JP3813244B2 - アルカリ現像性不飽和樹脂組成物及びこれを用いた高感度ネガ型パターン形成材料 - Google Patents
アルカリ現像性不飽和樹脂組成物及びこれを用いた高感度ネガ型パターン形成材料 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、紫外線若しくは電子線を照射することにより硬化し、アルカリ現像処理によりパターン形成可能なアルカリ現像性不飽和樹脂組成物及びこれを用いた高感度ネガ型パターン形成材料に関する。更に詳しくは、液晶の表示装置あるいは撮影素子に用いられるカラーフィルター用の保護膜、カラーフィルター用インキ、ブラックマトリックス用インキ等の用途に、また、プリント配線板用やMCM(マルチチップモジュール)用の絶縁膜、コーティング材、封止材等の分野で利用されるアルカリ現像性不飽和樹脂組成物及びこれを用いた高感度ネガ型パターン形成材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
最近、液晶ディスプレイの高精彩化や半導体素子の高密度実装化が進むにつれ、リソグラフィーにより微細パターンを精度良く形成することが求められている。また、樹脂に対して硬度、はんだ耐熱性、透明性、密着性、耐酸性、耐アルカリ性、耐溶剤性、絶縁抵抗、平坦性等に厳しい性能が要求されると共に、用途に合わせて顔料、シリカ等を樹脂中に高濃度に充填し、紫外線照射でパターン形成を行う必要から、高感度のネガ型パターン形成材料が求められている。
【0003】
例えば、カラーフィルターの高精彩化の要求に対しては色純度の高いカラーフィルター用インキが求められ、これに対しては樹脂中に顔料を高濃度で分散させる手法があるが、高濃度に分散させた顔料によりパターン形成に必要な紫外線が遮断され、現像時にパターン流れが生じる。このために、ネガ型パターン形成材料中に多量の光重合開始剤を添加することが考えられるが、光重合開始剤を多量に添加すると熱かぶりによるパターンの線太りや、溶解部分の残渣が別の問題として生じる。
【0004】
また、カラーフィルターの高精彩化のために、低反射の高遮光性ブラックマトリックス樹脂が求められている。しかしながら、このものは、高遮光率を達成するために感光性樹脂に光を吸収する黒色顔料あるいは数種の混色顔料を多量に分散させて調製されるものであり、パターン形成に必要な紫外線が顔料によって更に遮断され、微細パターンを形成するのが困難となる。従って、最近求められている99.9%以上の光を遮光するブラックマトリックス用インキの用途には、微細パターンを精度良く形成することが可能な高感度の感光性樹脂が求められている。
【0005】
一方、高密度実装化を目的とするプリント配線基板用や半導体用の絶縁材料が求められており、この用途では膜厚が数十μm程度まで厚くなる傾向にあり、このために活性光線により深部まで硬化可能な高感度感光性樹脂が求められている。また、半導体の絶縁膜や封止用材料においてはその難燃化、低吸湿化、はんだ耐熱性等の性能向上のためにシリカ等の充填剤を樹脂に混合する手法がとられるが、リソグラフィーでネガ型パターンを形成する際に充填剤により紫外線が遮蔽され、難燃化、低吸湿化、はんだ耐熱性等の性能とネガ型パターン形成能とを両立させるには至っていない。
【0006】
一般に、このような用途におけるネガ型パターン形成材料には重合性不飽和結合をもった多官能光硬化性モノマー、アルカリ可溶性のバインダー樹脂、それらと光重合開始剤との組成物が用いられている。
【0007】
例えば、特開昭61ー213213号公報や特開平1ー152449号公報には、カラーフィルター用材料としての応用が例示され、バインダー樹脂としてカルボキシル基を有する(メタ)アクリル酸若しくは(メタ)アクリル酸エステルと、無水マレイン酸と、他の重合性モノマーとの共重合体が開示されている。
しかしながら、ここに開示された共重合体は、それがランダム共重合体であるために、光照射部分内並びに光未照射部分内でアルカリ溶解速度の分布が生じ、現像操作時のマージンが狭く、また鋭角なパターン形状や微細パターンを得ることが困難である。特に、高濃度の顔料を含む場合には露光感度が著しく低下し、微細なネガ型パターンを得ることができない。
【0008】
また、特開平4ー340965号公報には、1分子中に重合性の不飽和二重結合とカルボキシル基とを有するアルカリ現像性不飽和化合物がカラーフィルター等のネガ型パターン形成に有効であることが開示されている。アルカリ可溶性を有する分子が光照射により不溶化することから、前述のバインダー樹脂と多官能重合性モノマーとの組み合わせに比較して高感度となることが予測されるが、例示されている化合物はフェノール性オリゴマーに重合性不飽和結基であるアクリル酸と酸無水物とを任意に付加させたものであり、この提案の場合も分子組成の不均一性からアルカリ溶解速度の分布が広く、微細なネガ型パターンを形成することは困難である。
【0009】
更に、特開平4−345673号公報、特開平4−345608号公報、特開平4−355450号公報、及び特開平4−363311号公報には、耐熱性の液状レジスト及びカラーフィルター材料が開示されているが、酸無水物としてテトラヒドロキシ無水フタル酸等の単官能酸無水物が使用されているために、得られたアルカリ現像性不飽和化合物はジアクリレート1分子と酸無水物1分子若しくは2分子が付加した分子構造からなる単量体であり、この化合物の感度は低く、特に高濃度遮光剤を含有するブラックレジスト用樹脂としては高遮光性のパターンを形成することができない。
【0010】
更にまた、特開平5ー339356号公報、特開平5ー146132号公報、及びPCT/JP93/00536号公報には、ジヒドロキシプロピルアクリレート化合物と酸一無水物並びに酸二無水物との共重合によるアルカリ現像性不飽和樹脂が開示されている。この場合、酸二無水物とジヒドロキシ化合物との付加反応によりオリゴマー化が進行するが、反応系に共存する酸一無水物によりオリゴマー化が妨げられるために、アルカリ現像性不飽和樹脂の分子量低下並びに分子構造の不均一化が生じ、感度が低く、また、現像のマージンが狭いという問題がある。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明者らは、上記従来のネガ型パターン形成材料における問題点を解消することについて鋭意検討した結果、カルボキシル基含有交互共重合体の分子量を増加させてアルカリ現像性不飽和樹脂組成物の多官能化を行うと共に、この交互共重合体の組成並びに分子末端を均一にすることにより、高感度で現像マージンの広いネガ型パターン形成材料に好適なアルカリ現像性不飽和樹脂組成物の開発に成功し、本発明を完成した。
【0012】
従って、本発明の目的は、現像プロセスにおける現像マージンの広い高感度のネガ型パターン形成材料を製造する上で好適なアルカリ現像性不飽和樹脂組成物を提供することにある。
【0013】
また、本発明の他の目的は、特に高濃度の顔料や充填剤を添加しても微細パターンの形成性に優れており、高精彩カラーフィルター用材料や、高密度集積回路用の絶縁膜や封止材等の用途に好適な高感度ネガ型パターン形成材料を提供することにある。
【0014】
更に、本発明の他の目的は、このような高感度ネガ型パターン形成材料の必須の酸性成分であるカルボキシル基含有交互共重合体からなるアルカリ現像性不飽和樹脂を製造するための方法を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明は、1分子中に1個以上の重合性不飽和基を持つジオール化合物と酸二無水物とを、ジオール化合物の水酸基100モル部に対して酸無水物基75モル部以上100モル部未満に相当する酸二無水物を加熱下に反応させた後、更にジオール化合物を加えて加熱下に反応させて得られたカルボキシル基含有交互共重合体を必須の酸性成分として含有し、このカルボキシル基含有交互共重合体の酸価が70〜170mgKOH/gであって、未反応酸二無水物及び/又は上記ジオール化合物1分子と酸二無水物1分子との付加物からなる未重合酸性成分の含有割合が全酸性成分中の20重量%以下であることを特徴とするアルカリ現像性不飽和樹脂組成物である。ここで、上記ジオール化合物は、ジグリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸との付加化合物からなる。
【0016】
また、本発明は、上記アルカリ現像性不飽和樹脂組成物を製造するに際し、ジオール化合物の水酸基100モル部に対して酸無水物基75モル部以上100モル部未満に相当する酸二無水物を加熱下に反応させた後、更にジオール化合物を加えて加熱下に反応させることを特徴とするアルカリ現像性不飽和樹脂組成物の製造方法である。
【0017】
更に、本発明は、上記アルカリ現像性不飽和樹脂組成物を用いたカラーフィルター用の、又は、回路絶縁材料用の高感度ネガ型パターン形成材料である。
【0018】
本発明において、ジオール化合物は、1分子中に1つ以上、好ましくは2つ以上の重合性不飽和基を有するものであり、分子量の増加を図り、また、未反応酸二無水物及び/又はジオール化合物1分子と酸二無水物1分子との付加物からなる未重合酸性成分の副生を低減させる目的から、好ましくは分子中の2つのヒドロキシル基と酸二無水物中の2つの酸無水物基との反応性が等しくなる、例えば対称な分子構造を有するものがよい。
【0019】
具体例としては、各種ジグリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸との付加化合物あるいは各種ビスフェノールジグリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸との付加化合物であるジヒドロキシプロピルアクリレート樹脂を例示することができる。例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、水添ビスフェノールA等のグリシジルエーテルや、例えばビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)ケトン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)ケトン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジメチルシラン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)ジメチルシラン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)ジメチルシラン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−クロロフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)エーテル、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−クロロフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−フルオロフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)フルオレン、4,4’−ビフェノール、3,3’−ビフェノール等のビスフェノール類のグリシジルエーテルから、後に例示する製造法により誘導される。従って、エポキシ化合物から誘導されるため、若干のオリゴマー単位が混入することになるが、本発明のアルカリ現像性不飽和樹脂組成物の性能には問題はない。
【0020】
また、本発明で用いる酸二無水物としては、例えば、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、ジフェニルスルフォンテトラカルボン酸二無水物等の芳香族酸二無水物や、これらの芳香族酸二無水物の芳香環にアルキル基、ハロゲン基等の置換基が導入された芳香族酸二無水物の誘導体等が挙げられる。
【0021】
本発明のカルボキシル基含有交互共重合体からなる酸性成分のアルカリ現像性不飽和樹脂組成物は、粘度調整を目的として用いられる反応温度より高い沸点を持つ溶媒中で上記ジオール化合物と酸二無水物とを加熱することにより製造することができる。そして、このアルカリ現像性不飽和樹脂組成物の製造の際には、ジオール化合物のヒドロキシ基100モル部に対して酸二無水物の酸無水物基75〜100モル部、好ましくは75モル部以上100モル部未満の割合で反応させる。ここで、酸無水物基とは−CO−O−CO−基であり、酸二無水物の50モル部が酸無水物基の100モル部に相当すると定義される。この酸二無水物の使用量が酸無水物基75モル部未満では分子量を充分に増加させて交互共重合体中に高感度化に必要な重合性二重結合基を充分に導入することができず、また、酸無水物基100モル部を超えて使用しても同様に分子量増加が得られないばかりか、交互共重合体の分子末端が酸無水物となる確率が増し、感光感度の低下、微細パターンの剥離、狭い現像マージンという問題が生じて好ましくない。
【0022】
図1にはジオール化合物と酸二無水物とを反応させた時に得られる生成物の重合度nに対する酸価を示した。下記式1及び式2
【化1】
における構造式の違いは末端成分による。
【0023】
この図1によれば、重合度の低い段階では、分子末端の影響を受けて両者の酸価が様々な値となり、重合度が高くなって高分子化により分子末端の影響が薄らぐとその差は小さくなる。特に式2の重合度n=0である低分子化合物、すなわちジオール化合物1分子と酸二無水物1分子との付加物の酸価は大きく、分子中の重合性不飽和基は少ない。この低分子量付加物や未反応酸二無水物の含有量がアルカリ現像性不飽和樹脂組成物中に20重量%以上存在すると、微細パターンを形成するのが困難になる。
【0024】
すなわち、本発明では、分子量増加により生成する交互共重合体に重合性不飽和基を多く導入すると共に、アルカリ現像性に関与する樹脂の酸価を整えることにある。カルボキシル基含有交互共重合体の酸価の範囲としては、70〜170mgKOH/g、好ましくは80mgKOH/g以上150mgKOH/g以下である。酸価は樹脂1gを中和するのに必要な水酸化カリウムのミリグラム数で表現される。ここで、カルボキシル基含有交互共重合体の酸価が70mgKOH/g未満であると現像時間が長くなり、また、酸価が170mgKOH/gを超えると現像時に微細パターンが剥離し易くなる。
【0025】
更に、カルボキシル基含有交互共重合体の分子末端にジオール成分を優先的に配置させるための製造方法として、常にジオール化合物が過剰となるように反応系を制御するのが好ましく、更に、ジオール化合物の水酸基100モル部に対して酸二無水物を酸無水物基75モル部以上100モル部未満の範囲で添加して加熱下に反応させた後、更にジオール化合物を加えて加熱下に反応させる方法がより好ましい。ここで、後で加えるジオール化合物の量は、仕込んだ酸無水物基100モル部に対して水酸基5モル部以上となる量であり、後述するネガ型パターン形成材料の酸価により決定されるが、酸価が20以下とならないように添加することが好ましい。ジオール化合物を後で加える時には、酸無水物基が十分に重合に関与した後、すなわち反応時間が2時間以上経過した後に加えることが好ましく、これによって特にジオール化合物1分子と酸無水物1分子とが付加した低分子量体の副生を抑制することができる。
【0026】
以上のようにして得られる本発明のアルカリ現像性不飽和樹脂組成物は、重合性二重結合とカルボキシル基とが一定の間隔で導入された交互共重合体を主体とするため、従来のアクリル酸・アクリル酸エステル類のランダム共重合体やジオール化合物と酸一無水物を含む酸無水物との反応により得られる低重合度のアルカリ現像性不飽和樹脂組成物に比較して、次のような特徴のある作用を発現する。
【0027】
(1)高感度
重合度を上げることで1分子中に多くの二重結合が導入されているので、少ない光照射でも架橋化・不溶化する確率が増し、ネガ型パターン形成材料とした際の感度が著しく向上する。
【0028】
(2)広い現像マージン
交互共重合体であり、しかも、その末端構造が均質化し、更にジオール化合物1分子と酸無水物1分子とが付加した酸価の高い低分子量体の副生が抑制されているので、従来に比較して露光部並びに未露光部のアルカリ現像速度の均質化が図られ、現像マージンが広くなる。
【0029】
カルボキシル基含有交互共重合体を製造する際の反応温度は、90〜140℃、好ましくは100〜130℃であり、また、反応時間は2〜20時間、好ましくは2〜12時間である。反応温度が90℃より低いと反応時間が20時間を超えて長くなり、また、未反応酸二無水物が残存して好ましくない。反対に、反応温度が140℃を超えるとジオール化合物中の重合性不飽和基の反応によるゲル化物の発生や樹脂の着色が顕著になり適当でない。
【0030】
このカルボキシル基含有交互共重合体を製造する際には、水酸基を持たず、反応温度より高い沸点を有する溶媒を反応溶媒として用いるのがよく、このような溶媒としては、例えば、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート等のセロソルブ系溶媒や、ジグライム、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の高沸点のエーテル系若しくはエステル系の溶媒や、シクロヘキサノン、ジイソブチルケトン等のケトン系溶媒等が好適に用いられる。
【0031】
更に、このカルボキシル基含有交互共重合体を製造する際の反応を促進する目的で触媒をジオール化合物に対して0.001〜1重量%の範囲で用いてもよい。この触媒としては、例えばテトラエチルアンモニウムブロマイド等の公知のものを使用することができる。また、重合性不飽和基の熱安定性を確保する目的で、例えばジーtーブチルヒドロシトルエン等の重合禁止剤をジオール化合物に対して0.1重量%以下の範囲で加えてもよい。
【0032】
本発明のネガ型パターン形成材料には、上記アルカリ現像性不飽和樹脂組成物と、この樹脂の光架橋反応を促してアルカリ現像液に対する不溶性を付与する光重合開始剤が必須成分として用いられ、必要に応じて多官能アクリレートモノマー及びオリゴマー等の架橋剤、エポキシ樹脂、粘度調整用の溶剤、着色用顔料、充填剤、レベリング剤等が添加される。このネガ型パターン形成材料によれば、これをガラス、シリコンウェハー等の基板に塗布し、50〜150℃に加熱することにより溶剤を除去して塗膜を形成し、ネガマスクを介して紫外線等の活性光線により硬化せしめ、アルカリ性現像液中で現像することによりネガ型パターンが形成される。
【0033】
ところで、本発明のネガ型パターン形成材料を用いてネガ型パターンを形成する際に、その露光部と未露光部との溶解速度に充分な差を設けて微細ネガパターンを形成するためには、塗膜中の酸性成分の濃度が重要である。そこで、本発明においては、ネガ型パターン形成材料中の不揮発成分、すなわち本発明のアルカリ現像性不飽和樹脂組成物中の加熱されて蒸発する溶剤等を除いた成分の酸価が10〜100mgKOH/g、好ましくは20〜90mgKOH/gとなるように、ネガ型パターン形成材料を構成する。
【0034】
ここで、上記ネガ型パターン形成材料中の不揮発成分の酸価が10mgKOH/g未満であると、アルカリ現像液中で中和されたカルボキシル基含有交互共重合体が現像液中へ拡散していくのが遅くなり、溶解時間が極端に長くなって、未露光部分と露光部分との溶解速度差が狭くなり好ましくないほか、未露光部分が塗膜表面から溶解するのではなく、基板から塗膜ごと剥離していく傾向となって、同時に微細パターンの剥離が起こり、微細なネガ型パターンを形成するのが困難になる。反対に、平均酸価が100mgKOH/gを超えると、アルカリ現像性不飽和樹脂組成物中のカルボン酸が中和するのに伴って侵入した溶媒により露光部の膨潤が起こり、パターンの溶解や欠落が発生する。そこで、現像時に露光部分の剥離を抑えるために、600mJ以上の多くの露光を行う方法を採用すると、タクトタイムが長くなって生産性が低下して好ましくなく、また、光重合開始剤を重合性樹脂成分に対して20重量%以上加える方法を採用すると、得られた塗膜が着色したり、密着性不良等を引き起こして好ましくない。特に、硬化に必要な活性光線を吸収するような顔料が添加されている場合には、露光部の不溶化までに必要な架橋構造の形成が達成されず、ネガ型パターンの剥離が生じ易くなる。
【0035】
ネガ型パターン形成材料の構成成分として上記アルカリ現像性不飽和樹脂組成物と共に必須成分の光重合開始剤としては、具体的には、ベンゾイン、ベンジル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルトン、2ーメチルー1−{4−(メチルチオ)フェニル}−2−モリフォリノープロパン−1−オン、N,N−ジメチルアミノアセトフェノン、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、アセトフェノンジメチルケタール、ベンゾフェノン、メチルベンゾフェノン、2−トリクロロメチル−5−(P−メトキシスチリル)−1,3,4−オキサジアゾール、4,4’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、2−トリクロロメチル−S−トリアジン等を例示することができる。これらは、単独であるいは2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0036】
更に、かかる光重合開始剤は、N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、N,N−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、トリエタノールアミン、トリエチルアミンのような公知の光増感剤を単独であるいは2種類以上を組み合わせて併用することができる。
上記光重合開始剤の使用量は、ネガ型パターン形成材料中の光重合が可能な不飽和樹脂及びモノマーの総量に対して1〜20重量%、好ましくは1〜15重量%である。また、この光重合開始剤に光増感剤を併用する場合のその使用量は、0.1〜10重量%、好ましくは0.1〜5重量%である。光重合開始剤や光増感剤の使用量が上記範囲を外れると、剥離や未反応増感剤のブリージング等の問題が生じる場合がある。
【0037】
また、本発明のネガ型パターン形成材料中には、その使用目的に合わせて光重合可能なモノマーやオリゴマーを前述した所望の酸価となる範囲内で配合することができる。特に高感度化のためには、1分子中に重合可能な二重結合を2つ以上持つモノマーやオリゴマーを配合するのが好ましい。また、重合性不飽和結合を持つジオール化合物の一部を後添加するカルボキシル基含有交互共重合体の製造方法においては、この後添加するジオール化合物と同等のものを所定の酸価となるように添加してもかまわない。
【0038】
具体例としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等の水酸基を有するモノマーや、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類等を挙げることができ、これらの化合物は単独で、あるいは、2種以上を併用して用いることができる。
【0039】
更に、ネガ型パターンと基板との密着性の向上や耐アルカリ性の向上を目的として、エポキシ基を有する化合物を配合することができる。このエポキシ基を有する化合物としては、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂や、フェニルグリシジルエーテル、p−ブチルフェノールグリシジルエーテル、トリグリシジルイソシアヌレート、ジグリシジルイソシアヌレート、アリルグリシジルエーテル、グリシジルメタクリレート等のエポキシ基を少なくとも1個有する化合物等が挙げられる。
【0040】
また、本発明のネガ型パターン形成材料には、必要に応じて公知のエポキシ基硬化促進剤、重合禁止剤、可塑剤、レベリング剤、消泡剤等の添加剤や、溶剤等を配合することができる。更に、用途に応じて、硬化物の着色、低熱膨張化、弾性率向上、低吸湿化等を目的として、公知の顔料や充填剤等を加えてもよい。
【0041】
次に、本発明のネガ型パターン形成材料を用いてネガ型パターンを形成する方法について説明する。
先ず、本発明のネガ型パターン形成材料を溶媒で希釈し、用途に応じて必要な硬化促進剤、カップリング剤、酸化防止剤等の添加剤を加えてワニスを調製する。この際に、インクとして使用する場合は更に顔料を、また、絶縁膜や封止剤として使用する場合は充填剤をそれぞれ必要な量だけ上記ワニス中に分散させる。
【0042】
次に、このワニスを任意の方法で基板上にコーティングする。後述する実施例ではスピンコートを用いているが、ディップコート、バーコート、ロールコート等のコーティング方法も勿論採用することができる。また、スクリーン印刷等の印刷方式も適用可能である。
【0043】
更に、このようにして基板上にワニスをコーティングした後、通常50〜150℃で1〜30分間、好ましくは50〜100℃で1〜15分間加熱して溶媒の大部分を揮発させた後、ネガマスクを通して紫外線や電子線等の活性光線で硬化させる。その後、未露光部分をアルカリ水溶液を用いて溶出させる現像操作を行ってパターンを形成し、更に後硬化のために通常180〜250℃で10〜60分間の熱処理を行う。
このようにして得られた塗膜は、目的の平滑性、耐熱性、透明性、密着性、硬度、耐溶剤性、耐アルカリ性等に優れたものとなる。
【0044】
また、露光後の現像に用いる現像液としては、典型的にはアルカリ金属やアルカリ土類金属の炭酸塩水溶液や、アルカリ金属の水酸化物水溶液等のアルカリ水溶液が挙げられる。また、有機系のジエタノールアミン水溶液、テトラエチルアンモニウムヒドロキサイド水溶液等からなるアルカリ水溶液も用いることができる。これらのアルカリ水溶液としては通常0.01〜3重量%濃度のものが用いられ、現像は市販の現像機や超音波洗浄機等を用いて10〜50℃、好ましくは20〜40℃の温度で行われ、これによって微細なネガ型パターンを形成することができる。
【0045】
本発明のネガ型パターン形成材料は、絶縁被膜・塗料、接着剤、印刷インキ、コーティング剤等として、特に液晶表示装置や撮影素子に使われるカラーフィルター用の保護膜、カラーフィルター用インキ、ブラックマトリックス用インキ等の用途に有用であるほか、プリント配線板用やMCM(マルチチップモジュール)用の絶縁インキ、コーティング材、封止材としても有用である。硬化物は優れた硬度、はんだ耐熱性、透明性、耐酸性、耐アルカリ性、耐溶剤性、絶縁抵抗、耐電解腐食性及び耐めっき性を発揮し、更にはコーテイング剤として用いたときには膜の平滑性、基板に対する密着性等において優れた性能を発揮する。
【0046】
例えば、カラーフィルター用材料としては、それがカラーフィルター用保護膜である場合には、本発明のアルカリ現像性不飽和樹脂組成物に光重合開始剤、多官能アクリレート、エポキシ樹脂、溶剤、レベリング剤等を配合して構成され、また、カラーフィルター用インクである場合には、上記成分に加えて、塗膜を着色させるための顔料を配合して構成される。
【0047】
カラーフィルター用インクに用いる顔料には、有機顔料及び無機顔料があり、有機顔料の例としてはアゾレーキ系、不溶性アゾ系、フタロシアニン系、キナクドリン系、ジオキサジン系、イソインドリノン系、ベリノン系、アントラキノン系、ペリレン系等、及びこれらの混合物が挙げられ、また、無機顔料の例としてはミロリブルー、酸化鉄、コバルト系、マンガン系、群青、紺青、コバルトブルー、セルリアンブルー、ピリジアン、エメラルドグリーン、コバルトグリーン、及びこれらの混合物が挙げられる。これらの顔料については、塗膜の透明性を維持しつつ塗膜を着色する必要から、可視光の波長の下限である0.4μm以下の粒子径であるのが好ましく、実用上の観点から好ましくは0.2〜0.3μmの平均粒子径であるのがよい。この顔料の添加量は、ネガ型パターン形成材料中の樹脂成分の合計100重量部に対して10〜200重量部であり、この添加量が10重量部未満であると、所望の分光特性が得られず、また、200重量部を越えると、塗膜の密着性が低下する。本発明のネガ型パターン形成材料を用いると、従来に比較して少ない光照射量でネガ型パターンを形成できるので、特に最近の色純度の高いカラーフィルターの作製に好適である。
【0048】
また、本発明のネガ型パターン形成材料はブラックマトリックス用ブラックインキとしても好適に用いられる。近年の高画質液晶ディスプレイの要求に対して、従来の金属クロムによるブラックマトリックス形成に代わり、低反射で写り込みのない樹脂ブラックマトリックスが注目されている。しかしながら、樹脂ブラックマトリックスを与えるブラックインキについては、99.9%以上の光を遮る高濃度遮光剤の存在下で光照射により硬化してパターンを形成する必要があることから、高感度の感光性樹脂を用いることが必要である。本発明のネガ型パターン形成材料を用いた樹脂ブラックマトリックス用ブラックインキは、99.9%以上(遮光率OD≧3)の光を遮光する材料組成(樹脂成分100重量部に対してカーボンブラック80重量部以上)においても良好なパターンを形成することができる。
【0049】
更に、層間絶縁膜については、体積抵抗率を大きくするために、また、欠陥等による導通を防ぐために、通常10μm以上の膜厚で塗布される。この用途においても、厚膜で微細パターンを形成するために高感度の感光性樹脂の使用が求められている。高感度の感光性樹脂の使用に代えて多量の光重合開始剤を添加することは、光重合開始剤自身による遮蔽のために有効でなく、また、基板との密着不良や残存光重合開始剤による形成パターンの信頼性低下の原因になる。本発明のネガ型パターン形成材料によれば、このような多量の光重合開始剤を用いることなく、従来と同程度の添加量で厚膜で微細なネガ型パターンを形成することが可能である。
【0050】
一方、半導体の絶縁膜や封止用材料の低吸湿化、はんだ耐熱性向上、あるいは難燃性付与を目的として、ネガ型パターン形成材料中にシリカ等の充填剤を添加することが行われているが、リソグラフィーでネガ型パターンを形成する際に充填剤により紫外線の遮蔽が生じ、低吸湿化、はんだ耐熱性及び難燃性とネガ型パターン形成性能の両者を満足できる程度にまで両立させるには至っていない。しかしながら、本発明のネガ型パターン形成材料によれば、従来に比べてより多くの充填剤を添加することができ、より高い信頼性を得ることができる。
【0051】
【発明の実施の形態】
以下に、実施例及び比較例に基づいて、本発明を具体的に説明する。なお、アルカリ現像性不飽和樹脂組成物の酸価は、得られた樹脂溶液をジ オキサンで希釈した後、フェノールフタレインを指示薬として1/10規定KOHエタノール(50重量%)水溶液で滴定して決定した。また、分子量は、テト ラヒドロフランを展開溶媒としてRI(屈折率)検出器を持ったゲルパーミッションクロマトグラフィーにより求めた。示された分子量は全てポリスチレン換算 の重量平均分子量である。
なお、実施例1〜3、12〜15は、厳密には本発明の範囲外であるので、参考例と解釈される。
【0052】
合成例1
500ml四つ口フラスコ中に、ビスフェノールフルオレン型エポキシ樹脂75.0g(エポキシ当量257)と、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド130mgと、テトラエチルアンモニウムブロマイド0.27gと、2,6−ジ−イソブチルフェノール29mgと、アクリル酸21.0gと、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート17.0gとを仕込み、乾燥空気を25ml/分の速度で吹き込みながら100〜105℃で16時間加熱下に撹拌して反応させた。
【0053】
得られた樹脂を更に79gのプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートで希釈して固形分濃度50重量%の淡黄色透明なジヒドロキシプロピルアクリレート樹脂溶液(固形分換算でエポキシ当量21,300、酸価1.28mgKOH/g)を得た。
【0054】
実施例1
300ml四つ口フラスコ中に上記合成例1で得られた樹脂溶液96.0gと、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物16.2gと、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート16.2gとを仕込み、115〜120℃で加熱下に撹拌して4時間反応させ、透明な淡黄色のアルカリ現像性不飽和樹脂溶液を得た。
【0055】
得られた樹脂溶液の酸価(樹脂固形分換算)、GPC分析組成(面積%)及び樹脂溶液中のカルボキシル基含有交互共重合体の重量平均分子量を測定した。結果を表1に示す。
【0056】
実施例2
300ml四つ口フラスコ中に上記合成例1で得られた樹脂溶液96.0gと、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物16.2gと、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート19.5gとを仕込み、115〜120℃で加熱下に撹拌して2時間反応させ、透明な淡黄色の樹脂溶液を得た後、更に3.3gのビフェニルテトラカルボン酸二無水物を追加して同じ温度で3時間撹拌下に反応を行い、粘調透明なアルカリ現像性不飽和樹脂溶液を得た。
実施例1と同様に、得られた樹脂溶液の酸価(樹脂固形分換算)、GPC分析組成(面積%)及び樹脂溶液中のカルボキシル基含有交互共重合体の重量平均分子量を測定した。結果を表1に示す。
【0057】
実施例3
300ml四つ口フラスコ中に上記合成例1で得られた樹脂溶液96.0gと、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物16.2gと、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート20.6gとを仕込み、115〜120℃で加熱下に撹拌して2時間反応させ、透明な樹脂溶液を得た後、更に4.4gのビフェニルテトラカルボン酸二無水物を追加して同じ温度で3時間撹拌下に反応を行い、粘調透明なアルカリ現像性不飽和樹脂溶液を得た。
実施例1と同様に、得られた樹脂溶液の酸価(樹脂固形分換算)、GPC分析組成(面積%)及び樹脂溶液中のカルボキシル基含有交互共重合体の重量平均分子量を測定した。結果を表1に示す。
【0058】
実施例4
300ml四つ口フラスコ中に上記合成例1で得られた樹脂溶液96.0gと、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物16.2gと、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート20.6gとを仕込み、115〜120℃で加熱下に撹拌して2時間反応させ、透明な樹脂溶液を得た後、更に4.4gのビフェニルテトラカルボン酸二無水物を追加して同じ温度で3時間撹拌下に反応を行い、粘調透明な樹脂溶液を得た。
【0059】
更に、この樹脂溶液に合成例1で得られた樹脂溶液34.6g加え、同じ温度で攪拌下に2時間反応させ、淡黄色の粘調なアルカリ現像性不飽和樹脂溶液を得た。得られた樹脂溶液について、実施例1と同様に、酸価(樹脂固形分換算)、GPC分析組成(面積%)及び樹脂溶液中のカルボキシル基含有交互共重合体の重量平均分子量を測定した。結果を表1に示す。
【0060】
実施例5
300ml四つ口フラスコ中に上記合成例1で得られた樹脂溶液96.0gと、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物16.2gと、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート20.6gとを仕込み、115〜120℃で加熱下に撹拌して2時間反応させ、透明な樹脂溶液を得た後、更に4.4gのビフェニルテトラカルボン酸二無水物を追加して同じ温度で3時間撹拌下に反応を行い、粘調透明な樹脂溶液を得た。
【0061】
更に、この樹脂溶液に合成例1で得られた樹脂溶液6.5g加え、同じ温度で攪拌下に2時間反応させ、淡黄色の粘調なアルカリ現像性不飽和樹脂溶液を得た。得られた樹脂溶液について、実施例1と同様に、酸価(樹脂固形分換算)、GPC分析組成(面積%)及び樹脂溶液中のカルボキシル基含有交互共重合体の重量平均分子量を測定した。結果を表1に示す。
【0062】
実施例6
300ml四つ口フラスコ中に上記合成例1で得られた樹脂溶液96.0gと、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物16.2gと、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート19.5gとを仕込み、115〜120℃で加熱下に撹拌して2時間反応させ、透明な樹脂溶液を得た後、更に3.3gのビフェニルテトラカルボン酸二無水物を追加して同じ温度で3時間撹拌下に反応を行い、粘調透明な樹脂溶液を得た。
【0063】
更に、この樹脂溶液に合成例1で得られた樹脂溶液24.3g加え、同じ温度で攪拌下に2時間反応させ、淡黄色の粘調なアルカリ現像性不飽和樹脂溶液を得た。得られた樹脂溶液について、実施例1と同様に、酸価(樹脂固形分換算)、GPC分析組成(面積%)及び樹脂溶液中のカルボキシル基含有交互共重合体の重量平均分子量を測定した。結果を表1に示す。
【0064】
実施例7
300ml四つ口フラスコ中に上記合成例1で得られた樹脂溶液96.0gと、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物16.2gと、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート21.2gとを仕込み、115〜120℃で加熱下に撹拌して2時間反応させ、透明な樹脂溶液を得た後、更に5.1gのビフェニルテトラカルボン酸二無水物を追加して同じ温度で3時間撹拌下に反応を行い、粘調透明な樹脂溶液を得た。
【0065】
更に、この樹脂溶液に合成例1で得られた樹脂溶液16.4g加え、同じ温度で攪拌下に2時間反応させ、淡黄色の粘調なアルカリ現像性不飽和樹脂溶液を得た。得られた樹脂溶液について、実施例1と同様に、酸価(樹脂固形分換算)、GPC分析組成(面積%)及び樹脂溶液中のカルボキシル基含有交互共重合体の重量平均分子量を測定した。結果を表1に示す。
【0066】
比較例1
合成例1で得られた樹脂溶液96.0gと、テトラヒドロフタル酸無水物5.6gと、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物10.8gと、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート16.4gとを115〜120℃で加熱下に攪拌して4時間反応させ、淡黄色粘調なアルカリ現像性不飽和樹脂溶液を得た。得られた樹脂溶液について、実施例1と同様に、酸価(樹脂固形分換算)、GPC分析組成(面積%)及び樹脂溶液中のカルボキシル基含有交互共重合体の重量平均分子量を測定した。結果を表1に示す。
【0067】
比較例2
合成例1で得られた樹脂溶液96.0gと、テトラヒドロフタル酸無水物1.12gと、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物15.2gと、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート16.3gとを115〜120℃で加熱下に攪拌して4時間反応させ、淡黄色粘調なアルカリ現像性不飽和樹脂溶液を得た。
得られた樹脂溶液について、実施例1と同様に、酸価(樹脂固形分換算)、GPC分析組成(面積%)及び樹脂溶液中のカルボキシル基含有交互共重合体の重量平均分子量を測定した。結果を表1に示す。
【0068】
比較例3
合成例1で得られた樹脂溶液96.0gと、テトラヒドロフタル酸無水物10.4gと、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート10.4gとを115〜120℃で加熱下に攪拌して4時間反応させ、淡黄色粘調なアルカリ現像性不飽和樹脂溶液を得た。
得られた樹脂溶液について、実施例1と同様に、酸価(樹脂固形分換算)、GPC分析組成(面積%)及び樹脂溶液中のカルボキシル基含有交互共重合体の重量平均分子量を測定した。結果を表1に示す。
【0069】
【表1】
【0070】
上記表1の結果から明らかなように、実施例1〜3においては、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物の変性率を増すに伴い、目的とするカルボキシル基含有交互共重合体の収率及び分子量が増加した。また、酸一無水物であるテトラヒドロ無水フタル酸を使用した比較例1〜3と比較してカルボキシル基含有交互共重合体の収率及び分子量が高く、ジオール化合物1分子が酸無水物1分子又は2分子と付加した低分子量体の副生が20重量%未満と少なかった。
更に、実施例4〜6では、ジオール化合物の一部を後添加することにより、目的とするカルボキシル基含有交互共重合体の収率及び分子量が増加し、低分子量体の副生が更に減少することが判明した。
【0071】
実施例8
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート72.7gとシクロヘキサノン68.5gの混合溶媒に、イルガキュア907〔チバガイギー社製、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロペン−1−オン〕1.28gと、TAZ−110(ミドリ化学株式会社製)2.14gと、EAB−F(保土谷化学社製、N,N,N’,N’−テトラエチル−4,4’−ジアミノビフェニル)0.42gと、実施例6で得られたアルカリ現像性不飽和樹脂溶液60gと、DPHA(日本化薬株式会社製、ジペンタエリストールヘキサアクリレート)12.8gとを加えて撹拌し、均一溶液を得た。この樹脂溶液の固形分換算酸価は61.1mgKOH/gであった。
【0072】
更に、上記均一な樹脂溶液20.0gにカーボンブラック分散体(山陽色素製:SFブラック、カーボン濃度20%)20.0gを混合し、約30分撹拌し、感光性ブラックインキを調製した。この感光性ブラックインキの粘度は6cP(25℃)であった。
【0073】
このようにして調製した感光性ブラックインキを5インチ角ガラス基板上にスピンコートし、ホットプレート上60℃で1分乾燥し、ネガマスクを当てて500mJ/cm2 (365nm光線基準)の露光を行った。
更に、塗膜を0.08重量%Na2 CO3 水溶液中23℃でパターンが観察されるまで現像を行い、次いで純水でリンスを行って残存インキを除去し、得られた黒色ネガパターンを230℃で30分間ポストベークした。
【0074】
このようにして得られた感光性ブラックインキについて、以下の方法で、遮光率、感度、現像特性、及び基板との密着性を調べた。
結果を表2に示す。
【0075】
(1)遮光率
ミノルタ製デジタル輝度計S100(視覚感度較正)を用い、バックライト(VIEWPET TOPPN CV-11 )上に置いたガラス基板の輝度I0 と前記現像・リンス操作を行わない露光及びポストベーク後のブラック遮光膜を通した輝度Iとから、次式により求めた。
遮光率(OD)=log(I/I0 )
【0076】
(2)感度
マスクとしてウェッジフィルターを用いて、ブラックインキについては、ガラス上にスピンコートした塗膜を60℃で1分乾燥した後、500mJ/cm2 で露光し、次いで0.08重量%Na2 CO3 水溶液中23℃で15秒間現像した後の残膜角度より求めた。ここで、感度1は残膜率100%となる必要照射量に、また、感度2は残膜率0%となる最小照射量にそれぞれ相当する。
また、赤、青及び緑インキについては、同様にして100mJ/cm2 で露光した後、0.4重量%Na2 CO3 水溶液中25℃で30秒間現像した後の残膜角度より求めた
【0077】
(3)現像特性
ガラス上にスピンコートした塗膜を60℃で1分間乾燥した後、500mJ/cm2 で露光し、次いで0.08重量%Na2 CO3 水溶液中23℃で所定時間現像し、以下のネガ型パターンを観察した。
現像残査:ネガ型パターン周りの現像残渣を顕微鏡で観察し、○:現像残渣無し、×:現像残渣ありで評価した。
残膜及び線細り:20μm幅格子(抜かれる窓80μm角)の顕微鏡観察を行い、残膜については○:残膜なし、×:残膜ありで評価し、また、線細りについては○:20±1μm以内、×:19μm以下で評価した。
微細加工性:形成可能なネガラインの最小幅で示し、20μm未満であることが必要である。
ネガパターン表面荒れ:20mm角パターンの表面の目視観察を行い、○:荒れ無し、×:荒れ有りで評価した。
現像マージン:ネガパターンが現れて20μm幅格子(抜かれる窓80μm角)内に残膜がない場合を最小現像時間と、上記評価項目の全てが合格する最長現像時間とで示した。
【0078】
(4)基板との密着性
ポストベーク後の20mm角ネガパターンに、JIS K5400に準じて少なくとも100個の碁盤目を作るようにクロスカットを入れ、次いでセロテープを用いてピーリング試験を行ない、碁盤目の剥離の状態を目視によって観察し、○:全く剥離が認められないもの、×:剥離が少しでも認められるものの基準で評価した。
【0079】
実施例9
実施例4のアルカリ現像性不飽和樹脂溶液20.0gとカーボンブラック分散体(山陽色素製:SFブラック、カーボン濃度20%)22.0gを用いた以外は、上記実施例8と同様にして感光性ブラックインキを調製した。
得られた感光性ブラックインキについて、実施例8と同様に、固形分換算の酸価、遮光率、感度、現像特性及び基板との密着性を調べた。結果を表2に示す。
なお、この実施例9のブラック遮光膜は、1μm厚みで遮光率3.7を呈し、また、1.1μmで遮光率4.0を呈した。また、感度が高く、200mJ/cm2 の露光量でも十分にブラックマトリックスパターンが得られた。
【0080】
実施例10〜14
実施例6のアルカリ現像性不飽和樹脂溶液に代えて実施例1〜3、5及び7のアルカリ現像性不飽和樹脂溶液を用いた以外は、上記実施例8と同様にして感光性ブラックインキを調製した。
得られた感光性ブラックインキについて、実施例8と同様に、固形分換算の酸価、遮光率、感度、現像特性及び基板との密着性を調べた。結果を表2に示す。
【0081】
実施例15
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート72.7gとシクロヘキサノン68.5gの混合溶媒に、イルガキュア907(チバガイギー社製)1.28gと、TAZ−110(ミドリ化学株式会社製)2.14gと、EAB−F(保土ヶ谷化学社製)0.42gと、実施例3のアルカリ現像性不飽和樹脂溶液48gと、合成例1で調製した不飽和ジオール化合物溶液12.0gと、DPHA(日本化薬株式会社製)12.8gとを加え、撹拌して均一溶液を得た。この樹脂溶液の固形分換算酸価は60.7mgKOH/gであった。
【0082】
この樹脂溶液を用いて実施例8と同様にして感光性ブラックインキを調製し、実施例8と同様に、遮光率、感度、現像特性、及び基板との密着性を調べた。結果を表2に示す。
【0083】
比較例4〜6
実施例4のアルカリ現像性不飽和樹脂溶液に代えて比較例1〜3のアルカリ現像性不飽和樹脂溶液を用いた以外は、上記実施例8と同様にして感光性ブラックインキを調製した。
得られた感光性ブラックインキについて、実施例8と同様に、固形分換算の酸価、遮光率、感度、現像特性及び基板との密着性を調べた。結果を表2に示す。
【0084】
【表2】
【0085】
表2の結果から明らかなように、実施例8〜15の感光性ブラックインキの場合には、感度が高く、得られたブラック遮光膜は1μm厚みで遮光率3.5を呈し、現像マージンも30〜70秒と十分に広いことが判明した。また、200mJ/cm2 の露光量でも十分にブラックマトリックスパターンが得られた。
【0086】
これに対して、比較例4〜6の感光性ブラックインキの場合には、何れも溶解部分に現像残査が残り易く、10〜15秒程度でパターン荒れが生じ、また、各実施例8〜14に比較して感光感度が低く、遮光率3.5以上でブラックマトリックスパターンを得ることが困難であった。
【0087】
これらの結果から、本発明の実施例に係る感光性ブラックインキによれば、高い遮光率であって良好なネガ型パターンを形成でき、液晶ティスプレイ向けカラーフィルターのブラックマトリックスとして好適であることが判明した。
【0088】
実施例16
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート78.6gとシクロヘキサノン27.2gの混合溶媒に、イルガキュア907(チバガイギー社製)1.28gと、EAB−F(保土ヶ谷化学社製)0.42gと、TAZ−110(ミドリ化学株式会社製)1.28gと、実施例4のアルカリ現像性不飽和樹脂溶液60gと、DPHA(日本化薬株式会社製)12.8gと、3,3’,5,5’−テトラメチルビフェニルジグリシジルエーテル(油化シェル製、YX4000H)6.4gとを加え、撹拌して均一溶液を得た。この樹脂溶液の固形分換算酸価は54.2mgKOH/gであった。
【0089】
得られた樹脂溶液と予め有機溶剤に分散させた顔料分散体(顔料濃度20重量%)とを混合し、分散処理を行って赤、緑及び青のカラーフィルター用インクを作製した。使用した顔料分散体は何れも山陽色素製で、それぞれSFカラーレッド(C.I.ピグメントレッド177/C.I.ピグメントイェロー83=8/2)、SFカラーグリーン(C.I.ピグメントグリーン36/C.I.ピグメントイェロー83=7/3)、及びSFカラーブルー(C.I.ピグメントブルー15:6/C.I.ピグメントバイオレット23=8/2)である。各色の組成の重量比を表3に示す。
【0090】
上で得られたカラーインキを5インチ角ガラス基板上にスピンコートし、オーブン中80℃で5分乾燥し、ネガマスクを当てて200mJ/cm2 (365nm光線基準)の露光を行った。
更に、塗膜を0.4重量%Na2 CO3 水溶液中25℃でパターンが観察されるまで現像を行い、次いで純水でリンスを行って残存インキを除去した。得られた着色ネガパターンを更に230℃で30分間ポストベークを行った。
【0091】
このようにして得られたカラーインキに関して、固形分換算の酸価、感度、及び、現像特性(微細加工性と表面荒れ)を調べた。なお、このカラーインキの現像特性については、100mJ/cm2 で露光した後、0.4重量%Na2 CO3 水溶液中25℃で現像した以外は、上記感光性ブラックインキの場合と同様にして行った。結果を表3に示す。
【0092】
比較例7及び8
比較例1及び3のアルカリ現像性不飽和樹脂溶液を用いた以外は、上記実施例16と同様に、カラーインキを作成してその評価を行った。結果を表3に示す。
【0093】
【表3】
【0094】
実施例17
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート52.7gに、イルガキュア907(チバガイギー社製)1.28gと、EAB−F(保土ヶ谷化学社製)0.21gと、実施例4のアルカリ現像性不飽和樹脂溶液60gと、DPHA(日本化薬株式会社製)12.8gと、YX4000H(油化シェル製)6.4gとを加え、撹拌して均一溶液とし、樹脂溶液(ネガ型パターン形成材料)を得た。この樹脂溶液の固形分換算酸価は55.7mgKOH/gであった。
【0095】
更に、このネガ型パターン形成材料をシリコンウェハー上にスピンコートで塗布し、80℃で5分間乾燥した後、i線(365nm)基準で200mJ/cm2 の露光を行い、次いで0.7重量%ジエタノールアミン水溶液中25℃で現像を行い、更に200℃で1時間ポストベークを行った。
【0096】
このポストベーク後の膜厚10μmにおけるネガマスクで10μmライン・スペースサイズに対応したパターンを観察した結果、良好な10μmライン・スペースが作成されている。また、塗膜の絶縁抵抗は1015Ωであり、絶縁破壊電圧は220Vであった。更に、熱重量分析の結果、重量減少開始温度が320℃で十分な耐熱性を有している。
以上のことから、このネガ型パターン形成材料はカラーフィルター用保護膜並びに絶縁膜、特にMCM用途の微細なパターン形成が必要な絶縁膜の用途に有用であることが判明した。
【0097】
実施例18
実施例17で調製したネガ型パターン形成材料に、球状シリカ粉末(平均粒径0.2μm、三菱化学製)20gとプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート80gとを添加して分散させ、樹脂溶液を得た。
【0098】
この樹脂溶液を用い、上記実施例17と同様にしてシリコンウェハー上に塗布してポストベークし、このポストベーク後の膜厚10μmにおける10μmライン・スペースサイズに対応したパターンを作成して観察した。
結果は良好な10μmライン・スペースが作成されており、また、塗膜の絶縁抵抗は1015Ωであって、絶縁破壊電圧は230Vであった。更に、熱重量分析の結果、重量減少開始温度が320℃で十分な耐熱性を有している。
以上のことから、このネガ型パターン形成材料はカラーフィルター用の絶縁膜、特にMCM用途の微細なパターン形成が必要な絶縁膜の用途に有用であることが判明した。
【0099】
比較例9
実施例4で調製したアルカリ現像性不飽和樹脂溶液の代わりに比較例3で調製した樹脂溶液を用いた以外は実施例18と同様にしてネガ型パターン形成材料を調製した。
更に実施例17と同様にしてシリコンウェハー上にネガ型パターン形成材料をスピンコートし、i線(365nm)基準で200mJ/cm2 の露光後、0.7%ジエタノールアミン水溶液中25℃にて現像を行ったが、膜厚10μmにおける10μmライン・スペースサイズに対応したパターンが流れてしまい、形成できなかった。
【0100】
実施例19
300ml四つ口フラスコ中にビスフェノールAジヒドロキシプロピルアクリレート樹脂(アルドリッチ製)35.3gと、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物16.1gと、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート43.7gとを仕込み、115〜120℃の加熱下に攪拌して2時間反応させ、透明な樹脂溶液を得た。
【0101】
次いで、得られた樹脂溶液に3.2gのビフェニルテトラカルボン酸二無水物を加えて同じ温度で攪拌下に3時間反応させ、粘調透明な樹脂溶液を得た。
更に、得られた樹脂溶液にビスフェノールAジヒドロキシプロピルアクリレート樹脂8.6gとプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート8.6gとを加え、同じ温度で攪拌下に2時間反応させ、淡黄色の粘調透明なアルカリ現像性不飽和樹脂溶液を得た。
得られた樹脂溶液の酸価は樹脂固形分換算にして120mgKOH/gであった。また、目的とするカルボキシル基含有交互共重合体の収率は85%(GPC面積%)で、その重量平均分子量は5700であった。
【0102】
このようにして得られたアルカリ現像性不飽和樹脂溶液60.0gを用いた以外は、上記実施例8と同様にしてネガ型パターン形成材料を調製した。
このネガ型パターン形成材料の樹脂固形分酸価は77.2mgKOH/gであった。また、ジオール化合物1分子と酸二無水物1分子の付加物の副生は6.2%であった。
更に、実施例8と同様にして感光性ブラックインキを調製し、実施例8と同様に、遮光率、感度、現像特性及び基板との密着性を調べた。結果を表4に示す。
【0103】
比較例9
ビスフェノールAジヒドロキシプロピルアクリレート樹脂35.3gと、テトラヒドロフタル酸無水物5.6gと、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物51.7gと、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート40.5gとを115〜120℃で加熱下に攪拌して4時間反応させ、淡黄色粘調なアルカリ現像性不飽和樹脂溶液を得た。この樹脂溶液の酸価は固形分換算で123mgKOH/gであった。
【0104】
次に、この樹脂溶液60.0gを用い、実施例8と同様にしてネガ型パターン形成材料を調製した。この材料の樹脂固形分酸価は79.2mgKOH/gであった。
更に、実施例8と同様にして感光性ブラックインキを調製し、実施例8と同様に、遮光率、感度、現像特性及び基板との密着性を調べた。結果を表4に示す。
【0105】
【表4】
【0106】
実施例19のネガ型パターン形成材料は、その感度が高く、これを用いて得られたブラック遮光膜は1μm厚みで遮光率3.5を呈し、現像マージンも30〜70秒と十分に広いことが判明した。更に、十分な遮光率で持ちながら良好なネガ型パターンを形成でき、液晶ティスプレイ向けカラーフィルターのブラックマトリックスとして好適であることが判明した。
これに対して、比較例9のネガ型パターン形成材料は、実施例19の場合と比較して、感度及び現像マージンが何れも低下しており、良好なブラックマトリックスを得ることが困難であった。
【0107】
【発明の効果】
本発明のアルカリ現像性不飽和樹脂組成物は、現像プロセスにおける現像マージンの広い高感度のネガ型パターン形成材料を製造する上で好適な材料であり、これを用いて、特に高濃度の顔料や充填剤を添加しても微細パターンの形成性に優れており、高精彩カラーフィルター用材料や、高密度集積回路用の絶縁膜や封止材等の用途に好適な高感度ネガ型パターン形成材料を製造することができる。
また、本発明の高感度ネガ型パターン形成材料を用いて得られる塗膜は、耐熱性、耐薬品性、耐クラック性、透明性、密着性、絶縁性、硬度、更には平滑性に優れており、これを用いて、特に高色純度フィルターや高遮光ブラックマトリックスにより高精彩なカラーフィルターを提供したり、あるいは、プリント配線板用又はMCM用に優れた絶縁膜や封止材等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1はジオール化合物と酸二無水物とを反応させた時に得られる生成物の重合度nに対する酸価(mgKOH/g)を示すグラフ図である。
Claims (5)
- ジグリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸との付加化合物からなる1分子中に1個以上の重合性不飽和基を持つジオール化合物と、酸二無水物とを、ジオール化合物の水酸基100モル部に対して酸無水物基75モル部以上100モル部未満に相当する酸二無水物を加熱下に反応させた後、更に上記ジオール化合物を加えて加熱下に反応させて得られたカルボキシル基含有交互共重合体を必須の酸性成分として含有し、このカルボキシル基含有交互共重合体の酸価が70〜170mgKOH/gであって、未反応酸二無水物及び/又は上記ジオール化合物1分子と酸二無水物1分子との付加物からなる未重合酸性成分の含有割合が全酸性成分中の20重量%以下であることを特徴とするアルカリ現像性不飽和樹脂組成物。
- 請求項1記載のアルカリ現像性不飽和樹脂組成物を必須成分とする酸価が10〜100mgKOH/gである高感度ネガ型パターン形成材料。
- 請求項1に記載のアルカリ現像性不飽和樹脂組成物を製造するに際し、ジオール化合物の水酸基100モル部に対して酸無水物基75モル部以上100モル部未満に相当する酸二無水物を加熱下に反応させた後、更にジオール化合物を加えて加熱下に反応させることを特徴とするアルカリ現像性不飽和樹脂組成物の製造方法。
- カラーフィルター用のネガ型パターン形成材料である請求項2に記載の高感度ネガ型パターン形成材料。
- 回路絶縁材料用のネガ型パターン形成材料である請求項2に記載の高感度ネガ型パターン形成材料。
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