JP3820665B2 - インクジェットヘッドの製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電圧印加により変形する圧電アクチュエータの製造方法に関する。また、圧電アクチュエータによりインクを押圧してインク滴を吐出させ、記録紙等の記録媒体に付着させて画像を記録するインクジェットヘッドに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、電圧印加時の圧電アクチュエータの変形によってインク室に収容されたインクを加圧し、インク室に連通するノズルからインク滴を吐出するタイプのインクジェットヘッドが知られている。この種のインクジェットヘッドでは、通常、複数のインク室が微小ピッチで配列されており、これら各インク室にそれぞれ対応させて圧電アクチュエータを設ける必要がある。そのために、これまでは支持基板上に接着固定した圧電プレートにダイシングソーやワイヤーソー等で機械加工を施して複数の微小片に分割することにより、複数の圧電アクチュエータを形成するのが一般的であった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、圧電プレートを機械加工で分割する方法では、圧電アクチュエータを一本づつ切り出すため加工に時間がかかり、量産性が低かった。また、切削途中で圧電アクチュエータに折れや欠けが生じやすく、歩止まりが悪かったため、生産コストが高くついていた。さらには、ダイシングソー等では機械加工面の制約から圧電アクチュエータを約100μmオーダの配列ピッチで形成するのが限度であり、それに応じてインク室およびノズルもそれ以上に高密度に配列することができないという問題があった。
【0004】
そこで、本発明の目的は、上記問題点に鑑みて、製造コストを低減可能で量産性に優れ、精度よく高密度に圧電アクチュエータを配列可能であり、かつ、プリント速度の高速化に適したインクジェットヘッドの製造方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明のインクジェットヘッドの製造方法は、基板状に積層したフォトレジスト層に型孔を設け、この型孔に圧電材料のスラリを充填し、このスラリが充填されたフォトレジスト層の表面に金属層を形成し、この金属層上であって上記型孔に対向する位置にフォトレジストからなる凸状型を設け、この凸状型の周囲の金属層上に非圧電材料のスラリを積層して上記凸状型を覆い、これらを一体に焼成して上記凸状型および上記フォトレジスト層を焼き飛ばすことにより、上記凸状型に対応するインク室用の空間を有する非圧電部材と、上記基板と上記金属層との間に固定された圧電部材とを形成し、この圧電部材を分極処理して圧電アクチュエータとするものである。
【0007】
【発明の効果】
本発明のインクジェットヘッドの製造方法では、フォトレジスト層の型孔に圧電材料のスラリを充填して焼成するだけで基板上に圧電アクチュエータを同時に形成することができる。この場合、フォトレジスト層は焼成により焼き飛んでなくなるため、圧電アクチュエータに折れや欠けが生じるおそれもない。また、焼成工程では一度に大量の部材の処理が可能である。したがって、本発明によれば、機械加工の場合に比べて歩留まりおよび量産性が向上し、製造コストを安くできる。
【0008】
また、フォトレジスト層の型孔は公知のフォトリソグラフィにより形成され、圧電アクチュエータを複数配列する際にも、そのピッチは露光の際のマスクパターンのピッチによって決めることができる。したがって、従来の機械加工による場合に比べて圧電アクチュエータを精度よく、より高密度に配列することが可能になる。
【0009】
さらに、基板、アクチュエータ、金属層、およびインク室を有する非圧電材料からなるインクジェットヘッドが一度の焼成工程により一体形成される。したがって、従来のように個々に加工された複数の部材を接着剤で固定しながらヘッドを組み立てる場合に比べて製造および組立工程を簡略化することができ、より一層のコストダウンを図れる。
さらにまた、上述したように、圧電アクチュエータを精度よく高密度に配列できるので、高密度多ノズル化することでプリント速度を上げることができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1から図3は、本発明の製造方法を適用したインクジェットヘッド10を示す。このヘッド10は、中央線30を挟んで対向する大径インク滴吐出用ヘッド部(以下、「大径ヘッド部」という)12と小径インク滴吐出用ヘッド部(以下、「小径ヘッド部「という)14とからなり、天板16、隔壁20、圧電アクチュエータ22および基板18により一体に構成されている。
【0011】
天板16は、セラミックス、金属、ガラス、合成樹脂等からなり、一体成型、電鋳、フォトリソグラフィ等の方法で天板16の形成と同時に、あるいは天板16の形成後の微細加工によりその裏面に複数の凹部が形成されている。これら凹部が隔壁20によって覆われることにより、大径ヘッド部12と小径ヘッド部14のそれぞれに、インクを収容するインク室24、補給用インクを収容するインク供給室26、およびインク室24とインク供給室26とを接続するインクインレット28が形成されている。なお、本実施形態のインクジェットヘッドは、大径ノズルと小径ノズルとを備えたものであるが、これに限らず、ノズル径が全て同一のインクジェットヘッドであっても構わない。
【0012】
インク室24は各ヘッド部12,14の対向方向に長溝状に延びており、中央線30に沿って等ピッチで形成されている。インク供給室26はインク室24を挟んで中央線30の反対側に形成されており、図示しないインクタンクにそれぞれ接続されている。また、天板16にはインク室24の中央線30側の端部に連通するノズル32,34が形成されている。各ノズル32,34は、図2に示すように段付きの断面形状を有しているが、吐出口径は大径ヘッド部12のノズル32の方が小径ヘッド部14のノズル34よりも大きく形成してある。
【0013】
上記隔壁20とセラミック、金属、シリコン、ガラス等からなる基板18とに挟まれて固定された圧電アクチュエータ22は周知の圧電材料からなり、インク室24よりも少し中央線30寄りの位置からインク供給室26にかけてインク室24に沿って延びている。圧電アクチュエータ22は、インク室24に対向する分極処理された活性部36と、この活性部36の両側につながる未分極状態の非活性部38,40とを有している。これにより、圧電アクチュエータ22の上面と下面に設けた共通電極および個別電極(いずれも図示せず)間に電圧を印加すると、活性部36だけが変形するようになっている。なお、圧電アクチュエータ22は単層のものに限らず、共通電極と個別電極とを交互に挟むように薄膜圧電シートを積層してなる積層型圧電アクチュエータを用いてもよい。
【0014】
次に、図4,5を参照して圧電アクチュエータ22の製造方法を具体的な材料や条件を例示しながら説明する。なお、以下の説明において、数値や材料等の条件は一つの例であってこれらに限定されるものではなく、所望により任意に変更可能である。まず、図4(a)に示すように、表面を2000番研磨した厚さ3mmのアルミナ製の基板18上に、ニッケルペーストを5μmの厚みにパターン印刷したのちメタライズ焼き付けして個別電極42を形成しておく。この個別電極42は上記圧電アクチュエータ22の活性部36に相当する長さとする。そして、この基板18上にフォトレジスト層4を積層する。フォトレジスト層4は、プロビミド7020(富士ハントエレクトロニクステクノロジ社製)を100μmつ2度塗りして200μmの厚みに形成する。その後、100℃で3分間ソフトベークした。
【0015】
ついで、下面に圧電アクチュエータ22の平面形状に対応するマスクパターン46をクロム層で形成した石英ガラス板48を介して、上方よりG線の紫外線を400mJ/cm2で4秒間照射し、上記フォトレジスト層44にパターン露光する。このとき、未露光部、すなわちマスクパターン46が個別電極42上にくるように位置合わせしておく。
【0016】
続いて、図4(c)に示すように、露光されたフォトレジスト層44を現像液QZ3501(富士ハントエレクトロニクステクノロジ社製)で現像して未露光部を除去する。これにより、フォトレジスト層44には圧電アクチュエータ22に対応する形状の複数の型孔50が個別電極42上に形成される。そして、リンス液QZ3512(同社製)で洗浄して乾燥させたのち、350℃で1時間キュアリングした。
【0017】
次に、図5(a)に示すように、例えばジルコン酸鉛とチタン酸鉛のアルコキシドにより調製したパウダを焼成後の比率がPb1(Zr0.52 ,Ti0.48)Oとなるように当量分散したスラリをフォトレジスト層44の型孔50に流し込み、上方より板材で加圧する。これにより、各型孔50に圧電材料のスラリが充填される。そして、図5(b)に示すように、フォトレジスト層44上にあふれたスラリ52をブレード53で除去し、型孔50内だけにスラリ52が残るように整形したのち、140℃で30分間乾燥させた。その後、フォトレジスト層44およびスラリ52の表面に共通電極となる厚さ1μmのニッケルめっき層を形成する。
【0018】
ニッケルめっき層形成後、それらを1200℃で焼成すると、フォトレジスト層44とその表面のニッケルめっき層は焼き飛んでなくなる。これにより、図5(c)に示すように、基板18上には上下面に共通電極54および個別電極42を有する圧電部材56だけが残る。なお、ニッケルめっき層の厚みが2μm以上あるとフォトレジスト層44と共に熱分解せずに残る可能性があるため、その厚みは1μm程度とするのが好ましい。なお、図5(b)において、フォトレジスト層を硬化温度でキュアリングした後、電極42上のみの領域に電極材ペーストをパターン塗布し、焼結することにより、圧電部材56上に2μm以上の導電層を形成することもできる。
【0019】
そして、焼成された圧電部材56を徐冷したのち、150℃に加熱した状態で上下の共通電極54と個別電極42との間に例えば直流電圧1.5kV/mmを10分間印加して活性部36となる領域を分極処理する。これにより、圧電アクチュエータ22の製造が完了する。なお、以上の工程を繰り返せば積層型の圧電アクチュエータを製造することもできる。
【0020】
このように、上記圧電アクチュエータの製造方法では、フォトレジスト層44の型孔50に圧電材料スラリ52を充填して焼成するだけで基板18上に複数の圧電アクチュエータ22を同時に形成することができる。この場合、フォトレジスト層44は焼成により焼き飛んでなくなるため、圧電アクチュエータ22に折れや欠けが生じることもない。また、焼成工程では一度に大量の処理が可能である。したがって、本発明によれば、圧電アクチュエータを機械加工で形成する場合に比べて歩止まりと量産性が格段に向上し、製造コストを安くできる。
【0021】
また、フォトレジスト層44の型孔50は公知のフォトリソグラフィにより形成され、圧電アクチュエータ22の配列ピッチは露光の際のマスクパターン46のピッチによって決まる。したがって、この方法によれば、従来の機械加工による場合に比べて寸法精度の高い圧電アクチュエータ22をより高密度に配列することが可能になり、それに対応してインク室24およびノズル32,34も高密度に配置できるため、高密度多ノズル化することによりプリント速度を上げることができる。
【0022】
上記インクジェットヘッド10では、インクタンクからインク供給室26に供給されたインクがインクインレット28を介してインク室24に収容される。この状態で、画像信号に応じてドライバ回路(図示せず)から個別電極42および共通電極54間に駆動電圧が印加されると、圧電アクチュエータ22の活性部36が厚み方向に瞬時に膨張変形し、隔壁22を介してインク室24内のインクを加圧する。これにより、ノズル32,34からそれぞれインク滴が吐出されるが、その吐出口径の違いからノズル32からはノズル34よりも比較的大きなインク滴が吐出される。これらインク滴が記録媒体に付着して大,小ドットを形成し、これらドットの集合により階調画像が記録される。電圧印加が解除されると上記活性部36は元の状態に復帰し、毛管現象によりインク供給室26からインク室24にインクが補給され、次のインク吐出に備える。
【0023】
上記インクジェットヘッド10において、天板16および隔壁20は基板18上に形成された圧電アクチュエータ22に接着して組み立ててもよいが、以下に説明するインクジェットヘッドの製造方法により一体形成してもよい。
【0024】
基板12上にフォトレジスト層44を積層し、その型孔50に圧電材料スラリ52を充填し、整形、乾燥するまでは上述した圧電アクチュエータ22の製造方法と同じである。ついで、図6(a)に示すように、フォトレジスト層44および圧電材料スラリ52の表面にニッケルめっき層(金属層)60を約10μmの厚みに形成する。このニッケルめっき層60は上記隔壁20および上記共通電極54を兼ねるものである。
【0025】
続いて、図6(b)に示すように、ニッケルめっき層60上であって型孔50に対向する位置にフォトレジストからなる凸状型62をそれぞれ設ける。この凸状型62はフォトレジスト層の積層、パターン露光、現像の工程を3回繰り返してパターン形成された3層構造を有している。第1層64はインク室24、インク供給室26およびインクインレット28となる空間に対応する形状に形成され、第2,第3層66はノズル32,34の段付き孔形状に対応するように形成されている。
【0026】
ついで、各凸状型62の周囲のニッケルめっき層60上に酸化ジルコニウムからなる非圧電材料のスラリを凸状型62の先端面の高さまで積層したのち、これらを1200℃で一体に焼成するとフォトレジスト層44および凸状型62が焼き飛んでなくなる。これにより、図6(c)に示すように、ニッケルめっき層60上の非圧電材料が焼成されて、インク室24等となる空間70およびノズル32,34を有する天板(非圧電部材)16が形成される。また、基板18とニッケルめっき層60との間には焼成された圧電部材56だけが残り、これに分極処理を施して活性部36を設けることにより圧電アクチュエータ22となる。これにより、インクジェットヘッド10の製造が完了する。
【0027】
このインクジェットヘッドの製造方法によれば、基板18、圧電アクチュエータ22、隔壁20、およびインク室24等を有する天板16からなるインクジェットヘッド10が一度の焼成により一体形成される。したがって、この方法によれば上述した圧電アクチュエータの製造方法による効果に加えて、個々に加工された複数の部材を接着剤で固定しながらヘッドを組み立てる従来の方法より製造および組立工程を簡略化することができ、製造コストをより一層安くできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 インクジェットヘッドの部分平面図である。
【図2】 図1におけるII−II線断面図である。
【図3】 図2におけるIII−III線断面図である。
【図4】 圧電アクチュエータの製造過程を示す図である。
【図5】 図4と同じく圧電アクチュエータの製造過程を示す図である。
【図6】 インクジェットヘッドの製造過程を示す図である。
【符号の説明】
10…インクジェットヘッド、16…天板(非圧電部材)、18…基板、20…隔壁(金属層)、22…圧電アクチュエータ、24…インク室、44…フォトレジスト層、50…型孔、52…圧電材料のスラリ、56…圧電部材、62…凸状型。

Claims (1)

  1. 基板状に積層したフォトレジスト層に型孔を設け、この型孔に圧電材料のスラリを充填し、このスラリが充填されたフォトレジスト層の表面に金属層を形成し、この金属層上であって上記型孔に対向する位置にフォトレジストからなる凸状型を設け、この凸状型の周囲の金属層上に非圧電材料のスラリを積層して上記凸状型を覆い、これらを一体に焼成して上記凸状型および上記フォトレジスト層を焼き飛ばすことにより、上記凸状型に対応するインク室用の空間を有する非圧電部材と、上記基板と上記金属層との間に固定された圧電部材とを形成し、この圧電部材を分極処理して圧電アクチュエータとするインクジェットヘッドの製造方法。
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