JP3804722B2 - 電動二輪車のバッテリ冷却構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、バッテリを電源とする駆動モータにより車輪を回転駆動するようにした電動二輪車に関し、特に上記バッテリを走行風により又は冷却用ファンにより冷却するようにしたバッテリ冷却構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、低公害,低騒音を図る観点から、充電可能なバッテリを電源とする駆動モータにより車輪を回転駆動するようにした電動二輪車が注目されている。この種の電動二輪車に搭載されるバッテリは、その用途上大電流を供給することから発熱し易く、電池寿命を確保するに積極的に冷却するようにしている。
【0003】
このようなバッテリの冷却構造として、従来、ステップボードの下側に配設されたバッテリ収納室内に走行風を導入するようにした構造が一般的である(例えば、特開平6−298155号公報参照)。また、上記バッテリを充電する場合、該充電中に冷却用ファンにより強制冷却するようにした構造が提案されている(特開平4−24185号公報参照)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記バッテリ収納室に走行風を導入する場合、該バッテリ収納室の前壁に走行風取入口を設けるのが効率的である。しかしながら、走行風取入口を前壁に形成した場合、前輪が跳ね上げた泥水等が走行風と共に侵入し易く、その結果バッテリの劣化やショートの問題を引き起こす問題が生じる。
【0005】
また上記従来のバッテリを充電中に強制冷却する方法は、充電自体が吸熱反応であるようなバッテリでは有効ではなく、充電効率の観点からは充電中に積極的に冷却するよりもバッテリの充電開始時の温度を規制することが有効である。
【0006】
本発明は、上記従来の状況に鑑みてなされたもので、雨水や泥水の進入を防止しつつ冷却性を確保でき、また充電効率を向上して充電時間を短縮できる電動二輪車のバッテリ冷却構造を提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、操向ハンドルとシートとの間に低床の足載部を設け、該足載部の下側にバッテリ収納室を形成し、該バッテリ収納室内にバッテリを搭載した電動二輪車の上記バッテリを走行風で冷却するようにしたバッテリ冷却構造において、前輪用フェンダを前輪とともに操向軸回りに回動する可動フェンダとし、上記バッテリ収納室内に走行風を導入する走行風導入開口を該バッテリ収納室の前壁の、上記可動フェンダの後下端縁を通る前輪の接線より上側部分に、かつ車両の前方から見て上記可動フェンダの投影面に隠れるように形成したことを特徴としている。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1において、上記走行風導入開口が、上記前壁の上側ほど前方に位置するよう傾斜している傾斜部に形成されていることを特徴としている。
【0011】
【発明の作用効果】
請求項1の発明に係るバッテリ冷却構造によれば、前輪用フェンダを前輪とともに操向軸回りに回動する可動フェンダとし、上記バッテリ収納室内に走行風を導入する走行風導入開口を該バッテリ収納室の前壁の、上記可動フェンダの後下端縁を通る前輪の接線より上側部分に形成したので、前輪によって跳ね上げられて走行風導入開口内に向かう泥水等は可動フェンダによって確実に遮断され、泥水等を含まない走行風をバッテリ収容室内に導入でき、バッテリを確実に冷却しつつバッテリの泥水等による劣化,及びショートを防止してバッテリ寿命を延長できる効果がある。
【0012】
また、上記走行風導入開口を、車両の前方から見て上記可動フェンダの投影面に隠れるように形成したので、車両前方から走行風に乗って走行風導入開口に向かう雨水等についても可動フェンダにより遮断でき、バッテリを確実に冷却しつつより一層バッテリの寿命を延長できる効果がある。
【0013】
請求項2の発明では、上記走行風導入開口を、上記バッテリ収容室の前壁の上側ほど前方に位置するよう傾斜している傾斜部に形成したので、可動フェンダの上方のインナフェンダ等を伝って流れる雨水等が走行風開口内に直接進入するのを防止でき、この点からもバッテリ寿命を延長できる効果がある。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
図1ないし図18は、本発明の一実施形態による電動二輪車のバッテリ冷却構造を説明するための図であり、図1,図2はスクータ型電動二輪車の側面図,正面図、図3はバッテリ収納部の断面正面図、図4は動力ユニットの断面平面図、図5は動力ユニットの蓋体を外した状態の側面図、図6,図7は変速切り換え機構の断面図,側面図、図8,図9は変速位置検出器の側面図,断面図、図10〜図12はコントロールユニットのパワーモジュールの正面図,側面図,平面図、図13は駆動制御装置の構成図、図14はスロットル開度と電流指令値との関係を示す特性図、図15〜図17はそれぞれ変速タイミングを示す特性図、図18は歯車式変速機構の部分断面図である。
【0016】
図において、1はスクータ型電動二輪車であり、これの車体フレーム2は、ヘッドパイプ3に車体後方に斜め下方に延びる1本のメインフレーム4を接続し、該メインフレーム4の後端に左, 右一対のサイドフレーム5,5の前端を接続するとともに、該各サイドフレーム5の後端にリヤフレーム6を接続した概略構造のものである。
【0017】
上記左, 右のサイドフレーム5,5はメインフレーム4から車幅方向に拡開しつつ斜め下方に延びた後、車体後方に水平に直線状に延び、該直線部の後端から斜め上向きに屈曲して延びている。また各リヤフレーム6はサイドフレーム4の後端に続いて斜め上向きに延びており、該リヤフレーム6の上方にはシート16が前ヒンジにより上下方向に回動可能に配設されている。
【0018】
上記ヘッドパイプ3には操向軸7が回転自在に枢支されている。該操向軸7の下端にはフロントフォーク8が、上端には操向ハンドル9がそれぞれ固定されており、該フロントフォーク8の下端には前輪10が軸支されている。
【0019】
上記操向ハンドル9はハンドルカバー20で囲まれている。また上記ヘッドパイプ3の前方にはフロントカバー21が、後方にはレッグシールド22がそれぞれ装着され、両者でヘッドパイプ3を囲んでいる。上記レッグシールド22の下端部に続いて後方に延びるフートボード23が上記サイドフレーム5,5の水平部間上方を覆うように配設されており、該フートボード23の左, 右側縁に続いてサイドフレーム5,5の側方及び下方を覆うようにアンダカバー24が配設されている。また上記リヤフレーム6にはシート16の下方を覆うサイドカバー25が配設されており、該シート16下方のサイドカバー25内には該シート16により開閉される収納ボックス26が配設されている。
【0020】
上記アンダカバー24及びフートボード23により足載部下側にトンネル状のバッテリ収容室35が形成されており、該バッテリ収容室35の前端開口部は後述するインナカバー(前壁)21aにより塞がれており、また後端開口は開放されている。
【0021】
上記車体フレーム2により電動式駆動装置14が懸架支持されている。この電動式駆動装置14は、上記バッテリ収容室35内に搭載された前,後左,右4組のバッテリ15と、車体フレーム2の後部により懸架支持され、上記バッテリ15を電源として後輪17を回転駆動する動力ユニット13と、上記操向ハンドル9の右端部に配設されたアクセルグリップ9aの回動操作(スロットル開度)に基づいて上記動力ユニット13への給電量を制御するコントロールユニット(駆動モータ制御装置)18とを備えている。
【0022】
上記各バッテリ15は、充電可能な多数のNi−Cd電池15aを直列接続,した電池群からなり、バッテリケース32内に配置されている。このバッテリケース32は左, 右のサイドフレーム5,5の下面に溶接固定された前,後一対のステー33,33上にボルト34により固定された箱体32aと、該箱体32aの上端開口を開閉する蓋体32bとからなり、該蓋体32bは左, 右のサイドフレーム5上に固定されたブラケット31にボルト31aにより着脱可能に固定されている。なお、上記各バッテリ15はフートボード23を取り外し、上記蓋体32aを取り外すことにより外部に取り出し可能となっている。
【0023】
また上記箱体32aの前壁には走行風を上記バッテリケース32内導入する導風口32cが開口しており、後壁には各バッテリ15を冷却した走行風を排出する排風口32dが開口している。そして上記バッテリケース32の後壁の後側にはバッテリ15を強制冷却するための冷却ファン40が配設されている。また該冷却ファン40の上方には充電器30が搭載されており、さらに該充電器30の上側に上記コントロールユニット18の制御回路部18aが搭載されている。
【0024】
上記フロントカバー21の下端部には泥水等が車体カバー内に侵入するのを防止するインナカバー21aが配設されており、該インナカバー21aは上記フートボード23の下側に形成されたバッテリ収納室35の前壁を構成している。このインナカバー21aは大略円弧状をなしており、該インナカバー21a内に前輪10の上方を覆う可動フェンダ36が配設されている。該可動フェンダ36は上記フロントフォーク8の操向軸接続部付近に取付け固定されている。従ってこの可動フェンダ36は前輪10と共に操向軸回りに回動する。
【0025】
そして上記インナカバー21aの上記バッテリケース32前方部分で、かつ上部ほど前方に位置するように傾斜した傾斜部21bに、左, 右一対の走行風導入開口37,37が形成されている。この左, 右の走行風導入開口37,37は車両側方から見たとき、上記可動フェンダ36の後下端縁36aを通る前輪10の接線Aより上側に位置し(図1参照)、かつ車体前方から見たとき上記可動フェンダ36の投影面内に位置するよう、つまり車両前方から見て可動フェンダ36の後側に隠れるように(図2参照)位置している。
【0026】
走行風は可動フェンダ36とインナカバー21aとの間から走行風導入開口37,37を通ってバッテリ収容室35内に進入し、さらに導風口32cを通ってバッテリケース32内に進入し、バッテリ15を構成する各電池15aの間を通り、この際に各電池15a冷却し、排風口32dから排出される。これにより走行中の放電によるバッテリ15温度の異常上昇を抑制でき、バッテリ15の劣化を抑制できる。
【0027】
この場合、走行風導入開口37を、可動フェンダ36の後下端縁36aを通る前輪10の接線Aより上側に位置させているので、前輪10が跳ね上げた泥水等は可動フェンダ36によって遮断され、走行風導入開口37内に侵入することがなく、従ってバッテリ15が泥水等で汚損したりショートしたりするのを防止できる。
【0028】
ここで、上記走行風導入開口37については、図2に符号37′(二点鎖線)で示すように、可動フェンダ36の左, 右側方のインナカバー21a部分の、車両前方から見える位置に形成してもよい。なお、この場合でも車両側方から見たとき前輪10の接線Aより上側に形成することが必要である。
【0029】
上記コントロールユニット18は、上記充電器30から充電開始信号が入力されると、バッテリ15に配置された温度検出器(不図示)からバッテリ温度を読み込み、このバッテリ温度が予め設定された充電開始上限温度より高い場合には、バッテリ15への充電を行わず冷却ファン40を起動させ、バッテリ温度が充電開始上限温度を下回るとバッテリ15への充電を開始するように構成されている。なお、充電中は上記冷却ファン40の運転を継続しても良いし、又は停止しても良い。
【0030】
上記動力ユニット13は、左, 右のリヤフレーム6の下面に固定された左,右の懸架ブラケット11,11間に挿通固定されたピボット軸12により上下揺動自在に枢支されている。またこの動力ユニット13の後端とリヤフレーム6との間には1本の緩衝器19が介設されている。
【0031】
上記動力ユニット13は、車両左側に配設され、前後方向に延びる側面視長円箱状のアルミダイキャスト製伝動ケース41と、該伝動ケース41の前端部に車幅方向に向けて配置された駆動モータ50とを一体的に結合して構成されている。
【0032】
上記伝動ケース41は、動力伝達装置としての巻き掛け伝動機構42,及び歯車式変速機構43を支持するケース本体44と、該ケース本体44の外周合面44aに開閉可能に結合されたケース蓋体45とからなり、ケース本体44の前部上面に一体形成されたボス部44bが軸受51aを介して上記ピボット軸12により軸支されている。
【0033】
上記伝動ケース41内は、上記ケース本体44とケース蓋体45とで形成された乾式の巻き掛け室46と、ケース本体44の後端部とこれの内周側合面44cに装着された蓋部材47とで形成された湿式のギヤ室48とに区分けされており、上記巻き掛け室46内に上記巻き掛け伝動機構42が、上記ギヤ室48内に上記歯車式変速機構43が配置されている。
【0034】
また上記伝動ケース41の右側前端部にはフランジ部44dが一体形成されており、該フランジ部44dに上記駆動モータ50が出力軸50aを上記ピボット軸12と平行に向けてボルト締め固定されている。この駆動モータ50の上面に形成されたボス部50bが軸受メタル51bを介して上記ピボット軸12で軸支されており、これにより伝動ケース41と駆動モータ50とが一体に上下揺動するようになっている。また駆動モータ50にはモータ回転数,回転位置を検出するエンコーダ52が装着されており、該エンコーダ50からの検出値は上記コントロールユニット18に入力される。
【0035】
上記巻き掛け伝動機構42は、回転比が略1:1となるように設定された歯付き駆動プーリ55と、歯付き従動プーリ56とを歯付きベルト57で連結した構成となっている。該歯付きベルト57の弛み側にはベルト張力を調整する歯付き調整プーリ58が噛合している。該調整プーリ58は支持アーム59により揺動可能に支持されており、該支持アーム59はスプリング60によりベルトの緊張方向に付勢されている。
【0036】
上記駆動プーリ55の駆動軸55aは上記駆動モータ50の出力軸50aに同軸をなすようにスプライン結合されており、この駆動軸55aはケース本体44に一体形成されたボス部44eに軸受61,61を介して軸支されている。
【0037】
上記ギヤ式変速機構43は、上記ギヤ室48内に上記出力軸50aと平行に従動軸56a,中間軸65,及び上記後輪17が固定された後輪軸66を配置し、各歯車を噛合させた構成となっている。上記各軸56a,65,66はケース本体44及び蓋部材47により軸受67・・を介して軸支されている。
【0038】
上記従動軸56aの左端部は蓋部材47を貫通して巻き掛け室46内に突出しており、該突出部に上記従動プーリ56が装着されている。なお、67aはオイルシールである。上記従動軸56aの右端部には小減速ギヤ56bが一体形成されており、該小減速ギヤ56bには上記中間軸65に固定された大減速ギヤ68が噛合している。
【0039】
上記中間軸65には小中間ギヤ65aが一体形成されており、該小中間ギヤ65aには上記後輪軸66に相対回転可能に装着された大後輪ギヤ69が噛合している。また上記中間軸65には大中間ギヤ70が該中間軸65に対して相対回転可能にかつ軸方向移動可能に装着されており、該大中間ギヤ70には上記後輪軸66に固定された小後輪ギヤ71が常時噛合している。この大中間ギヤ70にはドッグ70aが突出形成されており、該ドッグ70aは該大中間ギヤ70を軸方向に上記大減速ギヤ68側(右側)に移動させたとき該大減速ギヤ68のドッグ孔68aに嵌合するようになっている。
【0040】
上記大後輪ギヤ69と後輪軸66と間にはワンウェイクラッチ72が介設されている。このワンウェイクラッチ72は、上記後輪軸66に固定された内輪73と、上記大後輪ギヤ69に固定された外輪74との間に周方向に複数個のラチェット爪75を介在させ、該ラチェット爪75を付勢ばね(不図示)により上記外輪74の内周面に形成された係合歯74aに係合する方向に付勢した構造のものである。これにより中間軸65から後輪軸66への回転伝達みの許容し、後輪軸66から中間軸65への回転伝達は遮断するようになっている。
【0041】
上記中間軸65の下方にはこれと平行にフォーク軸76,ドラム軸77が配設されており、該フォーク軸76には上記大中間ギヤ70に摺動自在に係合するシフトフォーク78が軸方向に移動可能に装着されている。また上記ドラム軸77にはシフトドラム79が固定されており、該シフトドラム79の外周には上記シフトフォーク78のガイドピン78aが摺動自在に係合するガイド溝79aが凹設されている。このガイド溝79aは周方向にロー変速段a,ハイ変速段bを90度間隔で交互に位置するように波状に形成したものであり(図6の展開図参照)、シフトドラム79を一方向に回転させることにより変速段がローとハイとに交互に切り換わるようになっている。
【0042】
上記歯車変速機構43において、大中間ギヤ70が大減速ギヤ68に係合せず中間軸65に対して回転フリーのロー変速段では、駆動モータ50の回転は巻き掛け伝動機構42を介して従動軸56aから大中間ギヤ68を介して中間軸65に伝達され、該中間軸65の小中間ギヤ65aから大後輪ギヤ69,ワンウェイクラッチ72を介して後輪軸66に伝達され、該後輪軸66が後輪17を回転させる。
【0043】
またシフトドラム79を90度回動させると、シフトフォーク78が大中間ギヤ70を軸方向に大減速ギヤ68側に移動させ、該大中間ギヤ70のドッグ70aが該大減速ギヤ68のドッグ孔68aに嵌合し、これにより大中間ギヤ70は中間軸65に対して固定され、ロー変速段からハイ変速段に切り換えられる。これにより駆動モータ50の回転は中間軸65の大中間ギヤ70から小後輪ギヤ71を介して後輪軸66に伝達され、後輪17を回転させる。
【0044】
ここで上記ハイ変速段では、中間軸65の回転は小中間ギヤ65aから大後輪ギヤ69の経路でも後輪軸66に伝達される。この経路での後輪軸66の回転数より、上記大中間ギヤ70から小後輪ギヤ71の経路で伝達された後輪軸66回転数のほうが大きくなり、両者の間に回転数差が生じるが、この回転数差は上記ワンウェイクラッチ72のラチェット爪75が外輪74の係合歯74aから解放されることにより吸収される。
【0045】
上記シフトドラム79には、該ドラム79をロー変速段位置又はハイ変速段位置に保持する節度機構が配設されている。この節度機構は、シフトドラム79の外周部に軸方向に延びる4本のピン80を90度間隔で配置固定し、このピン80間に係合するローラ82を設け、該ローラ82をストッパレバー81により軸支するとともに、該ストッパレバー81をケース本体44に揺動可能に支持し、該レバー81をスプリング83によりピン係合方向に回動付勢した構造のものである。
【0046】
上記シフトドラム79を上記スプリング83の付勢力に抗して回転させると、該回転に伴って、上記ローラ82はピン80を乗り上げて該乗り上げたピン80と隣合うピン80との間に上記付勢力でもって係合する。このようにしてシフトドラム79は、ロー変速段,又はハイ変速段の何れかに確実に保持される。
【0047】
上記ドラム軸77は蓋部材47を貫通して巻き掛け室46内に突出しており、該突出部には切り換え機構85が接続されている。この切り換え機構85は、複数の減速ギヤ列86が収納されたギヤケース87と、該ギヤケース87に固定され上記減速ギヤ列86を回転駆動する切換モータ88と、上記ギヤケース87により軸支され減速ギヤ列86で回転駆動される切り換え軸89とを備えている。
【0048】
上記切り換え軸89の両端部はギヤケース87から外方に突出しており、この一方の突出部には切り換えギヤ90が装着されており、該切り換えギヤ90は上記ドラム軸77の突出部に装着されたシフトギヤ91に噛合している。ここで上記両ギヤ90,91には逃げ溝90a,91aが形成されており、該逃げ溝90a,91a内に軸89,77に固着されたピン89a,77aが所定の遊びを以て係合している。この遊びは、後述するように、ドラム79がモータ88の回転に応じた速度よりも速く回動するのを所定角度範囲で許容するためのものである。
【0049】
上記切換モータ88は上記コントロールユニット18により駆動制御される。この切換モータ88が回転すると、減速ギヤ列86を介して切換軸89とともシフトドラム79が90度回動し、これによりシフトフォーク78が大中間ギヤ70を軸方向に移動させ、その結果上述の変速段切り換えが行われる。
【0050】
上記切換モータ88によりシフトドラム79が回動すると、該回転力によりストッパレバー81が反付勢方向に押し上げられるとともにローラ80がピン80aに乗り上げ、シフトドラム79が45度回動した時点でローラ80の中心はシフトドラム79とピン80aとの中心を結ぶ線上に位置し、この状態からシフトドラム79が僅かに回動するとローラ80は乗り上げたピン80aと隣合うピン80aとの間に落ち込み、この際に何れかの変速段に切り換えられる(図17参照)。
【0051】
ここで、上記ローラ82がピン80に乗り上げた位置からの回動はスプリング83の付勢力により瞬時に行われ、そのためシフトドラム79がモータ88の回転に応じた速度より速く回転することとなり、切り換えを速やかに行うことができ、また切換モータ88の負荷を軽減でき、その分だけバッテリの消耗を低減することができる。なお、この場合シフトドラム79が高速で回転した場合のモータ88の回転に応じた回転速度との差は上記逃げ溝91a,90aで吸収される。
【0052】
また上記切り換え軸89の他方の突出部には変速位置検出器95が配設されている。この変速位置検出器95は切り換え軸89にこれととともに回転するように固定された円板部材96と、該円板部材96と対向するように配置され、上記ギヤケース87の外壁に固定された検出基板97とを備えている。
【0053】
上記検出基板97にはロー変速段検出信号を出力する第1リードスイッチ98と、ハイ変速段検出信号を出力する第2リードスイッチ99とが90度の角度をなすように配置されており、該各リードスイッチ98,99は基板97に形成された貫通孔97a内に配置されている。また上記円板部材96には、第1磁石100と、該第1磁石100の軸線を挟んで反対側に位置する第2磁石101とが埋設されている。
【0054】
この変速位置検出器95は、図8,図9に示すように、円板部材96が第1磁石100と第1リードスイッチ98とが対向する角度位置に回転すると、該第1リードスイッチ98がロー変速段検出信号をコントロールユニット18に出力する。なお、このとき第2磁石101は第1リードスイッチ98の反対側に位置している。この状態で円板部材96が時計回り(矢印a方向)に90度回転すると、第1磁石100は符号100′で示すように第2リードスイッチ99に対向し、該第2リードスイッチ99がハイ変速段検出信号を出力する。なお、このとき第2磁石101は符号101′で示すように第1リードスイッチ98の90度隣に位置している。さらに円板部材96が時計回りに90度回転すると、第2磁石101が第1リードスイッチ98に対向し、ロー変速段検出信号が出力される。
【0055】
上記変速位置検出器95では、2つのリードスイッチに磁石を交互対向させることにより変速位置を検出するようにしたので、例えば4つのリードスイッチを90度間隔に配置する構造に比べて部品点数を低減でき、それだけコストを低減できる。またポテンショメータ等採用する場合に比べても安価に構成できる。
【0056】
上記コントロールユニット18は、スロットル開度センサ,モータ回転数センサ等の各検出値が入力され、内蔵する電流指令値マップに基づいて制御信号を出力する制御回路部18aと、該制御信号に応じて駆動モータ50,切換モータ88等の回転を制御するパワーモジュール(駆動回路部)18bとから構成されている。
【0057】
上記パワーモジュール18bは、図10〜図12に示すように、FET106等の回路構成部品が配置されたケース104をアルミ合金基板105上に配置し、上記ケース104内に、電解コンデンサ108,セラミックスコンデンサ109等が配置されたFET駆動用ゲートドライブ基板107を配置するとともに、各基板105,107を接続端子110により接続した構成となっている。また各基板105,107にはリード線111,112が接続されており、この各リード線111,112は上記制御回路部18a,バッテリ15,各モータ50,88等に接続されている。
【0058】
そして、図1,図4に示すように、上記コントロールユニット18を構成する制御回路部18aはサイドカバー25内のバッテリ15と収納ボックス26との間に配置されており、雨水や埃等の進入を防止している。またパワーモジュール18bは上記伝動ケース41を構成するアルミ合金製のケース蓋体45内の取付け座45aに配設されている。この取付け座45a部分は外側に少し膨出しており、上記パワーモジュール18bは上記取付け座45aの内面に上記アルミ合金基板105の底面が当接するように固定されている。これにより上記ケース蓋体45が放熱板として機能し、FET106等の発熱部品からの熱を外部に放出するようになっている。
【0059】
上記コントロールユニット18は、モータ電流制御手段及び変速制御手段として機能する。このモータ電流制御手段としての機能により、内蔵する電流指令値マップに基づいてスロットル開度に応じた電流指令値が求められ、該電流指令値に応じた電流が駆動モータ50に供給される。
【0060】
なお、本実施形態では、図14に示すように、モータ回転数が例えば2000rpm,5000rpmと高い状態からスロットル開度が閉じられた減速運転域では、回生電流が流れ、いわゆるエンジンブレーキが発生するように制御される。
【0061】
上記変速制御手段としての機能により以下の動作が行われる。駆動モータ50のエンコーダ52からのモータ回転数が予め設定された変速基準値を越えるとロー変速段,ハイ変速段の何れかに切り換える変速信号が切換モータ88に出力される。具体的には、図15に示すように、平坦路加速時には、モータ回転数が標準回転数V1を越えた時点でロー変速段からハイ変速段に切り換えられ、平坦路減速時には標準回転数V2を下回った時点でハイ変速段からロー変速段に切り換えられる。
【0062】
また登坂路加速時の場合には、ハイ変速段への切り換えは標準回転数V1より高い回転数に設定されており、登坂路減速時には標準回転数V2より高い回転数で、つまりより早くロー変速段に切り換えるように設定されている。これにより駆動モータの回転効率を高めることができ、登坂性能を向上できる。さらにまた下り坂走行時には、標準回転数V2より低い回転数でロー変速段に切り換えるように設定されており、これにより回生トルクが得られ、いわゆるエンジンブレーキが作用するようになっている。
【0063】
また図16,図17に示すように、加速運転時においてモータ回転数が変速基準値に達すると、駆動モータ50への電流供給が一旦停止され、この後再び電流を供給しつつ切換モータ88によりロー変速段からハイ変速段に切り換えられる。即ち、駆動モータ50のモータ出力をカットしている期間は切り換えを行わず、モータ出力を増加させつつ所定出力まで復帰させる再駆動期間で切り換えが行われる。
【0064】
また下り坂運転時には上記駆動モータ50への電流を増加しつつ切換モータ88によりハイ変速段からロー変速段に切り換えられる。なお、この駆動モータ50への電流増加は変速前に短時間でハイ変速段への切り換え回転数となるように行われる。
【0065】
さらに減速運転時には駆動モータ50への電流を短時間増加した後再びスロットル開度に応じた電流に減少しつつ切換モータ88によりハイ変速段からロー変速段に切り換えられる。
【0066】
さらにまた登坂運転時においてアクセル開度が略全開状態であるにもかかわらず車速が減少している場合には、モータ回転数に関係なくロー変速段に切り換えられる。このような切り換え動作においては、図18に示すように、大中間ギヤ70のドッグ70aを大減速ギヤ68のドッグ孔68aから強制的に引き抜くこととなる。この場合の引き抜きに要する力を小さくするために本実施形態では、ドッグ70aの圧接面に面取り部70bを形成している。これによりドッグ70aのドッグ孔68a内面への圧接面積を小さくでき、それだけ引き抜きに要する力を小さくでき、切り換えモータ88の負担を軽減できる。
【0067】
次に本実施形態の作用効果について説明する。
本実施形態のバッテリ冷却構造では、インナフェンダ21aにバッテリ15の収容空間に走行風を導入する走行風導入開口37を形成するに当たり、該開口37を上記インナフェンダ21aの、可動フェンダ36の後下端縁36aを通る前輪10の接線Aより上側部分に形成したので、前輪10により跳ね上げられ、上記走行風導入開口37に向かう泥水等は可動フェンダ36で確実に遮断され、走行風導入開口37内に進入することはほとんどなく、その結果、泥水等による電池15bの劣化を防止でき、電池寿命を延長できる。
【0068】
また本実施形態では、上記左, 右の走行風導入開口37を車両前方から見て可動フェンダ36の投影面内に位置するように形成したので、車両前方からの雨水等はこの可動フェンダ36により遮断され、雨水等が走行風導入開口37内に進入するのを防止でき、この点からも電池寿命の延長を図ることができる。
【0069】
また上記走行風導入開口37をインナカバー21aの路面に対して前方に傾斜する傾斜部21bに形成したので、インダカバー21aの天壁部分等を伝わってくる雨水等についても該走行風導入開口37内に直接進入することはなく、この点からも電池寿命を延長できる。
【0070】
本実施形態では、バッテリケース32の後壁に排風口32dを形成するとともに、該後壁の後側に冷却ファン40を配設し、該冷却ファン40によりバッテリ15が充電開始上限温度に冷却されるまで強制的に外気を導入するようにしたので、バッテリ15を充電前に冷却することができ、バッテリ温度が高いままで充電することによる充電効率の低下を回避できるとともにバッテリ劣化を防止できる。
【0071】
図19は、充電開始温度と充電効率との関係を示す特性図である。同図からも明らかなように、充電開始温度を50℃とした場合には、充電効率は0.76と低くなっている。これに対して充電開始温度を40℃,30℃とした場合には、充電効率は0.88,0.96と高くなっている。従って充電開始上限温度を40℃以下、より望ましくは30℃以下に設定する。
【0072】
本実施形態では、歯付き駆動プーリ55と歯付き従動プーリ56とに歯付きベルト57を巻回した構造の巻き掛け伝動機構42と、中間軸65に装着された中間ギヤ70,65aと、後輪軸66に装着された後輪ギヤ71,69とを選択的に噛合させる構造の歯車式変速機構43を備えたので、駆動モータ50の回転を滑りを発生させることなく高い伝達後輪で確実に後輪17に伝達できる。また中間軸65に装着された中間ギヤを後輪ギヤに選択的に噛合させるだけという簡単な構造で変速でき、コストを低減できる効果がある。
【0073】
また上記歯車式変速機構43を、中間軸65の小,大中間ギヤ65a,70と後輪軸66の大,小後輪ギヤ69,71とをそれぞれ常時噛合させ、大中間ギヤ70を中間軸65に対して回転フリーとし、又は固定する機構を採用したので、簡単な構造でロー変速段,又はハイ変速段に切り換えることができ、コストを低減できる。
【0074】
さらにまた上記中間軸65から後輪軸66への回転伝達のみを許容し、後輪軸66から中間軸65への回転伝達は遮断する一方向クラッチ72を備えたので、上記ハイ変速段とした際の、大後輪ギヤ69と小中間ギヤ65aとの間の回転数差を吸収できる。
【0075】
また上記ワンウェイクラッチ72を設けたので、複雑なクラッチ機構を設けることなく軽い人力で車両を押して移動させることができる。
【0076】
本実施形態によれば、制御回路部18aからの制御信号に応じて駆動モータ50,切換モータ88等の回転を制御する駆動回路部としてのパワーモジュール18bを伝動ケース44内のアルミ合金製ケース蓋体45の内面に当接させて固定したので、走行風が直接当たるケース蓋体45が放熱板として機能することとなり、FET106等の発熱部品をからの熱を効率よく外部に放散できる。
【0077】
また上記パワーモジュール18bを駆動モータ50が結合され、バッテリ15の直近に配置された伝動ケース44内に配置したので、該パワーモジュール18bからバッテリ15,及び駆動モータ50への配線を短くすることが可能となり、それだけ配線ロスを小さくできる。また上記伝動ケース44内のデッドスペースを有効利用できる。
【0078】
本実施形態の駆動制御装置によれば、スロットル開度に応じた電流を駆動モータ50に供給するようにしたので、加速運転域ではスロットル開度に対応した駆動トルクが得られるとともに、減速運転域では回生トルクが得られる。
【0079】
本実施形態では、加速運転時には、駆動モータ50への電流供給を一旦停止し、この後再び電流を供給しつつ切換モータ88によりロー変速段からハイ変速段に切り換えるようにしたので、駆動モータから後輪への回転力伝達を遮断するために通常必要となるクラッチ機構を用いることなく切り換えをスムーズに行うことができ、コストを低減できる。
【0080】
また、後輪17が惰性で回転している場合において一旦停止したモータトルクを再び増加させながら変速するようにしたので、従来の停止中,あるいは低減中に変速をする場合に比べて上記惰性で回転している後輪との調和を図ることができ、変速ショックを低減できる。
【0081】
また下り坂運転時には上記駆動モータ50への電流を増加しつつ切換モータ88によりハイ変速段からロー変速段に切り換えるようにしたので、高回転の後輪17と駆動モータ50との調和を図ることができ、これにより切り換えをスムーズに行うことができ、また回生トルクによるいわゆるエンジンブレーキを作用させることができ走行安定性を向上できる。
【0082】
本実施形態では、減速運転時には駆動モータ50への電流を短時間増加した後再びスロットル開度に応じた電流に減少しつつ切換モータ88によりハイ変速段からロー変速段に切り換えるようにしたので、大中間ギヤ70のドッグ70aが大減速ギヤ68から抜け易くなり、この点からもスムーズに切り換えを行うことができ、変速ショックを解消できる。
【0083】
また登坂運転時のようにアクセル開度が略全開状態であるにもかかわらず車両速度が低下していく場合には、モータ回転数に関係なくロー変速段に切り換えようにしたので、登坂性能を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施形態のスクータ型電動二輪車の側面図である。
【図2】上記電動二輪車の正面図である。
【図3】上記電動二輪車のバッテリ収納部の断面正面図である。
【図4】上記電動二輪車の動力ユニットの断面図である。
【図5】上記動力ユニットの側面図である。
【図6】上記動力ユニットの変速切り換え機構の断面図である。
【図7】上記変速切り換え機構の側面図である。
【図8】上記変速切り換え機構の変速位置検出器の側面図である。
【図9】上記変速位置検出器の断面図である。
【図10】上記電動二輪車のパワーモジュールの正面図である。
【図11】上記パワーモジュールの側面図である。
【図12】上記パワーモジュールの平面図である。
【図13】上記電動二輪車の駆動制御装置の概略構成図である。
【図14】上記駆動制御装置のスロットル開度とモータ電流指令値との関係を示す図である。
【図15】上記駆動制御装置の変速タイミング図である。
【図16】上記駆動制御装置の変速タイミング図である。
【図17】上記駆動制御装置の変速タイミング図である。
【図18】上記ギヤ式変速機構の部分断面図である。
【図19】上記実施形態の充電開始温度と充電効率との関係を示す特性図である。
【符号の説明】
1 スクータ型電動二輪車(電動車両)
9 操向ハンドル
10 前輪
15 バッテリ
16 シート
21a インナフェンダ(バッテリ収容室の前壁)
21b 傾斜部
23 フートボード(足載部)
35 バッテリ収納室
36 可動フェンダ
36a 後下端縁
37 走行風導入開口
40 冷却ファン
A 前輪の接線
Claims (2)
- 操向ハンドルとシートとの間に低床の足載部を設け、該足載部の下側にバッテリ収納室を形成し、該バッテリ収納室内にバッテリを搭載した電動二輪車の上記バッテリを走行風で冷却するようにしたバッテリ冷却構造において、前輪用フェンダを前輪とともに操向軸回りに回動する可動フェンダとし、上記バッテリ収納室内に走行風を導入する走行風導入開口を該バッテリ収納室の前壁の、上記可動フェンダの後下端縁を通る前輪の接線より上側部分に、かつ車両の前方から見て上記可動フェンダの投影面に隠れるように形成したことを特徴とする電動二輪車のバッテリ冷却構造。
- 請求項1において、上記走行風導入開口が、上記前壁の上側ほど前方に位置するよう傾斜している傾斜部に形成されていることを特徴とする電動二輪車のバッテリ冷却構造。
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