JP3822805B2 - 釉薬組成物及び防汚陶磁器 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、防汚性に優れると共に優れた外観を有する釉薬層を形成するための釉薬組成
物、及び陶磁器の素地表面にこの釉薬組成物の焼結体からなる釉薬層が形成された防汚陶磁器に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、陶磁器には、美観を与えると共に経時的にかかる汚れストレスによる汚れの付着防止や付着した汚れを容易に除去することができるようにするために、素地表面に釉薬を塗布した後に焼成して釉薬層を形成したものがある。このような陶磁器に対する釉薬層の形成は、一般的な陶磁器をはじめ、便器や洗面器等の衛生陶磁器にも利用されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、一般的な釉薬にて陶磁器の素地表面に釉薬層を形成すると、陶磁器の素地が表出する場合と比べれば汚れが付着しにくく、また汚れの除去性も向上するものではあるが、このような釉薬層の表面には、釉薬中の未溶解物や、あるいは釉薬中の乳濁材であるケイ酸ジルコニウム結晶が表出することにより表面に凹凸が発生しやすく、ある程度の汚れの付着は避けられないものであり、また汚れの除去性も十分に向上されているとはいえず、一旦付着した汚れを除去することが困難な場合があった。
【0004】
このような釉薬層の防汚性を向上するために、非晶質のみからなる透明な釉薬層を形成することも行われていたが、このような透明な釉薬層のみでは外観を向上することは困難であり、実際には透明な釉薬層の下層側に着色や乳濁させた釉薬層を形成しなければならず、二層の釉薬層を形成する必要が生じて、手間がかかるものであった。
【0005】
また、従来からある陶磁器用釉薬中の乳濁材としては、ケイ酸ジルコニウムのほかに酸化スズ、骨灰等も用いられていたが、これらの乳濁材を用いる場合であっても、従来から提案されている釉薬では、焼成により得られる釉薬層表面に気泡が多数発生したり、乳白度が十分に得られなかったり、十分な光沢が得られなかったりするなどの問題があった。例えば従来の釉薬組成の具体例としては、SiO2;80重量部、Al2O3;6.5重量部、Fe2O3;0.2重量部、MgO;0.8重量部、CaO;8重量部、ZnO;3重量部、K2O;1重量部、NaO;0.5重量部、SnO2(メディアン径5μm);5重量部のものがあるが、このような釉薬では、1200℃で焼成しても釉薬が溶融しないものであり、この釉薬にて形成される釉薬層は防汚性が悪く、また光沢もないものであった。
【0006】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、表面に汚れが付着しにくく、かつ付着した汚れの除去性に優れ、更に外観が良好な釉薬層を効率よく形成することができる釉薬組成物、及びこの釉薬組成物にて形成される釉薬層を設けた防汚陶磁器を提供することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1に係る釉薬組成物は、焼成時に釉薬層を形成する釉薬形成成分を含有する釉薬組成物であって、前記釉薬形成成分が、前記釉薬組成物を焼成して形成される焼結体中に、前記焼結体の全重量に対して、55.0〜67.0重量%のSiO2と、8.0〜11.0重量%のAl2O3と、2.0〜8.0重量%のSnO2と、15.0〜21.0重量%の任意の二価の金属酸化物と、4.0〜6.0重量%の任意の一価の金属酸化物とを含有するように組成が決定され、且つ前記釉薬形成成分が、この釉薬形成成分の原料のうちスズ成分を含む原料を予めメディアン径が1.5〜2μmになるまで粉砕した後、残りの釉薬形成成分の原料を加えて、釉薬形成成分の原料全体のメディアン径が4〜5μmとなるまで粉砕して成るものであることを特徴とするものである。
【0008】
また、本発明の請求項2に係る釉薬組成物は、焼成時に釉薬層を形成する釉薬形成成分を含有する釉薬組成物であって、前記釉薬形成成分が、前記釉薬組成物を焼成して形成される焼結体中に、前記焼結体の全重量に対して、55.0〜67.0重量%のSiO2と、8.0〜11.0重量%のAl2O3と、2.0〜8.0重量%のSnO2と、15.0〜21.0重量%の任意の二価の金属酸化物と、4.0〜6.0重量%の任意の一価の金属酸化物とを含有するように組成が決定され、且つ前記釉薬形成成分が、この釉薬形成成分の原料のうちケイ素成分を含む原料及びスズ成分を含む原料を予め全体のメディアン径が5μm以下となるまで粉砕した後、残りの釉薬形成成分の原料を加えて、釉薬形成成分
の原料全体のメディアン径が4〜5μmとなるまで粉砕して成るものであることを特徴とするものである。
【0009】
また請求項3の発明は、請求項1又は2において、焼成時に釉薬層を形成する釉薬形成成分を含有する釉薬組成物であって、上記釉薬形成成分が、酸化物換算での釉薬形成成分全量に対して、ケイ素成分をSiO2換算で55.0〜67.0重量%、アルミニウム成分をAl2O3換算で8.0〜11.0重量%、スズ成分をSnO2換算で2.0〜8.0重量%、任意の二価の金属成分を酸化物換算で15.0〜21.0重量%、任意の一価の金属成分を酸化物換算で4.0〜6.0重量%含有して成ることを特徴とするものである。
【0010】
また請求項4の発明は、請求項1乃至3のいずれかにおいて、酸化物換算での釉薬形成成分全量に対して、ケイ素成分をSiO2換算で63.0〜67.0重量%、アルミニウム成分をAl2O3換算で8.0〜10.0重量%、スズ成分をSnO2換算で2.0〜4.0重量%、任意の二価の金属成分を酸化物換算で16.0〜20.0重量%、任意の一価の金属成分を酸化物換算で4.0〜6.0重量%含有して成ることを特徴とするものである。
【0011】
また請求項5の発明は、請求項1乃至4のいずれかにおいて、任意の二価の金属成分としてカルシウム成分と亜鉛成分とを含有し、酸化物換算での釉薬形成成分全量に対して、カルシウム成分をCaO換算で10.0〜12.0重量%、亜鉛成分をZnO換算で5.0〜8.0重量%含有して成ることを特徴とするものである。
【0012】
また請求項6の発明は、請求項5において、任意の二価の金属成分としてマグネシウム成分を、酸化物換算での釉薬形成成分の全重量に対してMgO換算で1.0重量%以下含有して成ることを特徴とするものである。
【0013】
また請求項7の発明は、請求項1乃至6のいずれかにおいて、任意の一価の金属成分としてナトリウム成分とカリウム成分とを含有し、酸化物換算での釉薬形成成分全量に対して、ナトリウム成分をNa2O換算で1.0重量%以上、カリウム成分をK2O換算で1.0重量%以上含有して成ることを特徴とするものである。
【0014】
また請求項8の発明は、請求項1乃至7のいずれかにおいて、釉薬形成成分の一部又は全部として、釉薬形成成分を構成する原料を予めガラス化させた後に粉砕して得られるフリットを含有して成ることを特徴とするものである。
【0015】
また請求項9の発明は、請求項1乃至8のいずれかにおいて、釉薬組成物を調製するためのケイ素成分を含む原料として、粒径30μm以上のものを含まない微粉状のものを用いて成ることを特徴とするものである。
【0017】
また請求項10の発明は、請求項1乃至9のいずれかにおいて、釉薬形成成分の原料を、アルミナ製のボールからなるボールミルを用いて粉砕して成ることを特徴とするものである。
【0018】
また請求項11の発明は、請求項1乃至9のいずれかにおいて、釉薬形成成分の原料を、アルミナ製のボールと内張がアルミナ製である容器とからなるボールミルにて粉砕して成ることを特徴とするものである。
【0019】
また請求項12の発明は、請求項1乃至11のいずれかにおいて、顔料を含有して成ることを特徴とするものである。
【0020】
また本発明の請求項13に係る防汚陶磁器は、陶磁器の乾燥素地表面に請求項1乃至12のいずれかに記載の釉薬組成物からなる層を形成し、この釉薬組成物の層を最高温度1150〜1250℃で8時間以上焼成することにより陶磁器の焼成素地表面に釉薬層を形成して成ることを特徴とするものである。
【0021】
また請求項14の発明は、請求項13において、X線回折測定を行うとSnO2結晶に起因する回折ピークが測定されると共にそれ以外の結晶の回折ピークが測定されない釉薬層を形成して成ることを特徴とするものである。
【0022】
また請求項15の発明は、請求項13において、X線回折測定を行うとCaSnSiO5結晶に起因する回折ピークが測定されると共にそれ以外の結晶の回折ピークが測定されない釉薬層を形成して成ることを特徴とするものである。
【0023】
また請求項16の発明は、請求項13において、X線回折測定を行うとSnO2結晶及びCaSnSiO5結晶に起因する回折ピークが測定されると共にそれ以外の結晶の回折ピークが測定されない釉薬層を形成して成ることを特徴とするものである。
【0024】
また請求項17の発明は、請求項13乃至16のいずれかにおいて、釉薬層の厚みを0.2〜1.2mmに形成して成ることを特徴とするものである。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0026】
本発明の釉薬組成物は、釉薬層を形成するための釉薬形成成分を含有するものであり、また陶磁器の素地表面への塗布性を向上するために水や各種バインダーを配合してもよい。
【0027】
釉薬形成成分は、ケイ素成分、アルミニウム成分、スズ成分、任意の二価の金属成分及び任意の一価の金属成分にて構成される。
【0028】
これらの釉薬形成成分の配合量は、釉薬形成成分を全て酸化物として換算した場合の釉薬形成成分全量に対して、ケイ素成分をSiO2換算で55.0〜67.0重量%、アルミニウム成分をAl2O3換算で8.0〜11.0重量%、スズ成分をSnO2換算で2.0〜8.0重量%、任意の二価の金属成分を酸化物換算で15.0〜21.0重量%、任意の一価の金属成分を酸化物換算で4.0〜6.0重量%含有する。すなわち、釉薬組成物を焼成して形成される焼結体(釉薬層)中に、焼結体の全重量に対して、SiO2が55.0〜67.0重量%、Al2O3が8.0〜11.0重量%、SnO2が2.0〜8.0重量%、任意の二価の金属酸化物が15.0〜21.0重量%、任意の一価の金属酸化物が4.0〜6.0重量%含有するように決定される組成を有するものである。
【0029】
このような組成を有する釉薬組成物は、釉薬組成物を塗布焼成して得られる釉薬層の耐汚染性及び汚れの除去性が高く、また釉薬層の表面には良好な光沢が現出するものである。
【0030】
上記の各成分のうち、ケイ素成分の酸化物換算による含有量が55.0重量%に満たないと釉薬層に防汚性が十分に得られないものであり、また釉薬層の乳白度が低下したり気泡の発生量が増大したりして外観が悪化する場合がある。また逆にケイ素成分の酸化物換算による含有量が67.0重量%を超える場合にも釉薬層の防汚性が低下し、また気泡の発生量が増大して外観が低下する。
【0031】
また、アルミニウム成分の酸化物換算による含有量が8.0重量%に満たない場合には釉薬層の防汚性が十分に得られず、また釉薬層の気泡発生量が増大するものであり、逆にこの含有量が11.0重量%を超えるとスズ成分を配合することによる釉薬層の乳白度の向上効果が抑制されてしまう。
【0032】
またスズ成分の酸化物換算による配合量が2.0重量%に満たないと釉薬層の乳白度を十分に向上することが困難となり、またこの含有量が8.0重量%を超えると釉薬層の防汚性が十分に得られない。
【0033】
また任意の二価の金属成分の酸化物換算による含有量が15.0重量%に満たないと釉薬組成物の焼成時における成分の相溶性が悪くなってガラス化せず、防汚性を十分に得ることができず、また表面の光沢も十分には得られない。また逆にこの含有量が21.0重量%を超える場合も防汚性が悪化し、また気泡発生量が増大してしまう。
【0034】
また任意の一価の金属の酸化物換算による含有量が4.0重量%に満たないと釉薬組成物の焼成時における成分の相溶性が悪くなってガラス化せず、防汚性を十分に得ることができず、表面の光沢も十分には得られないものであり、逆にこの含有量が6.0重量%を超える場合にも防汚性が悪化し、また気泡発生量が増大してしまう。
【0035】
また更に好ましくは、釉薬形成成分の配合量は、釉薬形成成分を全て酸化物として換算した場合の釉薬形成成分全量に対して、ケイ素成分をSiO2換算で63.0〜67.0重量%、アルミニウム成分をAl2O3換算で8.0〜10.0重量%、スズ成分をSnO
2換算で2.0〜4.0重量%、任意の二価の金属成分を酸化物換算で16.0〜20.0重量%、任意の一価の金属成分を酸化物換算で4.0〜6.0重量%含有するものとする。すなわち、釉薬組成物を焼成して形成される焼結体(釉薬層)中に、焼結体の全重量に対して、SiO2が63.0〜67.0重量%、Al2O3が8.0〜10.0重量%、SnO2が2.0〜4.0重量%、任意の二価の金属酸化物が16.0〜20.0重量%、任意の一価の金属酸化物が4.0〜6.0重量%含有するように決定される組成を有するものである。
【0036】
上記の各成分のうちスズ成分の原料となる酸化スズ粉末は原料の入手コストが高く、このためスズ成分の含有量はSnO2換算で4.0重量%以下に抑制することが好ましいものであり、またこのようにスズ成分の含有量を抑制した場合であっても、ケイ素成分のSiO2換算の含有量を63.0重量%以上とすれば釉薬層には十分な乳白度が得られるものである。また任意の二価の金属成分の含有量は上記のように酸化物換算で15.0〜21.0重量%であれば良好な釉薬層が得られるものではあるが、この含有量が16.0重量%に満たない場合には防汚性や光沢が若干悪化する傾向が生じ、またこの含有量が20.0重量%を超えている場合では気泡の発生量に若干の増大がみられるものであり、このため更に良好な釉薬層を形成するためには任意の二価の金属成分の酸化物換算での含有量を16.0〜20.0重量%とすることが好ましいものである。
【0037】
また、上記の任意の二価の金属成分としては、カルシウム成分、亜鉛成分、マグネシウム成分等を含有させることができる。特に任意の二価の金属成分としてカルシウム成分を、酸化物換算での釉薬形成成分全量に対してCaO換算で10.0〜12.0重量%含有させると共に、亜鉛成分を酸化物換算での釉薬形成成分全量に対してZnO換算で5.0〜8.0重量%含有させると、更に防汚性や光沢が優れ、また気泡発生量を更に低減することができる。このときカルシウム成分のCaO換算での含有量が10.0重量%に満たないと釉薬組成物の焼成時における成分の相溶性が悪くなってガラス化しにくくなり防汚性が若干低下し、この含有量が12.0重量%を超える場合も防汚性が若干低下し、また気泡発生量も若干増大する傾向が生じる。また亜鉛成分のZnO換算での含有量が5.0重量%に満たないと釉薬組成物の焼成時における成分の相溶性が悪くなってガラス化しにくくなり防汚性や光沢が若干低下し、この含有量が8.0重量%を超える場合も防汚性が若干低下し、また気泡発生量も若干増大する傾向が生じる。
【0038】
またカルシウム成分及び亜鉛成分が上記の範囲で含有されている場合にはマグネシウム成分を含有させることができるが、このマグネシウム成分の含有量は、酸化物換算での釉薬組成物全量に対してMgO換算で1重量%以下とすることが好ましい。マグネシウム成分のMgO換算での含有量が1重量%を超えると釉薬組成物の焼成時における成分の相溶性が悪くなってガラス化しにくくなり防汚性や光沢が若干低下する傾向が生じる。このときマグネシウム成分のMgO換算での含有量の下限は特に制限されないが、実際上は0.1重量%が下限となる。
【0039】
また、上記の任意の一価の金属成分としては、ナトリウム成分、カリウム成分等を用いることができる。特に任意の一価の金属成分としてナトリウム成分を、酸化物換算における釉薬形成成分全量に対してNa2O換算で1.0重量%以上含有させると共に、カリウム成分を酸化物換算における釉薬形成成分全量に対してK2O換算で1.0重量%以上含有させると、更に防汚性や光沢が優れた釉薬層を形成することができる。このときナトリウム成分やカリウム成分の含有量が上記の酸化物換算で1.0重量%に満たないと釉薬組成物の焼成時における成分の相溶性が悪くなってガラス化しにくくなり防汚性や光沢の向上効果が十分に得られない。またこれらの配合量の上限は特には制限されないが、ナトリウム成分とカリウム成分の、酸化物換算における配合量に差がない方が良好な結果が得られ、それに対して任意の一価の金属成分の配合量の上限が酸化物換算で6重量%であるため、ナトリウム成分やカリウム成分の酸化物換算での配合量は、4重量%以下とすることが好ましい。
【0040】
ここで、釉薬組成物中の釉薬形成成分は必ずしもケイ素単独の酸化物や単金属の酸化物として配合されている必要はなく、例えば上記に示すケイ素成分や各種金属成分の金属や
ケイ素を複数種含む酸化物や、加熱されることによりケイ素単独の酸化物や単金属の酸化物を生成する炭酸塩等の化合物として配合されていても良い。具体的には、釉薬形成成分の原料として、長石、珪石、石灰、ドロマイト、亜鉛華、蛙目粘土、酸化スズ粉末等を用い、これらの原料を適宜の割合で用いることにより釉薬組成物を調製することができる。このため釉薬形成成分中の各成分の配合量は、上記のように酸化物換算の釉薬形成成分全量、すなわち釉薬形成成分をこの釉薬形成成分を構成する金属及びケイ素の単独の酸化物の混合物に仮想的に変換した場合の釉薬形成成分の全量を基準として規定され、また各成分の配合量も金属及びケイ素の単独の酸化物に換算して規定されるものである。
【0041】
また、釉薬形成成分の原料としては、上記のようなケイ素や金属を含む化合物を加熱溶融させた後固化することによりガラス化(非晶質化)し、更に粉砕して得られるフリットを用いることもできる。このとき釉薬形成成分は、このようなフリットのみで構成されていても良く、またこのフリットにて釉薬形成成分の一部を構成しても良い。
【0042】
釉薬組成物は、上記のような釉薬形成成分の原料を所定量配合すると共に必要に応じて水を加えて粉砕し、更に必要に応じて水分含有量を調整したり適宜のバインダーを配合したりして調製することができる。
【0043】
釉薬組成物を調製するにあたっては、粉砕前のケイ素成分を含む原料やスズ成分を含む原料として、予め粒度調整がなされたものを用いることが好ましい。例えば長石や珪石等といったケイ素成分を含む原料の場合には、これらの原料を予め粉砕すると共に分級することにより粒径30μm以上の粒子が除去された微粉状のものを用いることが好ましい。ここでメディアン径とは粒径分布における累積曲線の50%にあたる粒子径であり、50%平均粒径(D50)とも呼ばれる。尚、本明細書においてはメディアン径は重量基準の粒径分布に基づいて導出されることとし、この場合はメディアン径の値よりも大きい粒子の総重量と小さい粒子の総重量とが等しくなる。
【0044】
このようにケイ素成分を含む原料や、あるいはスズ成分を含む原料として上記のように粒径が予め調整されたものを用いると、釉薬層の防汚性を更に向上することができる。このときケイ素成分を含む原料中に粒径30μm以上の粒子が含まれていると、上記のような防汚性の向上効果は得られなくなる。
【0045】
また、釉薬形成成分の全体のメディアン径は4〜5μmとなるように各原料を粉砕することが好ましい。この粒径範囲では、釉薬層の防汚性や光沢が更に向上するものであり、この範囲を外れるとこのような防汚性や光沢の向上効果が得られない。
【0046】
また、釉薬形成成分の原料を粉砕することにより釉薬組成物を調製する場合には、釉薬形成成分の原料のうちケイ素成分を含む原料及びスズ成分を含む原料の少なくとも一方を予め所定粒度まで粉砕して粉末状とした後、残りの釉薬形成成分の原料を加えて、釉薬形成成分全体が所定粒度となるまで粉砕して粉末状に調製することが好ましい。またこのようにケイ素成分やスズ成分を含む原料を粉砕したり、あるいは粉砕後のケイ素成分やスズ成分を含む原料に残りの原料を加えたものを粉砕するにあたっては、原料に適宜の量の水を加えたものを粉砕することにより、粉砕された粉末状の原料を含むスラリーとして調製しても良い。このようにして釉薬形成成分の原料を粉砕すると、釉薬層の防汚性を更に向上することができる。特に予め粒度調整がなされていないケイ素成分を含む原料やスズ成分を含む原料を用いる場合にはこのように先ずケイ素成分を含む原料やスズ成分を含む原料を所定粒度となるまで粉砕することが好ましい。
【0047】
スズ成分を含む原料のみを予め粉砕する場合にはスズ成分を含む原料のメディアン径が1.5〜2μmになるまで粉砕する。このときメディアン径が2μmを超える場合であっても、他の原料を加えた後に粉砕を行うことによりスズ成分を含む原料が粉砕され、釉薬層の防汚性を向上することができるが、予めスズ成分を含む原料のメディアン径が1.5
〜2μmとなるまで粉砕しておくと、防汚性だけでなく釉薬層の乳白度が向上し、外観が更に向上された釉薬層を形成することができる。このスズ成分を含む原料のメディアン径が1.5μmに満たない場合には、このような乳白度の向上の効果は得られなくなる。
【0048】
また、ケイ素成分を含む原料とスズ成分を含む原料とを共に予め粉砕する場合には、ケイ素成分を含む原料とスズ成分を含む原料とを併せた全体のメディアン径が5μm以下となるまで粉砕する。このときのメディアン径が5μmを超える場合であっても、他の原料を加えた後に粉砕を行うことによりケイ素成分を含む原料及びスズ成分を含む原料が粉砕され、釉薬層の防汚性を向上することができるが、予めケイ素成分を含む原料及びスズ成分を含む原料のメディアン径が5μm以下となるまで粉砕すると釉薬層の気泡発生量が低減されると共に乳白度も向上し、外観が更に向上された釉薬層を形成することができる。このときケイ素成分を含む原料及びスズ成分を含む原料はできるだけ細かく粉砕した方が好ましいが、メディアン径をあまりにも小さくしようとすると粉砕に要する時間が長くかかりすぎ、釉薬組成物の製造効率が低下してしまうため、メディアン径1μm以上の範囲において粉砕を行うことが好ましい。
【0049】
そして上記のようにケイ素成分を含む原料やスズ成分を含む原料を予め所定粒度まで粉砕した後、残りの原料を加えて、釉薬形成成分全体のメディアン径が4〜5μmとなるまで粉砕すると、防汚性、光沢及び乳白度を更に向上することができるものである。
【0050】
上記のような釉薬形成成分の原料の粉砕は、ボールミルを用いて行うことができる。このようなボールミルとしては、ボールや容器内張がシリカやアルミナ等にて形成されたものを用いることができる。特にボールやボール及び容器の内張がアルミナにて形成されたものを用いると、粉砕過程において硬度の高いアルミナ製のボールや容器の内張が研削されることが防止され、ボールや容器を構成する物質が釉薬組成物に含有されることを防ぐことができる。一方、例えばボールや容器内張がシリカにて形成されているものを用いた場合には、シリカは釉薬形成成分の必須成分であり、かつ研削される量も僅かであるので、ほぼ所望の組成を有する釉薬組成物が得られるものの、ボールや容器の内張が研削されて発生する粒子は粒径が大きくなるため、防汚性が若干低下するおそれがある。
【0051】
釉薬組成物中に含有される水は、釉薬組成物の塗布性を向上するために配合されるものであり、良好な塗布性が得られるために必要とされる量を含有させれば良いものであるが、例えば釉薬組成物中の固形分100重量部に対して40重量部程度含有させることができる。またバインダーは成膜性を向上するために必要な場合に含有させることができるものであり、加熱焼成時に揮散するものであれば特にその材質は問わない。
【0052】
また釉薬組成物中には釉薬層に着色を施すために顔料を含有させることができる。顔料の種類は特に問わないが、釉薬層形成時に結晶化しないものであることが好ましい。
【0053】
このように調製される釉薬組成物を用いると、防汚性が高く、かつ外観が良好な釉薬層を、陶磁器の素地表面に形成することができる。
【0054】
陶磁器の素地表面に釉薬層を形成する場合には、まず釉薬組成物を陶磁器の乾燥素地表面にスプレー塗布等により塗布して素地表面に釉薬組成物の層を形成し、この陶磁器を加熱焼成して溶融させた後、固化させるものである。釉薬組成物を陶磁器の乾燥素地に塗布する際には、陶磁器は焼成前の粘土等の原料の成形体の状態や、あるいはこの成形体を仮焼成した状態のものであって良く、この成形体の乾燥素地に塗布して釉薬組成物の層を形成し、この成形体を加熱焼成することにより陶磁器の焼成と釉薬層の形成とを同時に行うことができる。また本焼成後の陶磁器の乾燥素地表面に釉薬組成物の層を形成した後、加熱焼成することにより、釉薬層の形成を行うこともできる。
【0055】
釉薬層形成にあたっての焼成時の加熱温度は、最高温度が1150〜1250℃となるようにすることが好ましく、この温度範囲において、良好な光沢と防汚性を有する釉薬層を形成することができる。焼成時の最高温度がこの範囲に満たないと光沢や防汚性が低下する傾向がみられ、またこの範囲を超えると釉薬組成物の流動性が高くなって素地表面を流動し、釉薬層が形成されない部分が発生するおそれがある。
【0056】
また、焼成時間は、上記のような最高温度の条件では、この最高温度で8時間以上焼成することが好ましく、この場合は釉薬層における気泡発生量をより低減することができる
。焼成時間は長いほど気泡発生量を低減できるが、良好な生産性を確保するためには24時間以下とすることが好ましい。
【0057】
この釉薬組成物の加熱焼成には、ローラーハースやトンネルキルン等を用いることができる。ローラーハースは炉内に搬送用の複数のローラを形成したものであり、炉内に供給された陶磁器はローラー上で搬送されながら加熱されて、炉外に導出される。またトンネルキルンはトンネル状の炉内に、炉内を走行可能な搬送用の台車が備えられているものであり、炉内に供給された陶磁器は台車上に載置され、台車が走行することにより炉内で搬送されながら加熱されて、炉外に導出される。これらのローラーハースやトンネルキルンは炉内に陶磁器を順次連続的に導入して加熱焼成を行うことができ、処理効率が高いものである。ローラーハースにて加熱焼成を行う場合には、気泡発生量を低減する場合には最高温度における加熱時間は上記のように8時間以上とすることが好ましいが、トンネルキルンにて加熱焼成を行う場合には加熱時間は10時間以上とすることが好ましい。
【0058】
また釉薬組成物の層の加熱焼成により釉薬層を形成するにあたっては、焼成後に形成される釉薬層の厚みが0.2〜1.2mmとなるようにすることが好ましく、この場合には下地である陶磁器の素地表面の隠蔽性が高い良好な釉薬層が形成される。釉薬層の厚みが0.2mmに満たない場合には陶磁器の素地表面の隠蔽性が十分でなく素地が透けてみえるものであり、また厚みが1.2mmを超えると、焼成前の釉薬組成物の層が乾燥する際に微細なクラックが生じやすくなって、焼成後に形成される釉薬層にいわゆるクスリハゲ(parting)と呼ばれる不良が発生し、素地表面が露出してしまう部分が発生するおそれがある。
【0059】
このように形成される釉薬層をX線回折測定法にて測定すると、得られる回折曲線にはSnO2結晶及びCaSnSiO5結晶(錫スフェーン)のうちの一方あるいは双方に起因する回折ピークが観測されると共に、これらの結晶以外の結晶に起因する回折ピークは観測されず、SnO2結晶及びCaSnSiO5結晶以外の結晶の存在は確認されないものである。従って、この釉薬層は全体に亘って釉薬層を構成する成分の大部分が相溶して非晶質化していると共に、SnO2結晶とCaSnSiO5結晶(錫スフェーン)の一方又は双方が結晶化して乳濁しており、これにより釉薬層は乳白色に形成される。このとき釉薬層中には結晶が生じているものの、その表面にはZrSiO4(ケイ酸ジルコニウム)を含む組成物を用いる場合のような凹凸は形成されず、平滑に形成されて、防汚性や光沢性に優れるものである。
【0060】
【実施例】
以下、本発明を実施例によって詳述する。
【0061】
(参考例1)
釉薬形成成分の原料として、釜戸長石、珪石粉、鼠石灰、ドロマイト、亜鉛華、原蛙目粘土、及び酸化スズ粉を使用した。ケイ素成分を含む原料である釜戸長石、珪石粉としては、粒径30μm以上の粒子を2%含むものを用い、酸化スズ粉としてはメディアン径4.1μmのものを用いた。
【0062】
そして、容器の内張とボールとが共にシリカ製であるボールミルを用い、このボールミルの容器内に上記の各原料を所定量投入すると共にこれらの原料固形分100重量部に対して40重量部の水を加えて、このボールミルを8時間回転させて、原料の粉砕を行い、酸化物換算での組成が下記表1のAに示す組成を有する釉薬形成成分を含有する釉薬組成物を調製した。この釉薬組成物中の釉薬形成成分のメディアン径を、X線透過型粒度測定機にて測定したところ、5.1μmであった。
【0063】
この釉薬組成物を、衛生陶器の焼結前の乾燥素地表面にスプレー塗布して釉薬組成物の層を形成した後、この衛生陶器をトンネルキルン中で、最高温度1200℃で16時間加熱焼成し、衛生陶器の素地表面に厚み0.6mmの釉薬層を形成した。
【0064】
(参考例2〜9,比較例1〜13)
原料の配合量及び原料の粉砕時間を変更した以外は参考例1と同様にして、各参考例及び比較例につき、酸化物換算での配合量が表1のB〜Vに示す組成の釉薬形成成分を含有すると共に釉薬形成成分のメディアン径が5.1μmである釉薬組成物を調製した。
【0065】
そしてこの釉薬組成物を用い、参考例1と同様にして衛生陶器の素地表面に厚み0.6mmの釉薬層を形成した。
【0066】
(参考例10,11)
粉砕したガラスフリット(日本フリット社製;品番PN−54321;SiO270重量%、Al2O3Al2O314重量%、Na2O16重量%)30重量部に対して、他の原料70重量部の割合で配合したものを、参考例1と同様のボールミルにて全体のメディアン径が5.1μmとなるまで粉砕し、ガラスフリットと他の原料からなる釉薬形成成分の組成が、酸化物換算で表1のA及びBとなる釉薬組成物を調製した。
【0067】
そしてこの釉薬組成物を用い、参考例1と同様にして衛生陶器の素地表面に厚み0.6mmの釉薬層を形成した。
【0068】
(参考例12,13)
ケイ素成分を含む原料である釜戸長石、珪石粉としては、粉砕・分級を行うことにより粒径30μm以上の粒子が除去されたものを用いた。それ以外は参考例1,2と同様にして釉薬形成成分のメディアン径が5.1μmである釉薬組成物を調製した。
【0069】
そしてこの釉薬組成物を用い、参考例1と同様にして衛生陶器の素地表面に厚み0.6mmの釉薬層を形成した。
【0070】
(参考例14〜17)
スズ成分を含む原料である酸化スズ粉としてメディアン径3.2μmと0.1μmのものを用いた以外は参考例3,4と同様にして、釉薬形成成分のメディアン径が5.1μmである釉薬組成物を調製した。
【0071】
そしてこの釉薬組成物を用い、参考例1と同様にして衛生陶器の素地表面に厚み0.6mmの釉薬層を形成した。
【0072】
(参考例18,19)
粉砕時間を変更することにより釉薬形成成分のメディアン径を4.3μmと3.8μmに調整した以外は参考例2と同様にして、釉薬組成物を調製した。
【0073】
そしてこの釉薬組成物を用い、参考例1と同様にして衛生陶器の素地表面に厚み0.6mmの釉薬層を形成した。
【0074】
(参考例20〜22)
ケイ素成分を含む原料とスズ成分を含む原料のうちの一方又は双方を、20重量%の水と共に参考例1と同様のボールミルにて1時間予備粉砕して、これらの原料のメディアン径を表3に示す粒径に調整した後、ボールミル中に残りの原料と水を加えて水の含有量を原料固形分100重量部に対して40重量部とし、更にボールミルにて粉砕を行って、酸化物換算での釉薬形成成分の組成が表1のBに示す組成を有するメディアン径5.1μmの釉薬組成物を調製した。
【0075】
そしてこの釉薬組成物を用い、参考例1と同様にして衛生陶器の素地表面に厚み0.6mmの釉薬層を形成した。
【0076】
(参考例23)
ケイ素成分を含む原料を、20重量%の水と共に参考例1と同様のボールミルにて4時間予備粉砕してメディアン径を5.0μmに調整した後、ボールミル中に残りの原料と水を加えて水の含有量を原料固形分100重量部に対して40重量部とし、更にボールミルにて7時間粉砕を行って、釉薬形成成分の酸化物換算での組成が表1のBに示す組成を有するメディアン径4.4μmの釉薬組成物を調製した。
【0077】
そしてこの釉薬組成物を用い、参考例1と同様にして衛生陶器の素地表面に厚み0.6mmの釉薬層を形成した。
【0078】
(実施例1)
スズ成分を含む原料を、20重量%の水と共に参考例1と同様のボールミルにて3時間又は6時間予備粉砕してメディアン径を1.8μm又は1.3μmに調整した後、ボールミル中に残りの原料と水を加えて水の含有量を原料固形分100重量部に対して40重量部とし、更にボールミルにて7時間粉砕を行って、釉薬形成成分の酸化物換算での組成が表1のBに示す組成を有するメディアン径4.9μmの釉薬組成物を調製した。
【0079】
そしてこの釉薬組成物を用い、参考例1と同様にして衛生陶器の素地表面に厚み0.6mmの釉薬層を形成した。
【0080】
(実施例2)
ケイ素成分を含む原料とスズ成分を含む原料の双方を、20重量%の水と共に参考例1と同様のボールミルにて4時間予備粉砕してメディアン径を5.0μmに調整した後、ボールミル中に残りの原料と水を加えて水の含有量を原料固形分100重量部に対して40重量部とし、更にボールミルにて7時間粉砕を行って、釉薬形成成分の酸化物換算での組成が表1のBに示す組成を有するメディアン径4.1μmの釉薬組成物を調製した。
【0081】
(参考例24,25)
参考例24ではボールミルとして容器の内張がシリカ製、ボールがアルミナ製のものを用い、参考例25ではボールミルとして内張とボールが共にアルミナ製のものを用いた。それ以外は参考例2と同様にして、釉薬形成成分の酸化物換算での組成が表1のBに示す組成を有すると共に釉薬形成成分のメディアン径が5.1μmである釉薬組成物を調製した。
【0082】
そしてこの釉薬組成物を用い、参考例1と同様にして衛生陶器の素地表面に厚み0.6mmの釉薬層を形成した。
【0083】
(参考例26,比較例14)
参考例26では参考例2にて得られる釉薬組成物に更に3重量部の顔料(川村化学株式会社製;「グレー6501」)を添加して釉薬組成物を調製した。
【0084】
また比較例14では比較例1にて得られる釉薬組成物に更に3重量部の上記の顔料を添加して釉薬組成物を調製した。
【0085】
そしてこの釉薬組成物を用い、参考例1と同様にして衛生陶器の素地表面に厚み0.6mmの釉薬層を形成した。
【0086】
【表1】
(評価)
各実施例、参考例及び比較例につき、次に示す評価を行った。
【0087】
・防汚性評価
釉薬層が形成された衛生陶器を液温60℃の5%アルカリ水溶液中に45時間浸漬した後、水性インキにて表面に筆記し、その筆記跡をウエスにて拭き取った。その結果、筆記跡が完全に拭き取れたものを「◎」、筆記跡が僅かに残るものの殆ど視認できないものを「○」、筆記跡が明確に視認できるものを「×」として評価した。
【0088】
・光沢評価
釉薬層を目視にて観察し、従来品である比較例1を基準にしてそれよりも光沢が向上しているものを「◎」、光沢が同程度のものを「○」、光沢が劣っているものを「×」として評価した。
【0089】
・気泡発生量評価
釉薬層を目視にて観察し、従来品である比較例1を基準にしてそれよりも気泡発生量が少ないものを「◎」、気泡発生量が同程度のものを「○」、気泡発生量が多いものを「×」として評価した。
【0090】
・乳白度評価
釉薬層を目視にて観察し、従来品である比較例1を基準にしてそれよりも乳白度が高いものを「◎」、乳白度が同程度のものを「○」、乳白度が低いものを「×」として評価した。
【0091】
以上の結果を表2〜4に示す。
【0092】
【表2】
【0093】
【表3】
【0094】
【表4】
上記に示す結果のように、参考例1〜9では、釉薬層は防汚性が高く、良好な光沢を有するものであり、また釉薬層中の気泡発生量や乳白度も従来品と同程度の良好な結果が得られた。
【0095】
それに対して、ZrSiO4が配合されている従来品である比較例1や、これに顔料を含有させた比較例14では、光沢、気泡発生量、乳白度については良好な結果が得られるものの、防汚性が低いものであった。またケイ素成分の含有量が多い比較例2,11では防汚性悪く、気泡発生量が多いものであり、ケイ素成分の含有量が少ない比較例3では防汚性悪く、気泡多く、乳白度も悪いものであった。またスズ成分の含有量は所定範囲内ではあるがアルミニウム成分の含有量が多い比較例11,13では乳白度が悪く、アルミニウム成分の含有量が少ない比較例2,10では防汚性悪く、気泡発生量が多いものであった。またスズ成分の含有量が多い比較例3では防汚性が悪く、スズ成分の含有量が少ない比較例12では乳白度が悪化するものであった。また二価の金属成分の含有量が少ない比較例6,11では防汚性が悪い、光沢も悪いものであり、また二価の金属成分の含有量が多い比較例7では防汚性が悪く、気泡発生量が多いものであった。また一価の金属成分の含有量が少ない比較例5,9では防汚性が悪く、光沢も悪いものであり、また一価の金属成分の含有量が多い比較例4,8では防汚性が悪く、気泡多いものであり、更には釉薬層には貫入の発生がみられた。
【0096】
また参考例1〜9では全て同等の良好な評価が得られたが、そのうちでも、ROの含有量が16重量%に満たない参考例7よりも、他の参考例の方が防汚性に若干の向上が見受けられるものであり、またROの含有量が20重量%を超える参考例4,8よりも他の参考例の方が気泡発生量が低減されていた。また亜鉛成分の含有量が8重量%を超える参考例4と比べると、他の参考例では気泡発生量だけでなく防汚性についても向上しているものであった。またケイ素成分の含有量が63重量%に満たず、またスズ成分の含有量が少なめに設定されている参考例9では、他の参考例と比べて気泡発生量が若干多く、また乳白度も若干低くなった。
【0097】
また、釉薬形成成分中にフリットを含有させた参考例10,11の場合でも、同一組成を有する参考例1,2と同様の評価が得られた。
【0098】
また、ケイ素成分を含む原料中の粒径30μm以上の粒子を予め除去しておいた参考例12,13では、同一組成を有する参考例1,2よりも優れた防汚性が得られた。
【0099】
またスズ成分を含む原料の粒子径を変更した参考例14〜17のうち、メディアン径を0.2〜4.0μmの範囲とした参考例14,16では同一組成を有する参考例3,4よりも優れた防汚性が得られた。一方、メディアン径が0.2μmに満たない参考例15,17では同一組成を有する参考例3,4と同等の評価結果となり、また乳白度は参考例3,4と比べて若干の低下が見られた。
【0100】
また釉薬形成成分全体の粒径を変更した参考例18,19のうち、メディアン径を4.0〜5.0μmの範囲に調整した参考例18では同一組成を有する参考例2よりも防汚性に優れ、またメディアン径が4.0μmに満たない参考例19では参考例2と同等の評価結果となった。
【0101】
またケイ素成分を含む原料とスズ成分を含む原料のうちの少なくとも一方を予め粉砕した参考例20〜23,実施例1,2では、同一組成を有する参考例2よりも優れた防汚性が得られた。特に釉薬形成成分全体のメディアン径を好適範囲に調整した実施例1,2では光沢も向上しており、更にはスズ成分を含む原料を予備粉砕して粒径を好適範囲に調整した実施例1,2では乳白度も向上した。
【0102】
また、ボールミルのボールをアルミナ製に変更した参考例24と、内張とボールを共にアルミナ製に変更した参考例25では、同一組成に調整された参考例2よりも防汚性が更に向上したものであり、また参考例24と参考例25とを比較すれば、参考例25の方がより防汚性が向上した。
【0103】
また、顔料を含有させた参考例26では、着色された釉薬層が形成され、更に顔料を含有させていない以外は同一組成を有する参考例2と同等の評価結果が得られた。また従来品に顔料を含有させた比較例14よりも防汚性が向上した。
【0104】
(X線回折測定)
参考例1、参考例2及び比較例1における釉薬層について、塊状の試料に対してX線回折測定を行った。このときX線源としてはCuKα線を用いた。この結果を図1〜3に示
す。
【0105】
ここで図1(a)、図2(a)、図3(a)は、それぞれ参考例1,2及び比較例1について得られた回折曲線であり、横軸はX線回折角(2θ)を、縦軸は回折強度をそれぞれ示す。また、図1(b)、図2(b)及び図3(b)では、ピークデータとあるのはそれぞれ図1(a)、図2(a)及び図3(a)に示される実測値に基づいた回折角と回折強度との関係を示すものであり、またカードピークとあるのは、図1(b)ではSnO2結晶、図2(b)ではSnO2結晶とCaSnSiO5結晶、図3(b)ではケイ酸ジルコニウムについての、シミュレーションにて導出される回折角と回折強度との関係を示すものである。
【0106】
図示の結果から明らかなように、参考例1ではX線回折測定によって測定される結晶はSnO2結晶のみであり、残りの成分は非晶質化していることがわかる。またこのようにSnO2結晶が存在することにより、上記の表2の評価のように乳白度が高く、しかも表面は平滑に形成されて防汚性や光沢が高いものである。
【0107】
また参考例2ではX線回折測定によって測定される結晶はSnO2結晶とCaSnSiO5結晶のみであり、残りの成分は非晶質化していることがわかる。この場合も参考例1と同様に、SnO2結晶とCaSnSiO5結晶が存在することにより、上記の表2の評価のように乳白度が高く、しかも表面は平滑に形成されて防汚性や光沢が高いものである。
【0108】
【発明の効果】
上記のように本発明の請求項1に係る釉薬組成物は、焼成時に釉薬層を形成する釉薬形成成分を含有する釉薬組成物であって、前記釉薬形成成分が、前記釉薬組成物を焼成して形成される焼結体中に、前記焼結体の全重量に対して、55.0〜67.0重量%のSiO2と、8.0〜11.0重量%のAl2O3と、2.0〜8.0重量%のSnO2と、15.0〜21.0重量%の任意の二価の金属酸化物と、4.0〜6.0重量%の任意の一価の金属酸化物とを含有するように組成が決定され、且つ前記釉薬形成成分が、この釉薬形成成分の原料のうちスズ成分を含む原料を予めメディアン径が1.5〜2μmになるまで粉砕した後、残りの釉薬形成成分の原料を加えて、釉薬形成成分の原料全体のメディアン径が4〜5μmとなるまで粉砕して成るため、この釉薬組成物を焼成することにより釉薬層を形成すると、表面に汚れが付着しにくくかつ付着した汚れの除去性に優れ、また良好な乳白度を有すると共に気泡発生量が低減された、良好な釉薬層を形成することができ、しかも釉薬層の防汚性、光沢及び乳白度を更に向上することができるものである。
【0109】
また本発明の請求項2に係る釉薬組成物は、焼成時に釉薬層を形成する釉薬形成成分を含有する釉薬組成物であって、前記釉薬形成成分が、前記釉薬組成物を焼成して形成される焼結体中に、前記焼結体の全重量に対して、55.0〜67.0重量%のSiO2と、8.0〜11.0重量%のAl2O3と、2.0〜8.0重量%のSnO2と、15.0〜21.0重量%の任意の二価の金属酸化物と、4.0〜6.0重量%の任意の一価の金属酸化物とを含有するように組成が決定され、且つ前記釉薬形成成分が、この釉薬形成成分の原料のうちケイ素成分を含む原料及びスズ成分を含む原料を予め全体のメディアン径が5μm以下となるまで粉砕した後、残りの釉薬形成成分の原料を加えて、釉薬形成成分の原料全体のメディアン径が4〜5μmとなるまで粉砕して成るため、この釉薬組成物を焼成することにより釉薬層を形成すると、表面に汚れが付着しにくくかつ付着した汚れの除去性に優れ、また良好な乳白度を有すると共に気泡発生量が低減された、良好な釉薬層を形成することができ、しかも釉薬層の防汚性、光沢及び乳白度を更に向上することができるものである。
【0110】
また請求項3の発明は、請求項1又は2において、焼成時に釉薬層を形成する釉薬形成成分を含有する釉薬組成物であって、上記釉薬形成成分が、酸化物換算での釉薬形成成分全量に対して、ケイ素成分をSiO2換算で55.0〜67.0重量%、アルミニウム成分をAl2O3換算で8.0〜11.0重量%、スズ成分をSnO2換算で2.0〜8.0重量%、任意の二価の金属成分を酸化物換算で15.0〜21.0重量%、任意の一価の金属成分を酸化物換算で4.0〜6.0重量%含有するため、この釉薬組成物を焼成することにより釉薬層を形成すると、表面に汚れが付着しにくくかつ付着した汚れの除去性に
優れ、また良好な乳白度を有すると共に気泡発生量が低減された、良好な釉薬層を形成することができるものである。
【0111】
また請求項4の発明は、請求項1乃至3のいずれかにおいて、酸化物換算での釉薬形成成分全量に対して、ケイ素成分をSiO2換算で63.0〜67.0重量%、アルミニウム成分をAl2O3換算で8.0〜10.0重量%、スズ成分をSnO2換算で2.0〜4.0重量%、任意の二価の金属成分を酸化物換算で16.0〜20.0重量%、任意の一価の金属成分を酸化物換算で4.0〜6.0重量%含有するため、入手コストの高いスズ成分を含む原料の使用量を低減すると共に釉薬層の良好な乳白度を維持し、かつ防汚性、光沢及び気泡発生量が更に改善された釉薬層を形成することができるものである。
【0112】
また請求項5の発明は、請求項1乃至4のいずれかにおいて、任意の二価の金属成分としてカルシウム成分と亜鉛成分とを含有し、酸化物換算での釉薬形成成分全量に対して、カルシウム成分をCaO換算で10.0〜12.0重量%、亜鉛成分をZnO換算で5.0〜8.0重量%含有するため、更に防汚性や光沢が優れ、また気泡発生量が更に低減された釉薬層を得ることができるものである。
【0113】
また請求項6の発明は、請求項5において、任意の二価の金属成分としてマグネシウム成分を、酸化物換算での釉薬形成成分の全重量に対してMgO換算で1.0重量%以下含有するため、防汚性、光沢及び気泡発生量を良好な状態に維持することができるものである。
【0114】
また請求項7の発明は、請求項1乃至6のいずれかにおいて、任意の一価の金属成分としてナトリウム成分とカリウム成分とを含有し、酸化物換算での釉薬形成成分全量に対して、ナトリウム成分をNa2O換算で1.0重量%以上、カリウム成分をK2O換算で1.0重量%以上含有するため、更に防汚性や光沢が優れた釉薬層を得ることができるものである。
【0115】
また請求項8の発明は、請求項1乃至7のいずれかにおいて、釉薬形成成分の一部又は全部として、釉薬形成成分を構成する原料を予めガラス化させた後に粉砕して得られるフリットを含有するものであり、このようにフリットを原料として用いても、防汚性、光沢、乳白度及び気泡発生量を良好な状態に維持することができるものである。
【0116】
また請求項9の発明は、請求項1乃至8のいずれかにおいて、釉薬組成物を調製するためのケイ素成分を含む原料として、粒径30μm以上のものを含まない微粉状のものを用いるため、釉薬層の防汚性を更に向上することができるものである。
【0118】
また請求項10の発明は、請求項1乃至9のいずれかにおいて、釉薬形成成分の原料を、アルミナ製のボールからなるボールミルを用いて粉砕するため、粉砕時にボールが研削されて発生する粒径の大きい粒子が混入することを抑制し、更に防汚性が優れた釉薬層を形成することができるものである。
【0119】
また請求項11の発明は、請求項1乃至9のいずれかにおいて、釉薬形成成分の原料を、アルミナ製のボールと内張がアルミナ製である容器とからなるボールミルにて粉砕するため、粉砕時にボール及び容器の内張が研削されて発生する粒径の大きい粒子が混入することを更に確実に防止し、更に防汚性が優れた釉薬層を形成することができるものである。
【0120】
また請求項12の発明は、請求項1乃至11のいずれかにおいて、顔料を含有するため、顔料によって着色された釉薬層を形成することができると共に、釉薬層の防汚性、光沢、気泡発生量及び乳白度を良好な状態に維持することができるものである。
【0121】
また本発明の請求項13に係る防汚陶磁器は、陶磁器の乾燥素地表面に請求項1乃至12のいずれかに記載の釉薬組成物からなる層を形成し、この釉薬組成物の層を最高温度1150〜1250℃で8時間以上焼成することにより陶磁器の焼成素地表面に釉薬層を形成するため、表面に汚れが付着しにくくかつ付着した汚れの除去性に優れ、また良好な乳白度を有すると共に気泡発生量が低減された、良好な釉薬層が形成された防汚陶磁器を得ることができるものである。
【0122】
また請求項14の発明は、請求項13において、X線回折測定を行うとSnO2結晶に起因する回折ピークが測定されると共にそれ以外の結晶の回折ピークが測定されない釉薬層を形成するため、SnO2結晶による優れた乳白度を有すると共に表面が平滑で防汚性の高い釉薬層が形成された防汚陶磁器を得ることができるものである。
【0123】
また請求項15の発明は、請求項13において、X線回折測定を行うとCaSnSiO5結晶に起因する回折ピークが測定されると共にそれ以外の結晶の回折ピークが測定されない釉薬層を形成するため、CaSnSiO5結晶による優れた乳白度を有すると共に表面が平滑で防汚性の高い釉薬層が形成された防汚陶磁器を得ることができるものである。
【0124】
また請求項16の発明は、請求項13において、X線回折測定を行うとSnO2結晶及びCaSnSiO5結晶に起因する回折ピークが測定されると共にそれ以外の結晶の回折ピークが測定されない釉薬層を形成するため、SnO2結晶及びCaSnSiO5結晶による優れた乳白度を有すると共に表面が平滑で防汚性の高い釉薬層が形成された防汚陶磁器を得ることができるものである。
【0125】
また請求項17の発明は、請求項13乃至16のいずれかにおいて、釉薬層の厚みを0.2〜1.2mmに形成するため、釉薬層にて素地表面が十分に隠蔽されて良好な外観を有すると共に、釉薬層におけるクラックの発生を防止して、いわゆるクスリハゲの不良が発生することを防止することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 (a)は参考例1にて得られる釉薬層の、X線回折測定結果を示す回折曲線のグラフ、(b)は(a)にて得られる回折曲線における回折ピークの回折角及び回折強度と、シミュレーションにて導出されたSnO2結晶の回折ピークの回折角及び回折強度との関係を示すグラフである。
【図2】 (a)は参考例2にて得られる釉薬層の、X線回折測定結果を示す回折曲線のグラフ、(b)は(a)にて得られる回折曲線における回折ピークの回折角及び回折強度と、シミュレーションにて導出されたSnO2結晶及びCaSnSiO5結晶の回折ピークの回折角及び回折強度との関係を示すグラフである。
【図3】 (a)は比較例1にて得られる釉薬層の、X線回折測定結果を示す回折曲線のグラフ、(b)は(a)にて得られる回折曲線における回折ピークの回折角及び回折強度と、シミュレーションにて導出されたケイ酸ジルコニウム結晶の回折ピークの回折角及び回折強度との関係を示すグラフである。
Claims (17)
- 焼成時に釉薬層を形成する釉薬形成成分を含有する釉薬組成物であって、前記釉薬形成成分が、前記釉薬組成物を焼成して形成される焼結体中に、前記焼結体の全重量に対して55.0〜67.0重量%のSiO2と、8.0〜11.0重量%のAl2O3と、2.0〜8.0重量%のSnO2と、15.0〜21.0重量%の任意の二価の金属酸化物と、4.0〜6.0重量%の任意の一価の金属酸化物とを含有するように組成が決定され、且つ前記釉薬形成成分が、この釉薬形成成分の原料のうちスズ成分を含む原料を予めメディアン径が1.5〜2μmとなるまで粉砕した後、残りの釉薬形成成分の原料を加えて、釉薬形成成分の原料全体のメディアン径が4〜5μmとなるまで粉砕して成るものであることを特徴とする釉薬組成物。
- 焼成時に釉薬層を形成する釉薬形成成分を含有する釉薬組成物であって、前記釉薬形成成分が、前記釉薬組成物を焼成して形成される焼結体中に、前記焼結体の全重量に対して、55.0〜67.0重量%のSiO2と、8.0〜11.0重量%のAl2O3と、2.0〜8.0重量%のSnO2と、15.0〜21.0重量%の任意の二価の金属酸化物と、4.0〜6.0重量%の任意の一価の金属酸化物とを含有するように組成が決定され、且つ前記釉薬形成成分が、この釉薬形成成分の原料のうちケイ素成分を含む原料及びスズ成分を含む原料を予め全体のメディアン径が5μm以下となるまで粉砕した後、残りの釉薬形成成分の原料を加えて、釉薬形成成分の原料全体のメディアン径が4〜5μmとなるまで粉砕して成るものであることを特徴とする釉薬組成物。
- 上記釉薬形成成分が、酸化物換算での釉薬形成成分全量に対して、ケイ素成分をSiO2換算で55.0〜67.0重量%、アルミニウム成分をAl2O3換算で8.0〜11.0重量%、スズ成分をSnO2換算で2.0〜8.0重量%、任意の二価の金属成分を酸化物換算で15.0〜21.0重量%、任意の一価の金属成分を酸化物換算で4.0〜6.0重量%含有して成ることを特徴とする請求項1又は2に記載の釉薬組成物
- 酸化物換算での釉薬形成成分全量に対して、ケイ素成分をSiO2換算で63.0〜67.0重量%、アルミニウム成分をAl2O3換算で8.0〜10.0重量%、スズ成分をSnO2換算で2.0〜4.0重量%、任意の二価の金属成分を酸化物換算で16.0〜20.0重量%、任意の一価の金属成分を酸化物換算で4.0〜6.0重量%含有して成ることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の釉薬組成物。
- 任意の二価の金属成分としてカルシウム成分と亜鉛成分とを含有し、酸化物換算での釉薬形成成分全量に対して、カルシウム成分をCaO換算で10.0〜12.0重量%、亜鉛成分をZnO換算で5.0〜8.0重量%含有して成ることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の釉薬組成物。
- 任意の二価の金属成分としてマグネシウム成分を、酸化物換算での釉薬形成成分の全重量に対してMgO換算で1.0重量%以下含有して成ることを特徴とする請求項5に記載の釉薬組成物。
- 任意の一価の金属成分としてナトリウム成分とカリウム成分とを含有し、酸化物換算での釉薬形成成分全量に対して、ナトリウム成分をNa2O換算で1.0重量%以上、カリウム成分をK2O換算で1.0重量%以上含有して成ることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の釉薬組成物。
- 釉薬形成成分の一部又は全部として、釉薬形成成分を構成する原料を予めガラス化させた後に粉砕して得られるフリットを含有して成ることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の釉薬組成物。
- 釉薬組成物を調製するためのケイ素成分を含む原料として、粒径30μm以上のものを含まない微粉状のものを用いて成ることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の釉薬組成物。
- 釉薬形成成分の原料を、アルミナ製のボールからなるボールミルを用いて粉砕して成ることを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載の釉薬組成物。
- 釉薬形成成分の原料を、アルミナ製のボールと内張がアルミナ製で ある容器とからなるボールミルにて粉砕して成ることを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載の釉薬組成物。
- 顔料を含有して成ることを特徴とする請求項1乃至11のいずれかに記載の釉薬組成物。
- 陶磁器の乾燥素地表面に請求項1乃至12のいずれかに記載の釉薬組成物からなる層を形成し、この釉薬組成物の層を最高温度1150〜1250℃で8時間以上焼成することにより陶磁器の焼成素地表面に釉薬層を形成して成ることを特徴とする防汚陶磁器。
- X線回折測定を行うとSnO 2 結晶に起因する回折ピークが測定されると共にそれ以外の結晶の回折ピークが測定されない釉薬層を形成して成ることを特徴とする請求項13に記載の防汚陶磁器。
- X線回折測定を行うとCaSnSiO 5 結晶に起因する回折ピークが測定されると共にそれ以外の結晶の回折ピークが測定されない釉薬層を形成して成ることを特徴とする請求項13に記載の防汚陶磁器。
- X線回折測定を行うとSnO 2 結晶及びCaSnSiO5結晶に起因する回折ピークが測定されると共にそれ以外の結晶の回折ピークが測定されない釉薬層を形成して成ることを特徴とする請求項13に記載の防汚陶磁器。
- 釉薬層の厚みを0.2〜1.2mmに形成して成ることを特徴とする請求項13乃至16のいずれかに記載の防汚陶磁器。
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