JP3814869B2 - 共焦点レーザ走査顕微鏡 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明はコンフォーカルピンホールを用いた共焦点レーザ走査顕微鏡に関する。
【0002】
【従来の技術】
共焦点レーザ走査顕微鏡は、励起レーザ光を発して試料に照射する光源と、励起レーザ光と試料から発せられる蛍光とを分離する光分離手段と、励起レーザ光を2次元走査する走査手段と、走査手段と試料との間に配置された対物レンズと、光分離手段によって分離された蛍光を集光させるための集光レンズと、集光レンズの焦点面に設けられたピンホールと、ピンホールを通過した蛍光を検出する検出手段とを備える。
【0003】
レーザ光源から射出された励起レーザ光は、ダイクロイックミラーによって反射された後、走査ミラーによって2次元的に振られ、対物レンズによって試料(例えば蛍光試薬が注入された生体細胞)面に集光される。励起レーザ光の照射によって試料から発生した蛍光は励起レーザ光とともに対物レンズから走査ミラーへと光路を逆行し、ダイクロイックミラーで励起レーザ光と分離される。ダイクロイックミラーを透過した蛍光は、集光レンズにより蛍光光路中に配置したピンホールに集光される。このとき、試料の結像部で発した蛍光のみがピンホールを通過し、蛍光検出器で受光されて電気信号に変換され、画像化される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、ダイクロイックミラーは使用される励起光の波長に応じて切り換えたり、交換したりして使用される。しかし、ピンホールは極めて小さい(数十ミクロン程度)ので、光軸とピンホールとの位置がずれると画面が暗くなったり見えなくなったりしてしまう。
【0005】
これは、ダイクロイックミラーを切り換える度に、ダイクロイックミラーを切り換えるためのスライダーや回転機構の切換位置がずれたり、ダイクロイックミラーの交換時に装着位置がずれたりして蛍光がピンホールから外れたり、けられ(一部が遮光されること)たりするからである。
【0006】
そこで、ダイクロイックミラーを切り換える度に集光レンズの光軸やピンホールの位置が調整される。
【0007】
すなわち、ダイクロイックミラーを切り換える度に、試料に実際に励起光を照射し、モニタ画面上の蛍光像を見ながら輝度値が大きくなる(画像が明るくなる)ように、集光レンズの光軸やピンホールに位置を動かして調整する。
【0008】
しかし、実際の試料には蛍光を発し易い部分と蛍光を発し難い部分があるため、最大の輝度値である位置に合わせたつもりでも実際には最大の輝度値でない位置に合わせてしまう場合が生じ、調整は感覚に依存する定量性のないものとなってしまうという問題があった。
【0009】
また、調整時に試料に対して必要以上に励起光を照射していまうため、試料に退色等のダメージを与えてしまうという問題があった。
【0010】
この発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、その課題は定量性のある調整を簡単に行うことができ、また調整の際、試料にダメージを与えないですむ共焦点レーザ走査顕微鏡を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
前述の課題を解決するため請求項1記載の発明の共焦点レーザ走査顕微鏡は、励起レーザ光を発して試料に照射する光源と、前記励起レーザ光と試料から発せられる蛍光とを分離する光分離手段と、前記励起レーザ光を2次元走査する走査手段と、前記走査手段と前記試料との間に配置された対物レンズと、前記光分離手段によって分離された蛍光を集光させるための集光レンズと、前記集光レンズの焦点面に設けられたピンホールと、前記ピンホールを通過した蛍光を検出する検出手段とを備えることを特徴とする。
【0012】
対物レンズの焦点面と共役な1次像面に標準蛍光サンプルとしての蛍光ガラスを抜き差し自在に設けたので、試料面に照射したのと同等の、集光レンズの光軸やピンホールの位置の調整を行うことができ、試料にダメージを与えることがなくなる。また蛍光ガラスは均一な蛍光を発するので、輝度値を用いた定量的な調整を行うことができる。
【0013】
請求項2記載の発明の共焦点レーザ走査顕微鏡は、請求項1記載の発明の共焦点レーザ走査顕微鏡において、前記蛍光ガラスは、レーザ光の波長λが351nm及び488nmのとき、蛍光波長が542nm付近で蛍光強度が強くなるものであることを特徴とする。
【0014】
蛍光ガラスは、レーザ光の波長λが351nm及び488nmのとき、蛍光波長が542nm付近で蛍光強度が強くなるので、波長が542nm付近の蛍光を観察することで安定した調整を行うことができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0016】
図1はこの発明の第1の実施形態に係る共焦点レーザ走査顕微鏡のブロック構成図である。
【0017】
共焦点レーザ走査顕微鏡1は、照明光学系10と、第1ダイクロイックミラー(光分離手段)20と、スキャニングユニット(走査手段)30と、リレー光学系40と、バリアフィルタ2と、集光レンズ3と、ピンホール4aが形成されたピンホールプレート4と、蛍光検出部(検出手段)50と、蛍光画像システム60とを備える。
【0018】
照明光学系10は、アルゴンレーザ光源(波長λ:351nm及び488nm)11と、351nmの波長を通す励起フィルタ12(EXフィルタ)と、全反射ミラー13と、励起光の透過率を調整する減光フィルタ(NDフィルタ)14と、ビームエクスパンダ15とから構成される。なお、第1ダイクロイックミラー20を切換えるための機構は、例えばアリ溝又はボールレース等のスライダを用いることができるるが、その図示は省略されている。
【0019】
第1ダイクロイックミラー20はレーザ光と蛍光を分離させるものであって、ここでは380nm以下の波長の光を反射させるものを用いる。
【0020】
スキャニングユニット30は、水平スキャナ31及び垂直スキャナ32から構成される。水平スキャナ31及び垂直スキャナ32としては、ガルバノスキャナやレゾナントスキャナを用いる。
【0021】
リレー光学系40は、集光レンズ41と、蛍光ガラス42と、全反射ミラー43と、対物レンズ44とから構成される。蛍光ガラス42は、対物レンズ44の焦点面(ステージ45上に載置された試料46の任意のスライス面)と共役な1次像面47に標準蛍光サンプルとして抜き差し自在に設けられている。
【0022】
バリアフィルタ2は、390nm以上の波長の光を透過する。
【0023】
集光レンズ3は試料面45で発生した蛍光を対物レンズ44の焦点面と共役な位置に設けられたピンホール4aに集光させる。
【0024】
蛍光検出部50は、440nm以上の波長の蛍光を透過する第2ダイクロイックミラー51と、400〜440nmの波長の蛍光を通すエミッション(Em)フィルタ52と、蛍光検出器53と、440nm以上の波長の蛍光を通すエミッション(Em)フィルタ54と、蛍光検出器55とから構成される。蛍光検出器53,55は、1つの励磁光で2つの波長の光を観察でき、それぞれピンホール4aを通過した蛍光を検出して電気信号に変換し出力する。
【0025】
蛍光画像システム60は、アンプ61、A/Dコンバータ62、モニタ63、メモリ64、CPU65から構成される。
【0026】
次に集光レンズ3又はピンホールプレート4を動かす調整時の動作を図1を参照して説明する。
【0027】
第1ダイクロイックミラー20が切り換えられたとき、蛍光ガラス42を一次像面47に挿入する。
【0028】
アルゴンレーザ光源11から射出されたレーザ光は、励起フィルタ12を透過し、全反射ミラー13で反射され、減光フィルタ14で調光された後、ビームエクスパンダ15で対物レンズ44の瞳面を満たせる大きさに拡大される。
【0029】
このレーザ光は、第1ダイクロイックミラー20によって反射された後、スキャニングユニット30でスキャニングされ、集光レンズ41によって1次像面47に挿入された蛍光ガラス42上に集光する(レーザ光は、この際も2次元的に振られている)。
【0030】
蛍光ガラス42は、レーザ光の照射によって542nm程度の波長の蛍光(緑色)を発生する。この蛍光は集光レンズ41からスキャニングユニット30へと光路を逆行する。スキャニングユニット30では、通常の観察時と同様にデスキャニングされる。
【0031】
第1ダイクロイックミラー20を通過した蛍光は、バリアフィルタ2を通った後集光レンズ3で集光される。
【0032】
ピンホール4aを通過した蛍光は、光蛍光検出器53で電気信号に変換され、アンプ61で増幅された後、A/Dコンバータ62で、例えば256段階のデジタル信号に変換される。このデジタル信号はデジタルメモリ64に記憶され、CPU65の制御や演算回路により輝度信号を分離する処理等を行った後、再びアナログ信号に戻してモニタ63にデジタル画像として出力される。
【0033】
その際、例えばモニタ63の画面をズーム画面表示や静止画面表示としておき、画面の中心(スキャン中心)又は中心付近の輝度値が最大となるように、集光レンズ3の光軸又はピンホールプレート4の位置を調整し、蛍光の光軸とピンホールの中心を一致させる。
【0034】
この第1実施形態によれば、試料面に照射したのと同等の調整を試料にダメージを与えることなく行える。また均一な蛍光を発する蛍光ガラスを用いるので、輝度値の定量的な調整を行うことができる。
【0035】
図2はこの発明の第2の実施形態に係る共焦点レーザ走査顕微鏡のブロック構成図であり、図1と同一部材には同一符号を付して説明を省略する。
【0036】
この第2の実施形態においては、CPU65によって駆動が制御される第1の駆動回路70と、第2の駆動回路80とを設けたことが第1の実施形態の構成と相違する。
【0037】
第1の駆動回路70は蛍光ガラス42を1次像面47に挿入させるためのものであり、第2の駆動回路80は集光レンズ3の光軸又はピンホールプレート4の位置を移動させるためのものである。
【0038】
次に集光レンズ3又はピンホールプレート4を動かす調整時の動作を図2を参照して説明する。
【0039】
第1ダイクロイックミラー20が切り換えられたことを示す信号20aを入力したとき、CPU65は制御信号65aを駆動回路70へ出力し、蛍光ガラス42を一次像面47に挿入する。
【0040】
アルゴンレーザ光源11から射出されたレーザ光は、第1実施形態の場合と同じ光路を通ってピンホール4aに達する。
【0041】
ピンホール4aを通過した蛍光は、光蛍光検出器53で電気信号に変換され、アンプ61で増幅された後、A/Dコンバータ62で、例えば256段階のデジタル信号に変換される。このデジタル信号はデジタルメモリ64に記憶され、CPU65の制御や演算回路により輝度信号を分離する処理等を行った後、再びアナログ信号に戻してモニタ63にデジタル画像として出力される。
【0042】
その際、モニタ63の画面の中心(スキャン中心)又は中心付近の輝度値が最大となるように、CPU65は所定のプログラムに基づいて駆動回路80へ制御信号65bを出力し、集光レンズ3の光軸又はピンホールプレート4の位置を動かして、蛍光の光軸とピンホールの中心を一致させる。
【0043】
このCPU65による制御を同じプログラムで処理すれば、同じデジタル画像に対して処理結果は常に同一となるので、画像再現性が極めてよい調整を行うことができる。
【0044】
この第2実施形態によれば、第1実施形態と同様の調整をより確実かつ迅速に行うことができる。
【0045】
なお、351nmの波長を通す励起フィルタ12、380nm以下の波長の光を反射させる第1ダイクロイックミラー20、390nm以上の波長の光を透過するバリアフィルタ2、440nm以上の波長の蛍光を透過する第2ダイクロイックミラー51、400〜440nmの波長の蛍光を通すエミッションフィルタ52及び440nm以上の波長の蛍光を通すエミッションフィルタ54を用いる代わりに、488nmの波長を通す励起フィルタ12、510nm以下の波長の光を反射させる第1ダイクロイックミラー20、515nm以上の波長の光を透過するバリアフィルタ2、625nm以上の波長の蛍光を透過する第2ダイクロイックミラー51、500〜625nmの波長の蛍光を通すエミッションフィルタ52及び630nm以上の波長の蛍光を通すエミッションフィルタ54を用いたときでも、上記各実施形態と同様に調整を行うことができる。
【0046】
また、上記各実施形態においては、ピンホール4aをピンホールプレート4に形成するようにしたが、シングルモードの光ファイバ等の端面を用いるようにしてもよい。
【0047】
図3は蛍光ガラスの蛍光スペクトル図であり、横軸は蛍光波長λ(単位:nm)、縦軸は蛍光強度Iである。
【0048】
この図から351nm及び488nmの波長のレーザ光を蛍光ガラスに照射したとき、542nm付近で蛍光強度が最大となることがわかる。したがって、波長が542nm付近の蛍光を観察することで集光レンズの光軸やピンホールの位置の調整を行えば、安定した調整を行えることがわかる。
ることがわかる。
【0049】
【発明の効果】
以上に説明したように請求項1に記載の発明の共焦点走査顕微鏡によれば、対物レンズの焦点面と共役な1次像面に標準蛍光サンプルとしての蛍光ガラスを抜き差し自在に設けたので、試料面に照射したのと同等の、集光レンズの光軸やピンホールの位置の調整を行うことができ、試料にダメージを与えることがなくなる。また蛍光ガラスは均一な蛍光を発するので、輝度値を用いた定量的な調整を行うことができる。そのため、調整後においては再現性の画像を取得することが可能となる。
【0050】
請求項2に記載の発明の共焦点走査顕微鏡によれば、蛍光ガラスは、レーザ光の波長λが351nm及び488nmのとき、蛍光波長が542nm付近で蛍光強度が強くなるので、波長が542nm付近の蛍光を観察することで安定した調整を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1はこの発明の第1の実施形態に係る共焦点レーザ走査顕微鏡のブロック構成図である。
【図2】図2はこの発明の第2の実施形態に係る共焦点レーザ走査顕微鏡のブロック構成図である。
【図3】図3は蛍光ガラスの蛍光スペクトル図である。
【符号の説明】
1 共焦点レーザ走査顕微鏡
3 集光レンズ
4a ピンホール
11 アルゴンレーザ光源
20 ダイクロイックミラー(光分離手段)
30 スキャニングユニット(走査手段)
46 試料
47 1次像面
50 蛍光検出部(検出手段)
Claims (2)
- 励起レーザ光を発して試料に照射する光源と、前記励起レーザ光と試料から発せられる蛍光とを分離する光分離手段と、前記励起レーザ光を2次元走査する走査手段と、前記走査手段と前記試料との間に配置された対物レンズと、前記光分離手段によって分離された蛍光を集光させるための集光レンズと、前記集光レンズの焦点面に設けられたピンホールと、前記ピンホールを通過した蛍光を検出する検出手段とを備えた共焦点レーザ走査顕微鏡において、
前記対物レンズの焦点面と共役な1次像面に標準蛍光サンプルとしての蛍光ガラスを抜き差し自在に設けることを特徴とする共焦点レーザ走査顕微鏡。 - 前記蛍光ガラスは、レーザ光の波長λが351nm及び488nmのとき、蛍光波長が542nm付近で蛍光強度が強くなるものであることを特徴とする請求項1記載の共焦点レーザ走査顕微鏡。
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