JP3941477B2 - 釉薬組成物及び防汚陶磁器 - Google Patents

釉薬組成物及び防汚陶磁器 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、防汚性に優れると共に優れた外観を有する釉薬層を形成するための釉薬組成物、及び衛生陶磁器等の素地表面にこの釉薬組成物の焼結体からなる釉薬層が形成された防汚陶磁器に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、陶磁器には、美観を与えると共に経時的にかかる汚れストレスによる汚れの付着防止や付着した汚れを容易に除去することができるようにするために、素地表面に釉薬を塗布した後に焼成して釉薬層を形成したものがある。このような陶磁器に対する釉薬層の形成は、一般的な陶磁器をはじめ、便器や洗面器等の衛生陶磁器にも利用されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、一般的な釉薬にて陶磁器の素地表面に釉薬層を形成すると、陶磁器の素地が表出する場合と比べれば汚れが付着しにくく、また汚れの除去性も向上するものではあるが、このような釉薬層の表面には、釉薬中の未溶解物や、あるいは乳濁材として配合されたケイ酸ジルコニウム結晶が表面に浮上することにより表面に凹凸が発生しやすく、ある程度の汚れの付着は避けられないものであり、また汚れの除去性も十分に向上されているとはいえず、一旦付着した汚れを除去することが困難な場合があった。
【0004】
このような釉薬層の防汚性を向上するために、非晶質のみからなる透明な釉薬層を形成することも行われていたが、このような透明な釉薬層のみでは外観を向上することは困難であり、実際には透明な釉薬層の下層側に着色や乳濁させた釉薬層を形成しなければならず、二層の釉薬層を形成する必要が生じて、手間がかかるものであった。
【0005】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、表面に汚れが付着しにくく、かつ付着した汚れの除去性に優れ、更に外観が良好な釉薬層を形成することができて衛生陶磁器用に好適に用いられる釉薬組成物、及びこの釉薬組成物にて形成される釉薬層を設けた防汚陶磁器を提供することを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る釉薬組成物は、焼成時に釉薬層を形成する釉薬形成成分を含有する釉薬組成物であって、ジルコニウム成分を含有しないと共に、リン成分及びスズ成分を含有して成ることを特徴とするものである。
【0007】
このとき、焼成により酸化物換算で55.0〜67.0重量%のSiO2と、7.0〜15.0重量%のAl23と、0.5〜8.0重量%のSnO2と、0.5〜10.0重量%のP25と、10.0〜20.0重量%の任意の二価の金属酸化物と、2.0〜10.0重量%の任意の一価の金属酸化物とからなる焼結体を形成するように組成が決定された釉薬形成成分を含有させる。
【0008】
また、酸化物換算での釉薬形成成分全量に対して、ケイ素成分をSiO2換算で55.0〜67.0重量%、アルミニウム成分をAl23換算で7.0〜15.0重量%、スズ成分をSnO2換算で0.5〜8.0重量%、リン成分をP25換算で0.5〜10.0重量%、任意の二価の金属成分を酸化物換算で10.0〜20.0重量%、任意の一価の金属成分を酸化物換算で2.0〜10.0重量%含有することが好ましい。
【0009】
更に、酸化物換算での釉薬形成成分全量に対して、ケイ素成分をSiO2換算で55.0〜67.0重量%、アルミニウム成分をAl23換算で7.0〜15.0重量%、スズ成分をSnO2換算で3.0〜6.0重量%、リン成分をP25換算で0.5〜5.0重量%、任意の二価の金属成分を酸化物換算で15.0〜20.0重量%、任意の一価の金属成分を酸化物換算で2.0〜5.0重量%含有することが好ましい。
【0010】
また、任意の二価の金属成分としてカルシウム成分と亜鉛成分とを含有し、酸化物換算での釉薬形成成分全量に対して、カルシウム成分をCaO換算で7.0〜15.0重量%、亜鉛成分をZnO換算で2.0〜7.0重量%含有することが好ましい。
【0011】
更に、任意の二価の金属成分としてカルシウム成分と亜鉛成分とを含有し、酸化物換算での釉薬形成成分全量に対して、カルシウム成分をCaO換算で10.0〜15.0重量%、亜鉛成分をZnO換算で2.0〜7.0重量%含有することが好ましい。
【0012】
更に、任意の二価の金属成分としてマグネシウム成分を、酸化物換算での釉薬形成成分の全重量に対してMgO換算で0.1〜2.0重量%含有することも好ましい。
【0013】
また、任意の一価の金属成分としてナトリウム成分とカリウム成分とを含有し、酸化物換算での釉薬形成成分全量に対して、ナトリウム成分をNa2O換算で0.1〜5.0重量%、カリウム成分をK2O換算で1.0〜5.0重量%含有することが好ましい。
【0014】
更に、任意の一価の金属成分としてリチウム成分を、酸化物換算での釉薬形成成分の全量に対してLiO2換算で0.1〜5.0重量%含有することも好ましい。
【0015】
また、釉薬組成物を調製するためのリン成分を含む原料として、リン酸水素カルシウムを用いることが好ましい。
【0016】
また、釉薬組成物を調製するためのリン成分を含む原料として、骨灰を用いることも好ましい。
【0017】
また、釉薬組成物を調製するためのリン成分を含む原料として、水酸アパタイトを用いることも好ましい。
【0018】
また、釉薬組成物を調製するためのリン成分を含む原料として、メタリン酸カルシウムを用いることも好ましい。
【0019】
更に、釉薬組成物を調製するためのリン成分を含む原料として、リン酸三カルシウムを用いることも好ましい。
【0020】
また、乳濁材原料として、チタン成分を酸化物換算での釉薬形成成分の全量に対して、TiO2換算で0.1〜8重量部含有することが好ましい。
【0021】
また、乳濁材原料として、フリットにしないセリウム成分を酸化物換算での釉薬形成成分の全量に対して、CeO2換算で0.1〜8重量部含有することも好ましい。
【0022】
また、着色材として、顔料を釉薬形成成分の全量に対する配合割合で0.1〜8重量部含有することが好ましい。
【0023】
また、錫系顔料を含有することが好ましい。
【0024】
更に、着色材として、コバルト化合物、マンガン化合物、ニッケル化合物、ウラニウム化合物、クロム化合物、鉄化合物、銅化合物、金化合物、アンチモン化合物、ヒ酸化合物、モリブデン化合物、タングステン化合物及びバナジウム化合物から選ばれる少なくとも一種のものを含有し、その含有量の総量を酸化物換算での釉薬形成成分の全量に対する配合割合で0.1〜5重量部とすることが好ましい。
【0025】
また、釉薬形成成分の一部又は全部として、釉薬形成成分を構成する原料を予めガラス化させた後に粉砕して得られるフリットを含有することが好ましい。
【0026】
また、釉薬組成物を調製するためのケイ素成分を含む原料として、粒径30μm以上のものを含まない微粉状のものを用いることが好ましい。
【0027】
また、釉薬組成物を調製するためのスズ成分を含む原料としてメディアン径が0.2〜4.0μmの微粉状のものを用いることが好ましい。
【0028】
また、釉薬組成物を調製するためのリン成分を含む原料としてメディアン径が1.0〜5.0μmの微粉状のものを用いることが好ましい。
【0029】
また、チタン成分とセリウム成分のうちの少なくとも一方を含む乳濁材原料を配合すると共に、この乳濁材原料としてメディアン径が0.1〜2.0μmの微粉状のものを用いることも好ましい。
【0030】
また、釉薬形成成分の全体のメディアン径を3〜5μmとすることが好ましい。
【0031】
また、釉薬形成成分の原料のうちケイ素成分を含む原料、スズ成分を含む原料及びリン成分を含む原料のうちの少なくとも一種の原料を予め所定粒度まで粉砕した後、残りの釉薬形成成分の原料を加えて、釉薬形成成分全体が所定粒度となるまで粉砕することが好ましい。
【0032】
更に、釉薬形成成分の原料のうちケイ素成分を含む原料を予めメディアン径が5μm以下となるまで粉砕した後、残りの釉薬形成成分の原料を加えて、釉薬形成成分全体が所定粒度となるまで粉砕することが好ましい。
【0033】
更に、釉薬形成成分の原料のうちスズ成分を含む原料を予めメディアン径が1.5〜2μmとなるまで粉砕した後、残りの釉薬形成成分の原料を加えて、釉薬形成成分全体が所定粒度となるまで粉砕することが好ましい。
【0034】
また、釉薬形成成分の原料のうちリン成分を含む原料を予めメディアン径が3〜5μmとなるまで粉砕した後、残りの釉薬形成成分の原料を加えて、釉薬形成成分全体が所定粒度となるまで粉砕することも好ましい。
【0035】
また、釉薬形成成分の原料のうちケイ素成分を含む原料、スズ成分を含む原料及びリン成分を含む原料を予めその全体のメディアン径が5μm以下となるまで粉砕した後、残りの釉薬形成成分の原料を加えて、釉薬形成成分全体が所定粒度となるまで粉砕することも好ましい。
【0036】
また、釉薬形成成分の原料のうちケイ素成分を含む原料を予めメディアン径が5μm以下となるまで粉砕した後、残りの釉薬形成成分の原料を加えて、釉薬形成成分全体のメディアン径が3〜5μmとなるまで粉砕することも好ましい。
【0037】
また、釉薬形成成分の原料のうちスズ成分を含む原料を予めメディアン径が1.5〜2μmになるまで粉砕した後、残りの釉薬形成成分の原料を加えて、釉薬形成成分全体のメディアン径が3〜5μmとなるまで粉砕することも好ましい。
【0038】
また、釉薬形成成分の原料のうちリン成分を含む原料を予めメディアン径が3〜5μmになるまで粉砕した後、残りの釉薬形成成分の原料を加えて、釉薬形成成分全体のメディアン径が3〜5μmとなるまで粉砕することも好ましい。
【0039】
また、釉薬形成成分の原料のうちケイ素成分を含む原料及びスズ成分を含む原料及びリン成分を含む原料を予め全体のメディアン径が5μm以下となるまで粉砕した後、残りの釉薬形成成分の原料を加えて、釉薬形成成分全体のメディアン径が3〜5μmとなるまで粉砕することも好ましい。
【0040】
また、釉薬形成成分の原料を、アルミナ製のボールからなるボールミルを用いて粉砕することが好ましい。
【0041】
更に、釉薬形成成分の原料を、アルミナ製のボールと内張がアルミナ製である容器とからなるボールミルにて粉砕することも好ましい。
【0042】
また本発明に係る防汚陶磁器は、陶磁器の素地表面に上記のような釉薬組成物からなる層を形成し、この釉薬組成物の層を最高温度1150〜1250℃で8時間以上焼成することにより素地表面に釉薬層を形成することを特徴とするものである。
【0043】
このとき、ZrSiO4結晶が存在せず、SnO2結晶とCa3(PO42結晶が存在する釉薬層を形成することが好ましい。
【0044】
また、ZrSiO4結晶が存在せず、CaSnSiO5結晶とCa3(PO42結晶が存在する釉薬層を形成することも好ましい。
【0045】
また、ZrSiO4結晶が存在せず、CaSnSiO5結晶とSnO2結晶とCa3(PO42結晶が存在する釉薬層を形成することも好ましい。
【0046】
更に、釉薬層の厚みを0.2〜1.2mmに形成することが好ましい。
【0047】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0048】
本発明の釉薬組成物は、釉薬層を形成するための釉薬形成成分を含有するものであり、また衛生陶磁器の素地表面への塗布性を向上するために水や各種バインダーを配合してもよい。
【0049】
釉薬形成成分は、ケイ素成分、アルミニウム成分、スズ成分、リン成分、任意の二価の金属成分及び任意の一価の金属成分にて構成されるものであり、且つジルコニウム成分は含まれないようにするものである。
【0050】
このような成分を有する衛生陶磁器用防汚釉薬は、釉薬組成物を塗布焼成して得られる釉薬層の耐汚染性及び汚れの除去性が高く、また釉薬層の表面には良好な光沢が現出するものである。
【0051】
上記の各成分のうち、ケイ素成分、アルミニウム成分、二価の金属成分、一価の金属成分を含まない場合は、衛生陶磁器に光沢の良い耐久性のある釉薬層を形成することが困難となる。また、スズ成分又はリン成分を含まない場合は、釉薬層が白濁せずに透明になってしまい、衛生陶磁器に用いたときに素地が透けた状態となってしまって外観上好ましいものとはならない。更に、ジルコニウム成分を含んだ場合は、乳濁した釉薬層が得られるものの、防汚性能が著しく低下してしまう。
【0052】
これらの釉薬形成成分の配合量は、釉薬形成成分を全て酸化物として換算した場合の釉薬形成成分全量に対して、ケイ素成分をSiO2換算で55.0〜67.0重量%、アルミニウム成分をAl23換算で7.0〜15.0重量%、スズ成分をSnO2換算で0.5〜8.0重量%、リン成分をP25換算で0.5〜10.0重量%、任意の二価の金属成分を酸化物換算で10.0〜20.0重量%、任意の一価の金属成分を酸化物換算で2.0〜10.0重量%含有することが好ましい。すなわち、釉薬組成物を焼成して形成される焼結体(釉薬層)中に、焼結体の全重量に対して、酸化物換算でSiO2が55.0〜67.0重量%、Al23が7.0〜15.0重量%、SnO2が0.5〜8.0重量%、P25が0.5〜10.0重量%、任意の二価の金属酸化物が10.0〜20.0重量%、任意の一価の金属酸化物が2.0〜10.0重量%含有するように決定される組成を有することが好ましいものである。
【0053】
このような組成を有する釉薬組成物は、釉薬組成物を塗布焼成して得られる釉薬層の耐汚染性及び汚れの除去性が高く、また釉薬層の表面には良好な光沢が現出するものである。
【0054】
上記の各成分のうち、ケイ素成分の酸化物換算による含有量が55.0重量%に満たないと釉薬層に防汚性が十分に得られないものであり、また釉薬層の乳白度が低下したり気泡の発生量が増大したりして外観が悪化する場合がある。また逆にケイ素成分の酸化物換算による含有量が67.0重量%を超える場合にも釉薬層の防汚性が低下し、また気泡の発生量が増大して外観が低下する。
【0055】
また、アルミニウム成分の酸化物換算による含有量が7.0重量%に満たない場合には釉薬層の防汚性が十分に得られず、また釉薬層の気泡発生量が増大するものであり、逆にこの含有量が15.0重量%を超えると釉薬層の防汚性が十分に得られず、またスズ成分を配合することによる釉薬層の乳白度の向上効果が抑制されてしまう。
【0056】
またスズ成分の酸化物換算による配合量が0.5重量%に満たないと釉薬層の乳白度を十分に向上することが困難となり、またこの含有量が8.0重量%を超えると釉薬層の防汚性が十分に得られない。
【0057】
またリン成分の酸化物換算による配合量が0.5重量%に満たないと釉薬層の乳白度を十分に向上することが困難となり、またこの含有量が10.0重量%を超えると釉薬層の防汚性が十分に得られない。
【0058】
また任意の二価の金属成分の酸化物換算による含有量が10.0重量%に満たないと釉薬組成物の焼成時における成分の相溶性が悪くなって結晶化し、防汚性を十分に得ることができず、また表面の光沢も十分には得られない。また逆にこの含有量が20.0重量%を超える場合は高温での溶融時の流れが大きくなり垂直面がたれてしまい、また気泡発生量が増大してしまう。
【0059】
また任意の一価の金属の酸化物換算による含有量が2.0重量%に満たないと釉薬組成物の焼成時における成分の相溶性が悪くなって結晶化し、防汚性を十分に得ることができず、表面の光沢も十分には得られないものであり、逆にこの含有量が10.0重量%を超える場合には高温での溶融時の流れが大きくなり垂直面がたれてしまい、また気泡発生量が増大してしまうものであり、また、釉薬層に貫入が入るおそれもある。
【0060】
また更に好ましくは、釉薬形成成分の配合量は、釉薬形成成分を全て酸化物として換算した場合の釉薬形成成分全量に対して、ケイ素成分をSiO2換算で55.0〜67.0重量%、アルミニウム成分をAl23換算で7.0〜15.0重量%、スズ成分をSnO2換算で3.0〜6.0重量%、リン成分をP25換算で0.5〜5.0重量%、任意の二価の金属成分を酸化物換算で15.0〜20.0重量%、任意の一価の金属成分を酸化物換算で2.0〜5.0重量%含有するものとする。すなわち、釉薬組成物を焼成して形成される焼結体(釉薬層)中に、焼結体の全重量に対して、酸化物換算でSiO2が55.0〜67.0重量%、Al23が7.0〜15.0重量%、SnO2が3.0〜6.0重量%、P25が0.5〜5.0重量%、任意の二価の金属酸化物が15.0〜20.0重量%、任意の一価の金属酸化物が2.0〜5.0重量%含有するように決定される組成を有するものである。
【0061】
このようにすれば、形成される釉薬層の気泡発生量が更に低減され、また釉薬層における貫入の発生も更に抑制される。
【0062】
また、スズ成分の含有量はSnO2換算で3.0〜6.0重量%とすると共にリン成分のP25換算の含有量を0.5〜5.0重量%とすることで、釉薬層には十分な乳白度が得られ、気泡発生量が少なく美しい外観となるものである。
【0063】
また任意の二価の金属成分の含有量は上記のように酸化物換算で10.0〜20.0重量%であれば良好な釉薬層が得られるものではあるが、この含有量が15.0重量%に満たない場合には防汚性や光沢が若干悪化する傾向が生じ、またこの含有量が20.0重量%を超えている場合では気泡の発生量に若干の増大がみられるものであり、高温での溶融時の流れが大きくなり垂直面がたれてしまい、垂直面のある製品には不向きである。このため更に良好な釉薬層を形成するためには任意の二価の金属成分の酸化物換算での含有量を15.0〜20.0重量%とすることが好ましいものである。
【0064】
また、任意の一価の金属成分の含有量は上記のように酸化物換算で2.0〜10.0重量%であれば良好な釉薬層が得られるものではあるが、更に良好な釉薬層を形成するためには任意の一価の金属成分の酸化物換算での含有量を2.0〜5.0重量%とすることが好ましいものである。このように任意の一価の金属成分の含有量が5.0重量%以下とすることで、被膜形成時における高温の溶融時での流れの発生を更に抑制することができ、被膜表面のうねり等の発生を抑制して、外観を更に向上することができる。
【0065】
また、上記の任意の二価の金属成分としては、カルシウム成分、亜鉛成分、マグネシウム成分等を含有させることができる。特に任意の二価の金属成分としてカルシウム成分を、酸化物換算での釉薬形成成分全量に対してCaO換算で7.0〜15.0重量%含有させると共に、亜鉛成分を酸化物換算での釉薬形成成分全量に対してZnO換算で2.0〜7.0重量%含有させると、釉薬層が更に防汚性や光沢に優れ、また気泡発生量を更に低減することができる。このときカルシウム成分のCaO換算での含有量が7.0重量%に満たないと釉薬組成物の焼成時における成分の相溶性が悪くなって結晶化が生じやすくなり防汚性が若干低下し、この含有量が15.0重量%を超える場合も防汚性が若干低下し、また気泡発生量も若干増大する傾向が生じる。また亜鉛成分のZnO換算での含有量が2.0重量%に満たないと釉薬組成物の焼成時における成分の相溶性が悪くなって結晶化が生じやすくなり防汚性や光沢が若干低下し、この含有量が7.0重量%を超える場合も防汚性が若干低下し、また気泡発生量も若干増大する傾向が生じる。
【0066】
また好ましくは、特に任意の二価の金属成分としてカルシウム成分を、酸化物換算での釉薬形成成分全量に対してCaO換算で10.0〜15.0重量%含有させると共に、亜鉛成分を酸化物換算での釉薬形成成分全量に対してZnO換算で2.0〜7.0重量%含有させると、更に防汚性や光沢が優れ、また気泡発生量を更に低減することができる。このときカルシウム成分のCaO換算での含有量は酸化物換算で7.0〜15.0重量%であれば良好な釉薬層が得られるものではあるが、この含有量が10.0重量%に満たない場合には防汚性や光沢が若干悪化する傾向が生じ、またこの含有量が15.0重量%を超えている場合では気泡の発生量に若干の増大がみられるものであり、高温での溶融時の流れが大きくなり垂直面がたれてしまい、垂直面のある製品には不向きである。このため更に良好な釉薬層を形成するためにはカルシウム成分を、酸化物換算での釉薬形成成分全量に対してCaO換算で10.0〜15.0重量%とすることが好ましいものである。
【0067】
またカルシウム成分及び亜鉛成分が上記の範囲で含有されている場合には、任意の二価の金属成分として更にマグネシウム成分を含有させることができるが、このマグネシウム成分の含有量は酸化物換算での釉薬形成成分全量に対してMgO換算で0.1〜2.0重量%とすることが好ましい。マグネシウム成分のMgO換算での含有量が0.1重量%に満たないと釉薬層の防汚性が若干低下し、2.0重量%を超えると釉薬組成物の焼成時における成分の相溶性が悪くなって結晶化しやすくなり防汚性や光沢が若干低下する傾向が生じる。
【0068】
また、上記の任意の一価の金属成分としては、ナトリウム成分、カリウム成分、リチウム成分等を用いることができる。特に任意の一価の金属成分としてナトリウム成分を、酸化物換算における釉薬形成成分全量に対してNa2O換算で0.1〜5.0重量%含有させると共に、カリウム成分を酸化物換算における釉薬形成成分全量に対してK2O換算で0.1〜5.0重量%を含有すると、更に防汚性や光沢が優れ、また気泡発生量を更に低減することができる。このときナトリウム成分やカリウム成分の含有量が上記の酸化物換算で0.1重量%に満たないと釉薬組成物の焼成時における成分の相溶性が悪くなって結晶化が生じやすくなり防汚性や光沢の向上効果が十分に得られない。またこれらの含有量が5.0重量%を超える場合には高温での溶融時の流れが大きくなり垂直面がたれてしまい、また気泡発生量が増大してしまうものであり、また、釉薬層に貫入が入る傾向も生じる。また、ナトリウム成分とカリウム成分の、酸化物換算における配合量に差がない方が良好な結果が得られる。
【0069】
また、更にリチウム成分を酸化物換算における釉薬形成成分全量に対してLi2O換算で0.1〜5.0重量%含有すると、釉薬層の貫入の発生傾向を更に低減することができる。リチウム成分の含有量が酸化物換算で0.1重量%にみたないと、このような貫入の抑制効果が十分に得られず、また5.0重量%を超える場合には高温での溶融時の流れが大きくなり垂直面がたれてしまい、また気泡発生量が増大してしまう。
【0070】
ここで、リン成分以外の釉薬組成物中の釉薬形成成分は必ずしも単独の酸化物や単金属の酸化物として配合されている必要はなく、例えば下記に示すケイ素成分や各種金属成分の金属やケイ素を複数種含む酸化物や、加熱されることによりケイ素単独の酸化物や単金属の酸化物を生成する炭酸塩等の化合物として配合されていても良い。具体的には、釉薬形成成分の原料として、長石、珪石、石灰、ドロマイト、亜鉛華、蛙目粘土、珪灰石、ネフェリンサイアナイト、アルミナ、カオリン、酸化スズ粉末等を用い、これらの原料を適宜の割合で用いることにより釉薬組成物を調製することができる。このため釉薬形成成分中の各成分の配合量は、上記のように酸化物換算の釉薬形成成分全量、すなわち釉薬形成成分をこの釉薬形成成分を構成する金属及びケイ素の単独の酸化物の混合物に仮想的に変換した場合の釉薬形成成分の全量を基準として規定され、また各成分の配合量も金属及びケイ素の単独の酸化物に換算して規定されるものである。
【0071】
また、特に釉薬組成物中のリン成分の原料としてはリン酸水素カルシウム(CaHPO4)を用いることができる。この場合、釉薬組成物の焼成時にはリン酸水素カルシウムが他の成分と反応してガラス化することより乳白ガラスが形成されて分相するものであり、これにより、透明感のある防汚性に優れた釉薬層が形成される。
【0072】
また、リン成分の原料として骨灰(主成分はCa3(PO42)を用いることもできる。この場合、釉薬組成物の焼成時には骨灰は他の組成物と一部反応して、釉薬組成物のガラス化を促進することができ、得られる釉薬層の防汚性や光沢が若干向上する傾向になる。
【0073】
また、リン成分の原料として水酸アパタイト(Ca5(PO43(OH))を用いることもできる。この場合、釉薬組成物の焼成時に焼成温度を1300℃以下とすると水酸アパタイトは分解したり他の成分と反応したりせず、結晶として釉薬層の乳白化に寄与する。この乳白化の効果を十分に得るためには水酸アパタイトの含有量を酸化物換算における釉薬形成成分全量に対してP25換算で0.1重量%以上とすることが好ましいものであり、またこの水酸アパタイトは釉薬層中で結晶として存在するため、十分な防汚性能を維持したり気泡発生を抑制するためには含有量を酸化物換算における釉薬形成成分全量に対してP25換算で5.0重量%以下とすることが好ましい。
【0074】
また、リン成分の原料としてメタリン酸カルシウム(Ca(PO32)を用いることもできる。この場合、釉薬組成物の焼成時にはメタリン酸カルシウムが他の成分と反応してガラス化することより乳白ガラスが形成されて分相するものであり、これにより、透明感のある防汚性に優れた釉薬層が形成される。ただし、釉薬組成物の調製時にメタリン酸カルシウムを含む原料をミル等にて湿式粉砕する場合には粘性が増大して粉砕に要する時間が長くなってしまうため、このような粘性の増大を抑制するためにはメタリン酸カルシウムの含有量は酸化物換算における釉薬形成成分全量に対してP25換算で3.0重量%以下とすることが好ましい。またメタリン酸カルシウムを含有させることによる効果を十分に得るためには、その含有量を酸化物換算における釉薬形成成分全量に対してP25換算で0.1重量%以上とすることが好ましい。
【0075】
また、リン成分の原料としてリン酸三カルシウム(Ca3(PO42)を用いることもできる。この場合、釉薬組成物の焼成時にリン酸三カルシウムは分解したり他の成分と反応したりせず、結晶として釉薬層の乳白化に寄与する。この乳白化の効果を十分に得るためにはリン酸三カルシウムの含有量を酸化物換算における釉薬形成成分全量に対してP25換算で0.1重量%以上とすることが好ましい。またこのリン酸三カルシウムは釉薬層中で結晶として存在するものではあるが、水酸アパタイトの場合よりも釉薬層の防汚性能の維持効果に優れるものであり、リン酸三カルシウムの含有量を酸化物換算における釉薬形成成分全量に対してP25換算で10重量%以下とすれば、釉薬層の防汚性を十分に維持することができる。
【0076】
また、釉薬形成成分の原料としては、上記のようなケイ素やリン、金属を含む化合物を加熱溶融させた後固化することによりガラス化(非晶質化)し、更に粉砕して得られるフリットを用いることもできる。このとき釉薬形成成分は、このようなフリットのみで構成されていても良く、またこのフリットにて釉薬形成成分の一部を構成しても良い。
【0077】
また、釉薬組成物中には、上記の釉薬形成成分に加えて、乳濁材や着色材等を配合することができる。
【0078】
乳濁材は釉薬層の乳白度を向上するために配合されるものであり、酸化チタン(TiO2)等のチタン成分、酸化セリウム(CeO2)等セリウム成分などを用いることができる。
【0079】
乳濁材としてチタン成分を用いる場合には、酸化物換算での釉薬形成成分の全量に対して、TiO2換算で0.1〜8.0重量%含有させることが好ましく、この配合量が0.1重量%に満たない場合は釉薬層の乳白度を十分に向上することが困難となり、また8.0重量%を超える場合には、釉薬層の防汚性能が若干低下する傾向が生じる。
【0080】
また乳濁材としてセリウム成分を用いる場合には、酸化チタンを用いる場合よりも乳白度を更に向上することができる。この場合はセリウム成分を、酸化物換算での釉薬形成成分の全量に、CeO2換算で0.1〜8.0重量%含有させることが好ましく、この配合量が0.1重量%に満たない場合は釉薬層の乳白度を十分に向上することが困難となり、また8.0重量%を超える場合には、釉薬層の防汚性能が若干低下する傾向が生じる。また酸化セリウム等のセリウム成分を用いる場合には、フリット化した状態で釉薬組成物中に配合すると釉薬層の乳白度を向上する効果が得られなくなるため、フリット化していない状態で配合する。
【0081】
また、着色材としては、顔料を配合することができる。顔料は適宜のものが用いられ、例えば金属酸化物や炭酸化物等の有色の化合物をカオリン、石英、酸化スズ等の他の無機化合物と混合し、一定の温度で焼成したものを微粉砕したものが挙げられる。顔料の種類は錫系のものを使用したほうが色の安定性が増し好ましい。このとき顔料は釉薬形成成分の実際の全量に対して0.1〜8.0重量%含有させることが好ましいものであり、この配合量が0.1に満たないと釉薬層を十分に着色させることが困難となり、また8.0重量%を超える場合には釉薬層の防汚性能が若干低下する傾向が生じる。
【0082】
また、着色材としては、コバルト化合物、マンガン化合物、ニッケル化合物、ウラニウム化合物、クロム化合物、鉄化合物、銅化合物、金化合物、アンチモン化合物、ヒ酸化合物、モリブデン化合物、タングステン化合物及びバナジウム化合物から選ばれる一種以上の化合物を直接配合することもできる。これらの化合物の配合量の総量は、酸化物換算での釉薬形成成分の全量に対して0.1〜5.0重量%とすることが好ましいものであり、この配合量が0.1に満たないと釉薬層を十分に着色させることが困難となり、また5.0重量%を超える場合には釉薬層に気泡が発生するおそれがあり、防汚性能が若干低下する傾向も生じる。
【0083】
釉薬組成物は、上記のような釉薬形成成分の原料や、必要に応じて配合される乳濁材、着色材等を所定量配合すると共に必要に応じて水を加えて粉砕し、更に必要に応じて水分含有量を調整したり適宜のバインダーや解膠材を配合したりして調製することができる。
【0084】
釉薬組成物を調製するにあたっては、粉砕前のケイ素成分を含む原料やスズ成分を含む原料やリン成分を含む原料として、予め粒度調整がなされたものを用いることが好ましいものであり、また乳濁材として乳濁材と酸化チタンや酸化セリウムを配合する場合には、これらも予め粒度調整がなされたものを用いることが好ましい。
【0085】
例えば長石や珪石等といったケイ素成分を含む原料の場合には、これらの原料を予め粉砕すると共に分級することにより粒径30μm以上の粒子が除去された微粉状のものを用いることが好ましい。
【0086】
また酸化スズ粉末のようなスズ成分を含む原料の場合にはメディアン径が0.2〜4.0μmの微粉状に調整されたものを用いることが好ましい。また骨灰粉末のようなリン成分を含む原料の場合にはメディアン径が1.0〜5.0μmの微粉状に調整されたものを用いることが好ましい。
【0087】
また酸化チタン粉末、酸化セリウム粉末のような乳濁材の場合にはメディアン径が0.1〜2.0μmの微粉状に調整されたものを用いることが好ましい。
【0088】
ここでメディアン径とは粒径分布における累積曲線の50%にあたる粒子径であり、50%平均粒径(D50)とも呼ばれる。尚、本明細書においてはメディアン径は重量基準の粒径分布に基づいて導出されることとし、この場合はメディアン径の値よりも大きい粒径の粒子の総重量と小さい粒径の粒子の総重量とが等しくなる。
【0089】
このようにケイ素成分を含む原料や、スズ成分を含む原料、リン成分を含む原料、あるいは酸化チタン粉末や酸化セリウム粉末のような乳濁材として上記のように粒径が予め調整されたものを用いると、釉薬層の防汚性を更に向上することができる。
【0090】
このときケイ素成分を含む原料中に粒径30μm以上の粒子が含まれていると、上記のような防汚性の向上効果は得られなくなる。またスズ成分を含む原料のメディアン径が4.0μmを超えていると上記のような防汚性の向上効果は得られず、一方このメディアン径が0.2μmに満たないと防汚性の向上効果が得られないばかりではなく、釉薬層の乳白度が低下するおそれもある。またリン成分を含む原料のメディアン径が5.0μmを超えていると上記のような防汚性の向上効果は得られず、一方このメディアン径が1.0μmに満たないと防汚性の向上効果が得られないばかりではなく、釉薬層の乳白度が低下するおそれもある。また酸化チタンや酸化セリウムのような乳濁成分を含む原料のメディアン径が2.0μmを超えていると上記のような防汚性の向上効果は得られず、一方このメディアン径が0.1μmに満たないと釉薬層の乳白度が低下するおそれもある。
【0091】
また、釉薬形成成分の全体のメディアン径は3〜5μmとなるように各原料を粉砕することが好ましい。この粒径範囲では、釉薬層の防汚性や光沢が更に向上するものであり、この範囲を外れるとこのような防汚性や光沢の向上効果が得られない。
【0092】
また、釉薬形成成分の原料を粉砕することにより釉薬組成物を調製する場合には、釉薬形成成分の原料のうちケイ素成分を含む原料及びスズ成分を含む原料、リン成分を含む原料のうちの少なくとも一種の原料を予め所定粒度まで粉砕した後、残りの釉薬形成成分の原料を加えて、釉薬形成成分全体が所定粒度となるまで粉砕することが好ましく、この場合には、釉薬層の防汚性を更に向上することができる。特に予め粒度調整がなされていないケイ素成分を含む原料やスズ成分やリン成分を含む原料を用いる場合にはこのように先ずケイ素成分を含む原料やスズ成分を含む原料やリン成分を所定粒度となるまで粉砕することが好ましい。
【0093】
ケイ素成分を含む原料のみを予め粉砕する場合にはケイ素成分を含む原料のメディアン径が5μm以下となるまで粉砕することが好ましい。このときのメディアン径が5μmを超える場合であっても、他の原料を加えた後に粉砕を行うことによりケイ素成分を含む原料が粉砕され、釉薬層の防汚性を向上することができるが、予めケイ素成分を含む原料のメディアン径が5μm以下となるまで粉砕すると釉薬層の気泡発生量が低減されると共に乳白度も向上し、外観が更に向上された釉薬層を形成することができる。このときケイ素成分を含む原料はできるだけ細かく粉砕した方が好ましいが、メディアン径をあまりにも小さくしようとすると粉砕に要する時間が長くかかりすぎて、釉薬組成物の製造効率が低下してしまうため、メディアン径1μm以上の範囲において粉砕を行うことが好ましい。
【0094】
またスズ成分を含む原料のみを予め粉砕する場合にはスズ成分を含む原料のメディアン径が1.5〜2μmになるまで粉砕することが好ましい。このときメディアン径が2μmを超える場合であっても、他の原料を加えた後に粉砕を行うことによりスズ成分を含む原料が粉砕され、釉薬層の防汚性を向上することができるが、予めスズ成分を含む原料のメディアン径が1.5〜2μmとなるまで粉砕しておくと、防汚性だけでなく釉薬層の乳白度が向上し、外観が更に向上された釉薬層を形成することができる。このスズ成分を含む原料のメディアン径が1.5μmに満たない場合には、このような乳白度の向上の効果は得られなくなる。
【0095】
またリン成分を含む原料のみを予め粉砕する場合にはリン成分を含む原料のメディアン径が3〜5μmになるまで粉砕することが好ましい。このときメディアン径が5μmを超える場合であっても、他の原料を加えた後に粉砕を行うことによりリン成分を含む原料が粉砕され、釉薬層の防汚性を向上することができるが、予めリン成分を含む原料のメディアン径が3〜5μmとなるまで粉砕しておくと、防汚性だけでなく釉薬層の乳白度が向上し、外観が更に向上された釉薬層を形成することができる。また、このリン成分を含む原料のメディアン径が3μmに満たない場合には、このような乳白度の向上の効果は得られなくなる。
【0096】
また、ケイ素成分を含む原料とスズ成分を含む原料とリン成分を含む原料とを、全て予め粉砕する場合には、ケイ素成分を含む原料、スズ成分を含む原料及びリン成分を含む原料を、予めその全体のメディアン径が5μm以下となるまで粉砕することが好ましい。このときのメディアン径が5μmを超える場合であっても、他の原料を加えた後に粉砕を行うことによりケイ素成分を含む原料、スズ成分及びリン成分を含む原料が粉砕され、釉薬層の防汚性を向上することができるが、予めこのメディアン径が5μm以下となるまで粉砕すると釉薬層の気泡発生量が低減されると共に乳白度も向上し、外観が更に向上された釉薬層を形成することができる。このときケイ素成分を含む原料、スズ成分を含む原料及びリン成分を含む原料はできるだけ細かく粉砕した方が好ましいが、メディアン径をあまりにも小さくしようとすると粉砕に要する時間が長くかかりすぎ、釉薬組成物の製造効率が低下してしまうため、メディアン径1μm以上の範囲において粉砕を行うことが好ましい。
【0097】
そして上記のようにケイ素成分を含む原料やスズ成分を含む原料、あるいはリン成分を含む原料を予め所定粒度まで粉砕した後、残りの原料を加えて、釉薬形成成分全体のメディアン径が3〜5μmとなるまで粉砕すると、防汚性、光沢及び乳白度を更に向上することができるものである。
【0098】
上記のような釉薬形成成分の原料の粉砕は、ボールミルを用いて行うことができる。このようなボールミルとしては、ボールや容器内張がシリカやアルミナ等にて形成されたものを用いることができる。特にボールやボール及び容器の内張がアルミナにて形成されたものを用いると、粉砕過程において硬度の高いアルミナ製のボールや容器の内張が研削されることが防止され、ボールや容器を構成する物質が釉薬組成物に含有されることを防ぐことができる。一方、例えばボールや容器内張がシリカにて形成されているものを用いた場合には、シリカは釉薬形成成分の必須成分であり、かつ研削される量も僅かであるので、ほぼ所望の組成を有する釉薬組成物が得られるものの、ボールや容器の内張が研削されて発生する粒子は粒径が大きくなるため、防汚性が若干低下するおそれがある。
【0099】
釉薬組成物中に含有される水は、釉薬組成物の塗布性を向上するために配合されるものであり、良好な塗布性が得られるために必要とされる量を含有させれば良いものであるが、例えば釉薬組成物中の固形分100重量部に対して40重量部程度含有させることができる。またバインダーは成膜性を向上させることが必要な場合に含有させることができるものであり、加熱焼成時に揮散するものであれば特にその材質は問わない。
【0100】
このように調製される釉薬組成物を用いると、防汚性が高く、かつ外観が良好な釉薬層を、衛生陶磁器の素地表面に形成することができる。
【0101】
衛生陶磁器の素地表面に釉薬層を形成する場合には、まず釉薬組成物を素地表面にスプレー塗布等により塗布して素地表面に釉薬組成物の層を形成し、この陶磁器を加熱焼成して溶融させた後、固化させるものである。
【0102】
焼成時の加熱温度は、最高温度が1150〜1250℃となるようにすることが好ましく、この温度範囲において、良好な光沢と防汚性を有する釉薬層を形成することができる。焼成時の最高温度がこの範囲に満たないと光沢や防汚性が低下する傾向がみられ、またこの範囲を超えると釉薬組成物の流動性が高くなって素地表面を流動し、釉薬層が形成されない部分が発生するおそれがある。
【0103】
また、焼成時間は、上記のような最高温度の条件では、この最高温度で8時間以上焼成することが好ましく、この場合は釉薬層における気泡発生量をより低減することができる。焼成時間は長いほど気泡発生量を低減できるが、良好な生産性を確保するためには24時間以下とすることが好ましい。
【0104】
この釉薬組成物の加熱焼成には、ローラーハースやトンネルキルン等を用いることができる。ローラーハースは炉内に搬送用の複数のローラを形成したものであり、炉内に供給された陶磁器はローラー上で搬送されながら加熱されて、炉外に導出される。またトンネルキルンはトンネル状の炉内に、炉内を走行可能な搬送用の台車が備えられているものであり、炉内に供給された陶磁器は台車上に載置され、台車が走行することにより炉内で搬送されながら加熱されて、炉外に導出される。これらのローラーハースやトンネルキルンは炉内に陶磁器を順次連続的に導入して加熱焼成を行うことができ、処理効率が高いものである。ローラーハースにて加熱焼成を行う場合には、気泡発生量を低減する場合には最高温度における加熱時間は上記のように8時間以上とすることが好ましいが、トンネルキルンにて加熱焼成を行う場合には加熱時間は10時間以上とすることが好ましい。
【0105】
また釉薬組成物の層の加熱焼成により釉薬層を形成するにあたっては、焼成後に形成される釉薬層の厚みが0.2〜1.2mmとなるようにすることが好ましく、この場合には下地である陶磁器の素地表面の隠蔽性が高い良好な釉薬層が形成される。釉薬層の厚みが0.2mmに満たない場合には陶磁器の素地表面の隠蔽性が十分でなく素地が透けてみえるものであり、また厚みが1.2mmを超えると、焼成前の釉薬組成物の層が乾燥する際に微細なクラックが生じやすくなって、焼成後に形成される釉薬層にいわゆるクスリハゲ(parting)と呼ばれる不良が発生し、素地表面が露出してしまう部分が発生するおそれがある。
【0106】
このように形成される釉薬層をX線回折測定法にて測定すると、得られる回折曲線にはSnO2結晶及びCaSnSiO5結晶(錫スフェーン)のうちの一方あるいは双方に起因する回折ピークが観測されると共に、Ca3(PO42結晶およびCa5(PO43(OH)結晶のうちの一方あるいは双方に起因する回折ピークが観測され、またこれらの結晶以外の結晶に起因する回折ピークは観測されず、SnO2結晶、CaSnSiO5結晶、Ca3(PO42結晶及びCa5(PO43(OH)結晶以外の結晶の存在は確認されないものである。従って、この釉薬層は全体に亘って釉薬層を構成する成分の大部分が相溶して非晶質化していると共に、SnO2結晶とCaSnSiO5結晶(錫スフェーン)の一方又は双方が結晶化し、また、Ca3(PO42結晶及びCa5(PO43(OH)結晶の一方又は双方が結晶して、乳濁しており、これにより釉薬層は乳白色に形成される。このとき釉薬層中には結晶が生じているものの、その表面にはZrSiO4を含む組成物を用いる場合のような凹凸は形成されず、平滑に形成されて、防汚性や光沢性に優れるものである。
【0107】
【実施例】
以下、本発明を実施例によって詳述する。
【0108】
(実施例1)
釉薬形成成分の原料として、釜戸長石、珪石粉、鼠石灰、ドロマイト、亜鉛華、原蛙目粘土、酸化スズ粉及び骨灰を使用した。ケイ素成分を含む原料である釜戸長石、珪石粉としては、粒径30μm以上の粒子を2%含むものを用い、酸化スズ粉としてはメディアン径4.1μmのものを用いた。また、骨灰はメディアン径4.1μmのものを用いた。
【0109】
そして、容器の内張とボールとが共にシリカ製であるボールミルを用い、このボールミルの容器内に上記の各原料を所定量投入すると共にこれらの原料固形分100重量部に対して40重量部の水を加えて、このボールミルを8時間回転させて、原料の粉砕を行い、酸化物換算での組成が下記表1のAに示す組成を有する釉薬形成成分を含有する釉薬組成物を調製した。この釉薬組成物中の釉薬形成成分のメディアン径を、X線透過型粒度測定機にて測定したところ、5.1μmであった。
【0110】
この釉薬組成物を、乾燥させた衛生陶磁器の素地表面にスプレー塗布して釉薬組成物の層を形成した後、この衛生陶磁器をトンネルキルン中で、最高温度1200℃で16時間加熱焼成し、衛生陶磁器の素地表面に厚み0.6mmの釉薬層を形成した。
【0111】
(実施例2〜9,比較例1〜15)
原料の配合量及び原料の粉砕時間を変更した以外は実施例1と同様にして、各実施例及び比較例につき、酸化物換算での配合量が表1のB〜Xに示す組成の釉薬形成成分を含有すると共に釉薬形成成分のメディアン径が5.1μmである釉薬組成物を調製した。
【0112】
そしてこの釉薬組成物を用い、実施例1と同様にして衛生陶磁器の素地表面に厚み0.6mmの釉薬層を形成した。
【0113】
(実施例10〜13)
リン成分原料の骨灰をリン酸水素カルシウム、水酸カルシウム、メタリン酸カルシウム又はリン酸三カルシウムに変更した以外は実施例1と同様に釉薬組成物を調製した。
【0114】
そしてこの釉薬組成物を用い、実施例1と同様にして衛生陶磁器の素地表面に厚み0.6mmの釉薬層を形成した。
【0115】
(実施例14〜17)
粒径2.2μmの酸化チタン粉末または、粒径2.2μmの酸化セリウム粉末を、実施例1と同様にミルに投入された釉薬原料中に投入し、粉砕したメディアン径が5.1μmの粉砕釉薬組成物を調製した。
【0116】
そしてこの釉薬組成物を用い、実施例1と同様にして衛生陶磁器の素地表面に厚み0.6mmの釉薬層を形成した。
【0117】
そしてこの釉薬組成物を用い、実施例1と同様にして衛生陶磁器の素地表面に厚み0.6mmの釉薬層を形成した。
【0118】
(実施例18,19)
市販の鉄系顔料(川村化学(株)製;「グレー」)を所定量、実施例1と同様にミルに投入された釉薬原料中に投入し、粉砕したメディアン径が5.1μmの粉砕釉薬組成物を調製した。
【0119】
そしてこの釉薬組成物を用い、実施例1と同様にして衛生陶磁器の素地表面に厚み0.6mmの釉薬層を形成した。
【0120】
そしてこの釉薬組成物を用い、実施例1と同様にして衛生陶磁器の素地表面に厚み0.6mmの釉薬層を形成した。
【0121】
(実施例20)
二酸化マンガン粉末を所定量、実施例1と同様にミルに投入された釉薬原料中に投入し、粉砕したメディアン径が5.1μmの粉砕釉薬組成物を調製した。
【0122】
そしてこの釉薬組成物を用い、実施例1と同様にして衛生陶磁器の素地表面に厚み0.6mmの釉薬層を形成した。
【0123】
そしてこの釉薬組成物を用い、実施例1と同様にして衛生陶磁器の素地表面に厚み0.6mmの釉薬層を形成した。
【0124】
(実施例21)
粉砕したガラスフリット(日本フリット社製;品番PN−54321;SiO270重量%、Al2314重量%、Na2O16重量%)と、原料を所定の割合で配合した後に実施例1と同様のボールミルにて粉砕したメディアン径が5.1μmの粉砕原料とを、ガラスフリット30重量部に対して粉砕原料60重量部の割合で混合し、ガラスフリットと粉砕原料からなる釉薬形成成分の組成が、酸化物換算で表1のA及びBとなる釉薬組成物を調製した。
【0125】
そしてこの釉薬組成物を用い、実施例1と同様にして衛生陶磁器の素地表面に厚み0.6mmの釉薬層を形成した。
【0126】
(実施例22)
ケイ素成分を含む原料である釜戸長石、珪石粉としては、粉砕・分級を行うことにより粒径30μm以上の粒子が除去されたものを用いた。それ以外は実施例1と同様にして釉薬形成成分のメディアン径が5.1μmである釉薬組成物を調製した。
【0127】
そしてこの釉薬組成物を用い、実施例1と同様にして衛生陶磁器の素地表面に厚み0.6mmの釉薬層を形成した。
【0128】
(実施例23〜24)
スズ成分を含む原料である酸化スズ粉としてメディアン径3.2μmと0.1μmのものを用いた以外は実施例3と同様にして、釉薬形成成分のメディアン径が5.1μmである釉薬組成物を調製した。
【0129】
そしてこの釉薬組成物を用い、実施例1と同様にして衛生陶磁器の素地表面に厚み0.6mmの釉薬層を形成した。
【0130】
(実施例25)
リン成分を含む原料である骨灰粉末としてメディアン径を4.3μmに調整した以外は実施例1と同様にして、釉薬組成物を調製した。
【0131】
そしてこの釉薬組成物を用い、実施例1と同様にして衛生陶磁器の素地表面に厚み0.6mmの釉薬層を形成した。
【0132】
(実施例26〜27)
乳濁材である酸化チタン粉末、酸化セリウム粉末としてメディアン径1.8μmのものを用いた以外は実施例14と同様にして、釉薬形成成分のメディアン径が5.1μmである釉薬組成物を調製した。
【0133】
そしてこの釉薬組成物を用い、実施例1と同様にして衛生陶磁器の素地表面に厚み0.6mmの釉薬層を形成した。
【0134】
(実施例28〜29)
粉砕時間を変更することにより釉薬形成成分のメディアン径を4.3μmと2.8μmに調整した以外は実施例2と同様にして、釉薬組成物を調製した。
【0135】
そしてこの釉薬組成物を用い、実施例1と同様にして衛生陶磁器の素地表面に厚み0.6mmの釉薬層を形成した。
【0136】
(実施例30〜33)
ケイ素成分を含む原料とスズ成分を含む原料、リン成分のうちの一方又は双方を、20重量%の水と共に実施例1と同様のボールミルにて1時間予備粉砕して、これらの原料のメディアン径を表3に示す粒径に調整した後、ボールミル中に残りの原料と水を加えて水の含有量を原料固形分100重量部に対して40重量部とし、更にボールミルにて粉砕を行って、酸化物換算での釉薬形成成分の組成が表1のBに示す組成を有するメディアン径5.1μmの釉薬組成物を調製した。
【0137】
そしてこの釉薬組成物を用い、実施例1と同様にして衛生陶磁器の素地表面に厚み0.6mmの釉薬層を形成した。
【0138】
(実施例34)
ケイ素成分を含む原料を、20重量%の水と共に実施例1と同様のボールミルにて4時間予備粉砕してメディアン径を5.0μmに調整した後、ボールミル中に残りの原料と水を加えて水の含有量を原料固形分100重量部に対して40重量部とし、更にボールミルにて7時間粉砕を行って、釉薬形成成分の酸化物換算での組成が表1のBに示す組成を有するメディアン径5.0μmの釉薬組成物を調製した。
【0139】
そしてこの釉薬組成物を用い、実施例1と同様にして衛生陶磁器の素地表面に厚み0.6mmの釉薬層を形成した。
【0140】
(実施例35,36)
スズ成分を含む原料を、20重量%の水と共に実施例1と同様のボールミルにて3時間又は6時間予備粉砕してメディアン径を1.8μm又は1.3μmに調整した後、ボールミル中に残りの原料と水を加えて水の含有量を原料固形分100重量部に対して40重量部とし、更にボールミルにて7時間粉砕を行って、釉薬形成成分の酸化物換算での組成が表1のBに示す組成を有するメディアン径4.9μmの釉薬組成物を調製した。
【0141】
そしてこの釉薬組成物を用い、実施例1と同様にして衛生陶磁器の素地表面に厚み0.6mmの釉薬層を形成した。
【0142】
(実施例37,38)
ケイ素成分を含む原料とスズ成分を含む原料、リン成分の一方または双方を、20重量%の水と共に実施例1と同様のボールミルにて4時間予備粉砕してメディアン径を4.1μmに調整した後、ボールミル中に残りの原料と水を加えて水の含有量を原料固形分100重量部に対して40重量部とし、更にボールミルにて7時間粉砕を行って、釉薬形成成分の酸化物換算での組成が表1のBに示す組成を有するメディアン径5.0μmの釉薬組成物を調製した。
【0143】
(実施例39,40)
実施例39ではボールミルとして容器の内張がアルミナ製、ボールがシリカ製のものを用い、実施例40ではボールミルとして内張とボールが共にアルミナ製のものを用いた。それ以外は実施例2と同様にして、釉薬形成成分の酸化物換算での組成が表1のBに示す組成を有すると共に釉薬形成成分のメディアン径が5.1μmである釉薬組成物を調製した。
【0144】
そしてこの釉薬組成物を用い、実施例1と同様にして衛生陶磁器の素地表面に厚み0.6mmの釉薬層を形成した。
【0145】
(実施例41,比較例16)
実施例41では実施例2にて得られる釉薬組成物に更に3重量部の錫系顔料(日陶産業株式会社製;「グレー」)を添加して釉薬組成物を調製した。
【0146】
また比較例16では比較例1にて得られる釉薬組成物に更に3重量部の上記の錫系顔料を添加して釉薬組成物を調製した。
【0147】
そしてこの釉薬組成物を用い、実施例1と同様にして衛生陶磁器の素地表面に厚み0.6mmの釉薬層を形成した。
【0148】
【表1】
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【0149】
(評価)
各実施例及び比較例につき、次に示す評価を行った。
【0150】
・防汚性評価
釉薬層が形成された衛生陶磁器を液温60℃の5%アルカリ水溶液中に45時間浸漬した後、水性インキにて表面に筆記し、その筆記跡をウエスにて拭き取った。その結果、筆記跡が完全に拭き取れたものを「◎」、筆記跡が僅かに残るものの殆ど視認できないものを「○」、筆記跡が明確に視認できるものを「×」として評価した。
【0151】
・光沢評価
釉薬層を目視にて観察し、従来品である比較例15を基準にしてそれよりも光沢が向上しているものを「◎」、光沢が同程度のものを「○」、光沢が劣っているものを「×」として評価した。
【0152】
・気泡発生量評価
釉薬層を目視にて観察し、従来品である比較例15を基準にしてそれよりも気泡発生量が少ないものを「◎」、気泡発生量が同程度のものを「○」、気泡発生量が多いものを「×」として評価した。
【0153】
・乳白度評価
釉薬層を目視にて観察し、従来品である比較例15を基準にしてそれよりも乳白度が高いものを「◎」、乳白度が同程度のものを「○」、乳白度が低いものを「×」として評価した。
【0154】
以上の結果を表2〜4に示す。
【0155】
【表2】
Figure 0003941477
【0156】
【表3】
Figure 0003941477
【0157】
【表4】
Figure 0003941477
【0158】
【表5】
Figure 0003941477
【0159】
上記に示す結果のように、実施例1〜41では、釉薬層は防汚性が高く、良好な光沢を有するものであり、また釉薬層中の気泡発生量や乳白度も従来品と同程度の良好な結果が得られた。
【0160】
それに対して、ZrO2が配合されている従来品である比較例15や、これに顔料を含有させた比較例16では、光沢、気泡発生量、乳白度については良好な結果が得られるものの、防汚性が低いものであった。またケイ素成分の含有量が多い比較例2,9では防汚性悪く、気泡発生量多いものであり、ケイ素成分の含有量が少ない比較例1では防汚性悪く、気泡多く、光沢の悪いものであった。また、アルミニウム成分の含有量が多い比較例4では防汚性が悪く、気泡発生量が多いものであり、アルミニウム成分の含有量が少ない比較例3では防汚性悪く、気泡発生量が多いものであった。またスズ成分の含有量が多い比較例12では防汚性が悪く、スズ成分の含有量が少ない比較例11では乳白度が悪化するものであった。また二価の金属成分の含有量が少ない比較例9では防汚性が悪い、光沢も悪いものであり、また二価の金属成分の含有量が多い比較例10では防汚性が悪く、気泡発生量が多いものであった。また一価の金属酸成分の含有量が少ない比較例7では防汚性が悪く、光沢も悪いものであり、また一価の金属成分の含有量が多い比較例8では防汚性が悪く、気泡多いものであり、更には釉薬層には貫入の発生がみられた。
【0161】
また実施例1〜24では全て同等の良好な評価が得られたが、そのうちでも、ROの含有量が15重量%に満たない実施例3〜6、実施例8よりも、実施例1,2,7,9の方が防汚性に若干の向上が見受けられるものであり、またROの含有量が20重量%を超える実施例4,8よりも他の実施例の方が気泡発生量が低減されていた。またカルシウム成分の含有量が10重量%に満たない実施例4、5,6,8と比べると、他の実施例では気泡発生量だけでなく防汚性についても向上しているものであった。またR2O成分の含有量が5重量%を超える実施例8では、他の実施例と比べて気泡発生量が若干多く、また乳白度も若干低くなった。
【0162】
また錫成分の含有量が3重量%に満たない実施例2〜4、7,8では、実施例1,9と比べて気泡発生量が若干多く、また乳白度も若干低くなった。
【0163】
また、錫成分の含有量が6重量%を超える実施例6では、実施例1,9と比べて防汚性に若干の低下が見受けられるものであった。
【0164】
またリン成分の含有量が5重量%を超える実施例4,5、6、8では、他の実施例1,2,3,7,9と比べて防汚性に若干の低下が見受けられるものであった。
【0165】
また、リン成分原料としてリン酸水素カルシウム、水酸アパタイト、メタリン酸カルシウム,リン酸三カルシウムを用いた実施例10〜13の場合でも、同一組成を有する実施例1と同様の評価が得られた。
【0166】
また、釉薬形成成分中に乳濁材として酸化チタン、酸化セリウムを1.8重量部配合した実施例14〜17の場合でも、同一組成を有する実施例1と同様の評価が得られた。
【0167】
また、釉薬形成成分中に着色のためジルコン系顔料を1.8重量部配合した実施例18,19の場合でも、同一組成を有する実施例1と同様の評価が得られた。
【0168】
また、釉薬形成成分中に着色のため二酸化マンガンを5重量部配合した実施例20の場合でも、同一組成を有する実施例1と同様の評価が得られた。
【0169】
また、釉薬形成成分中にフリットを含有させた実施例21の場合でも、同一組成を有する実施例1と同様の評価が得られた。
【0170】
また、ケイ素成分を含む原料中の粒径30μm以上の粒子を予め除去しておいた実施例22では、同一組成を有する実施例1よりも優れた防汚性が得られた。
【0171】
またスズ成分を含む原料の粒子径を変更した実施例23,24のうち、メディアン径を0.2〜4.0μmの範囲とした実施例23では同一組成を有する実施例3よりも優れた防汚性が得られた。一方、メディアン径が0.2μmに満たない実施例24では同一組成を有する実施例3と同等の評価結果となり、また乳白度は実施例3と比べて若干の低下が見られた。
【0172】
また釉薬形成成分全体の粒径を変更した実施例28,29のうち、メディアン径を3.0〜5.0μmの範囲に調整した実施例28では同一組成を有する実施例2よりも防汚性に優れ、またメディアン径が3.0μmに満たない実施例29では実施例2と同等の評価結果となった。
【0173】
またケイ素成分を含む原料とスズ成分を含む原料のうちの少なくとも一方を予め粉砕した実施例30〜38では、同一組成を有する実施例2よりも優れた防汚性が得られた。特に釉薬形成成分全体のメディアン径を好適範囲に調整した実施例34〜38では光沢も向上しており、更にはスズ成分を含む原料を予備粉砕して粒径を好適範囲に調整した実施例38,41では乳白度も向上した。
【0174】
また、ボールミルとして容器の内張をアルミナ製に変更した実施例39と、内張とボールを共にアルミナ製に変更した実施例40では、同一組成に調整された実施例2よりも防汚性が更に向上したものであり、また実施例39と実施例40とを比較すれば、実施例40の方がより防汚性が向上した。
【0175】
また、錫系顔料を含有させた実施例41では、着色された釉薬層が形成され、更に錫系顔料を含有させていない以外は同一組成を有する実施例2と同等の評価結果が得られた。また従来品に顔料を含有させた比較例16よりも防汚性が向上した。
【0176】
(X線回折測定)
実施例1、実施例10、11、12、13及び比較例15における釉薬層について、塊状の試料に対してX線回折測定を行った。このときX線源としてはCuKα線を用いた。この結果、実施例1、13ではX線回折測定によって測定される結晶はCaSnSiO5結晶、SnO2結晶、Ca3(PO4)2結晶のみであり、残りの成分は非晶質化していた。またこれらの結晶が存在することにより、乳白度が高く、しかも表面は平滑に形成されて防汚性や光沢が高いものである。
【0177】
また実施例10、12ではX線回折測定によって測定される結晶はSnO2結晶とCaSnSiO5結晶のみであり、残りの成分は非晶質化していることがわかった。リン成分はその他の成分と結びついて乳白ガラス化していると考えられる。いわゆる分相状態になって白さを出しており、SnO2結晶とCaSnSiO5結晶の乳白を助けている。この場合も実施例1と同様に、乳白度が高く、しかも表面は平滑に形成されて防汚性や光沢が高いものである。
【0178】
また実施例11ではX線回折測定によって測定される結晶はSnO2結晶とCaSnSiO5結晶、(Ca5(PO43(OH))結晶のみであり、残りの成分は非晶質化していることがわかった。この場合も実施例1と同様に、乳白度が高く、しかも表面は平滑に形成されて防汚性や光沢が高いものである。
【0179】
一方、比較例15ではケイ酸ジルコニウムの結晶が形成されており、このケイ酸ジルコニウムの結晶によって上記の評価結果のように乳白度は良好なものではあるが、表面が凹凸に形成されて防汚性が低くなってしまうものである。
【0180】
【発明の効果】
上記のように本発明に係る釉薬組成物は、焼成時に釉薬層を形成する釉薬形成成分を含有する釉薬組成物であって、ジルコニウム成分を含有しないと共に、焼成により酸化物換算で55.0〜67.0重量%のSiO2と、7.0〜15.0重量%のAl23と、0.5〜8.0重量%のSnO2と、0.5〜10.0重量%のP25と、10.0〜20.0重量%の任意の二価の金属酸化物と、2.0〜10.0重量%の任意の一価の金属酸化物とからなる焼結体を形成するように組成が決定された釉薬形成成分を含有するため、この釉薬組成物を焼成することにより釉薬層を形成すると、表面に汚れが付着しにくくかつ付着した汚れの除去性に優れ、また良好な乳白度を有すると共に気泡発生量が低減された、良好な釉薬層を形成することができるものである。
【0181】
また、酸化物換算での釉薬形成成分全量に対して、ケイ素成分をSiO2換算で55.0〜67.0重量%、アルミニウム成分をAl23換算で7.0〜15.0重量%、スズ成分をSnO2換算で0.5〜8.0重量%、リン成分をP25換算で0.5〜10.0重量%、任意の二価の金属成分を酸化物換算で10.0〜20.0重量%、任意の一価の金属成分を酸化物換算で2.0〜10.0重量%含有させることにより、この釉薬組成物を焼成することにより釉薬層を形成すると、表面に汚れが付着しにくくかつ付着した汚れの除去性に優れ、また良好な乳白度を有すると共に気泡発生量が低減された、良好な釉薬層を形成することができるものである。
【0182】
また、酸化物換算での釉薬形成成分全量に対して、ケイ素成分をSiO2換算で55.0〜67.0重量%、アルミニウム成分をAl23換算で7.0〜15.0重量%、スズ成分をSnO2換算で3.0〜6.0重量%、リン成分をP25換算で0.5〜5.0重量%、任意の二価の金属成分を酸化物換算で15.0〜20.0重量%、任意の一価の金属成分を酸化物換算で2.0〜5.0重量%含有させると、入手コストの高いスズ成分を含む原料の使用量を低減すると共に釉薬層の良好な乳白度を維持し、かつ防汚性、光沢及び気泡発生量が更に改善された釉薬層を形成することができるものである。
【0183】
また、任意の二価の金属成分としてカルシウム成分と亜鉛成分とを含有し、酸化物換算での釉薬形成成分全量に対して、カルシウム成分をCaO換算で7.0〜15.0重量%、亜鉛成分をZnO換算で2.0〜7.0重量%含有させると、更に防汚性や光沢が優れ、また気泡発生量が更に低減された釉薬層を得ることができるものである。
【0184】
また、任意の二価の金属成分としてカルシウム成分と亜鉛成分とを含有し、酸化物換算での釉薬形成成分全量に対して、カルシウム成分をCaO換算で10.0〜15.0重量%、亜鉛成分をZnO換算で2.0〜7.0重量%含有させると、更に防汚性や光沢が優れ、また気泡発生量が更に低減された釉薬層を得ることができるものである。
【0185】
更に、任意の二価の金属成分としてマグネシウム成分を、酸化物換算での釉薬形成成分の全重量に対してMgO換算で0.1〜2.0重量%含有して成させると、防汚性、光沢及び気泡発生量を良好な状態に維持することができるものである。
【0186】
また、任意の一価の金属成分としてナトリウム成分とカリウム成分とを含有し、酸化物換算での釉薬形成成分全量に対して、ナトリウム成分をNa2O換算で0.1〜5.0重量%、カリウム成分をK2O換算で1.0〜5.0重量%含有させると、更に防汚性や光沢が優れた釉薬層を得ることができるものである。
【0187】
更に、任意の一価の金属成分としてリチウム成分を、酸化物換算での釉薬形成成分の全量に対してLiO2換算で0.1〜5.0重量%含有させると、釉薬層の貫入発生を防ぎ、防汚性、光沢及び気泡発生量を良好な状態に維持することができるものである。
【0188】
また、釉薬組成物を調製するためのリン成分を含む原料として、リン酸水素カルシウムを用いると、防汚性、光沢及び気泡発生量を良好な状態に維持することができるものである。
【0189】
また、釉薬組成物を調製するためのリン成分を含む原料として、骨灰を用いると、防汚性、光沢及び気泡発生量を良好な状態に維持することができるものである。
【0190】
また、釉薬組成物を調製するためのリン成分を含む原料として、水酸アパタイトを用いると、防汚性、光沢及び気泡発生量を良好な状態に維持することができるものである。
【0191】
また、釉薬組成物を調製するためのリン成分を含む原料として、メタリン酸カルシウムを用いると、防汚性、光沢及び気泡発生量を良好な状態に維持することができるものである。
【0192】
また、釉薬組成物を調製するためのリン成分を含む原料として、リン酸三カルシウムを用いると、防汚性、光沢及び気泡発生量を良好な状態に維持することができるものである。
【0193】
また、乳濁材原料として、チタン成分を酸化物換算での釉薬形成成分の全量に対して、TiO2換算で0.1〜8重量部含有させると、防汚性、光沢及び気泡発生量、乳白度を良好な状態に維持することができるものである。
【0194】
また、乳濁材原料として、フリットにしないセリウム成分を酸化物換算での釉薬形成成分の全量に対する配合割合で0.1〜8重量部含有させると、防汚性、光沢及び気泡発生量、乳白度を良好な状態に維持することができるものである。
【0195】
また、着色材として、顔料を釉薬形成成分の全量に対する配合割合で0.1〜8重量部含有させると、釉薬層を着色すると共に、防汚性、光沢及び気泡発生量、乳白度および着色を良好な状態に維持することができるものである。
【0196】
また、錫系顔料を含有させると、顔料によって着色された釉薬層を形成することができると共に、釉薬層の防汚性、光沢、気泡発生量及び乳白度を良好な状態に維持することができるものである。
【0197】
また、着色材として、コバルト化合物、マンガン化合物、ニッケル化合物、ウラニウム化合物、クロム化合物、鉄化合物、銅化合物、金化合物、アンチモン化合物、ヒ酸化合物、モリブデン化合物、タングステン化合物及びバナジウム化合物から選ばれる少なくとも一種のものを含有し、その含有量の総量を釉薬形成成分の全量に対する配合割合で0.1〜5重量部とすると、釉薬層を着色すると共に、防汚性、光沢及び気泡発生量、乳白度および着色を良好な状態に維持することができるものである。
【0198】
また、釉薬形成成分の一部又は全部として、釉薬形成成分を構成する原料を予めガラス化させた後に粉砕して得られるフリットを含有させると、このようにフリットを原料として用いても、防汚性、光沢、乳白度及び気泡発生量を良好な状態に維持することができるものである。
【0199】
また、釉薬組成物を調製するためのケイ素成分を含む原料として、粒径30μm以上のものを含まない微粉状のものを用いると、釉薬層の防汚性を更に向上することができるものである。
【0200】
また、釉薬組成物を調製するためのスズ成分を含む原料としてメディアン径が0.2〜4.0μmの微粉状のものを用いると、釉薬層の防汚性を更に向上すると共に良好な乳白度を維持することができるものである。
【0201】
また、釉薬組成物を調製するためのリン成分を含む原料としてメディアン径が1.0〜5.0μmの微粉状のものを用いると、釉薬層の防汚性を更に向上すると共に良好な乳白度を維持することができるものである。
【0202】
また、チタン成分とセリウム成分のうちの少なくとも一方を含む乳濁材原料を配合すると共に、この乳濁材原料としてメディアン径が0.1〜2.0μmの微粉状のものを用いると、釉薬層の防汚性を更に向上すると共に良好な乳白度を維持することができるものである。
【0203】
また、釉薬形成成分の全体のメディアン径を3〜5μmとするると、釉薬層の防汚性や光沢を更に向上することができるものである。
【0204】
また、釉薬形成成分の原料のうちケイ素成分を含む原料、スズ成分を含む原料及びリン成分を含む原料のうちの少なくとも一種の原料を予め所定粒度まで粉砕した後、残りの釉薬形成成分の原料を加えて、釉薬形成成分全体が所定粒度となるまで粉砕すると、釉薬層の防汚性を更に向上することができるものである。
【0205】
更に、釉薬形成成分の原料のうちケイ素成分を含む原料を予めメディアン径が5μm以下となるまで粉砕した後、残りの釉薬形成成分の原料を加えて、釉薬形成成分全体が所定粒度となるまで粉砕すると、更に防汚性が優れた釉薬層を得ることができるものである。
【0206】
また、釉薬形成成分の原料のうちスズ成分を含む原料を予めメディアン径が1.5〜2μmとなるまで粉砕した後、残りの釉薬形成成分の原料を加えて、釉薬形成成分全体が所定粒度となるまで粉砕すると、防汚性と共に乳白度も更に向上した釉薬層を得ることができるものである。
【0207】
また更に、釉薬形成成分の原料のうちリン成分を含む原料を予めメディアン径が3〜5μmとなるまで粉砕した後、残りの釉薬形成成分の原料を加えて、釉薬形成成分全体が所定粒度となるまで粉砕すると、防汚性と共に乳白度も更に向上した釉薬層を得ることができるものである。
【0208】
また、釉薬形成成分の原料のうちケイ素成分を含む原料、スズ成分を含む原料及びリン成分を含む原料を予めその全体のメディアン径が5μm以下となるまで粉砕した後、残りの釉薬形成成分の原料を加えて、釉薬形成成分全体が所定粒度となるまで粉砕すると、更に防汚性が優れた釉薬層を得ることができるものである
また、釉薬形成成分の原料のうちケイ素成分を含む原料を予めメディアン径が5μm以下となるまで粉砕した後、残りの釉薬形成成分の原料を加えて、釉薬形成成分全体のメディアン径が3〜5μmとなるまで粉砕すると、釉薬層の防汚性、光沢及び乳白度を更に向上することができるものである。
【0209】
また、釉薬形成成分の原料のうちスズ成分を含む原料を予めメディアン径が1.5〜2μmになるまで粉砕した後、残りの釉薬形成成分の原料を加えて、釉薬形成成分全体のメディアン径が3〜5μmとなるまで粉砕すると、釉薬層の防汚性、光沢及び乳白度を更に向上することができるものである。
【0210】
また、釉薬形成成分の原料のうちリン成分を含む原料を予めメディアン径が3〜5μmになるまで粉砕した後、残りの釉薬形成成分の原料を加えて、釉薬形成成分全体のメディアン径が3〜5μmとなるまで粉砕すると、釉薬層の防汚性、光沢及び乳白度を更に向上することができるものである。
【0211】
また、釉薬形成成分の原料のうちケイ素成分を含む原料及びスズ成分を含む原料及びリン成分を含む原料を予め全体のメディアン径が5μm以下となるまで粉砕した後、残りの釉薬形成成分の原料を加えて、釉薬形成成分全体のメディアン径が3〜5μmとなるまで粉砕すると、釉薬層の防汚性、光沢及び乳白度を更に向上することができるものである。
【0212】
また、釉薬形成成分の原料を、アルミナ製のボールからなるボールミルを用いて粉砕すると、粉砕時にボールミルが研削して発生する粒径の大きい粒子が混入することを抑制し、更に防汚性が優れた釉薬層を形成することができるものである。
【0213】
更に、釉薬形成成分の原料を、アルミナ製のボールと内張がアルミナ製である容器とからなるボールミルにて粉砕すると、粉砕時にボールミルが研削して発生する粒径の大きい粒子が混入することを更に確実に防止し、更に防汚性が優れた釉薬層を形成することができるものである。
【0214】
また、陶磁器の素地表面に上記のような釉薬組成物からなる層を形成し、この釉薬組成物の層を最高温度1150〜1250℃で8時間以上焼成することにより素地表面に釉薬層を形成すると、表面に汚れが付着しにくくかつ付着した汚れの除去性に優れ、また良好な乳白度を有すると共に気泡発生量が低減された、良好な釉薬層が形成された防汚陶磁器を得ることができるものである。
【0215】
また、このときZrSiO4結晶が存在せず、SnO2結晶とCa3(PO42結晶が存在する釉薬層を形成すると、SnO2結晶とCa3(PO4)2結晶による優れた乳白度を有すると共に表面が平滑で防汚性の高い釉薬層が形成された防汚陶磁器を得ることができるものである。
【0216】
また、ZrSiO4結晶が存在せず、CaSnSiO5結晶とCa3(PO42結晶が存在する釉薬層を形成すると、CaSnSiO5結晶とCa3(PO4)2による優れた乳白度を有すると共に表面が平滑で防汚性の高い釉薬層が形成された防汚陶磁器を得ることができるものである。
【0217】
また、ZrSiO4結晶が存在せず、CaSnSiO5結晶とSnO2結晶とCa3(PO42結晶が存在する釉薬層を形成すると、CaSnSiO5結晶とCa3(PO4)2による優れた乳白度を有すると共に表面が平滑で防汚性の高い釉薬層が形成された防汚陶磁器を得ることができるものである。
【0218】
また、釉薬層の厚みを0.2〜1.2mmに形成すると、釉薬層にて素地表面が十分に隠蔽されて良好な外観を有すると共に、釉薬層におけるクラックの発生を防止して、いわゆるクスリハゲの不良が発生することを防止することができるものである。

Claims (40)

  1. 焼成時に釉薬層を形成する釉薬形成成分を含有する釉薬組成物であって、ジルコニウム成分を含有しないと共に、焼成により酸化物換算で55.0〜67.0重量%のSiO2と、7.0〜15.0重量%のAl23と、0.5〜8.0重量%のSnO2と、0.5〜10.0重量%のP25と、10.0〜20.0重量%の任意の二価の金属酸化物と、2.0〜10.0重量%の任意の一価の金属酸化物とからなる焼結体を形成するように組成が決定された釉薬形成成分を含有して成ることを特徴とする釉薬組成物。
  2. 酸化物換算での釉薬形成成分全量に対して、ケイ素成分をSiO2換算で55.0〜67.0重量%、アルミニウム成分をAl23換算で7.0〜15.0重量%、スズ成分をSnO2換算で0.5〜8.0重量%、リン成分をP25換算で0.5〜10.0重量%、任意の二価の金属成分を酸化物換算で10.0〜20.0重量%、任意の一価の金属成分を酸化物換算で2.0〜10.0重量%含有して成ることを特徴とする請求項1に記載の釉薬組成物。
  3. 酸化物換算での釉薬形成成分全量に対して、ケイ素成分をSiO2換算で55.0〜67.0重量%、アルミニウム成分をAl23換算で7.0〜15.0重量%、スズ成分をSnO2換算で3.0〜6.0重量%、リン成分をP25換算で0.5〜5.0重量%、任意の二価の金属成分を酸化物換算で15.0〜20.0重量%、任意の一価の金属成分を酸化物換算で2.0〜5.0重量%含有して成ることを特徴とする請求項1又は2に記載の釉薬組成物。
  4. 任意の二価の金属成分としてカルシウム成分と亜鉛成分とを含有し、酸化物換算での釉薬形成成分全量に対して、カルシウム成分をCaO換算で7.0〜15.0重量%、亜鉛成分をZnO換算で2.0〜7.0重量%含有して成ることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の釉薬組成物。
  5. 任意の二価の金属成分としてカルシウム成分と亜鉛成分とを含有し、酸化物換算での釉薬形成成分全量に対して、カルシウム成分をCaO換算で10.0〜15.0重量%、亜鉛成分をZnO換算で2.0〜7.0重量%含有して成ることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の釉薬組成物。
  6. 任意の二価の金属成分としてマグネシウム成分を、酸化物換算での釉薬形成成分の全重量に対してMgO換算で0.1〜2.0重量%含有して成ることを特徴とする請求項4又は5に記載の釉薬組成物。
  7. 任意の一価の金属成分としてナトリウム成分とカリウム成分とを含有し、酸化物換算での釉薬形成成分全量に対して、ナトリウム成分をNa2O換算で0.1〜5.0重量%、カリウム成分をK2O換算で1.0〜5.0重量%含有して成ることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の釉薬組成物。
  8. 任意の一価の金属成分としてリチウム成分を、酸化物換算での釉薬形成成分の全量に対してLiO2換算で0.1〜5.0重量%含有して成ることを特徴とする請求項7に記載の釉薬組成物。
  9. 釉薬組成物を調製するためのリン成分を含む原料として、リン酸水素カルシウムを用いて成ることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の釉薬組成物。
  10. 釉薬組成物を調製するためのリン成分を含む原料として、骨灰を用いて成ることを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載の釉薬組成物。
  11. 釉薬組成物を調製するためのリン成分を含む原料として、水酸アパタイトを用いて成ることを特徴とする請求項1乃至10のいずれかに記載の釉薬組成物。
  12. 釉薬組成物を調製するためのリン成分を含む原料として、メタリン酸カルシウムを用いて成ることを特徴とする請求項1乃至11のいずれかに記載の釉薬組成物。
  13. 釉薬組成物を調製するためのリン成分を含む原料として、リン酸三カルシウムを用いて成ることを特徴とする請求項1乃至12のいずれかに記載の釉薬組成物。
  14. 乳濁材原料として、チタン成分を酸化物換算での釉薬形成成分の全量に対して、TiO2換算で0.1〜8重量%含有して成ることを特徴とする請求項1乃至13のいずれかに記載の釉薬組成物。
  15. 乳濁材原料として、フリットにしないセリウム成分を酸化物換算での釉薬形成成分の全量に対して、CeO2換算で0.1〜8重量%含有して成ることを特徴とする請求項1乃至14のいずれかに記載の釉薬組成物。
  16. 着色材として、顔料を釉薬形成成分の全量に対する配合割合で0.1〜8重量%含有して成ることを特徴とする請求項1乃至15のいずれかに記載の釉薬組成物。
  17. 錫系顔料を含有して成ることを特徴とする請求項1乃至16のいずれかに記載の釉薬組成物。
  18. 着色材として、コバルト化合物、マンガン化合物、ニッケル化合物、ウラニウム化合物、クロム化合物、鉄化合物、銅化合物、金化合物、アンチモン化合物、ヒ酸化合物、モリブデン化合物、タングステン化合物及びバナジウム化合物から選ばれる少なくとも一種のものを含有し、その含有量の総量を酸化物換算での釉薬形成成分の全量に対する配合割合で0.1〜5重量%として成ることを特徴とする請求項1乃至17のいずれかに記載の釉薬組成物。
  19. 釉薬形成成分の一部又は全部として、釉薬形成成分を構成する原料を予めガラス化させた後に粉砕して得られるフリットを含有して成ることを特徴とする請求項1乃至18のいずれかに記載の釉薬組成物。
  20. 釉薬組成物を調製するためのケイ素成分を含む原料として、粒径30μm以上のものを含まない微粉状のものを用いて成ることを特徴とする請求項1乃至19のいずれかに記載の釉薬組成物。
  21. 釉薬組成物を調製するためのスズ成分を含む原料としてメディアン径が0.2〜4.0μmの微粉状のものを用いて成ることを特徴とする請求項1乃至20のいずれかに記載の釉薬組成物。
  22. 釉薬組成物を調製するためのリン成分を含む原料としてメディアン径が1.0〜5.0μmの微粉状のものを用いて成ることを特徴とする請求項1乃至21のいずれかに記載の釉薬組成物。
  23. チタン成分とセリウム成分のうちの少なくとも一方を含む乳濁材原料を配合すると共に、この乳濁材原料としてメディアン径が0.1〜2.0μmの微粉状のものを用いて成ることを特徴とする請求項1乃至22のいずれかに記載の釉薬組成物。
  24. 釉薬形成成分の全体のメディアン径を3〜5μmとして成ることを特徴とする請求項1乃至23のいずれかに記載の釉薬組成物。
  25. 釉薬形成成分の原料のうちケイ素成分を含む原料、スズ成分を含む原料及びリン成分を含む原料のうちの少なくとも一種の原料を予め所定粒度まで粉砕した後、残りの釉薬形成成分の原料を加えて、釉薬形成成分全体が所定粒度となるまで粉砕して成ることを特徴とする請求項1乃至24のいずれかに記載の釉薬組成物。
  26. 釉薬形成成分の原料のうちケイ素成分を含む原料を予めメディアン径が5μm以下となるまで粉砕した後、残りの釉薬形成成分の原料を加えて、釉薬形成成分全体が所定粒度となるまで粉砕して成ることを特徴とする請求項25に記載の釉薬組成物。
  27. 釉薬形成成分の原料のうちスズ成分を含む原料を予めメディアン径が1.5〜2μmとなるまで粉砕した後、残りの釉薬形成成分の原料を加えて、釉薬形成成分全体が所定粒度となるまで粉砕して成ることを特徴とする請求項25に記載の釉薬組成物。
  28. 釉薬形成成分の原料のうちリン成分を含む原料を予めメディアン径が3〜5μmとなるまで粉砕した後、残りの釉薬形成成分の原料を加えて、釉薬形成成分全体が所定粒度となるまで粉砕して成ることを特徴とする請求項25に記載の釉薬組成物。
  29. 釉薬形成成分の原料のうちケイ素成分を含む原料、スズ成分を含む原料及びリン成分を含む原料を予めその全体のメディアン径が5μm以下となるまで粉砕した後、残りの釉薬形成成分の原料を加えて、釉薬形成成分全体が所定粒度となるまで粉砕して成ることを特徴とする請求項25に記載の釉薬組成物。
  30. 釉薬形成成分の原料のうちケイ素成分を含む原料を予めメディアン径が5μm以下となるまで粉砕した後、残りの釉薬形成成分の原料を加えて、釉薬形成成分全体のメディアン径が3〜5μmとなるまで粉砕して成ることを特徴とする請求項25に記載の釉薬組成物。
  31. 釉薬形成成分の原料のうちスズ成分を含む原料を予めメディアン径が1.5〜2μmになるまで粉砕した後、残りの釉薬形成成分の原料を加えて、釉薬形成成分全体のメディアン径が3〜5μmとなるまで粉砕して成ることを特徴とする請求項25に記載の釉薬組成物。
  32. 釉薬形成成分の原料のうちリン成分を含む原料を予めメディアン径が3〜5μmになるまで粉砕した後、残りの釉薬形成成分の原料を加えて、釉薬形成成分全体のメディアン径が3〜5μmとなるまで粉砕して成ることを特徴とする請求項25に記載の釉薬組成物。
  33. 釉薬形成成分の原料のうちケイ素成分を含む原料及びスズ成分を含む原料及びリン成分を含む原料を予め全体のメディアン径が5μm以下となるまで粉砕した後、残りの釉薬形成成分の原料を加えて、釉薬形成成分全体のメディアン径が3〜5μmとなるまで粉砕して成ることを特徴とする請求項25に記載の釉薬組成物。
  34. 釉薬形成成分の原料を、アルミナ製のボールからなるボールミルを用いて粉砕して成ることを特徴とする請求項1乃至33のいずれかに記載の釉薬組成物。
  35. 釉薬形成成分の原料を、アルミナ製のボールと内張がアルミナ製である容器とからなるボールミルにて粉砕して成ることを特徴とする請求項1乃至34のいずれかに記載の釉薬組成物。
  36. 陶磁器の素地表面に請求項1乃至35のいずれかに記載の釉薬組成物からなる層を形成し、この釉薬組成物の層を最高温度1150〜1250℃で8時間以上焼成することにより素地表面に釉薬層を形成して成ることを特徴とする防汚陶磁器。
  37. ZrSiO4結晶が存在せず、SnO2結晶とCa3(PO42結晶が存在する釉薬層を形成して成ることを特徴とする請求項36に記載の防汚陶磁器。
  38. ZrSiO4結晶が存在せず、CaSnSiO5結晶とCa3(PO42結晶が存在する釉薬層を形成して成ることを特徴とする請求項36に記載の防汚陶磁器。
  39. ZrSiO4結晶が存在せず、CaSnSiO5結晶とSnO2結晶とCa3(PO42結晶が存在する釉薬層を形成して成ることを特徴とする請求項36に記載の防汚陶磁器。
  40. 釉薬層の厚みを0.2〜1.2mmに形成して成ることを特徴とする請求項36乃至39のいずれかに記載の防汚陶磁器。
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