JP3820617B2 - ε−ポリ−L−リシン分解酵素とそれを用いた低重合度ε−ポリ−L−リシンの製造法 - Google Patents

ε−ポリ−L−リシン分解酵素とそれを用いた低重合度ε−ポリ−L−リシンの製造法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はスフィンゴバクテリウム・マルチヴォラムに属する微生物、該微生物を培養して、培養液中より得られるε−ポリ−L−リシン分解酵素、この酵素の製造法、及びε−ポリ−L−リシン分解酵素を利用した低重合度ε−ポリ−L−リシンの製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ε−ポリ−L−リシンはグラム陰性菌、グラム陽性菌、真菌等、各種の菌株に対し静菌作用があり食品保存料として様々の食品の日持ち向上に利用されている。食品は多種多様なので、食品マトリックスの置かれている環境によっては、ε−ポリ−L−リシンの通常量の添加では効果が出ないことがある。そのときは大量に添加する必要があるが、それによって食品の風味が損なわれることが多い。特開平4−287693号公報によれば、アスペルギルス(Aspergillus)属の中性プロテアーゼでε−ポリ−L−リシンを処理するとε−ポリ−L−リシンが加水分解され、その加水分解物を食品に添加した場合、無処理のε−ポリ−L−リシンを添加した場合と比較して、えぐ味が改善されるとしている。しかし、アスペルギルス属の中性プロテアーゼは基質特異性が広く、食品に直接添加された場合は食品成分由来の蛋白に作用し、風味、触感が著しく変化する恐れがある。そこで、ε−ポリ−L−リシンに特異的に作用する分解酵素が求められていた。
【0003】
また、食品中のε−ポリ−L−リシンの量を測定するさいは、従来からメチルオレンジ法、高速液体クロマトグラフィー法等が用いられているが、食品成分の除去が困難で煩雑であった。ε−ポリ−L−リシンに特異的に作用する酵素があればそれを用いて食品から容易にε−ポリ−L−リシンを定量できる測定系が開発できることが期待された。
また、ε−ポリ−L−リシンを蛋白水溶液に添加するとゲル化するなどの作用がある。そのさい添加するε−ポリ−L−リシンの分子量によって、生成するゲルの物性が異なることが知られている。蛋白に作用せず、ε−ポリ−L−リシンにのみ作用する分解酵素が望まれていた。
その他、低重合度ε−ポリ−L−リシンは未知の生理活性を有し、多方面の利用が期待できる。
これらの理由から、ε−ポリ−L−リシンに基質特異性の高い加水分解酵素が望まれ、本発明者らが鋭意努力した結果、クリセオバクテリウム・グループ〓bに属する菌株がε−ポリ−L−リシンを分解することを見いだし、ε−ポリ−L−リシン分解酵素を同定した。(特願平7−191184号)しかし、この酵素の分解形式はエンド型で、ε−ポリ−L−リシンの鎖をランダムに切るので、得られる低重合度ε−ポリ−L−リシンの重合度の制御が困難であった。
そこで分解形式の異なるε−ポリ−L−リシン分解酵素が求められた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らはかかる課題を解決するために、広く自然界よりε−ポリ−L−リシン分解酵素生産能を有する微生物を探索した。その結果、新たに土壌より分離された菌(OJ−10株)が、ε−ポリ−L−リシン分解酵素を培養液中に生産することを見いだし、また、この酵素を用いて、低重合度ε−ポリ−L−リシンが製造できることを見出し本発明を完成させた。
すなわち、本発明の目的は、ε−ポリ−L−リシン加水分解酵素生産能を有する微生物、ε−ポリ−L−リシン加水分解酵素および、その酵素を用いて低重合度ε−ポリ−L−リシンを製造する方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
(1)ε−ポリ−L−リシンをエキソ型に加水分解し、低重合度ε−ポリ−L−リシンを生成させるε−ポリ−L−リシン分解酵素であって、下記理化学的性質を有するε−ポリ−L−リシン分解酵素。
1.作用:ε−ポリ−L−リシンをエキソ型に加水分解して、ε結合の低重合度ε−ポリ−L−リシン(重合度n=2〜19)及びL−リシンを生成する。
2.基質特異性:ε−ポリ−L−リシンを分解し、低重合度ε−ポリ−L−リシンを遊離するが、α−ポリ−L−リシンには作用しない。
3.分子量:高速液体クロマトグラフィー法、SDS−ポリアクリルアミド・ゲル電気泳動で測定した分子量はそれぞれ154,000、80,000でホモダイマー構造をとる。
4.温度の影響:至適反応温度は37℃である。pH9,15分間の加熱では35℃まで安定である。
5.pHの影響:至適反応pHはpH9.0である。4℃、3日間の放置でpH8〜10で安定である。
(2)スフィンゴバクテリウム・マルチヴォラム(Sphingobacterium multivorum)に属する微生物を培養し、該微生物中より採取して得られる前記(1)項記載のε−ポリ−L−リシン分解酵素。
(3)スフィンゴバクテリウム・マルチヴォラムに属する微生物がスフィンゴバクテリウム・マルチヴォラム OJ−10株(FERM P−15398)である前記(2)項記載のε−ポリ−L−リシン分解酵素。
(4)スフィンゴバクテリウム・マルチヴォラムに属する微生物を培養して、ε−ポリ−L−リシンを加水分解し低重合度ε−ポリ−L−リシン及びL−リシンを生成させる酵素を培養液中より採取することを特徴としたε−ポリ−L−リシ分解酵素の製造法であって、低重合度ε−ポリ−L−リシン及びL−リシンを生成させる酵素が下記理化学的性質を有する酵素である、ε−ポリ−L−リシン分解酵素の製造法。
1.作用:ε−ポリ−L−リシンをエキソ型に加水分解して、ε結合の低重合度ε−ポリ−L−リシン(重合度n=2〜19)及びL−リシンを生成する。
2.基質特異性:ε−ポリ−L−リシンを分解し、低重合度ε−ポリ−L−リシンを遊離するが、α−ポリ−L−リシンには作用しない。
3.分子量:高速液体クロマトグラフィー法、SDS−ポリアクリルアミド・ゲル電気泳動で測定した分子量はそれぞれ154,000、80,000でホモダイマー構造をとる。
4.温度の影響:至適反応温度は37℃である。pH9,15分間の加熱では35℃まで安定である。
5.pHの影響:至適反応pHはpH9.0である。4℃、3日間の放置でpH8〜10で安定である。
(5)ε−ポリ−L−リシンを前記(1)〜(3)項のいずれか1項記載の酵素で加水分解することを特徴とする低重合度ε−ポリ−L−リシンの製造法。
(6)重合度が20以上のε−ポリ−L−リシンを前記(1)または(2)項のいずれか1項記載の酵素で加水分解することを特徴とする重合度2〜19であるε−ポリ−L−リシンの製造法。
(7)ε−ポリ−L−リシン分解酵素生産能を有するスフィンゴバクテリウム・マルチヴォラム OJ−10株(FERM P−15398)。
【0006】
本発明において用いられる菌株であるOJ−10株の菌学的性状は以下のとおりである。
(培養所見)
肉汁寒天平板で24時間30℃で培養したコロニーの形態は、直径1mm以下の円形、全縁で、低い凸状、灰色がかった白色、半透明、なめらかで光沢がある。グラム陰性の短かん菌で芽胞形成はない。カタラーゼ及びチトクロームオキシダーゼ活性が陽性で、グルコースOF試験の成績が酸化的で陰性である。また、本菌株は37℃で生育を示し、41℃では生育が認められない。
(生化学的特徴)
30℃で48時間生育した時、NO3還元,インドール産生、グルコースからの酸の産生、アルギニン・ジヒドロラーゼ活性及びゼラチン加水分解が陰性、ウレアーゼ、エスクリン加水分解、β−ガラクトシダーゼ及び硝酸の産生が陽性、グルコース、マンノース、N−アセチルグルコサミン及びマルトースの資化性が陽性、マンニトール、グルコン酸、カプリン酸、アジピン酸、リンゴ酸、クエン酸及びフェニル酢酸の資化性が陰性を示す。
30℃で7日間生育した時、カゼイン、スターチ、チロシン及びアラントイン加水分解が陰性、運動性、シモンのクエン酸培地での生育、リジン脱炭酸酵素活性、硝酸還元及び硫化水素発生が陰性、DNA分解酵素、β−キシロシダーゼ及びフェニルアラニンデアミナーゼ活性が陽性、ゼラチン加水分解活性が弱い陽性を示す。
これらの性状から、本菌株をスフィンゴバクテリウム・マルチヴォラム(Sphingobacterium multivorum)と同定した。本菌株は工業技術院生命工学工業技術研究所にFERM P−15398として寄託されている。
スフィンゴバクテリウム・マルチヴォラムが当該酵素の活性を有していることは今までに明らかにされていない。
本菌株より生産されるε−ポリ−L−リシン分解酵素の酵素学的および理化学的性質について記述する。
【0007】
1,作用:ε−ポリ−L−リシンをエキソ型に加水分解して、ε結合の低重合度ε−ポリ−L−リシン(重合度n=2〜19)及びL−リシンを生成する。
2,基質特異性:ε−ポリ−L−リシンを分解し、低重合度ε−ポリ−L−リシンを遊離するが、α−ポリ−L−リシンには作用しない。
3,分子量:高速液体クロマトグラフィー法、SDS−ポリアクリルアミド・ゲル電気泳動で測定した分子量はそれぞれ154,000、80,000でホモダイマー構造をとる。
4,温度の影響:至適反応温度は37℃である。pH9,15分間の加熱では35℃まで安定である。
5,pHの影響:至適反応pHはpH9.0である。4℃、3日間の放置でpH8〜10で安定である。
6,酵素活性測定法:1モル濃度のリン酸カリウム緩衝液(pH7.5)を0.1mL、2.5mg/mLのε−ポリ−L−リシン水溶液を0.4mL、生理食塩水0.4mL及び酵素溶液を0.1mLを入れた試験管を30℃で保温する。30分後、高速液体クロマトグラフィーの展開溶媒を1mL添加することで反応を停止する。遠心分離で沈澱を除き、上清液の10μLを逆相高速液体クロマトグラフィーに供する。展開溶媒はリン酸2水素1ナトリウム10ミリモル濃度 + 過塩素酸ナトリウム 0.1モル濃度 + オクチルスルホン酸ナトリウム10ミリモル濃度 + アセトニトリル 37.5%(v/v)の組成のものを用い、毎分1mLの流速で展開する。カラムはM&Sパック C−18(4.6 x 150mm)を用いる。215nmの波長の紫外線でε−ポリ−L−リシンの減少を測定する。
本条件下で酵素溶液1mL当たり1分間で1mgのε−ポリ−L−リシンを分解する酵素量を1Uとする。
【0008】
本発明の酵素はたとえば以下のようにして製造される。
スフィンゴバクテリウム・マルチヴォラム OJ−10株(FERM P−15398)を培養液で好気的に培養する。この培養液は本菌が生育するに充分な炭素源、窒素源、ビタミン類、ミネラル分が含まれていればいかなるものでも良いが、好ましくは肉エキス1.5%(w/v),酵母エキス0.1%(w/v),ショ糖1.0%(w/v),リン酸1水素2カリウム0.3%(w/v),塩化ナトリウム0.2%(w/v),硫酸マグネシウム7水塩0.02%(w/v),pH7.0の組成を持つ培養液を用いる。25℃から33℃の温度で2日から5日間の期間培養し、遠心分離機またはフィルターでろ集して菌体を採取する。採取した菌体を生理食塩水で洗浄し、pHが7付近の緩衝液に懸濁し、菌体懸濁液を超音波破砕機または菌体破砕機にかけて菌体を破砕する。緩衝液としては当該酵素を失活させないものであればいずれのものでも良いが、好ましくはリン酸カリウム緩衝液pH7.5が用いられる。菌体破砕液をさらに遠心分離機にかけ細胞壁成分を取り除く。得られた上清液に当該酵素が沈澱し始めない蛋白沈澱剤の濃度まで蛋白沈澱剤を培養液に加える。生成した沈澱を遠心分離機またはフィルターで除去する。沈澱を除去した液にさらに蛋白沈澱剤を加え、当該酵素の大部分が沈澱し終わるまで続ける。生成した沈澱を遠心分離してまたはフィルターでろ過して取り出す。これが粗製の当該酵素である。蛋白沈澱剤として、当該酵素を失活しないものであればいかなるものでも用いられるが、好ましくは硫酸アンモニウムを用い30〜60%飽和濃度の画分を得る。粗製の当該酵素は、必要に応じて、さらにカラムクロマトグラフィー等の手段で精製する。
【0009】
原料として用いられるε−ポリ−L−リシンの重合度は特に制限がなく、いかなるものでも使用可能であり、例えば和光純薬〓製のε−ポリ−L−リシン塩酸塩、チッソ〓製の50%(w/w)デキストリン粉末、低級脂肪酸グリセライド製剤(商品名:ガードキープ)またはグリシン製剤(商品名:ガードロング)が用いられる。
低重合度ε−ポリ−L−リシンはたとえば以下のようにして製造される。
原料のε−ポリ−L−リシン塩酸塩をpH7.0〜8.0の緩衝液に溶かす。この溶液に当該酵素の水溶液を加えて混合し、25℃〜40℃で2〜12時間保温する。低い重合度のものを得たいときは保温時間を長くして調節する。反応液を加熱するか、有機溶媒または高速液体クロマトグラフィーの溶媒を加えるかして反応を停止し、変性した当該酵素蛋白を遠心分離機もしくはフィルターでろ過して取り除く。その反応液を逆相液体クロマトグラフィーに供し、重合度2〜19のε−ポリ−L−リシンの画分を集める。カラムはODS逆相カラムを用いる。展開溶媒は低重合度ε−ポリ−L−リシンが分離できるものであればいかなるものでも良いが、好ましくは
A液:リン酸2水素1ナトリウム10ミリモル濃度+過塩素酸ナトリウム0.1モル濃度+オクチルスルホン酸ナトリウム10ミリモル濃度の水溶液、B液:2倍濃度のA液とアセトニトリルを液量で1対1に混合した液を使用する。展開はA液とB液の混合液中において、展開1分後にB液の濃度が50%(V/V)から55%(V/V)まで、25分後に55%(V/V)から70%(v/v)、35分後に70%(V/V)から75%(V/V)に直線的に増加する濃度勾配に毎分1mLの流速で溶出させる。215nmの波長の紫外線でピークを検出し、目的の重合度のε−ポリ−L−リシンが含まれた溶出液を得る。この溶出液を陽イオン交換樹脂にかけ濃縮し、得られた濃縮液を凍結乾燥、真空乾燥あるいはデキストリン等の多糖類を混ぜて噴霧乾燥する等の手段で粉末状の低重合度のε−ポリ−L−リシンを得る。
重合度のいかんを問わないときは酵素反応停止後の液を液体クロマトグラフィーをせず直接、イオン交換樹脂にかけても良い。
【0010】
以下、実施例で本発明を説明する。本発明は実施例にのみ限定するものではない。
【実施例】
ε−ポリ−L−リシン分解酵素活性の測定
ε−ポリ−L−リシン分解酵素活性の測定は以下の方法を用いた。
1モル濃度のリン酸カリウム緩衝液(pH7.5)を0.1mL、2.5mg/mLのε−ポリ−L−リシン水溶液を0.4mL、生理食塩水0.4mL及び酵素溶液を0.1mLを入れた試験管を30℃で保温した。30分後、高速液体クロマトグラフィーの展開溶媒を1mL添加することで反応を停止した。遠心分離で沈澱を除き、上清液の10μLを逆相高速液体クロマトグラフィーに供した。展開溶媒はリン酸2水素1ナトリウム10ミリモル濃度 + 過塩素酸ナトリウム 0.1モル濃度 + オクチルスルホン酸ナトリウム10ミリモル濃度 + アセトニトリル 37.5%(v/v)の組成の水溶液を用い、毎分1mLの流速で展開した。カラムはM&Sパック C−18(4.6 x 150mm)を用いた。溶出液を215nmの波長の紫外線で測定し、標準のε−ポリ−L−リシンのピークと比較してε−ポリ−L−リシンの減少を測定した。
本条件下で酵素溶液1mL当たり1分間で1mgのε−ポリ−L−リシンを分解する酵素量を1Uとした。
【0011】
実施例1
肉エキス1.5%(w/v),酵母エキス0.1%(w/v),ショ糖1.0%(w/v),リン酸1水素2カリウム0.3%(w/v),塩化ナトリウム0.2%(w/v),硫酸マグネシウム7水塩0.01%(w/v),pH7.0の組成を持つ培養液12Lにスフィンゴバクテリウム・マルチヴォラム OJ−10株(FERM P−15398)を28℃で2日間振とう培養した。得られた培養液から菌体を遠心分離にて採取し、得られた菌体を生理食塩水で洗浄した。その菌体を0.01モル濃度のりん酸カリウム緩衝液(pH7.0)300mLに懸濁し、超音波破砕機で10分間、19kHzの処理をした。得られた菌体破砕液を遠心分離機で20分間10,000rpmの処理をし、得られた上清250mL中に33U(2.33g)の当該酵素活性を認めた。この上清液に硫酸アンモニウムを加え、30〜60%硫酸アンモニウム飽和濃度の粗製の当該酵素の画分18u(604mg)を得た。
【0012】
上記の粗製の当該酵素を0.01モル濃度のリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)に溶かし同じ緩衝液に平衡化したCMトヨパール(東ソー製)のカラム(50mL)に吸着させ、0.05モル濃度のリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)で溶出した活性画分を0.01モル濃度のリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)で透析した。その画分13.3U(44.3mg)を0.01モル濃度の同じ緩衝液に20%(W/V)硫酸アンモニウムを加えた緩衝液で平衡化したフェニルセファローズ(ファルマシア製)のカラム(10mL)に吸着させ、これを0.01モル濃度の同じ組成の緩衝液に硫酸アンモニウム5%(W/V)となるよう硫酸アンモニウムを添加した溶出液で溶出して活性画分10.6U(7.85mg)を得た。この画分に硫酸アンモニウムを20%(W/V)になるように加え、同じ緩衝液に平衡化したブチルトヨパール(東ソ−製)のカラム(3mL)に吸着させ、0.01モル濃度のリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)に7.5%(W/V)硫酸アンモニウムで溶出した活性画分を集めた。
この画分を0.1モル濃度のリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)+50%(v/v)グリセロールで透析し、当該酵素の精製標品を得た。この精製標品は8.3Uでたんぱく量1.14mg、比活性が7.3U/mg proteinであった。
【0013】
実施例2
和光純薬製ε−ポリ−L−リシン塩酸塩(分子量2000〜4000、重合度20〜35)10mg/mL水溶液を1.0mL、0.1モル濃度のリン酸カリウム緩衝液(pH7.5)0.2mL、イオン交換水0.6mLからなる反応液に実施例1で作製した酵素4.0U/mLの水溶液0.2mLを加えて混合し反応させた。その直後にこの反応液50μLを取り出し、この反応液にA液25%(V/V)、B液75%(V/V)からなる展開溶媒50μLを加え遠心分離し、上清10μLを逆相高速液体クロマトグラフィーに供した。カラムは化学品検査協会製L−カラム(ODS)(4.6 x 250mm)を用いた。展開はA液:リン酸2水素1ナトリウム10ミリモル濃度+過塩素酸ナトリウム0.1モル濃度+オクチルスルホン酸ナトリウム10ミリモル濃度の水溶液、B液:2倍濃度のA液とアセトニトリルを液量で1対1に混合した液を使用して、A液とB液の混合液中において、展開1分後にB液の濃度が50%(V/V)から55%(V/V)まで、25分後に55%(V/V)から70%(V/V)、35分後に70%(V/V)から75%(V/V)に直線的に増加する濃度勾配で最終的に75%(V/V)で毎分1 mLの流速で溶出させた。溶出液を215nmの波長の紫外線で検出したところ、図1のクロマトグラムを得た。
次に、反応液の残りを37℃で4時間反応させ、反応液50μLに同じ展開溶媒50μLを加えて同様に遠心分離し、上清10μLを同様に逆相高速液体クロマトグラフィーに供し、図2のクロマトグラムを得た。重合度2から20以下の低重合度ε−ポリ−L−リシンとL−リシンのピークが認められ、ε−ポリ−L−リシンの低分子化が明らかにみられた。この反応液から凍結乾燥にて0.25mgの低重合度ε−ポリ−L−リシンが得られた。
さらに、反応液を20時間反応させ、反応液50μLを取り出し同様に逆相液体クロマトグラフィーに供したところ、図3のクロマトグラムを得た。この反応液50μLから凍結乾燥にて0.23mgの重合度2〜19のε−ポリ−L−リシンが得られた。低重合度のε−ポリ−L−リシンの重合度は標準の低重合度ε−ポリ−L−リシンのピークと比較して測定した。
【0014】
比較例1
実施例2で用いたε−ポリ−L−リシンの代わりにシグマ社製α−ポリ−L−リシン臭酸塩(分子量4000〜15,000、重合度35〜130)を用いて、実施例2に準拠して反応をおこない、反応0時間後と24時間後との反応産物を分析した。反応0時間後のクロマトグラムを図4、24時間後のクロマトグラムを図5で表した。
反応24時間後でもクロマトグラムにほとんど変化がみられなかった。これは、この酵素がα−ポリ−L−リシンに作用しないことを示す。
【0015】
実施例3
実施例2に準拠して作製した反応液を37℃で反応させ、反応直後及び30分毎に50μLサンプリングし、直ちに実施例2に記載の展開溶媒を加えて反応を停止し遠心分離した。上清50μLをジャーナル・オブ・バイオケミストリー255巻976頁記載の方法でリシン・オキシダーゼの反応液に入れて反応させ、本願酵素反応によって遊離されたL−リシンを定量した。その結果、図6に示すようにLーリジンの量が一定の割合で増加した。これは本願酵素の反応形式がエキソ型で、L−リシンがε−ポリ−L−リシンの末端から遊離していることを示す。
【0016】
比較例2
先願のクリセオバクテリウム・グループ〓bに属する菌株から得られたε−ポリ−L−リシン分解酵素を実施例3と同量の0.8Uを実施例3に準拠して反応させ、リシン・オキシダーゼを用いて遊離したL−リシンを定量した。その結果、実施例3と同量の酵素を入れているにも関わらず図6に示すようにL−リシンの量はほとんど増加しなかった。これは先願酵素の反応形式がエンド型であることを示す。
【0017】
【発明の効果】
本願発明に関わるε−ポリ−L−リシン分解酵素はε−ポリ−L−リシンに基質特異性が高く、ε−ポリ−L−リシンを加水分解し低重合度ε−ポリ−L−リシン及びL−リシンを生成する。この酵素は、蛋白の共存下で蛋白を分解することなくε−ポリ−L−リシンを分解することができる。この性質によって、低重合度ε−ポリ−L−リシンの食品工業を中心として多方面の用途が開ける。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例2において、ε−ポリ−L−リシンを基質とした反応での反応直後(0時間)の反応液の逆相クロマトグラムである。
【図2】実施例2において、ε−ポリ−L−リシンを基質とした反応での反応4時間後の反応液の逆相クロマトグラムである。
【図3】実施例2において、ε−ポリ−L−リシンを基質とした反応での反応24時間後の反応液の逆相クロマトグラムである。
【図4】比較例1において、α−ポリ−L−リシンを基質とした反応での反応直後(0時間)の反応液の逆相クロマトグラムである。
【図5】比較例において、α−ポリ−L−リシンを基質とした反応での反応24時間後の反応液の逆相クロマトグラムである。
【図6】ε−ポリ−L−リシン分解酵素反応中液のL-リシンの量の変化

Claims (7)

  1. ε−ポリ−L−リシンをエキソ型に加水分解し、低重合度ε−ポリ−L−リシンを生成させるε−ポリ−L−リシン分解酵素であって、下記理化学的性質を有するε−ポリ−L−リシン分解酵素。
    1.作用:ε−ポリ−L−リシンをエキソ型に加水分解して、ε結合の低重合度ε−ポリ−L−リシン(重合度n=2〜19)及びL−リシンを生成する。
    2.基質特異性:ε−ポリ−L−リシンを分解し、低重合度ε−ポリ−L−リシンを遊離するが、α−ポリ−L−リシンには作用しない。
    3.分子量:高速液体クロマトグラフィー法、SDS−ポリアクリルアミド・ゲル電気泳動で測定した分子量はそれぞれ154,000、80,000でホモダイマー構造をとる。
    4.温度の影響:至適反応温度は37℃である。pH9,15分間の加熱では35℃まで安定である。
    5.pHの影響:至適反応pHはpH9.0である。4℃、3日間の放置でpH8〜10で安定である。
  2. スフィンゴバクテリウム・マルチヴォラム(Sphingobacterium multivorum)に属する微生物を培養し、該微生物中より採取して得られる請求項1記載のε−ポリ−L−リシン分解酵素。
  3. スフィンゴバクテリウム・マルチヴォラムに属する微生物がスフィンゴバクテリウム・マルチヴォラム OJ−10株(FERM P−15398)である請求項2記載のε−ポリ−L−リシン分解酵素。
  4. スフィンゴバクテリウム・マルチヴォラムに属する微生物を培養して、ε−ポリ−L−リシンを加水分解し低重合度ε−ポリ−L−リシン及びL−リシンを生成させる酵素を培養液中より採取することを特徴としたε−ポリ−L−リシ分解酵素の製造法であって、低重合度ε−ポリ−L−リシン及びL−リシンを生成させる酵素が下記理化学的性質を有する酵素である、ε−ポリ−L−リシン分解酵素の製造法。
    1.作用:ε−ポリ−L−リシンをエキソ型に加水分解して、ε結合の低重合度ε−ポリ−L−リシン(重合度n=2〜19)及びL−リシンを生成する。
    2.基質特異性:ε−ポリ−L−リシンを分解し、低重合度ε−ポリ−L−リシンを遊離するが、α−ポリ−L−リシンには作用しない。
    3.分子量:高速液体クロマトグラフィー法、SDS−ポリアクリルアミド・ゲル電気泳動で測定した分子量はそれぞれ154,000、80,000でホモダイマー構造をとる。
    4.温度の影響:至適反応温度は37℃である。pH9,15分間の加熱では35℃まで安定である。
    5.pHの影響:至適反応pHはpH9.0である。4℃、3日間の放置でpH8〜10で安定である。
  5. ε−ポリ−L−リシンを請求項1〜3項のいずれか1項記載の酵素で加水分解することを特徴とする低重合度ε−ポリ−L−リシンの製造法。
  6. 重合度が20以上のε−ポリ−L−リシンを請求項1または2項のいずれか1項記載の酵素で加水分解することを特徴とする重合度2〜19であるε−ポリ−L−リシンの製造法。
  7. ε−ポリ−L−リシン分解酵素生産能を有するスフィンゴバクテリウム・マルチヴォラム OJ−10株(FERM P−15398)。
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