JP3823048B2 - ミシンの縫製枠駆動装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、加工布を保持する縫製枠をミシンのX方向(左右方向)及びY方向(前後方向)に駆動する装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、特開2001−129280号公報には、図8に示すように、縫製枠51をX方向に送るX送り枠52と、X送り枠52をX方向に駆動する複数のX駆動機構53と、縫製枠51をY方向に送るY送り枠54と、Y送り枠54をY方向に駆動する複数のY駆動機構55とを備えた縫製枠駆動装置が提案されている。X送り枠52及びY送り枠54はテーブル56上で交差し、X送り枠52は縫製枠51の縦辺にY方向へ相対移動可能に連結され、Y送り枠54は縫製枠51の横辺にX方向へ相対移動可能に連結されている。X駆動機構53はテーブル56の下方で前後に並べて設置され、Y駆動機構55はテーブル56の下方で左右に並べて設置されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、従来の縫製枠駆動装置によると、次のような問題点があった。
(1)X,Y両方向の駆動機構53,55が共にテーブル56の下方に設置されているので、両駆動機構53,55を含むテーブル下側部品の保守点検作業が困難であった。
(2)最も前側のX駆動機構53がベッド57より前方に位置するので、テーブル56を除くミシン機構部の奥行きが長くなり、梱包運搬形態が大型化した。
(3)X駆動機構53の動力が縫製枠51の一端に作用するので、縫製枠51の反対側端部に駆動遅れが生じやすかった。
【0004】
本発明の目的は、上記課題を解決し、保守点検作業を容易にし、ミシン機構部の奥行きを短くし、縫製枠を高精度に駆動できる装置を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明の縫製枠駆動装置は、加工布を保持する縫製枠をテーブル上でX方向及びY方向に駆動する装置であって、縫製枠をX方向に送るX送り枠と、X送り枠をX方向に駆動するX駆動機構と、縫製枠をY方向に送るY送り枠と、Y送り枠をY方向に駆動するY駆動機構とを備え、X駆動機構を、ベッドの先端より後側においてテーブルより上方の固定フレームに固定したX方向に延びる機枠と、該機枠に固着されたX方向に長いレールと、該X方向に長いレールに案内されてX方向に駆動されるスライダと、該スライダに取着されたY方向に長いレールと、該Y方向に長いレールにローラを介してY方向に移動可能な状態で支持されて前記X送り枠に連結された出力部とを含んで構成し、該X駆動機構のうち、X送り枠と共にY方向に動くのは出力部及びローラのみとしたことを特徴とする。
【0006】
ここで、固定フレームは、特定のフレームに限定されず、例えば、ヘッド取付用のフレーム、補強用のフレーム、X駆動機構に専用のフレーム等、テーブルより上方においてミシンに固定的に設けられたフレームであればよい。また、X送り枠及びY送り枠は、特の配置に限定されず、縫製枠を縦横2辺で両持ち駆動する場合は、両送り枠をテーブル上で交差させてもよく、縫製枠を横辺のみで片持ち駆動する場合は、両送り枠をテーブル上で平行に配置してもよい。
【0007】
ただし、X方向に長い縫製枠又はX方向に複数の縫製枠を片持ち駆動する場合は、送り枠の撓みを防止して、縫製枠の直進精度を高めるために、X送り枠及びY送り枠をX方向に延びる直線ガイドを介しテーブル上で平行に組み合わせ、複数基のY駆動機構をX方向に並べて設置し、隣接する2基のY駆動機構の間にX駆動機構を設置するのが好ましい。
【0008】
また、多頭刺繍ミシンの場合は、縫製枠の送り精度をX方向の各部で均一化できるように、4基以上のY駆動機構をベッドの先端より後側においてテーブルより上方の固定フレームにX方向に並べて設置し、X方向の中間部で隣接する2基のY駆動機構の間にX駆動機構を設置するのが望ましい。ここで、「中間部で隣接する2基のY駆動機構の間」とは、「右端又は左端のY駆動機構を除いて互いに隣接する2基のY駆動機構の間」の意味であり、最も好ましくは「中央部で隣接する2基のY駆動機構の間」あるいは「中央部の直ぐ片側で隣接する2基のY駆動機構の間」である。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を多頭刺繍ミシンに具体化した一実施形態を図面に基づいて説明する。図1及び図2に示すように、この刺繍ミシンにおいては、支柱5の上端に前固定フレーム1と後固定フレーム8とが架設され、支柱5の中間部に中間フレーム3が架設されている。前固定フレーム1には多数(例えば11〜15基)のヘッド2がX方向(左右方向)に並設され、中間フレーム3上にヘッド2と同数のベッド4が設置されている。ベッド4と同じ高さにおいて、支柱5にはテーブル6が水平に保持され、このテーブル6上で加工布を保持する縫製枠7がX方向及びY方向(前後方向)に駆動される。
【0010】
なお、ベッド4を露出させて靴下やTシャツ等の筒物縫製品を加工できるように、テーブル6は支柱5に対し昇降自在に設けられ、通常はベッド4と同じ高さに保持される。また、縫製枠7としては、ベッド4毎に独立する独立枠(図2参照)、又は全ベッド4に共通する横長四角形の共通枠等、縫製品に応じた各種形状のものが用いられる。
【0011】
図2及び図3に示すように、縫製枠7の駆動装置は、縫製枠7をX方向に送る1本のX送り枠11と、X送り枠11をX方向に駆動する1基のX駆動機構12と、縫製枠7をY方向に送る1本のY送り枠13と、Y送り枠13をY方向に駆動する4基のY駆動機構14とから構成されている。X送り枠11及びY送り枠13は共にX方向に長く形成され、X送り枠11を上にY送り枠13を下にして、X方向に延びる直線ガイド16を介しテーブル6上で平行に組み合わされている。そして、縫製枠7は取付具15を介してX送り枠11に取り付けられている。
【0012】
Y駆動機構14は、ベッド4の先端より後側において、テーブル6より上方の前固定フレーム1及び後固定フレーム8にX方向に並べて設置されている。Y駆動機構14の出力部18はY送り枠13の長手方向4箇所に連結され、Y駆動機構14によりY送り枠13及びX送り枠11がY方向に駆動される。X駆動機構12は、左端のY駆動機構14から右端のY駆動機構14までのX方向の全スパンにおけるX方向の中間部(本例では中央部)で隣接する2基のY駆動機構14の間において、ベッド4の先端より後側に位置するように前固定フレーム1及び後固定フレーム8に設置されている。X駆動機構12の出力部19はX送り枠11の長手方向中央部に連結され、X駆動機構12によりX送り枠11がY送り枠13上でX方向に駆動される。
【0013】
図4及び図5に示すように、X駆動機構12は前後2本の機枠21を備え、前側の機枠21はブラケット42で前固定フレーム1に、後側の機枠21はブラケット43で後固定フレーム8に取り付けられている。各機枠21の左右両端にはプーリ20が支持され、プーリ20にX方向に長い駆動ベルト22が張設され、モータ23により変速ベルト24を介して駆動される。なお、各機枠21のプーリ20は同期軸31(図3参照)で連結され、2本の駆動ベルト22が同じ速度で回転される。
【0014】
駆動ベルト22の一部にはベルトジョイント25を介しスライダ26が結合され、機枠21の下面にスライダ26をX方向に案内するレール27が固着されている。前後のスライダ26は連結枠28で一体に連結され、連結枠28の下面にY方向に長いレール29が取着されている。そして、出力部19はローラ30を介してレール29に支持され、Y方向に移動可能な状態で駆動ベルト22によってX方向に駆動される。
【0015】
図6に示すように、Y駆動機構14はY方向に長い機枠32を備え、機枠32の前端はブラケット44で前固定フレーム1に、後端はブラケット45で後固定フレーム8に取り付けられている。機枠32の前後両端にはプーリ39が支持され、プーリ39にY方向に長い駆動ベルト33が張設され、モータ34により変速ベルト35を介して駆動される。なお、各Y駆動機構14のプーリ39は同期軸40(図3参照)で連結され、4本の駆動ベルト22が同じ速度で回転される。
【0016】
駆動ベルト33の一部にはベルトジョイント36を介しスライダ37が結合され、機枠32の下面にスライダ37をY方向に案内するレール38が取着されている。そして、出力部18はジョイント36に結合され、駆動ベルト33によりレール38に沿ってY方向に駆動される。
【0017】
従って、刺繍加工に際し、X駆動機構12のモータ23が駆動されると、駆動ベルト22により出力部18を介しX送り枠11がX方向に駆動され、X送り枠11によって縫製枠7がX方向に送られる。Y駆動機構14のモータ34が駆動されると、駆動ベルト33により出力部19を介しY送り枠13がY方向に駆動され、Y送り枠13によって縫製枠7がY方向に送られる。X,Y両駆動機構12,14のモータ23,34が同時に駆動されると、Y送り枠13がX方向の定位置でY方向に駆動され、X送り枠11がY送り枠13上でX方向に駆動され、縫製枠7がテーブル6上でX,Y両方向に送られる。
【0018】
上記のように構成された本実施形態の縫製枠駆動装置によれば、以下のような作用効果が得られる。
(a)X駆動機構12及びY駆動機構14が共にテーブル6の上方に設置されているので、両駆動機構12,14の保守点検作業を立ち姿勢で容易に行うことができ、また、ベッド4やミシン駆動軸等のテーブル下側部品の保守点検も両機構12,14に妨げられることなく容易に行うことができる。
(b)テーブル6の下方が開放されているので、テーブル6をベッド4の下側で昇降自在に装備して、筒物縫製品の刺繍加工に対応できる。
(c)X駆動機構12及びY駆動機構14が共にベッド4の先端より後側に設置されているので、テーブル6を除くミシン機構部の奥行きを短くして、梱包運搬形態を小型化でき、ミシンの搬入出が容易となる。
【0019】
(d)X送り枠11及びY送り枠13がX方向に延びる直線ガイド16を介し平行に組み合わされているので、多頭刺繍ミシンにおいて、X方向に多数の縫製枠7(独立枠)又は横長四角形の縫製枠(共通枠)を片持ち駆動する場合に、両送り枠11,13の撓みを防止して、縫製枠7の直進精度を高めることができる。(e)X駆動機構12がX方向の中間部で隣接する2基のY駆動機構14の間に設置され、X駆動機構12の出力部19がX送り枠11の長手方向中央部に連結されているので、X送り枠11の端部における駆動遅れを解消して、縫製枠7の送り精度をX方向の各部で均一化することができる。
【0020】
なお、本発明は前記実施形態の構成に限定されず、例えば以下のように、発明の趣旨から逸脱しない範囲で適宜変更して具体化することもできる。
(1)図7に示すように、5基のY駆動機構14をベッド4の先端より後側においてテーブルより上方の固定フレーム1,8にX方向に並べて設置し、左端のY駆動機構14から右端のY駆動機構14までのX方向の全スパンにおけるX方向の中間部(本例では中央部の直ぐ左側)で隣接する2基のY駆動機構14の間にX駆動機構12を設置すること。この場合は、X駆動機構12の出力部19がX送り枠11の中央部より片側に偏倚した位置に連結されるが、駆動力の作用点はX送り枠11の端部でないため、縫製枠7の送り精度をX方向の各部でほぼ均一化することができる。
【0021】
(2)X駆動機構をX方向に複数基設置し、その出力部をX送り枠の複数箇所に連結すること。
(3)X,Y両駆動機構において、前記ベルト駆動方式にかえ、ラック・ピニオン駆動方式、ボールネジ駆動方式、又はリニアモータ駆動方式を採用すること。(4)X送り枠及びY送り枠をテーブル上で交差させること。
【0022】
【発明の効果】
以上詳述した通り、本発明に係る縫製枠駆動装置によれば、保守点検作業が容易になり、ミシン機構部の奥行きが短くなり、縫製枠を高精度に駆動できるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態を示す多頭刺繍ミシンの正面図である。
【図2】同ミシンの平面図である。
【図3】同ミシンの縫製枠駆動装置を示す平面図である。
【図4】同装置のX駆動機構を示す図3のA−A線断面図である。
【図5】同装置のX駆動機構を示す図3のB−B線断面図である。
【図6】同装置のY駆動機構を示す図3のC−C線断面図である。
【図7】同装置の変更例を示す多頭刺繍ミシンの平面図である。
【図8】従来の縫製枠駆動装置を示す平面図である。
【符号の説明】
1 前固定フレーム
2 ヘッド
4 ベッド
6 テーブル
7 縫製枠
8 後固定フレーム
11 X送り枠
12 X駆動機構
13 Y送り枠
14 Y駆動機構
16 直線ガイド
18 Y駆動機構の出力部
19 X駆動機構の出力部
21 X駆動機構の機枠
23 X駆動機構のモータ
32 Y駆動機構の機枠
34 Y駆動機構のモータ
Claims (4)
- 加工布を保持する縫製枠(7) をテーブル(6)上でX方向及びY方向に駆動する装置であって、
縫製枠(7)をX方向に送るX送り枠(11)と、X送り枠(11)をX方向に駆動するX駆動機構(12)と、縫製枠(7)をY方向に送るY送り枠(13)と、Y送り枠(13)をY方向に駆動するY駆動機構(14)とを備え、
X駆動機構(12)を、ベッド(4)の先端より後側においてテーブル(6)より上方の固定フレーム(1、8)に固定したX方向に延びる機枠(21)と、該機枠(21)に固着されたX方向に長いレール(27)と、該X方向に長いレール(27)に案内されてX方向に駆動されるスライダ(26)と、該スライダ(26)に取着されたY方向に長いレール(29)と、該Y方向に長いレール(29)にローラ(30)を介してY方向に移動可能な状態で支持されて前記X送り枠(11)に連結された出力部(19)とを含んで構成し、
該X駆動機構(12)のうち、X送り枠(11)と共にY方向に動くのは出力部(19)及びローラ(30)のみとしたことを特徴とするミシンの縫製枠駆動装置。 - X送り枠(11)及びY送り枠(13)をX方向に延びる直線ガイド(16)を介しテーブル(6)上で平行に組み合わせ、複数基のY駆動機構(14)をX方向に並べて設置し、隣接する2基のY駆動機構(14)の間にX駆動機構(12)を設置した請求項1記載のミシンの縫製枠駆動装置。
- 4基以上のY駆動機構(14)をベッドの先端より後側においてテーブル(6)より上方の固定フレーム(1、8)にX方向に並べて設置し、X方向の中間部で隣接する2基のY駆動機構(14)の間にX駆動機構(12)を設置した請求項2記載のミシンの縫製枠駆動装置。
- X駆動機構(12)の機枠(21)、X方向に長いレール(27)及びスライダ(26)を前後に2組設け、前後のスライダ(26)を連結枠(28)で一体に連結し、該連結枠(28)の下面にY方向に長いレール(29)を取着した請求項1、2又は3記載のミシンの縫製枠駆動装置。
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