JP3539653B2 - インクジェットヘッド - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はインクジェットヘッドに関し、特に振動板を支持体に接合したインクジェットヘッドに関する。
【0002】
【従来の技術】
インクジェット記録装置は、記録時の振動、騒音が殆どなく、特にカラー化が容易なことから、コンピュータ等のデジタル処理装置のデータを出力するプリンタの他、ファクシミリやコピー機等にも用いられるようになっている。このようなインクジェット記録装置に用いられるインクジェットヘッドは、圧電素子、発熱抵抗体等のアクチュエータ素子を記録信号に応じて駆動することによってノズルからインク滴を吐出飛翔させることによって記録媒体上に画像記録を行なうものである。
【0003】
このようなインクジェットヘッドとして、例えば特開平8−142324号公報に記載されているように、基板上に複数の圧電素子を複数列列状に接合すると共に、圧電素子の周囲に位置するフレーム部材を接合し、これらの圧電素子及びフレーム部材上にダイアフラム部を有する振動板を積層して接合し、この振動板上に圧電素子でダイアフラム部を介して加圧される加圧液室(インク液室)及びこの液室にインクを供給するインク供給路を形成する液室形成部材を積層し、更にこの液室形成部材上にノズルを形成したノズルプレートを積層したものがある。
【0004】
このように電気機械変換素子をアクチュエータ素子に用いてその変位を振動板を介してインク液室を加圧するようにしたインクジェットヘッドにおいては、各部を高精度に組立てる必要があり、高密度、高集積化が進むに従って圧電素子、インク液室、ノズル、振動板(変形部)をより高精度に位置決めし、確実に接合して組立てしなければ、噴射特性が劣化するなど画像品質に対する信頼性を確保することができなくなる。
【0005】
従来、インクジェットヘッドに関する接合方法として、特開昭60−183157号公報に記載されているように、ヘッド、ヘッドの駆動回路部及びヘッドと駆動回路部の支持体とを接合するに際し、支持体に貫通孔を設けて、この貫通孔に接着剤を注入することによってこれらの三者を接合する方法が知られている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述したような従来の接合方法を振動板を支持体(フレーム部材)に接合する場合に適用すると、振動板と支持体との接合面積を確保することができないために、十分な接合強度を得ることができず、振動板の変形に対して悪影響を及ぼすことになるなどの事態が生じることになる。
【0007】
また、そもそも、従来のインクジェットヘッドにあっては、ヘッドの高密度、高集積化に対する考慮がなされておらず、組立性の信頼性や組立効率が悪いという課題がある。
【0008】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、ヘッドの組立て信頼性を確保し、組立効率を向上できるインクジェットヘッドを提供することを目的とする。
【0011】
【問題を解決するための手段】
上記の課題を解決するため、請求項1のインクジェットヘッドは、振動板とこの振動板を支持する支持体との接合部に、両者の主たる接合を行う領域と仮接合を行う領域とを設け、仮接合を行う領域が振動板及び支持体の少なくとも一方に形成した凹部からなる構成とした。
【0012】
請求項2のインクジェットヘッドは、振動板とこの振動板を支持する支持体との接合部に、両者の主たる接合を行う領域と仮接合を行う領域とを設け、仮接合を行う領域と主たる接合を行う領域とが前記振動板及び支持体の少なくとも一方に形成した溝部で分離されている構成とした。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。図1は本発明を適用するインクジェットヘッドの一例を示す全体分解斜視図、図2は同ヘッドの要部斜視図、図3は図2のA−A線に沿う断面図、図4は図2のB−B線に沿う断面図である。
【0015】
このインクジェットヘッドは、アクチュエータユニット1と、液室ユニット2と、ヘッドカバー3とを備えている。
アクチュエータユニット1は、絶縁性の基板11上に、複数の積層型圧電素子12を列状に2列配置して接合し、これら2列の各圧電素子の周囲を取り囲む樹脂、セラミック等からなるフレーム部材(支持体)13を接着剤14によって接合している。複数の圧電素子12は、インクを液滴化して飛翔させるための駆動パルスが与えられる圧電素子(これを「駆動部」という。)17,17…と、駆動部17,17間に位置し、駆動パルスが与えられずに単に液室ユニット2を基板11に固定する液室支柱部材となる圧電素子(これを「非駆動部」という。)18,18…とを交互に配置している。
【0016】
液室ユニット2は、ダイアフラム部21を形成した振動板22上に、加圧液室(インク液室)流路を形成する感光性樹脂フィルム(ドライフィルムレジスト)からなる液室形成部材23を接着し、この液室形成部材23上に複数のノズル25を形成したノズルプレート26を接着してなる。これらの振動板22、液室形成部材23及びノズルプレート26によって、各駆動部17に対向する変形可能なダイヤフラム部21を有するそれぞれ略独立した複数のインク液室である加圧液室27,27…を形成し、かつ、ノズル25,25…を振動板22のダイヤフラム部21即ち各駆動部17に対向して配列している。そして、この液室ユニット2は、その振動板22の所要の部分を接着剤28によって各駆動部18及び支持体であるフレーム部材13上に接合することで、全体としてアクチュエータユニット1上に高い剛性で接合している。
【0017】
ここで、アクチュエータユニット1の基板11は、厚さ0.5〜5mm程度で、しかも圧電素子に似た材質のものからなり、圧電素子と共に例えばダイヤモンド砥石による切削が可能なものであることが好ましく、この実施例ではセラミックス基板、例えばチタン酸バリウム、アルミナ、フォルステライトなどの基板を用いている。
【0018】
圧電素子12としては10層以上の積層型圧電素子を用いている。この積層型圧電素子は、例えば図3及び図4に示すように、厚さ20〜50μm/1層のPZT(=Pb(Zr・Ti)O3)30と、厚さ数μm/1層の銀・パラジューム(AgPd)からなる内部電極31とを交互に積層したものである。圧電素子12を厚さ20〜50μm/1層の積層型とすることによって駆動電圧の低電圧化を図れ、例えば20〜50Vのパルス電圧で圧電素子の電界強度1000V/mmを得ることができる。なお、圧電素子として用いる材料は上記に限られるものでなく、一般に圧電素子材料として用いられるBaTiO3、PbTiO3、(NaK)NbO3等の強誘電体などの電気機械変換素子を用いることもできる。
【0019】
各圧電素子12の内部電極31は1層おきにAgPdからなる左右の端面電極32,33(2つの圧電素子列の対向する面側を端面電極32とし、対向しない面側を端面電極33とする。)に接続している。一方、基板11上には、図1に示すようにNi・Au蒸着、Auメッキ、AgPtペースト印刷、AgPdペースト印刷等によって共通電極パターン34及び個別電極パターン35を設けている。
【0020】
そして、各列の各圧電素子12の対向する端面電極32を導電性接着剤36を介して共通電極パターン34に接続し、他方、各列の各圧電素子12の対向しない端面電極23を同じく導電性接着剤36を個別電極パターン35に接続している。これにより、駆動部17に駆動電圧を与えることによって、積層方向に電界が発生して、駆動部17には積層方向の伸びの変位が生起される。なお、共通電極パターン34は、フレーム部材13に設けた穴13a内に導電性接着剤を充填することで各パターン部の導通を取っている。
【0021】
次に、液室ユニット2の振動板22は、エレクトロフォーミング工法(電鋳)によって製造したNi(ニッケル)の金属プレートからなり、図3に示すように液室形成部材23側を平坦面とし、チャンネル方向と直交する方向では圧電素子12側にそれぞれ厚みの異なるダイアフラム領域22a、接合領域22b及び逃げ領域22cを形成して、駆動部17となる圧電素子2に対応してダイアフラム部21を形成したものである。
【0022】
ここで、ダイアフラム領域22aは、最も厚みの薄い領域(薄肉部)であって、厚さを3〜10μm程度にしたダイアフラム部21のダイアフラム領域(駆動部17の変位に応じて変形する弾性部分)である。ダイアフラム領域22aの厚さを10μm以下にすることで、駆動部17の変位を効率的に加圧液室27に伝搬することができる。また、接合領域22bは、最も厚みの厚い領域(厚肉部)であり、圧電素子12及びフレーム部材13との接合領域であって、例えば20μm程度以上の厚さに形成している。この場合、チャンネル方向と直交する方向では、各接合領域22aの内、非駆動部18に対応する部分は、液室ユニット2を非駆動部8に接合するための梁部22eとなる。更に、逃げ領域22cは、中間の厚さの領域であって、駆動部17との接触を避けるための領域である。
【0023】
液室形成部材23は、上記のように振動板22上面とノズルプレート26下面との間に位置して各駆動部17に対応する各加圧液室27を形成すると共に、各加圧液室27にインクを供給するために各加圧液室27の両側に位置する共通液室37と、各加圧液室27の両側を共通液室37に連通する流体抵抗部を兼ねた各インク供給路38,38とを形成するものであるが、その製造工程上、振動板22上面にドライフィルムレジスト(感光性樹脂フィルム)を用いて所要の液室パターンを形成した第1層39と、同じくノズルプレート26側にドライフィルムレジストを用いて所要の液室パターンを形成した第2層40とを接合した2層構造としている。
【0024】
ノズルプレート26にはインク滴を飛翔させるための微細孔である多数のノズル25を形成しており、このノズル25の径はインク滴出口側の直径で35μm以下に形成し、また、ノズル25は振動板22のダイアフラム部21に対向し、かつ加圧液室27の中心近傍に対応する位置に設けている。このノズルプレート26の表面には、撥水性の表面処理膜である撥水膜41を形成し、この撥水膜41の周囲には撥水処理を施していない非撥水処理面42を設けている。
【0025】
このノズルプレート26も振動板22と同様にエレクトロフォーミング工法(電鋳)によって製造したNi(ニッケル)の金属プレートを用いているが、Si、その他の金属材料を用いることもできる。なお、実際には、1列32〜64個のノズル15を2列配列した64〜128個構成で1つのインクジェットヘッドを製作するが、この64〜128個のノズル25を有するノズルプレート26の品質は、インクの滴形状、飛翔特性を決定し、画像品質に大きな影響を与えるものである。
【0026】
そして、図1に示すように、基板11をヘッド支持部材であるスペーサ部材(ヘッドホルダ)44上に支持して保持し、このスペーサ部材44内に配設したヘッド駆動用IC等を有するPCB基板とアクチュエータユニット1の各圧電素子12とを各電極パターン34,35に接合したFPCケーブル45を介して接続している。
【0027】
また、ノズルカバー(ヘッドカバー)3は、ノズルプレート26の周縁部及びヘッド側面を覆う箱状に形成したものであり、ノズルプレート26の撥水膜41に対応して開口部を形成し、ノズルプレート26の非撥水処理面42に接着剤にて接着接合している。さらに、このインクジェットヘッドには、図示しないインクカートリッジからのインクを液室に供給するため、スペーサ部材44、基板11、フレーム部材13及び振動板22にそれぞれインク供給穴46〜49を設けている。
【0028】
次に、このインクジェットヘッドの製造工程について説明する。このインクジェットヘッドは、予めアクチュエータユニット1と液室ユニット2とを別々に組付けた後、両ユニット1,2を接着接合して製造している。このような製造工程を採用することによって、両ユニット1,2の良品同士を選んで組み付けることができて歩留りが向上すると共に、加工組付け工程で塵埃が発生しやすいアクチュエータユニット1と、塵埃の付着を完全に避けたい液室ユニット2とを別々の工程で組付けることができるので、完成したインクジェットヘッドの品質自体が向上する。以下、具体的に説明する。
【0029】
先ず、アクチュエータユニット1の加工及び組付け工程は、次のとおりである。すなわち、絶縁性の基板11に予め共通電極及び個別電極用の各電極パターンを大まかにパターニングした後、2枚のシート状若しくはプレート状の積層型圧電素子を位置決め治具を使用して接着接合する。そして、各圧電素子の両端面に形成した端面電極と基板11の各電極パターンとを導電性接着剤で電気的に接続する。
【0030】
その後、ダイヤモンド砥石をセットしたダイサーによって、例えば1ピッチ当たり100μm程度の幅で圧電素子プレートをスリット加工して駆動部17及び非駆動部18となる個々の圧電素子12に分割する。このとき、基板11に至るまで切込み溝(スリット溝)を入れて切断することによって、個々の圧電素子を完全に独立させる。また、基板11上の各電極パターンも同時に切断されて個々の圧電素子毎に分割する。
【0031】
次に、圧電素子の加工が終了した基板11にフレーム部材13を接着接合し、このフレーム部材13の穴部13a内に導電性接着剤を塗布することによって分断した共通電極パターンを相互に接続する。また、FPCケーブル45を基板11の電極パターンに熱と加圧で接合する。このFPCケーブル45は駆動部17を選択的に駆動できるパターンを有し、その接合部には予め半田メッキを施している。最後に、各圧電素子の容量を測定する。
【0032】
一方、液室ユニット2の加工・組付け工程について説明すると、予めエレクトロフォーミング工法(電鋳)を用いてNi(ニッケル)の金属プレートからなるダイアフラム部21を有する振動板22及びノズル25を有するノズルプレート26を製造する。そして、振動板22上に第1層39を形成するための感光性樹脂である厚さ20〜50μm程度のドライフィルムレジストを熱及び加圧によってラミネートし、流路パターンに応じたマスクを用いて紫外線露光をして、露光部分を硬化させる。そして、未露光部分を除去できる溶剤を用いて、未露光部分を除去して現像し、第1層39の液室パターンを形成し、水洗い、乾燥の後、再度紫外線露光と熱によって本硬化する。
【0033】
一方、ノズルプレート26にも第2層40を形成するための感光性樹脂である厚さ40〜100μm程度のドライフィルムレジストを熱及び加圧によってラミネートし、流路パターンに応じたマスクを用いて紫外線露光をして、露光部分を硬化させ、未露光部分を現像して、第2層40の液室パターンを形成し、水洗い、乾燥の後、再度紫外線露光と熱によって本硬化する
【0034】
そして、このようにして振動板22とノズルプレート26に形成されたドライフィルムレジストからなる第1層39と第2層40との対応する面同士を接合する。この接合は位置合わせ治具を用いて行い、加圧及び前記本硬化のときより高い温度での加熱を行う。なお、実際には、以上の工程は、複数個分のヘッド面積のプレートにて組付けを行うようにしている。
【0035】
最後に、上述のようにして完成したアクチュエータユニット1と液室ユニット2とを組み付ける。この接合工程の概要は、アクチュエータユニット1に本接合用及び仮接合用接着剤を塗布して接合装置にセットした後、同接合装置に液室ユニット2をセットする。そして、接合装置によってアクチュエータ1と液室ユニット2との相対位置(X,Y方向)をミクロンオーダーレベルで位置合せを行ない、位置関係を維持した状態で双方のユニットを接触させて接合する。次に、接合装置上で紫外線(UV光)を照射して仮接合用接着剤を硬化させることにより仮接合を行ない、その後、接合物を接合装置から取り出して加圧装置にセットする。その後、加圧状態で加圧装置ごと恒温層に入れて熱硬化させて完了とする。
【0036】
そこで、このようなインクジェットヘッドに本発明を適用した実施例について図5以降を参照して説明する。図5は本発明の第1実施例に係るフレーム部材13の斜視図、図6は同じく振動板22を含む液室ユニット2の斜視図である。
フレーム部材13には、図5に示すように四隅に凹部50を形成して、この凹部50を仮接合を行う領域(以下、「仮接合領域」という。)とし、その他の表面をフレーム部材13と振動板22の主たる接合を行う領域(以下「本接合領域」という。)51とする。一方、液室ユニット2を構成する振動板22を含む各部材は、図6に示すようにフレーム部材13の凹部50に対応して四隅をカットすることで面取り部60を形成した形状にする。なお、凹部50は2箇所或いは3箇所に設けることもできる。
【0037】
この実施例を適用した場合のユニット接合工程は、次のとおりである。
▲1▼ 工程1(接着剤塗布工程)
スクリーン印刷機にアクチュエータユニット1をセットする。次に、アクチュエータユニット1と同形状にパターニングされたスクリーンパターンメッシュとアクチュエータユニット1との位置合せを行なう。そして、接着剤28としての例えば熱硬化型エポキシ系接着剤をアクチュエータユニット1の圧電素子12表面及びフレーム部材13の本接合領域51に塗布する。その後、フレーム部材13の仮接合領域である凹部50にディスペンサー等の塗布装置を用いてUV(紫外線)硬化型接着剤等の仮接合用接着剤を塗布する。
【0038】
なお、接着剤の塗布完了後、アクチュエータユニット1を取り出して、スクリーンパターンメッシュの洗浄を行なうが、この洗浄作業で使用接着剤のポットライフが短いと、塗布工程内で硬化が始まり、結果的にスクリーンパターンメッシュに対して不完全な洗浄になってメッシュ詰りの原因となる。したがって、使用する熱硬化型接着剤のポットライフは室温−20℃〜+30℃のときに1時間以上あるものを使用する。また、接着剤として一液性中温硬化型接着剤を使用することによっても、接着剤塗布工程における接着剤の硬化を防ぐことができる。
【0039】
▲2▼ 工程2(ユニット間位置合せ工程)
位置決め加圧装置に接着剤が塗布されたアクチュエータユニット1と液室ユニット2とをセットし、セット完了後アクチュエータユニット1と液室ユニット2との相対位置(X,Y方向)を二視野顕微鏡等によりミクロンオーダーレベルで位置合せを行ない、位置関係を維持した状態で双方のユニットを接触させて、図7に示すように両ユニット1,2を位置決めして加圧する。このとき仮接合接着剤が振動板22の端部に押されて付着する。
【0040】
▲3▼ 工程3(ユニット間仮固定工程)
このように接合装置上でアクチュエータユニット1と液室ユニット2とを位置決めして加圧しているとき、液室ユニット2は四隅をカットして面取り部60を形成しているので、フレーム部材13の凹部50及び仮接合用のUV硬化型接着剤の一部が露出している状態になる。そこで、フレーム部材13の凹部50に塗布しているUV硬化型接着剤にUV光を直接照射して硬化させる。これによって、アクチュエータユニット1と液室ユニット2とは仮接合されて位置ずれが生じなくなる。この場合、凹部50のUV接着剤が振動板22の面取り部60端面にも付着するので仮接合強度が向上する。
【0041】
▲4▼ 工程4(加圧工程)
位置決め加圧装置からヘッドを取り出して本接合用装置にセットし、各ユニット1,2の接合面に対して均等な垂直方向からの所定の荷重を加えて加圧する。▲5▼ 工程▲5▼(接着剤硬化工程)
ヘッドを本接合用装置に取付けて加圧した状態のまま一定温度の恒温層に一定時間入れて加熱硬化させる。加熱後、本接合用装置からヘッドを取り出して接合工程を終了する。
【0042】
このように予めアクチュエータユニット1と液室ユニット2とを別個に組立ておき、その後アクチュエータユニット1と液室ユニット2とを熱硬化型接着剤を用いて接着接合することによって、ユニット間の組立性の信頼性が向上し、インク噴射特性が安定し、組立作業の作業性も向上する。
【0043】
そして、振動板を支持する支持体との接合部に、両者の主たる接合を行う領域と仮接合を行う領域とを設けることによって、予め仮接合用の接着剤を塗布しておくことができて、塗布工法が簡単になり、工数が低減されるので、コストを減少することができる。また、高精度の位置決めをした後に仮接合用接着剤を塗布する必要がないので、塗布条件によって発生するおそれのある位置決め後作業がなく、位置ずれの防止を回避することができる。
【0044】
また、支持体の接合部に仮接合を行う領域を複数設けることによって仮接合の位置ずれを防止することができる。すなわち、仮接合の領域の面積が大きすぎると本接合の必要接合強度が不足することになり、逆に小さすぎると仮接合強度が不足して位置決め後の位置ずれが発生する。そこで、個々の仮接合領域の面積は小さくともスパンを広げて複数箇所設けることで仮接合強度を大幅に向上することができる。
【0045】
さらに、仮接合を行う領域として凹部を設けることによって、仮接合用接着剤と本接合用接着剤との混合を防止することができると共に、一定量の仮接合用接着剤を保持することができて、仮接合強度を向上することができる。すなわち、支持体のフラットな接合面に仮接合用接着剤と本接合用接着剤とを同じように塗布すると、振動板を圧接したときに仮接合用接着剤が押し広げられて本接合用接着剤が正常に付いていない状態になったり、2種の接着剤が混じり合って正常な硬化ができず、必要な強度が得られなくなるおそれがあるが、上述の凹部とすることでこれらの不都合を避けることができる。
【0046】
また、この第1実施例においては、UV光を照射するために液室ユニット2の角部四隅をカットして面取り部60を設けているが、液室ユニットの製作上の理由(精度維持等)やヘッド構成上の理由(ヘッドカバーの形状等)などから面取り部を設けられない場合には、フレーム部材13を透明材料で形成する。
【0047】
これによって支持体(フレーム部材13)の側面からUV光を照射してUV硬化型接着剤を硬化させることができ、組立て性が向上し、また、自動組立て装置で組立てを行う場合に狭いところにUV光を導く必要がなくなり、装置構成が簡単になる。仮接合用接着剤としては硬化時間が短く速やかに本接合に移行することができる必要があり、UV硬化型接着剤が最も適している。UV硬化型接着剤を硬化させるためにUV光を照射しなければならず、そのために塗布構造を選ばなければならないが、支持体自体を透明材料とすることで塗布構造に対する制限を少なくすることができる。
【0048】
次に、本発明の第2実施例のついて図8を参照して説明する。この実施例においては、フレーム部材13の四隅に2辺に臨む溝部54を形成することで、フレーム部材13表面を仮接合領域53と本接合領域51とに分割している。なお、このフレーム部材13を用いる場合には、液室ユニット2としては図6に示すような面取り部60を有していないもの、つまり、図1に示したような外形状の液室ユニット2を用いる方が好ましい。また、溝部54は2箇所或いは3箇所に設けて仮接合領域を2箇所或いは3箇所とすることもできる。
【0049】
このフレーム部材13を用いる場合には、仮接合領域53に硬化が瞬間に生じる所謂瞬間接着剤(例えばシアノアクリレート系接着剤、商品名:アロンアルファなど)を塗布して、瞬間的に仮接合を行う場合に適している。このような瞬間的に硬化する接着剤は、粘性が低く浸透性が高いので、溝部54がなければ浸透して広がってしまい、本接合領域の接着強度が低下するおそれがある。
【0050】
この場合、フレーム部材13の本接合領域51及び仮接合領域53とは同じ高さとしているが、使用する接着剤の種類によっては段差を設けるようにすることもできる。
【0051】
次に、本発明の第3実施例について図9を参照して説明する。この実施例においては、フレーム部材13の表面2箇所に平面円形状の溝部56を形成して、フレーム部材13の表面を仮接合領域56と本接合領域51とに分割している。このようにしても上記実施例と同様の効果を得ることができる。
【0052】
なお、上記各実施例においては、仮接合を行う領域及び本接合を行う領域をフレーム部材に設けた例について説明したが、振動板若しくは液室ユニット側に設けることもできるが、フレーム部材側に設ける方が容易である。
【0055】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1のインクジェットヘッドによれば、仮接合を行う領域が振動板及び支持体の少なくとも一方に形成した凹部からなる構成としたので、仮接合用接着剤及び本接合用接着剤の混合等を避けて一定量の仮接合用接着剤を保持でき、仮接合強度が向上する。
【0056】
請求項2のインクジェットヘッドによれば、仮接合を行う領域と主たる接合を行う領域とが振動板及び支持体の少なくとも一方に形成した溝部で分離されている構成としたので、粘度の低い浸透性の高い仮接合用接着剤を用いた場合でも仮接合用接着剤及び本接合用接着剤の混合等を避けて一定量の仮接合用接着剤を保持でき、仮接合強度が向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用するインクジェットヘッドの分解斜視図
【図2】図1のユニット接合体の斜視図
【図3】図2のA−A線に沿う断面図
【図4】図2のB−B線に沿う断面図
【図5】本発明の第1実施例に係るフレーム部材の斜視図
【図6】同実施例の液室ユニットの斜視図
【図7】同実施例のインクジェットヘッドの組立て状態を示す斜視図
【図8】本発明の第2実施例に係るフレーム部材の斜視図
【図9】本発明の第3実施例に係るフレーム部材の斜視図
【符号の説明】
1…アクチュエータユニット、2…液室ユニット、11…基板、12…圧電素子、13…フレーム部材、22…振動板、26…ノズルプレート、50…凹部、51…本接合領域、53,55…仮接合領域、54,56…溝部。
Claims (2)
- 複数の電気機械変換素子の変位を振動板を介してインク液室に伝達することで複数のノズルからインク滴を吐出するインクジェットヘッドにおいて、前記振動板とこの振動板を支持する支持体との接合部に、両者の主たる接合を行う領域と仮接合を行う領域とを設け、前記仮接合を行う領域が前記振動板及び支持体の少なくとも一方に形成した凹部からなることを特徴とするインクジェットヘッド。
- 複数の電気機械変換素子の変位を振動板を介してインク液室に伝達することで複数のノズルからインク滴を吐出するインクジェットヘッドにおいて、前記振動板とこの振動板を支持する支持体との接合部に、両者の主たる接合を行う領域と仮接合を行う領域とを設け、前記仮接合を行う領域と主たる接合を行う領域とが前記振動板及び支持体の少なくとも一方に形成した溝部で分離されていることを特徴とするインクジェットヘッド。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP25214496A JP3539653B2 (ja) | 1996-09-25 | 1996-09-25 | インクジェットヘッド |
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JP25214496A JP3539653B2 (ja) | 1996-09-25 | 1996-09-25 | インクジェットヘッド |
Publications (2)
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