JP3796106B2 - 離型用積層フィルム - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は離型用フィルムに関し、特に多層プリント基板の製造に好適に用いられる離型用積層フィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
多層プリント基板は、複数枚のプリント基板の間にプリプレグを挟んで積層し、該積層された一組のプリント基板の上下に離型用フィルムを置き、加圧加熱してプリプレグを溶融し硬化させて、一体化することによって作られる。離型用フィルムとしては、加熱温度175℃以下ではポリフッ化ビニルフィルムを、それより高い温度ではテトラフロロエチレン−ヘキサフロロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフロロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)などのフッ素樹脂フィルムが主として使用されている。
【0003】
ところが、プリント基板にブラインドスルーホールがある場合、溶融したプリプレグが加圧されて最外層のブラインドスルーホールの開口部から滲み出て硬化し、その部分の銅箔のエッチングを妨げる結果、基板表面の回路を正確に形成することができないという問題がある。これを解決するために、従来のフィルムより厚い、0.06〜0.3mm厚さの離型用フィルムを用いる方法が提案されている(特開平5−283862)。しかし、そのような厚みの、上記ポリフッ化ビニル等のフィルムは一般に高価であり、製造コストの上昇によって、基板不良率の低減効果が帳消しにされる。
【0004】
また、多層プリント基板製造用の従来の離型用フィルムは、プリント基板上で皺ができるなどして、取り扱い性が悪いという問題もある。さらに、基板と離型用フィルムとの間に粉塵等の異物が存在する状態で加圧された場合に、基板表面等に押型(窪み)を生じる場合がある。そのような押型があると、正確な回路の形成が妨げられるという問題がある。
【0005】
本発明者は、特定範囲の横方向の引張り弾性率を有するフィルムを、フッ素フィルムを支持するための支持フィルムとして用いることで上記問題の無い離型フィルムが得られることを見出し、特許出願した(特願平11−246662)。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、該離型フィルムは、該支持フィルムがプレス板表面から剥離し難いという問題がある。そこで、本発明は、該問題点を解決することを目的とする。
【0007】
すなわち、本発明は、ASTM D882に従い測定されたフィルム横方向の引張り弾性率が980〜6,860 N/mmであり、厚さ 12.5 1000 μ m 支持フィルムの片面に、フッ素樹脂から成るフィルムを積層されてなる積層フィルムであって、該支持フィルムの該片面とは反対側の表面の、JIS B0 601に従い測定された10点平均表面粗さ(Rz)が3.0μm 〜8.0μmであり、且つ、山数(Pc)が200 〜400個であることを特徴とする多層プリント基板製造用の離型用積層フィルムである。
上記発明の好ましい態様は下記のとおりである。
Rzが4.0〜7.0μmであり、且つ、Pcが250 〜350個である前記離型用積層フィルム。
前記フィルム横方向の引張り弾性率が2,940〜5880 N/mmである前記離型用積層フィルム。
前記フッ素樹脂から成るフィルムが、厚み1〜50μmのテトラフロロエチレン−エチレン共重合体樹脂フィルムであることを特徴とする前記離型用積層フィルム。
前記支持フィルムが、厚さ 25 100μmのポリエステルフィルムであることを特徴とする前記離型用積層フィルム。
前記フッ素樹脂から成るフィルムが、ドライラミネート法により支持フィルムに積層されていることを特徴とする前記離型用積層フィルム。
前記フッ素樹脂から成るフィルムに、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、またはポリエステルフィルムがさらに積層されてなることを特徴とする前記離型用積層フィルム。
フィルム総厚みが60〜300μmであることを特徴とする前記離型用積層フィルム。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明における支持フィルムは、フッ素樹脂フィルムが積層されている側の面とは反対側の表面の、JIS B0 601に従い触針法により測定された10点平均表面粗さ(Rz)が3.0μm 〜8.0μmであり、且つ、山数(Pc)が200 〜400個であることを特徴とする。Rzが3.0μm未満であるか、又は、Pcが200個未満であると、プレス板面に密着し易くなり、剥離が困難になる。好ましくは、Rzが4.0〜7.0μmであり、且つ、Pcが250 〜350である。
【0009】
上記表面粗さは、支持フィルムの表面に、サンドマット加工、練り込み加工、又は、ケミカルマット加工を施すことで実現できる。
【0010】
本発明における支持フィルムとしては、公知の各種フィルムを用いることができる。例えば、ポリエステル、ポリカーボネート、トリアセチルセルロース、セロハン、ポリアミド、芳香族ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリプロピレン、高密度ポリエチレン等のフィルムを挙げることができる。なかでも、ポリエステルフィルム、例えばポリエチレンテレフタレートフィルム、が熱的特性、機械的特性、価格などの面から好ましい。
【0011】
該支持フィルムは、ASTM D882に従い測定したフィルム横方向、すなわちフィルム製造における機械方向(フィルム流れ方向)に直角な方向、の引張弾性率が、980〜6,860 N/mm2、好ましくは2,940〜5,880 N/mm2、より好ましくは3,430〜5,390 N/mm2である。上記下限値未満であると、離型フィルムに皺が入る等、取り扱い性が悪くなる。一方、上記上限値を超えると、離型用フィルムとしては硬すぎて取り扱い難くなる。
【0012】
多層プリント基板用の離型用フィルムにおいては、該支持フィルムの融点が110℃以上であることが好ましく、より好ましくは、200℃以上である。融点が110℃未満であると、耐熱性が不足しプレス板等に融着する。
【0013】
また、支持フィルムの厚さは、5〜1,000μm、好ましくは12.5〜300μm、より好ましくは25〜100μmである。前記下限値より薄いと、押型や滲み出しが起き易くなる。一方、前記上限値より厚いと、フィルムの厚み精度が悪くなる結果、加圧の際に均一な圧力がかからなくなるおそれがある。また、製造コストや廃棄物が多くなる等の問題がある。
【0014】
本発明で使用されるフッ素樹脂としては、例えばテトラフロロエチレン(PTFE)、テトラフロロエチレン−パーフロロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフロロエチレン−エチレン共重合体(ETFE)、テトラフロロエチレン−ヘキサフロロプロピレン共重合体(FEP)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、フッ化ビニリデン(VdF)等が挙げられる。プレス温度175℃以下では、VdFが、それより高い場合にはFEP、PFAなどが好ましい。
フッ素樹脂フィルムの厚みは、1〜50μm、好ましくは2〜30μm、最も好ましくは3〜20μmである。
【0015】
本発明の離型用フィルムは、使用目的に応じて支持層フィルムの片面に、所定のフッ素樹脂フィルムを、例えばドライラミネートすることによって作ることができる。その際使用される接着剤としては、アクリル変性系、イソシアネート系、ポリエチレンイミン系、ポリウレタン系、シランカップリング剤系等の種々のものが挙げられる。なかでも、ポリウレタン系のドライラミネート接着剤が好ましく用いられる。さらに、ドライラミネートの前処理として、支持フィルムおよびフッ素樹脂フィルムの表面をコロナ処理することが好ましい。また、薄肉のフッ素樹脂の製膜の際には、ポリオレフィン樹脂などと共押出しする、または、転写用フィルムに貼り合せて採取し、該薄肉のフッ素樹脂フィルムをポリエステルフィルムにドライラミネートした後に、共押出しされたポリオレフィン樹脂や、転写用フィルムを剥離してもよい。
【0016】
好ましくは、フッ素樹脂フィルムの上に、すなわち支持フィルムとは反対側の表面に、ポリエチレン等からなる保護フィルム層をさらに設ける。離型用フィルムをプリント基板等の上に貼る直前に、該保護フィルムを剥離して使用に供するようにすれば、プリント基板等へのゴミの付着を防止でき、回路等をより正確に形成することができる。該保護フィルムとしては、フッ素樹脂層と粘着するものであれば、任意のフィルムであってよい。例えば、各種ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、トリアセチルセルロース、セロハン、ポリアミド、ポリカーボネート、芳香族ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン等のフィルムを挙げることができる。なかでも、低価格であることから、高密度ポリエチレンフィルムが好ましい。
該保護フィルムの厚みは、10〜50μmが好ましい。保護フィルムは、加熱圧着によってフッ素樹脂層の上に積層することができる。
【0017】
本発明の離型用フィルムは、その総厚みが10〜400μmであることが好ましく、特に多層プリント基板においてプリプレグの滲み出しおよび押し型を防ぐためには60〜300μmの厚みであることが好ましい。
【0018】
以下、実施例によって、本発明をより詳細に説明する。
【実施例】
使用フィルムおよびプリプレグ
ポリエチレンテレフタレートフィルム(PET):三菱化学製、厚み 50μm横方向引張り弾性率5000N/mm2
テトラフロロエチレン−エチレン共重合体(ETFE):旭硝子製樹脂を厚み 5μmに製膜したもの。
プリプレグ :三菱ガス化学製、ガラスエポキシ。
【0019】
表面粗さの測定
表面粗さ計、SE-3FK(小坂研究所製)、にて、2μmの触針を用い、荷重70mg下 で、JIS B0 601に準じて測定した。
【0020】
離型用積層フィルムの調製
表1に示す所定の表面粗さとなるように、PETフィルムの片側表面に、サンドブラスト法によってエンボス柄を付した。その後、該片側とは反対側に、ETFEフィルムをドライラミネートにより積層し、表1に示す積層フィルムを調製した。
【0021】
ブラインドスルーホールの開口部があるプリント基板を、プリプレグを介して所定の順番に順次積層し、該積層された一組のプリント基板の上下に、各離型用フィルムを配し、該離型用フィルムに挟まれた一組のプリント基板を、鏡面メッキ仕上げされたプレス板により、加熱プレスし(170℃、490 N/cm2)、プリプレグを溶融および硬化させて、一体化した。60分後に、プレス圧を解放し、プリント基板を取り出し、その際下記の点で評価した。評価結果を表2に示す。
【0022】
(1)離型フィルムのプレス板からの剥離性
離型フィルムをプレス板から剥離する際に、離型フィルムがプレス板に付着されて残ること無く剥離されたフィルムを○、離型フィルムの一部がプレス板に付着されて残ったが、剥離可能であったフィルムを△、離型フィルムの約半分以上がプレス板に付着されて残り、剥離が困難であったものを×とした。
(2)支持フィルムのエンボス柄のプリプレグ表面への転写
離型フィルムをプリント基板表面から剥離した後、離型フィルムのエンボス柄のプリプレグ表面への転写の有無を調べた。
【0023】
【表1】
Figure 0003796106
【0024】
【表2】
Figure 0003796106
いずれのフィルムも、プリント基板表面からの剥離性は良かった。しかし、参考例1〜3のフィルムは、実施例のフィルムに比べてプレス板からの剥離性に劣った。
【0025】
【発明の効果】
以上示したように、本発明の離型用積層フィルムは、プリプレグからの離型性だけでなくプレス板からの離型性にも優れる。

Claims (8)

  1. ASTMD882に従い測定されたフィルム横方向の引張り弾性率が980〜6,860 N/mmであり、厚さ 12.5 1000 μ m 支持フィルムの片面に、フッ素樹脂から成るフィルムを積層されてなる積層フィルムであって、該支持フィルムの該片面とは反対側の表面の、JIS B0 601に従い測定された10点平均表面粗さ(Rz)が3.0μm 〜8.0μmであり、且つ、山数(Pc)が200 〜400個であることを特徴とする多層プリント基板製造用の離型用積層フィルム。
  2. Rzが4.0〜7.0μmであり、且つ、Pcが250 〜350個であることを特徴とする請求項1記載の離型用積層フィルム。
  3. 前記フィルム横方向の引張り弾性率が2,940〜5880 N/mmであることを特徴とする請求項1または2記載の離型用積層フィルム。
  4. 前記フッ素樹脂から成るフィルムが、厚み1〜50μmのテトラフロロエチレン−エチレン共重合体樹脂フィルムであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の離型用積層フィルム。
  5. 前記支持フィルムが、厚さ 25 100μmのポリエステルフィルムであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の離型用積層フィルム。
  6. 前記フッ素樹脂から成るフィルムが、ドライラミネート法により支持フィルムに積層されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の離型用積層フィルム。
  7. 前記フッ素樹脂から成るフィルムに、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、またはポリエステルフィルムがさらに積層されてなることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の離型用積層フィルム。
  8. フィルム総厚みが60〜300μmであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の離型用積層フィルム。
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