JP3815034B2 - 共振形インバータ装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、交流回転機などの負荷を駆動する共振形インバータ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
本出願人は、1組の共振用コンデンサと共振用リアクトルを用い、3相の主スイッチング素子をゼロ電圧スイッチングして一括転流を行う共振形インバータ装置を先に提案した(特願平9−328992号)。
この共振形インバータ装置の構成を図5に示す。直流電圧源1の直流電圧Vsは、インバータ部2によって交流電圧に変換される。このインバータ部2は、正母線と負母線の間に、自己消弧型スイッチング素子として主スイッチング素子(例えば、IGBT)3a〜3fが3相(U相、V相、W相)でブリッジ結線された構成となっている。また、主スイッチング素子3a〜3fには、逆並列ダイオード(フライホイールダイオード)4a〜4fがそれぞれ接続されている。そして、1つの主スイッチング素子とこれに逆並列接続された1つのフライホイールダイオードにより1つのインバータアームを構成しており、正母線に接続されている方が上アーム、負母線に接続されている方が下アームとなる。
【0003】
このインバータ部2において、主スイッチング素子3a、3b、主スイッチング素子3c、3d、主スイッチング素子3e、3fは、それぞれ120°位相をずらしてオンオフ制御され、交流回転機5に交流電圧を出力するようになっている。
また、正母線と負母線の間には、共振用コンデンサ6および共振用リアクトル7が直列接続されている。共振用コンデンサ6および共振用リアクトル7は、共振回路8を構成しており、ゼロ電圧スイッチングを行うために、正母線と負母線間の上下アームのそれぞれの主スイッチング素子が共にオンしたとき、共振して共振電流が流れるようになっている。
【0004】
さらに、各主スイッチング素子に過電流が流れないようにするためのリアクトル9が直流電圧源1に直列に接続され、さらに正母線と負母線の間の電圧を(1+1/n)Vsにクランプする電圧クランプ回路10が設けられている。この電圧クランプ回路10は、リアクトル9と差動接続された電圧クランプ用リアクトル11とダイオード12から構成されている。電圧クランプ用リアクトル11とダイオード12は、直流電圧源1に並列接続されており、クランプ時に電圧クランプ用リアクトル11に電流が流れたとき、直流電圧源1に電力を回生させるように構成されている。なお、電圧クランプ用リアクトル11の巻き数とリアクトル9の巻き数の比は、n(1<n)となっている。
【0005】
上記構成において、インバータ部2のスイッチング動作を、主スイッチング素子3a、3bを例にとり、図6に示す信号波形図を参照して説明する。このスイッチングを行う前の状態としては、主スイッチング素子3aがオン、主スイッチング素子3bがオフして、主スイッチング素子3aから負荷側に電流が供給されているものとする。
【0006】
そして、図6のt1 時点において、主スイッチング素子3bをオンすると、正母線と負母線の間が短絡、すなわちインバータ部2がアーム短絡し、共振用コンデンサ6、共振用リアクトル7、主スイッチング素子3a、3bにより共振経路が形成されて共振電流が流れ始める。このとき、共振電流と負荷電流iL とは同一方向に流れるため、主スイッチング素子3aには負荷電流iL と共振電流が重畳した電流が流れ、主スイッチング素子3bには共振電流が流れる。
【0007】
この後、共振電流が逆極性となり、共振電流の絶対値が負荷電流iL よりも大きくなる(図6のt2 時点〜t3 時点)と、フライホイールダイオード4a、4bを通って電流が流れる。このため、主スイッチング素子3a、3bの各コレクタエミッタ間電圧は負となる。このt2 からt3 の期間において、主スイッチング素子3aのゲート端子にオフ信号を与えると、ゼロ電圧スイッチングを行うことができ、スイッチング損失が発生しない。
【0008】
そして、共振電流が次第に減少し、フライホイールダイオード4aがオフすると、負荷電流はフライホイールダイオード4bを流れ始める(図6のt3 時点)。このとき、リアクトル9を流れる一定電流は、共振用コンデンサ6、共振用リアクトル7、フライホイールダイオード4bを通して流れるため、共振用コンデンサ6が充電され、共振用コンデンサ6の正極の電位が上昇する。そして、共振用コンデンサ6および共振用リアクトル7の両端間の電圧VPNが直流電圧源1の直流電圧Vsの(1+1/n)倍になったとき、電圧VPNはこの値にクランプされ、電圧クランプ用リアクトル11と電圧クランプ用ダイオード12からなる電圧クランプ回路10に電流が流れ始め、直流電圧源1に電力が回生される。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記した構成では、図6の時点t1 〜t2 において、共振用コンデンサ6の充電極性を逆にするための共振動作が発生しており、この共振動作はゼロ電圧スイッチングに寄与しないものであるため、その共振電流により主スイッチング素子、共振用コンデンサ6、共振用リアクトル7において導通損失が増加するという問題点があることが分かった。
【0010】
本発明は上記問題を解決することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1乃至3に記載の発明においては、共振用コンデンサ(6)と共振用リアクトル(7)が直列接続された直列回路の一端と他端を、交互に正母線と負母線に切り換え接続するスイッチング手段(13a〜13d)を備え、共振用コンデンサの電圧を検出し、その電圧の正負の判定に基づいて、前記スイッチング手段により、前記直列回路の一端と他端が前記正母線と前記負母線にそれぞれ接続される第1の状態と、前記直列回路の一端と他端が前記負母線と前記正母線にそれぞれ接続される第2の状態とを交互に切り換え、それぞれの切り換え時に共振電流を発生させて、主スイッチング素子のゼロ電圧スイッチングが行われるようにしたことを特徴としている。
【0012】
このように共振用コンデンサ(6)と共振用リアクトル(7)が直列接続された直列回路の一端と他端を交互に切り換えることにより、共振用コンデンサ(6)の充電極性を逆にするための共振動作をなくすことができるため、導通損失を低減することができる。
なお、上記した括弧内の符号は、後述する実施形態記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図に示す実施形態について説明する。
図1に、本発明の一実施形態にかかる共振形インバータ装置の構成を示す。この図1に示す共振形インバータ装置においては、図5に示すものに対し、共振回路8の構成が異なっている。
【0014】
すなわち、この実施形態の共振回路8においては、補助スイッチング素子13a〜13dが設けられており、第1、第2の補助スイッチング素子13a、13bが正母線と負母線の間に直列接続され、また第3、第4の補助スイッチング素子13c、13dが正母線と負母線の間に直列接続されている。そして、第1、第2のスイッチング素子13a、13bの接続点と第3、第4のスイッチング素子13c、13dの接続点の間に、共振用コンデンサ6と共振用リアクトル7が直列接続されている。
【0015】
このことにより、第1、第4の補助スイッチング素子13a、13dをオン、第2、第3の補助スイッチング素子13b、13cをオフさせる第1の状態と、第2、第3の補助スイッチング素子13b、13cをオン、第1、第4の補助スイッチング素子13a、13dをオフさせる第2の状態とを交互に切り換えることによって、共振用コンデンサ6と共振用リアクトル7からなる直列回路の一端と他端を、正母線と負母線に交互に切り換えることができる。
【0016】
次に、この実施形態における共振形インバータ装置の作動を、主スイッチング素子3a、3bのスイッチングを例にとり、図2に示す波形図を参照して説明する。
図2のt1 時点より前においては、主スイッチング素子3aがオン、主スイッチング素子3bがオフして、主スイッチング素子3aから負荷側に電流が供給されている。また、共振回路8においては、補助スイッチング素子13a、13dがオフ、補助スイッチング素子13b、13cがオンしており、共振用コンデンサ6は共振用リアクトル7と接続された端子が高電位となるように充電されている。
【0017】
図2の時点t1 において、補助スイッチング素子13a、13dをオン、補助スイッチング素子13b、13cをオフすると、共振用リアクトル7、補助スイッチング素子13d、フライホイールダイオード4b、主スイッチング素子3a、補助スイッチング素子13a、および共振用コンデンサ6で構成される回路に共振電流が流れる。
【0018】
この共振電流がさらに増加していくと、図2の時点t2 〜t3 において、フライホイールダイオード4a、フライホイールダイオード4bがともにオンする。そして、フライホイールダイオード4a、フライホイールダイオード4bがオンしている期間において、主スイッチング素子3aをオフ、主スイッチング素子3bをオンすると、ゼロ電圧スイッチングを行うことができ、スイッチング損失は発生しない。なお、図2中の矢印は、その期間であればゼロ電圧スイッチングが可能であることを示している。
【0019】
そして、インバータ部2のアーム短絡が完了すると(図2の時点t3 )、リアクトル9を流れる電流の一部が共振用コンデンサ6に流れ、正母線と負母線間の電圧VPNが上昇する。その結果、共振用コンデンサ6は、補助スイッチング素子13aに接続された端子が高電位となるように充電される。なお、電圧VPNは、(1+1/n)Vsとなった時に、電圧クランプ回路10によってクランプされる。
【0020】
この後、時点t4 において、補助スイッチング素子13a、13dをオフ、補助スイッチング素子13b、13cをオンすると、補助スイッチング素子13b、フライホイールダイオード4b、フライホイールダイオード4a、補助スイッチング素子13c、共振用リアクトル7、および共振用コンデンサ6で構成される回路に共振電流が流れる。そして、フライホイールダイオード4a、フライホイールダイオード4bがオンしている期間において、主スイッチング素子3aをオン、主スイッチング素子3bをオフすると、ゼロ電圧スイッチングを行うことができ、スイッチング損失は発生しない。そして、共振電流が次第に減少すると、フライホイールダイオード4a、4bの順にオフし、共振が終了して初期状態に戻る。
【0021】
次に、上記した主スイッチング素子3a〜3fおよび補助スイッチング素子13a〜13dをオンオフ制御する制御回路の構成について説明する。
図3に、その制御回路の具体的な構成を示す。
U相、V相、W相の上下アームスイッチング素子のゲート信号を発生する各ゲート信号発生回路16a〜16fは、交流回転機5を駆動するための信号(例えばPWM信号)をそれぞれ出力し、サンプルホールド回路19a〜19fは、出力されたPWM信号をサンプルホールドして、主スイッチング素子3a〜3fを駆動する図示しないドライブ回路に制御信号を出力する。
【0022】
ここで、電圧検出回路17は、正母線と負母線の間の電圧VPNを検出し、コンパレータ18は、その電圧VPNが負電圧であること、すなわち共振電流によってU相、V相、W相のいずれかにおける2つのフライホイールダイオードがともにオン状態にあることを判定すると、サンプルホールド回路19a〜19fにサンプリング信号を出力する。
【0023】
従って、ゲート信号発生回路16a〜16fからPWM信号が出力され、この後、正母線と負母線の間の電圧VPNが負電圧であることが判定されると、主スイッチング素子3a〜3fのオンオフ切り換えが行われるので、ゼロ電圧スイッチングを行うことができる。
また、ゲート信号発生回路16a〜16fの出力は、ワンショットマルチバイブレータ回路20a〜20fに入力され、ゲート信号発生回路16a〜16fのいずれかからPWM信号が出力されると、オアゲート21からパルス信号(サンプリング信号)が出力される。
【0024】
このとき、共振用コンデンサ6の電圧VC を検出する電圧検出回路22と、その正負の判定を行うコンパレータ23によって、コンパレータ23からは、補助スイッチング素子13b、13cがオンしているときハイレベルの信号、補助スイッチング素子13a、13dがオンしているときローレベルの信号が出力されている。
【0025】
従って、オアゲート21からサンプリング信号が出力されたとき、補助スイッチング素子13b、13cがオンしていれば、サンプルホールド回路24からハイレベルの信号が出力され、また補助スイッチング素子13a、13dがオンしていれば、サンプルホールド回路24からローレベルの信号が出力される。
そして、サンプルホールド回路24からハイレベルの信号が出力されたとき、その信号およびノットゲート25を介した信号が図示しないドライブ回路に出力され、補助スイッチング素子13a、13dをオン、補助スイッチング素子13b、13cをオフさせる。また、サンプルホールド回路24からローレベルの信号が出力されたとき、その信号およびノットゲート25を介した信号が図示しないドライブ回路に出力され、補助スイッチング素子13b、13cをオン、補助スイッチング素子13a、13dをオフさせる。
【0026】
上述したことから理解されるように、ゲート信号発生回路16a〜16fからPWM信号が出力されると、補助スイッチング素子13a、13dと補助スイッチング素子13b、13cのオンオフが切り換えられ、この切り換えによって共振電流が発生する。そして、正母線と負母線の間の電圧VPNが負電圧であると、主スイッチング素子3a〜3fのゼロ電圧スイッチングを行う。
【0027】
なお、上記した補助スイッチング素子13a〜13dとしては、半導体式のスイッチング素子などを用いることができ、例えば、図4に示すように、主スイッチング素子3a〜3fと同じくIGBTによるスイッチング14a〜14dを用いることができる。なお、この場合には、逆バイアス時の素子破壊を防止するためダイオード15a〜15dが逆並列接続される。
【0028】
また、上記した実施形態においては、交流回転機5を駆動するものを示したが、同期電動機などの交流回転機を駆動するようにしてもよい。また、インバータ部2としては、上記した構成のものに限らず、上アーム、下アームそれぞれを2つの主スイッチング素子で構成した3レベルインバータなどの多レベルインバータにも同様に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態を示す共振形インバータ装置の回路構成を示す図である。
【図2】図1に示す共振形インバータ装置の作動説明に供する波形図である。
【図3】図1中の主スイッチング素子3a〜3fおよび補助スイッチング素子13a〜13dをオンオフ制御する制御回路の具体的な構成を示す図である。
【図4】図1に示す共振形インバータ装置の具体的な回路構成を示す図である。
【図5】本出願人が先に提案した共振形インバータ装置の回路構成を示す図である。
【図6】図5に示す共振形インバータ装置の作動説明に供する波形図である。
【符号の説明】
1…直流電圧源、2…インバータ部、3a〜3f…主スイッチング素子、
4a〜4f…フライホイールダイオード、5…交流回転機、
6…共振用コンデンサ、7…共振用リアクトル、8…共振回路、
9…リアクトル、10…電圧クランプ回路、
11…電圧クランプ用リアクトル、12…電圧クランプ用ダイオード。

Claims (3)

  1. 正母線と負母線の間に複数の主スイッチング素子(3a〜3f)が直列接続され、各主スイッチング素子にフライホイールダイオード(4a〜4f)が逆並列接続されて構成されており、直流電圧源の直流電圧を交流電圧に変換するインバータ部(2)と、
    共振用コンデンサ(6)と共振用リアクトル(7)が直列接続された直列回路(6、7)と、
    この直列回路の一端と他端を交互に前記正母線と前記負母線に切り換え接続するスイッチング手段(13a〜13d)と、を備え、
    前記共振用コンデンサの電圧を検出し、その電圧の正負の判定に基づいて、前記スイッチング手段により、前記直列回路の一端と他端が前記正母線と前記負母線にそれぞれ接続される第1の状態と、前記直列回路の一端と他端が前記負母線と前記正母線にそれぞれ接続される第2の状態とを交互に切り換え、それぞれの切り換え時に共振電流を発生させて、前記主スイッチング素子のゼロ電圧スイッチングが行われるようにしたことを特徴とする共振形インバータ装置。
  2. 正母線と負母線の間に複数の主スイッチング素子(3a〜3f)が直列接続され、各主スイッチング素子にフライホイールダイオード(4a〜4f)が逆並列接続されて構成されており、直流電圧源の直流電圧を交流電圧に変換するインバータ部(2)と、
    前記正母線と前記負母線の間に直列接続された第1、第2の補助スイッチング素子(13a、13b)と、前記正母線と前記負母線の間に直列接続された第3、第4の補助スイッチング素子(13c、13d)と、前記第1、第2のスイッチング素子の接続点と前記第3、第4のスイッチング素子の接続点の間に直列接続された共振用コンデンサ(6)および共振用リアクトル(7)とを有する共振回路(8)と、を備え、
    前記共振用コンデンサの電圧を検出し、その電圧の正負の判定に基づいて、前記第1、第4の補助スイッチング素子をオン、前記第2、第3の補助スイッチング素子をオフさせる第1の状態と、前記第2、第3の補助スイッチング素子をオン、前記第1、第4の補助スイッチング素子をオフさせる第2の状態とを交互に切り換え、それぞれの切り換え時に共振電流を発生させて、前記主スイッチング素子のゼロ電圧スイッチングが行われるようにしたことを特徴とする共振形インバータ装置。
  3. 前記正母線と前記負母線の間の電圧を検出する電圧検出手段(17)を備え、前記電圧検出手段によって検出された電圧が負の電圧であるときに、前記主スイッチング素子のゼロ電圧スイッチングが行われるようにしたことを特徴とする請求項1又は2に記載の共振形インバータ装置。
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