JP3817351B2 - アルコール類の製法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、アルコール類の製法に関する。詳しくは、グリニア試薬とパラホルムアルデヒドとの反応によりアルコール類を製造する反応の反応速度を向上させる改良方法に関する。本発明方法は、医薬、農薬等の中間体として有用なアルコール類の製造に好ましく適用される。
【0002】
【従来の技術】
グリニア試薬とアルデヒド類との反応によりアルコール類を製造する方法は一般的に知られている。例えば、特開平9−30998号には、m−置換α−ブロモスチレンに金属マグネシウムを反応させて得られるグリニア試薬を、ホルムアルデヒドあるいはパラホルムアルデヒドと反応させて、農薬などの中間体として有用なm−置換α−ヒドロキシメチルスチレン誘導体を製造する方法が示されている。
【0003】
ホルムアルデヒドは重合しやすく、取扱いが困難なため、工業的には固体状のパラホルムアルデヒドが使用される。ところでこの反応はパラホルムアルデヒドが溶媒にほとんど溶解しないため、反応速度はパラホルムアルデヒドの溶媒への溶解速度律速となり、反応速度は遅くなる。特に使用する溶媒の極性が低い場合にはパラホルムアルデヒドの溶解度が小さくなり、反応速度も非常に遅くなることが問題であった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記事情に鑑み成されたものであって、グリニア試薬とパラホルムアルデヒドの反応によるアルコールの製法の反応速度を向上させ、工業的に実施可能なアルコール類の製法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討した結果、グリニア試薬とパラホルムアルデヒドを反応させる際に、アルカリを添加することによって、反応速度を大幅に向上できることを見いだした。
即ち、本発明の要旨は、グリニア試薬とパラホルムアルデヒドを反応させてアルコールを製造する方法において、反応をアルカリの存在下実施することを特徴とするアルコール類の製法に存する。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好ましい実施態様について説明する。本発明において、グリニア試薬とは、有機ハロゲン化物と金属マグネシウムとを反応させて得られるもので、パラホルムアルデヒドと反応させることによって、アルコール類を製造できるものであれば特に制限はないが、下記一般式(1)
【化4】
(式中、Rは芳香族炭化水素残基、飽和もしくは不飽和脂肪族残基を示す。Xはハロゲン原子を示し、nは1以上の整数を示す。)で示されるグリニア試薬が特に好ましい。
【0007】
一般式(1)において、Rは置換基を有していても良いフェニル基、ピリジル基等の芳香族残基、アリル基、スチリル基等の置換基を有していても良い不飽和脂肪族残基またはメチル基、プロピル基等の脂肪族残基を示す。これらの基は、更に置換基を有していても良い。nは1が好ましい。更に好ましくは下記一般式(2)
【化4】
(式中、Xはハロゲン原子、Aは電子吸引基を有していてもよいベンゼン環を示す。)で表されるグリニア試薬である。
【0008】
一般式(2)において、Aが置換していても良い電子吸引基としては、例えば、メチル基、エチル基等のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、塩素、フッ素などのハロゲン原子、トリフルオロメチル基等のハロアルキル基、ニトロ基、シアノ基等が挙げられる。
上記一般式(1)および(2)において、Xで示されるハロゲン原子としては、臭素原子、ヨウ素原子が特に好ましい。
【0009】
グリニア試薬と反応させるパラホルムアルデヒドの使用量は広い範囲から選ぶことが出来るが、通常、一般式(1)のグリニア試薬1当量に対し、0.5〜3当量、好ましくは0.8〜1.5当量の範囲である。
反応は通常溶媒を用いて行われる。溶媒としては、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジブチルエーテル等のエーテル系溶媒あるいは上記エーテル系溶媒とベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素との混合溶媒が好ましい。溶媒の使用量は、一般式(1)で表されるグリニア試薬に対して通常1〜100倍量(重量)、好ましくは1〜15倍量(重量)である。
【0010】
本反応は、グリニア試薬を含む反応液中にパラホルムアルデヒドを添加して行うか、またはパラホルムアルデヒドを溶媒に懸濁させた懸濁液中にグリニア試薬を含む溶液を添加して行うが、好ましくは後者である。グリニア試薬を含む反応液中にパラホルムアルデヒドを添加して反応を行う場合には、パラホルムアルデヒドは粉体のまま直接添加しても、溶媒に懸濁させて添加してもどちらでもよいが、好ましくは溶媒に懸濁させて添加する。
【0011】
本発明方法は、グリニア試薬とパラホルムアルデヒドの反応の際、アルカリを存在させることを特徴とする。本反応で使用されるアルカリとしては、水を含まないものであれば特に制限はないが、トリメチルアミン、トリエチルアミン、DBU(1,8−ジアザビシクロ〔5.4.0〕ウンデセン−7)、ピリジン等の有機アミン類が好ましい。アルカリの使用量は、一般式(1)で表されるグリニア試薬に対して、0.001〜10倍量(重量)、好ましくは0.005〜0.1倍量(重量)である。アルカリの添加法は特に制限はないが、反応開始前にパラホルムアルデヒドと一緒に反応溶媒に添加しておくことが好ましい。
【0012】
グリニア試薬とパラホルムルデヒドとの反応は、通常、−10〜100℃、好ましくは20〜70℃で30分〜4時間行われる。この反応により、下記一般式(3)
【化5】
R(CH2 OMgX)n (3)
(式中、R、Xおよびnは一般式(1)で定義したとおり。)で表される中間体(マグネシウムコンプレッスク)が生成する。
【0013】
この中間体は、反応液に酸性水溶液を添加して、加水分解することにより目的とする、下記一般式(4)
【化6】
R(CH2 OH)n (4)
(式中、Rおよびnは一般式(1)で定義したとおり。)で表されるアルコール類を生成する。酸性水溶液は塩酸等の鉱酸や塩化アンモニウム等の水溶液が好ましく使用される。生成したアルコールは溶媒抽出等の通常の分離手段により反応液から分離され、必要であれば、蒸留等の手段で精製される。
【0014】
【実施例】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0015】
実施例1
100ml容量のフラスコに窒素雰囲気下、マグネシウム1.23g(0.051mol)、テトラヒドロフラン(THF)10ml、トルエン10ml、ヨウ素0.02gを加えて、水浴で冷却下攪拌を行いながら、30℃で3−クロロ−α−ブロモスチレン10g(0.046mol)をテトラヒドロフラン5mlとトルエン5mlに溶解した液を30分かけて滴下する。さらに1時間攪拌して、グリニア試薬調製反応を完結させた。次いで、反応液を濾過して、液中のマグネシウムを除去した後、パラホルムアルデヒド1.52g(0.051mol)をトルエン20mlに懸濁させてトリエチルアミン0.2gを加えた液に30℃で2時間かけて滴下し、さらに2時間反応を行って、反応を完結させた。この反応液を経時的に採取し、ガスクロマトグラフィー(GC)で分析して3−クロロ−α−ヒドロキシメチルスチレンの生成状態をGC面積%で追跡した結果を表−1に示す。反応終了後、40℃以下で単蒸留によりTHFを一部留去し、トルエン20mlを添加した後、25℃で3規定塩酸水溶液40mlを加えて加水分解し、有機相を分取した。有機相を水、1%NaOH水溶液、水で順次洗浄した後、GCにより定量分析したところ、3−クロロ−α−ヒドロキシメチルスチレンの収率は70%(対3−クロロ−α−ブロモスチレン)であった。
【0016】
比較例1
実施例1と同様にして、グリニア試薬を調製した。次いで、反応液中のマグネシウムを除去し、パラホルムアルデヒド1.52g(0.051mol)をトルエン20mlに懸濁させた液に30℃で2時間かけて滴下し、さらに2時間反応を行って、反応を完結させた。実施例と同様に、3−クロロ−α−ヒドロキシメチルスチレンの生成状態をGC面積%で経時的に追跡した結果を表−1に示す。
【0017】
【表1】
【0018】
【発明の効果】
本発明によれば、医薬および農薬の中間体として有用なアルコール類を、グリニア試薬とパラホルムアルデヒドとの反応から合成する際に、反応速度を著しく増大させ、反応時間を大幅に短縮することが出来る。したがって、工業的にアルコール類を製造する方法として極めて有用である。
Claims (3)
- 有機アミン類がトリエチルアミンである請求項1または2に記載のアルコール類の製法。
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JP32569397A JP3817351B2 (ja) | 1997-11-27 | 1997-11-27 | アルコール類の製法 |
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1997
- 1997-11-27 JP JP32569397A patent/JP3817351B2/ja not_active Expired - Fee Related
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