノードA1)をプルアップするよう抵抗R3及びR4の両端電圧VXを第2の固定電圧に設定する。
【0031】
サンプリングモード時及びホールディングモード時共に、NPNトランジスタQ8のベース電位(ノードB1)は出力信号OUTの電位に追従しなければならない。従って、本実施形態では、NPNトランジスタQ9により出力信号OUTからの帰還回路を構成し、該帰還電圧に抵抗R3及びR4の両端電圧VXを重畳してNPNトランジスタQ8のベース(ノードB1)の電位としている。
【0032】
抵抗R3及びR4の両端電圧VXを第1または第2の固定電圧とする切り替えは、第3のエミッタ共通差動NPNトランジスタ対Q10及びQ11によりなされる。即ち、サンプリングモード時には、NPNトランジスタQ11がオン状態となり、ノードB1の電位V(B1)は、ダイオードの順方向電圧をVf、出力信号OUTの電位をV(OUT)、電流源I3の電流をi3とするとき、次式となる。
V(B1)=V(OUT)+Vf−(R3+R4)×i3
また、ホールディングモード時には、NPNトランジスタQ11がオフ状態となり、抵抗R4には電流は流れず、ノードB1の電位V(B1)は次式となる。
V(B1)=V(OUT)+Vf−R3×i3
【0033】
本実施形態のサンプルホールド回路が適切に動作するためには、ノードB1の電位V(B1)は、出力電位V(OUT)に対して±200[mV]程度、即ち、サンプリングモード時には低く、ホールディングモード時には高くなるようそれぞれ設定する必要がある。従って、その条件は次の不等式となる。
サンプリングモード時 :(R3+R4)×i3>Vf+200[mV]
ホールディングモード時: R3×i3<Vf−200[mV]
【0034】
この2つの条件式を満たす抵抗R3及びR4の抵抗値は次の不等式で与えられる。
R3<(Vf−200[mV])/i3
R4>400[mV]/i3
尚、NPNトランジスタQ5及びQ6の切り換えと、NPNトランジスタQ10及びQ11の切り換えは同時が望ましく、これらトランジスタを同等の素子で、且つ同等の切り換え速度で設計することが必要である。
【0035】
本実施形態のサンプルホールド回路においては、ホールディングモード時に入力信号INの電位が下降する方向に変化したとき、寄生容量C2を介してノードA1より電荷が引き抜かれることとなるわけであるが、NPNトランジスタQ4のベース電位よりもNPNトランジスタQ8のベース電位が高いので、この電荷の殆どは、NPNトランジスタQ8により供給されることとなる。従って、入力信号INの電位変化はコンデンサC1の電荷には影響を与えず、出力電位V(OUT)に影響を与えない。これにより、速度を損なうことなく、ホールディングモード時における入力信号INの寄生容量を介した出力信号OUTへの漏れを抑制でき、常に安定した電位を出力可能なサンプルホールド回路を実現できる。
【0036】
〔実施形態2〕
図2は本発明の実施形態2に係るサンプルホールド回路の構成図である。同図において、図1(実施形態1)と重複する部分には同一の符号を附する。
【0037】
図2において、本実施形態のサンプルホールド回路は、第1のエミッタ共通差動NPNトランジスタ対Q3及びQ4、(抵抗R1及びR2、PNPトランジスタQ1及びQ2、)抵抗R5及びR6、第2のエミッタ共通差動NPNトランジスタ対Q5及びQ6、電流源I1、蓄積容量素子C1、NPNトランジスタQ7、電流源I2、ダイオードQ12、第3のエミッタ共通差動NPNトランジスタ対Q10及びQ11、電流源I3、NPNトランジスタQ8、抵抗R3及びR4、NPNトランジスタQ9を備えて構成されている。尚、Vccは電源、GNDは接地電位である。
【0038】
第1のエミッタ共通差動トランジスタ対は、NPNトランジスタQ3及びQ4からなり、NPNトランジスタQ3のベースには入力信号INが、コレクタにはカレントミラーの理想的電流源がそれぞれ接続され、NPNトランジスタQ4のベースには出力信号OUTが、コレクタにはカレントミラーの理想的電流源がそれぞれ接続され、更にNPNトランジスタQ3及びQ4の共通エミッタにはNPNトランジスタQ6のコレクタが接続されている。
【0039】
また、抵抗R1及びR2並びにPNPトランジスタQ1及びQ2はカレントミラーを構成しており、具体的には実施形態1と同様であるので、図2には理想的電流源のシンボルで表記した。
【0040】
また、第2のエミッタ共通差動トランジスタ対は、NPNトランジスタQ5及びQ6からなり、NPNトランジスタQ5のベースにはホールディング信号HLDが、コレクタにはカレントミラーの理想的電流源がそれぞれ接続され、NPNトランジスタQ6のベースにはサンプリング信号SAMPが、コレクタには第1のエミッタ共通差動NPNトランジスタ対Q3及びQ4の共通エミッタがそれぞれ接続され、更にNPNトランジスタQ5及びQ6の共通エミッタには電流源I1の一端が接続されている。尚、電流源I1の他端は接地電位GNDに接続されている。
【0041】
また、蓄積容量素子C1は、NPNトランジスタQ4のコレクタと接地電位GND間に接続されている。また、NPNトランジスタQ7のベースはNPNトランジスタQ4のコレクタに、コレクタは電源電位Vccに、エミッタはダイオードQ12のアノードに、それぞれ接続されている。ダイオードQ12のカソードは電流源I2の一端及び出力端子(OUT)に接続されている。尚、電流源I2の他端は接地電位GNDに接続されている。
【0042】
また、第3のエミッタ共通差動トランジスタ対は、NPNトランジスタQ10及びQ11からなり、NPNトランジスタQ10のベースにはホールディング信号HLDが、コレクタには抵抗R3及びR4の接続点がそれぞれ接続され、NPNトランジスタQ11のベースにはサンプリング信号SAMPが、コレクタにはNPNトランジスタQ8のベース及び抵抗R4の他端がそれぞれ接続され、更にNPNトランジスタQ10及びQ11の共通エミッタには電流源I3の一端が接続されている。尚、電流源I3の他端は接地電位GNDに接続されている。
【0043】
また、NPNトランジスタQ8のエミッタは第1のエミッタ共通差動NPNトランジスタ対Q3及びQ4の共通エミッタと接続され、コレクタには電源電位Vccが、ベースにはNPNトランジスタQ11のコレクタがそれぞれ接続されている。また、NPNトランジスタQ9のコレクタには電源電位Vccが、エミッタには抵抗R3の一端が、ベースにはNPNトランジスタQ7のベースがそれぞれ接続されている。更に、抵抗R3の他端と抵抗R4の一端が接続され、抵抗R4の他端はNPNトランジスタQ8のベースに接続されている。
【0044】
以上のように本実施形態のサンプルホールド回路の構成は、実施形態1において、出力信号OUTの電位を2Vfを持ち上げるためのダイオードQ12及びQ13の内のQ13を、NPNトランジスタQ7によるエミッタフォロアで代用した構成であり、電流源I4を省略できる。即ち、NPNトランジスタQ7のVfを使用して出力信号OUTの電位を2Vfを持ち上げる構成であるので、1個のダイオードQ12により実施形態1のサンプルホールド回路(図1)と同様の機能が実現される。
【0045】
但し、NPNトランジスタQ9のベース電流によるドループが発生するため、ホールド時間が長い用途やドループの許容値が小さな用途には適さない。
【0046】
また、高速動作させるため、電流源I1の電流を多く流すとリンギングを引き起こす。このリンギングを防止するために、本実施形態のサンプルホールド回路では、第1のエミッタ共通差動NPNトランジスタ対Q3及びQ4のエミッタに、それぞれ抵抗R5及びR6の一端を接続し、該抵抗R5及びR6の他端を接続してノードA2とし、該ノードA2をNPNトランジスタQ8のエミッタに接続した構成としているが、サンプルホールド回路としての動作に変化は無い。
【0047】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のサンプルホールド回路によれば、ホールディングモード時に第1導電型の第1のエミッタ共通差動トランジスタ対の共通エミッタを第1導電型の第7トランジスタによりプルアップすることにより、入力トランジスタのベース電位が変動することによる出力信号への影響を軽減することができ、高速動作を要求されるサンプルホールド回路において速度を損なうことなく、ホールディングモード時に入力信号の変化が起きたときも常に安定した電位を出力できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態1に係るサンプルホールド回路の構成図である。
【図2】本発明の実施形態2に係るサンプルホールド回路の構成図である。
【図3】第1の従来例のサンプルホールド回路の回路図である。
【図4】第2の従来例のサンプルホールド回路の回路図である。
【図5】従来のサンプルホールド回路において、ホールディングモード時に入力信号の電位が高くなる方向に変化した場合の入力信号及び出力信号の波形を示す説明図である。
【図6】従来のサンプルホールド回路において、ホールディングモード時に入力信号の電位が低くなる方向に変化した場合の入力信号及び出力信号の波形を示す説明図である。
【符号の説明】
Q3及びQ4…第1のエミッタ共通差動NPNトランジスタ対、Q3…第1導電型の第1トランジスタ、Q4…第1導電型の第2トランジスタ、R1〜R6…抵抗、R3,R4…重畳手段、Q1…PNPトランジスタ、Q2…PNPトランジスタ(第2導電型の第1トランジスタ)、Q5及びQ6…第2のエミッタ共通差動NPNトランジスタ対、Q5…第1導電型の第3トランジスタ、Q6…第1導電型の第4トランジスタ、I1〜I4…電流源、C1…コンデンサ(蓄積容量素子)、Q7…NPNトランジスタ、Q8…NPNトランジスタ(第1導電型の第7トランジスタ)、Q9…NPNトランジスタ、Q12,Q13…ダイオード、Q10及びQ11…第3のエミッタ共通差動NPNトランジスタ対、Q10…第1導電型の第5トランジスタ、Q11…第1導電型の第6トランジスタ、C2,C3,C4…NPNトランジスタのベースエミッタ間接合容量(寄生容量)、Vcc…電源、GND…接地電位、IN…入力信号、OUT…出力信号、HLD…ホールディング信号、SAMP…サンプリング信号。
【発明の属する技術分野】
本発明はサンプルホールド回路に係り、特に、高速動作を要求されるバイポーラトランジスタを用いたサンプルホールド回路において、速度を損なうことなく、ホールディングモード時における入力信号の寄生容量を介した出力信号への漏れを抑制し、常に安定した電位を出力できるサンプルホールド回路に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、バイポーラトランジスタ素子を用いたサンプルホールド回路として、エミッタ共通差動トランジスタ対により電圧フォロア回路を構成し、その共通エミッタ電流を断続する回路が知られている。図3には、第1の従来例として、この従来のサンプルホールド回路の回路図を示す。
【0003】
図3において、サンプリング端子に供給されるサンプリング信号SAMPが”H”レベルの時、NPNトランジスタQ5及びQ6で構成されるエミッタ共通増幅回路において、NPNトランジスタQ6が選択され、PNPトランジスタQ1,Q2及びNPNトランジスタQ3,Q4で構成される電圧フォロアにより出力信号OUTの電位を決定する。
【0004】
また、コンデンサC1には、出力信号OUTの電位が入力信号INの電位に追随すべく電荷がチャージまたはディスチャージされる。ホールディング端子に供給されるホールディング信号HLDが”H”レベルになり、NPNトランジスタQ5が選択された時、PNPトランジスタQ1,Q2及びNPNトランジスタQ3,Q4はオフ状態となり、コンデンサC1が電荷量を保持することにより出力信号OUTの電位を一定に保つこととなる。
【0005】
また、C2及びC3は、それぞれNPNトランジスタQ3及びQ4についての回路上の構成要素ではないベースエミッタ間接合容量(以下、寄生容量という)を示す。NPNトランジスタQ3及びQ4がオン状態にある時、ベースエミッタ間の電圧は一定のため寄生容量による回路動作への影響はない。しかしながら、ホールディングモード時でNPNトランジスタQ3及びQ4がオフ状態にある時、入力信号INの電位が変化すると、寄生容量C2及びC3を経由してコンデンサC1から電荷がチャージまたはディスチャージされる。この時、コンデンサC1は接地されているため、コンデンサC1の電荷量の変化は出力信号OUTの電位変化となり、ホールディング時における信号の漏れとなって現れることとなる。
【0006】
このホールディングモード時の入力信号INの電位変化が出力信号OUTの電位への漏れとして現れる現象について、図を参照して説明する。図5は、ホールディングモード時に入力信号INの電位が高くなる方向に変化した場合の入力信号INの電位と、その影響を受けた出力信号OUTの電位のそれぞれの波形を示す。同図に示すように、入力信号INの電位の上昇は、寄生容量C2及びC3を介してコンデンサC1に電荷を注入することとなって、入力信号INの電位変化が出力信号OUTの電位への漏れとして現れる。
【0007】
また、図6は、ホールディングモード時に入力信号INの電位が低くなる方向に変化した場合の入力信号INの電位と、その影響を受けた出力信号OUTの電位のそれぞれの波形を示す。この場合には、入力信号INの電位の下降は、寄生容量C2及びC3を介してコンデンサC1から電荷を引き抜くこととなって、入力信号INの電位変化が出力信号OUTの電位への漏れとして現れる。
【0008】
コンデンサC1の容量を大きくすると、出力信号OUTへの信号漏れは低くなるが、回路の動作速度に影響を及ぼすことになる。従ってこの現象は、コンデンサC1の容量を比較的大きく設定することが可能で、それ程高速性が要求されないサンプルホールド回路においては、致命的な欠点とはならないが、非常に高速な動作を要求されるサンプルホールド回路においては致命的な欠点となる。
【0009】
別の従来技術として、図4には、第2の従来例のサンプルホールド回路の回路図を示す。同図に示すように、第2の従来例のサンプルホールド回路は、NPNトランジスタQ7によるエミッタフォロアを介して、出力信号OUTをNPNトランジスタQ4のベースに帰還するものである。
【0010】
第1の従来例(図3)において、次段に出力信号OUTを供給するには、入力インピーダンスが高く、オフセット電圧が小さなバッファ回路を介して行う必要がある。第2の従来例では、NPNトランジスタQ7がその役割を果たし、且つ該NPNトランジスタQ7がループ内に含まれることから、オフセットの影響を考える必要がない。
【0011】
この第2の従来例における入力信号INの出力信号OUTへの漏れは、第1の従来例とは少し異なったものとなる。即ち、入力信号INの電位が上昇する方向の変化に対しては、寄生容量C2及びC3を介して移動する電荷は、図4に示した経路i41により出力端子(OUT)に流入するのみで、コンデンサC1の電荷には影響を与えない。これに対して、入力信号INの電位が下降する方向の変化に対しては、NPNトランジスタQ4のベースエミッタ間電圧を増やすことにより、大部分の電荷は、NPNトランジスタQ4のコレクタ電流としてi42の経路によりコンデンサC1から引き抜かれる。このように、第2の従来例のサンプルホールド回路は、入力信号INの電位が下降する方向についてのみ、上記漏れ現象が現れる。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
以上のように、上記従来のエミッタ共通差動増幅回路の共通エミッタ電流を断続させる方式のサンプルホールド回路においては、ホールディングモード時の入力信号INの電位変化が出力信号OUTの電位への漏れとして現れ、該出力信号OUTへの信号漏れは、コンデンサC1の容量を大きくすることにより低く抑えることができるが、高速な動作を要求されるサンプルホールド回路においては致命的な欠点となるという事情があった。
【0013】
本発明は、上記従来の事情に鑑みてなされたものであって、高速動作を要求されるバイポーラトランジスタを用いたサンプルホールド回路において、速度を損なうことなく、ホールディングモード時における入力信号の寄生容量を介した出力信号への漏れを抑制し、常に安定した電位を出力できるサンプルホールド回路を提供することを目的としている。
【0014】
また本発明の他の目的は、高速動作のために蓄積容量を極限まで減じても、ホールディングモード時における入力信号の寄生容量を介した出力信号への漏れを抑制でき、ホールディング信号の誤差を抑制し得るサンプルホールド回路を提供することである。
【0015】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明のサンプルホールド回路は、ベースに当該サンプルホールド回路の入力信号が印加される第1導電型の第1トランジスタと、ベースに当該サンプルホールド回路の出力信号が帰還される第1導電型の第2トランジスタとを備える第1のエミッタ共通差動トランジスタ対と、コレクタが前記第1導電型の第2トランジスタのコレクタと接続され、該第1導電型の第2トランジスタの電流源負荷となる第2導電型の第1トランジスタと、コレクタが前記第2導電型の第1トランジスタのエミッタと接続され、ベースにホールディングモードである旨を示す信号が印加される第1導電型の第3トランジスタと、コレクタが前記第1のエミッタ共通差動トランジスタ対の共通エミッタと接続され、ベースにサンプリングモードである旨を示す信号が印加される第1導電型の第4トランジスタとを備える第2のエミッタ共通差動トランジスタ対と、一端が前記第1導電型の第2トランジスタのコレクタに接続される蓄積容量素子と、前記第1導電型の第2トランジスタのコレクタ出力を入力して、当該サンプルホールド回路の出力信号を得る電圧フォロア回路とを具備するサンプルホールド回路であって、ベースに前記ホールディングモードである旨を示す信号が印加される第1導電型の第5トランジスタと、ベースに前記サンプリングモードである旨を示す信号が印加される第1導電型の第6トランジスタとを備える第1導電型の第3のエミッタ共通差動トランジスタ対と、エミッタが前記第1のエミッタ共通差動トランジスタ対の共通エミッタに接続される第1導電型の第7トランジスタと、当該サンプルホールド回路の出力端子の電位に第1の固定電圧または第2の固定電圧を重畳して前記第1導電型の第7トランジスタのベースに印加する電圧重畳手段とを具備し、前記電圧重畳手段は、サンプリングモード時に前記第1導電型の第7トランジスタがカットオフする第1の固定電圧を、ホールディングモード時に前記第1のエミッタ共通差動トランジスタ対のベースエミッタ間電圧が逆バイアスの方向にバイアスされる第2の固定電圧を、前記第1導電型の第3のエミッタ共通差動トランジスタ対のコレクタ電流による切り換えで、それぞれ設定するものである。
【0016】
また、本発明のサンプルホールド回路は、前記電圧重畳手段に、ベースに前記電圧フォロア回路からの信号が印加される第1導電型の第8トランジスタと、一端が前記第1導電型の第8トランジスタのエミッタに、他端が前記第1導電型の第5トランジスタのコレクタにそれぞれ接続される第1の抵抗素子と、一端が前記第1抵抗素子の他端に、他端が前記第1導電型の第7トランジスタのベースにそれぞれ接続される第2の抵抗素子とを具備するものである。
【0017】
本発明のサンプルホールド回路では、エミッタ共通差動トランジスタ対の共通エミッタ電流を断続させる方式のサンプルホールド回路であって、電圧重畳手段において、サンプリングモード時には、第1導電型の第7トランジスタがカットオフするような第1の固定電圧に電圧重畳手段の出力電圧を増加させ、また、ホールディングモード時には、第1導電型の第7トランジスタによって第1導電型の第1のエミッタ共通差動トランジスタ対の共通エミッタをプルアップするよう電圧重畳手段の出力電圧を第2の固定電圧に設定する。
【0018】
このように、ホールディングモード時に第1導電型の第1のエミッタ共通差動トランジスタ対の共通エミッタを第1導電型の第7トランジスタによりプルアップすることにより、入力トランジスタのベース電位が変動することによる出力信号への影響を軽減することができ、高速動作を要求されるサンプルホールド回路において速度を損なうことなく、ホールディングモード時に入力信号の変化が起きたときも常に安定した電位を出力できる。
【0019】
また、入力信号の電位変化は蓄積容量素子の電荷には影響を与えず、出力電位に影響を与えないので、高速動作のために蓄積容量を極限まで減じても、ホールディングモード時における入力信号の寄生容量を介した出力信号への漏れを抑制でき、ホールディング信号の誤差を抑制できる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のサンプルホールド回路の実施形態について、〔実施形態1〕,〔実施形態2〕の順に図面を参照して詳細に説明する。
【0021】
〔実施形態1〕
図1は本発明の実施形態1に係るサンプルホールド回路の構成図である。同図において、図4(第2の従来例)と重複する部分には同一の符号を附する。
【0022】
図1において、本実施形態のサンプルホールド回路は、第1のエミッタ共通差動NPNトランジスタ対Q3及びQ4、抵抗R1及びR2、PNPトランジスタQ1及びQ2、第2のエミッタ共通差動NPNトランジスタ対Q5及びQ6、電流源I1、蓄積容量素子C1、NPNトランジスタQ7、電流源I2、ダイオードQ12及びQ13、電流源I4、第3のエミッタ共通差動NPNトランジスタ対Q10及びQ11、電流源I3、NPNトランジスタQ8、抵抗R3及びR4、NPNトランジスタQ9を備えて構成されている。尚、図中のC2は、NPNトランジスタQ3についての回路上の構成要素ではないベースエミッタ間接合容量(以下、寄生容量という)である。また、Vccは電源、GNDは接地電位である。
【0023】
第1のエミッタ共通差動トランジスタ対は、NPNトランジスタQ3及びQ4からなり、NPNトランジスタQ3のベースには入力信号INが、コレクタにはPNPトランジスタQ1のコレクタがそれぞれ接続され、NPNトランジスタQ4のベースには出力信号OUTが、コレクタにはPNPトランジスタQ2のコレクタがそれぞれ接続され、更にNPNトランジスタQ3及びQ4の共通エミッタにはNPNトランジスタQ6のコレクタが接続されている。
【0024】
また、抵抗R1及びR2並びにPNPトランジスタQ1及びQ2はカレントミラーを構成しており、PNPトランジスタQ1及びQ2のベースは相互に接続され、またPNPトランジスタQ1のベースはコレクタに接続され、更に、PNPトランジスタQ1のエミッタは抵抗R1を介して、PNPトランジスタQ2のエミッタは抵抗R2を介して、それぞれ電源電位Vccに接続されている。
【0025】
また、第2のエミッタ共通差動トランジスタ対は、NPNトランジスタQ5及びQ6からなり、NPNトランジスタQ5のベースにはホールディング信号HLDが、コレクタにはPNPトランジスタQ2のエミッタがそれぞれ接続され、また、NPNトランジスタQ6のベースにはサンプリング信号SAMPが、コレクタには第1のエミッタ共通差動NPNトランジスタ対Q3及びQ4の共通エミッタがそれぞれ接続され、更に、NPNトランジスタQ5及びQ6の共通エミッタには電流源I1の一端が接続されている。尚、電流源I1の他端は接地電位GNDに接続されている。
【0026】
また、蓄積容量素子C1は、NPNトランジスタQ4のコレクタと接地電位GND間に接続されている。また、NPNトランジスタQ7のベースはNPNトランジスタQ4のコレクタに、コレクタは電源電位Vccに、エミッタは電流源I2の一端に、それぞれ接続されている。ダイオードQ12及びQ13は直列接続されて、ダイオードQ12のアノードは電流源I4の一端に接続され、ダイオードQ13のカソード側は出力端子(OUT)に接続されている。尚、電流源I2の他端は接地電位GNDに、電流源I4の他端は電源電位Vccにそれぞれ接続されている。
【0027】
また、第3のエミッタ共通差動トランジスタ対は、NPNトランジスタQ10及びQ11からなり、NPNトランジスタQ10のベースにはホールディング信号HLDが、コレクタには抵抗R3及びR4の接続点がそれぞれ接続され、NPNトランジスタQ11のベースにはサンプリング信号SAMPが、コレクタにはNPNトランジスタQ8のベース及び抵抗R4の他端がそれぞれ接続され、更に、NPNトランジスタQ10及びQ11の共通エミッタには電流源I3の一端が接続されている。尚、電流源I3の他端は接地電位GNDに接続されている。
【0028】
また、NPNトランジスタQ8のエミッタは第1のエミッタ共通差動NPNトランジスタ対Q3及びQ4の共通エミッタと接続され、コレクタには電源電位Vccが、ベースにはNPNトランジスタQ11のコレクタがそれぞれ接続されている。また、NPNトランジスタQ9のコレクタには電源電位Vccが、エミッタには抵抗R3の一端が、ベースには電流源I4とダイオードQ12の接続点がそれぞれ接続されている。更に、抵抗R3の他端と抵抗R4の一端が接続され、抵抗R4の他端はNPNトランジスタQ8のベースに接続されている。
【0029】
尚、抵抗R3及びR4の両端電圧VXには、第3のエミッタ共通差動NPNトランジスタ対Q10及びQ11のコレクタ電流により、サンプリングモード時には、NPNトランジスタQ8がカットオフするような第1の固定電圧が設定され、ホールディングモード時には、第1のエミッタ共通差動NPNトランジスタ対Q3及びQ4のベースエミッタ間電圧がより逆バイアスの方向にバイアスされるような第2の固定電圧が設定される。
【0030】
即ち、サンプリングモード時には、NPNトランジスタQ8がカットオフするように、抵抗R3及びR4の両端電圧VXを増加させ第1の固定電圧とする。また、ホールディングモード時には、NPNトランジスタQ8によって第1のエミッタ共通差動NPNトランジスタ対Q3及びQ4のエミッタ(ノードA1)をプルアップするよう抵抗R3及びR4の両端電圧VXを第2の固定電圧に設定する。
【0031】
サンプリングモード時及びホールディングモード時共に、NPNトランジスタQ8のベース電位(ノードB1)は出力信号OUTの電位に追従しなければならない。従って、本実施形態では、NPNトランジスタQ9により出力信号OUTからの帰還回路を構成し、該帰還電圧に抵抗R3及びR4の両端電圧VXを重畳してNPNトランジスタQ8のベース(ノードB1)の電位としている。
【0032】
抵抗R3及びR4の両端電圧VXを第1または第2の固定電圧とする切り替えは、第3のエミッタ共通差動NPNトランジスタ対Q10及びQ11によりなされる。即ち、サンプリングモード時には、NPNトランジスタQ11がオン状態となり、ノードB1の電位V(B1)は、ダイオードの順方向電圧をVf、出力信号OUTの電位をV(OUT)、電流源I3の電流をi3とするとき、次式となる。
V(B1)=V(OUT)+Vf−(R3+R4)×i3
また、ホールディングモード時には、NPNトランジスタQ11がオフ状態となり、抵抗R4には電流は流れず、ノードB1の電位V(B1)は次式となる。
V(B1)=V(OUT)+Vf−R3×i3
【0033】
本実施形態のサンプルホールド回路が適切に動作するためには、ノードB1の電位V(B1)は、出力電位V(OUT)に対して±200[mV]程度、即ち、サンプリングモード時には低く、ホールディングモード時には高くなるようそれぞれ設定する必要がある。従って、その条件は次の不等式となる。
サンプリングモード時 :(R3+R4)×i3>Vf+200[mV]
ホールディングモード時: R3×i3<Vf−200[mV]
【0034】
この2つの条件式を満たす抵抗R3及びR4の抵抗値は次の不等式で与えられる。
R3<(Vf−200[mV])/i3
R4>400[mV]/i3
尚、NPNトランジスタQ5及びQ6の切り換えと、NPNトランジスタQ10及びQ11の切り換えは同時が望ましく、これらトランジスタを同等の素子で、且つ同等の切り換え速度で設計することが必要である。
【0035】
本実施形態のサンプルホールド回路においては、ホールディングモード時に入力信号INの電位が下降する方向に変化したとき、寄生容量C2を介してノードA1より電荷が引き抜かれることとなるわけであるが、NPNトランジスタQ4のベース電位よりもNPNトランジスタQ8のベース電位が高いので、この電荷の殆どは、NPNトランジスタQ8により供給されることとなる。従って、入力信号INの電位変化はコンデンサC1の電荷には影響を与えず、出力電位V(OUT)に影響を与えない。これにより、速度を損なうことなく、ホールディングモード時における入力信号INの寄生容量を介した出力信号OUTへの漏れを抑制でき、常に安定した電位を出力可能なサンプルホールド回路を実現できる。
【0036】
〔実施形態2〕
図2は本発明の実施形態2に係るサンプルホールド回路の構成図である。同図において、図1(実施形態1)と重複する部分には同一の符号を附する。
【0037】
図2において、本実施形態のサンプルホールド回路は、第1のエミッタ共通差動NPNトランジスタ対Q3及びQ4、(抵抗R1及びR2、PNPトランジスタQ1及びQ2、)抵抗R5及びR6、第2のエミッタ共通差動NPNトランジスタ対Q5及びQ6、電流源I1、蓄積容量素子C1、NPNトランジスタQ7、電流源I2、ダイオードQ12、第3のエミッタ共通差動NPNトランジスタ対Q10及びQ11、電流源I3、NPNトランジスタQ8、抵抗R3及びR4、NPNトランジスタQ9を備えて構成されている。尚、Vccは電源、GNDは接地電位である。
【0038】
第1のエミッタ共通差動トランジスタ対は、NPNトランジスタQ3及びQ4からなり、NPNトランジスタQ3のベースには入力信号INが、コレクタにはカレントミラーの理想的電流源がそれぞれ接続され、NPNトランジスタQ4のベースには出力信号OUTが、コレクタにはカレントミラーの理想的電流源がそれぞれ接続され、更にNPNトランジスタQ3及びQ4の共通エミッタにはNPNトランジスタQ6のコレクタが接続されている。
【0039】
また、抵抗R1及びR2並びにPNPトランジスタQ1及びQ2はカレントミラーを構成しており、具体的には実施形態1と同様であるので、図2には理想的電流源のシンボルで表記した。
【0040】
また、第2のエミッタ共通差動トランジスタ対は、NPNトランジスタQ5及びQ6からなり、NPNトランジスタQ5のベースにはホールディング信号HLDが、コレクタにはカレントミラーの理想的電流源がそれぞれ接続され、NPNトランジスタQ6のベースにはサンプリング信号SAMPが、コレクタには第1のエミッタ共通差動NPNトランジスタ対Q3及びQ4の共通エミッタがそれぞれ接続され、更にNPNトランジスタQ5及びQ6の共通エミッタには電流源I1の一端が接続されている。尚、電流源I1の他端は接地電位GNDに接続されている。
【0041】
また、蓄積容量素子C1は、NPNトランジスタQ4のコレクタと接地電位GND間に接続されている。また、NPNトランジスタQ7のベースはNPNトランジスタQ4のコレクタに、コレクタは電源電位Vccに、エミッタはダイオードQ12のアノードに、それぞれ接続されている。ダイオードQ12のカソードは電流源I2の一端及び出力端子(OUT)に接続されている。尚、電流源I2の他端は接地電位GNDに接続されている。
【0042】
また、第3のエミッタ共通差動トランジスタ対は、NPNトランジスタQ10及びQ11からなり、NPNトランジスタQ10のベースにはホールディング信号HLDが、コレクタには抵抗R3及びR4の接続点がそれぞれ接続され、NPNトランジスタQ11のベースにはサンプリング信号SAMPが、コレクタにはNPNトランジスタQ8のベース及び抵抗R4の他端がそれぞれ接続され、更にNPNトランジスタQ10及びQ11の共通エミッタには電流源I3の一端が接続されている。尚、電流源I3の他端は接地電位GNDに接続されている。
【0043】
また、NPNトランジスタQ8のエミッタは第1のエミッタ共通差動NPNトランジスタ対Q3及びQ4の共通エミッタと接続され、コレクタには電源電位Vccが、ベースにはNPNトランジスタQ11のコレクタがそれぞれ接続されている。また、NPNトランジスタQ9のコレクタには電源電位Vccが、エミッタには抵抗R3の一端が、ベースにはNPNトランジスタQ7のベースがそれぞれ接続されている。更に、抵抗R3の他端と抵抗R4の一端が接続され、抵抗R4の他端はNPNトランジスタQ8のベースに接続されている。
【0044】
以上のように本実施形態のサンプルホールド回路の構成は、実施形態1において、出力信号OUTの電位を2Vfを持ち上げるためのダイオードQ12及びQ13の内のQ13を、NPNトランジスタQ7によるエミッタフォロアで代用した構成であり、電流源I4を省略できる。即ち、NPNトランジスタQ7のVfを使用して出力信号OUTの電位を2Vfを持ち上げる構成であるので、1個のダイオードQ12により実施形態1のサンプルホールド回路(図1)と同様の機能が実現される。
【0045】
但し、NPNトランジスタQ9のベース電流によるドループが発生するため、ホールド時間が長い用途やドループの許容値が小さな用途には適さない。
【0046】
また、高速動作させるため、電流源I1の電流を多く流すとリンギングを引き起こす。このリンギングを防止するために、本実施形態のサンプルホールド回路では、第1のエミッタ共通差動NPNトランジスタ対Q3及びQ4のエミッタに、それぞれ抵抗R5及びR6の一端を接続し、該抵抗R5及びR6の他端を接続してノードA2とし、該ノードA2をNPNトランジスタQ8のエミッタに接続した構成としているが、サンプルホールド回路としての動作に変化は無い。
【0047】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のサンプルホールド回路によれば、ホールディングモード時に第1導電型の第1のエミッタ共通差動トランジスタ対の共通エミッタを第1導電型の第7トランジスタによりプルアップすることにより、入力トランジスタのベース電位が変動することによる出力信号への影響を軽減することができ、高速動作を要求されるサンプルホールド回路において速度を損なうことなく、ホールディングモード時に入力信号の変化が起きたときも常に安定した電位を出力できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態1に係るサンプルホールド回路の構成図である。
【図2】本発明の実施形態2に係るサンプルホールド回路の構成図である。
【図3】第1の従来例のサンプルホールド回路の回路図である。
【図4】第2の従来例のサンプルホールド回路の回路図である。
【図5】従来のサンプルホールド回路において、ホールディングモード時に入力信号の電位が高くなる方向に変化した場合の入力信号及び出力信号の波形を示す説明図である。
【図6】従来のサンプルホールド回路において、ホールディングモード時に入力信号の電位が低くなる方向に変化した場合の入力信号及び出力信号の波形を示す説明図である。
【符号の説明】
Q3及びQ4…第1のエミッタ共通差動NPNトランジスタ対、Q3…第1導電型の第1トランジスタ、Q4…第1導電型の第2トランジスタ、R1〜R6…抵抗、R3,R4…重畳手段、Q1…PNPトランジスタ、Q2…PNPトランジスタ(第2導電型の第1トランジスタ)、Q5及びQ6…第2のエミッタ共通差動NPNトランジスタ対、Q5…第1導電型の第3トランジスタ、Q6…第1導電型の第4トランジスタ、I1〜I4…電流源、C1…コンデンサ(蓄積容量素子)、Q7…NPNトランジスタ、Q8…NPNトランジスタ(第1導電型の第7トランジスタ)、Q9…NPNトランジスタ、Q12,Q13…ダイオード、Q10及びQ11…第3のエミッタ共通差動NPNトランジスタ対、Q10…第1導電型の第5トランジスタ、Q11…第1導電型の第6トランジスタ、C2,C3,C4…NPNトランジスタのベースエミッタ間接合容量(寄生容量)、Vcc…電源、GND…接地電位、IN…入力信号、OUT…出力信号、HLD…ホールディング信号、SAMP…サンプリング信号。
Claims (2)
- ベースに当該サンプルホールド回路の入力信号が印加される第1導電型の第1トランジスタと、ベースに当該サンプルホールド回路の出力信号が帰還される第1導電型の第2トランジスタと、を備える第1のエミッタ共通差動トランジスタ対と、
コレクタが前記第1導電型の第2トランジスタのコレクタと接続され、該第1導電型の第2トランジスタの電流源負荷となる第2導電型の第1トランジスタと、
コレクタが前記第2導電型の第1トランジスタのエミッタと接続され、ベースにホールディングモードである旨を示す信号が印加される第1導電型の第3トランジスタと、コレクタが前記第1のエミッタ共通差動トランジスタ対の共通エミッタと接続され、ベースにサンプリングモードである旨を示す信号が印加される第1導電型の第4トランジスタと、を備える第2のエミッタ共通差動トランジスタ対と、
一端が前記第1導電型の第2トランジスタのコレクタに接続される蓄積容量素子と、
前記第1導電型の第2トランジスタのコレクタ出力を入力して、当該サンプルホールド回路の出力信号を得る電圧フォロア回路と、を有するサンプルホールド回路であって、
ベースに前記ホールディングモードである旨を示す信号が印加される第1導電型の第5トランジスタと、ベースに前記サンプリングモードである旨を示す信号が印加される第1導電型の第6トランジスタと、を備える第1導電型の第3のエミッタ共通差動トランジスタ対と、
エミッタが前記第1のエミッタ共通差動トランジスタ対の共通エミッタに接続される第1導電型の第7トランジスタと、
当該サンプルホールド回路の出力端子の電位に第1の固定電圧または第2の固定電圧を重畳して前記第1導電型の第7トランジスタのベースに印加する電圧重畳手段と、を有し、
前記電圧重畳手段は、サンプリングモード時に前記第1導電型の第7トランジスタがカットオフする第1の固定電圧を、ホールディングモード時に前記第1のエミッタ共通差動トランジスタ対のベースエミッタ間電圧が逆バイアスの方向にバイアスされる第2の固定電圧を、前記第1導電型の第3のエミッタ共通差動トランジスタ対のコレクタ電流による切り換えで、それぞれ設定する
サンプルホールド回路。 - 前記電圧重畳手段は、
ベースに前記電圧フォロア回路からの信号が印加される第1導電型の第8トランジスタと、
一端が前記第1導電型の第8トランジスタのエミッタに、他端が前記第1導電型の第5トランジスタのコレクタにそれぞれ接続される第1の抵抗素子と、
一端が前記第1抵抗素子の他端に、他端が前記第1導電型の第7トランジスタのベースにそれぞれ接続される第2の抵抗素子と、を有する
請求項1記載のサンプルホールド回路。
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JP35923196A Expired - Fee Related JP3826463B2 (ja) | 1996-12-28 | 1996-12-28 | サンプルホールド回路 |
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1996
- 1996-12-28 JP JP35923196A patent/JP3826463B2/ja not_active Expired - Fee Related
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Publication number | Publication date |
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JPH10199285A (ja) | 1998-07-31 |
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