JP3802110B2 - 核酸の同時増幅方法並びにそのための組成物、試験キット及び試験装置 - Google Patents

核酸の同時増幅方法並びにそのための組成物、試験キット及び試験装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、反応混合物中に体積排除剤(volume exclusion agent)を使用して2種以上の二本鎖核酸を迅速に同時増幅する方法に関する。本発明はまた、本発明の方法を実施する上で有用な反応組成物、試験キット及び試験装置にも関する。
【0002】
【従来の技術】
最近、核酸の検出は、ヒトや動物の被検体中に非常に少量で存在する染色体の特徴、感染性因子及び各種生物を早期に検出するための手段として成長している。検出手順は、通常、(ヌクレオチド対として知られている)相補的ヌクレオチド間の水素結合やその他の力によって2本のDNA鎖が一緒に結合する相補性の概念に基づくものである。
DNA分子は、通常はかなり安定であるが、その鎖は、加熱などの特定の条件によって分離又は変性させることができる。変性された鎖は、相補的配列を有する別のヌクレオチド鎖とのみ再会合する。
【0003】
分子数の非常に少ないDNAを検出するための方法を見い出すため、多大な研究が行われている。検出のために被検体中の核酸数を増幅する又は大幅に複製する各種の手法が知られており、ほぼ10年間にわたり用いられている。このような増幅技法には、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、リガーゼ連鎖反応(LCR)、その他開発の遅れている方法、が含まれる。
PCR法が最もよく知られている方法であって、DNA重合剤とデオキシリボヌクレオシド三リン酸を存在させて適当な条件下で標的核酸の鎖にプライマーをハイブリダイズさせる工程を含む。複数回のサイクルを通してプライマー伸長生成物が形成され、最初の標的鎖の数が指数的に増加することになる。PCRに関する詳細は、米国特許第4,683,195号(Mullisら)、同第4,683,202号(Mullisら)及び同第4,965,188号(Mullisら)に記載されている。
【0004】
ヒトや動物の被検体は、多種多様な核酸を含有し、ヒトや動物に内因する(又は天然の)ものもあれば、感染性因子の存在や発ガン性条件といった何らかの異常な条件が原因となって発生するものもある。通常、こうした核酸は内因性の核酸よりも非常に低濃度で存在する。これらを「コピー数の少ない」核酸と呼ぶことがある。対照的に、内因性の核酸は高濃度で存在することが普通であり、これらを「コピー数の多い」核酸と称する場合がある。このような核酸の一例として、ヒトβ−グロブリンDNAが挙げられる。
【0005】
PCR法を実施すると、被検体中に存在する2種以上の核酸が同じ反応容器内で同時に増幅されることがよくある。このことを本明細書では「同時増幅」と称することとする。この方法では、増幅すべき核酸の各々に対するプライマーを容器内に同時に存在させなければならない。
このような状況下でコピー数の少ない標的核酸とコピー数の多い標的核酸を共に増幅させると、コピー数の少ない標的核酸の増幅が阻害されることが多い。この原因は、増幅サイクルの後の方でコピー数の多い標的核酸によって増幅酵素(例、DNAポリメラーゼ)が飽和するためである。コピー数の少ない標的核酸の存在については偽陰性という結論になりやすく、重大な結果をもたらす恐れがある。
【0006】
こうしたPCRにまつわる問題に対しては、プライマー濃度を調節する方法、特殊な融解温度(Tm )を示すプライマー組を使用する方法、或いはこれらを組み合わせた方法をはじめとする様々な解決策が提案されている。プライマー比率を調節する方法を当該技術分野ではPCR収率を「プライマーバイアスする」と呼び、コピー数の多い標的核酸に対するプライマーの濃度を低下させる必要がある。この方法では、プロセスを適当にしか制御することができない。
【0007】
別の同時増幅方法は、コピー数の多い標的核酸に対するプライマーがコピー数の少ない標的核酸に対するプライマーよりもアニールの程度が低くなるように、PCRにおけるアニーリング温度を調節する方法である。この方法にも問題がある。プライマー対の間のTm 差が比較的大きくなければ、コピー数の多い標的核酸とコピー数の少ない標的核酸との収率の差に基づいてPCRを良好に変調することはできない。正確なTm を(概算は可能であるが)計算することはできないため、これを測定する必要がある。これは多大な労力を要し、大変である。
【0008】
これらの同時増幅を変調するための方法は、いずれもコピー数の多い標的核酸とコピー数の少ない標的核酸の配列が知られていることが必要である。
別法として、PCRの後の方のサイクルにおけるプライミング工程又は伸長工程の時間を延長することによって、コピー数の多い標的核酸によるDNAポリメラーゼの飽和を最小限に抑え、増幅効率を向上させることができる。しかしながら、この解決策は、様々な濃度で存在する多種多様な核酸が同時に増幅される状況でしか有用ではない。
【0009】
硫酸デキストランやポリエチレングリコールなどの体積排除剤の存在下では、こうした剤が占める溶液の体積から核酸が排除されるために、核酸のハイブリダイゼーション速度がかなり増加することが知られている〔Sambrookら、Molecular Cloning, A Laboratory Manual, page 9.50, 1989 、及び米国特許第5,106,730号明細書(Van Ness ら) 〕。この排除効果が溶液中の核酸の有効濃度を高めることにより、ハイブリダイゼーション速度が増加する。こうして、これらの物質は望ましくない逆反応を前方へ「推進する」ために反応混合物へ日常的に添加されている。例えば、これらを反応混合物へ添加してリガーゼ反応を「推進する」ことが米国特許第5,185,243号(Ullman ら) 及び同第5,194,370号(Berningerら) 明細書に記載されている。
【0010】
しかしながら、ハイブリダイゼーション速度は体積排除剤によって増加するが、ハイブリダイゼーションの速度が通常遅い場合、又は核酸が反応において律速する場合を除いて、Sambrookらはそれらの使用を薦めてはいない。また、これらの剤は時として高いバックグラウンドをもたらすこと、さらには得られた溶液の粘度が高くなるためにその取扱いがより一層困難になることが知られている。こうして、当該技術分野では、体積排除剤は特定のハイブリダイゼーション条件に限定されるべきであるとされており、また上記特許明細書が示すように、実際には逆反応を前方へ「推進させる」場合にのみ体積排除剤が用いられている。というのは、そうしなければ反応が適当な速度で起こらないからである。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
1種以上の標的核酸を、1種以上の別の標的核酸の存在下で同時増幅させた場合に、上記の問題が解決されるように迅速且つ効率的に増幅する方法が望まれる。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記の問題は、少なくとも15回の一次増幅サイクルを含む2種以上の標的核酸を同時増幅する方法であって、前記一次増幅サイクルの各々が、
A)2種以上の標的核酸又はそれらのプライマー伸長生成物の反応混合物を、前記標的核酸又はそれらのプライマー伸長生成物の鎖を変性するために第一温度T1 に加熱する工程、
B)第二温度T2 まで冷却することによって、増幅すべき各標的核酸の対向鎖に特異的であり且つハイブリダイズすることができる一組のプライマーで前記変性された鎖をプライミングする工程、及び
C)前記工程Bの延長としてか又は別の工程において、第三温度T3 におけるインキュベーションによってPCR試薬の反応混合物中でプライマー伸長生成物を形成させる工程〔但し、前記プライミング工程とプライマー伸長生成物形成工程とを同一工程で実施する場合にはT2 とT3 は同じである〕、
を逐次工程として含み、そして
前記一次増幅サイクルの少なくとも一つにおける前記反応混合物が、非イオン性で高分子量の体積排除剤を約4重量%以上含む、核酸の同時増幅方法によって解決された。
【0013】
本発明はまた、少なくとも15回の一次増幅サイクルを含む2種以上の標的核酸を同時増幅して前記標的核酸の1種以上を検出する方法であって、前記一次増幅サイクルの各々が、
A)2種以上の標的核酸又はそれらのプライマー伸長生成物の反応混合物を、前記標的核酸又はそれらのプライマー伸長生成物の鎖を変性するために第一温度T1 に加熱する工程、
B)第二温度T2 まで冷却することによって、増幅すべき各標的核酸の対向鎖に特異的であり且つハイブリダイズすることができる一組のプライマーで前記変性された鎖をプライミングする工程、及び
C)前記工程Bの延長としてか又は別の工程において、第三温度T3 におけるインキュベーションによってPCR試薬の反応混合物中でプライマー伸長生成物を形成させる工程〔但し、前記プライミング工程とプライマー伸長生成物形成工程とを同一工程で実施する場合にはT2 とT3 は同じである〕、
を逐次工程として含み、その際、前記一次増幅サイクルの少なくとも一つにおける前記反応混合物が、非イオン性で高分子量の体積排除剤を約4重量%以上含み、そして
D)最後の一次増幅サイクル終了後、前記標的核酸の1種以上を示すものとして前記プライマー伸長生成物の1種以上を検出する工程、
を含む、核酸の同時増幅/検出方法をも提供する。
【0014】
さらに本発明は、一組以上のプライマーと、耐熱性DNAポリメラーゼと、複数種のdNTPと、約4重量%以上の非イオン性で高分子量の体積排除剤とを含み、pHを約7.5〜約9に緩衝化された増幅反応用組成物を提供する。
また、本発明は、a)一組以上のプライマーと、耐熱性DNAポリメラーゼと、複数種のdNTPと、約4重量%以上の非イオン性で高分子量の体積排除剤とを含み、pHを約7.5〜約9に緩衝化された増幅反応用組成物、及び
b)水不溶性担体に固定されたオリゴヌクレオチドを含む捕捉試薬
が個別に包装されて含まれている試験キットをも提供する。
【0015】
さらに本発明は、a)一組以上のプライマーと、耐熱性DNAポリメラーゼと、複数種のdNTPと、約4重量%以上の非イオン性で高分子量の体積排除剤とを含み、pHを約7.5〜約9に緩衝化された増幅反応用組成物、及び
b)水不溶性担体に固定されたオリゴヌクレオチドを含む捕捉試薬
を別々の区分室に含む自蔵式(self-contained)試験装置であって、
前記区分室は、前記試験装置内において、前記増幅反応用組成物が増幅後に前記試験装置を開放することなく前記捕捉試薬と接触されうるように連結されている自蔵式試験装置をも提供する。
【0016】
本発明は、ある核酸を、同時増幅されている他の1種以上の核酸の混合物中で優先的に増幅するための非常に迅速で効率のよい方法を提供するものである。例えば、本発明を利用して、増幅されたコピー数の多い標的核酸の中でコピー数の少ない標的核酸を優先的に増幅して検出することができる。このような場合、コピー数の多い標的核酸によるコピー数の少ない標的核酸の増幅阻害は低減される。他の場合として、本発明を利用して、様々な理由のためにある種の標的核酸の増幅を他の核酸の中で操作することができる。
【0017】
本発明の利点は、少なくとも1回の増幅サイクルにおいて増幅反応混合物中に水溶性又は水膨潤性の非イオン性で高分子量の体積排除剤を含ませることによって実現される。この剤の存在によって、ユーザーは核酸の効率的な増幅に必要なプライマーの量を削減することができ、ひいてはこの削減によってある種の核酸が優先的に増幅されるように工程を操作することが可能になる。こうして、プライマーを速度制限反応体として使用することができる。
【0018】
さらに、体積排除剤は、増幅反応生成物の再生速度を増加し、コピー数の少ない標的核酸に対してコピー数の多い標的核酸の増幅効率をさらに低下させる。
好ましい実施態様では、増幅に用いられる各プライマーの濃度は常用のレベルよりもかなり低い濃度である。こうした低濃度でも可能である理由は、体積排除剤が存在するからであり、これにより複数種の標的核酸の同時増幅をさらに操作することができる。
【0019】
当該技術分野の教示、特にSambrookらの教示を鑑みれば、それらの増幅方法ではハイブリダイゼーション速度がかなり高く、また標的核酸は速度制限量では存在しないので、増幅方法に体積排除剤を使用する者はいないであろう。その上、これらの剤は望ましくないすべての反応を「推進」し、望ましくない生成物を相当量発生させてしまうと予想されるであろう。これは本発明の場合には当てはまらないようである。従って、本発明により得られる利点は予想できなかった。
【0020】
本発明の増幅手法は、「ストリンジェンシーの高い」として知られている条件下で実施される。すなわち、プライマーは、ストリンジェントな温度、pH及びその他の反応条件下で比較的迅速に興味のある標的核酸鎖に特異的にハイブリダイズすることを意味する。
【0021】
ポリメラーゼ連鎖反応を利用して核酸を増幅及び検出するための一般原理及び条件についてはよく知られている。その詳細については、米国特許第4,683,195号、同第4,683,202号及び同第4,965,188号明細書(上記)をはじめとする多くの文献に記載されており、本明細書ではそのすべてを参照することにより取り入れることとする。当該技術分野における教示と本明細書に記載した特別な教示とを鑑みれば、当業者であれば本明細書に記載に従い本発明を実施して、一方がコピー数の少ない標的核酸である2種以上の核酸を同時増幅することは容易である。
【0022】
本発明は、好ましくは、被検体中の1種以上のコピー数の少ない標的核酸中に存在する1種以上の特異的核酸配列を、1種以上のコピー数の多い標的核酸中に存在する1種以上の核酸配列を同時に増幅させながら、増幅して検出することに関する。被検体中に存在するコピー数の少ない標的核酸の量は約10-16 モル濃度未満であることが一般的ではあるが、しかしながら、その量は、コピー数の多い核酸がはるかに多量に、例えば1000倍以上の濃度で、存在する場合には、さらに多くなることもある。一般に、コピー数の多い標的核酸は単コピー遺伝子に関連しているものである一方、コピー数の少ない標的核酸はヒトや動物における感染性因子、ガン、その他病理状態に関連しているものである。
【0023】
さらに、アッセイではコピー数の多い標的核酸を「陽性対照」として使用することができる。コピー数の多い標的核酸のPCR効率を変調することにより、PCRが効率的に行われた場合にのみ陽性対照は検出可能となるので、偽陰性の可能性が低下する。このような場合、コピー数の多い標的核酸は、コピー数の少ない標的核酸の10倍以上の濃度で存在することができる。
【0024】
被検体は、細胞、ウイルス、毛髪、体液又は検出可能な遺伝子DNA又はRNAを含有する他の材料であることができる。標的核酸は、プラスミドや、(細菌、酵母、ウイルス、植物、高等動物又はヒトなどの)何らかのソースから得られる天然DNA又はRNAをはじめとする様々なソースから得ることができる。それは、血液、末梢血液単核細胞(PBMC)、他の組織材料又は当該技術分野で知られている他のソースをはじめとする様々な組織から周知の方法で抽出されることができる。本発明は、ゲノムDNA、細菌DNA、プロウイルスDNA、菌類DNA、ウイルスRNA、又は細菌若しくはウイルスに感染された細胞中のDNA若しくはRNA、に存在する核酸配列の同時増幅及び検出に特に有用である。さらに、本発明を利用して、癌マーカーに係わる核酸配列を増幅し検出することも可能である。
【0025】
検出可能な細菌には、ヒトの血液中にある細菌、サルモネラ(Salmonella)種、クラミジア(Chlamydia) 種、淋菌(Neisseria) 種、シゲラ(Shigella)種及びマイコバクテリウム(Mycobacterium) 種が含まれるが、これらに限定はされない。検出可能なウイルスには、単純ヘルペスウイルス、エプスタインバールウイルス、ヒトサイトメガロウイルス、ヒトパピローマウイルス、肝炎ウイルス並びにHTLV−I、HTLV−II、HIV1及びHIV2のようなレトロウイルスが含まれるが、これらに限定はされない。原生動物の寄生虫、酵母及びカビもまた検出可能である。当業者であればその他の検出可能な種は明らかである。本発明は、レトロウイルスDNA(HIV1やHIV2)又はマイコバクテリウム種に関連したDNAの存在を検出するのに特に有用である。本発明を、HIV1、プロウイルスHIV1、HIV2又はプロウイルスHIV2に関連したDNAの検出に使用することが最も好ましい。
【0026】
「PCR試薬」とは、PCRに一般に用いられるすべての試薬、すなわち、各標的核酸の対向鎖に対する一組のプライマーと、DNAポリメラーゼと、DNAポリメラーゼコファクターと、2種以上のデオキシリボヌクレオシド−5’−三リン酸(dNTP)とを意味する。
「プライマー」とは、核酸鎖(すなわち、鋳型)に相補的なプライマー伸長生成物の合成が誘導される条件下に置かれた場合にその合成開始点として作用しうる天然の又は合成されたオリゴヌクレオチドを意味する。このような条件には、他のPCR試薬の存在並びに好適な温度及びpHが含まれる。通常、このような条件は、非特異的増幅が最小限に抑えられるような「ストリンジェンシーの高い」条件として知られている条件である。プライマーは、DNAポリメラーゼの存在下で伸長生成物の合成を引き起こすに十分な長さを有する必要がある。各プライマーの正確なサイズは、使用法、標的配列の複雑さ、反応温度及びプライマーの出所によって変わる。一般に、本発明で用いられるプライマーは、ヌクレオチドを10〜60個有するものである。
【0027】
プライマーは、多数の出所から入手すること、或いは、例えば、ABI DNA合成機(Applied Biosystemより入手可能)又はBiosearch 8600シリーズ若しくは8800シリーズの合成機(Milligen−Biosearch社より入手可能)をはじめとする周知の技法及び装置並びにそれらの使用方法(例えば、上記の米国特許第4,965,188号明細書に記載されている)を利用して合成することができる。また、生物学的ソースから単離された天然のプライマー(例えば、制限エンドヌクレアーゼ消化物)も有用である。一般には、各標的核酸に対し、少なくとも2種のプライマーからなる一組が用いられる。こうして、複数組のプライマーを同時に使用し、複数種の標的核酸を増幅することができる。さらに、一組のプライマーが、ある特定の標的核酸に対するプライマー混合物を含むこともできる。
【0028】
DNAポリメラーゼは、プライマーに対してホスホジエステル結合することにより、デオキシヌクレオシド一リン酸分子をエステル化しこれをプライマーの3’−ヒドロキシ末端に付加する酵素としてよく知られいる。この合成は鋳型依存性である。有用なDNAポリメラーゼには、E.coliのDNAポリメラーゼI、T4 DNAポリメラーゼ、Klenowポリメラーゼ、逆転写酵素、その他当該技術分野で知られているものが含まれる。
【0029】
DNAポリメラーゼは、「耐熱性」であることが好ましい。耐熱性とは、DNA鎖の変性に用いられる高温において一般に安定であることを意味する。より詳細には、耐熱性DNAポリメラーゼは、PCRに用いられる高温において実質的には不活性化されない。このような温度は、pH、塩濃度、その他当該技術分野で知られている条件をはじめとする幾つかの反応条件によって変わる。
【0030】
当該技術分野では幾つかの耐熱性DNAポリメラーゼが報告されており、米国特許第4,965,188号明細書(上記)及び同第4,889,818号明細書(Gelfandら)に詳細に記載されているものが含まれるが、本明細書ではこれらを参照することにより取り入れることとする。特に有用なポリメラーゼは、Thermus細菌種から得られるものであって、例えばサーマス・アクラティカス(Thermus aquaticus)、サーマス・フィリフォルミス(Thermus filiformis)、サーマス・フラバス(Thermus flavus)又はサーマス・サーモフィラス(Thermus thermophilus)から得られるDNAポリメラーゼである。他の有用な耐熱性ポリメラーゼは、サーモコッカス・リテラティス(Thermococcus literalis)、ピロコッカス・フリオサス(Pyrococcusfuriosus)、Thermotoga sp.及び国際特許出願公開WO−A−89/06691号公報(1989年7月27日公開)に記載されているものをはじめとする他の様々な微生物源から得られる。有用な酵素の中には市販されているものもある。生物から天然のポリメラーゼを単離するための技法がいくつか知られている。また組換え技術によるポリメラーゼを調製するためのクローニング法やその他の合成法も、Gelfandらの特許をはじめとする先に引用した技術文献から知られている。
【0031】
DNAポリメラーゼコファクターとは、酵素活性に影響を与える非タンパク質化合物をさす。当該技術分野では、マンガン塩やマグネシウム塩をはじめとするこのような物質がいくつか知られている。有用なコファクターとして、マンガン及びマグネシウムの塩化物、硫酸塩、酢酸塩及び脂肪酸塩が含まれるが、これらに限定はされない。塩化物、硫酸塩及び酢酸塩が好ましい。最も好ましい塩は塩化マグネシウム及び硫酸マグネシウムである。
【0032】
PCRにはまた、デオキシリボヌクレオシド−5’−三リン酸、例えば、dATP、dCTP、dGTP、dTTP及びdUTPのうちの2種以上が必要である。dITPや7−デアザ−dGTPのようなアナログも有用である。PCRでは、通常の4種類の三リン酸(dATP、dCTP、dGTP及びdTTP)を使用することが好ましい。
【0033】
本発明の実施には、DNAポリメラーゼに特異的な抗体であって、約50℃未満の温度では該酵素活性を阻害するがより高温では自身が不活性化される抗体も有用である。このような特性を有する代表的なモノクローナル抗体が、米国特許第5,338,671号明細書(Scaliceら)に記載されており、本明細書ではこれを参照することにより取り入れることとする。同等な特性を有するならば抗体フラグメントを完全分子の代わりに使用してもよい。
【0034】
典型的なPCR反応組成物は、標的核酸に対する1種以上のプライマー組と、耐熱性DNAポリメラーゼ(上記)と、複数種のdNTP(例、常用の4種のdNTP)と、そして1種以上の水溶性又は水膨潤性の非イオン性で高分子量の体積排除剤とを最低でも含有する。
さらに、それらは非イオン性であるため、本発明の範囲からはPCRに悪影響を及ぼすカチオン性、アニオン性又は両性の物質は除外される。
【0035】
体積排除剤は高分子、すなわち、典型的には複数の反復単位を含む。一般に、体積排除剤の平均分子量は約1000〜約20,000ダルトンであり、約3000〜約12,000ダルトンの範囲にあることが好ましい。
本発明を実施する上で体積排除剤として使用することができる有用な種類の物質には、ポリエーテル、単糖(例、デキストロースやグルコース)とエピクロロヒドリンとの反応生成物、多糖、ポリアクリレート及び当業者であれば容易に想到しうる同等な物質が含まれるが、これらに限定はされない。
【0036】
ポリエーテルが好ましい。ポリエーテルは一般に下式で表すことができる。
H−(−O−R−)n −H
上式中、Rは炭素原子数1〜6のアルキレンであり、そしてnは15〜1000(重量平均基準)の整数である。例えば、Rは、1,2−エチレン、1,2−プロピレン、2−ヒドロキシ−1,3−プロピレン、3−ヒドロキシ−1,2−プロピレン、1,4−ブチレン、1,3−ブチレン、1,2−ヘキシレン、その他当業者であれば容易に想到しうる二価アルキレン基であることができる。好ましくは、Rは、一般にポリ(エチレングリコール)やポリ(プロピレングリコール)として知られているポリ(酸化エチレン)やポリ(酸化プロピレン)にあるような1,2−エチレン又は1,2−プロピレンである。
【0037】
上記式において、整数「n」は、その化合物の重量平均分子量をそのモノマー単位分子量で割った値を表している。先のパラグラフで記載した好ましい化合物の平均分子量は約1000以上、好ましくは約3000以上で且つ一般に最大で約20,000である。当業者であれば、特定の化合物と化合物重量に対して適当な「n」個の単位を決めることは容易にできる。一般にnは15〜1000の整数である。分子量を定義する際の用語「約」は±10%の変動を表す。
【0038】
ポリエーテルの定義には、酸化エチレン、酸化プロピレン若しくは他の酸化アルキレン又はポリグリシドールをはじめとするジオール、トリオール、糖若しくは酸などの各種部分の縮合生成物も含まれる。このような物質は、非イオン界面活性剤又は洗剤として当該技術分野では知られており、そして必要な水溶性又は水膨潤性のパラメーターが満たされているならば、本発明において有用となることができる。
【0039】
本発明を実施する上で有用な非イオン性多糖にはデキストラン、グリコーゲン及びその他当業者であれば容易に想到しうるもの、が含まれる。
有用なポリアクリレートの例として、ポリ(ヒドロキシエチルアクリレート)、ポリ(2,3−ジヒドロキシプロピルアクリレート)及びその他当業者であれば容易に想到しうるものが挙げられるが、これらに限定はされない。
【0040】
本明細書に記載したPCR試薬は、PCRにおいて標的核酸を増幅するのに適した濃度で提供され且つ用いられる。DNAポリメラーゼの最少量は、溶液100μl当たり、一般に約1単位以上、好ましくは約4〜約25単位である。ここで「単位」とは、74℃において伸長している核酸中へ30分間で10ナノモルの全ヌクレオシド(dNTP)を取り込ませるに必要な酵素活性量として定義される。各プライマーの濃度は約0.025μモル濃度以上、約1μモル濃度未満であり、中でも約0.05〜約0.2μモル濃度が好ましい。すべてのプライマーはほぼ同じ量(各々の変動が±10%以内)で存在する。反応混合物中、コファクターは一般に約1〜約15ミリモルの量で存在し、また各dNTPは一般に約0.15〜約3.5ミリモルの量で存在する。体積排除剤は、約4重量%以上の量で、好ましくは約6〜約12重量%の量で存在する。物質の量を定義する際の用語「約」は、記載量に±10%の変動が含まれていることを意味する。
【0041】
PCR試薬は、個別に供給しても、また適当な何らかの緩衝液を用いてpHを約7〜約9にした緩衝化溶液として供給してもよい。こうして、PCRの反応混合物は、コピー数の少ない標的核酸の各々に対する一組のプライマーと、コピー数の多い標的核酸の各々に対する一組のプライマーと、適当なdNTPと、耐熱性DNAポリメラーゼと、該DNAポリメラーゼのためのコファクターと、1種以上の体積排除剤と、そして標的核酸の増幅やその後の検出に有用であると考えられる他の何らかの添加物とを含むことができる。
【0042】
上記のように、標的核酸は様々な出所源から得られる。一般に、標的核酸は、プライマー、その他の反応物質との接触に利用できるようにするため何らかの方法で抽出されなければならない。このことは、通常、望ましくないタンパク質や細胞物質を被検体から適当な方法で除去することを意味する。当該技術分野では、LaureらのThe Lancet,pp.538−540(1988年9月3日)、ManiatisらのMolecular Cloning:A Laboratory Manual,pp.280−281(1982)、Gross−BellandらのEur.J.Biochem.,36,32(1973)及び米国特許第4,965,188号明細書(上記)に記載されているものをはじめとする様々な方法が知られている。全血又はその成分からDNAを抽出する方法については、例えば、欧州特許出願公開第0 393 744号公報(1990年10月24日公開)、BellらのProc.Natl.Acad.Sci.USA,78(9),pp.5759−5763(1981)、SaikiらのBio/Technology,,pp.1008−1012(1985)及び米国特許第5,231,015号明細書(Cumminsら)に記載されている。本発明の実施では、特定の抽出法が重要となることはない。
【0043】
通常、増幅して検出されるべき標的核酸は二本鎖形にあるため、この二本鎖を分離(すなわち、変性)しなければプライミングは起こらない。プライミングは、抽出工程中に行うことができるが、好ましくはその後の別工程で行う。好ましい変性手段は、好適な温度(本明細書では「第一温度」又はT1 と称する)に加熱することである。一般に、この第一温度は、適当な時間、例えば1〜約240秒間(好ましくは1〜約40秒間)、約85℃〜約100℃の範囲とする。この初期変性工程を最初の増幅サイクルに含めてもよい。このような場合には、最初のサイクルにおける変性をより長時間(例えば、最長で240秒間)とし、その後のサイクルでは変性を短時間(例えば、最長で30秒間)としてもよい。
【0044】
次いで、変性された鎖を、適当な組合せのプライマーを用いて、その反応混合物を一般に約55〜約70℃の範囲にある第二温度T2 へ冷却することによりプライミングする。冷却はできるだけ迅速に行うことが望まれるが、現存の装置では、一般には約5〜約40秒間で、より好ましくは約5〜約20秒間で行われる。好ましくは、T2 は以下の式で規定される。
(TmH−15)℃≦T2 ≦(TmH+5)℃
式中、TmHはコピー数の多い標的核酸に対するプライマーの融解温度である。
【0045】
変性された鎖を冷却したら、PCR試薬を含有する反応混合物を第三温度T3 において、一般には1〜約120秒間、好ましくは1〜約80秒間インキュベートし、プライマー伸長生成物を形成させる。一般に、第三温度は以下の式:
(TmH−15)℃≦T3 ≦(TmH+15)℃
で規定されるが、一般には約55〜約70℃、好ましくは約62〜約70℃の範囲にある。
【0046】
最も好ましい実施態様では、第二温度と第三温度を同じにし、そして約62〜約70℃の範囲とする。こうして、プライミングとプライマー伸長を、同じ工程で行うことが好ましい。
コピー数の多い標的核酸に対する各プライマーは、本明細書でTmHと表示した融解温度を有する。通常、TmLとTmHの差は0〜約8℃であり、そしてT2 とT3 はどちらもTmL若しくはTmHよりも低いか又はTmL若しくはTmHのいずれかに等しいことが普通である。TmLは、コピー数の少ない標的核酸に対するプライマーの融解温度である。
【0047】
本明細書で規定する融解温度は、プライマーの半分が(鋳型のような)相補鎖から変性される温度である。この融解温度の測定は、例えば、Biochemistry−The Molecular Basis of Cell Structure and Function(第2版、Lehninger,Worth Publications,Inc.,1970,pp.876−7)に記載されているように260nmにおけるスペクトルをモニターすることによって、紫外線淡色効果に基づいて、いくつかの標準方法で実施することができる。融解温度の測定方法が異なると、同じDNA分子でもその値に若干の差が生じることはあるが、これらの値が約2〜3℃よりも大きく変動することはまずない。その上、融解温度を測定するための方法が一定であれば、TmLとTmHの差が変動することはない。
【0048】
融解温度は以下の式を用いて計算されることが好ましい。
m (℃)=67.5+0.34(%G+C)−395/N
上式中、GとCは、オリゴヌクレオチド(すなわち、プライマー)における、それぞれグアニンとシトシンのヌクレオチド数を表し、Nは全ヌクレオチド数を表す。この計算式で得られる融解温度の値は、常用のUV淡色効果と常用のHewlett−Packard製ダイオードアレイ分光光度計(走査速度約+1℃/分)を用いて、塩化マグネシウム、塩化ナトリウム及びその他当業者であれば容易に想到するもののような無機塩や有機塩の1種以上をイオン強度約20ミリモル以上で有する10ミリモルのトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン緩衝液(pH8.5)にプライマーを含む溶液について室温で実験的に求めた値とよく相関する。上記融解温度式を決めるために用いられた溶液中でのプライマーとその相補体の量は、約0.5〜約1.0のOD単位の光学濃度を与えるに十分な量とした。
【0049】
こうして、「一次」増幅サイクルは、上記の変性工程、プライミング(又はアニーリング)工程及びプライマー伸長工程を含む。一般に、本発明の実施では、このような一次増幅サイクルを15回以上行うが、そのサイクルの最大回数についてはユーザーの裁量に任される。たいていは、15〜50回の一次増幅サイクルが行われ、15〜40回のサイクルが好適である。一次増幅サイクルの各サイクルは、一般に約20〜約360秒、好ましくは約30〜約120秒、より好ましくは約30〜約90秒のサイクル時間で行われる。しかしながら、所望により、さらに長時間又は短時間のサイクル時間を採用してもよい。
【0050】
本発明の方法は、上記の「一次」サイクルのみを含むことができるが、別の実施態様として、上記の少なくとも15回の一次増幅サイクルの後に、1回以上の「二次」増幅サイクルを含むことができる。このような二次サイクルは一次サイクルと同じ工程を使用して行われるが、但し、各変性工程後に再生工程を導入してからプライミング工程を行う。
【0051】
再生工程は、反応混合物を以下に規定される第四温度T4 に冷却することによって行われる。
(TmH+5)℃≦T4 ≦TPH
式中、TPHは、コピー数の多い標的核酸の二本鎖の融解温度である。一般に、T4 は約65〜約90℃である。T4 に到達させるのに要する時間はできるかぎり短くするが、最長で約45秒間かけてもよい。また、上記温度は約15〜約100秒間維持することができる。
【0052】
この方法では少なくとも5回の二次増幅サイクルを採用するが、その上限回数はユーザーの裁量に任される。一つの実施態様では、この二次増幅サイクルは5〜20回が好ましく、また15回のサイクルが最も好ましい。二次増幅サイクルの各サイクルに要する時間は約20〜約360秒である。好ましいサイクル時間は約30〜約120秒である。
【0053】
後のサイクルにおいて、増幅反応に用いられるプライマーの有効Tm (融解温度)よりも数度高いがコピー数の多い生成物の有効Tm 以下の温度で生成物の再生工程を含めると、増幅生成物の再生が濃度依存様式で可能となる。二次サイクルの比較的短い再生工程はコピー数の少ない標的核酸のプライミング効率に実質的な影響を及ぼすことはないが、コピー数の多い標的核酸のプライミングを低下させる。
【0054】
本出願明細書において、ある特定の工程に対する時間に用語「約」を付した場合は、その限界値について±10%の幅があることを意味する。温度に用語「約」を付した場合には、±5℃の幅があることを意味する。
【0055】
増幅生成物の再生のような核酸のハイブリダイゼーション反応の速度論は、ハイブリダイズされる核酸の濃度に比例する。それゆえ、増幅生成物の濃度が、例えば10倍に増加すると、ハイブリダイゼーションの速度も10倍に増加する(すなわち、再生に対するt1/2 が10分の1に短縮される)。ハイブリダイゼーションの前進速度定数を5×106 モル-1-1と仮定すると、生成物濃度10-8モルにおけるt1/2 は約14秒、また生成物濃度10-9モルにおけるt1/2 は約140秒となる。先に記載した体積排除剤を含めると、増幅プライマー、標的核酸、プライマー伸長生成物及びDNAポリメラーゼといった反応する巨大分子を有効に増加させることになる。この有効プライマー濃度の増加によって、増幅反応における絶対プライマー濃度を、増幅効率を低下させることなく対応して低下させることができる。このように、本発明の好ましい実施では、効率損失を伴わずにプライマー濃度をかなり低下させることができる。
【0056】
本発明の増幅法は、反応混合物の温度を所望の回数だけ制御して周期変動させるように連続自動式で実施することが好ましい。このために開発された装置がいくつかあり、当業者であれば周知である。また、一次増幅サイクル及び二次増幅サイクルの両方についてプログラム可能な装置を使用することも好ましい。
【0057】
この目的のための装置の一つが、米国特許第4,965,188号明細書及び欧州特許出願公開第0 236 069号公報にかなり詳しく記載されている。一般に、この装置は、反応混合物を含有する複数の反応管を保持するための熱伝導性容器と、加熱、冷却及び温度維持するための手段と、増幅配列、温度及びタイミングの変化を制御するための信号を発生する計算手段とを含む。
【0058】
欧州特許出願公開第0 402 994号公報は、米国特許第5,089,233号明細書(Devaney,Jrら)に記載された装置を用いて処理することができる有用な化学試験パックについて詳細に記載しており、本明細書ではこれを参照することにより取り入れることとする。その中には、本発明の方法に適した反復インターバルで(すなわち、サイクルにより)その試験パックを加熱/冷却するための手段についても記載されている。有用なPCR処理装置に関するさらなる詳細は、当該技術分野の重要な文献から入手することができ、当業者であれば容易に確認することができる。
【0059】
上記の化学試験パックの他、本発明の方法は、米国特許第4,902,624号明細書(Columbusら)、同第5,173,260号明細書(Zanderら)、同第5,229,297号明細書(Schnipelskyら)に詳細に記載されているような他の容器、及び当業者であれば明白なその他の適当な容器においても実施することができる。本明細書ではこれらを参照することにより取り入れることとする。このような試験パックは自蔵式試験装置としても知られており、本発明の方法で用いられる各種試薬のために区分された別個の室を有する。この区分室は、装置を開放しなくても、試薬とアッセイ液とが適時捕捉試薬と接触できるように適当に連結されている。
【0060】
増幅生成物の検出は、当該技術分野で周知のように、米国特許第4,965,188号明細書(上記)に記載されているサザンブロッティング法や、標識されたプローブ又はプライマーを利用して行うことができる。
上記実施態様の別法として、増幅生成物を、そのプライマー伸長生成物の一方に対して相補的である標識されたオリゴヌクレオチドを用いて検出することもできる。オリゴヌクレオチドに標識を付与する方法については周知である。有用な標識には、酵素、フェリチン、その他磁性粒子、放射性同位元素、化学発光試薬(例、ルミノール)、ビオチン並びに各種蛍光助剤及び発色助剤が含まれる。有用な酵素標識には、グルコースオキシダーゼ、ペルオキシダーゼ及びアルカリ性ホスファターゼが含まれる。各種標識用の基質や色素提供試薬、例えば酵素、についても周知である。
【0061】
好ましい実施態様では、検出用に酵素標識(例、ペルオキシダーゼ)を使用し、そしてその標識により色素又は発光を提供する適当な組成物を使用する。例えば、特に有用な比色定量用色素提供システムが米国特許第5,024,935号明細書(McCluneら)に記載されている。その後、裸眼又は適当な分光光度計若しくはルミノメーターによって検出する。
【0062】
また、この方法に用いられる各プライマー組のプライマーの一方を、特異的結合性部分で標識することも可能である。この部分は、各種プライマーについて同じであっても異なってもよく、またその部分と特異的に反応する特異的結合性レセプターが存在するためのいずれの分子を含むこともできる。特異的結合性対(その一方が標識となりうる)の例として、ストレプトアビジン/ビオチン、糖類/レクチン、抗体/ハプテン、抗体/抗原、その他当業者であれば自明のもの、が挙げられる。その後、酵素、放射性同位元素又はその他上記のもののようなオリゴヌクレオチドを検出できる適当な標識部分とレセプター分子とを複合化させる。
【0063】
各プライマー組の一方又は両方のプライマーをビオチン(又はその等価な誘導体)で標識し、そして増幅生成物を、西洋ワサビペルオキシダーゼのような酵素とストレプトアビジンとの複合体を用いて検出する方法がより好ましい。
本発明の不均質検出系では、増幅生成物を何らかの水不溶性担体表面に捕捉し、そして反応混合物中の他の物質を適当な方法、例えば、濾過、遠心分離、洗浄、その他の分離方法、によって除去する。
【0064】
捕捉プローブは、周知の結合技法(吸収反応や共有反応を含む)によって、水不溶性の担体に結合させることができる。このような技法の一つが、欧州特許出願公開第0 439 222号公報(1991年9月18日発行)に記載されている。その他の方法が、例えば、米国特許第4,713,326号(Dattaguptaら)、同第4,914,210号(Levensonら)及び欧州特許第0 070 687号(1983年1月26日発行)に記載されている。有用な分離手段には、Pall社より市販されているポリアミド微多孔質膜のような膜による濾過が含まれる。
【0065】
しかしながら、捕捉プローブ及び最終的なハイブリダイゼーション生成物を係留するためには、マイクロタイタープレート、試験管、ビーカー、磁性又は高分子粒子、金属、セラミックス、ガラスウール、等をはじめとする有用ないずれの固体担体でも使用することができる。特に有用な材料は、捕捉プローブを共有結合させるのに有用な反応性基を有する磁性粒子又は高分子粒子である。このような粒子の大きさは一般に約0.001〜約10μmである。このような材料の例については、米国特許第4,997,772号(Suttonら)、同第5,147,777号(Suttonら)、同第5,155,166号(Danielsonら)及び同第4,795,698号(Owenら)の明細書に詳細に記載されており、本明細書ではこれらを参照することにより取り入れることとする。
【0066】
捕捉プローブは、ポリマーフィルム、メンブレン、濾紙、又は樹脂被覆紙若しくは未被覆紙のような平らな担体に結合させてもよい。ポリマー粒子に結合させた捕捉プローブを、このような平らな担体上に適当な方法、例えば乾燥付着法、加熱融合付着法又は接着法で固定化することもできる。捕捉プローブは、例えば、本発明の自蔵式試験装置において平らな担体に結合させることができる。このような材料の詳細については、欧州特許出願第0 408 738号(1991年1月23日発行)、国際特許出願第WO92/16659号(1992年10月1日発行)及び米国特許第5,173,260号(Suttonら)明細書に記載されている。
捕捉プローブは、適当な担体表面で、丸い付着物が列をなした形や縞模様など、いずれの形状で配置されてもよい。
【0067】
本発明はまた、「均一」増幅法として知られている、捕捉試薬を使用せずに標的核酸を同時検出する手法にも適用することができる。このようなアッセイの詳細は、欧州特許出願0 487 218号(1992年5月27日発行)及び同第0 512 334号(1992年11月11日発行)に記載されているように、当該技術分野では周知である。
【0068】
本発明の増幅反応組成物は、各種増幅アッセイに有用な試験キットの個別に包装される成分の一つとして含まれることができる。このキットは、水不溶性担体表面に固定化された捕捉試薬、洗浄液、抽出液、検出試薬及びその他当業者であれば容易に想到できる材料をはじめとする、本発明の方法に有用な他の試薬、溶液、装置及び使用説明書を含むことができる。
【0069】
以下の実施例は、本発明の実施を説明するためのものであり、本発明を限定するものではない。特に断らない限り、パーセントはすべて重量基準とした。
【0070】
【実施例】
実施例についての材料および方法
実施例で用いたプライマーは、以下の配列を有するものとした。最初の2種はプロウイルスHIV1 DNAのgag領域に相補的であり、次の2種はヒトβ−グロブリン DNAに相補的である。
Figure 0003802110
【0071】
前記プライマー中、Xは、米国特許第 4,962,029号明細書(Levensonら)に記載された技法を用いて、2つのアミノテトラエチレングリコール・スペーサー基を介してオリゴヌクレオチドに付加された(DuPont社製のビオチンホスホラミダイト由来の)ビオチニル部分を表す。
実施例で用いた捕捉プローブは、以下の配列を有するものとした。第一はプロウイルスHIV1 DNA用であり、第二はヒトβ−グロブリン DNA用である。
Figure 0003802110
【0072】
「Y」は、米国特許第4,914,210号明細書(Levensonら)の教示に従い単一のアミンジオール結合基に結合された2個のテトラエチレングリコールスペーサーを表す。
【0073】
プライマー及び捕捉プローブは、既知の出発物質と手順を採用し、Applied Biosystems Model 380B、3本カラム式DNA合成機、標準ホスホラミダイト化学法及びABI1μモルスケールの高速サイクルプロトコールによって調製した。ヌクレオシド−3’−ホスホラミダイト及びヌクレオシド誘導化制御細孔ガラス担体はApplied Biosystemsから入手した。すべての精製は、核酸用精製カラムと続いて逆相HPLC技法によって行った。
【0074】
捕捉プローブを形成するため、これらのプローブを、従来の乳化重合法を用いてポリ〔スチレン−コ−3−(p−ビニルベンジルチオ)プロピオン酸〕(重量比95:5、平均直径1μm)から調製したポリマー粒子(平均直径1μm)に共有結合させた。粒子を水に懸濁させた懸濁液を、2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸緩衝液( 0.1モル,pH6)で洗浄し、そして固形分が約10%となるように懸濁させた。洗浄した粒子の試料( 3.3mL)を希釈して、緩衝液中固形分が3.33%( 0.1モル)となるようにし、それを1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩(2.1mL, 84mg/mL, 水で調製)およびプローブ( 983μL, 44.44OD/mL,ナノ純水で調製)と混合させた。得られた懸濁液を水浴中50℃で約2時間断続的に混合しながら加熱し、そして遠心分離した。次いで、(エチレンジニトリロ)四酢酸二ナトリウム塩(0.0001モル)を含むトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン緩衝液(0.01モル,pH8)で粒子を3回洗浄し、そしてそれに再懸濁して固形分4%となるようにした。
【0075】
米国特許第4,948,561号明細書(Hinckleyら)に詳細に記載されているように、緩衝液を用いて固形分0.25%にまで希釈した捕捉試薬(1.2μl)を、SURECELL(商品名)ディスポーザブル試験装置(Eastman Kodak社製)のテストウェルにおいて微多孔質膜(LOPRODYNE(商品名)ポリアミド膜、平均孔径5μm、Pall社製)の画定された領域に適用して乾燥させた。
【0076】
PCRは、米国特許第5,089,233号明細書(本明細書ではこれを参照することにより取り入れることとする)に詳細に記載されている自動化されたKodak PCR処理装置を用い、以下の実施例に記載した加熱及び冷却プロトコールに従い実施した。
【0077】
サーマス・アクアティカス( Thermus aquaticus )由来の組換えDNAポリメラーゼは、従来の方法を用いて入手した。
グリセロール、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン緩衝液及びdNTPは、Sigma Chemicalより入手した。
【0078】
常用の方法により8E5/LAV細胞系統からコピー数の少ない標的プロウイルスHIV1 DNAを抽出した。細胞を溶解しタンパク質を消化した後、そのDNAをフェノール/クロロホルム抽出法で精製した。すなわち、細胞懸濁液にトリス飽和フェノール(750μl)を加え、そしてフェノール/溶解物液を混合して遠心分離法で分離した。次いで、その水相を新しい2mlのチューブに移した。この手順をクロロホルムイソアミルアルコールを用いて繰り返した。その水層を0.3モル酢酸ナトリウムにした。95%の常温エタノールを加えて−70℃で1時間保存することにより核酸を析出させた。次いで、プロウイルスHIV1 DNAの濃度をA260 において測定し、そして実験用として、TE緩衝液〔トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(1ミリモル)及び(エチレンジニトリロ)四酢酸(0.1ミリモル)〕においてコピー数の異なる一連の希釈液を調製した。
【0079】
コピー数の多いヒトβ−グロブリン DNAは、1細胞当たり2コピーのヒトβ−グロブリン遺伝子を有すると考えられるヒト胎盤DNA(0.5mg/ml)において得られた。
ロイコ色素分散体は、アガロース( 0.5%)、4,5−ビス(4−ジメチルアミノフェニル)−2−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)イミダゾール・ロイコ色素( 250マイクロモル)、ジエチレントリアミン五酢酸( 100マイクロモル)、4′−ヒドロキシアセトアニリド(5ミリモル)、ポリビニルピロリドン( 112ミリモル)およびリン酸ナトリウム,一塩基性,一水和物(10ミリモル)を含むものとした。
【0080】
実施例で用いた複合体溶液は、市販のストレプトアビジンおよび西洋ワサビペルオキシダーゼの複合体(Zymed Laboratories社)( 126μL/L )、カゼイン( 0.5%)およびメルチオレート( 0.5%)をリン酸緩衝塩化ナトリウム水溶液(リン酸ナトリウム24ミリモル及び塩化ナトリウム75ミリモル)に含むものとした。複合体の最終濃度は312ng/mlとした。
【0081】
実施例で用いた洗浄溶液は、塩化ナトリウム( 373ミリモル)、(エチレンジニトリロ)四酢酸二ナトリウム塩( 2.5ミリモル)、デシル硫酸ナトリウム(38ミリモル)及びエチル水銀チオサリチル酸,ナトリウム塩(25マイクロモル)を、リン酸ナトリウム,一塩基性,一水和物緩衝液(25ミリモル,pH7.4 )に含むものとした。
反応混合物には「TP4」モノクローナル抗体を使用した。この抗体は、サーマス・アクアティカス( Thermus aquaticus )由来のDNAポリメラーゼに特異的なものであって、米国特許第5,338,671号明細書(上記)に詳細に記載されている。
【0082】
実施例1〜4では、ポリメラーゼ連鎖反応混合物(200μl)は、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン緩衝液(10ミリモル、pH8)、塩化カリウム(50ミリモル)、塩化マグネシウム(10ミリモル)、dATP、dCTP、dGTP及びdTTP(各1.5モル)、プライマー(各々0.1又は0.4μモル)、ゼラチン(0.01%)、上記DNAポリメラーゼ(200μl当たり8単位)、「TP4」モノクローナル抗体(DNAポリメラーゼに対してモル比50:1)並びに体積排除剤として表示量のPEG−8000を含むものとした。
【0083】
以下の実施例5では、PCR反応混合物は、配列番号1と配列番号2を有するプライマーのみを使用し、各プライマーの量を0.2μモルとし、そしてDNAポリメラーゼの量を200μl当たり32単位としたことを除いては、上記と同じものとした。
PEG−8000のポリ(エチレングリコール)はSigma Chemical社から入手した。その分子量は約8000ダルトンである。
硫酸デキストランは5Prime>3Prime社から入手した。
【0084】
残りの試薬および材料は、市販のものを使用したか、または従来の方法を用いてEastman Kodak 社で調製した。
実施例1〜4:体積排除剤を使用したプロウイルスHIV1及びβ−グロブリンDNAの高ストリンジェンシー同時増幅
これらの実施例は、ストリンジェンシーの高い条件下で、コピー数の多い標的核酸であるヒトβ−グロブリン DNAの存在下、コピー数の少ない標的核酸であるプロウイルスHIV1 DNAを増幅し検出するための異なる数種類の増幅プロトコールを使用する本発明を例示するものである。
【0085】
上記のPCR反応混合物(200μl)は、コピー数10のプロウイルスHIV1 DNAと、コピー数約100万のヒトβ−グロブリン DNAと、プライマー(4種類の各プライマーにつき0.1又は0.4マイクロモル)とを含むものとした。対照用反応混合物は、体積排除剤を含まなかったが、本発明の実施で用いた混合物は10%のPEG−8000を含有した。対照A〜Dのアッセイは、それぞれ実施例1〜4のPCRプロトコールに従うものとした。
【0086】
実施例1では、PCRプロトコールは40回の一次増幅サイクルを含み、各サイクルは以下からなるものとした。
1)95℃で15秒間(最初のサイクルのみ195秒間)加熱して変性させる工程;及び
2)64℃で30秒間プライミング(アニーリング)して伸長させる工程。
実施例2のプロトコールは、各サイクルにおけるプライミング及び伸長工程を60秒間実施したことを除いて、実施例1と同様にした。
【0087】
実施例3では、PCRプロトコールは、
1)各サイクルが、
A)95℃で15秒間(最初のサイクルのみ195秒間)加熱して変性させる工程;及び
B)64℃で30秒間プライミング(アニーリング)して伸長させる工程
を含む20回の一次増幅サイクル、並びに
2)各サイクルが、
A)95℃で15秒間加熱する工程;及び
B)64℃で60秒間プライミング(アニーリング)して伸長させる工程
を含む20回の二次増幅サイクル
を含むものとした。
【0088】
実施例4では、PCRプロトコールは、
1)各サイクルが、
A)95℃で15秒間(最初のサイクルのみ195秒間)加熱して変性させる工程;及び
B)64℃で30秒間プライミング(アニーリング)して伸長させる工程
を含む20回の一次増幅サイクル、並びに
2)各サイクルが、
A)95℃で15秒間加熱する工程;
B)75℃で30秒間再生する工程;及び
C)64℃で30秒間プライミング(アニーリング)して伸長させる工程
を含む20回の二次増幅サイクル
を含むものとした。
【0089】
増幅生成物の検出は、以下の方法で行った。最終増幅反応混合物の一部(5μl)を、緩衝液〔トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(10ミリモル、pH8)、塩化カリウム(50ミリモル)、塩化マグネシウム(10ミリモル)及びゼラチン(0.01%)〕(95μl)と混合し、95℃で5分間インキュベートし、核酸を変性させた。次いで、得られた溶液をSURECELL(商品名)試験装置(上記)に移し、増幅された標的核酸を捕捉プローブに50℃でハイブリダイズできるようにした。
【0090】
次いで、試験装置のテストウェルを、上記洗浄液(250μl)を用いて55℃で洗浄した。室温で、上記ストレプトアビジン−ペルオキシダーゼ複合体液(50μl)を各テストウェルに加えてその膜を透過させた。2分後、テストウェルを2回洗浄した。
【0091】
上記のロイコ色素分散液(100μl)を各テストウェルに加え、そしてその装置を室温で2分間インキュベートした。アジ化ナトリウム(0.1%)の溶液(100μl)を加えて発色を停止させた。アッセイで得られた色素信号を、色濃度スケール0〜10(最高濃度)上で可視的に等級化した。
PEG−8000を含む場合と含まない場合とで、各種プライマー量について得られたアッセイの結果を以下の表1に示す。明らかに、DNAポリメラーゼの存在量が減少すると、体積排除剤の存在によって増幅効率が増加している。この結果は、実施例2及び実施例3において0.1μモルの各プライマーを使用した場合に特に明白であるが、各PCRプロトコールで信号増加が認められた。
【0092】
表1
アッセイ プライマー濃度(μモル) 色素信号
実施例1 0.4 0.50
実施例1 0.1 4.25
対照A 0.4 0.50
対照A 0.1 1.25
実施例2 0.4 4.25
実施例2 0.1 7.50
対照B 0.4 1.50
対照B 0.1 6.25
実施例3 0.4 4.50
実施例3 0.1 8.00
対照C 0.4 5.00
対照C 0.1 3.75
実施例4 0.4 4.50
実施例4 0.1 6.50
対照D 0.4 2.50
対照D 0.1 0
【0093】
実施例5:PEGと硫酸デキストランとの比較
この実施例は、コピー数の少ない標的核酸のプロウイルスHIV1 DNAを増幅して検出するPCRにおいて体積排除剤として使用するPEG−8000と硫酸デキストランとを比較するものである。同時増幅は実施しなかったが、この実験は、PCRにおける体積排除剤として硫酸デキストランが使用できないことを例示している。同時増幅におけるPEGの使用については実施例1〜4に説明した通りである。
【0094】
上記のPCR反応混合物(200μl)は、コピー数12のプロウイルスHIV1 DNAと、(バックグラウンドとして)コピー数約100万のヒト胎盤DNAと、プライマー(各々0.2マイクロモル)とを含むものとした。対照用反応混合物は、PEG−8000も硫酸デキストランも含まなかったが、他の混合物は1〜10%のPEG−8000又は硫酸デキストランを含有した。
【0095】
PCRプロトコールは40回の一次増幅サイクルを含み、各サイクルは以下からなるものとした。
1)95℃で15秒間(最初のサイクルのみ195秒間)加熱して変性させる工程;及び
2)64℃で30秒間プライミング(アニーリング)して伸長させる工程。
【0096】
増幅生成物の検出は、以下の方法で行った。最終増幅反応混合物の一部(5μl)を、緩衝液〔トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(10ミリモル、pH8)、塩化カリウム(50ミリモル)、塩化マグネシウム(10ミリモル)及びゼラチン(0.01%)〕(95μl)と混合し、95℃で5分間インキュベートし、核酸を変性させた。次いで、得られた溶液をSURECELL(商品名)試験装置(上記)に移し、増幅された標的核酸を捕捉プローブに50℃でハイブリダイズできるようにした。
【0097】
次いで、試験装置のテストウェルを、上記洗浄液(250μl)を用いて55℃で洗浄した。室温で、上記ストレプトアビジン−ペルオキシダーゼ複合体液(50μl)を各テストウェルに加えてその膜を透過させた。2分後、テストウェルを2回洗浄した。
【0098】
上記のロイコ色素分散液(100μl)を各テストウェルに加え、そしてその装置を室温で2分間インキュベートした。アジ化ナトリウム(0.1%)の溶液(100μl)を加えて発色を停止させた。アッセイで得られた色素信号を、色濃度スケール0〜10(最高濃度)上で可視的に等級化した。
PEG−8000又は硫酸デキストランを含む場合と含まない場合とのアッセイの結果を以下の表2に示す。明らかに、PEG−8000の存在によって増幅効率が増加したが、硫酸デキストランの存在はPCRを完全に阻害した。
【0099】
表2
体積排除剤 色素信号
無 4.5
1%PEG−8000 6
2%PEG−8000 7.5
4%PEG−8000 8.5
6%PEG−8000 9
8%PEG−8000 8.5
10%PEG−8000 8.5
無 6.5
1%硫酸デキストラン 0
2%硫酸デキストラン 0
4%硫酸デキストラン 0
6%硫酸デキストラン 0
8%硫酸デキストラン 0
10%硫酸デキストラン 0
【0100】
本発明をその好ましい態様を特に参照して詳細に記載してきたが、変更および修正が本発明の精神および範囲内で可能であることは理解されるであろう。
【0101】
【配列表】
Figure 0003802110
【0102】
Figure 0003802110
【0103】
Figure 0003802110
【0104】
Figure 0003802110
【0105】
Figure 0003802110
【0106】
Figure 0003802110

Claims (15)

  1. 少なくとも15回の一次増幅サイクルを含む2種以上の標的核酸を同時増幅する方法であって、前記一次増幅サイクルの各々が、
    A)2種以上の標的核酸又はそれらのプライマー伸長生成物の反応混合物を、前記標的核酸又はそれらのプライマー伸長生成物の鎖を変性するために第一温度T1 に加熱する工程、
    B)第二温度T2 まで冷却することによって、増幅すべき各標的核酸の対向鎖に特異的であり且つハイブリダイズすることができる一組のプライマーで前記変性された鎖をプライミングする工程、及び
    C)前記工程Bの延長としてか又は別の工程において、第三温度T3 におけるインキュベーションによってPCR試薬の反応混合物中でプライマー伸長生成物を形成させる工程
    〔但し、前記プライミング工程とプライマー伸長生成物形成工程とを同一工程で実施する場合にはT2 とT3 は同じである〕、
    を逐次工程として含み、そして
    前記一次増幅サイクルの少なくとも一つにおける前記反応混合物が、非イオン性で高分子量の体積排除剤を4重量%以上含む、核酸の同時増幅方法。
  2. 前記体積排除剤がポリエーテル、糖とエピクロロヒドリンとの反応生成物、多糖及びポリアクリレートから成る群より選択される、請求項1記載の方法。
  3. 前記体積排除剤が、下式:
    H−(O−R)n −H
    (上式中、Rは炭素原子数1〜6のアルキレン基であり、nは15〜1000の整数である)で示されるポリエーテルである、請求項2記載の方法。
  4. 前記体積排除剤がポリ(エチレングリコール)又はポリ(プロピレングリコール)である、請求項3記載の方法。
  5. 前記体積排除剤の平均分子量が1000〜20,000ダルトンである、請求項1記載の方法。
  6. 前記体積排除剤が前記反応混合物中に4〜12重量%の量で存在する、請求項1記載の方法。
  7. 前記標的核酸の少なくとも1種がコピー数の少ない標的核酸であり、且つ前記標的核酸の少なくとも1種が、前記コピー数の少ない標的核酸の1000倍以上の濃度で存在すると予測されているコピー数の多い標的核酸である、請求項1記載の方法。
  8. 増幅すべき標的核酸に対する各プライマー組の各プライマーが0.025μモル濃度以上、1μモル濃度未満の同じ濃度で存在している、請求項1記載の方法。
  9. 前記各プライマー組の各プライマーが0.05〜0.2μモル濃度で存在している、請求項8記載の方法。
  10. 少なくとも5回の二次増幅サイクルをさらに含む請求項7記載の方法であって、前記二次増幅サイクルの各々が前記工程A〜Cを逐次反復する工程を含むと共に、各二次増幅サイクルにおける工程Aと工程Bとの間に、反応混合物を、
    (TmH+5)℃≦T4 ≦TPH
    〔式中、TmHはコピー数の多い標的核酸に対するプライマーの融解温度であり、TPHは前記コピー数の多い標的核酸の二本鎖の融解温度である〕で規定される第四温度T4 まで冷却して該温度で1〜120秒間維持する工程を含む、請求項7記載の方法。
  11. 工程Bと工程Cがすべてのサイクルで同じであり、そしてT2 とT3が6〜70℃の同じ温度である、請求項1記載の方法。
  12. 前記標的核酸の少なくとも1種に対して特異的なプライマーの一方又は両方がビオチン化されており、そして前記増幅された標的核酸の検出が、増幅後に得られたビオチン化された鎖をこれに相補的な不溶化オリゴヌクレオチドを用いて捕捉し、次いで検出可能に標識されたストレプトアビジン複合体によって、前記捕捉されたビオチン化された鎖を検出することによって行われる、請求項1記載の方法。
  13. 前記オリゴヌクレオチドが磁性粒子又は高分子粒子に固定化されている、請求項12記載の方法。
  14. 各一次増幅サイクルを3〜120秒間実施する、請求項1記載の方法。
  15. 少なくとも15回の一次増幅サイクルを含む2種以上の標的核酸を同時増幅して前記標的核酸の1種以上を検出する方法であって、前記一次増幅サイクルの各々が、
    A)2種以上の標的核酸又はそれらのプライマー伸長生成物の反応混合物を、前記標的核酸又はそれらのプライマー伸長生成物の鎖を変性するために第一温度T1 に加熱する工程、
    B)第二温度T2 まで冷却することによって、増幅すべき各標的核酸の対向鎖に特異的であり且つハイブリダイズすることができる一組のプライマーで前記変性された鎖をプライミングする工程、及び
    C)前記工程Bの延長としてか又は別の工程において、第三温度T3 におけるインキュベーションによってPCR試薬の反応混合物中でプライマー伸長生成物を形成させる工程
    〔但し、前記プライミング工程とプライマー伸長生成物形成工程とを同一工程で実施する場合にはT2 とT3 は同じである〕、
    を逐次工程として含み、その際、前記一次増幅サイクルの少なくとも一つにおける前記反応混合物が、非イオン性で高分子量の体積排除剤を4重量%以上含み、そして
    D)最後の一次増幅サイクル終了後、前記標的核酸の1種以上を示すものとして前記プライマー伸長生成物の1種以上を検出する工程、
    を含む、核酸の同時増幅/検出方法。
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