JP3825323B2 - 高分子板積層材の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明が属する技術分野】
本発明は、接着剤を用いずに高分子板と該高分子板より高い融点を有する基材を積層する高分子板積層材の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、プリント配線板などの基材に高分子などの板を積層した積層材が数多く提案されており、その積層方法として接着剤を用いて接合する方法が提案されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のような従来の積層法では、接着剤層による電気的特性の劣化を招いたり、接着剤の耐熱性が悪いために積層材としての耐熱性が制限されたり、接着剤層分の厚みや重量が増し軽量・薄型化に向かないなどの問題があった。
【0004】
本発明は、上記のような技術的背景に鑑み、軽量化や薄形化などに悪影響を及ぼす接着剤を用いずに、高分子板と該高分子板より高い融点を有する基材を積層する高分子板積層材の製造方法を提供することを課題とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
前記課題に対する第1の解決手段として本発明の高分子板積層材の製造方法は、基材の少なくとも片面に高分子板を積層してなる高分子板積層材であって、液晶ポリマーからなる高分子板と該高分子板より40〜100℃高い融点を有する液晶ポリマーからなる基材とのそれぞれの接合される面グロー放電あるいはプラズマ放電により予め活性化処理を施した後、該高分子板および該基材の活性化処理面同士が対向するように当接して重ね合わせて、該高分子板の加熱温度を該高分子板のガラス転移温度より20℃を超えて高く、かつ該高分子板の融点より20℃を超えて低い温度範囲に加熱して圧接する製造方法とした。
【0006】
前記課題に対する第2の解決手段として本発明の高分子板積層材の製造方法は、基材の少なくとも片面に高分子板を積層してなる高分子板積層材であって、液晶ポリマーからなる高分子板と該高分子板より高い融点を有する基材のそれぞれの接合される面をグロー放電あるいはプラズマ放電により予め活性化処理を施した後、該高分子板および該基材の活性化処理面同士が対向するように当接して重ね合わせて、該高分子板の加熱温度を該高分子板のガラス転移温度より20℃を超えて高く、かつ該高分子板の融点より20℃を超えて低い温度範囲に加熱して圧接する製造方法とした。
【0007】
また前記第2の解決手段における活性化処理が、前記液晶ポリマーからなる高分子板および前記基材をそれぞれ絶縁支持された一方の電極Aと接触させ、アース接地された他の電極Bとの間に、1〜50MHzの交流を印加して放電を行わせ、放電によって生じたプラズマ中に露出される電極Aと接触した前記高分子板、前記基材のそれぞれの面積が、電極Bの面積の1/3以下となるようにスパッタエッチング処理する製造方法とした。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の製造方法を説明する。図1は、本発明の製造方法を用いた高分子板積層材の一実施形態を示す概略断面図であり、基材28の片面に高分子板26を積層した例を示している。図2は、本発明の製造方法を用いた高分子板積層材の他の一実施形態を示す概略断面図であり、基材28の両面に高分子板24、26を積層した例を示している。
【0009】
高分子板26の材質としては、高分子板積層材を製造可能な素材であれば特にその種類は限定されず、高分子板積層材の用途により適宜選択して用いることができる。例えば、プラスチックなどの有機高分子物質やプラスチックに粉末や繊維などを混ぜた混合体が適用される。高分子板積層材をフレキシブルプリント基板などに適用する場合には、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、ナイロンなどの芳香族ポリアミドなどを用いることができる。
【0010】
プラスチックとしては、例えば、アクリル樹脂、アミノ樹脂(メラミン樹脂、ユリア樹脂、ベンゾグアナミン樹脂など)、アリル樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂、液晶ポリマー、EEA樹脂(Ethylene Ethylacrylate 樹脂)、AAS樹脂(Acrylonitrile Acrylate Styrene 樹脂)、ABS樹脂(Acrylonitrile Butadiene Styrene 樹脂)、ACS樹脂(Acrylnitrile Chlorinated Polyethylene Styrene樹脂)、AS樹脂(Acrylnitrile Styrene樹脂)、アイオノマー樹脂、エチレンポリテトラフルオロエチレン共重合体、エポキシ樹脂、珪素樹脂、スチレンブタジエン樹脂、フェノール樹脂、弗化エチレンプロピレン、弗素樹脂、ポリアセタール、ポリアリレート、ポリアミド(6ナイロン、11ナイロン、12ナイロン、66ナイロン、610ナイロン、612ナイロンなど)、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルサルホン、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリシクロヘキンジメルテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリトリメチレンナフタレートなど)、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレンなど)、ポリカーボネート、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリサルホン、ポリスチレン、ポリフェニレンサルファイド、ポリブタジエン、ポリブテン、ポリメチルペンテンなどを適用することができる。
【0011】
また高分子板26の厚みも高分子板積層材の用途により適宜選定することができる。例えば、1〜1000μmである。1μm未満の場合には高分子板としての製造が難しくなり、1000μmを超えると高分子板積層材としての製造が難しくなる。高分子板積層材の用途がフレキシブルプリント基板であれば、例えば3〜300μmの範囲のものを適用することができる。3μm未満の場合には機械的強度が乏しく、300μmを超えると可撓性が乏しくなる。好ましくは、10〜150μmである。より好ましくは、20〜75μmである。
【0012】
高分子板24の材質としては、高分子板積層材を製造可能な素材であれば特にその種類は限定されず、高分子板積層材の用途により適宜選定され、高分子板26に適用できるものは選定可能であり、高分子板24の材質や厚みは高分子板26と同じでも良いし異なっていても良い。
【0013】
基材28は、高分子板積層材を製造可能な金属、無機質、有機質からなる素材であれば特にその種類は限定されず、高分子板積層材の用途により適宜選択して用いることができる。例えば、前記の高分子板やリジッドプリント配線板やフレキシブルプリント配線板などである。基材がプリント配線板の場合、表層に保護膜等が無く配線部が露出しているものも用いることができる。基材28としては特に高分子板の場合、高分子板26に適用できるものの中で高分子板24、26よりも融点が高いものを選定する必要がある。なお基材の材質や厚みは、積層される高分子板24、26と同じでも良いし異なっていても良い。
【0014】
高分子板24、26および基材28の耐熱温度は、熱分解温度、融点、軟化点、ガラス転移点などで規定することが可能であり、高分子板積層材の用途や材質により適宜選択して用いることができる。さらに軟化点としては材質により、荷重たわみ温度、加熱たわみ温度、ビカット軟化温度などを適用することができる。基材28としてその融点を積層される高分子板の融点より高いものを選択することにより、活性化処理や積層接合の際に基材28に悪影響を及ぼすことなく高分子板積層材を製造することが可能である。例えば基材28がプリント配線板であった場合には、高分子板積層材の製造時に基材28の融点付近または融点を超える温度が基材28に加わった際に、配線部がプリント配線板より剥離したり、あるいはプリント配線板の配線部に接合加圧時の応力が加わって断線に至ったりするなどの悪影響が生じる恐れがある。このため基材28は、積層される高分子板より充分に高い融点を有していることが好ましい。さらに基材28と積層される高分子板の融点の温度差は、例えば30℃以上が好ましい。30℃未満では基材28に与える影響を抑えることが難しい。より好ましくは、40℃以上である。また基材28に与える影響を無くすためには融点の温度差は大きいほどよいが、あまり大きすぎると高分子板積層材としての耐熱性が向上できないため融点の温度差を100℃以下とすることが好ましい。より好ましくは60℃以下である。なお熱固定温度を変えたり組成の一部を変更したりすることなどにより積層される高分子板の融点を変えることができる。
【0015】
図1に示す高分子板積層材の製造方法について、グロー放電による活性化処理を用いた場合について説明する。真空槽内に、あらかじめ所定の大きさに切り出された高分子板26および基材28を設置し、それぞれ活性化処理装置で活性化処理する。
【0016】
グロー放電による活性化処理は、以下のようにして実施する。すなわち、真空槽内に装填された高分子板26、基材28をそれぞれ絶縁支持された一方の電極Aと接触させ、アース接地された他の電極Bとの間に、減圧状態または大気圧程度の不活性ガス雰囲気好ましくはアルゴンガス中で、1〜50MHzの交流を印加してグロー放電を行わせ、グロー放電によって生じたプラズマ中に露出される電極Aと接触した高分子板26、基材28のそれぞれの面積が、電極Bの面積の1/3以下となるようにスパッタエッチング処理する。不活性ガス雰囲気は1×10ー3〜10Paの範囲が好ましい。なお不活性ガス圧力が1×10−3Pa未満では安定したグロー放電が行いにくく高速エッチングが困難であり、10Paを超えると活性化処理効率が低下する。印加する交流は、1MHz未満では安定したグロー放電を維持するのが難しく連続エッチングが困難であり、50MHzを超えると発振しやすく電力の供給系が複雑となり好ましくない。また、効率よくエッチングするためには電極Aの面積を電極Bの面積より小さくする必要があり、1/3以下とすることにより充分な効率でエッチング可能となる。
【0017】
その後、これら活性化処理された高分子板26と基材28を、活性化処理された面が対向するようにして両者を当接して重ね合わせて圧接ユニットで加熱圧接して積層接合する。加熱温度をT(℃)、高分子板26の融点をTm(℃)とすると、T<Tmが好ましい。特にガラス転移点が存在する材質、例えば液晶ポリマーなどでは、ガラス転移温度をTg(℃)とすると、Tg<T<Tmが好ましい。より好ましくは、Tg+20<T<Tm−20である。このように積層接合することにより、基材28に悪影響を及ぼすことなく高分子板積層材20を形成できて、図1に示す高分子板積層材20を製造することができる。
【0018】
次に図2に示す高分子板積層材22は、上記説明において、基材28の代わりに高分子板積層材20を用いることで同様にして製造することができる。
【0019】
このようにして製造された高分子板積層材に、必要により残留応力の除去または低減のために熱処理を施してもよい。この熱処理の際には、接合強度の低下の原因となりうる有害ガス(例えば、酸素など)が高分子板を透過する可能性があるため、真空中または減圧状態もしくは還元性雰囲気中で行うことが好ましい。
【0020】
なお高分子板積層材の製造にはバッチ処理を用いることができる。真空槽内に、あらかじめ所定の大きさに切り出された高分子板や基材を複数装填して活性化処理装置に搬送して垂直または水平など適切な位置に処理すべき面を対向または並置した状態などで設置または把持して固定して活性化処理を行い、さらに高分子板や基材を保持する装置が圧接装置を兼ねる場合には活性化処理後に設置または把持したまま加熱圧接し、高分子板や基材を保持する装置が圧接装置を兼ねない場合にはプレス装置などの圧接装置に搬送して加熱圧接を行うことにより達成することができる。
【0021】
さらに本発明の高分子板積層材の製造方法では、グロー放電による活性化処理を用いた場合の他にも、コロナ放電などのプラズマ放電による活性化処理を用いる場合や活性化処理を用いない場合も可能である。コロナ放電を利用する場合、減圧状態のみならず大気圧付近でも活性化処理が可能であり、雰囲気も不活性ガス中のみならず空気中でも可能である。なお活性化処理の要否ならびに種類は、高分子板積層材の構成や用途により適宜選定することができる。
【0022】
本発明の製造方法を用いた高分子板積層材に基材としてプリント配線板を用いた場合、高分子板に回路パターンを形成し、スルーホールや層間の導通加工などを施して回路の多層化を図ることが可能であり、この多層化を図った高分子板積層材をさらに基材として用いてより多層のプリント配線板を得ることができる。また予め回路パターンなどを形成した高分子板や金属などの導電性の板を積層した高分子板を基材に積層することも可能である。このためプリント配線板(リジッドプリント配線板やフレキシブルプリント配線板など)などに好適であり、ICカード(Integrated Circuitカード)、CSP(Chip Size PackageまたはChip Scall Package、チップサイズパッケージまたはチップスケールパッケージ)やBGA(Ball Grid Array、ボールグリッドアレイ)などのICパッケージなどにも応用できる。
【0023】
【実施例】
以下に、実施例を説明する。
(実施例1)
高分子板26として厚み50μmの液晶ポリマーフィルム(融点280℃)を用い、基材28として厚み50μmの液晶ポリマーフィルム(融点325℃)を用いた。両液晶ポリマーフィルムを高分子板積層材製造装置にセットし、液晶ポリマーフィルム26、28を、真空装内の活性化処理ユニット内でスパッタエッチング法によりそれぞれ活性化処理した。次にこれら活性化処理した液晶ポリマーフィルム26、28を、圧接ユニットで活性化処理面同士を当接して重ね合わせて加熱圧接し、高分子板積層材20を製造した。
【0024】
(実施例2)
基材28として厚み50μmの液晶ポリマーフィルム(融点325℃)の上に厚み18μmの銅箔を積層し回路形成したものを用い、高分子板26として厚み50μmの液晶ポリマーフィルム(融点280℃)を用いた。基材28と液晶ポリマーフィルム26を高分子板積層材製造装置にセットし、基材28の回路形成側と液晶ポリマーフィルム26を、真空装内の活性化処理ユニット内でスパッタエッチング法によりそれぞれ活性化処理した。次にこれら活性化処理した基材28の回路形成側と液晶ポリマーフィルム26を、圧接ユニットで活性化処理面同士を当接して重ね合わせて加熱圧接し、高分子板積層材20を製造した。
【0025】
【発明の効果】
以上説明したように本発明の高分子板積層材の製造方法は、高分子板および該高分子板より高い融点を有する基材のそれぞれの接合される面同士が対向するように当接して重ね合わせて加熱圧接する製造方法である。このため接着剤を用いておらず、より一層の軽量化や薄形化が図れ、回路基板などへの適用も好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の製造方法を用いた高分子板積層材の一実施形態を示す概略断面図である。
【図2】本発明の製造方法を用いた高分子板積層材の他の一実施形態を示す概略断面図である。
【符号の説明】
20 高分子板積層材
22 高分子板積層材
24 高分子板
26 高分子板
28 基材

Claims (3)

  1. 基材の少なくとも片面に高分子板を積層してなる高分子板積層材の製造方法であって、液晶ポリマーからなる高分子板と該高分子板より40〜100℃高い融点を有する液晶ポリマーからなる基材とのそれぞれの接合される面をグロー放電あるいはプラズマ放電により予め活性化処理を施した後、該高分子板の活性化処理面同士が対向するように当接して重ね合わせて、該高分子板の加熱温度を該高分子板のガラス転移温度より20℃を超え、かつ該高分子板の融点より20℃を超えて低い温度範囲に加熱して圧接することを特徴とする高分子板積層材の製造方法。
  2. 基材の少なくとも片面に高分子板を積層してなる高分子板積層材の製造方法であって、液晶ポリマーからなる高分子板と該高分子板より高い融点を有する基材とのそれぞれの接合される面をグロー放電あるいはプラズマ放電により予め活性化処理を施した後、該高分子板および該基材の活性化処理面同士が対向するように当接して重ね合わせて、該高分子板の加熱温度を該高分子板のガラス転移温度より20℃を超えて高く、かつ該高分子板の融点より20℃を超えて低い温度範囲に加熱して圧接することを特徴とする高分子板積層材の製造方法。
  3. 前記活性化処理が、前記液晶ポリマーからなる高分子板および前記基材をそれぞれ絶縁支持された一方の電極Aと接触させ、アース接地された他の電極Bとの間に、1〜50MHzの交流を印加して放電を行わせ、放電によって生じたプラズマ中に露出される電極Aと接触した前記高分子板、前記基材のそれぞれの面積が、電極Bの面積の1/3以下となるようにスパッタエッチング処理することを特徴とする請求項2に記載の高分子板積層材の製造方法。
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