JP3575728B2 - インクジェットプリンタヘッド及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、圧電部材を用いたオンデマンド方式のインクジェットプリンタヘッド及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来のインクジェットプリンタ等に利用されているオンデマンド方式の印字ヘッドとして、電気−熱変換素子である発熱素子を利用したバブルジェット方式の印字ヘッドが普及している。この方式の印字ヘッドを用いたインクジェットプリンタにおける印字方式は、シリアル方式であり、これはパーソナル向けに低価格で提供できることからパーソナル市場に受け入れられてそのプリンタ市場が拡大している。しかしながら、この形式の印字ヘッドは、印字速度がシリアル方式のために遅く、所定の時間内に所定の印刷を行なう必要があるOA機器としては難点がある。さらに、インク吐出が膜沸騰現象を利用しているために、1素子当りの印加電力を極めて多く必要とするため、多数の印字素子を備える必要があるラインヘッド方式には不向きである。
【0003】
さらに、ピエゾ素子を利用した他の方式としてインク供給部に接続されて並設された多数のインク室の先端に、インク吐出口を有するノズル板を固定し、インク室の圧力を高めてインク吐出口からインク滴を飛翔させるようにしたインクジェットプリンタヘッドがある。このようなインクジェットプリンタヘッドにおいて、インク室のインク圧を高める方法としては、特開昭63−247051号公報に開示された技術がある。すなわち、インク室の両側に配列された側壁の少なくとも一部を圧電部材により形成し、その側壁の側面に電極を形成し、この電極に電圧を印加することにより側壁を変形させ、この時の印加電圧の極性により側壁の変形方向を変えることにより、インク室の容積を拡張してインク供給部からインクを吸引したり、インク室の容積を縮小させて内部のインクをインク吐出口から吐出させるものである。このような形状のインクジェットプリンタヘッドを製造する方法は、本出願人により特開平5−269994号公報に開示されている。この製造方法により製造されたインクジェットプリンタヘッドの構造を図32乃至図35に基づいてその製造工程順に従って説明する。
【0004】
まず、図33(a)に示すように、底板1と下部基板2と圧電部材よりなる上部基板3とからなる三層構造の基板4を形成する。前記底板1は、合成が高く熱変形の少ないセラミックスやガラスを材料としており、前記下部基板2は、エポキシ樹脂を主成分とする接着剤を前記底板1の上に所定の厚さに塗布した後に硬化させて形成する。そして、前記下部基板2の形成に際しては、接着剤を硬化させた後に研削加工を施すことによりその厚さの調整を行う。
【0005】
次に、前記基板4に対し、前記上部基板3の表面から前記下部基板2の内部に達する複数の溝5を所定の間隔をもって平行に切削加工する。この溝5の切削加工により前記溝5の両側には側壁6が形成され、これらの側壁6は、上部基板3の部分に形成された上部側壁6aと下部基板2の部分に形成された下部側壁6bとよりなる。
【0006】
次に、前記基板4に対し、無電解メッキにより電極7と配線パターン8とを形成する。この無電解メッキの前処理として、キャタライジング・アクセラレーティング処理を行う。キャタライジング処理は、塩化パラジウム(PdCl2 )、塩化第一錫(SnCl2 )、濃塩酸(HCl)等からなるキャタリスト液に基板4を浸漬させ、溝5の内面や上部基板3の表面にPd、Snの錯化物を吸着させる目的で行う。アクセレーティング処理は、キャタライズ処理で吸着された錯化物を触媒化させる目的で行うもので、錯化物は触媒核として金属化されたPdとなる。
【0007】
次いで、図33(b)に示すように、上部基板3の表面にドライフィルム9を貼り付ける。その後に、図34(a)に示すレジスト用マスク10をドライフィルム9の上に載せて露光し、次いで、現像を行う。これにより、図34(b)に示すように、圧電部材の表面における電極7を形成する溝内面と、配線パターン8を形成する配線パターン8部分以外の部分を覆ったパターンレジスト膜11を形成する。このパターンレジスト膜11の形成により、金属化されたPdが溝5の内面と配線パターン8の部分とに露出する。
【0008】
次に、パターンレジスト膜11を形成した基板4をメッキ液に浸漬させて無電解メッキを行い、所定の膜厚をもってメッキを析出させる。メッキ液は、ニッケルを主成分とする。図35(a)に示すように、溝内面に電極7が形成され、配線パターン形成部には配線パターン8が形成される。そして、図35(b)に示すように、パターンレジスト膜11を剥離することにより無電解メッキが終了する。
【0009】
このようにして電極7が形成された基板4に対し、図32に示すように、溝5の上部を覆う状態で天板12を接着する。ついで、ノズル板13を接着するが、基板4と天板12との先端の端面を平坦にするために、切断加工等の機械加工を行う。前記ノズル板13は、天板12で溝5を覆うことにより形成されたインク室14に連通する複数のインク吐出口15を備えたものであり、また、前記天板12には、全ての前記インク室14に連通するインク供給管16が設けられ、これにより、インクジェットプリンタヘッドが完成する。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
ピエゾ素子、すなわち、圧電部材を用いて印字ヘッドを形成した前述の方式のものにおいては、圧電部材に多数の溝をダイサー等の機械加工で各ヘッド毎に切断加工しなければならず、その加工工数が高くてコスト高になる欠点を有している。また、ラインヘッドを構成しようとすれば、さらに多数の溝加工が必要であり、高価なものとなってしまう。しかも、圧電部材により共通液室を形成したり、配線パターンを形成する領域までも圧電部材を用いていることから必要とする圧電部材の容積が大きく、高価な圧電部材の使用量が多いために材料費の面からもコスト高になってしまうものである。
【0011】
本発明はこのような点に鑑みなされたもので、溝を加工するための機械加工を簡略化することができ、しかも、圧電部材の使用量が少なくて良いインクジェットプリンタヘッドを提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の発明は、平板状で矩形状の圧電部材の一面に前後に貫通する一定深さの多数の溝を平行に形成した圧電体アクチュエータを形成し、この圧電体アクチュエータを前記溝に連通して共通液室を形成する凹部を有するヘッド基板に固定し、前記凹部を含む前記ヘッド基板の一面と前記圧電体アクチュエータの溝内とにそれぞれが互いに分離されて平行に配列された電極層による導電部を形成し、前記圧電体アクチュエータと前記ヘッド基板との一面に天板を固定して前記共通液室とインク室とを形成するとともに前記圧電体アクチュエータと前記ヘッド基板との端面に前記インク室に連通するインク吐出口が形成されたノズル板を固定したものである。従って、圧電部材としては、溝によるインク室を形成するための体積だけあれば良いため、必要とする材料の量がきわめて少なくて良く、また、圧電体アクチュエータの形成に当っては、面積の大きな圧電部材に溝加工を行なってからこの溝と直交する方向に圧電部材を切断して多数の圧電体アクチュエータを形成することができ、これにより、一度の溝加工で多数の圧電体アクチュエータを形成することができるため、1個当りの溝加工の工数を低くすることができる。
【0013】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、フォトエッチングプロセスにより導電部を溝毎に分離した後に圧電体アクチュエータの共通液室側の端面部に被着された電極層をレーザビームで切断分離するようにしたものである。従って、共通液室が安価な材料によるヘッド基板により形成することができるが、この時に発生する電極層のつながりと云う弊害をレーザビームの利用により多数の溝毎に分離して簡単に解決することができる。
【0014】
請求項3記載の発明は、平板状で矩形状の圧電部材の一面に前後に貫通する一定深さの多数の溝を平行に形成した圧電体アクチュエータと、この圧電体アクチュエータが取り付けられる取付段部と前記溝に連通して共通液室を形成する凹部とを有するヘッド基板と、前記凹部を含む前記ヘッド基板の一面と前記圧電体アクチュエータの溝内とにそれぞれが互いに分離されて平行に配列された電極層による導電部と、前記圧電体アクチュエータと前記ヘッド基板との一面に固定されて前記共通液室とインク室とを形成する天板と、前記インク室に連通するインク吐出口が形成されて前記圧電体アクチュエータと前記ヘッド基板との端面に固定されたノズル板とよりなるものである。従って、高価な材料の圧電部材はインク室を形成する部分だけで良く、ピエゾ効果を必要としない共通液室の形成や、電極層による導電部の形成は、安価な材料によるヘッド基板により行なうことができる。
【0015】
請求項4記載の発明は、平板状で矩形状の圧電部材の一面に前後に貫通する一定深さの多数の溝を平行に形成した圧電体アクチュエータを形成し、前記溝を等間隔に配列した状態で複数個の前記圧電体アクチュエータを支持基板上に連設固定して長さの大きい圧電体組立を形成し、この圧電体組立を前記溝に連通して共通液室を形成する凹部を有するヘッド基板に固定し、前記凹部を含む前記ヘッド基板の一面と前記圧電体組立の溝内とにそれぞれが互いに分離されて平行に配列された電極層による導電部を形成し、前記圧電体組立と前記ヘッド基板との一面に天板を固定して前記共通液室とインク室とを形成するとともに前記圧電体組立と前記ヘッド基板との端面に前記インク室に連通するインク吐出口が形成されたノズル板を固定したものである。従って、きわめて長い印字ヘッドを小さな圧電部材を用いて形成することができ、必要とする数の印字素子を備えたラインヘッド方式の印字ヘッドを安価に製造することができる。
【0016】
請求項5記載の発明は、平板状で矩形状の圧電部材の一面に前後に貫通する一定深さの多数の溝を平行に形成した複数個の圧電体アクチュエータを支持基板上に連設固定して形成した長さの大きい圧電体組立と、この圧電体組立が取り付けられる取付段部と前記溝に連通して共通液室を形成する凹部を有するたヘッド基板と、前記凹部を含む前記ヘッド基板の一面と前記圧電体組立の溝内とにそれぞれが互いに分離されて平行に配列された電極層による導電部と、前記圧電体組立と前記ヘッド基板との一面に固定されて前記共通液室とインク室とを形成する天板と、前記インク室に連通するインク吐出口が形成されて前記圧電体組立と前記ヘッド基板との端面に固定されたノズル板とよりなるものである。従って、小さな圧電部材を複数個用いて形成された長い印字ヘッドにより、ラインヘッド方式で消費電力が少ない状態で高速な印字を行なうことができるものである。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明の第一の実施の形態を図1乃至図24に基づいて説明する。まず、図1に示すものは、圧電部材17により形成された圧電体アクチュエータ18がヘッド基板19に接着により固定され、かつ、導電部20が形成されている状態である。前記圧電体アクチュエータ18は互いに平行に形成された溝21を有しており、この溝21の内部には前記導電部20の一部となる電極22が形成されている。また、前記ヘッド基板19には、前記圧電体アクチュエータ18が取り付けられる取付段部23と共通液室24を形成するための凹部25とが形成されている。この凹部25は、ヘッド基板19を平板形状として段部を形成する別部材を接着して前記圧電体アクチュエータ18との間で形成するようにしてもよい。さらに、前記ヘッド基板19に前記圧電体アクチュエータ18が固定された状態においては、前記圧電体アクチュエータ18の上面26と前記ヘッド基板19の上面27とは同一平面内に位置するように両者の寸法が設定されている。そして、前記導電部20は前記電極22から連続させて前記共通液室24内と前記上面27とに連続しており、かつ、それぞれの溝21毎に独立して形成されており、前記ヘッド基板19の上面27に位置する前記導電部20は、外部回路に電気的接続をするための接続部28とされている。また、前記上面27には、外部回路を構成する駆動IC29が固定されており、この駆動IC29と前記接続部28との間は、ボンディングワイヤ30により電気的に接続されている。前記圧電体アクチュエータ18と前記ヘッド基板19との上面26,27には、前記凹部25と前記溝21とを覆って前記共通液室24とインク室31とを形成する天板32が固定され、前記圧電体アクチュエータ18と前記ヘッド基板19との端面には、前記インク室31にノズルとして作用するインク吐出口33を開口させたノズル板34が接着固定され、これにより、インクジェットプリンタヘッド35が構成されている。
【0018】
このようなインクジェットプリンタヘッド35の製造工程及びその完成品を図4乃至図14に基づいて説明する。まず、図4に示すように、圧電部材17は、平板状で矩形状に形成される。例えば、厚さが1.5mm で一辺が50mmの正方形状の圧電部材17が形成される。その材質としては、PZT材であり、PbTiO3−PbZrO3系の焼結体からなるセラミック材で熱膨張係数が2〜4×10 ̄6/℃のものである。
【0019】
ついで、図5に示すように、前記圧電部材17の一面に前後に貫通する所定深さの溝21が等間隔で平行にダイサー等の加工機により形成される。例えば、150dpiのインクジェットプリンタヘッド35を得ようとすれば、前記溝21のピッチは170μmであり、溝幅が90μmであり、深さが300μmである。
【0020】
このように溝21が形成された圧電部材17は、図6に示すように、溝21に直交する方向に所定の幅寸法をもって切断加工されて分割される。例えば、8mmの幅の場合には、1枚の圧電部材17から6個の圧電体アクチュエータ18が形成される。従って、1回の溝加工により6個の圧電体アクチュエータ18が形成されるため、圧電体アクチュエータ18の1個当りの溝加工に要する加工工数の比率はきわめて小さいものとなる。これは圧電体アクチュエータ18の幅が小さくなれば一層効果的であり、また、量産技術の向上に従って圧電部材17のサイズを大型化することができれば、さらに、量産効果が増大する。
【0021】
次に、図7に示すように、ヘッド基板19に圧電体アクチュエータ18が接着固定される。すなわち、前記ヘッド基板19は、パイレックスガラスにより形成される。例えば、硬質ガラスである低膨張ホウケイ酸ガラス(コーニング社、7740)が用いられる。これは主成分が、SiO281%、B2O313%で熱膨張係数は、3.2×10 ̄6/℃で、略PZT材と同等である。このようなパイレックスガラスが選択される理由は、その材料が比較的安価であること、PZT材による圧電部材17と熱膨張係数が略等しいこと、加工し易いこと等である。また、インクジェットプリンタヘッド35として完成させた後には、ヘッド基板19が透明であるということは、インクの充填状態を外部から観察し易く、製造工程での欠陥検査も容易にできると云う効果を有する。なお、PZT材の熱膨張係数は、製造メーカによる組成により若干異なるが、略2〜4×10 ̄6/℃である。そして、前記ヘッド基板19には、前記圧電体アクチュエータ18が取り付けられる取付段部23と共通液室24を形成するための凹部25とが形成されている。
【0022】
前記ヘッド基板19に前記圧電体アクチュエータ18を固定した状態は、図8に示すものであり、圧電体アクチュエータ18の上面26とヘッド基板19の上面27とは同一平面内に位置し、かつ、溝21の底面と凹部25の底面とが略同一面に位置するように各部の寸法が定められている。
【0023】
このようにしてヘッド基板19に圧電体アクチュエータ18を接着固定した後に、図9に示すように、その一面に無電解メッキ法やスパッタリング等の方法で所定厚さの電極層36を形成する。例えば、無電解メッキ法の場合には、ニッケルが選択され、スパッタリング法の場合には、アルミニュウムが選択される。そして、その厚さは、1〜4μmである。
【0024】
ついで、前述の電極層36を前述の電極22及び接続部28としてパターニングするために、図10に示すように、通常知られているフォトエッチング工程が実施される。すなわち、フォトレジスト剤37が塗布されるが、圧電体アクチュエータ18には溝21が存するため、通常のスピンコートやロールコータ法を用いると溝21部分や凹部25部分に均一に塗布することが困難であるため、図11に示すように、容器38内のレジスト液39に浸漬させて引き上げるディップ引上げ法を採用する。このとき、図示のようにヘッド基板19を縦にして引き上げることによりフォトレジスト剤37がパターン形成面に均一に塗布される。但し、フォトレジスト剤37の粘度や引き上げ速度にも依存するが、溝21部分は、80μm程度の微小な幅寸法であるため、フォトレジスト剤37の表面張力によって溝21の内部に残留してしまうが、この溝21部分の電極層36は除去しないので、全く問題はない。
【0025】
このようにフォトレジスト剤37を塗布後に、所定の条件でベーキングを行ない、その後に、図12に示すように、所定のパターン形状を有する露光マスク40を用いて密着露光を行なう。この場合、ヘッド基板19に凹部25が存するために、光学的段差があるが、通常のインク滴を吐出する溝深さは、300〜400μm程度であるので、通常の光学系と光源とを有する露光装置に用いれば、この程度の段差があっても5〜10μm程度の解像度を有するので、例えば、150〜300dpi程度のノズルピッチに対応するリード電極パターンの形成には何ら問題はない。
【0026】
所定の条件で露光後、現像、エッチング及びレジスト剥離工程を経て図13に示すように所定の電極パターンが形成される。すなわち、互いに連通した電極22及び接続部28による導電部20が溝21毎にそれぞれ独立分離されて形成される。
【0027】
ついで、図14に示すように、圧電体アクチュエータ18とヘッド基板19との上面26,27には、凹部25と溝21とを覆って共通液室24とインク室31とを形成する天板32が固定され、圧電体アクチュエータ18とヘッド基板19との端面には、インク室31にノズルとして作用するインク吐出口33を開口させたノズル板34が接着固定され、これにより、インクジェットプリンタヘッド35が構成される。なお、天板32には共通液室24に連通するインク供給管41とインク排出管42とが設けられている。また、特に図示しないが、共通液室24の両側端部には、閉塞部材が固定されるか、最初から仕切壁が存するように凹部25が形成されているものである。
【0028】
つぎに、前述のインクジェットプリンタヘッド35の製造方法における接着時の問題点と電極形成時の問題点とを解決した手段を図15〜図17及び図18〜図20に基づいて説明する。まず、図15〜図17に示すものは、接着時の問題点及びその問題点を解決した手段を示すものである。図15は、ヘッド基板19に圧電体アクチュエータ18を接着した場合の部分を示すものであるが、接着剤43の量が多い場合には、ヘッド基板19と圧電体アクチュエータ18との接合面に図15及び図16に示すように、接着剤43の盛り上がり部44が形成されてしまう。この盛り上がり部44の存在は、インクの流体抵抗を増大させるものであり、しかも、各部位において盛り上がり部44の状態が相違するため、各インク吐出口15からのインク吐出量が変動すると云う問題点を有する。この問題を解決するために、図17に示すように、ヘッド基板19の取付段部23のコーナ部にテーパを形成して接着剤収納凹部45を形成する。この接着剤収納凹部45の大きさは、溝21の寸法や接着条件に依存するものであるが、テーパ部分の寸法として0.2mm 程度が選択される。この場合、接着剤43の盛り上がりが少ない場合には、多少の段差が生じ、また、リードパターンの接続がスムーズでなくなる欠点があるが、メッキ法やスパッタ法等の電極層36の形成では、例えば、0.1〜0.3mm程度の凹みでは問題はない。このように接着剤収納凹部45を形成することにより、製造の管理幅を緩くすることができ、また、インク滴の吐出のバラツキを低減することができる。
【0029】
次いで、インクジェットプリンタヘッド35の製造方法における電極形成時の問題点を解決した手段を図18〜図20に基づいて説明する。電極層36を所定のパターニングをもって除去する工程を終了した場合に、図18に示すように、溝21を形成している側壁46の端面部分に電極層36の除去不良が生じ易い。これは、露光時にこの部分には照射光が当りにくいためである。これにより、隣合う電極22が導通してしまうためにこの部分は完全に分離しなければならない。このような不良の発生を解消するためには、図19に示すように、ヘッド基板19を傾けてレーザビームでこの基部を照射することにより、図20に示すように電極層36を分離する。この電極層36の分離は、例えば、YAGレーザを用いてパルス発振させ、10〜20mJ/Pでパルス幅5〜10ns程度の出力の連続したパルスビームで切断することができる。
【0030】
前述の実施の形態においては、溝21部の電極22に印加される電圧が、図21に示す状態である場合には、隣接する側壁46の先端部分が移動するように変形し、この側壁46の変形に基づくインク室31の容積変化によりインク吐出口33からインク滴が吐出する。そのため、圧電体アクチュエータ18と天板32とを固定する接着剤は、側壁46の先端部分の変形を許容できるように、ゴム系の弾性のある接着剤であることが必要である。
【0031】
つぎに、本発明の実施の形態の変形例を図22〜図24に基づいて説明する。前述の実施の形態における圧電体アクチュエータ18は、一枚のもので形成されていたものであるが、本変形例では、二枚の圧電部材17を接着して一枚の圧電体アクチュエータ18とし、かつ、それぞれの圧電部材17で分極方向を逆にしたものである。そのため、図24に示すように、溝21部の電極22に電圧を印加すると、側壁46の中間部、すなわち、二枚の圧電部材17の接着部分が移動するように変形する。そのため、側壁46の先端部と天板32との接着部分を強固に固定的に接着してもその駆動が可能になる。
【0032】
本発明の第二の実施の形態を図25乃至図31に基づいて説明する。本実施の形態においては、基本的には第一の実施の形態と同様であるため、同一部分は同一符号を用いてその説明も省略するが、前述の圧電体アクチュエータ18に変えて圧電体組立47を用い、これにより、長手方向の寸法がきわめて長いラインプリンタヘッドを形成しているものである。すなわち、全体的な形状は、後述する圧電体組立47がヘッド基板19に固定され、このヘッド基板19がヘッド固定台48に固定されているとともに、このヘッド固定台48には、駆動IC29、回路部品49、コネクタ50を備えた回路基板51が固定されているものである。
【0033】
しかして、図27に示すように、例えば、幅方向40mm、長さ方向55mmで厚さ2mmの正方形状の4枚の圧電部材17とパイレックスガラス等により形成された細長い支持基板52とを準備する。そして、図28に示すように、支持基板52の一面に圧電部材17をそれぞれ密着させて連設状態に固定する。
【0034】
ついで、図29に示すように、一定の間隔で多数の溝21を機械加工により形成する。この場合、各圧電部材17の接合境界部が溝21部分に位置するように、それぞれの圧電部材17の寸法を管理する。この状態は、図30に拡大して示す。例えば、150dpiの印字密度に対応する溝ピッチを169μmとし、かつ、溝幅を80μm、深さを400μmでダイサーを用いて加工を行なう。そして、印字幅を8.5 インチとすると、1枚当りの印字幅は、8.5/4=2.125インチで319個/枚の溝21を形成することになる。例えば、1枚当り320個の溝21を形成するとすると、320×169μm=540.89 mmとなり、この数値を考慮して圧電部材17の長さを設定して各圧電部材17の接合境界部が溝21部分に位置するようにする。このように溝21を形成した後に、図31に示すように、溝21と直交する方向に切断して、例えば4個の圧電体組立47を形成する。
【0035】
【発明の効果】
請求項1記載の発明は、平板状で矩形状の圧電材料の一面に前後に貫通する一定深さの多数の溝を平行に形成した圧電体アクチュエータを形成し、この圧電体アクチュエータを前記溝に連通して共通液室を形成する凹部を有するヘッド基板に固定し、前記凹部を含む前記ヘッド基板の一面と前記圧電体アクチュエータの溝内とにそれぞれが互いに分離されて平行に配列された電極層による導電部を形成し、前記圧電体アクチュエータと前記ヘッド基板との一面に天板を固定して前記共通液室とインク室とを形成するとともに前記圧電体アクチュエータと前記ヘッド基板との端面に前記インク室に連通するインク吐出口が形成されたノズル板を固定したので、圧電部材としては、溝によるインク室を形成するための体積だけあれば良いため、必要とする材料の量がきわめて少なくて良く、また、圧電体アクチュエータの形成に当っては、面積の大きな圧電部材に溝加工を行なってからこの溝と直交する方向に圧電部材を切断して多数の圧電体アクチュエータを形成することができ、これにより、一度の溝加工で多数の圧電体アクチュエータを形成することができるため、1個当りの溝加工の工数を低くすることができると云う効果を有する。
【0036】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、フォトエッチングプロセスにより導電部を溝毎に分離した後に圧電体アクチュエータの共通液室側の端面部に被着された電極層をレーザビームで切断分離するようにしたので、共通液室が安価な材料によるヘッド基板により形成することができるが、この時に発生する電極層のつながりと云う弊害をレーザビームの利用により多数の溝毎に分離して簡単に解決することができると云う効果を有する。
【0037】
請求項3記載の発明は、平板状で矩形状の圧電材料の一面に前後に貫通する一定深さの多数の溝を平行に形成した圧電体アクチュエータと、この圧電体アクチュエータが取り付けられる取付段部と前記溝に連通して共通液室を形成する凹部とを有するヘッド基板と、前記凹部を含む前記ヘッド基板の一面と前記圧電体アクチュエータの溝内とにそれぞれが互いに分離されて平行に配列された電極層による導電部と、前記圧電体アクチュエータと前記ヘッド基板との一面に固定されて前記共通液室とインク室とを形成する天板と、前記インク室に連通するインク吐出口が形成されて前記圧電体アクチュエータと前記ヘッド基板との端面に固定されたノズル板とよりなるので、高価な材料の圧電部材はインク室を形成する部分だけで良く、ピエゾ効果を必要としない共通液室の形成や、電極層による導電部の形成は、安価な材料によるヘッド基板により行なうことができると云う効果を有する。
【0038】
請求項4記載の発明は、平板状で矩形状の圧電材料の一面に前後に貫通する一定深さの多数の溝を平行に形成した圧電体アクチュエータを形成し、前記溝を等間隔に配列した状態で複数個の前記圧電体アクチュエータを支持基板上に連設固定して長さの大きい圧電体組立を形成し、この圧電体組立を前記溝に連通して共通液室を形成する凹部を有するヘッド基板に固定し、前記凹部を含む前記ヘッド基板の一面と前記圧電体組立の溝内とにそれぞれが互いに分離されて平行に配列された電極層による導電部を形成し、前記圧電体組立と前記ヘッド基板との一面に天板を固定して前記共通液室とインク室とを形成するとともに前記圧電体組立と前記ヘッド基板との端面に前記インク室に連通するインク吐出口が形成されたノズル板を固定したので、きわめて長い印字ヘッドを小さな圧電部材を用いて形成することができ、必要とする数の印字素子を備えたラインヘッド方式の印字ヘッドを安価に製造することができると云う効果を有する。
【0039】
請求項5記載の発明は、平板状で矩形状の圧電材料の一面に前後に貫通する一定深さの多数の溝を平行に形成した複数個の圧電体アクチュエータを支持基板上に連設固定して形成した長さの大きい圧電体組立と、この圧電体組立が取り付けられる取付段部と前記溝に連通して共通液室を形成する凹部とを有するヘッド基板と、前記凹部を含む前記ヘッド基板の一面と前記圧電体組立の溝内とにそれぞれが互いに分離されて平行に配列された電極層による導電部と、前記圧電体組立と前記ヘッド基板との一面に固定されて前記共通液室とインク室とを形成する天板と、前記インク室に連通するインク吐出口が形成されて前記圧電体組立と前記ヘッド基板との端面に固定されたノズル板とよりなるので、小さな圧電部材を複数個用いて形成された長い印字ヘッドにより、ラインヘッド方式で消費電力が少ない状態で高速な印字を行なうことができると云う効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の第一の形態を示すもので、ヘッド基板に圧電体アクチュエータを接着固定した状態の斜視図である。
【図2】圧電体アクチュエータの正面図である。
【図3】インクジェットプリンタヘッドの縦断側面図である。
【図4】圧電部材の斜視図である。
【図5】圧電部材の一面に溝加工をした状態の斜視図である。
【図6】溝加工後に切断して圧電体アクチュエータを形成した状態の斜視図である。
【図7】ヘッド基板と圧電体アクチュエータとの関係を示す分解斜視図である。
【図8】ヘッド基板に圧電体アクチュエータを接着固定した状態の側面図である。
【図9】電極層を形成した状態を示すもので、(a)は側面図、(b)は正面図である。
【図10】レジスト膜を塗布した状態を示すもので、(a)は側面図、(b)は正面図である。
【図11】ディップ引き上げによりレジスト塗布を行なっている状態の側面図である。
【図12】露光マスクを用いて密着露光している状態の側面図である。
【図13】パターニングされた導電部が形成された状態の斜視図である。
【図14】完成したインクジェットプリンタヘッドを示す斜視図である。
【図15】ヘッド基板に圧電体アクチュエータを接着した時の接着剤の状態を示す部分断面図である。
【図16】その部分の斜視図である。
【図17】接着剤収納凹部を形成した状態の部分断面図である。
【図18】電極膜形成時の不良状態を示す一部の斜視図である。
【図19】電極膜の一部を除去する作業状態を示す側面図である。
【図20】電極膜を分離した状態の一部の斜視図である。
【図21】電極への電圧印加により側壁が変形した状態を示す一部の縦断正面図である。
【図22】本発明の第一の実施の形態の変形例を示すもので、分極方向を逆にした二枚の圧電部材により形成した圧電体アクチュエータの正面図である。
【図23】その圧電体アクチュエータをヘッド基板に接着固定した状態の側面図である。
【図24】電極への電圧印加により側壁が変形した状態を示す一部の縦断正面図である。
【図25】本発明の第二の実施の形態を示す一部を切り欠いた斜視図である。
【図26】その縦断側面図である。
【図27】複数個の圧電部材と一枚の支持基板との関係を示す分解斜視図である。
【図28】複数個の圧電部材を一枚の支持基板に接着固定した状態の斜視図である。
【図29】溝を形成した状態の斜視図である。
【図30】圧電部材の接合部と溝との関係を示す部分斜視図である。
【図31】溝加工後に切断して圧電体組立を形成した状態の斜視図である。
【図32】従来の完成したインクジェットプリンタヘッドの斜視図である。
【図33】従来のインクジェットプリンタヘッドの製造過程を示すもので、(a)は基板に対して溝加工を施した状態の斜視図、(b)はドライフィルムを貼り付けた状態の斜視図である。
【図34】従来のインクジェットプリンタヘッドの製造過程を示すもので、(a)は基板とレジスト用マスクの斜視図、(b)は基板の表面にパターンレジスト膜を形成した状態の斜視図である。
【図35】従来のインクジェットプリンタヘッドの製造過程を示すもので、(a)は無電解メッキにより配線パターンと電極とを形成した状態の斜視図、(b)はパターンレジスト膜を剥離した状態の斜視図である。
【符号の説明】
17 圧電部材
18 圧電体アクチュエータ
19 ヘッド基板
20 導電部
21 溝
23 取付段部
24 共通液室
25 凹部
31 インク室
32 天板
33 インク吐出口
34 ノズル板
36 電極層
47 圧電体組立
52 支持基板
【発明の属する技術分野】
本発明は、圧電部材を用いたオンデマンド方式のインクジェットプリンタヘッド及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来のインクジェットプリンタ等に利用されているオンデマンド方式の印字ヘッドとして、電気−熱変換素子である発熱素子を利用したバブルジェット方式の印字ヘッドが普及している。この方式の印字ヘッドを用いたインクジェットプリンタにおける印字方式は、シリアル方式であり、これはパーソナル向けに低価格で提供できることからパーソナル市場に受け入れられてそのプリンタ市場が拡大している。しかしながら、この形式の印字ヘッドは、印字速度がシリアル方式のために遅く、所定の時間内に所定の印刷を行なう必要があるOA機器としては難点がある。さらに、インク吐出が膜沸騰現象を利用しているために、1素子当りの印加電力を極めて多く必要とするため、多数の印字素子を備える必要があるラインヘッド方式には不向きである。
【0003】
さらに、ピエゾ素子を利用した他の方式としてインク供給部に接続されて並設された多数のインク室の先端に、インク吐出口を有するノズル板を固定し、インク室の圧力を高めてインク吐出口からインク滴を飛翔させるようにしたインクジェットプリンタヘッドがある。このようなインクジェットプリンタヘッドにおいて、インク室のインク圧を高める方法としては、特開昭63−247051号公報に開示された技術がある。すなわち、インク室の両側に配列された側壁の少なくとも一部を圧電部材により形成し、その側壁の側面に電極を形成し、この電極に電圧を印加することにより側壁を変形させ、この時の印加電圧の極性により側壁の変形方向を変えることにより、インク室の容積を拡張してインク供給部からインクを吸引したり、インク室の容積を縮小させて内部のインクをインク吐出口から吐出させるものである。このような形状のインクジェットプリンタヘッドを製造する方法は、本出願人により特開平5−269994号公報に開示されている。この製造方法により製造されたインクジェットプリンタヘッドの構造を図32乃至図35に基づいてその製造工程順に従って説明する。
【0004】
まず、図33(a)に示すように、底板1と下部基板2と圧電部材よりなる上部基板3とからなる三層構造の基板4を形成する。前記底板1は、合成が高く熱変形の少ないセラミックスやガラスを材料としており、前記下部基板2は、エポキシ樹脂を主成分とする接着剤を前記底板1の上に所定の厚さに塗布した後に硬化させて形成する。そして、前記下部基板2の形成に際しては、接着剤を硬化させた後に研削加工を施すことによりその厚さの調整を行う。
【0005】
次に、前記基板4に対し、前記上部基板3の表面から前記下部基板2の内部に達する複数の溝5を所定の間隔をもって平行に切削加工する。この溝5の切削加工により前記溝5の両側には側壁6が形成され、これらの側壁6は、上部基板3の部分に形成された上部側壁6aと下部基板2の部分に形成された下部側壁6bとよりなる。
【0006】
次に、前記基板4に対し、無電解メッキにより電極7と配線パターン8とを形成する。この無電解メッキの前処理として、キャタライジング・アクセラレーティング処理を行う。キャタライジング処理は、塩化パラジウム(PdCl2 )、塩化第一錫(SnCl2 )、濃塩酸(HCl)等からなるキャタリスト液に基板4を浸漬させ、溝5の内面や上部基板3の表面にPd、Snの錯化物を吸着させる目的で行う。アクセレーティング処理は、キャタライズ処理で吸着された錯化物を触媒化させる目的で行うもので、錯化物は触媒核として金属化されたPdとなる。
【0007】
次いで、図33(b)に示すように、上部基板3の表面にドライフィルム9を貼り付ける。その後に、図34(a)に示すレジスト用マスク10をドライフィルム9の上に載せて露光し、次いで、現像を行う。これにより、図34(b)に示すように、圧電部材の表面における電極7を形成する溝内面と、配線パターン8を形成する配線パターン8部分以外の部分を覆ったパターンレジスト膜11を形成する。このパターンレジスト膜11の形成により、金属化されたPdが溝5の内面と配線パターン8の部分とに露出する。
【0008】
次に、パターンレジスト膜11を形成した基板4をメッキ液に浸漬させて無電解メッキを行い、所定の膜厚をもってメッキを析出させる。メッキ液は、ニッケルを主成分とする。図35(a)に示すように、溝内面に電極7が形成され、配線パターン形成部には配線パターン8が形成される。そして、図35(b)に示すように、パターンレジスト膜11を剥離することにより無電解メッキが終了する。
【0009】
このようにして電極7が形成された基板4に対し、図32に示すように、溝5の上部を覆う状態で天板12を接着する。ついで、ノズル板13を接着するが、基板4と天板12との先端の端面を平坦にするために、切断加工等の機械加工を行う。前記ノズル板13は、天板12で溝5を覆うことにより形成されたインク室14に連通する複数のインク吐出口15を備えたものであり、また、前記天板12には、全ての前記インク室14に連通するインク供給管16が設けられ、これにより、インクジェットプリンタヘッドが完成する。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
ピエゾ素子、すなわち、圧電部材を用いて印字ヘッドを形成した前述の方式のものにおいては、圧電部材に多数の溝をダイサー等の機械加工で各ヘッド毎に切断加工しなければならず、その加工工数が高くてコスト高になる欠点を有している。また、ラインヘッドを構成しようとすれば、さらに多数の溝加工が必要であり、高価なものとなってしまう。しかも、圧電部材により共通液室を形成したり、配線パターンを形成する領域までも圧電部材を用いていることから必要とする圧電部材の容積が大きく、高価な圧電部材の使用量が多いために材料費の面からもコスト高になってしまうものである。
【0011】
本発明はこのような点に鑑みなされたもので、溝を加工するための機械加工を簡略化することができ、しかも、圧電部材の使用量が少なくて良いインクジェットプリンタヘッドを提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の発明は、平板状で矩形状の圧電部材の一面に前後に貫通する一定深さの多数の溝を平行に形成した圧電体アクチュエータを形成し、この圧電体アクチュエータを前記溝に連通して共通液室を形成する凹部を有するヘッド基板に固定し、前記凹部を含む前記ヘッド基板の一面と前記圧電体アクチュエータの溝内とにそれぞれが互いに分離されて平行に配列された電極層による導電部を形成し、前記圧電体アクチュエータと前記ヘッド基板との一面に天板を固定して前記共通液室とインク室とを形成するとともに前記圧電体アクチュエータと前記ヘッド基板との端面に前記インク室に連通するインク吐出口が形成されたノズル板を固定したものである。従って、圧電部材としては、溝によるインク室を形成するための体積だけあれば良いため、必要とする材料の量がきわめて少なくて良く、また、圧電体アクチュエータの形成に当っては、面積の大きな圧電部材に溝加工を行なってからこの溝と直交する方向に圧電部材を切断して多数の圧電体アクチュエータを形成することができ、これにより、一度の溝加工で多数の圧電体アクチュエータを形成することができるため、1個当りの溝加工の工数を低くすることができる。
【0013】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、フォトエッチングプロセスにより導電部を溝毎に分離した後に圧電体アクチュエータの共通液室側の端面部に被着された電極層をレーザビームで切断分離するようにしたものである。従って、共通液室が安価な材料によるヘッド基板により形成することができるが、この時に発生する電極層のつながりと云う弊害をレーザビームの利用により多数の溝毎に分離して簡単に解決することができる。
【0014】
請求項3記載の発明は、平板状で矩形状の圧電部材の一面に前後に貫通する一定深さの多数の溝を平行に形成した圧電体アクチュエータと、この圧電体アクチュエータが取り付けられる取付段部と前記溝に連通して共通液室を形成する凹部とを有するヘッド基板と、前記凹部を含む前記ヘッド基板の一面と前記圧電体アクチュエータの溝内とにそれぞれが互いに分離されて平行に配列された電極層による導電部と、前記圧電体アクチュエータと前記ヘッド基板との一面に固定されて前記共通液室とインク室とを形成する天板と、前記インク室に連通するインク吐出口が形成されて前記圧電体アクチュエータと前記ヘッド基板との端面に固定されたノズル板とよりなるものである。従って、高価な材料の圧電部材はインク室を形成する部分だけで良く、ピエゾ効果を必要としない共通液室の形成や、電極層による導電部の形成は、安価な材料によるヘッド基板により行なうことができる。
【0015】
請求項4記載の発明は、平板状で矩形状の圧電部材の一面に前後に貫通する一定深さの多数の溝を平行に形成した圧電体アクチュエータを形成し、前記溝を等間隔に配列した状態で複数個の前記圧電体アクチュエータを支持基板上に連設固定して長さの大きい圧電体組立を形成し、この圧電体組立を前記溝に連通して共通液室を形成する凹部を有するヘッド基板に固定し、前記凹部を含む前記ヘッド基板の一面と前記圧電体組立の溝内とにそれぞれが互いに分離されて平行に配列された電極層による導電部を形成し、前記圧電体組立と前記ヘッド基板との一面に天板を固定して前記共通液室とインク室とを形成するとともに前記圧電体組立と前記ヘッド基板との端面に前記インク室に連通するインク吐出口が形成されたノズル板を固定したものである。従って、きわめて長い印字ヘッドを小さな圧電部材を用いて形成することができ、必要とする数の印字素子を備えたラインヘッド方式の印字ヘッドを安価に製造することができる。
【0016】
請求項5記載の発明は、平板状で矩形状の圧電部材の一面に前後に貫通する一定深さの多数の溝を平行に形成した複数個の圧電体アクチュエータを支持基板上に連設固定して形成した長さの大きい圧電体組立と、この圧電体組立が取り付けられる取付段部と前記溝に連通して共通液室を形成する凹部を有するたヘッド基板と、前記凹部を含む前記ヘッド基板の一面と前記圧電体組立の溝内とにそれぞれが互いに分離されて平行に配列された電極層による導電部と、前記圧電体組立と前記ヘッド基板との一面に固定されて前記共通液室とインク室とを形成する天板と、前記インク室に連通するインク吐出口が形成されて前記圧電体組立と前記ヘッド基板との端面に固定されたノズル板とよりなるものである。従って、小さな圧電部材を複数個用いて形成された長い印字ヘッドにより、ラインヘッド方式で消費電力が少ない状態で高速な印字を行なうことができるものである。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明の第一の実施の形態を図1乃至図24に基づいて説明する。まず、図1に示すものは、圧電部材17により形成された圧電体アクチュエータ18がヘッド基板19に接着により固定され、かつ、導電部20が形成されている状態である。前記圧電体アクチュエータ18は互いに平行に形成された溝21を有しており、この溝21の内部には前記導電部20の一部となる電極22が形成されている。また、前記ヘッド基板19には、前記圧電体アクチュエータ18が取り付けられる取付段部23と共通液室24を形成するための凹部25とが形成されている。この凹部25は、ヘッド基板19を平板形状として段部を形成する別部材を接着して前記圧電体アクチュエータ18との間で形成するようにしてもよい。さらに、前記ヘッド基板19に前記圧電体アクチュエータ18が固定された状態においては、前記圧電体アクチュエータ18の上面26と前記ヘッド基板19の上面27とは同一平面内に位置するように両者の寸法が設定されている。そして、前記導電部20は前記電極22から連続させて前記共通液室24内と前記上面27とに連続しており、かつ、それぞれの溝21毎に独立して形成されており、前記ヘッド基板19の上面27に位置する前記導電部20は、外部回路に電気的接続をするための接続部28とされている。また、前記上面27には、外部回路を構成する駆動IC29が固定されており、この駆動IC29と前記接続部28との間は、ボンディングワイヤ30により電気的に接続されている。前記圧電体アクチュエータ18と前記ヘッド基板19との上面26,27には、前記凹部25と前記溝21とを覆って前記共通液室24とインク室31とを形成する天板32が固定され、前記圧電体アクチュエータ18と前記ヘッド基板19との端面には、前記インク室31にノズルとして作用するインク吐出口33を開口させたノズル板34が接着固定され、これにより、インクジェットプリンタヘッド35が構成されている。
【0018】
このようなインクジェットプリンタヘッド35の製造工程及びその完成品を図4乃至図14に基づいて説明する。まず、図4に示すように、圧電部材17は、平板状で矩形状に形成される。例えば、厚さが1.5mm で一辺が50mmの正方形状の圧電部材17が形成される。その材質としては、PZT材であり、PbTiO3−PbZrO3系の焼結体からなるセラミック材で熱膨張係数が2〜4×10 ̄6/℃のものである。
【0019】
ついで、図5に示すように、前記圧電部材17の一面に前後に貫通する所定深さの溝21が等間隔で平行にダイサー等の加工機により形成される。例えば、150dpiのインクジェットプリンタヘッド35を得ようとすれば、前記溝21のピッチは170μmであり、溝幅が90μmであり、深さが300μmである。
【0020】
このように溝21が形成された圧電部材17は、図6に示すように、溝21に直交する方向に所定の幅寸法をもって切断加工されて分割される。例えば、8mmの幅の場合には、1枚の圧電部材17から6個の圧電体アクチュエータ18が形成される。従って、1回の溝加工により6個の圧電体アクチュエータ18が形成されるため、圧電体アクチュエータ18の1個当りの溝加工に要する加工工数の比率はきわめて小さいものとなる。これは圧電体アクチュエータ18の幅が小さくなれば一層効果的であり、また、量産技術の向上に従って圧電部材17のサイズを大型化することができれば、さらに、量産効果が増大する。
【0021】
次に、図7に示すように、ヘッド基板19に圧電体アクチュエータ18が接着固定される。すなわち、前記ヘッド基板19は、パイレックスガラスにより形成される。例えば、硬質ガラスである低膨張ホウケイ酸ガラス(コーニング社、7740)が用いられる。これは主成分が、SiO281%、B2O313%で熱膨張係数は、3.2×10 ̄6/℃で、略PZT材と同等である。このようなパイレックスガラスが選択される理由は、その材料が比較的安価であること、PZT材による圧電部材17と熱膨張係数が略等しいこと、加工し易いこと等である。また、インクジェットプリンタヘッド35として完成させた後には、ヘッド基板19が透明であるということは、インクの充填状態を外部から観察し易く、製造工程での欠陥検査も容易にできると云う効果を有する。なお、PZT材の熱膨張係数は、製造メーカによる組成により若干異なるが、略2〜4×10 ̄6/℃である。そして、前記ヘッド基板19には、前記圧電体アクチュエータ18が取り付けられる取付段部23と共通液室24を形成するための凹部25とが形成されている。
【0022】
前記ヘッド基板19に前記圧電体アクチュエータ18を固定した状態は、図8に示すものであり、圧電体アクチュエータ18の上面26とヘッド基板19の上面27とは同一平面内に位置し、かつ、溝21の底面と凹部25の底面とが略同一面に位置するように各部の寸法が定められている。
【0023】
このようにしてヘッド基板19に圧電体アクチュエータ18を接着固定した後に、図9に示すように、その一面に無電解メッキ法やスパッタリング等の方法で所定厚さの電極層36を形成する。例えば、無電解メッキ法の場合には、ニッケルが選択され、スパッタリング法の場合には、アルミニュウムが選択される。そして、その厚さは、1〜4μmである。
【0024】
ついで、前述の電極層36を前述の電極22及び接続部28としてパターニングするために、図10に示すように、通常知られているフォトエッチング工程が実施される。すなわち、フォトレジスト剤37が塗布されるが、圧電体アクチュエータ18には溝21が存するため、通常のスピンコートやロールコータ法を用いると溝21部分や凹部25部分に均一に塗布することが困難であるため、図11に示すように、容器38内のレジスト液39に浸漬させて引き上げるディップ引上げ法を採用する。このとき、図示のようにヘッド基板19を縦にして引き上げることによりフォトレジスト剤37がパターン形成面に均一に塗布される。但し、フォトレジスト剤37の粘度や引き上げ速度にも依存するが、溝21部分は、80μm程度の微小な幅寸法であるため、フォトレジスト剤37の表面張力によって溝21の内部に残留してしまうが、この溝21部分の電極層36は除去しないので、全く問題はない。
【0025】
このようにフォトレジスト剤37を塗布後に、所定の条件でベーキングを行ない、その後に、図12に示すように、所定のパターン形状を有する露光マスク40を用いて密着露光を行なう。この場合、ヘッド基板19に凹部25が存するために、光学的段差があるが、通常のインク滴を吐出する溝深さは、300〜400μm程度であるので、通常の光学系と光源とを有する露光装置に用いれば、この程度の段差があっても5〜10μm程度の解像度を有するので、例えば、150〜300dpi程度のノズルピッチに対応するリード電極パターンの形成には何ら問題はない。
【0026】
所定の条件で露光後、現像、エッチング及びレジスト剥離工程を経て図13に示すように所定の電極パターンが形成される。すなわち、互いに連通した電極22及び接続部28による導電部20が溝21毎にそれぞれ独立分離されて形成される。
【0027】
ついで、図14に示すように、圧電体アクチュエータ18とヘッド基板19との上面26,27には、凹部25と溝21とを覆って共通液室24とインク室31とを形成する天板32が固定され、圧電体アクチュエータ18とヘッド基板19との端面には、インク室31にノズルとして作用するインク吐出口33を開口させたノズル板34が接着固定され、これにより、インクジェットプリンタヘッド35が構成される。なお、天板32には共通液室24に連通するインク供給管41とインク排出管42とが設けられている。また、特に図示しないが、共通液室24の両側端部には、閉塞部材が固定されるか、最初から仕切壁が存するように凹部25が形成されているものである。
【0028】
つぎに、前述のインクジェットプリンタヘッド35の製造方法における接着時の問題点と電極形成時の問題点とを解決した手段を図15〜図17及び図18〜図20に基づいて説明する。まず、図15〜図17に示すものは、接着時の問題点及びその問題点を解決した手段を示すものである。図15は、ヘッド基板19に圧電体アクチュエータ18を接着した場合の部分を示すものであるが、接着剤43の量が多い場合には、ヘッド基板19と圧電体アクチュエータ18との接合面に図15及び図16に示すように、接着剤43の盛り上がり部44が形成されてしまう。この盛り上がり部44の存在は、インクの流体抵抗を増大させるものであり、しかも、各部位において盛り上がり部44の状態が相違するため、各インク吐出口15からのインク吐出量が変動すると云う問題点を有する。この問題を解決するために、図17に示すように、ヘッド基板19の取付段部23のコーナ部にテーパを形成して接着剤収納凹部45を形成する。この接着剤収納凹部45の大きさは、溝21の寸法や接着条件に依存するものであるが、テーパ部分の寸法として0.2mm 程度が選択される。この場合、接着剤43の盛り上がりが少ない場合には、多少の段差が生じ、また、リードパターンの接続がスムーズでなくなる欠点があるが、メッキ法やスパッタ法等の電極層36の形成では、例えば、0.1〜0.3mm程度の凹みでは問題はない。このように接着剤収納凹部45を形成することにより、製造の管理幅を緩くすることができ、また、インク滴の吐出のバラツキを低減することができる。
【0029】
次いで、インクジェットプリンタヘッド35の製造方法における電極形成時の問題点を解決した手段を図18〜図20に基づいて説明する。電極層36を所定のパターニングをもって除去する工程を終了した場合に、図18に示すように、溝21を形成している側壁46の端面部分に電極層36の除去不良が生じ易い。これは、露光時にこの部分には照射光が当りにくいためである。これにより、隣合う電極22が導通してしまうためにこの部分は完全に分離しなければならない。このような不良の発生を解消するためには、図19に示すように、ヘッド基板19を傾けてレーザビームでこの基部を照射することにより、図20に示すように電極層36を分離する。この電極層36の分離は、例えば、YAGレーザを用いてパルス発振させ、10〜20mJ/Pでパルス幅5〜10ns程度の出力の連続したパルスビームで切断することができる。
【0030】
前述の実施の形態においては、溝21部の電極22に印加される電圧が、図21に示す状態である場合には、隣接する側壁46の先端部分が移動するように変形し、この側壁46の変形に基づくインク室31の容積変化によりインク吐出口33からインク滴が吐出する。そのため、圧電体アクチュエータ18と天板32とを固定する接着剤は、側壁46の先端部分の変形を許容できるように、ゴム系の弾性のある接着剤であることが必要である。
【0031】
つぎに、本発明の実施の形態の変形例を図22〜図24に基づいて説明する。前述の実施の形態における圧電体アクチュエータ18は、一枚のもので形成されていたものであるが、本変形例では、二枚の圧電部材17を接着して一枚の圧電体アクチュエータ18とし、かつ、それぞれの圧電部材17で分極方向を逆にしたものである。そのため、図24に示すように、溝21部の電極22に電圧を印加すると、側壁46の中間部、すなわち、二枚の圧電部材17の接着部分が移動するように変形する。そのため、側壁46の先端部と天板32との接着部分を強固に固定的に接着してもその駆動が可能になる。
【0032】
本発明の第二の実施の形態を図25乃至図31に基づいて説明する。本実施の形態においては、基本的には第一の実施の形態と同様であるため、同一部分は同一符号を用いてその説明も省略するが、前述の圧電体アクチュエータ18に変えて圧電体組立47を用い、これにより、長手方向の寸法がきわめて長いラインプリンタヘッドを形成しているものである。すなわち、全体的な形状は、後述する圧電体組立47がヘッド基板19に固定され、このヘッド基板19がヘッド固定台48に固定されているとともに、このヘッド固定台48には、駆動IC29、回路部品49、コネクタ50を備えた回路基板51が固定されているものである。
【0033】
しかして、図27に示すように、例えば、幅方向40mm、長さ方向55mmで厚さ2mmの正方形状の4枚の圧電部材17とパイレックスガラス等により形成された細長い支持基板52とを準備する。そして、図28に示すように、支持基板52の一面に圧電部材17をそれぞれ密着させて連設状態に固定する。
【0034】
ついで、図29に示すように、一定の間隔で多数の溝21を機械加工により形成する。この場合、各圧電部材17の接合境界部が溝21部分に位置するように、それぞれの圧電部材17の寸法を管理する。この状態は、図30に拡大して示す。例えば、150dpiの印字密度に対応する溝ピッチを169μmとし、かつ、溝幅を80μm、深さを400μmでダイサーを用いて加工を行なう。そして、印字幅を8.5 インチとすると、1枚当りの印字幅は、8.5/4=2.125インチで319個/枚の溝21を形成することになる。例えば、1枚当り320個の溝21を形成するとすると、320×169μm=540.89 mmとなり、この数値を考慮して圧電部材17の長さを設定して各圧電部材17の接合境界部が溝21部分に位置するようにする。このように溝21を形成した後に、図31に示すように、溝21と直交する方向に切断して、例えば4個の圧電体組立47を形成する。
【0035】
【発明の効果】
請求項1記載の発明は、平板状で矩形状の圧電材料の一面に前後に貫通する一定深さの多数の溝を平行に形成した圧電体アクチュエータを形成し、この圧電体アクチュエータを前記溝に連通して共通液室を形成する凹部を有するヘッド基板に固定し、前記凹部を含む前記ヘッド基板の一面と前記圧電体アクチュエータの溝内とにそれぞれが互いに分離されて平行に配列された電極層による導電部を形成し、前記圧電体アクチュエータと前記ヘッド基板との一面に天板を固定して前記共通液室とインク室とを形成するとともに前記圧電体アクチュエータと前記ヘッド基板との端面に前記インク室に連通するインク吐出口が形成されたノズル板を固定したので、圧電部材としては、溝によるインク室を形成するための体積だけあれば良いため、必要とする材料の量がきわめて少なくて良く、また、圧電体アクチュエータの形成に当っては、面積の大きな圧電部材に溝加工を行なってからこの溝と直交する方向に圧電部材を切断して多数の圧電体アクチュエータを形成することができ、これにより、一度の溝加工で多数の圧電体アクチュエータを形成することができるため、1個当りの溝加工の工数を低くすることができると云う効果を有する。
【0036】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、フォトエッチングプロセスにより導電部を溝毎に分離した後に圧電体アクチュエータの共通液室側の端面部に被着された電極層をレーザビームで切断分離するようにしたので、共通液室が安価な材料によるヘッド基板により形成することができるが、この時に発生する電極層のつながりと云う弊害をレーザビームの利用により多数の溝毎に分離して簡単に解決することができると云う効果を有する。
【0037】
請求項3記載の発明は、平板状で矩形状の圧電材料の一面に前後に貫通する一定深さの多数の溝を平行に形成した圧電体アクチュエータと、この圧電体アクチュエータが取り付けられる取付段部と前記溝に連通して共通液室を形成する凹部とを有するヘッド基板と、前記凹部を含む前記ヘッド基板の一面と前記圧電体アクチュエータの溝内とにそれぞれが互いに分離されて平行に配列された電極層による導電部と、前記圧電体アクチュエータと前記ヘッド基板との一面に固定されて前記共通液室とインク室とを形成する天板と、前記インク室に連通するインク吐出口が形成されて前記圧電体アクチュエータと前記ヘッド基板との端面に固定されたノズル板とよりなるので、高価な材料の圧電部材はインク室を形成する部分だけで良く、ピエゾ効果を必要としない共通液室の形成や、電極層による導電部の形成は、安価な材料によるヘッド基板により行なうことができると云う効果を有する。
【0038】
請求項4記載の発明は、平板状で矩形状の圧電材料の一面に前後に貫通する一定深さの多数の溝を平行に形成した圧電体アクチュエータを形成し、前記溝を等間隔に配列した状態で複数個の前記圧電体アクチュエータを支持基板上に連設固定して長さの大きい圧電体組立を形成し、この圧電体組立を前記溝に連通して共通液室を形成する凹部を有するヘッド基板に固定し、前記凹部を含む前記ヘッド基板の一面と前記圧電体組立の溝内とにそれぞれが互いに分離されて平行に配列された電極層による導電部を形成し、前記圧電体組立と前記ヘッド基板との一面に天板を固定して前記共通液室とインク室とを形成するとともに前記圧電体組立と前記ヘッド基板との端面に前記インク室に連通するインク吐出口が形成されたノズル板を固定したので、きわめて長い印字ヘッドを小さな圧電部材を用いて形成することができ、必要とする数の印字素子を備えたラインヘッド方式の印字ヘッドを安価に製造することができると云う効果を有する。
【0039】
請求項5記載の発明は、平板状で矩形状の圧電材料の一面に前後に貫通する一定深さの多数の溝を平行に形成した複数個の圧電体アクチュエータを支持基板上に連設固定して形成した長さの大きい圧電体組立と、この圧電体組立が取り付けられる取付段部と前記溝に連通して共通液室を形成する凹部とを有するヘッド基板と、前記凹部を含む前記ヘッド基板の一面と前記圧電体組立の溝内とにそれぞれが互いに分離されて平行に配列された電極層による導電部と、前記圧電体組立と前記ヘッド基板との一面に固定されて前記共通液室とインク室とを形成する天板と、前記インク室に連通するインク吐出口が形成されて前記圧電体組立と前記ヘッド基板との端面に固定されたノズル板とよりなるので、小さな圧電部材を複数個用いて形成された長い印字ヘッドにより、ラインヘッド方式で消費電力が少ない状態で高速な印字を行なうことができると云う効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の第一の形態を示すもので、ヘッド基板に圧電体アクチュエータを接着固定した状態の斜視図である。
【図2】圧電体アクチュエータの正面図である。
【図3】インクジェットプリンタヘッドの縦断側面図である。
【図4】圧電部材の斜視図である。
【図5】圧電部材の一面に溝加工をした状態の斜視図である。
【図6】溝加工後に切断して圧電体アクチュエータを形成した状態の斜視図である。
【図7】ヘッド基板と圧電体アクチュエータとの関係を示す分解斜視図である。
【図8】ヘッド基板に圧電体アクチュエータを接着固定した状態の側面図である。
【図9】電極層を形成した状態を示すもので、(a)は側面図、(b)は正面図である。
【図10】レジスト膜を塗布した状態を示すもので、(a)は側面図、(b)は正面図である。
【図11】ディップ引き上げによりレジスト塗布を行なっている状態の側面図である。
【図12】露光マスクを用いて密着露光している状態の側面図である。
【図13】パターニングされた導電部が形成された状態の斜視図である。
【図14】完成したインクジェットプリンタヘッドを示す斜視図である。
【図15】ヘッド基板に圧電体アクチュエータを接着した時の接着剤の状態を示す部分断面図である。
【図16】その部分の斜視図である。
【図17】接着剤収納凹部を形成した状態の部分断面図である。
【図18】電極膜形成時の不良状態を示す一部の斜視図である。
【図19】電極膜の一部を除去する作業状態を示す側面図である。
【図20】電極膜を分離した状態の一部の斜視図である。
【図21】電極への電圧印加により側壁が変形した状態を示す一部の縦断正面図である。
【図22】本発明の第一の実施の形態の変形例を示すもので、分極方向を逆にした二枚の圧電部材により形成した圧電体アクチュエータの正面図である。
【図23】その圧電体アクチュエータをヘッド基板に接着固定した状態の側面図である。
【図24】電極への電圧印加により側壁が変形した状態を示す一部の縦断正面図である。
【図25】本発明の第二の実施の形態を示す一部を切り欠いた斜視図である。
【図26】その縦断側面図である。
【図27】複数個の圧電部材と一枚の支持基板との関係を示す分解斜視図である。
【図28】複数個の圧電部材を一枚の支持基板に接着固定した状態の斜視図である。
【図29】溝を形成した状態の斜視図である。
【図30】圧電部材の接合部と溝との関係を示す部分斜視図である。
【図31】溝加工後に切断して圧電体組立を形成した状態の斜視図である。
【図32】従来の完成したインクジェットプリンタヘッドの斜視図である。
【図33】従来のインクジェットプリンタヘッドの製造過程を示すもので、(a)は基板に対して溝加工を施した状態の斜視図、(b)はドライフィルムを貼り付けた状態の斜視図である。
【図34】従来のインクジェットプリンタヘッドの製造過程を示すもので、(a)は基板とレジスト用マスクの斜視図、(b)は基板の表面にパターンレジスト膜を形成した状態の斜視図である。
【図35】従来のインクジェットプリンタヘッドの製造過程を示すもので、(a)は無電解メッキにより配線パターンと電極とを形成した状態の斜視図、(b)はパターンレジスト膜を剥離した状態の斜視図である。
【符号の説明】
17 圧電部材
18 圧電体アクチュエータ
19 ヘッド基板
20 導電部
21 溝
23 取付段部
24 共通液室
25 凹部
31 インク室
32 天板
33 インク吐出口
34 ノズル板
36 電極層
47 圧電体組立
52 支持基板
Claims (5)
- 平板状で矩形状の圧電部材の一面に前後に貫通する一定深さの多数の溝を平行に形成した圧電体アクチュエータを形成し、この圧電体アクチュエータを前記溝に連通して共通液室を形成する凹部を有するヘッド基板に固定し、前記凹部を含む前記ヘッド基板の一面と前記圧電体アクチュエータの溝内とにそれぞれが互いに分離されて平行に配列された電極層による導電部を形成し、前記圧電体アクチュエータと前記ヘッド基板との一面に天板を固定して前記共通液室とインク室とを形成するとともに前記圧電体アクチュエータと前記ヘッド基板との端面に前記インク室に連通するインク吐出口が形成されたノズル板を固定したことを特徴とするインクジェットプリンタヘッドの製造方法。
- フォトエッチングプロセスにより導電部を溝毎に分離した後に圧電体アクチュエータの共通液室側の端面部に被着された電極層をレーザビームで切断分離するようにしたことを特徴とする請求項1記載のインクジェットプリンタヘッドの製造方法。
- 平板状で矩形状の圧電部材の一面に前後に貫通する一定深さの多数の溝を平行に形成した圧電体アクチュエータと、この圧電体アクチュエータが取り付けられる取付段部と前記溝に連通して共通液室を形成する凹部とを有するヘッド基板と、前記凹部を含む前記ヘッド基板の一面と前記圧電体アクチュエータの溝内とにそれぞれが互いに分離されて平行に配列された電極層による導電部と、前記圧電体アクチュエータと前記ヘッド基板との一面に固定されて前記共通液室とインク室とを形成する天板と、前記インク室に連通するインク吐出口が形成されて前記圧電体アクチュエータと前記ヘッド基板との端面に固定されたノズル板とよりなることを特徴とするインクジェットプリンタヘッド。
- 平板状で矩形状の圧電部材の一面に前後に貫通する一定深さの多数の溝を平行に形成した圧電体アクチュエータを形成し、前記溝を等間隔に配列した状態で複数個の前記圧電体アクチュエータを支持基板上に連設固定して長さの大きい圧電体組立を形成し、この圧電体組立を前記溝に連通して共通液室を形成する凹部を有するヘッド基板に固定し、前記凹部を含む前記ヘッド基板の一面と前記圧電体組立の溝内とにそれぞれが互いに分離されて平行に配列された電極層による導電部を形成し、前記圧電体組立と前記ヘッド基板との一面に天板を固定して前記共通液室とインク室とを形成するとともに前記圧電体組立と前記ヘッド基板との端面に前記インク室に連通するインク吐出口が形成されたノズル板を固定したことを特徴とするインクジェットプリンタヘッドの製造方法。
- 平板状で矩形状の圧電部材の一面に前後に貫通する一定深さの多数の溝を平行に形成した複数個の圧電体アクチュエータを支持基板上に連設固定して形成した長さの大きい圧電体組立と、この圧電体組立が取り付けられる取付段部と前記溝に連通して共通液室を形成する凹部とを有するヘッド基板と、前記凹部を含む前記ヘッド基板の一面と前記圧電体組立の溝内とにそれぞれが互いに分離されて平行に配列された電極層による導電部と、前記圧電体組立と前記ヘッド基板との一面に固定されて前記共通液室とインク室とを形成する天板と、前記インク室に連通するインク吐出口が形成されて前記圧電体組立と前記ヘッド基板との端面に固定されたノズル板とよりなることを特徴とするインクジェットプリンタヘッド。
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