JP5022540B2 - インクジェットヘッド及びインクジェットヘッドの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、インクジェットヘッド及びインクジェットヘッドの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
小液滴のインクを飛翔させ、対象物に付着させるインクジェット技術は、紙、フィルム、布に文字や画像をプリントするプリンタ、FAX、コピー機など広い分野に応用されている。
【0003】
インクを小液滴にして飛翔させるインクジェットヘッドの製造にはしばしば接着剤が用いられる。インクジェットに使用される接着剤に必要とされる性能には以下のようなものがある。
【0004】
製造上の性能として未硬化時の保存安定性が高いこと、硬化温度が低いこと、塗設時の粘度が一定の範囲にあること、塗設方法への適性があることなどが挙げられる。
【0005】
接着作業前または作業中に意図しない硬化が進行して接着後の性能を低下させないために未硬化時の保存安定性が高いことが必要である。主剤と硬化剤を接着前に混合する2液性の接着剤は保存安定性にすぐれるが、硬化を均一に進ませるための2液の均一な混合が必要で、作業性に劣り、また作業中に硬化が進み、接着剤の物性値が経時で変化するために塗設条件が変化してしまう。常温で硬化が進行しない潜在形の硬化剤を使用した1液性の接着剤が好ましいが、常温での硬化を完全に阻止することが難しく、通常は低温で保存する必要がある。
【0006】
インクジェットヘッドの接着は10μm以下のきわめて高い寸法精度が要求されるが、接着時の硬化温度が高いと接着される部材間の熱膨張率の違いで、位置精度を保つことが困難となる。
【0007】
また圧電素子は通常100〜150℃以上に温度をあげると分極が消失して圧電効果が見られなくなったり、効率が低下したりする。このために硬化温度は低いほどよい。しかし、単に低い温度で硬化させると、架橋密度が上がらず、硬化後の接着強度、弾性率、耐インク性が低下する。
【0008】
インクジェットヘッドは100μm以下のノズルやインク流路から成り立っており、接着面以外への接着剤のはみ出しは数μm以下にする必要がある。このため、接着剤の塗設は転写、スクリーン印刷、フレキソ印刷などで行われ、特にスクリーン印刷、フレキソ印刷が好ましいが、このような印刷適性が要求させる。特に粘度は高すぎると塗設できないし、低すぎるとはみ出し、流れ出しが生じるので、一定の範囲にあることが必要である。
【0009】
はみ出し、流れ出し防止や位置精度に効果がある方法として接着剤を接着させる少なくとも一方の部材に塗設した後に、Bステージ化させて接着することが好ましい。Bステージとは硬化(重合反応)がある程度進行したところで一旦重合反応の進行を停止させ、常温ではほとんど硬化が進まなくなる安定な状態となることをいう。
【0010】
硬化後の性能として、接着強度が高いこと、耐インク性があること、弾性率が高いことなどが挙げられる。接着部分がヘッドの他の部分の耐久時間以内にはがれてしまわないだけの接着強度とその耐久性が必要である。特にインクに触れる部分は、インクに触れる部分がインクで膨潤すると接着強度が低下したり、インク漏れを起こしたりするために、インクで膨潤しない耐インク性が必要である。接着後の弾性率は、圧力発生部材の接着では、弾性率が低いと圧力が逃げて効率が低下するために、特に高いことが要求される。
【0011】
接着剤として、通常は溶剤を含まない、エポキシ系接着剤、シリコ−ン系接着剤などが使用される。シリコ−ン系接着剤は接着力が小さいためにヘッドの主要機能部分にはエポキシ系接着剤が多く使われる。
【0012】
【問題を解決しようとする課題】
これまでに知られている接着剤ではインクジェットに用いられる接着剤として必要な性能を充分に満たすものはなかった。たとえばエポキシ系接着剤であるエポキシテクノロジー社製のエポテック353NDは主剤と硬化剤を混合して使用する2液性の接着剤のために、均一に混合するための作業が難しく、バラツキのない製造をすることが難しかった。またBステージが安定でないために1段階加熱による接着を行わなくてはならないので、接着剤のはみ出しや流れ出し、熱膨張による接着位置精度の低下などの問題があった。同様にエポキシ系接着剤である田岡化学社製のテクノダインAH3041Wは濡れ性が悪く、接着する部材の材質によっては接着しなかったり、部材の前処理が必要だったりする問題があった。また同様にエポキシ系接着剤である日立化成社製ハイボン3000、セメダイン社製セメダイン1500、EP−007、アルファ技研社製R−2007、H−1004などは水などの溶媒で膨潤し、接着強度が低下したり、インクの漏れをおこしたりするために使用できなかった。
【0013】
そこで、作業性を犠牲にしたり、接着する場所によって使用する接着剤を使い分けたり、二つの部材の接着に2種類の接着剤を積層して使ったり、接着剤の上にインクから接着剤を保護する保護膜をつけたりするなどの方法が取られていた。しかしいずれも接着工程の工数の増加、コストの上昇、製品のバラツキの増大などの問題があった。本発明は、作業性がよく、接着後の性能に優れた接着剤を用いたインクジェットヘッド及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために本発明のインクジェットヘッド及びその製造方法は、以下のように構成した。
【0015】
請求項1に記載の発明は、圧力室を形成する少なくとも2つの部材を接着剤で接合したインクジェットヘッドにおいて、接合部分の接着剤の少なくとも一部に、エポキシ樹脂と、ジシアンジアミドおよび/またはジシアンジアミドの誘導体と、脂肪族アミンエポキシアダクトとを含有し、前記ジシアンジアミドおよび/またはジシアンジアミドの誘導体が、下記条件を満たす接着剤を用いたことを特徴とするインクジェットヘッドである。
0.7≦〔ジシアンジアミドおよび/またはジシアンジアミドの誘導体の特定水素の原子数〕/エポキシ樹脂のエポキシ基の数≦0.9
(ただし、ジシアンジアミドおよび/またはジシアンジアミドの誘導体の特定水素の原子数とは、窒素原子に結合している水素原子の数を指す。)
【0016】
請求項1に記載の発明によると、未使用時の保存性に優れた1液性で、接着しようとする部材への濡れ性が良く、低温で安定なBステージ状態を作ることができ、低い温度で硬化させることのできる接着剤を使用して製造するために、接着強度が大きく、かつそのバラツキが小さく、接着剤のはみ出しや流れ出しがなく、高い位置精度のインクジェットヘッドを提供することができる。また、接着後の硬度を高くすることができるので吐出圧力の損失が小さく、硬化後のインクによる膨潤を小さくすることができるのでさまざまな種類のインクを吐出することができるインクジェットヘッドを提供することができる。
【0017】
請求項2に記載の発明は、前記圧力室を形成する第1部材と第2部材の接合部分、及び、前記第1部材と第3部材の接合部分の接着剤に同一組成の前記接着剤を用いることを特徴とする請求項1記載のインクジェットヘッドである。
【0018】
請求項3に記載の発明は、基材と、該基材上に取り付けられ複数のインク流路を区画する圧電素子からなる隔壁と、前記複数のインク流路の天井を塞ぐカバー基板とにより、前記隔壁の変形によって発生させる圧力でインクを吐出させる前記圧力室が形成され、前記隔壁と前記基材の接合部分、及び、前記隔壁と前記カバー基板の接合部分の接着剤に前記接着剤を用いることを特徴とする請求項1又は2記載のインクジェットヘッドである。
【0019】
請求項4に記載の発明は、前記脂肪族アミンエポキシアダクトは、脂肪族ポリアミンエポキシアダクトであることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のインクジェットヘッドである。
【0020】
請求項5に記載の発明は、前記エポキシ樹脂はビスフェノール型エポキシ樹脂であり、前記脂肪族ポリアミンエポキシアダクトはジエチレントリアミンのフェノールノボラック型エポキシ樹脂のアダクトであることを特徴とする請求項4記載のインクジェットヘッドである。
【0021】
請求項6に記載の発明は、前記接着剤が、硬化後にインクに浸漬したときの重量変化率が4%以下であることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載のインクジェットヘッドである。
【0022】
請求項6に記載の発明によると、接着剤が、インクにより膨潤して接着強度が低下したり、インク漏れを起こしたりすることがないインクジェットヘッドを提供することができる。
【0023】
請求項7に記載の発明は、請求項1〜6の何れかに記載のインクジェットヘッドを製造するためのインクジェットヘッドの製造方法において、前記圧力室を形成する2つの部材を接合するために少なくとも一方の部材に、前記接着剤を塗設する工程と、前記塗設した接着剤を加熱してBステージ化させる工程と、前記2つの部材を加圧しつつ前記接着剤を加熱し硬化させて前記2つの部材を接合する工程とを有することを特徴とするインクジェットヘッドの製造方法である。
【0024】
請求項7に記載の発明によると、硬化後の特性に優れたエポキシ樹脂接着剤を用いて、接着剤のはみ出しや流れ出しがなく、高い位置精度のインクジェットヘッドを効率よく製造する方法を提供することができる。また、吐出のための圧力の損失が小さく、耐インク性が高いインクジェットヘッドの製造方法を提供することができる。
【0025】
請求項8に記載の発明は、前記接着剤の硬化温度が120℃以下であることを特徴とする請求項7記載のインクジェットヘッドの製造方法である。
【0026】
請求項8に記載の発明によると、熱膨張による接着位置精度の低下やインクの吐出エネルギーを発生させる圧電素子の劣化をおこさないインクジェットヘッドの製造方法を提供することができる。
【0027】
請求項9に記載の発明は、前記接着剤を100℃以下の温度でBステージ化することを特徴とする請求項7記載のインクジェットヘッドの製造方法である。
【0028】
請求項9に記載の発明によると、Bステージが安定で、熱膨張による接着位置精度の低下やインクの吐出エネルギーを発生させる圧電素子の劣化をおこさないインクジェットヘッドの製造方法を提供することができる。
【0029】
請求項10に記載の発明は、前記接着剤の初期粘度が25℃において3000センチポイズ以上200000センチポイズ以下であることを特徴とする請求項7〜9の何れかに記載のインクジェットヘッドの製造方法である。
【0030】
請求項10に記載の発明によると、接着剤の塗設の容易なインクジェットヘッドの製造方法を提供することができる。
【0031】
請求項11に記載の発明は、前記接着剤の塗設をスクリーン印刷もしくはフレキソ印刷で行うことを特徴とする請求項7〜10の何れかに記載のインクジェットヘッドの製造方法である。
【0032】
請求項11に記載の発明によると、接着剤の厚みのバラツキがなく、製造効率の高いインクジェットヘッドの製造方法を提供することができる。
【0037】
本発明の接着剤は、好ましくは、圧電素子を用いたインクジェットヘッドや発熱体を用いたサーマルタイプのインクジェットヘッド等のインクジェットヘッドを構成する部材の少なくとも2つの部材を接合するのに適用可能な接着剤である。本発明の接着剤に含まれる代表的なエポキシ樹脂は、例えば、下記構造式(1)に示されるようなビスフェノール型エポキシ樹脂、下記構造式(2)に示されるようなフェノールノボラック型エポキシ樹脂、または下記構造式(3)に示されるようなクレゾールノボラック型エポキシ樹脂である(ただしn=0〜10)。
【0038】
【化1】
【化2】
【化3】
【0039】
構造式(1)のエポキシ樹脂の骨格部分は、その構造式(1)に示したビスフェノールA(1−1)のほか、テトラブロムビスフェノールA(1−2)、ビスフェノールF(1−3)、ビスフェノールAD(1−4)、ビスフェノールZ(1−5)、(1−6)、(1−7)、(1−8)、(1−9)など、従来のエポキシ樹脂接着剤の主剤として知られている構造でもよい。
【0040】
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】
【0041】
本発明の接着剤に含まれるエポキシ樹脂としては、上記に例示した代表的なエポキシ樹脂以外に、例えば、下記構造式(4)〜(16)に示されるようなエポキシ樹脂であってもよい。下記構造式では、n=0での単純表現で示したが、nが正の整数である重合されたエポキシ樹脂であってもよい。
【0042】
【化13】
【化14】
【化15】
【化16】
【化17】
【化18】
【化19】
【化20】
【化21】
【化22】
【化23】
【化24】
【化25】
尚、l、mは0を含む正の整数である。
【0043】
本発明の接着剤に含まれるジシアンジアミドおよび/またはジシアンジアミドの誘導体は、硬化剤として機能し、例えば、ジシアンジアミド(H2N−C(NH)−NH−CN)、および/またはその誘導体(代表的なものにo−トリルビグアニド、α−2,5−ジメチルビグアニド、α,ω−ジフェニルビグアニド、5−ヒドロキシナフチル−1−ビグアニド、α,α’−ビスグラニルグアニジノジフェニルエーテル、フェニルビグアニド、p−クロルフェニルビグアニド、α−バンジルビグアニド、α,α’−ヘキサメチレン[ω−(p−クロルフェニル)]ビグアニド、o−トリルビグアニド亜鉛塩、ジフェニルビグアニド鉄塩、フェニルビグアニド銅塩、ビグアニドニッケル塩、エチレンビスビグアニド塩酸塩、ラウリルビグアニド塩酸塩、フェニルビグアニドオキサレート)などが使用できる。ジシアンジアミドおよび/またはその誘導体を用いると、常温で硬化反応がほとんど進行せず、あらかじめ主剤と硬化剤を混合した状態で保存できる一液型の安定な接着剤として使用できるために作業性に優れ、またBステージを安定に得ることができる。
【0044】
本明細書中、ジシアンジアミドおよび/またはジシアンジアミドの誘導体の特定水素の原子数とは、窒素原子に結合している水素原子の数を指すものである。例えば、ジシアンジアミドの構造は種々の異性体、共役が考えられるが、最も一般的な例は、下記構造式(a)で表される。このとき、特定水素は窒素原子に結合した4個の水素原子となり、特定水素の原子数は4となる。また、ジシアンジアミドの誘導体の一例であるo−トリルビグアニドは、例えば、下記構造式(b)で表される。このとき、特定水素は窒素原子に結合した6個の水素原子となり、ベンゼン環の炭素原子やメチル基の炭素原子等の窒素以外の原子に結合した水素原子は含まれず、特定水素の原子数は6となる。
【0045】
【化26】
【化27】
【0046】
これらエポキシ樹脂の主剤および硬化剤に加えて、ポリアミンをエポキシ樹脂、エチレンオキシド、プロピレンオキシドのアダクトとして添加すると、反応促進剤としてはたらき、硬化温度を低下させることができる。特に脂肪族アミンエポキシアダクトを反応促進剤として用いることにより100℃以下で硬化反応が開始するので、熱膨張による接着位置精度の低下やインクの吐出エネルギーを発生させる圧電素子の劣化をおこさない温度で硬化させても接着後に十分な接着強度、弾性率、耐インク性、耐久性を得ることができる。また脂肪族アミンエポキシアダクトを添加すると接着面への濡れ性が改善され、接着強度が高くなる。
【0047】
その他に、微粒子を分散添加することにより、接着剤の粘度、接着後の厚さを制御することができる。アルミナ、シリカなどを、径が0.01〜10μmの範囲で単独もしくは2種類以上添加することが好ましい。また、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維などを分散添加することにより接着後の弾性率を増すことができる。
【0048】
次に、本発明の接着剤をインクに接する接合部分に用いたインクジェットヘッドに使用可能なインクについて説明する。
【0049】
本発明のインクジェットヘッドで吐出させることのできるインクには、例えば、水性溶媒に水溶性染料を溶解させた水性染料インク、油性溶媒に油溶性染料を溶解させた油性染料インク、水性溶媒に水に不溶または難溶の染料を分散させた分散染料インク、水性溶媒または油性溶媒に顔料を分散させた水性または油性の顔料インクなどが挙げられる。溶媒として使用される代表的な化合物としては、例えば、水、アルコール類(例えばメタノール、エタノール、プロパノール)、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、ナフテン系炭化水素、オレフィン系炭化水素、脂肪酸及び脂肪酸エステル、安息香酸エステル、フタル酸エステル、アミド類(例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等)、ケトンあるいはケトアルコール類(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール等)、ポリアルキレングリコール類(例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等)、アルキレングリコール類(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、1、2、6−ヘキサントリオール、チオジグリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール等)、グリセリン、エーテル類(例えばアニソール、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールブチルエーテル、ジエチレングリコールメチル(またはエチル)エーテル、トリエチレングリコールモノメチル(またはエチル)エーテル等)等が挙げられ、通常は、それら幾つかの混合物が用いられる。
【0050】
顔料は、水、油などに不溶の白色または有色の粉体である。染料には、直接染料、酸性染料、反応性染料、塩基性染料、分散染料などがあり、単独で、あるいは、複数種類を併用して溶媒中に溶解または分散されて使用される。分散染料とは油には可溶であるが、水に不溶または難溶で、水中に分散した系での染色に用いられる染料を指す。
【0051】
これらの顔料及び分散染料は、分散剤及びその他所望する諸目的に応じて必要な添加物と共に混合して分散機により分散して用いられる。分散剤としては、例えば界面活性剤が用いられ、この界面活性剤としては、陽イオン性、陰イオン性、両性、非イオン性のいずれも用いることができる。また、インクジェットヘッド用のインクには、インク液滴のメディア中への浸透を加速するために、分散剤とは別に界面活性剤を添加することが好ましい。この界面活性剤としては、インクに対して保存安定性等に悪影響を及ぼさないものであれば特に限定されるものではなく、例えば、分散剤として用いられる界面活性剤と同様のものを用いることができる。
【0052】
本発明のインクジェットヘッドに用いられるインクには、電気伝導度調節剤を添加することもできる。電気伝導度調節剤としては、例えば、塩化カリウム、塩化アンモニウム、硫酸ナトリウム、硝酸ナトリウム、塩化ナトリウムなどの無機塩やトリエタノールアミンなどの水溶性アミンが用いられる。また、吐出安定性、プリントヘッドやインクカートリッジとの適合性、保存安定性、画像保存性、その他の諸性能向上を目的として、必要に応じて、更に、粘度調整剤、比抵抗調整剤、皮膜形成剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、退色防止剤、防錆剤等を添加することもできる。
【0053】
本発明のインクジェットヘッドは、通常の印字用のインク以外にもさまざまな化合物をそのまま、または溶媒に溶解又は分散させて吐出することができ、液晶用カラーフィルターの製造、有機ELディスプレイの製造などに応用することができる。
【0054】
【発明の実施の形態】
以下、この発明のインクジェットヘッド及びインクジェットヘッドの製造方法に係る実施の形態を説明するが、この発明の態様はこれに限定されるものではない。
【0055】
(第1の実施の形態)
図1はせん断モード型のインクジェットヘッドの斜視図であり、図2は圧電素子の変形を示す図であり、図3は接着剤層を含めた部分断面図である。
【0056】
インクジェットヘッド1は、基材2上に、分極した圧電素子2bを取り付けて溝2aを複数形成し、この溝2aの両隔壁となる圧電素子2bの内側に電極3(図2、図3参照)を設け、カバー基板4(図3参照)を取り付けて溝2aの天井を塞ぎ、さらに溝2aの出口側をノズルプレート5で覆い、入口側をインクの流動を制限する部材である供給プレート6で覆い、インクを吐出させるためのエネルギーを発生させる圧力室Aと空気室Bを交互に複数形成し、供給プレート6側にインク供給部7を接続している。
【0057】
ノズルプレート5には、圧力室Aに対応する部分にノズル孔5aが形成される。このノズル孔5aを吐出方向に細くなるように形成すると、インクの流動抵抗が低くなり、また気泡が排出されやすいので好ましい。供給プレート6には、圧力室Aに対応する部分にインク導入口6aが形成される。インク導入口6aの大きさは、圧力室断面と同じ大きさにすると、ここに気泡が停滞しないので好ましいが、インク導入口6aを絞ることにより圧力室内のインクの圧力波の振動や、ノズル孔内のインクメニスカスの振動を抑制することができ、インク吐出後の圧力室内やノズル孔内のインクの状態が早く初期状態に復帰するので、高速駆動を行う場合には、たとえばインク導入口6aの大きさをノズル孔と同じ大きさにすると駆動が安定するので好ましい。
【0058】
溝2aは、長さ0.5〜10.0mm、深さ50〜1000μm、幅10〜1000μm程度にするのが好ましく、印刷密度の倍の密度で設ける。例えば、180DPIで印刷したければ、25400/360=70μmおきに設ける。空気室Bの溝幅は、圧力室Aの溝幅より狭い方が、ノズル密度を高めることができるので好ましい。しかし、必要に応じて空気室の溝幅を適宜選択することが好ましい。
【0059】
このように、基材2、分極した圧電素子2b、カバー基板4、ノズルプレート5及び供給プレート6によりヘッド本体が構成され、ヘッド本体に圧力室Aと空気室Bを圧電素子2bからなる隔壁で区画して交互に複数形成されている。ヘッド本体は、圧力室Aの出口側にインクを吐出するノズル孔5aを有するとともに、圧力室Aの入口側にノズル孔5aと対向する位置にインク導入口6aを有し、このインク導入口6aからノズル孔5aへインクを供給する圧力室A兼インク流路が形成されている。
【0060】
インクジェットヘッドの電極3の形成は、例えば、基材2に圧電素子2aを取り付け、その頭頂部に保護膜を設けた後、溝隔壁の延長面と一定の角度をなす面内にある蒸発源から、電極となる金属を蒸発させて圧電素子全面に金属を蒸着し、この金属の蒸着後に保護膜を除去して電極3を形成する。このようにすることにより、簡単に溝隔壁に電極3を形成することができる。電極となる金属には、例えば、金、銀、アルミニウム、パラジウム、ニッケル、クロム、タンタル、チタン等を用いることができる。特に、電気的特性、耐蝕性、加工性の点から、金、アルミニウム、ニッケルクロム合金が好ましい。また、無電解メッキにより金、銀、銅、ニッケルの電極を形成してもよい。
【0061】
圧力室A及び空気室Bの左右隔壁(圧電素子)に別々に形成した電極3を互に繋ぐ接続電極の形成には、例えば、圧電素子2bにカバー基板4を接合した後にインク供給側端面とカバー基板4の上面を感光性樹脂層でマスクし、基材2の溝底壁部の一端を蒸着して各溝内部の両隔壁に設けた電極3と連通する接続電極を形成することにより、簡単に各溝内部の両隔壁に設置された電極3,3と連通する接続電極を形成することができる。
【0062】
そして、各溝内部の両隔壁に設けられた電極3,3と接続電極を含む面にポリパラキシリレン被膜(以下、パリレン膜という)を被着して、電極3,3及び接続電極を絶縁することができる。これは、圧力室Aの電極に電圧を掛け、導電性のインクを使用する場合に、短絡して、吐出できなくなったり、インクを電気分解して、気泡を発生させたり、電極を腐蝕させたりすることを防止するためである。
【0063】
この絶縁膜として、パリレン膜を用いることが好ましい。このパリレン膜は、固体のジパラキシリレンダイマーを蒸着源とするCVD(chemical vapour Deposition)法により形成する。即ち、ジパラキシリレンダイマーが気化、熱分解して発生したジラジカルパラキシリレンが、ヘッド基体上に吸着し重合反応して被膜を形成するものである。
【0064】
パリレン膜を設けた圧力室に気泡が混入すると、パリレン膜面に付着してこびりつき、抜けにくい。このためパリレン膜の表面を酸素プラズマ処理して、親水化することが好ましい。
【0065】
本実施の形態では、ヘッド本体に圧力室Aと空気室Bを隔壁で区画して交互に複数形成されており、圧電素子2aの変形の影響が、空気室Bで遮断され、他の圧力室Aに及ばないので、全圧力室Aから同時に吐出でき、高い周波数で駆動できるようになっている。しかし、空気室Bを設けずに隣り合う圧力室Aを同時に吐出しないように位相をずらして駆動することも可能である。更に、圧力室Aにインク導入口6aからノズル孔5aへインクを供給するストレートなインク流路を形成することにより、インク流路に屈曲部を持たないので、ここに、気泡が停滞しないようにしているが、カバー基板や基材にインク導入口を設ける構成も可能である。
【0066】
本実施の形態のインクジェットヘッド1に使用する圧電素子は、チタン酸ジルコン酸鉛(商品名PZT)が、充填密度が大きく、圧電定数が大きく、加工性が良いので好ましい。PZTは、焼成後、温度を下げると、急に結晶構造が変化して、原子がズレ、片側がプラス、反対側がマイナスという双極子の形の細かい結晶の集まりになる。こうした自発分極は方向がランダムで、極性を互いに打ち消しあっているので、更に分極処理が必要となる。
【0067】
分極処理は、PZTの薄板を電極で挟み、シリコン油中に漬けて、10〜35kv/cm程度の高電界を掛けて分極する。分極したPZTに、図3に示すように分極方向に直角に電圧を掛けると、圧電素子(PZT)の隔壁が圧電滑り効果により、斜め方向にくの字形に剪断変形して、圧力室Aの容積が膨張して、インク供給部7からインクが圧力室Aに供給される。この時、圧力室内に負の圧力波が発生して、インク中を伝わり、時間L/v(L:圧力室の長さ、vインク中の音速)経過すると、圧力波が圧力室末端に到達して反射され、位相が反転して正の圧力波になる。この時、電極に印加した電圧をグランドに落とすと、圧電素子の隔壁の変形が無くなり、圧力室Aの容積が縮小してインクに圧力が掛かる。反転した正の圧力波と、壁からの圧力が加え合わさって、高い圧力がインクに掛かり、ノズル孔5aからインクが吐出される。圧電素子の変形量が大きい程、インクに掛かる力が大きくなり、インク滴の吐出速度が早くなり、吐出の直進性が高くなり、画像の解像度が向上する。
【0068】
圧電素子の変形を大きくするためには、1枚のPZTを使用して、図2(a)に示すように、その上半分に電極を設けて、上半分を変形させるよりも、図2(b)に示すように2枚のPZTを、分極方向が反対になるように接合して、全面に電極を設け、2枚のPZTに電圧を掛けて使用することが好ましい。これはシェブロン型として特公平6−61936号公報、特公平6−6375号公報に開示されている。2枚のPZTを分極方向が反対になるように接合して使用すると、1枚のPZTの場合よりせん断変形量が倍になるので、同じ変形量を得るには、駆動電圧が1/2ですむ。反対方向に分極した2枚のPZTを接合し、それを基材に接合して隔壁を形成し、圧力室の電極に電圧を掛ける場合には、隔壁の全面に電極を設け、溝の底部には設けないようにすることが好ましい。
【0069】
本実施の形態では、図3に示すように、この分極した2枚の圧電素子を接着剤80で接合した圧電素子2bを用い、それを基材2に接着剤8で接合することによって、隔壁により区切られるインク流路を備えたヘッド本体を形成し、隔壁の側面に金属を蒸着させて電極を形成した後、このヘッド本体にカバー基板4を接着剤8で接合して覆っている。
【0070】
圧電素子と圧電素子間の接着剤80による接合では、接着剤層の硬化後の厚みを10〜15μm以下にすることが好ましく、これにより2枚の圧電素子間の接着の信頼性が十分となり、インクもれを起こし難く、電極の接続が阻害される虞を少なくできる。また、基材と圧電素子間の接着剤8による接合、及びカバー基板とヘッド本体間の接着剤8による接合では、接着剤層の硬化後の厚みを2μm以下にすることが好ましく、これにより圧電素子隔壁の変形を吸収してしまう虞を少なくできる。
【0071】
このようにして、2枚の圧電素子を分極方向が反対になるように接着剤で接合した圧電素子2bを、基材2に接着剤で接合して溝2aを形成して、溝2aの両隔壁に電極3を設けてから、溝2aの天井をカバー基板4で塞ぐように接着剤で接合し、溝2aの入口、出口を、インク導入口を持つ供給プレート6とノズル孔を持つノズルプレート5で塞ぐようにそれぞれ接着剤で接合する。
【0072】
基材2及びカバー基板4には、例えば、脱分極したPZT、フォルステライト(2MgO・SiO2)、ホトベール(住金ホトンセラミックス社製のホウケ酸ガラスを主成分にフッ素金雲母及びジルコニアを含む特殊セラミック)、MgO−TiO2−CaOの3成分系セラミック、BaTiO3、焼結アルミナ、石英ガラス類、焼結コーデュライト、焼結ムライトのいずれか、またはジルコニア、安定化ジルコニア、部分安定化ジルコニア、ジルコニア強化セラミックス、正方晶ジルコニア多結晶体等を使用することが好ましい。
【0073】
また、ノズルプレート5及び供給プレート6は、例えば、ステンレス、ポリイミド、ポリサルホン、ポリリエーテルサルホンなどの金属や樹脂が使用される。ノズルプレート5および供給プレート6は接着前にレーザー穿孔、機械穿孔によりノズル孔またはインク導入口を形成してもよいし、接着後にレーザー穿孔によりノズル孔またはインク導入口を形成してもよい。またノズルプレート5の吐出側の面は撥インク処理されることが多いが、接着前の接着面に撥インク処理させると接着剤による十分な接合が行われなくなる可能性があるので、接着前に撥インク処理を行う場合は、接着面が撥インク処理されないようにすることが好ましい。
【0074】
いずれの場合においても、接着剤による接合を行う際には、接着剤の塗設面は親水化処理をして濡れ性を増しておくことが好ましい。濡れ性を増す処理としては界面活性剤や、酸又はアルカリによる洗浄や、オゾン処理、コロナ放電処理、プラズマ処理が好ましい。
【0075】
本実施の形態では、基材と圧電素子間の接合、及びカバー基板とヘッド本体間の接合を行う接着剤8に、エポキシ樹脂と、ジシアンジアミドおよび/またはジシアンジアミドの誘導体と、脂肪族アミンエポキシアダクトとを含有する接着剤を用いるとともに、ノズルプレート5の接合、および供給プレート6の接合を行う接着剤にもエポキシ樹脂と、ジシアンジアミドおよび/またはジシアンジアミドの誘導体と、脂肪族アミンエポキシアダクトとを含有する接着剤を用いて、インクジェットヘッドを製造した。基材とカバー基板には脱分極したPZT、ノズルプレート5にはポリイミドを用いた。このエポキシ樹脂と、ジシアンジアミドおよび/またはジシアンジアミドの誘導体と、脂肪族アミンエポキシアダクトとを含有する接着剤の処方の具体例を次に説明する。
【0076】
構造式(1)(n=0を主とした混合物)のエポキシ樹脂を主剤とし、ジエチレントリアミンのフェノールノボラック型エポキシ樹脂のアダクトを反応促進剤として4重量%加えたものに、添加する硬化剤のジシアンジアミドの量を変化させたときのBステージの安定性、及び100℃での硬化後の特性(耐インク性、引っ張り弾性率)の結果を表1に示す。
【0077】
ここで、圧力室は、圧電素子によって発生させる圧力でインクを吐出させるものなので、圧力室がその圧力で変形してしまうとインクを吐出させる圧力が逃げてしまい、効率よくインクを吐出させることが難しくなる。圧力室を構成する複数の部材の接合に使用する接着剤の弾性率が低いと、圧力室が変形し、インクジェットヘッドの効率が低下する。従って圧力室を構成する部材の接合に使用する接着剤は、硬化後の弾性率が高いことが好ましく、引っ張り弾性率が100kg/cm2以上であることが好ましい。より好ましくは、200kg/cm2以上である。耐インク性は、接着剤がインク中の溶媒で膨潤することによる重量変化を測定したときのその変化率から評価した。水に60℃で1週間(168時間)浸漬する加速試験をおこなった。重量変化が4%以下であれば長期に渡って充分実用に耐え得るため好ましく、小さいほどより好ましい。表1において、Bステージは何れも安定で、Bステージを形成しないものはなかったが、Bステージ化後、室温にもどしても多少反応が緩やかに進行した場合を△、そのような進行も見受けられず、Bステージが非常に安定であった場合を○で示した。
【0078】
【表1】
【0079】
表1に示すように、0.1≦ジシアンジアミドの特定水素の原子数/エポキシ樹脂のエポキシ基の数≦1.0では、耐インク性が4%以下、引っ張り弾性率が100kg/cm2以上を満たし、Bステージも安定であるためにより好ましいものであった。また、0.6≦ジシアンジアミドの特定水素の原子数/エポキシ樹脂のエポキシ基の数≦0.9では、耐インク性、引っ張り弾性率、Bステージの安定性とも極めて良好であり更に好ましいものであった。尚、ジシアンジアミドの誘導体、または、ジシアンジアミドおよびジシアンジアミドの誘導体を添加した場合にも同様の結果が得られた。
【0080】
次に、構造式(1)(n=0を主とした混合物)の主剤にジシアンジアミドを硬化剤として、ジシアンジアミドの特定水素の原子数/エポキシ樹脂のエポキシ基の数=0.8、となる量、およびジエチレントリアミンのフェノールノボラック型エポキシ樹脂のアダクトを反応促進剤として4重量%加えたものを用意した。粘度は25℃で30000センチポイズであった。粘度が小さいと接着剤が接着する部分以外に流れ出し、インク流路をふさいだり狭隘化させたりするので、3000センチポイズ以上であることが好ましい。特に接着剤の塗設部分の近傍にアルミニウムを蒸着して形成した電極があると、アルミニウムの表面エネルギーがきわめて高く、接着剤が流れ込みやすい。また、接着剤を接着面にうすく伸ばして塗設するためには、粘度が200000センチポイズ以下であることが好ましい。
【0081】
この接着剤を接合する一方の部材にスクリーン印刷法で塗設し、2℃/分の昇温速度で80℃に昇温した後に30分間この温度を維持して硬化してBステージ化させた。その後室温に冷却した後に、もう一方の部材と重ね合わせ、1kg/cm2の圧力をかけながら1℃/分の昇温速度で100℃に昇温した後に30分間この温度を維持して硬化させた。硬化後に冷却し、寸法を測定すると、それぞれの部材の室温での寸法を維持したまま接着され、そりやずれがなかった。また接着剤のはみ出しも見られなかった。接着剤の変形による圧力損失が小さく、吐出効率が高いインクジェットヘッドを得ることができた。
【0082】
こうして製造したインクジェットヘッドを、従来から知られている接着剤である田岡化学社製テクノダインAH3041Wを使用して製造したヘッドと比較した。耐インク性は接着剤を各種の溶媒に60℃で1週間(168時間)浸漬し、溶媒で膨潤することによる重量の変化率から評価した。
【0083】
また、ヘッドを実際に駆動し、吐出速度が7m/sとなる駆動電圧を測定した。同じ吐出速度を得るための駆動電圧は低い方が出射効率が高いことになる。
【0084】
また、ヘッドを実際に駆動し、耐久試験を行った。108ショット以上射出できれば実用に耐え得るものであり、1010ショット以上射出できればヘッドの交換がほとんど不要となり好ましいものである。
【0085】
インク浸漬試験と耐久試験の結果と製造上の特性を以下の表2に示す。なお、比較例の接着剤は、部材への濡れ性が悪く、部材をプラズマ処理で前処理する必要があったので×とした。
【0086】
【表2】
【0087】
ノズルプレートのノズル孔の径5〜50μm程度であり、接着剤がノズル孔内に付着すると吐出しなくなったり、吐出されるインク滴が小さくなったりして性能に重大な影響を及ぼす。また、ノズルプレートには複数の圧力室に対応して複数のノズル孔が開けられている。したがって、ノズルプレートの接着剤による接合に要求される位置精度は、ノズル孔の径、ノズルプレートを接合する面のインク流路または圧力室の大きさなどによって異なるが、通常のインクジェットヘッドではノズル径以下の精度であることが好ましい。ノズル孔の間隔は10〜1000μmで、64〜1024程度のノズル孔が開けられているものが多いが、更にノズルの数は多くなる傾向にある。プリントしようとする紙幅全体を一度にプリントする方式のものでは、例えば7000ノズル、全幅が30cmのものが知られており、この場合30cmの範囲で10μm程度の位置精度であることが好ましく、これは33ppmに相当する。
【0088】
また更に、ノズルプレートに使用されるステンレスなどの熱膨張率は、小さいものでも1℃あたり10ppm程度以上であることを考慮すると、熱膨張率が異なる部材間の接合では、接着時の加熱で、いかに接着の位置精度を維持することが難しいかがわかる。そこで、本実施の形態では、エポキシ樹脂と、ジシアンジアミドおよび/またはジシアンジアミドの誘導体と、脂肪族アミンエポキシアダクトとを含有する接着剤を用いてBステージ化工程を経て接合を行っている。一方の部材に接着剤を塗設し、加熱して半硬化させてBステージ化することで、接着剤の流動性が失われ、また粘着性のある状態となる。これを室温まで冷却し、もう一方の部材と重ねるとBステージ化した接着剤の粘着力により二つの部材の相対的な位置が固定される。このとき、Bステージ化した接着剤は流動性がないのではみ出したり、流れ出したりすることがない。その後、重ね合わせた2つの部材を加圧しながら加熱することにより接着剤を硬化させて接合を完了している。
【0089】
本実施の形態では、接合する圧電素子の温度が上がると、圧電素子の圧電効果が失われるために、硬化温度を一定の温度より高い温度にすることは好ましくない。圧電効果が失われる温度は圧電素子の種類、成分や製造方法によっても異なるが、一般的に圧電効果の効率の高い圧電素子ほどこの温度が低い。本実施の形態のインクジェットヘッドに好ましいインク吐出効率が得られる圧電素子では120℃を超えると圧電効果の効率が低下するので、接着剤のBステージ化、硬化は120℃以下で行うことが好ましい。またBステージとは硬化(重合反応)がある程度進行したところで一旦重合反応の進行が停止し、硬化が進まなくなる状態であり、最終的な硬化が120℃以下で進行する場合は、Bステージ化は100℃以下で行われないと安定なBステージ状態とはならない。本実施の形態のエポキシ樹脂と、ジシアンジアミドおよび/またはジシアンジアミドの誘導体と、脂肪族アミンエポキシアダクトとを含有する接着剤は、このような低温でのBステージ化および硬化を実現できるものである。
【0090】
なお、本実施の形態では、基材2と圧電素子2bを別部材で構成し、両者を接着剤で接合した例を示したが、例えば、分極した2枚のPZT基板を貼り合わせた圧電素子のヘッド基板を用意し、ダイヤモンド砥石等により溝2aを形成する構成を採用することもできる。この場合にはヘッド構造が単純になる。
【0091】
(第2の実施の形態)
図4は圧力室壁に設けた圧電素子の伸縮変形によって圧力室の体積を変化させるタイプのインクジェットヘッドの概略断面図である。
【0092】
具体的には、例えば、複数のノズル孔15aが設けられた金属製のノズルプレート15と、圧力室Aのインク導入側に設けられてインクの流動を制限する部材である、複数のインク導入口16aが設けられた金属製の供給プレート16とを、流路プレート12aを挟んで積層、接合することにより、前記ノズル孔15aにインクを導くインク流路と、前記インク導入口16aにインクを導くインク供給流路とを、それぞれ内部に形成せしめ、これに金属や合成樹脂製のプレート12b,12c,12dの積層体にて形成された、前記各ノズル孔15aおよびインク導入口16aに対応する複数の開口を有する部材を重ね合わせて接着一体化することにより、前記ノズル孔15aおよびインク導入口16aの背後に、それぞれ、圧力室Aを形成すると共に、圧力室Aの壁部に圧電素子13を固着することによって形成される。
【0093】
インクジェットヘッド10は、圧力室Aに供給されたインクが、ノズルプレート15に設けられたノズル孔15aを通じて、吐出されるようになっている。より詳細には、ノズルプレート15と、圧力室のインク導入側に開口を有しインクの流動を制限する部材である供給プレート16が、それらの間に流路プレート12aを挟んで重ね合わされ、接着剤によって一体的に接合されてなる構造とされている。
【0094】
また、ノズルプレート15には、インク吐出用のノズル孔15aが、複数個(図示せず)、形成されていると共に、供給プレート16および流路プレート12aには、各ノズル孔15aに対応する位置において、板厚方向に貫通する通孔が、該ノズル孔15aよりも所定寸法大きな内径をもって形成されている。
【0095】
さらに、供給プレート16には、インク導入口16a(オリフィス孔)が、複数個(図示せず)、形成されていると共に、流路プレート12aに設けられた窓部が、ノズルプレート15および供給プレート16にて、両側から覆蓋されることにより、それらノズルプレート15と供給プレート16との間に、各インク導入口16aに連通せしめられたインク供給流路が形成されている。また、供給プレート16には、インク供給流路に対して、インクタンクから導かれるインクを供給する供給口が設けられている。
【0096】
なお、各プレート15,16,12aは、ノズル孔15aおよびインク導入口16aを高い寸法精度で形成するうえで、一般にプラスチックや、ニッケル乃至ステンレスといった金属を使用することが好ましい。また、インク導入口16aは図示されているように、インク流通方向に向って小径化するテーパ形状をもって、形成することが望ましい。
【0097】
一方、供給プレート16の反対側には、閉塞プレート12dと接続プレート12bが、スペーサプレート12cを挟んで重ね合わされてなる構造をもって、一体的に形成されている。
【0098】
接続プレート12bには、供給プレート16に形成された通孔およびインク導入口16aに対応する位置に、連通用開口部がそれぞれ形成されている。
【0099】
また、スペーサプレート12cには、長手矩形状の窓部が、複数個形成される。そして、それら各窓部に対して、接続プレート12bに設けられた各連通用開口部が開口するように、スペーサプレート12cが、接続プレート12bに対して重ね合わされている。
【0100】
このスペーサプレート12cの、接続プレート12bが重ね合わされた側とは反対側の面には、閉塞プレート12dが重ね合わされていて、この閉塞プレート12dで、窓部の開口が覆蓋されている。それによって、各連通用開口部を通じて外部に連通されたインクの圧力室Aが形成されている。
【0101】
閉塞プレート12d、スペーサプレート12cおよび接続プレート12bは、セラミックスで構成されることが好ましい。このセラミックスの材質は、成形性等の点から、アルミナ、ジルコニア等を使用することが好ましい。閉塞プレート12dの板厚は好ましくは50μm以下、より好ましくは3〜12μm程度、接続プレート12bの板厚は好ましくは10μm以上、より好ましくは50μm以上、スペーサプレート12cの板厚は好ましくは50μm以上、より好ましくは100μm以上である。
【0102】
このようにして形成された圧力室Aは、セラミックスの一体焼成品として形成することもできるが、各プレートを接着剤で接着して用いてもよい。
【0103】
閉塞プレート12dの外面上の、各インクの圧力室Aに対応する部位に、それぞれ、圧電素子13が設けられている。この圧電素子13は、閉塞プレート12d上に、下部電極13a,圧電素子膜13bおよび上部電極13aからなる圧電作動部を、膜形成法によって形成することによって形成されたものである。
【0104】
この場合には閉塞プレート12dとして、酸化ジルコニウムを主成分とするセラミック基板を使用することが好ましい。
【0105】
酸化イットリウム、酸化セリウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウムのうちの一つの化合物を単体で若しくは組み合わせて添加、含有することにより、酸化ジルコニウムは部分的に或いは完全に安定化される。それぞれの化合物の添加含有量は、酸化イットリウムは2モル%〜7モル%、酸化セリウムは6モル%〜15モル%、酸化マグネシウム、酸化カルシウムは5モル%〜12モル%とすることが好ましいが、その中でも、特に酸化イットリウムを部分安定化剤として用いることが好ましく、その場合は2モル%〜7モル%、更に好ましくは2モル%〜4モル%とすることが望ましい。そのような範囲で酸化イットリウムを添加・含有した酸化ジルコニウムは、その主たる結晶相が正方晶若しくは主として立方晶と正方晶からなる混晶において部分安定化され、優れた基板特性を与えることとなる。
【0106】
圧電作動部を構成する電極膜13a,13aの材料としては、熱処理温度並びに焼成温度程度の高温酸化雰囲気に耐えられる導体であれば、特に規制されるものではなく、例えば金属単体であっても、合金であっても良く、また絶縁性セラミックスやガラス等と、金属や合金との混合物であっても、更には導電性セラミックスであってもよい。好ましくは、白金、パラジウム、ロジウム等の高融点貴金属類、或いは銀―パラジウム、銀―白金、白金―パラジウム等の合金を主成分とする電極材料が用いられる。
【0107】
圧電作動部を構成する圧電素子膜13bの材料として好ましくは、PZTが用いられる。
【0108】
圧電素子13が一体的に設けられた、閉塞プレート12d、スペーサプレート12cおよび接続プレート12bは、その接続プレート12bが、図5に示されているように、供給プレート16に対して重ね合わされ、接着剤を用いて一体化されている。圧電素子13の作動により、インク供給流路を通じて導かれたインクが、インク導入口16aより圧力室Aに供給され通孔を通じ、ノズル孔15aより吐出されるインクジェットヘッド10が形成される。
【0109】
本実施の形態では、ノズルプレート15の流路プレート12aへの接合、供給プレート16の流路プレート12aへの接合、及び供給プレート16の接続プレート12bへの接合を行う接着剤に、第1の実施の形態と同じエポキシ樹脂と、ジシアンジアミドおよび/またはジシアンジアミドの誘導体と、脂肪族アミンエポキシアダクトとを含有する接着剤を用い、第1の実施の形態と同様にしてインクジェットヘッドを製造した。こうして製造されたインクジェットヘッドは、それぞれの部材の室温での寸法を維持したまま接合され、そりやずれの発生もなかった。また接着剤のはみ出しも見られなかった。更に、耐インク性の評価結果も第1の実施の形態と同様であった。
【0110】
本実施の形態では、圧力室内に電極がないので、第1の実施の形態のようにパリレン膜等の保護膜を設ける必要性はなく、インクに接する部分の接着剤による接合には、寧ろ耐インク性が高い接着剤を用いることが好ましく、本実施の形態はこれを実現したものである。これにより、圧力室は圧電素子によって発生させる圧力で変形してインクを吐出させる圧力が逃げてしまうことがなく、効率よくインクを吐出させることができた。また、接着剤が圧力室内にはみ出したり流れ込んで圧力室をふさいだり、狭隘化させたり、体積が変化すると、インクの流れが変化したりインクにかかる圧力が変化してインクの吐出に影響を与えることもなかった。
【0111】
更に、接着時の温度による圧電素子への影響もなく、圧電素子の圧電効果を失わせることもなかった。ここで、圧電素子を施した閉塞プレート12dを、同じくエポキシ樹脂と、ジシアンジアミドおよび/またはジシアンジアミドの誘導体と、脂肪族アミンエポキシアダクトとを含有する接着剤を用いて、スペーサプレート12cに接合し、接続プレート12bに接合した場合でも、同様な結果を得ることができた。
【0112】
(第3の実施の形態)
図5は圧力室壁に設けた圧電素子の伸縮変形によって圧力室の体積を変化させる第2の実施の形態と同様のタイプで、構造が異なるインクジェットヘッドの概略断面図である。
【0113】
基台21bは一端部、図では下方に後述する圧電素子23を固定するための側方に、突出した突部が形成されており、上端面には圧力室Aと圧電素子23とを隔離する振動板24が固定される。振動板24は、圧電素子23と当接する近傍に凹部を形成して圧電素子23の振動に応答しやすく形成される。振動板24の表面には流路形成部材及びインク導入口26aを有する供給板を兼ねたスペーサ部材22が固定されており、圧電素子23に対向する領域は振動板24と協同して圧力室を形成するよう構成され、またインク供給側のインク導入口26aは、図示しないがインクの流動を制限するよう圧力室Aの方向に流路が狭くなる形状とされる。スペーサ部材22の表面にはノズルプレート25が固定されており、圧電材料と導電材料とをそれぞれ層状に交互に積層した圧電素子23の配列形態に合せて複数のノズル孔25aが設けられている。また、インク供給側も、ノズルプレート25のノズル孔25aが設けられていない部分より開口部が封止されてインク供給部27が形成されている。
【0114】
圧電素子23は、一端を振動板24に固定され、また他端の側方を基台21bの突部に固定される。基台21bは、その下端を固定部材21aに固定されている。固定部材21aは、振動板24、スペーサ部材22、及びノズルプレート25を支持し、また基台21bを介して圧電素子23の自由端(図中、上端)を振動板24に当接させている。そして図から明らかなように、基台21bは、一端が、圧電素子23の自由端側の端面とほぼ一致し、また他端が圧電素子23の固定端側よりも突出する大きさに構成される。このような構造をしたインクジェットヘッド20は、圧電素子23に設けた電極に電圧を印加すると圧電素子23が軸方向に伸張し、圧電素子23の先端に固定された振動板24が伸張しノズルプレート25の方向に変位して圧力室Aを圧縮する。この圧力室Aの容積減少により圧力を受けたインクは、ノズル孔25aからからインク滴となって飛翔する。
【0115】
本実施の形態では、ノズルプレート25と、インク導入口を設けたインクの流動を規制する部材を兼用したスペーサ22との接合、及びそのスペーサ22と振動板24との接合を行う接着剤に、第1の実施の形態と同じエポキシ樹脂と、ジシアンジアミドおよび/またはジシアンジアミドの誘導体と、脂肪族アミンエポキシアダクトとを含有する接着剤を用い、第1の実施の形態と同様にしてインクジェットヘッドを製造した。こうして製造されたインクジェットヘッドは、それぞれの部材の室温での寸法を維持したまま接合され、そりやずれの発生もなかった。また接着剤のはみ出しも見られなかった。更に、耐インク性の評価結果も第1の実施の形態と同様であった。
【0116】
本実施の形態では、第2の実施の形態と同様に、圧力室内に電極がないので、パリレン膜等の保護膜を設ける必要性はなく、インクに接する部分の接着剤による接合に、耐インク性が高い接着剤を用いたものである。これにより、圧力室は圧電素子によって発生させる圧力で変形してインクを吐出させる圧力が逃げてしまうことがなく、効率よくインクを吐出させることができ、接着剤が圧力室内にはみ出したり流れ込んで圧力室をふさいだり、狭隘化させたり、体積が変化して、インクの流れが変化したりインクにかかる圧力が変化してインクの吐出に影響を与えることもなかった。
【0117】
また、本実施の形態では、圧電材料と導電材料とをそれぞれ層状に交互に積層した圧電素子23を用いているので、エネルギー効率が極めて高く、更に、圧電素子23が基台21bに固着されているため、基台21bの強度により圧電素子23に大きな強度を必要とすることがなく、また振動板24と基台21bとを固定部材21aを介して固定したので、基台21bを固定部材21aに相対的に位置調整することにより圧電素子23を振動板24に高い位置精度で当接可能となり、インクに接する接着剤にエポキシ樹脂と、ジシアンジアミドおよび/またはジシアンジアミドの誘導体と、脂肪族アミンエポキシアダクトとを含有する接着剤を用いたことと共に、インクジェットヘッドの性能向上と、コスト削減を図ることができるものである。
【0118】
(第4の実施の形態)
図6はサーマルタイプのインクジェットヘッドの概略斜視図である。
【0119】
本実施の形態のインクジェットヘッドは、例えば、インク供給部47を形成する部分と圧力室を形成する溝42aと設けた天板44に、インク導入口46aを有する供給プレート46を接合し、吐出ヒータ49を設けたヒータボード42と、供給プレート46を接合された天板44とを接合してインク供給部47及び圧力室Aを形成し、その後、圧力室Aのインク供給部47の側と反対側の開口を塞ぐように、ノズル孔45aを有するノズルプレート45を接合して、インクジェットヘッド40を構成する。このような構成を有するインクジェットヘッド40は、発熱体である吐出ヒータ49に通電して発熱体を急激に発熱させることにより、インクを気化させ或いは気泡を発生させてノズル孔45aからインクを吐出させるものであり、熱エネルギーを利用してインク滴を飛翔させるものである。
【0120】
本実施の形態では、供給プレート46の天板44への接合、天板44とヒータボード42との接合、及びそれら天板44およびヒータボード42へのノズルプレート45の接合を行う接着剤に、第1の実施の形態と同じエポキシ樹脂と、ジシアンジアミドおよび/またはジシアンジアミドの誘導体と、脂肪族アミンエポキシアダクトとを含有する接着剤を用い、第1の実施の形態と同様にしてインクジェットヘッドを製造した。こうして製造されたインクジェットヘッドは、それぞれの部材の室温での寸法を維持したまま接合され、そりやずれの発生もなかった。また接着剤のはみ出しも見られなかった。更に、耐インク性の評価結果も第1の実施の形態と同様であった。
【0121】
本実施の形態では、第2、第3の実施の形態と同様に、圧力室内に電極がないので、パリレン膜等の保護膜を設ける必要性はなく、インクに接する部分の接着剤による接合に、耐インク性が高い接着剤を用いたものである。これにより、圧力室の変形もなく、安定したインクの吐出を長期に渡り実現でき、また、接着剤が圧力室内にはみ出したり流れ込んで圧力室をふさいだり、狭隘化させたり、体積が変化して、インクの流れが変化したりしてインクの吐出に悪影響を与えることもなかった。更に、Bステージ化により接着位置精度も簡易に高精度にでき、位置決め工程や組み立て工程を簡略化できて製造コストの低減が可能である。以上のように、本実施の形態では、吐出のための発生圧力が高く、安価で製造の容易なインクジェットヘッドが得られた。
【0122】
なお、第1乃至第3の実施の形態では、圧力室内に配置したヒータの加熱で微細な泡を発生させるタイプのものに比べて、原理的に消費電力が低いという効果を奏するものである。
【0123】
【発明の効果】
請求項1に記載の発明によると、未使用時の保存性に優れた1液性で、接着しようとする部材への濡れ性が良く、低温で安定なBステージ状態を作ることができ、低い温度で硬化させることのできる接着剤を使用して製造するために、接着強度が大きく、かつそのバラツキが小さく、接着剤のはみ出しや流れ出しがなく、高い位置精度のインクジェットヘッドを提供することができる。
【0125】
また、吐出のための圧力の損失が小さく、耐インク性が高いインクジェットヘッドを提供することができる。
【0126】
請求項3に記載の発明によると、接着剤がインクにより膨潤して接着強度が低下したり、インク漏れを起こしたりすることがないインクジェットヘッドを提供することができる。
【0127】
請求項4に記載の発明によると、硬化後の特性に優れたエポキシ樹脂接着剤を用いて、接着剤のはみ出しや流れ出しがなく、高い位置精度のインクジェットヘッドを効率よく製造する方法を提供することができる。
【0128】
また、吐出のための圧力の損失が小さく、耐インク性が高いインクジェットヘッドの製造方法を提供することができる。
【0130】
請求項6に記載の発明によると、熱膨張による接着位置精度の低下やインクの吐出エネルギーを発生させる圧電素子の劣化をおこさないインクジェットヘッドの製造方法を提供することができる。
【0131】
請求項7に記載の発明によると、Bステージが安定で、熱膨張による接着位置精度の低下やインクの吐出エネルギーを発生させる圧電素子の劣化をおこさないインクジェットヘッドの製造方法を提供することができる。
【0132】
請求項8に記載の発明によると、接着剤の塗設の容易なインクジェットヘッドの製造方法を提供することができる。
【0133】
請求項9に記載の発明によると、接着剤の厚みのバラツキがなく、製造効率の高いインクジェットヘッドの製造方法を提供することができる。
請求項1に記載の発明によると、他の特性を犠牲にすることなく、さまざまなインクに対して耐性をもつインクジェットヘッドを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】せん断モード型インクジェットヘッドの斜視図である。
【図2】せん断モード型インクジェットヘッドの圧電素子の変形を示す図である。
【図3】せん断モード型インクジェットヘッドの接着剤層を示す部分断面図である。
【図4】圧力室壁に設けた圧電素子の伸縮変形によって圧力室の体積を変化させるタイプのインクジェットヘッドの概略断面図である。
【図5】圧力室壁に設けた圧電素子の伸縮変形によって圧力室の体積を変化させる他のインクジェットヘッドの概略断面図である。
【図6】サーマルタイプのインクジェットヘッドの概略斜視図である。
【符号の説明】
1、10、20、40 インクジェットヘッド
2 基材
2a、42a 溝
2b、13、23 圧電素子
3、13a 電極
4 カバー基板
5、15、25、45 ノズルプレート
5a、15a、25a、45a ノズル孔
6、16、46 供給プレート
6a、16a、26a、46a インク導入口
7、27、47 インク供給部
8、80 接着剤
21a 固定部材
21b 基台
22 スペーサ部材
24 振動板
42 ヒータボード
44 天板
49 吐出ヒータ
A 圧力室
B 空気室
Claims (11)
- 圧力室を形成する少なくとも2つの部材を接着剤で接合したインクジェットヘッドにおいて、接合部分の接着剤の少なくとも一部に、エポキシ樹脂と、ジシアンジアミドおよび/またはジシアンジアミドの誘導体と、脂肪族アミンエポキシアダクトとを含有し、前記ジシアンジアミドおよび/またはジシアンジアミドの誘導体が、下記条件を満たす接着剤を用いたことを特徴とするインクジェットヘッド。
0.7≦〔ジシアンジアミドおよび/またはジシアンジアミドの誘導体の特定水素の原子数〕/エポキシ樹脂のエポキシ基の数≦0.9
(ただし、ジシアンジアミドおよび/またはジシアンジアミドの誘導体の特定水素の原子数とは、窒素原子に結合している水素原子の数を指す。) - 前記圧力室を形成する第1部材と第2部材の接合部分、及び、前記第1部材と第3部材の接合部分の接着剤に同一組成の前記接着剤を用いることを特徴とする請求項1記載のインクジェットヘッド。
- 基材と、該基材上に取り付けられ複数のインク流路を区画する圧電素子からなる隔壁と、前記複数のインク流路の天井を塞ぐカバー基板とにより、前記隔壁の変形によって発生させる圧力でインクを吐出させる前記圧力室が形成され、
前記隔壁と前記基材の接合部分、及び、前記隔壁と前記カバー基板の接合部分の接着剤に前記接着剤を用いることを特徴とする請求項1又は2記載のインクジェットヘッド。 - 前記脂肪族アミンエポキシアダクトは、脂肪族ポリアミンエポキシアダクトであることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のインクジェットヘッド。
- 前記エポキシ樹脂はビスフェノール型エポキシ樹脂であり、前記脂肪族ポリアミンエポキシアダクトはジエチレントリアミンのフェノールノボラック型エポキシ樹脂のアダクトであることを特徴とする請求項4記載のインクジェットヘッド。
- 前記接着剤が、硬化後にインクに浸漬したときの重量変化率が4%以下であることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載のインクジェットヘッド。
- 請求項1〜6の何れかに記載のインクジェットヘッドを製造するためのインクジェットヘッドの製造方法において、前記圧力室を形成する2つの部材を接合するために少なくとも一方の部材に、前記接着剤を塗設する工程と、前記塗設した接着剤を加熱してBステージ化させる工程と、前記2つの部材を加圧しつつ前記接着剤を加熱し硬化させて前記2つの部材を接合する工程とを有することを特徴とするインクジェットヘッドの製造方法。
- 前記接着剤の硬化温度が120℃以下であることを特徴とする請求項7記載のインクジェットヘッドの製造方法。
- 前記接着剤を100℃以下の温度でBステージ化することを特徴とする請求項7記載のインクジェットヘッドの製造方法。
- 前記接着剤の初期粘度が25℃において3000センチポイズ以上200000センチポイズ以下であることを特徴とする請求項7〜9の何れかに記載のインクジェットヘッドの製造方法。
- 前記接着剤の塗設をスクリーン印刷もしくはフレキソ印刷で行うことを特徴とする請求項7〜10の何れかに記載のインクジェットヘッドの製造方法。
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