JP3811233B2 - スルーホール付きプリント配線板の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、紫外線硬化型の孔埋めインク及び液状エッチングレジストインクを用いたスルーホール付きプリント配線板の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
プリント配線板の導体パターンの微細かつ高密度化の進展に伴い、スルーホール付きプリント配線板の製造方法としては、従来のスクリーン印刷型エッチングレジストと孔埋めインクを用いるいわゆる「穴埋め法」にかわって、例えば、特開昭58−100493号公報あるいは特開昭61−139089号公報等に開示されるように、孔埋めインクと現像可能な液状エッチングレジストインクを用いる製造方法(以下「穴埋め−液状エッチングレジスト法」という。)が注目されている。この「穴埋め−液状エッチングレジスト法」に用いられる孔埋めインクは硬化に要する時間が短く、硬化時の体積収縮が小さい点から、紫外線硬化型のものが特に好適に用いられる。
【0003】
通常、紫外線硬化型の孔埋めインクには、紫外線硬化性成分としてエチレン性不飽和単量体が含まれているが、これのみでは孔埋めインク硬化物のアルカリ溶液による除去性を充分付与することができない。したがって、従来からインク中に高酸価のロジン類等のアルカリ易溶性の樹脂を配合することで、アルカリ溶液による除去性を向上させるという方法が採られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このようなアルカリ易溶性の樹脂は本来紫外線硬化性を有しないので、孔埋めインクの硬化をむしろ阻害する。また、アルカリ易溶性の樹脂はエチレン性不飽和単量体との相溶性が悪いため、スルーホールに充填され、紫外線により硬化される際に不均一となる。このためにスルーホールに充填されたインクを紫外線により硬化する際に、紫外線照射機のランプから生ずる熱線によりインク成分の部分的気化等が起こり、孔埋めインク硬化物の膨れ、破裂を生じたり、孔埋めインク硬化物が多孔質の発泡体となったりする等の問題がある。
【0005】
また、従来の孔埋めインクにおいては、孔埋めインク硬化物のアルカリ溶液による溶解性向上を主たる目的としてロジン類が配合されているが、これらは一般に色調が高いため紫外線透過性が低いので、孔埋めインクが充填されたスルーホール深部では露光量不足となり、深部硬化不良から研磨工程で孔埋めインク硬化物の表面の剥がれや孔埋めインク硬化物の内部の未硬化樹脂の飛び出し等の問題が起こりやすかった。
【0006】
また、このように紫外線透過性が低いので、紫外線透過性を低下させる性質のある顔料等の不活性固体粉末は少量しか配合することができない。この不活性固体粉末は孔埋めインク硬化物の研磨性、アルカリ溶液による剥離性を向上させる性質を有するので充分な量配合することが望ましいものである。
これらの問題のため、現状では導体パターンの微細化、高密度化が可能であるという「穴埋め―液状エッチングレジスト法」の特長を充分発揮させることができていない。
【0007】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、孔埋めインク硬化物の膨れや破裂を生じさせないようにすることができると共に孔埋めインク硬化物が多孔質の発泡体とならないようにすることができ、また研磨工程での孔埋めインク硬化物の表面の剥がれや孔埋めインク硬化物の内部の未硬化樹脂の飛び出しを防止することができ、さらに孔埋めインク硬化物の研磨性やアルカリ溶液による剥離性を向上させることができるスルーホール付きプリント配線板の製造方法を提供することを目的とするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1に記載のスルーホール付きプリント配線板の製造方法は、酸価が150以上でハーゼン色調が300以下の無色ロジン誘導体と分子中に1個のみのエポキシ基を有するエチレン性不飽和単量体とを反応させて得られる反応生成物にさらに多塩基酸無水物を反応させて得られる反応生成物(A−2)と、光重合触媒(B)と、不活性固体粉末(C)とを含有させて紫外線硬化型の孔埋めインク4を調製し、この孔埋めインク4をプリント配線板製造用パネル10のスルーホール2に充填して硬化させるスルーホール充填工程と、スルーホール充填工程でプリント配線板製造用パネル10の表面に付着した余分の孔埋めインク4及びその硬化物4hを研磨により除去する研磨工程と、研磨工程の後のプリント配線板製造用パネル10の上に現像可能な液状エッチングレジストインク6を塗布し、次に露光、現像してエッチングレジスト層6hを形成するレジスト形成工程と、レジスト形成工程の後にエッチングによりプリント配線板製造用パネル10の上に導体パターンを形成するエッチング工程と、エッチング工程の後にプリント配線板製造用パネル10の表面のエッチングレジスト層6とスルーホール2内の孔埋めインク硬化物4hを除去する剥離工程とから成ることを特徴とするものであり、無色ロジン誘導体にエチレン性不飽和基が導入され、且つ多塩基酸無水物を反応させて酸価が調整された紫外線透過性の良好な反応生成物(A−2)を用いることにより、均一な硬化反応を可能とし、スルーホール2の深部における硬化性を良好なものとしかつ不活性固体粉末(C)を充分配合して得られる紫外線硬化型の孔埋めインク4を用いることで、「穴埋め―液状エッチングレジスト法」が本来有する導体パターンの微細化、高密度化が可能であるという特長を充分発揮させるものである。
【0011】
また本発明の請求項2に記載のスルーホール付きプリント配線板の製造方法は、請求項1の構成に加えて、酸価が150以上でハーゼン色調が300以下の無色ロジン誘導体と分子中に1個のみのエポキシ基を有するエチレン性不飽和単量体とを反応させて得られる反応生成物にさらに多塩基酸無水物を反応させて得られる反応生成物を1〜79.99重量%と、光重合触媒を0.01〜20重量%と、不活性固体粉末を20〜90重量%とを含有させて紫外線硬化型の孔埋めインクを調製することを特徴とするものである。
【0012】
また本発明の請求項3に記載のスルーホール付きプリント配線板の製造方法は、請求項1又は2の構成に加えて、上記無色ロジン誘導体として、精製ロジンを水素化反応させて得られる酸価160〜185の無色ロジン誘導体と、α,β−不飽和モノカルボン酸及び/又はα,β−不飽和ジカルボン酸と精製ロジンとの付加反応物を水素化反応させて得られる酸価150〜400の無色ロジン誘導体の少なくとも一方を用いることを特徴とするものである。
【0013】
また本発明の請求項4に記載のスルーホール付きプリント配線板の製造方法は、請求項1乃至3のいずれかの構成に加えて、上記スルーホール2がランドレススルーホールであることを特徴とするものである。
【0014】
【発明の実施の形態】
参考例のスルーホール付きプリント配線板製造用の紫外線硬化型の孔埋めインクに用いられる反応生成物(A−1)は、無色ロジン誘導体と分子中に1個のみのエポキシ基を有するエチレン性不飽和単量体とを反応させて得られるものである。
【0015】
反応生成物(A−1)の原料である無色ロジン誘導体としては、アビエチン酸、パラストリン酸、ネオアビエチン酸、ピマール酸、イソピマール酸、デヒドロアビエチン酸等の樹脂酸を主成分とするガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジン、あるいは精製ロジンなどの一般的なロジンを化学的処理して得られるもの、例えば水添ロジン、不均化ロジン、精製不均化ロジン、不均化ロジンもしくは精製不均化ロジンを脱水素化触媒を用いて脱水素化反応させて得られるもの、重合ロジン、アクリル酸付加ロジン、フマル酸付加ロジン、マレイン酸付加ロジン、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジン変性フェノール樹脂等の内でハーゼン色調が300以下のものをいう。一般にロジン及びロジン誘導体はガードナー色調7〜10程度であり、精製ロジンあるいは水添ロジン等の淡色の場合でもガードナー色調6程度であるが、本発明の無色ロジン誘導体としては、その色がこれらよりも薄いもので、ハーゼン色調が300以下(ガードナー色調1はハーゼン色調400に相当する。)のものでなければならない。
【0016】
そしてこのようにハーゼン色調が300以下の無色ロジン誘導体を用いることによって、孔埋めインクを紫外線の透過性が良好なものとすることができ、紫外線による硬化の際にスルーホール深部における孔埋めインクの硬化性が良好となり、研磨工程で孔埋めインク硬化物の表面の剥がれや孔埋めインク硬化物の内部の未硬化樹脂の飛び出し等の問題が生じないようにすることができる。また孔埋めインク硬化物の耐エッチング液性が特に良好となるものである。
【0017】
また本参考例に用いられる無色ロジン誘導体は、その酸価が150以上であることが必要である。酸価が150未満では本発明に用いる孔埋めインクの硬化物のアルカリ溶液による除去性が低下する。また無色ロジン誘導体はその酸価が150以上であれば使用可能であるが、入手可能であるという点で500以下であることが好ましい。また酸価が500を超えると孔埋めインク硬化物のエッチング液に対する耐酸性が低下し、エッチング時にスルーホール部分の金属導体層が侵食されてしまい、製造されるべきスルーホール付きプリント配線板の性能低下を生じ易い傾向になり、この点を考慮しても無色ロジン誘導体の酸価は500以下であることが好ましい。特に好ましい無色ロジン誘導体の酸価の範囲は150〜400である。
【0018】
上記無色ロジン誘導体の例としては、精製ロジンを水素化反応させて得られる酸価160〜185及びハーゼン色調300以下の無色ロジン誘導体(1)を挙げることができる。ここで精製ロジンとは、アビエチン酸、パラストリン酸、ネオアビエチン酸、ピマール酸、イソピマール酸、デヒドロアビエチン酸等の樹脂酸を主成分とするガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジン等の未精製ロジンあるいは未精製不均化ロジンから不ケン化物等を除去したものをいう。この不ケン化物の除去による精製方法は特に限定されるものではなく、例えば蒸留、再結晶、抽出等の公知の方法を用いることができるが、これらの中でも蒸留により主留分を得る方法が、優れた無色ロジン誘導体を生成する点で好ましい。また精製不均化ロジンの場合、精製の後さらに、脱水素化触媒を用いて脱水素したものであってもよい。また水素化反応は、公知の条件で、例えばパラジウムカーボン、ロジウムカーボン等の公知の水素化触媒により常圧又は加圧下で加熱することによりおこなわれるが、特にこの方法に限定されるものではない。尚、水素化反応の後さらにトリフェニルホスファイト等の有機リン系化合物を加え、さらに必要に応じて加熱するのが最適である。
【0019】
そしてこの精製ロジンを水素化反応させて得られる酸価160〜185及びハーゼン色調300以下の無色ロジン誘導体(1)としては、例えば特開平3−277675号公報に開示されるものを用いることができ、荒川化学工業(株)製の超淡色ロジン「KR−610」(商品名 色調(ハーゼン60)、酸価170、軟化点85℃)等がこれに該当する。
【0020】
また無色ロジン誘導体としては上記の他に例えば、α,β−不飽和モノカルボン酸及び/又はα,β−不飽和ジカルボン酸と精製ロジンとの付加反応物を水素化反応させて得られる酸価150〜400及びハーゼン色調300以下の無色ロジン誘導体(2)を例示することができる。精製ロジンとしては上記無色ロジン誘導体(1)の精製ロジンと同様のものを用いることができる。α,β−不飽和モノカルボン酸としては、例えばアクリル酸、メタアクリル酸、クロトン酸等が挙げられる。またα,β−不飽和ジカルボン酸としては、例えばマレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸等が挙げられる。
【0021】
上記α,β−不飽和モノカルボン酸及び/又はα,β−不飽和ジカルボン酸と精製ロジンとの付加反応は、通常、ディールスアルダー反応により、例えば180〜240℃で1〜9時間、好ましくは不活性ガス気流下でおこなわれる。また、水素化反応は、公知の条件で、例えばパラジウムカーボン、ロジウムカーボン等の公知の水素化触媒により常圧又は加圧下で加熱することによりおこなわれる。尚、付加反応及び水素化反応は上記の方法に限定されるものではない。
【0022】
そしてα,β−不飽和モノカルボン酸及び/又はα,β−不飽和ジカルボン酸と精製ロジンとの付加反応物を水素化反応させて得られる酸価150〜400及びハーゼン色調300以下の無色ロジン誘導体(2)としては、例えばα,β−不飽和モノカルボン酸としてアクリル酸を用いた特開平5−86334号公報の実施例1に開示されるものを用いることができ、荒川化学工業(株)製の超淡色ロジン「KE−604」(商品名 色調(ハーゼン50)、酸価245、軟化点132℃)等がこれに該当する。
【0023】
反応生成物(A−1)の原料であるエチレン性不飽和単量体としては、分子中に1個のみのエポキシ基を有するものであって、これは反応生成物(A−1)に紫外線による硬化性を付与することを目的として用いられる。
分子中に1個のみのエポキシ基を有するエチレン性不飽和単量体としては、例えばグリシジル(メタ)アクリレ−ト、β−メチルグリシジル(メタ)アクリレート及び(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチル(メタ)アクリレ−ト等の(メタ)アクリル酸のエポキシシクロヘキシル誘導体類並びに(メタ)アクリレ−トの脂環エポキシ誘導体類及びエポキシ化ステアリルアクリレートなどが挙げられ、これらは単独で又は併せて用いることができる。
【0024】
またこれらの中でも、反応性の面からメタクリル酸エステル系のものよりもアクリル酸エステル系のものが良く、特にロジン類との付加反応が容易でありかつ工業的に入手容易な(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチル(メタ)アクリレ−ト等の(メタ)アクリル酸のエポキシシクロヘキシル誘導体類等が最適である。
【0025】
反応生成物(A−1)は、上記無色ロジン誘導体と分子中に1個のみのエポキシ基を有するエチレン性不飽和単量体の反応は公知の方法を用いておこなうことができる。例えば、無色ロジン誘導体と(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチル(メタ)アクリレ−トの反応を例にとると、これらに対し熱重合禁止剤としてハイドロキノンもしくはハイドロキノンモノメチルエーテル等及び触媒としてベンジルジメチルアミン、トリエチルアミン等の第3級アミン類、トリメチルベンジルアンモニウムクロライド、メチルトリエチルアンモニウムクロライド等の第4級アンモニウム塩類もしくはトリフェニルスチビン等を加え撹拌混合し、常法により、好ましくは60〜150℃、特に好ましくは80〜120℃の反応温度で反応させる。
【0026】
この場合、反応に供する成分を均一に混合させる等のために、上記各成分に反応溶媒として本反応に対し不活性である酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロヘキサン等の低沸点溶剤を加えて反応をおこない、反応終了後これら溶剤を留去しても良い。また、本参考例に用いる紫外線硬化型の孔埋めインクに任意成分として後述するエチレン性不飽和単量体(D)を配合する場合であって、当該エチレン性不飽和単量体(D)が本反応に対し不活性なもの、例えばメチルカルビトール(メタ)アクリレート、ブチルカルビトール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド等あるいはこれらの混合物である場合には、これを本反応における反応溶媒として用い、得られた反応生成物溶液中のエチレン性不飽和単量体(D)を留去することなく、そのままインクの調製に用いることもできる。
【0027】
上記反応生成物(A−1)の合成反応時においては、分子中に1個のみのエポキシ基を有するエチレン性不飽和単量体は上記酸価を有する無色ロジン誘導体中のカルボキシル基と反応する。この場合、分子中に1個のみのエポキシ基を有するエチレン性不飽和単量体の使用量は、無色ロジン誘導体のカルボキシル基の1当量あたり0.05モル以上であってかつ反応後の反応生成物(A−1)の残存酸価を70以上とすることができる量でなければならない。
【0028】
分子中に1個のみのエポキシ基を有するエチレン性不飽和単量体の使用量が、0.05モルに満たない場合には、紫外線による反応性を有する不飽和結合の反応生成物(A−1)中への導入量が不足し、孔埋めインク硬化物の膨れ、破裂及び硬化物の発泡体化を効果的に防止できない。また残存酸価が70に満たない場合、反応生成物(A−1)のアルカリ溶液に対する溶解性が不足し、本参考例に用いる孔埋めインク及び孔埋めインク硬化物のアルカリ溶液による除去性が不十分となる。特に、このアルカリ溶液による除去性の点から、分子中に1個のみのエポキシ基を有するエチレン性不飽和単量体の使用量は、反応生成物(A−1)の残存酸価が100以上になるような量であることが好ましい。
【0029】
尚、上記(A−1)成分の製造方法における各種条件及び工程等は例示的なものでありその製造方法を限定するものではない。
反応生成物(A−1)の配合量は孔埋めインク全体量中で1〜79.99重量%であり、これが1重量%未満ではアルカリ溶液による孔埋めインクの除去性が低下し、また79.99重量%を超えると粘度上昇のためスルーホールへの孔埋めインクの充填が困難になる。この点から反応生成物(A−1)の配合量の特に好ましい範囲は5〜50重量%である。
【0030】
本参考例のスルーホール付きプリント配線板製造用の紫外線硬化型の孔埋めインクに用いられる光重合触媒(B)としては、例えば可視、近紫外又は紫外光線照射後の光化学反応によってラジカルあるいはルイス酸を発生する通常の化合物を使用することができるが、作業性等を考慮すると紫外光領域に分光感度の高いものが好ましい。
【0031】
ラジカル重合反応を誘起する化合物として、ベンゾフェノン類、ビシナルケトン類、例えばジアセチル、ベンジル、α−ピリジル及びアシロイン類、例えばピバロイン、α−ピリドイン及びベンゾイン類、例えばベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、及びアセトフェノン類、例えば4−フェノキシジクロロアセトフェノン、4−t−ブチル−ジクロロアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、及びチオキサントン系、例えば2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2−クロルチオキサントン、2−メチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、2,4−ジプロピルチオキサントン等のチオキサントン誘導体、及びアントラキノン類、例えばエチルアントラキノン、ベンズアントラキノン、ジアミノアントラキノン、及びカンファーキノン、4,4′−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、ジベンゾスベロン、4,4′−ジエチルイソフタロフェノン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパン−1−オン、アシルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシドを挙げることができ、上記化合物は単独或は2種以上の混合物として用いることができる。尚、これらの中でも、特にベンジルジメチルケタール、ベンゾフェノン類、チオキサントン及びその誘導体、アントラキノン類が、紫外光領域における大きな硬化深度を確保する点で好ましい。
【0032】
また、カチオン重合反応を誘起させる光重合触媒としては、アリールジアゾニウム、ジアリールハロニウム、トリフェニルホスホニウム、ジアルキル−4−ヒドロキシスルホニウム、ジアルキル−4−ヒドロキシジフェニルスルホニウム、アレン−鉄錯体等のPF6 - 、AsF6 - 、BF4 - 、SbF6 - 塩等を挙げることができる。
【0033】
また、それ自体は紫外線照射により活性化はしないが、光重合触媒と併用することで光重合反応を促進するアミン系光重合助触媒等も併せて用いることができる。そのような光重合助触媒として、主に脂肪族、芳香族アミンが使用され、例えば、トリエチレンテトラミン、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、n−ブチルアミン、N−メチルジエタノールアミン、ジエチルアミノエチルメタアクリレート、ミヒラーケトン、4、4′−ジエチルアミノフェノン、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸(n−ブトキシ)エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル等を挙げることができる。これらの中でも、特にミヒラーケトン、4、4′−ジエチルアミノフェノン、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸(n−ブトキシ)エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル等の芳香族アミンが、紫外光領域における大きな硬化深度を確保する点で好ましい。
【0034】
光重合触媒(B)の配合量は孔埋めインク全体量中で0.01〜20重量%であり、これが0.01%未満では露光時における孔埋めインクの表面硬化性が著しく低下し、また20重量%を超えると耐エッチング性が低下する。
本参考例のスルーホール付きプリント配線板製造用の紫外線硬化型の孔埋めインクに用いられる不活性固体粉末(C)は、孔埋めインクがスルーホール内に充填される際の充填性及び充填状態を向上させるとともに、孔埋めインク硬化物の研磨性、アルカリ溶液による剥離性を向上させる。この不活性固体粉末(C)としては、例えば体質顔料や着色顔料としてタルク、シリカ、水酸化アルミニウム、酸化チタン、硫酸バリウム、カオリン、炭酸カルシウム、フタロシアニン等、また有機重合体微粒子としてポリエチレン、ナイロン、ポリエステル等、さらに揺変剤としてアエロジル等が挙げられる。
【0035】
本参考例の紫外線硬化型の孔埋めインクには上述のような反応生成物(A−1)を用いるので、不活性固体粉末(C)を孔埋めインク全体量中で20重量%以上配合した場合であっても、孔埋めインクが充填されたスルーホールの深部へ容易に紫外線が到達する。したがって、スルーホール深部での孔埋めインクの硬化性が良好となり、深部硬化不良の際にしばしば起こる研磨工程での硬化物の表面の剥がれや充填硬化物の内部の未硬化樹脂が飛び出したりする等の問題がない。このため、孔埋めインク硬化物の研磨性が特に良好になると共に硬化物のアルカリ溶液による剥離性が向上する不活性固体粉末の本来的な目的を充分達成でき、孔埋めインク硬化物の欠けもなく、また最終の剥離工程において孔埋めインク硬化物がスルーホールからその内壁への残存なしに完全に除去され、部品装着時のトラブル等が防止される。
【0036】
だたし、不活性粉末の配合量が孔埋めインク全体量中で90重量%を超えると粘度上昇のためスルーホールへの孔埋めインクの充填が困難となり、またスルーホール深部への紫外線の透過性不足を生じ易くなる。
また、従来の孔埋めインクにおいては、スルーホールへの充填時における空気の抱き込みによる泡の発生を防止するため多量の消泡剤等の添加剤が配合されている。しかしながら、これら添加剤は露光後の充填物あるいは硬化物の表面にブリードするので、スルーホールに充填された孔埋めインクの硬化物上に液状レジストインク等が塗布された場合、スルーホール周辺部で液状エッチングレジストインクのハジキが起こり、形成されるエッチングレジスト層の膜厚が極端に薄くなる。このため、スルーホールエッジにおいて、エッチング時に保護されるべき配線回路導体の部分の侵食が起り易い。一方、本参考例の孔埋めインクにおいては、特に不活性固体粉末(C)を孔埋めインク全体量中で20重量%以上配合することができるので、消泡剤などの添加剤を配合することなく十分な消泡効果を得られ、液状エッチングレジストインク等のハジキが起こらない。
【0037】
しかも不活性固体粉末(C)を20重量%以上配合した場合、上述の様々な利点から「穴埋め―液状エッチングレジスト法」によりスルーホール付きプリント配線板を製造する本参考例の方法に好適に用いられるのみならず、微細かつ高密度の導体パターンを有するランドレススルーホール付きプリント配線板の製造に特に好適なものとなり、特に不活性固体粉末を30〜90重量%の範囲で配合した場合、「穴埋め―液状エッチングレジスト法」によるランドレススルーホール付きプリント配線板の製造に最適なものとなる。
【0038】
さらに本参考例のスルーホール付きプリント配線板製造用の紫外線硬化型の孔埋めインクには、インクの粘度、硬化速度及び剥離速度の調整等の目的で、上記成分(A−1)で用いられるエチレン性不飽和単量体以外のエチレン性不飽和単量体(D)を加えることができる。このような不飽和化合物として、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、セロソルブ(メタ)アクリレート、メチルセロソルブ(メタ)アクリレート、ブチルセロソルブ(メタ)アクリレート、カルビトール(メタ)アクリレート、メチルカルビトール(メタ)アクリレート、ブチルカルビトール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエニルオキシエチル(メタ)アクリレート、酢酸ビニル、N−ビニルピロリドン、(メタ)アクリルアマイド、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、フェニルグリシジルエーテル(メタ)アクリル酸付加物等の単官能エチレン性不飽和単量体、及びポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、モルフォリン(メタ)アクリレート、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、ポリカプロラクトンジ(メタ)アクリレート等の二官能エチレン性不飽和単量体等が挙げられる。この成分(D)の配合量は孔埋めインク全体量中で50重量%以下であることが好ましく、これを50重量%を越えて用いるとアルカリ溶液による除去性を低下させる傾向が生じる。
【0039】
また本参考例のスルーホール付きプリント配線板製造用の紫外線硬化型の孔埋めインクには、さらに各種添加剤(E)等を加えることもでき、シランカップリング剤等のカップリング剤、密着性付与剤、レベリング剤等の各種添加剤、あるいはハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ピロガロール、ターシャリーブチルカテコール及びフェノチアジン等の重合禁止剤等を例示することができる。
【0040】
また本参考例のスルーホール付きプリント配線板製造用の紫外線硬化型の孔埋めインクは、上記反応生成物(A−1)と光重合触媒(B)と不活性固体粉末(C)、及びエチレン性不飽和単量体(D)と各種添加剤(E)等を、例えば三本ロール、ボールミル、サンドミル又はミキサー等の単独又は組み合わせての使用等の公知の方法により混練して調製することができる。
【0041】
次に上記紫外線硬化型の孔埋めインクを用いた本参考例のスルーホール付きプリント配線板の製造方法について説明する。
本参考例のスルーホール付きプリント配線板の製造方法の「穴埋め−液状エッチングレジスト法」の製造工程は、上述の紫外線硬化型の孔埋めインクをプリント配線板製造用パネルのスルーホールに充填し、硬化させるスルーホール充填工程と、スルーホール充填工程でプリント配線板製造用パネルの表面に付着した余分の孔埋めインク及びその硬化物を研磨により除去する研磨工程と、研磨工程の後にプリント配線板製造用パネルの表面に現像可能な液状エッチングレジストインクを塗布し、必要に応じて予備乾燥し、次に露光、現像してエッチングレジスト層を形成するレジスト形成工程と、レジスト形成工程の後にエッチングによりプリント配線板製造用パネルの表面に導体パターンを形成するエッチング工程と、エッチング工程の後にプリント配線板製造用パネルの表面のエッチングレジストとスルーホール内の孔埋めインク硬化物を除去する剥離工程とからなるものである。
【0042】
図1は本参考例のランドを有するスルーホール付きプリント配線板の製造方法の具体例を示す要部断面図である。図1(a)に示すように、絶縁基板1(絶縁基板とは、例えば紙基材フェノール樹脂、紙基材エポキシ樹脂、紙基材ポリエステル樹脂、ガラス基材エポキシ樹脂、ガラス基材テフロン樹脂、ガラス基材ポリイミド樹脂もしくはコンポジット樹脂などの合成樹脂基板、あるいはアルミニウムもしくは鉄などの金属をエポキシ樹脂などで覆って絶縁処理をした金属系絶縁基板、あるいはアルミナセラッミック、低温焼成セラッミックもしくは窒化アルミニウムセラッミックなどのセラッミック基板からなるもの等である。)の上下両面に銅からなる導体金属層を形成して得た積層板(例えば銅張積層版等)の所望個所にスルーホール用の孔を穿設し、例えば無電解めっきと電解めっきの併用により孔壁を含む両面銅張積層板の全面に銅めっき層3等からなる導電層を形成する。これにより表裏の配線回路導体の電気的接続をするスルーホール2が形成されたプリント配線板製造用パネル10を得る。尚、プリント配線板製造用パネル10としては、まず絶縁基材1の所望個所にスルーホール用の孔を穿設し、その後、例えば無電解めっきと電解めっきの併用により孔壁を含む絶縁基材の全面に金属導電層を形成することにより得たもの等の絶縁基板の両面に金属導体層が形成されたものであっても良い。
【0043】
次に、スルーホール充填工程において、図1(b)に示すように、スルーホール2内に、エッチング液からその内壁を保護するために、上記紫外線硬化型の孔埋めインク4が浸漬充填法、スクリーン印刷充填法、ピン充填法、ロール充填法等により充填され、続いて、このプリント配線板製造用パネル10を高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ等を用い、片面当たり50〜2000mJの光量にて両面を露光することで、孔埋めインク4が硬化して孔埋めインク硬化物4hとなる。この際、片面当たり700μm以上の硬化深度を得ることも可能であり、また、スルーホール2内の孔埋めインク硬化物4hの充填率は90〜100%に保持され得る。また、孔埋めインク硬化物4hの膨れ、破裂或いは孔埋めインク硬化物4hの発泡体化等は発生しない。尚、上記孔埋めインク4は特に限定されることなく公知の露光方法により硬化させることができる。
【0044】
上記スルーホール充填工程の後の研磨工程において、図1(c)に示すように、銅めっき層3表面の孔埋めインク硬化物4hが、例えばベルトサンダー研磨、バフ研磨もしくはスラブ研磨等の機械研磨等により除去される。この場合上記紫外線硬化型の孔埋めインク4の適用により、未硬化の孔埋めインク4及び孔埋めインク硬化物4hは低研磨圧で容易に除去される。また、上述の通り孔埋めインク硬化物4h自体にも膨れ、破裂或いは孔埋めインク硬化物4hの発泡体化等を生じた部分がないことから銅めっき層3及びスルーホールエッジ部2aにおける孔埋めインク硬化物4hの欠けが発生せず、また研磨後においてもスルーホール2内の孔埋めインク硬化物4hの表面は平滑であり、且つ充填率は90〜100%に保持され得る。
【0045】
上記研磨工程の後のレジスト形成工程において、現像可能な液状のエッチングレジストインクを用いて銅めっき層3表面にエッチングレジスト層6hが形成されるが、この場合先ず図1(d)に示すように、研磨後の銅めっき層3の表面にスクリーン印刷法、カーテンコート法、ロールコート法、スピンコート法、ディップコート法又はスプレー法等によりエッチングレジストインクが塗布され、必要に応じて予備乾燥されてエッチングレジストインク塗膜層6が形成される。この場合上記紫外線硬化型の孔埋めインク4の適用により、スルーホール2内の孔埋めインク硬化物4hの平坦化が優れているため、スルーホール2の開口部においてもそれ以外の部分と同様に均一な厚みのエッチングレジストインク塗膜層6となる。また、この場合、エッチングレジストインク塗膜層6中の溶剤によるスルーホール2内の孔埋めインク硬化物4hの溶出も生じにくい。
次に、図1(e)に示すように、配線回路を描いたパターンマスクフィルム7がエッチングレジストインク塗膜層6の上に当てがわれ、紫外線、可視光、近赤外線等の放射線により露光される。尚、上記マスクフィルム7はエッチングレジストインク塗膜層6に対してオフコンタクト状態に配置されても良い。上記エッチングレジストインク塗膜層6の露光後、マスクフィルム7が除去され、続いて現像液にて現像され、図1(f)に示すように、所望のレジストパターンのエッチングレジスト層6hが形成される。そして上記本参考例の紫外線硬化型の孔埋めインクが適用された場合は、スルーホール2内の孔埋めインク硬化物4hの平坦化が優れているため、均一な厚みのエッチングレジスト層6hを形成することが可能である。
【0046】
上記レジスト形成工程の後のエッチング工程において、図1(g)に示すように、塩化第二鉄液、塩化第二銅液等のエッチング液により銅めっき層の露出部分がエッチング除去され、プリント配線板製造用パネル10の上に所望の導体パターンの銅配線回路導体(ランドを含む)8が形成される。
上記エッチング工程の後、最後の剥離工程において、図1(h)に示すように、例えば苛性ソーダ、苛性カリ、メタケイ酸ソーダ等の無機の塩基性物質あるいはアルキルアミン、アルカノールアミン等の有機の塩基性物質の水性液、すなわちアルカリ溶液により、図1(i)に示したエッチングレジスト層6h及び孔埋めインク硬化物4hが溶解除去され、目的とするスルーホール付きプリント配線板が得られる。
【0047】
次にランドレススルーホール付きプリント配線板の製造方法ついて説明する。図2は本参考例のスルーホール付きプリント配線板の製造方法によるランドレススルーホール形成過程のうちエッチングレジスト層6hが形成された時点及び最終的に形成されたランドレススルーホール2の部分の具体例を示す平面図及び要部断面図である。
【0048】
この場合の製造工程は上述の現像可能な液状のエッチングレジストインクを用いて通常のランドを有するスルーホール付きプリント配線板を製造する場合と全く同様である。ただし、図2(a)に示すように、形成されるべきレジストパターンのエッチングレジスト塗膜層6(及びエッチングレジスト層6h)がスルーホールランドに対応する部分を有さないという特徴を有するものである。さらにこの状態をA断面について図2(b)で、またB断面について図2(c)にて示す。
【0049】
この場合従来では、図2(b)に示すスルーホール2のエッジ部でエッチングレジスト層6hと銅めっき層3及び硬化後の孔埋めインク硬化物4hの三者が接触する部分9で、孔埋めインク硬化物4hの平滑性不良等によりエッチングレジスト層6hの密着不良が起き易く、また液状エッチングレジストインクのはじきの問題からエッチングレジスト塗膜層6の厚みが不十分となり、最終的に得られたプリント配線板表面のランドレススルーホール部分のC断面の状態が、図3(c)に示すように、スルーホール2のエッジ部の配線回路導体8がエッチング液により侵食され導通不良を起こしやすい。
【0050】
一方、本参考例の紫外線硬化型の孔埋めインクを用いた場合は、このような問題が無く最終的に形成されたランドレススルーホール2のエッジ部は、図3(a)におけるC断面の状態が図3(b)に示すように配線回路導体8の侵食もなく、導通不良の問題も生じないものである。
このように本参考例では、無色ロジン誘導体にエチレン性不飽和単量体が付加されている反応生成物(A−1)を含有する紫外線硬化型の孔埋めインクを用いているので、孔埋めインクの硬化性が向上するとともにスルーホールに充填され、紫外線により硬化される際に充分均一な状態となり孔埋めインク硬化物の膨れ、破裂或いは硬化物の発泡体化の問題を解消できるものである。
【0051】
尚、上記製造方法における各種条件及び工程等は例示的なものであり、本参考例のスルーホール付きプリント配線板の製造方法を限定するものではない。また上述の紫外線硬化かりでなく、スリーン印刷型のエッチングレジストを用いる従来の「穴埋め法」によるスルーホール付きプリント配線板の製造に好適に用いることができることはいうまでもない。
【0052】
次に発明のスルーホール付きプリント配線板の製造方法について説明する。
本発明のスルーホール付きプリント配線板の製造方法は、上記参考例の紫外線硬化型の孔埋めインクに用いられる反応生成物(A−1)の代わりに、酸価が150以上でハーゼン色調が300以下のロジン誘導体と分子中に1個のみのエポキシ基を有するエチレン性不飽和単量体とを反応させて得られる反応生成物(参考例の反応生成物(A−1)に相当)にさらに多塩基酸無水物を反応させて得られる反応生成物(A−2)を用いて紫外線硬化型の孔埋めインクを調製した点に特徴を有するものである。そして本発明のスルーホール付きプリント配線板の製造方法は、上記参考例の紫外線硬化型の孔埋めインクに用いられる反応生成物(A−1)の代わりに、反応生成物(A−2)を用いた点以外は、参考例のスルーホール付きプリント配線板の製造方法と同様におこなうことができる。
【0053】
反応生成物(A−2)の配合量は孔埋めインク全体量中で1〜79.99重量%であり、これが1重量%未満ではアルカリ溶液による孔埋めインクの除去性が低下し、また79.99重量%を超えると粘度上昇のためスルーホールへの孔埋めインクの充填が困難になる。この点から反応生成物(A−2)の配合量の特に好ましい範囲は5〜50重量%である。
【0054】
反応生成物(A−2)は、上記無色ロジン誘導体(1)(2)の少なくとも一方と、分子中に1個のみのエポキシ基を有する上記エチレン性不飽和単量体(反応生成物(A−1)を製造する際に用いられるものと同様のもの)とを反応させた反応生成物に、多塩基酸無水物を反応させて得られるものである。多塩基酸無水物は、主として反応生成物(A−2)の酸価調整のために用いられる。
【0055】
無色ロジン誘導体と分子中に1個のみのエポキシ基を有するエチレン性不飽和単量体とを反応させた場合、ロジン類由来のカルボキシル基の残存量が減少する。このため、主として無色ロジン誘導体のカルボキシル基とエポキシ基との反応由来のヒドロキシル基に多塩基酸無水物を付加させることでカルボキシル基を導入して反応生成物(A−2)の酸価を調整するのである。
【0056】
そしてこの場合、(A−2)は酸価を大きく保ちつつ、エチレン性不飽和基を十分な量導入されるので、孔埋めインクの均一かつ良好な紫外線硬化性とその硬化物のアルカリ剥離性を併せ持ったものとすることができる。
多塩基酸無水物としては、フタル酸、テトラヒドロフタル酸、3−メチルテトラヒドロフタル酸、4−メチルテトラヒドロフタル酸、3−エチルテトラヒドロフタル酸、4−エチルテトラヒドロフタル酸、3−プロピルテトラヒドロフタル酸、4−プロピルテトラヒドロフタル酸、3−ブチルテトラヒドロフタル酸、4−ブチルテトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、3−メチルヘキサヒドロフタル酸、4−メチルヘキサヒドロフタル酸、3−エチルヘキサヒドロフタル酸、4−エチルヘキサヒドロフタル酸、3−プロピルヘキサヒドロフタル酸、4−プロピルヘキサヒドロフタル酸、3−ブチルヘキサヒドロフタル酸及び4−ブチルヘキサヒドロフタル酸、ナジック酸、メチルナジック酸、コハク酸、ドテシルコハク酸、クロレンディック酸、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメート)、メチルシクロヘキセンテトラカルボン酸、トリメリット酸、ポリアゼライン酸等の無水物を例示することができる。尚、これらの中でも、特にテトラヒドロフタル酸、トリメリット酸、ナジック酸、コハク酸が本発明に用いる孔埋めインク及びその硬化物のアルカリ溶液による除去性を向上させる点で好ましい。
【0057】
反応生成物(A−2)は二段階の反応により製造することができる。その第一段反応は、まず無色ロジン誘導体と分子中に1個のみのエポキシ基を有するエチレン性不飽和単量体を反応させるものである。この反応は(A−1)の製造の場合と同様な方法によりおこなうことができる。この場合、分子中に1個のみのエポキシ基を有するエチレン性不飽和単量体の使用量は、反応生成物(A−1)の場合と同様、無色ロジン誘導体のカルボキシル基の1当量あたり0.05モル以上でなければならない。ただし、この反応後の第2段反応において多塩基酸無水物を付加させることでカルボキシル基が導入されるので、第1段階反応の生成物の酸価は70に満たなくても良い。この点では反応生成物(A−1)の製造の場合と異なる。
【0058】
反応生成物(A−2)の製造の第二段反応は、第一段反応の後、反応系に多塩基酸無水物を加えて第一段反応の生成物と反応させるものである。第二段反応は、公知の方法を用いておこなうことができる。例えば、第一段反応の後の反応系に多塩基酸無水物を加え、撹拌混合し、常法により、好ましくは60〜150℃、特に好ましくは80〜120℃の反応温度で反応させる。この際、新たに熱重合禁止剤、触媒等を追加しても良い。
【0059】
このようにして得られた反応生成物(A−2)の残存酸価は70以上でなければならない。残存酸価が70に満たない場合、反応生成物(A−2)のアルカリ溶液に対する溶解性が不足し、本発明に用いる孔埋めインク及び孔埋めインク硬化物のアルカリ溶液による除去性が不十分となる。特に、このアルカリ溶液による除去性の点からは、分子中に1個のみのエポキシ基を有するエチレン性不飽和単量体の使用量は、反応生成物(A−2)の残存酸価が100以上になるような量であることが好ましい。
【0060】
【実施例】
以下に、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はそれらの実施例に限定されるものではない。尚、以下に使用される部及び%は全て重量基準である。
〔合成例1〕
超淡色ロジン「KE−604」(商品名 荒川化学工業(株)製の無色ロジン誘導体、ハーゼン色調50、酸価245、軟化点132℃)376.0gとフェノキシエチルアクリレート100.0gを攪拌装置付きフラスコに入れ充分溶解した後、グリシジルメタクリレートを71.0g投入し、これにN,N−ジメチルベンジルアミン0.1g及びヒドロキノンモノメチルエーテル0.1gを加え、空気を吹き込みながら95℃にて24時間反応させ、赤外線吸収スペクトルのエポキシ基由来のピークが消失したことを確認した。フェノキシエチルアクリレート溶液として得られた反応生成物溶液を(A−1−1)とした。反応生成物溶液(A−1−1)中の反応生成物の酸価は167であった。尚、酸価測定は(A−1−1)溶液についておこない、換算で反応生成物の酸価を求めた。
【0061】
〔合成例2〕
超淡色ロジン「KR−610」(商品名 荒川化学工業(株)製の無色ロジン誘導体、ハーゼン色調60、酸価170、軟化点85℃)306.0gと酢酸エチル100.0gを攪拌装置付きフラスコに入れ充分溶解した後、CyclomerA200(商品名 ダイセル化学工業(株)製の(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルアクリレ−ト)を39.2g投入し、これにN,N−ジメチルベンジルアミン0.1g及びヒドロキノンモノメチルエーテル0.1gを加え、空気を吹き込みながら95℃にて24時間反応させ、赤外線吸収スペクトルのエポキシ基由来のピークが消失したことを確認した。反応終了後、フェノキシエチルアクリレート100.0gを加え冷却した後減圧下で酢酸エチルを留去した。フェノキシエチルアクリレート溶液として得られた反応生成物溶液を(A−1−2)とした。反応生成物溶液(A−1−2)中の反応生成物の酸価は120であった。尚、酸価測定は(A−1−2)溶液についておこない、換算で反応生成物の酸価を求めた。
【0062】
〔合成例3〕
超淡色ロジン「KE−604」(商品名 荒川化学工業(株)製の無色ロジン誘導体、ハーゼン色調50、酸価245、軟化点132℃)376.0gと酢酸エチル100.0gを攪拌装置付きフラスコに入れ充分溶解した後、CyclomerA200(商品名 ダイセル化学工業(株)製 (3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルアクリレ−ト))を98.0g投入し、N,N−ジメチルベンジルアミン0.1g及びヒドロキノンモノメチルエーテル0.1gを加え、空気を吹き込みながら95℃にて24時間反応させ、赤外線吸収スペクトルのエポキシ基由来のピークが消失したことを確認した。この後、系に無水ナジック酸82.0gを投入し、空気を吹き込みながら95℃にて8時間反応させた。反応終了後、フェノキシエチルアクリレート100.0gを加え冷却し、続いて減圧下で酢酸エチルを留去した。フェノキシエチルアクリレート溶液として得られた反応生成物溶液を(A−2−1)とした。反応生成物溶液(A−2−1)中の反応生成物の酸価は185であった。尚、酸価測定は(A−2−1)溶液についておこない、換算で反応生成物の酸価を求めた。
【0063】
〔合成例4〕
超淡色ロジン「KR−610」(商品名 荒川化学工業(株)製の無色ロジン誘導体、ハーゼン色調60、酸価170、軟化点85℃)306.0gと酢酸エチル100.0gを攪拌装置付きフラスコに入れ充分溶解した後、CyclomerA200(商品名 ダイセル化学工業(株)製の(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルアクリレ−ト)を196.0g投入し、これにN,N−ジメチルベンジルアミン0.1g及びヒドロキノンモノメチルエーテル0.1gを加え、空気を吹き込みながら95℃にて24時間反応させ、赤外線吸収スペクトルのエポキシ基由来のピークが消失したことを確認した。この後、系に無水トリメリット酸192.0gを投入し空気を吹き込みながら95℃にて8時間反応させた。反応終了後、フェノキシエチルアクリレート100.0gを加え冷却し、続いて減圧下で酢酸エチルを留去した。フェノキシエチルアクリレート溶液として得られた反応生成物溶液を(A−2−2)とした。反応生成物溶液(A−2−2)中の反応生成物の酸価は150であった。尚、酸価測定は(A−2−2)溶液についておこない、換算で反応生成物の酸価を求めた。
【0064】
〔合成例5〕
ヘキサヒドロフタル酸無水物154.0g、2−ヒドロキシエチルアクリレート116.0g、N,N−ジメチルベンジルアミン0.1g及びヒドロキノンモノメチルエーテル0.1gを攪拌装置付きフラスコに入れ、空気を吹き込みながら95℃にて赤外線吸収スペクトルの酸無水物由来のピークが消失するまで24時間反応させてモノエステル化合物(F)を得た。
【0065】
〔孔埋めインクの製造〕
表1に示す配合組成に基づいて各成分を配合すると共に各々三本ロールにより混練し、本発明の実施例及び比較例に用いる孔埋めインク(I)乃至(X)を調製した。
【0066】
【表1】
【0067】
(参考例1乃至4、実施例1乃至4及び比較例1、2)
ガラスエポキシ両面銅張積層板「R1705」(商品名 松下電工(株)製板厚1.6mm、銅厚35μm 基板サイズ 330mm×330mm)にドリル直径0.9mmの孔を5000個穿設し、無電解銅及び電解銅めっきにより孔壁を含む両面銅張積層板の全面に30μmの銅めっき層を形成してプリント配線板製造用パネル10を作成した。
【0068】
次に、表1の各孔埋めインク(I)乃至(X)を用いて、図1(a)乃至(c)に示す工程に従って、プリント配線板製造用パネル10を孔埋めインク4中に浸漬すると共にスルーホール2内に孔埋めインク4を充填した後に取り出し、プリント配線板製造用パネル10の両面に付着した孔埋めインク4をウレタンスキージーによりかき落した。
【0069】
続いてこのプリント配線板製造用パネル10を高圧水銀灯を用い、片面当たり1000mJで露光し(尚、比較例2においては、1000mJでは殆ど硬化しないため2000mJで露光した)、両面から孔埋めインク4を硬化させた。その後、プリント配線板製造用パネル10の表面に付着した孔埋めインク4及びその硬化物4hを、(株)丸源鐵工所製のベルトサンダー(研削ベルト=400番)を用いて負荷電流2Aで研磨し、さらに4軸両面研磨機「IOP−600」(商品名 (株)石井表記製)にて、研磨用バフとして「CPホイール VF」(商品名 住友スリーエム(株)製)を用いて負荷電流2Aで研磨することにより除去した。
【0070】
上記研磨工程後のプリント配線板製造用パネル10に、図1(d)乃至(h)に示す工程に従って、希アルカリ溶液で現像可能な液状エッチングレジストインク6「エキレジン PER−800(RB−102)」(商品名 互応化学工業(株)製)を、(株)ファーネス 製の横型両面ロールコーターにより塗布し、遠赤外線乾燥機にて雰囲気温度70℃で3分間乾燥した。
【0071】
次に、これに各スルーホール2に対応するランド形状(ランド直径1.35mm)を有するパターンを描いたマスクフィルム7を当てがい、フォトレジスト露光用両面同時露光機「HMW201GX」(商品名 (株)オーク製作所 製)により光量100mJで露光し、その後、1%炭酸ナトリウム水溶液にて現像してエッチングレジスト層6hを形成した。続いて、50℃の塩化第二銅エッチング液により銅露出部分をエッチング除去し、水洗後、3%の水酸化ナトリウム水溶液のスプレーにより上記孔埋めインク硬化物4h及びエッチングレジスト層6hを除去して、ランドを有するスルーホール付きプリント配線板を作成した。
【0072】
上記のようにして得られた、参考例1乃至4、実施例1乃至4及び比較例1、2のスルーホール付きプリント配線板について、その製造過程における孔埋めインク4の硬化深度及び孔埋めインク硬化物4hの充填率を測定すると共に、研磨工程における研磨性、エッチングレジスト適用時のエッチング適正及び剥離工程における溶解除去時間の各試験項目について試験した。結果を表2に示す。尚、上記硬化深度の測定は、孔埋めインクの上記充填及び硬化処理(片面のみ紫外線照射して)後に未硬化の孔埋めインクを除去すると共に残った硬化部分の厚さをマイクロメータで実測することにより行なった。
【0073】
【表2】
【0074】
表2に示すように、参考例1乃至4、実施例1乃至4は比較例1、2に比べて全ての試験結果について良好であった。一方、比較例1については、露光時の硬化深度が小さく、溶剤の溶出によるスルーホールエッジ部の侵食等の難点があり、また比較例2については孔埋めインクの極端な硬化不足により殆ど全ての試験項目について判定不能となった。
(参考例5乃至8、実施例5乃至8及び比較例3、4)
ガラスエポキシ両面銅張積層板「R1705」(商品名 松下電工(株)製板厚1.6mm、銅厚35μm 基板サイズ 330mm×330mm)にドリル直径0.3mmのバイヤホール用の孔を5000個穿設し、無電解銅及び電解銅めっきにより孔壁を含む両面銅張積層板の全面に30μmの銅めっき層を形成してプリント配線板製造用パネル10を作成した。
【0075】
次に、表1の各孔埋めインク(I)乃至(X)を用いて、図1(a)乃至(c)に示す工程に従って、上記のごとくバイヤスルーホールが形成されてなるプリント配線板製造用パネル10を孔埋めインク4中に浸漬すると共にスルーホール2内に孔埋めインクを充填した後に取り出し、プリント配線板製造用パネル10の両面に付着した孔埋めインク4をウレタンスキージーによりかき落した。
【0076】
続いて、このプリント配線板製造用パネル10を高圧水銀灯を用い、片面当たり1000mJで露光し(比較例4の場合は片面あたり2000mJの露光をおこなった)、両面から孔埋めインク4を硬化させた。その後、プリント配線板製造用パネル10の表面に付着した孔埋めインク4及びその硬化物4hを、(株)丸源鐵工所製のベルトサンダー(研削ベルト=400番)を用いて負荷電流2Aで研磨し、さらに4軸両面研磨機「IOP−600」(商品名 (株)石井表記製)にて、研磨用バフとして「CPホイール VF」(商品名 住友スリーエム(株)製)を用いて負荷電流2Aで研磨することにより除去した。
【0077】
上記研磨工程後のプリント配線板製造用パネルに、図1(d)示す工程に従って、希アルカリ溶液で現像可能な液状エッチングレジストインク6「エキレジンPER−800(RB−102)」(商品名 互応化学工業(株)製)を、(株)ファーネス 製の横型両面ロールコーターにより塗布し、遠赤外線乾燥機にて雰囲気温度70℃で3分間乾燥した。次に、各バイヤホール用スルーホールに対応する部分が図2(a)のような幅80μmのストライプ形状であるパターンを描いたマスクフィルム7を当てがい、フォトレジスト露光用両面同時露光機「HMW201GX」(商品名 (株)オーク製作所 製)により光量100mJで露光し、その後、1%炭酸ナトリウム水溶液にて現像してエッチングレジスト層6hを形成した。続いて、50℃の塩化第二銅エッチング液により銅露出部分をエッチング除去し、水洗後、3%の水酸化ナトリウム水溶液のスプレーにより上記孔埋めインク硬化物4h及びエッチングレジスト層6hを除去してランドレスバイヤスルーホール付きプリント配線板を作成した。
【0078】
上記のようにして得られた、参考例5乃至8、実施例5乃至8及び比較例3、4のランドレスバイヤスルーホール付きプリント配線板について、その製造過程における孔埋めインクの硬化深度及び孔埋めインク硬化物の充填率を測定すると共に、研磨工程における研磨性、エッチングレジスト適用時のエッチング適正及び剥離工程における溶解除去時間の各試験項目について試験した。結果を表3に示す。尚、上記硬化深度の測定は、孔埋めインクの上記充填及び硬化処理(片面のみ紫外線照射して)後に未硬化の孔埋めインクを除去すると共に残った硬化部分の厚さをマイクロメータで実測することによりおこなった。
【0079】
【表3】
【0080】
表3に示すように、参考例5乃至8、実施例5乃至8は比較例3、4に比べて全ての項目の試験で良好であった。一方、比較例3については、1000mJでは硬化不足のため、液状エッチングレジストインク塗布時に溶出し、エッチングで侵食を生じ、また露光量が2000mJの比較例4については、はじきのためスルーホール角部のエッチングレジストの膜厚か極端に薄くなり、エッチングで侵食を生じた。
【0083】
【発明の効果】
本発明の請求項1に記載の発明は、酸価が150以上でハーゼン色調が300以下の無色ロジン誘導体と分子中に1個のみのエポキシ基を有するエチレン性不飽和単量体とを反応させて得られる反応生成物にさらに多塩基酸無水物を反応させて得られる反応生成物と、光重合触媒と、不活性固体粉末とを含有させて紫外線硬化型の孔埋めインクを調製し、この孔埋めインクをプリント配線板製造用パネルのスルーホールに充填して硬化させるスルーホール充填工程と、スルーホール充填工程でプリント配線板製造用パネルの表面に付着した余分の孔埋めインク及びその硬化物を研磨により除去する研磨工程と、研磨工程の後のプリント配線板製造用パネルの表面に現像可能な液状エッチングレジストインクを塗布し、次に露光、現像してエッチングレジスト層を形成するレジスト形成工程と、レジスト形成工程の後にエッチングによりプリント配線板製造用パネルの表面に導体パターンを形成するエッチング工程と、エッチング工程の後にプリント配線板製造用パネルの表面のエッチングレジスト層とスルーホール内の孔埋めインク硬化物を除去する剥離工程とから成るので、孔埋めインク硬化物の膨れや破裂を生じさせないようにすることができると共に孔埋めインク硬化物が多孔質の発泡体とならないようにすることができ、また研磨工程での孔埋めインク硬化物の表面の剥がれや孔埋めインク硬化物の内部の未硬化樹脂の飛び出しを防止することができ、さらに孔埋めインク硬化物の研磨性やアルカリ溶液による剥離性を向上させることができるものである。従ってスルーホールのカバーリングが良好でエッチングによる侵食の問題がなく、またランドレススルーホールと導体パターンとの導通性が良好で断線等の問題がないものである。
【0084】
また本発明の請求項2に記載の発明は、酸価が150以上でハーゼン色調が300以下の無色ロジン誘導体と分子中に1個のみのエポキシ基を有するエチレン性不飽和単量体とを反応させて得られる反応生成物にさらに多塩基酸無水物を反応させて得られる反応生成物を1〜79.99重量%と、光重合触媒を0.01〜20重量%と、不活性固体粉末を20〜90重量%とを含有させて紫外線硬化型の孔埋めインクを調製するので、孔埋めインク硬化物の膨れや破裂を生じさせないようにすることができると共に孔埋めインク硬化物が多孔質の発泡体とならないようにすることができ、また研磨工程での孔埋めインク硬化物の表面の剥がれや孔埋めインク硬化物の内部の未硬化樹脂の飛び出しを防止することができ、さらに孔埋めインク硬化物の研磨性やアルカリ溶液による剥離性を向上させることができるものである。従ってスルーホールのカバーリングが良好でエッチングによる侵食の問題がなく、またランドレススルーホールと導体パターンとの導通性が良好で断線等の問題がないものである。
【0085】
また本発明の請求項3に記載の発明は、上記無色ロジン誘導体として、精製ロジンを水素化反応させて得られる酸価160〜185の無色ロジン誘導体と、α,β−不飽和モノカルボン酸及び/又はα,β−不飽和ジカルボン酸と精製ロジンとの付加反応物を水素化反応させて得られる酸価150〜400の無色ロジン誘導体との少なくとも一方を用いるので、孔埋めインク硬化物の膨れや破裂を生じさせないようにすることができると共に孔埋めインク硬化物が多孔質の発泡体とならないようにすることができ、また研磨工程での孔埋めインク硬化物の表面の剥がれや孔埋めインク硬化物の内部の未硬化樹脂の飛び出しを防止することができ、さらに孔埋めインク硬化物の研磨性やアルカリ溶液による剥離性を向上させることができるものである。従ってスルーホールのカバーリングが良好でエッチングによる侵食の問題がなく、またランドレススルーホールと導体パターンとの導通性が良好で断線等の問題がないものである。
【0086】
また本発明の請求項4に記載の発明は、上記スルーホールがランドレススルーホールであるので、孔埋めインク硬化物の膨れや破裂を生じさせないようにすることができると共に孔埋めインク硬化物が多孔質の発泡体とならないようにすることができ、また研磨工程での孔埋めインク硬化物の表面の剥がれや孔埋めインク硬化物の内部の未硬化樹脂の飛び出しを防止することができ、さらに孔埋めインク硬化物の研磨性やアルカリ溶液による剥離性を向上させることができるものである。従ってスルーホールのカバーリングが良好でエッチングによる侵食の問題がなく、またランドレススルーホールと導体パターンとの導通性が良好で断線等の問題がないものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)乃至(h)は本発明の実施の形態の一例を示す断面図である。
【図2】(a)は本発明の他の実施の形態の一例を平面図、(b)は(a)におけるA−A断面図、(c)は(a)におけるB−B断面図である。
【図3】(a)は本発明で製造されるランドレススルーホールを有するプリント配線板の平面図、(b)は(a)のC−C断面図、(c)は従来例で製造されたプリント配線板の断面図である。
【符号の説明】
2 スルーホール
4 孔埋めインク
4h 孔埋めインク硬化物
6h エッチングレジスト層
10 プリント配線板製造用パネル
Claims (4)
- 酸価が150以上でハーゼン色調が300以下の無色ロジン誘導体と分子中に1個のみのエポキシ基を有するエチレン性不飽和単量体とを反応させて得られる反応生成物にさらに多塩基酸無水物を反応させて得られる反応生成物と、光重合触媒と、不活性固体粉末とを含有させて紫外線硬化型の孔埋めインクを調製し、この孔埋めインクをプリント配線板製造用パネルのスルーホールに充填して硬化させるスルーホール充填工程と、スルーホール充填工程でプリント配線板製造用パネルの表面に付着した余分の孔埋めインク及びその硬化物を研磨により除去する研磨工程と、研磨工程の後のプリント配線板製造用パネルの表面に現像可能な液状エッチングレジストインクを塗布し、次に露光、現像してエッチングレジスト層を形成するレジスト形成工程と、レジスト形成工程の後にエッチングによりプリント配線板製造用パネルの表面に導体パターンを形成するエッチング工程と、エッチング工程の後にプリント配線板製造用パネルの表面のエッチングレジスト層とスルーホール内の孔埋めインク硬化物を除去する剥離工程とから成ることを特徴とするスルーホール付きプリント配線板の製造方法。
- 酸価が150以上でハーゼン色調が300以下の無色ロジン誘導体と分子中に1個のみのエポキシ基を有するエチレン性不飽和単量体とを反応させて得られる反応生成物にさらに多塩基酸無水物を反応させて得られる反応生成物を1〜79.99重量%と、光重合触媒を0.01〜20重量%と、不活性固体粉末を20〜90重量%とを含有させて紫外線硬化型の孔埋めインクを調製することを特徴とする請求項1に記載のスルーホール付きプリント配線板の製造方法。
- 上記無色ロジン誘導体として、精製ロジンを水素化反応させて得られる酸価160〜185の無色ロジン誘導体と、α,β−不飽和モノカルボン酸及び/又はα,β−不飽和ジカルボン酸と精製ロジンとの付加反応物を水素化反応させて得られる酸価150〜400の無色ロジン誘導体との少なくとも一方を用いることを特徴とする請求項1又は2に記載のスルーホール付きプリント配線板の製造方法。
- 上記スルーホールがランドレススルーホールであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のスルーホール付きプリント配線板の製造方法。
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