JP2006320217A - マルチプレックスpcr法 - Google Patents

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JP2006320217A JP2005144371A JP2005144371A JP2006320217A JP 2006320217 A JP2006320217 A JP 2006320217A JP 2005144371 A JP2005144371 A JP 2005144371A JP 2005144371 A JP2005144371 A JP 2005144371A JP 2006320217 A JP2006320217 A JP 2006320217A
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伸彦 森本
Tetsuya Tanabe
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Abstract

【課題】 本発明の目的は、プライマー設計が容易であり、また増幅効率マルチプレックスPCR法を提供することである。
【解決手段】 本発明は、マルチプレックスPCR法であって、長さが32塩基以上のプライマーを使用することと、前記プライマーのTm値よりも低い温度でアニーリングさせることと、1分〜10分間の長時間伸長反応を行うこととを特徴とするPCR増幅方法を提供する。
【選択図】 図6

Description

本発明は、マルチプレックスPCR法に関する。
最近の遺伝子タイピングの低コスト化、高スループット化の要求に応えるべく、90年代後半から提案されてきたのがマルチプレックスタイピング法である。たとえば、ロシュ社のシトクロームP450蛋白質のSNP検出用マイクロアレイも、1本の反応容器で反応し検出する点ではマルチプレックス法と呼ぶことができるが、これよりもより複雑で検出の柔軟性が高い方法が提案されている。
この方法は、遺伝子診断などに広く用いられており、たとえば、DNAコンピューターを用いたSNP解析ではDCNを用いて遺伝子解析の多重化を行うが、このときに、前処理にあたるゲノムからSNP 周囲を切り出すPCR も同様に多重化できればコストや作業効率の面で望ましかった。
このようなマルチプレックスタイピング法の鍵となるのは、DNAタグと呼ばれる人工配列部分であり、天然の遺伝子配列を人工の配列に変換する反応とそのためのプローブ形状、DNAタグの識別検出技術である。同一の溶液内で複数の遺伝子を1対1対応でDNAタグに変換し検出するので、それぞれのDNAタグは独立に反応するよう互いにクロスハイブリダイゼーションせず、同一溶液で同時に反応することから融解温度(Tm)が揃うように設計されている。検出デバイスにより遺伝子配列そのものをプローブでとらえるマイクロアレイとは異なり、遺伝子との対応付けは自由で、検出段階でいつも同じDNAタグを検出すればよく、検出対象の遺伝子が変わっても同一の検出手法、検出デバイスが使えるので柔軟性がある。
このようなマルチプレックスタイピング法のためのマルチプレックスPCR法では、プライマーのデザインと、その量の最適化が最も重要であり、一組のプライマー対を用いるPCR法に比べて、より注意が必要とされる。現在まで使用されてきたマルチプレックスPCR法では、特許文献1および2などにあるように、設計指針は産物長が300塩基前後で揃っていること、プライマーの長さは18塩基〜30塩基であることがよいとする文献や論文が多い。従って、従来のマルチプレックスPCR法のためのプライマー設計は、以下の基準を満たすことが適当であるとされてきた:
(1)PCR産物の長さが300塩基対程度と比較的短く揃っているようにプライマーの間隔を設定する。
(2)PCRの一般的な常識にあるように、プライマーは、合成費用がかさまない30塩基程度までの長さに設計する。
(3)ヒトゲノムなどを増幅するときは、プライマーの特異性ができるだけあがるように、BLASTなどで相同部位がないかを調査して選別する。
全ての鋳型に対して、このような基準を満たすプライマー配列を設計することは非常に困難であった。すなわち、産物長が制限されていること、およびプライマーの長さが制限されていることから、適切なプライマーを選択する自由度が制限されていた。このようなプライマー選択の制限により、一回の設計で全ての鋳型に対するPCR産物を得られないことも多かった。一旦マルチプレックスPCR法のためのプライマーを設計しても、全ての鋳型に対するPCR産物を得ることができなければ何度も実験で選び直すことが必要であるため、従来のマルチプレックスPCR法のためのプライマー設計は、非常に困難なものであった。
また、これまでにもマルチプレックスPCRに対して様々な試みがなされており、例えば、DMSOを添加、KCl濃度の変更、プライマーのTm に応じてプライマーの濃度を変化させるなどが挙げられるが、シングルプレックスで動作するプライマーセットを用いても、マルチプレックスPCR法ではしばしば失敗し、プライマー設計の成功率が低かった。また、マルチプレックスPCR法を成功させるために特殊な蛋白質、添加剤を加える必要があった。
特開平8-52000号公報 特開平8-103300号公報
上記事情に鑑み、本発明の目的は、プライマー設計が容易であり、また増幅産物が得られる確実性が高い効率マルチプレックスPCR法を提供することである。
本発明者らは、マルチプレックスPCR法の失敗の原因はクロスハイブリダイゼーションと増幅効率のばらつきであると予想した。従来のプライマー設計では、クロスハイブリダイゼーションの抑制に主眼がおかれ、増幅効率のばらつきは考慮されていなかった。そこで、この点に着目し、「増幅効率のばらつき」の主因は、「プライマーと鋳型のハイブリダイゼーション効率のばらつき」であると仮定し、増幅効率のばらつきを抑制したマルチプレックスPCR法プライマーの設計を試みた。
具体的には、マルチプレックスPCR法のプライマーの設計において考慮するべき重要な点を以下の二点に定めて、新たなマルチプレックスPCR法を開発した:
1. クロスハイブリダイゼーションの抑制、すなわちプライマーの特異性の向上;
2. 増幅効率の均一化、すなわちプライマーと鋳型のハイブリダイゼーション効率の向上。
すなわち、本発明は、マルチプレックスPCR法であって、
1千塩基以下の長さの増幅産物を生成するプライマーの位置で、
長さが30塩基以上のプライマーを使用することと、
各プライマーのハイブリダイゼーション効率が90%以上である温度のうち、最も高い温度でアニーリングさせることと、
3分〜10分間の長時間アニーリング・伸長反応を行うことと、
を特徴とするマルチプレックスPCR法を提供する。
また、本発明は、上記記載の方法であって、
前記プライマーおよび標的DNA鎖を混合して熱変性させることと、
前記プライマーのTm値よりも低い温度において、前記プライマーをテンプレートにアニーリングさせることと、
3分〜10分間の長時間アニーリング・伸長反応を行うことによって、前記相補的なDNAを合成させることと、
の工程を含むことを特徴とするPCR増幅方法を提供する。
さらに、上記記載の方法であって、
前記プライマーは、長さが30〜60塩基である方法を提供する。
さらに、上記記載の方法であって、
前記プライマーは、長さが32〜50塩基である方法を提供する。
さらに、上記記載の方法であって、
前記プライマーは、長さが35〜45塩基である方法を提供する。
さらに、上記記載の方法であって、
前記アニーリング・反応は、4分以上行われる方法を提供する。
さらに、上記記載の方法であって、
前記アニーリング・反応は、6分間〜10分間行われる方法を提供する。
さらに、上記記載の方法であって、
前記アニーリング温度は、Visual OMP(DNA Software 社)によって予測される評価値(Q-Score)に基づいて、850以上の評価値(Q-Score)のハイブリダイゼーション効率と予測されるプライマーのTm以下である方法を提供する。
以下、本発明のマルチプレックスPCR法について詳細に説明する。
本発明のマルチプレックスPCR法は、通常のPCRにおける一般的な常識にあるようなプライマーの長さ(例えば30塩基未満)よりも長いプライマーを使用することを特徴とする。このようなプライマーデザインにより、プライマーのハイブリダイゼーション効率を均一にすることができると考えられる。これと同時に、プライマーの長さを長く設計することによって、プライマーの特異性を高めることができる。従って、たとえば1000塩基のような長大な塩基が混ざっている試料であっても、アニーリング効率を均一にすることによって特異的にマルチプレックスPCR産物を得ることができる。また、ヒトゲノムのような複雑な配列や類似配列を多く含む試料であっても、目的の産物を増幅効率を揃えながら特異的に増幅することができると考えられる。
本発明のマルチプレックスPCR法に使用されるプライマーの長さは、クロスハイブリダイゼーションを回避するために十分な長さであることが必要であり、一般的な常識の範囲よりも長い。プライマーの長さは、たとえば30〜60塩基、好ましくは32〜50塩基、さらに好ましくは35〜45塩基程度の長さである。このように長いプライマーデザインの場合、通常プライマーのTm値は、短いプライマーよりも高くなる。
また、本発明のマルチプレックスPCR法に使用するプライマーは、増幅する鋳型配列に応じて種々の配列でデザインすることができる。従来、マルチプレックスPCR法に使用するプライマーは、PCR産物を300塩基までとしたり、増幅産物の長さが揃うようにデザインする必要があったが、本発明のマルチプレックスPCR法では、増幅される産物の長さが限定されない。従って、プライマーのデザインの選択範囲が増大することとなり、従来のマルチプレックスPCR法では不可能であったプライマーセットをデザインすることもできる。
プライマーは、たとえば以下の実施例に示したように、鋳型およびプライマーの二次構造を予測し、ハイブリダイゼーション効率を均一にしてマルチプレックスPCR用プライマーのデザインを行うことができる。このようなデザイン、二次構造予測、ハイブリダイゼーション効率の計算は、たとえばVisual OMP(DNA Software 社)を使用しておこなうことができる。すべてのプライマーにおいてハイブリダイゼーション効率を100 %近くにするためには、たとえば以下のように設計パラメーターを定めて最適な配列を選択することができる:プライマー長 30〜45mer;プライマーの設計Tm 70℃〜100℃。その他の設計パラメーターに関してはプライマー設計パラメーターとPCRの相関を解析した結果に基づいて定めることができる。上記したデザイン法の他、当業者であれば、上記のような長い配列であって、所望の鋳型を増幅することができるプライマーを容易にデザインすることができるであろう。
次に、上記プライマーを使用して、標的核酸の増幅工程を行う。
ここで、本明細書において、「核酸」には、cDNA、ゲノムDNA、合成DNA、mRNA、全RNA、hnRNA、合成RNAを含む全てのDNA及びRNAを意味するものとする。検出又は定量すべき前記標的核酸は、任意の配列を有する任意の核酸であり得るが、遺伝病の原因遺伝子、癌関連遺伝子、又はウイルス由来の核酸など疾病のマーカーとなり得る核酸は、とりわけ好ましい標的核酸である。それ故、前記試料には、血液、尿、唾液等の体液が含まれるが、体液以外の任意の試料を使用し得る。試料が固体であれば、酵素処理、界面活性剤又は有機溶媒の添加等の適切な方法で液体に溶解させればよい。上記の他にも、本方法の実施に当たって標的核酸は、随意に変更することができる。例えば細胞を株化して大量培養したり、抹消血を多めに取得したりすることで本方法に必要なヒトゲノムDNAを大量に調製することにより、直接ゲノムDNAから検出反応を始めることができる。また、これに代わって、少量のゲノムDNAを取得し、アマーシャムバイオサイエンス社の試薬キットGenomiPhiのようなWGA法(Whole Genome Amplification )で、非特異的にゲノムDNAを増幅した試料から検出反応を始めてもよい。また、PCR法や、マルチプレックスPCR法、アシンメトリックPCR法のようなプライマーを用いて特定の配列を増幅したものから検出反応を始めてもよい。特に、本発明の方法をSNP特異的配列を検出するために使用する場合、標的核酸は、ゲノムDNAなどであることが想定されるが、この場合は、予め標的のSNPを含む領域をPCRなどで増幅しておいてもよい。そのほかの酵素的に増幅する方法によりそれぞれ得られた試料は、2重鎖試料の場合は、95℃まで加熱してから4℃に急冷して1本鎖化したり、塩濃度のきわめて低い溶液中で95℃まで加熱し断片化する、また、超音波で断片化する、制限酵素で切断する等の1本鎖化、断片化操作を加えてから検出操作してもよい。
標的核酸の増幅工程では、まず上記プライマー、標的核酸、および適切な反応溶液を混合して熱変性させる。本工程は、一般的なPCRの条件を使用して行えばよい。たとえば、各サイクルの前にプレ加熱による変性として94℃で2分、また各サイクルの変性工程として、94℃で30秒行うことが好ましい。
また、増幅工程に使用する反応溶液は、一般的なPCR反応溶液を使用することができ、市販のキットを使用することもできる。たとえば、以下の実施例に示したように、酵素: AccuPrime II (Invitrogen)、バッファー: AccuPrime II master mix、プライマー それぞれ0.1μM 、鋳型 DNA: 5ng、反応体積: 20μLとすることができる。
次に、熱変性により生じた1本鎖核酸にプライマーをアニーリングさせる。本発明のマルチプレックスPCR法は、上記のようにデザインしたプライマーのTm値よりも比較的低い温度でアニーリングさせることを特徴とする。特に、従来考えられているよりも有意に低い温度でアニーリングさせることが好ましい。これにより、ハイブリダイゼーション効率が高くなり、いずれの鋳型に対しても、プローブのハイブリダイゼーション効率を高くすることができると考えられる。従って、従来のマルチプレックスPCR法では、増幅されなかった断片を増幅することができ、増幅効率も高くなる。
プライマーのTm値は、当該技術分野において周知の方法によって予測されるTm値であり、たとえば上記Visual OMP(DNA Software 社)などによって予測されるTm値である。また、本発明のマルチプレックスPCR法に使用するプライマーは、その長さが長いので、比較的高いアニーリング温度であっても、プライマーのTm値からは有意に低い温度となる。通常、アニーリング温度を下げすぎるとプライマーの非特異的なアニーリングが起こりやすくなり、非特異的増幅により標的位牌列の増幅が阻害されてしまうが、本発明に使用するプライマーは、従来のプライマーよりも十分な外為アニーリング効率が高く、増幅効率がよいと考えられる。たとえば、以下の実施例に使用したプライマーにおいても、最も低いTmでも70.0℃であるため、アニーリング温度は、68℃であっても十分に低い温度となる。
次に、ポリメラーゼによって相補鎖を合成する。本発明のマルチプレックスPCR法は、通常の伸長時間と比較して長時間の伸長反応を行うことを特徴とする。伸長反応は、たとえば3分、4分、5分、および6分以上10分未満、5分以上8分未満、好ましくは、約6分である。したがって、本発明のマルチプレックスPCR法に使用する酵素は、長時間活性が持続するものが好ましい。また、本発明のマルチプレックスPCR法に使用するプライマーは、その長さが長いので、比較的高いアニーリング温度であるため、アニーリングをさせると、伸長反応が進行する温度になる場合もある。このような場合は、アニーリング温度と伸長反応温度を同じにすることにより、両者を同時進行させるシャトルPCRにすることもできる。
このように、本発明のマルチプレックスPCR法は伸長時間が長いので、増幅産物が長いものであっても十分に増幅反応を進行させることができる。従って、従来のマルチプレックスPCR法のように増幅産物の長さが同じでなくても、本発明のマルチプレックスPCR法によれば、異なった増幅産物の全てについて均一に増幅することができる。
本発明のマルチプレックスPCR法は、上記のとおり、通常のPCRにおける一般的な常識にあるようなプライマーの長さ(例えば30塩基未満)よりも長いプライマーを使用すること、通常の伸長時間と比較して長時間の伸長反応を行うことを除き、上記の工程に限定されることなく、従来のPCR法と同じ工程で行うことができる。たとえば、DNA鎖の熱変性の工程やポリメラーゼによる相補鎖の合成工程は、増幅する鋳型に応じて、一般的な反応条件で行うことができる。考慮すべき反応条件としては、たとえば各工程の温度および時間、反応液のバッファー組成と構成成分の濃度などが挙げられる。また、使用する反応条件は、市販の酵素を使用する場合であれば、販売者の説明書に従った条件を使用することができる。上記した本発明のマルチプレックスPCR法に特有の条件を除く、このような温度および時間、反応液のバッファー組成と構成成分の濃度などは、当業者であれば容易に選択することができるであろう。
本発明の実施態様としては、以下の形態が考えられる。特に、本発明の検出方法の用途、場所には次のものが考えられる。例えばヒト遺伝子型と疾患の関連性の解明、薬剤感受性の検出、遺伝子制御領域の蛋白結合性の変化の検出、対象生物をヒトから別の生物に変えての遺伝子多型の分子生物学的な解析などの研究用途がある。これら研究は、大学、企業等の研究所、研究室で行われるであろう。また、遺伝子と特定の疾患との関連性、罹患リスクや、薬剤感受性が明らかにされた時点で、病院の検査センターでの治療方法を選択するための検査や人間ドックでの予防のための診断、副作用の小さい抗ガン剤の選択のための薬剤感受性検査等、医療用に使えると考えられる。
本発明の方法を実施するための形態としては、ユーザー自らが本方法を実施するための研究用および診断用遺伝子多型検出試薬キットとしての実施、自動的に処理する自動反応装置による実施、並びにユーザーや被検者に代わっての受託研究または検査センターでの診断等の実施が考えられる。
以下、SNPのタイピングを行うためにマルチプレックスPCR法を例にして、本発明のマルチプレックスPCR法を行うための条件検討および解析結果を示す。
実施例1:マルチプレックスPCR法によるSNP配列増幅の検討
(1)検出対象とするSNPの塩基配列
検出対象とするSNPの塩基配列は、東大医科学研究所の整備した日本人のSNPのデータベースJSNP(http://snp.ims.u-tokyo.ac.jp/index_ja.html)から得た。それぞれのアクセション番号は、IMS-JST164838(SNP#3), IMS-JST058048(SNP#4), IMS-JST005689(SNP#5), IMS-JST054229(SNP#6), IMS-JST001164(SNP#7), IMS-JST017558(SNP#8), IMS-JST175404(SNP#9), IMS-JST054214(SNP#10), IMS-JST011815(SNP#11), IMS-JST156026(SNP#12)であり、合計10個の SNPである。以後、名前が長いために()内の略番号で記すことにする。検出したサンプルは(財)ヒューマンサイエンス振興財団のヒューマンサイエンス研究資源バンクが頒布(http://www.jhsf.or.jp/bank/psc.html)しているヒト抹消血細胞を株化したものから抽出したヒトゲノムDNAである。購入したサンプルはPSCDA0503, PSCDA0328, PSCDA0719, PSCDA0785, PSCDA0415, PSCDA0716, PSCDA0693, PSCDA0117なる番号であった。以降それぞれ数字部分の503, 328, 719, 785, 415, 716, 693, 117で呼ぶことにする。
Figure 2006320217
Figure 2006320217
表2は、試料のサンガー法によるシーケンシング結果であり、このシーケンシングにはアプライド・バイオシステムズ社のPRISM 3100Genetic Analyzerを用い、三井情報開発のシーケンサー出力波形解析ソフトウェア波平を使用して各SNPのアレルを決定した。以下、それぞれのゲノム試料を処理した方法について具体的に記す。
(2)プライマーのデザイン
上記10種のSNPタイピングを行うためのマルチプレックスPCR法で使用するプローブは、以下のようにデザインした。
近年、計算機の発達とDNAの熱力学的なパラメーターの決定により、精度高く二次構造が予測できるようになってきた。そこで、ハイブリダイゼーション効率を均一にし、テンプレート、プライマーの二次構造を予測したマルチプレックスRPCR用のプライマーの設計を行った。
ハイブリダイゼーション効率、二次構造予測の計算には、Visual OMP(DNA Software社)を使用した。このソフトウエアは、DNAの濃度や溶液の塩濃度、湿度などを入力すれば、DNAのハイブリダイゼーション効率を算出することができる。様々なパラメーターを試したところ、PCRバッファ中、PCRのプライマー濃度でのハイブリダイゼーション効率は、この値を全てのプライマーで100%にするためには、プライマー長30〜40mer、プライマーの設計Tm70〜100℃として計算するのが適当だと分かった。上記Visual OMPでの選択においては、他の設計パラメーター、プライマーと、プライマーのハイブリダイズするテンプレートに二次構造予測も行い、特に、選んだプライマー配列が真にハイブリダイズしやすいかを予測し、より不安定な分子内構造をとる、ハイブリダイゼーション効率の高いプライマー配列を選択した。
上記のマルチプレックスPCR プライマー設計の重要な指針としたハイブリダイゼーション効率に関する設計結果を図1に示す。プライマーの鎖長を長くしたMTLシリーズでは、ハイブリダイゼーション効率が、どのSNP部位においても100%近くになることが予想された(図1および表3)。
Figure 2006320217
(3)マルチプレックスPCR法の条件検討結果
アニーリング温度、プライマー濃度、酵素系、サーマルサイクルに関して、条件検討を行い、最適なマルチプレックスPCR条件を探索した。その結果、8/10 SNPsまで増幅産物が観測され、明らかに増幅されていないSNP は無くなった。最適化された反応条件を以下に示す。
3.1. 条件検討結果
1.PCR 条件(現在の最適化条件)
溶液条件
酵素: AccuPrime II (Invitrogen)
バッファー: AccuPrime II master mix
プライマー それぞれ0.1μM
鋳型 DNA: 5ng
反応体積: 20μL
2.サーマルサイクル
プレ加熱: 94 ℃ 2 min
変性: 94 ℃ 0.5 min
アニーリングおよび伸長: 68 ℃ 6 min
サイクル数: 40
貯蔵: 10 ℃
3.2. 条件検討過程
条件検討過程を示す。条件検討は以下の順に進めた:
1. シングルプレックスでのPCR
2. アニーリング温度検討
3. プライマー濃度検討
4. 酵素・DMSO 濃度検討
5. サーマルサイクル検討
まずシングルプレックスでPCR を行い、プライマーが動作することを確認した。結果を図2に示す。10個のSNP部位の全てにおいて、増幅が確認されたが、同じPCR条件ではマルチプレックスPCRはできなかった。
次に、アニーリング温度を検討するために、20種類のプライマーを全て添加し、60℃〜70℃の範囲で温度グラディエントをかけて最適なアニーリング温度を検討した。結果を図3に示す。アニーリング温度を変更しても、電気泳動像の変化は乏しく、今回は、67.5℃を最適な温度とした。プライマーの鎖長が30〜45塩基であり、Tmが70℃以上であるため、60〜70℃の範囲の実験では変化が見られなかったと考えられる。
また、同時にDMSO の添加も行った。DMSOの添加により増幅が改善されるSNP部位も見られたが、DMSNOの添加に伴い増幅が弱くなる部位もあり、必ずしもDMSOの添加により均一な増幅が得られないことが明らかになった。図3にアニーリング温度検討結果を示してある。
さらに、プライマー濃度を0.1〜0.4μMの範囲でふり、最適な条件を探索した。その結果、0.1μM で均一で強い増幅が認められた(図4)。
酵素系によりPCR の反応の結果は大きな影響を受ける。そこで、AmpliTaq Gold Master Mix (ABI), AccuPrime Super Mix I/II (Invitrogen), HotStar Taq(Qiagen)の4 種類の酵素で反応を行い比較を行った。また、AmpliTaq Gold Master Mix の系では同時にDMSO濃度を変化させて影響を確認した。結果を図5に示してある。
最も良い結果を示した酵素系は、AccuPrime Super Mix I/IIであり、長鎖の産物量が多く得られたAccuPrime Super Mix IIを最適とした。他の酵素系では、AmpliTaq Gold Master Mixは、全体的に増幅量が少なく、DMSOを添加しても均一な増幅結果は得られなかった。また、HotStar Taqは強い増幅結果が得られたが、450塩基付近のバンドが欠損しており、全ての部位を増幅することができなかった。
最後にAccuPrime Super Mix IIを用いてサーマルサイクルの検討を行った。67.5℃のアニーリング温度は、AccuPrime Super Mixの至適伸長温度の68℃に近いため、68℃のシャトルPCRを行うこととし、伸長反応時間の検討を行った。結果を図6に示してある。
シャトルPCR を用いて伸長時間を十分に長く取ると均一に強く増幅されることがわかった。そこで、伸長時間は、十分な長さの伸長時間であると考えられる6分間に決定した。電気泳動上には、バンドが7本見え、バイオアナライザーでは8本まで観測できた。分解できていないピークがあるが、明らかに増幅されていないSNPは無くなった。(分解能のカタロ
グ値は、100〜500bpの時±5 %, 500〜1000bp の時±10%)
(4)検討の結論
・DNAコンピューター技術を用いた10SNP 解析用のマルチプレックスPCR プライマーの設
計に成功した。
・長い鎖長(30-45b)のプライマーを用いることで、ハイブリダイゼーション効率の均一化
が図れることが明らかになった。
・マルチプレックスPCR プライマーの設計にはハイブリダイゼーション効率の均一化が
有効であることが示唆された。
実施例2:マルチプレックスPCR法を利用したSNPの検出
以下、本発明のマルチプレックスPCR法を使用して、ゲノムDNAからSNPを含む領域を増幅し、DNAコンピューター技術を用いて該SNPを検出した例についての詳細を説明する。
ここで、DNAコンピューター技術を用いてSNPを検出するための方法の概要を図11を参照しながら説明する。本解析方法には以下のような分子が必要である。従って、本解析に先駆けて、以下の分子を調製する。当該調製はそれ自身公知の方法により行うことが可能である。
溶液に含まれる標的核酸を検出するために図1に示す2つのプローブを準備する。一方は、標的核酸の一部分の配列(部分配列)に相補的な配列を含み且つ3’端にビオチンなどで標識したオリゴヌクレオチドのコモンプローブである。上記コモンプローブの標識は、ビオチンだけでなく、ビオチンや抗体など、特定の物質と特異的に結合し得る任意の物質であってもよい(たとえば、ビオチンであれば、ストレプトアビジンと特異的に結合できる)。
他方のオリゴヌクレオチドは、人工的に設計されたSD、D1_iおよびEDなる塩基配列からなるタグを5’端側に有し、標的核酸の一部分の配列に相補的であり且つ上記コモンプローブの標的に相補的な配列に隣接するような配列を有するクエリプローブを3’端側に含む。該プローブは、本明細書においてタグ核酸と呼ぶ。また、上記人工的に設計した塩基配列は、当該相補的な配列よりも5’末端側に配置される。また、上記コモンプローブの標的cDNAに相補的な配列の5’端はリン酸化されている。また、上記タグ核酸のタグ部分およびクエリプローブ部分は、その一部または全てが2本鎖になったオリゴヌクレオチドであってもよい。このとき、2本鎖のオリゴヌクレオチドを構成するもう一方の鎖は、SD、D1_iおよびEDの配列に相補的な配列をもつオリゴヌクレオチドである。上記タグ核酸のクエリプローブ部分およびコモンプローブは、溶液中に存在するまたは存在しないことを検出したい標的遺伝子のそれぞれについて任意に設計することができる。またこのとき、D1_iの配列は標的ごとに異なる配列になるように設計し、SDおよびEDはすべてのタグ核酸で共通する配列になるように設計する。これらの人工的な配列は、任意に設計可能であるので、所望するTm値を設定することが可能である。従って、安定に且つミスハイブリダイゼーションの少ない反応を行うことが可能である。たとえば、上記人工的な配列として、正規直交化配列を使用することが好ましい。正規直交化配列とは、核酸分子の配列であって、そのTm値が均一であるもの、即ちTm値が一定範囲内に揃うように設計された配列であって、核酸分子自身が分子内(intramolecular)で構造化して、相補的な配列とのハイブリッド形成を阻害することのない配列であり、尚且つこれに相補的な塩基配列以外とは安定したハイブリッドを形成しない塩基配列を意味する。すなわち、1つの正規直交化配列群に含まれる配列は、所望の組み合わせ以外の配列間および自己配列内において反応が生じ難いか、または反応が生じない。また、正規直交化配列は、PCRにおいて増幅させると、たとえば上述のクロスハイブリダイゼーションのような問題に影響されずに、当該正規直交化配列を有する核酸分子の初期量に応じた量の核酸分子が定量的に増幅される性質を有している。上記のような正規直交化配列は、H. Yshida and A. Suyama, "Solution to 3-SAT by breadth first search", DIMACS Vol.54 9-20(2000)および特願2003-108126に詳細が記載されている。これらの文献に記載の方法を使用して正規直交化配列を設計することができる。簡単には、予め無作為に塩基配列を複数作出することと、それらの融解温度の平均値を求めることと、その平均値の±t℃で制限される閾値を基に候補配列を得ることと、独立して反応する配列であるか否かを指標に得られた候補配列から正規直交化配列群を得ることを具備する方法によって作製することができる。
上記核酸に加えて、SD配列と同じ配列を有するプライマー1と、5’端に標識をしたED配列に相補的な配列を有するプライマーが必要である。
本方法の第1工程では、標的核酸の存在を検出又は定量すべき試料と、タグ核酸およびコモンプローブを混合して、標的核酸にタグ核酸のクエリプローブ部分およびコモンプローブをハイブリダイズさせる工程である。
本方法の第2工程では、対応する各標的核酸にハイブリダイズしたタグ核酸のクエリプローブ部分およびコモンプローブを連結する工程である。ハイブリダイゼーションを行うと、クエリプローブ部分およびコモンプローブは、対応する標的核酸に結合するので、リガーゼ等を作用させてライゲーション反応をおこなうことにより、連結部を介してクエリプローブ部分およびコモンプローブを連結させることが可能となる。
第3の工程では、連結されたタグ核酸およびコモンプローブを回収する。たとえば、コモンプローブをビオチンで標識した場合、ストレプトアビジンを表面に結合した磁気ビーズを使用することにより、コモンプローブのビオチン標識を介して連結オリゴヌクレオチドを抽出することができる。
第4の工程では、対応する標的核酸から、連結されたタグ核酸およびコモンプローブを解離させる。この操作によって、最初の溶液に標的核酸が存在していれば、それに対応するD1_i配列を含んだオリゴヌクレオチドが抽出される。
続いて、第5の工程では、1本鎖の増幅産物が得られる増幅方法を使用して、解離した連結オリゴヌクレオチドのタグ部分をテンプレートとした増幅反応を行う。
次いで、第6の工程では、増幅されたタグ部分を検出する。
具体的には、本発明の方法によるタイピングは次の手順でおこなった。
(1) ゲノムDNAの増幅
(2) エンコード反応(コモンプローブ、タグ核酸、および標的核酸を混合してハイブリダイズさせること、タグ核酸およびコモンプローブの連結オリゴヌクレオチドを作製すること、並びに連結オリゴヌクレオチドを回収することを含む)
(3) 増幅反応
(4) 検出
(1)SNP領域の増幅
実施例の検出では最初に、ゲノムDNA 5ngから標的のSNPを含む領域をマルチプレックスPCRにて増幅した。この操作は次の手順でおこなった。
このPCR反応に用いる溶液にはマスターミックスとして50回分の反応液を作成した。液の組成は次のとおりであり、プライマー配列は、表4のとおりである。
Figure 2006320217
反応液には、Invitrogen社の製品であるAccuPrime Super Mix IIを用いた。
AccuPrime SuperMix II (Invitrogen社製) 500μl
フォワードプライマー 10種 (各50 μM) 各2μl
リバースプライマー 10種 (各50 μM) 各2μl
合計 540μl
このマスターミックス10.8 μlにゲノムDNA 5 ngを加え、さらに20 μlになるまで超純水を加えて、反応液が完成する。反応のための熱サイクルは次のとおりである。サーマルサイクラーにはMJリサーチ社のPTC-200を用いた。
1.プレ加熱 94℃ 2分
2. 変性 94℃ 30秒
3. 伸長 68℃ 6分 [2, 3を40サイクル]
4. 最終加熱 68℃ 10分
5. 保存 4℃ 温度固定
以上により標的SNPを含むゲノムのPCR産物が得られた。
(2)エンコード反応
次にエンコード反応をおこなった。エンコード反応は、コモンプローブ、タグ核酸、および標的核酸を混合してハイブリダイズさせること、タグ核酸およびコモンプローブの連結オリゴヌクレオチドを作製すること、並びに連結オリゴヌクレオチドを回収することを含む。
反応50回分のマスターミックスの組成は次のとおりである。リガーゼにNew England Biolab社のTaq リガーゼを用いたので、付属の10×バッファーを使用した。コモンプローブ、タグ核酸の配列は表5および表6のとおりである。
Figure 2006320217
Figure 2006320217
タグ配列は各23塩基の長さであり、プライマー配列1(SD)、各アレルを識別するための配列(D1_i)、プライマー配列2(ED)の順に5’端から配置した。タグ核酸の配列は、正規直交化配列である。
コモンプローブ(100nM) 10種 各5μl
タグ核酸(100nM) 20種 各5μl
10×Taq DNA リガーゼ 反応バッファー 150μl
合計 300μl
最初のゲノムのPCR産物は2重鎖なのでそのままではリガーゼ反応に適さない。よって、変性をおこなう。PCR反応液を冷凍保存して一度酵素活性をなくしたあとの溶液を次の手順で変性した。最初95℃で5分間加熱し、変性させた。変性後、ただちに氷中に入れ、変性したDNAの鎖が分子内構造をとることで再会合しにくい状態にした。
これをもとに次の組成のエンコード反応液を作製した。用いたTaq リガーゼはNew England Biolab社製である。超純水はミリポア社のMilli-Q Synthesisにより作製した。
ゲノムPCR産物 1μl
エンコード マスターミックス 6μl
Taq DNA リガーゼ 0.5μl
超純水 22.5μl
合計 30μl
このエンコード反応液を次の温度で反応させた。加熱に用いたのはサーマルサイクラー、PTC-200である。
1. リガーゼ反応 58℃ 15分
2. 保存 4℃ 温度固定
これによりエンコード反応のうち、リガーゼによる連結反応を終わる。次に、ストレプトアビジン磁気ビーズに、ビオチン化コモンプローブおよび、連結されたタグ核酸とコモンプローブをとらえる操作をおこなった。溶液組成は次のとおりである。
エンコード産物 30μl
2×B&Wバッフー 16.5μl
ストレプトアビジン磁気ビーズ 1μl
ストレプトアビジンで表面をコートした磁気ビーズは、Dynal社のM-280磁気ビーズで、このビーズの説明書に従い、次の組成の溶液をB&Wバッファーとして用いた。
Tris-HCl(pH 7.5) 10 mM
EDTA 1 mM
NaCl 0.2 M
ストレプトアビジン磁気ビーズ(以降磁気ビーズと呼ぶ)は、出荷された防腐剤を含む原液から1μlをとり、原液をB&Wで置換して再び1μlにしたものである。このようにして作製した溶液を磁気ビーズが溶液によく分散するようにして室温下で、15分間振盪する。
振盪が終了したら、磁気ビーズの洗浄をおこなう。洗浄は次の手順でおこなった。
1.磁石にて磁気ビーズを凝集させ、B&Wバッファーをのぞく。
2.室温下で100μlの1×B&Wバッファーに再分散し、ピペッティングした後、磁石で磁気ビーズを凝集させB&Wバッファーをのぞく洗浄操作を2回おこなう。
3.室温下で0.2NのNaOH水溶液100μlに再分散し4分間振盪機で振盪する。
4.磁石で磁気ビーズを凝集させNaOH水溶液をのぞく。
5.室温下で100μlのTEで、2の要領で2回洗浄する。
この洗浄操作で、非特異的に付着したDNAがのぞかれた磁気ビーズが得られた。これをエンコード済み磁気ビーズと呼ぶ。
次に、増幅反応でアシンメトリックPCRをおこない、タグの増幅と標識をおこなった。これもまた50回分のマスターミックス溶液を作製し、組成は次のとおりである。用いたプライマーは表7の通りである。
Figure 2006320217
プライマー1はSDに相当する配列であり、プライマー2は、EDに相当する配列であり、Cy5-cEDとは、EDの相補鎖に相当する配列を有し5’端に蛍光色素Cy5を標識したものである。今回の実施例ではSD:Cy5-cEDの量比は1:5になっているが、1:10でもよく、アシンメトリックPCRとして蛍光標識した鎖が1本鎖の状態で得られるならば濃度比は適当に選んでよい。ポリメラーゼにタカラバイオ社のEx Taqを用いたため、作製に用いる10倍濃度バッファーとdNTP混合物はキットに付属のものを用いた。なお10倍濃度バッファーにはマグネシウムイオンを20mM含むタイプを使用した。プライマーは超純水で希釈した。ここで、もしサイクルエロンゲーションを行う場合は、片方の検出用標識のないプライマーの量を0とすればよい。
プライマーSD(10μM) 12.5μl
プライマーCy5-cED(10μM) 62.5μl
10×Ex Taq バッファー 250μl
dNTP混合物 200μl
超純水 62.5μl
合計 587.5μl
以上のマスターミックスを用いて、次の反応液を作製した。
アシンメトリックPCRマスターミックス 11.75μl
超純水 37.75μl
Ex Taq ポリメラーゼ 0.5μl
合計 50μl
溶液をのぞいたエンコード済み磁気ビーズにこの反応液を混ぜて、ビーズを分散させた。反応の熱サイクルは次のとおりである。サーマルサイクラーにはPTC-200を用いた。もしサイクルエロンゲーション法を用いるならば、サイクル数は30〜40サイクルが好ましい。
1. 変性 94℃ 1分
2. 変性 94℃ 30秒
3. アニーリング 65℃ 1分
4. 伸長 72℃ 1分 [2〜4を15サイクル]
5. 冷却 4℃ 温度固定
以上により増幅反応が完了した。ここで得られたものを標識PCR産物と呼ぶことにする。
最後に検出反応をおこなった。検出には、キャピラリアレイ(特開平11-75812)を用いた。キャピラリアレイはDNAマイクロアレイに似たハイブリダイゼーションで核酸を検出するデバイスであり、溝状の流路に沿ってプローブがスポットされている。今回使ったキャピラリアレイは1本の溝の中にタグ検出用のプローブが10点固定してあるもので、溝の容量は25μlであった。キャピラリはシリコンゴムの板に形成されており、プローブを直線状にスポットしたスライドガラスにシリコンゴムの粘着性を利用して貼り付けるものである。この溝の両端には溝の反対側の面に貫通する穴があけてあり、溝のある面をスライドガラス側に貼り付けても、それら貫通穴から試料液を注入・抜き取り出来るようになっている。プローブ固定用ガラススライドにはタカラバイオ社が発売するハッブルスライドを用い、プローブのスポッティングには日立ソフトウェアエンジニアリング社のSP-BIOを用いた。プローブDNAの配列は表8にあるとおりで、増幅反応で得られるタグの識別用配列に相補的な配列を使用した。
Figure 2006320217
事前にシリコンゴムはスライドガラスのスポットに合うように貼り付け、50℃に温めておいた。
標識PCR産物をこのキャピラリアレイにハイブリダイゼーションさせた。アシンメトリックPCR溶液中には磁気ビーズが残留しているので、これを吸わないように磁気ビーズを集めて上清をとった。
標識PCR産物 50μl
20×SSC 25μl
10% SDS 2μl
超純水 23μl
合計 100μl
このハイブリダイゼーション溶液を事前に50℃に温めておき、同様に温めておいたキャピラリアレイに25μl注入して50℃で30分間ハイブリダイゼーションした。ハイブリダイゼーション溶液が蒸発しないように超純水で湿らせたペーパータオルを敷いたタッパウェアに入れてハイブリダイゼーションをおこなった。続いて、洗いは次の手順でおこなった。
1.ピペットでハイブリダイゼーション液を抜き取る。
2.乾燥を防ぐためただちに1×SSCと0.2%SDSを成分とするウォッシング液を20μl注入する。
3.スライドガラスからシリコンゴム製の溝を外す。
4.スライドガラスを1×SSCと0.2%SDSを成分とするウォッシング液中にて室温下で5分振盪する。
5.続いて0.1×SSCにて室温下で10分スライドガラスを振盪洗浄する。
6.エアスプレーまたは、遠心機にてスライドガラスを乾燥させる。
以上の手順でハイブリダイゼーション反応を終了した。つづいてマイクロアレイスキャナによって蛍光検出をおこなった。スキャナとしてはAxon社のGenePix 4000を使用し、Cy5検出波長にて検出した。レーザー出力は100%で、PMTゲインは750であった。取得した蛍光イメージは装置に付属のソフトウェアで解析し、各アレルの溶液中の存在量を検出した。この数値結果が表9にあるとおりで、各SNPについてすべての8試料のタイピング結果をアレイ検出強度の散布図で示したのが図8〜10である。
Figure 2006320217
なお、719番試料のSNP#7のTアレルの強度がキャピラリスポットの形状が悪かったためにバックグラウンドがシグナルを上回り蛍光検出値がマイナスと計算されたが、わずかなマイナスの値(-2)だったため散布図を描きやすくするため検出値を0とした。
以上の実験により得られたデータを、タイピング基準に従ってタイピングした。タイピングは、あるアレルの強度が対立するアレルの強度の、3倍以上になっている場合をそのアレルのホモ、それ以外をヘテロと判定した。この結果、試料719番のSNP#4以外は、タイピング結果が全くサンガー法によるものと一致しており、正答率は、80分の79、すなわち98.75%であった。
ハイブリダイゼーション効率の予測結果を示すグラフ。 シングルプレックスでのPCR結果を示す電気泳動写真。 アニーリング温度検討結果を示す電気泳動写真。 プライマー濃度の検討結果を示す電気泳動写真。 酵素・DMSO濃度の検討結果を示す電気泳動写真。 サーマルサイクルの検討結果を示す電気泳動写真。 実施例に使用した方法の概要を示す模式図。 本発明の方法を使用して各SNPについてのタイピング結果を示すアレイ検出強度の散布図。 本発明の方法を使用して各SNPについてのタイピング結果を示すアレイ検出強度の散布図。 本発明の方法を使用して各SNPについてのタイピング結果を示すアレイ検出強度の散布図。

Claims (8)

  1. マルチプレックスPCR法であって、
    1千塩基以下の長さの増幅産物を生成するプライマーの位置で、
    長さが30塩基以上のプライマーを使用することと、
    各プライマーのハイブリダイゼーション効率が90%以上である温度のうち、最も高い温度でアニーリングさせることと、
    3分〜10分間の長時間アニーリング・伸長反応を行うことと、
    を特徴とするマルチプレックスPCR法。
  2. 請求項1に記載の方法であって、
    前記プライマーおよび標的DNA鎖を混合して熱変性させることと、
    前記プライマーをテンプレートにアニーリングさせることと、
    3分〜10分間の長時間アニーリング・伸長反応を行うことによって、前記相補的なDNAを合成させることと、
    の工程を含むことを特徴とするPCR増幅方法。
  3. 請求項1に記載の方法であって、
    前記プライマーは、長さが30〜60塩基である方法。
  4. 請求項1に記載の方法であって、
    前記プライマーは、長さが32〜50塩基である方法。
  5. 請求項1に記載の方法であって、
    前記プライマーは、長さが35〜45塩基である方法。
  6. 請求項1に記載の方法であって、
    前記アニーリング・伸長反応は、4分以上行われる方法。
  7. 請求項1に記載の方法であって、
    前記アニーリング・長反応は、6分間〜10分間行われる方法。
  8. 請求項1に記載の方法であって、
    前記アニーリング温度は、Visual OMP(DNA Software 社)によって予測される評価値(Q-Score)に基づいて、850以上の評価値(Q-Score)のハイブリダイゼーション効率と予測されるプライマーのTm以下である方法。
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