JP3799971B2 - チャイルドシートのアンカ構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、チャイルドシートのアンカ構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
リヤフロアパネルのリヤシートの後部下方には、サスペンション入力に対抗するねじれ剛性を高めるためのサポートパネルが車幅方向にわたって設置されている。そして、このサポートパネルに、チャイルドシート保持用のアンカが取付けられている。このアンカは、所定太さの丸棒をU字形に曲げた形状で、サポートパネルに固定される開放端側の固定部と、チャイルドシートのフックを係止する閉塞端側の係止部とから形成されており、係止部は、固定部に対して斜め上向きに曲折形成されている(類似技術として、特開平7−89384号公報参照)。
【0003】
前記係止部の先端が、チャイルドシートからの前向きの入力が加わる負荷入力点であり、この負荷入力点の位置は、シートクッション上に設定されたヒップポイントとの位置関係により決定される。つまり、ヒップポイントの位置が低ければ、係止部も短くて済むが、ヒップポイントの位置が高ければ、係止部を長くして先端をヒップポイントに近づける必要がある。
【0004】
前記アンカには、チャイルドシートから大きな入力が加わるため、その入力に対する対抗力を得るために、アンカには、強固な取付構造が採用されている。具体的には、アンカの固定部に、上側から補強板を設置すると共に、サポートパネルの裏側にも別の補強板を設け、両方の補強板をボルト・ナットにより締結することにより強力に取付けている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような従来の技術にあっては、アンカをボルト・ナットや複数の補強板を用いた特別な構造により、サポートパネルに固定していたため、部品点数及び重量の増加を招き、作業性及びコストの面で不利である。
【0006】
また、リヤシートのクッション性を高めるためにシートクッションを厚く形成すると、リヤフロアパネルに対して、ヒップポイントの位置が高くなり、その分、アンカの係止部を長くしなければならないため、チャイルドシートからの入力を受けた場合に、係止部が変形しやすくなる。係止部が変形すると、係止部の先端位置が変化するため、次にチャイルドシートのフックを係止させる作業が行いづらくなる。
【0007】
この発明は、このような従来の技術に着目してなされたものであり、簡単な構造でチャイルドシートからの入力に対する対抗力が得られ且つ係止部が変形しづらいチャイルドシートのアンカ構造を提供するものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の発明は、リヤシートの後部下方に位置するサポートパネルに、チャイルドシートを保持するフックを係止する係止部と、サポートパネルに固定される固定部とから成るアンカを取付けてなるチャイルドシートのアンカ構造であって、前記サポートパネルに、前記フックに加わる前側への入力に対抗するようにアンカの係止部を支えるフランジを立ち上げ形成した。
【0009】
請求項1記載の発明によれば、サポートパネルに前記フックに加わる前側への入力に対抗するフランジを立ち上げ形成しただけで、チャイルドシートからの入力に対する対抗力が得られるため、従来のような複雑な取付構造を採用する必要がなく、作業性及びコストの面で有利である。また、フランジにより、アンカの係止部を前記フックに加わる前側への入力に対抗して直接支えるため、リヤシートのヒップポイントが高い場合に、アンカの係止部を長くしても、係止部が変形しづらい。
【0010】
請求項2記載の発明は、フランジにおけるアンカの係止部を、前記フックに加わる前側への入力に対抗する部分にエンボス部を形成した。
【0011】
請求項2記載の発明によれば、フランジにエンボス部を形成したため、フランジの剛性が向上し、アンカの係止部を支える力が高まる。
【0012】
請求項3記載の発明は、エンボス部の左右両側にフランジに対して略直角な縦壁が形成されている。
【0013】
請求項3記載の発明によれば、エンボス部の左右両側にフランジに対して略直角な縦壁が形成されているため、フランジの剛性が更に向上する。
【0014】
請求項4記載の発明は、エンボス部がフランジからアンカの固定部に対応する部分まで形成されている。
【0015】
請求項4記載の発明によれば、エンボス部がフランジからアンカの固定部に対応する部分まで形成されているため、特にフランジとサポートパネルとの間の角部の剛性が向上する。更に、サポートパネルにおけるアンカの固定部に対応する部分が若干浮いた状態になるため、固定部を溶接する場合に、下の部材への熱の影響を小さくすることができる。
【0016】
請求項5記載の発明は、フランジの先端にサポートパネルのプレス成形方向に対して略直交する端末部を形成した。
【0017】
請求項5記載の発明によれば、フランジの先端にサポートパネルのプレス成形方向に対して略直交する端末部を形成したため、プレス方向と異なる方向へ移動するスライド型を用いることなく、その端末部を上型と下型で挟んで確実に切断(トリム)加工することができる。
【0018】
請求項6記載の発明は、アンカの固定部がサポートパネルに対して溶接されている。
【0019】
請求項6記載の発明によれば、溶接によりアンカの固定部をサポートパネルに固定したため、従来のように、ボルト・ナットや複数の補強板を用いる場合に比べて、部品点数の低減を図ることができる。
【0020】
請求項7記載の発明は、リヤシートのシートバック下端部を支持するモジュールバーがフランジの前方近接位置に配されている。
【0021】
請求項7記載の発明によれば、フランジの前方近接位置にモジュールバーが配されているため、万一、チャイルドシートからの入力により、アンカの係止部が前倒れ方向に変形しても、モジュールバーで受け止めて、それ以上の変形を防止することができる。
【0022】
【発明の実施の形態】
この発明の実施形態を図1〜図4に基づいて説明する。車体のリヤフロアパネル1の上には、リヤシート2が設置される。リヤシート2は、セパレート型のシートクッション3とシートバック4とから構成されている。シートクッション3は、リヤフロアパネル1上に取付けられ、シートバック4は、下端部のみ後述するサポートパネル5に支持され、上端部は、図示しないトランクルームとの区画壁となるシートバックパネル(図示せず)に支持される。
【0023】
このシートバック4は、モジュール型で、1本のモジュールバー6に対して、可動シートバック本体4aと、固定シートバック本体4bとが支持されている。可動シートバック本体4aは、一対のヒンジ7により前倒れ可能で、図示せぬシートバックパネルに形成した開口を介してトランクスルーを形成し、車室内側からトランクルーム内へ荷物を出し入れしたり、また、長いスキー等をトランクルーム内へ収納することができる。固定シートバック本体4bは、ブラケット8によりモジュールバー6に固定される。このように、2種類のシートバック本体4a、4bを1本のモジュールバー6に取付けてモジュール化し、一体として車体に取付けるため、両者間の位置関係を一定に保つことができる。
【0024】
そして、リヤフロアパネル1の後部に取付けられているのが、サポートパネル5である。このサポートパネル5は、図示しないリヤサスペンションから加わる上下方向の入力により、リヤフロアパネル1がねじれるのを防止するためのもので、車幅方向にわたって取付けられている。サポートパネル5は、剛性を高めるために、全体的に立体的形状をしているが、周辺部9は、リヤフロアパネル1との接合のために、平坦になっている。
【0025】
このサポートパネル5の下側の周辺部9に、4つのアンカ10が取付けられている。このアンカ10は、2つで1組で、リヤシート2上に装着される図示しないチャイルドシートを保持するために使用される。具体的には、シートクッション3とシートバック4との間から挿入されたフック11を係止している。
【0026】
このアンカ10は、太さ6ミリの金属丸棒をU字形に曲げた形状で、サポートパネル5の周辺部9にアーク溶接される固定部12と、斜め上向きに曲折形成された係止部13とから形成されている。係止部13の先端が、チャイルドシートからの前向き荷重が加わる負荷入力点であり、この負荷入力点の位置は、シートクッション3上に設定されたヒップポイントHとの位置関係により決定される。この実施形態では、シートクッション3がクッション性を重視した厚いものなので、ヒップポイントHの位置が高く、その分、係止部13も長く形成されている。
【0027】
そして、サポートパネル5における下側の周辺部9には、各アンカ10に対応する部位に、係止部13と同じ向きのフランジ14が立ち上げ形成されている。また、フランジ14の中央部から、サポートパネル5の固定部12に対応する部位にかけてエンボス部15が連続形成してある。このエンボス部15は、係止部13に対応する方が高く、固定部12に対応する方が低く形成されており、係止部13は、エンボス部15に当接している。エンボス部15の左右両側の縦壁16は、フランジ14に対して略直角である。
【0028】
更に、フランジ14の先端には、サポートパネル5自体をプレス成形する際のプレス成形方向P(図4参照)に対して略直交する端末部17が形成されている。これは、プレス成形方向Pに対して角度をもった係止部13だけで先端を終わらせると、その部分を上型と下型で挟んで確実に切断(トリム)加工することができず、切断のためにプレス方向と異なる方向へ移動するスライド型が必要となり、金型が複雑で高価になるからである。
【0029】
このようなフランジ14を有するサポートパネル5をリヤフロアパネル1に取付けた後に、モジュール型のシートバック4が取付けられるが、シートバック4を取付けた状態で、そのモジュールバー6は、フランジ14の前方近接位置に配される(図4参照)。
【0030】
この実施形態のアンカ10は、以上説明したように、その係止部13がサポートパネル5のフランジ14により前側から支えられているため、チャイルドシートのフック11から前向きの入力Fが加わっても、その入力Fに対する十分な対抗力をフランジ14と共働して生じさせることができる。フランジ14により、アンカ10の係止部13を前側から直接支えるため、リヤシート2のヒップポイントHが高く、アンカ10の係止部13が長くても、係止部13が変形しづらい。フランジ14によりチャイルドシートからの入力Fに対する大きな対抗力が得られるため、アンカ10の固定もアーク溶接で済み、従来のような複雑な取付構造を採用する必要がなく、部品低減及び重量軽減が行え、作業性及びコストの点でも有利である。
【0031】
また、フランジ14にエンボス部15を形成したため、フランジ14の剛性が向上し、アンカ10の係止部13を支える力が高まる。特に、エンボス部15の左右両側の縦壁16がフランジに対して略直角なため、フランジ14の剛性が更に高まる。更に、エンボス部15がフランジ14からアンカ10の固定部12に対応する部分まで連続形成されているため、フランジ14とサポートパネル5との間の角部の剛性が向上し、この点においても、フランジ14全体の剛性を高めることができる。尚、サポートパネル5の周辺部9におけるアンカ10の固定部12に対応する部分が若干浮いた状態になるため、固定部12を溶接する場合に、下のリヤフロアパネル1への熱の影響を小さくすることができる。
【0032】
また、フランジ14の前方近接位置にモジュールバー6が配されているため、万一、チャイルドシートからの入力Fにより、アンカ10の係止部13が前倒れ方向に変形しても、モジュールバー6で受け止めて、それ以上の変形を防止することができる。
【0033】
【発明の効果】
この発明によれば、サポートパネルに前記フックに加わる前側への入力に対抗するフランジを立ち上げ形成しただけで、チャイルドシートからの入力に対する対抗力が得られるため、従来のような複雑な取付構造を採用する必要がなく、作業性及びコストの面で有利である。また、フランジにより、アンカの係止部を前記フックに加わる前側への入力に対抗して直接支えるため、リヤシートのヒップポイントが高い場合に、アンカの係止部を長くしても、係止部が変形しづらい。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施形態に係るリヤフロアパネル周辺構造を示す分解斜視図。
【図2】図1中矢示DA部分を示す拡大斜視図。
【図3】図2中矢示SA−SA線に沿う断面図。
【図4】図2中矢示SB−SB線に沿う断面図。
【符号の説明】
1 リヤフロアパネル
2 リヤシート
3 シートクッション
4 シートバック
4a 可動シートバック本体
4b 固定シートバック本体
5 サポートパネル
6 モジュールバー
7 ヒンジ
8 ブラケット
9 周辺部
10 アンカ
11 フック
12 固定部
13 係止部
14 フランジ
15 エンボス部
16 縦壁
17 端末部
H ヒップポイント
F 入力
P プレス成形方向
Claims (7)
- リヤシートの後部下方に位置するサポートパネルに、チャイルドシートを保持するフックを係止する係止部と、サポートパネルに固定される固定部とから成るアンカを取付けてなるチャイルドシートのアンカ構造であって、
前記サポートパネルに、前記フックに加わる前側への入力に対抗するようにアンカの係止部を支えるフランジを立ち上げ形成したことを特徴とするチャイルドシートのアンカ構造。 - 請求項1記載のチャイルドシートのアンカ構造であって、
前記フランジにおけるアンカの係止部を、前記フックに加わる前側への入力に対抗する部分に、エンボス部を形成したことを特徴とするチャイルドシートのアンカ構造。 - 請求項2記載のチャイルドシートのアンカ構造であって、
前記エンボス部の左右両側に、フランジに対して略直角な縦壁が形成されていることを特徴とするチャイルドシートのアンカ構造。 - 請求項2又は請求項3記載のチャイルドシートのアンカ構造であって、
前記エンボス部が、フランジからアンカの固定部に対応する部分まで形成されていることを特徴とするチャイルドシートのアンカ構造。 - 請求項1〜4のいずれか1項に記載のチャイルドシートのアンカ構造であって、
前記フランジの先端に、サポートパネルのプレス成形方向に対して略直交する端末部を形成したことを特徴とするチャイルドシートのアンカ構造。 - 請求項1〜5のいずれか1項に記載のチャイルドシートのアンカ構造であって、
前記アンカの固定部が、サポートパネルに対して溶接されていることを特徴とするチャイルドシートのアンカ構造。 - 請求項1〜6のいずれか1項に記載のチャイルドシートのアンカ構造であって、
前記リヤシートのシートバック下端部を支持するモジュールバーが、フランジの前方近接位置に配されていることを特徴とするチャイルドシートのアンカ構造。
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