JP3793858B2 - ボス部を有する樹脂成形品の製造方法及びそれに用いる金型 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は熱可塑性樹脂からなるボス部を有する成形品の製造方法及びそれに用いる金型に関するもので、自動車の内外装品、家具、椅子、建築資材等を製造する際に利用可能である。
【0002】
【従来の技術】
熱可塑性樹脂からなるボス部を有する成形品、特に自動車のインストルメントパネル等の内装品では、成形品の表面にヒケが生じていないこと等の外観が重視される。一方では、コスト低減のため、部品点数の削減が盛んに進められており、成形品にボス部等が多様に設置され、ヒケ等の外観不良が発生しやすい状況となっている。
【0003】
そこで、ボス部のような部分的厚肉部を有する成形品のヒケ等の外観不良を抑えるため、圧縮ガスでヒケを防止する方法や部分的厚肉部を中空とし、また、その周辺部分の冷却を遅らせる方法が開示されている。
特開昭50−75247号公報、又は、特開昭59−220337号公報では、成形品のボス部等の部分的厚肉部で外表面にヒケが生じやすいところをその裏面側から前記外表面を金型面に圧縮空気で押し当て、ヒケの発生を抑える方法が開示されているが、リブ長が長い成形品等では加圧空気の流動方向の制御及び保圧を適正化する上で、効率的でない等の問題がある。
【0004】
特開平7−148766号公報では、部分的厚肉部を中空とする成形において、厚肉部付近に相当する金型の一部を断熱材とすることで、厚肉部付近の冷却を遅らせ、厚肉部に対応する製品面とその付近の光沢差をなくす方法が開示されているが、強度を必要とするリブ等の厚肉部を中空とすることが前提であり、また、中空とする際にパーミエーションが起こりやすく、強度不足となる等の問題がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、ボス部を有する外表面にヒケが発生しやすい樹脂成形品において、ボス部の基部付近の薄肉化を抑えるとともにヒケの発生を防止することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上述の目的を達成するために鋭意検討した結果、以下に示すように厚肉部を設け、それを圧延するとともに成形品のボス部の基部付近を金型に押圧することにより、目的を達成できることを見出し、本発明の完成に至った。
【0007】
本発明は、成形品のボス部に嵌合するように内側ピンの先端が外管より引き籠もる位置にある管状ピンを設けた金型を用い、成形品をなす溶融樹脂が冷却・固化しつつある時に、内側ピンと外管の間隙から圧縮ガスを供給し、そのガスにより内側ピンの先端部の溶融樹脂を圧延するとともに成形品のボス部の基部付近を金型に押圧し、前記内側ピンの先端の前記外管からの引っ込み量は、成形品の肉厚の10〜60%であることを特徴とするボス部を有する樹脂成形品の製造方法を提供するものである。
【0008】
さらに、上記の製造方法に用いる金型であって、成形品のボス部に嵌合するように管状ピンが設けられ、その内側ピンの先端が外管より引き籠もる位置にあり、かつ、その内側ピンと外管の間隙から圧縮ガスを供給できる機能を有し、前記内側ピンの先端の前記外管からの引っ込み量は、成形品の肉厚の10〜60%であることを特徴とする金型を提供するものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明は、通常の射出成形、射出圧縮成形、又はガス注入射出成形等を含む射出成形法で成形されるボス部を有する成形品を対象とする。例えば、図3に示すようなガス注入射出成形によるボス部が多数設置された自動車のインストルメントパネル等の内装品が挙げられる。
【0010】
本発明では、以下に示すような樹脂、金型、成形機及び成形方法を採用することができる。
対象とする樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ABS、ポリカーボネート、ポリアミド等の熱可塑性樹脂またはこれらの熱可塑性樹脂にエチレン・α−オレフィン共重合体エラストマー等のエラストマー、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、ガラス繊維、炭素繊維等の無機充填剤を添加したものが採用でき、主にポリプロピレン系樹脂を採用する場合が多い。
【0011】
本発明の樹脂成形品に用いる金型としては、成形品のボス部に嵌合するように管状ピンが設けられ、その内側ピンの先端がボス部の基部に対して外管より引き籠もる位置にあり、かつ、その内側ピンと外管の間隙から圧縮ガスを供給できる機能を有することを特徴とする金型を用いるのが好ましい。これにより、後述するように、ボス部を有する樹脂成形品の射出成形法において、ボス部の基部の外表面のヒケの発生を抑えることができる。
【0012】
この金型を図1に示す具体例により、詳細に説明する。
管状ピン101は、その外管102が成形品のボス部104の内径に相当する外径を有し、一般成形品面からのボス部の高さ105に対応するように金型面から突出させている。また、外管の中には内側ピン103を備え、その外管と内側ピン間には圧縮ガスをボス部の基部へ供給できるように間隙106を形成し、内側ピンの先端はボス部の基部に対して外管より引き籠もる位置にあるようにしたものである。他の例としては、内側ピン自体を通気性のある多孔質な材料とし、圧縮ガスを供給できるようにしたもの、これらを組み合わせた内側ピンの先端部にのみ通気性のある多孔質な材料を設け、その先端部までは外管と内側ピンの間隙から圧縮ガスを供給できるようにしたものを挙げることができる。これらも内側ピンの先端はボス部の基部に対して外管より引き籠もる位置にあるようにしたものである。特に、内側ピン先端部の外管と内側ピンの間隙や多孔質な材料の孔は、溶融樹脂が進入しない程度にするとよい。通常、その間隙や孔は5〜80μmである。
【0013】
この管状ピン101により、上記の引き籠もる量に相当するだけボス部の基部の内側に部分的な厚肉部107を設けることができ、これを供給される圧縮ガスで押し延ばし、ボス部の基部付近の薄肉化を抑えることができる。その部分的な厚肉部は、それがない場合の成形品の肉厚、形状等の諸条件から決まるヒケの量から適宜調整する必要があるが、内側ピンの先端の外管からの引っ込み量d(距離)としては、成形品の一般面の肉厚tの10〜60%である。前記の引っ込み量が10%未満では一般面への圧縮ガスの漏れが発生する場合がある。また、引っ込み量が60%を越えるとヒケが抑えられなくなったり、離型不良が生じたりする場合がある。
【0014】
上記の金型108には、別途設けられた圧縮ガスの供給装置から圧縮ガスが供給される。その圧力、供給速度、供給タイミング、保圧時間等は供給装置の制御システムで制御されている。その条件は、成形品の大きさや形状等により適宜調整する必要があり、ボス部の基部内側の部分的な厚肉部を円滑に押し延ばし、ボス部基部付近の薄肉化を抑えるように圧縮ガスの圧力、圧力を掛けるタイミング、保持する時間等を設定するのがよい。圧縮ガスの圧力は、通常0.5〜8Pa、好ましくは1〜4Paである。
【0015】
また、圧縮ガスの圧力は、溶融樹脂111が射出充填された直後の冷却固化の初期段階は低圧とし、圧縮ガスが薄い固化層を破って樹脂内部に侵入してしまうことがないようにし、ある程度固化が進んだ状態で圧縮ガスの圧力を高め、部分的な厚肉部を円滑に押し延ばし、ボス部の基部付近の溶融樹脂を成形品の裏面側から成形品の外表面側の金型110の成形面に押し当てるのが好ましい。
【0016】
圧縮ガスとしては、圧縮された窒素ガス、乾燥空気等が使用できる。圧縮や加熱に対しても安全な窒素ガスが好ましい。
上記の金型、管状ピンの材料には通常金型に使用される炭素鋼材等を採用すればよい。
成形機としては、それぞれの成形品に適した通常の射出成形機、射出圧縮成形機又はガス注入射出成形機であればよい。
【0017】
以上のような金型及び成形機を用いて、ボス部を有する成形品は、次のような手順で成形できる。
(1)成形品の形状に対応し、前述のようなボス部の基部の内側に厚肉部を設けることができる金型、例えば上記の管状ピンを有する金型を使用して、通常の射出成形方法により、溶融させた樹脂を型締めした金型に射出充填させる。
(2)充填完了時もしくは遅延タイマー等で遅延時間を設け、圧縮ガスを、ボス部の基部の内側に供給し、その圧縮ガスで厚肉部を押し延ばし、ボス部の基部付近の溶融樹脂を成形品の裏面側から成形品の外表面側の金型成形面に押し当てる。
(3)圧縮ガスで保圧しながら、所定の時間保持し、溶融樹脂を冷却・固化させ、ボス部の基部付近の成形品の外表面のヒケを防止する。その後、脱圧する。
(4)型開時には必要に応じて、離型を円滑にする程度に圧縮ガスのガス圧を残し、型開して成形品を金型から取り出す。
以上のように本発明では、圧入された圧縮ガスで厚肉部を押し延ばすことで、ボス部の基部の薄肉化が抑えられ、ボス部の強度が十分に保持できる。特に、管状ピンを使用すれば、圧縮ガスによる保圧力がその内側ピンに沿って伝達され、ボス部の基部から一般面へ圧縮ガスの漏れがなく、ボス部の基部付近の成形品の外表面のヒケを防止に選択的に作用し、非常に効率が良い。
【0018】
【実施例】
以下、本発明を具体的な実施例により説明する。
〔実施例1〕
本実施例は、本発明に基づいて、ボス部を有する大型の成形品を以下のように成形したものである。
(1)成形品
図3の自動車のインストルメントパネルで助手席側のダッシュボード近傍にボスを備えている。
ボス外径:φ10mm、内径:φ5mm、高さ:25mm(一般面より)。
【0019】
(2)使用樹脂
出光ポリプロピレン(J−762HP、MI=10g/10分;230°C、2.16kgf)を使用した。
(3)使用金型
図3の自動車のインストルメントパネルに対応した金型で、ボス部に対応した箇所には図1のように管状ピンからなる圧縮ガスの注入口が設けてある。
管状ピンの外径:φ5mm、高さ:25mm。
内側ピンの先端は外管の先端より1mm引っ込んでいる。
【0020】
(4)使用成形機
東芝機械製射出成形機(IS2200DF、型締力2200ton)を使用し、図2に示すようなガス供給装置から圧縮ガスを供給している。
圧縮ガスとして、窒素ガスを使用し、それは図2の保圧ガス流路26から分岐した分岐路26Aから圧縮ガスが供給できるように接続されている。
【0021】
(5)成形条件及び成形手順
以下の条件で行った。
a)樹脂温度:220°C
b)金型温度: 40°C
c)射出時間: 5 秒
d)冷却時間: 40 秒
e)ガスインジェクション条件(ガスチャンネルへ注入し、中空を成形するためのガス、窒素ガスを使用)
・ガス注入圧力 :10MPa
・ガス注入タイミング:樹脂射出開始から4秒後
・ガス注入時間 : 2秒
・ガス保持時間 :20秒
・ガス脱圧時間 :10秒
f)圧縮ガス圧入条件(本発明のヒケ防止のための圧縮ガス、窒素ガスを使用)
・圧縮ガス注入圧力 : 2MPa
・圧縮ガス注入タイミング:射出充填完了から0.5秒後
・圧縮ガス注入時間 : 3秒
・圧縮ガス保持時間 :20秒
・圧縮ガス脱圧時間 : 5秒
【0022】
この成形にあたっては、まず、図1にその一部を示す金型108を型締めし、図示されていないガス注入射出成形機から上記の成形条件で溶融樹脂111を型内に射出し、ガス注入を行う。図1及び図4(a)に示すように管状ピン101の内側ピンは1mm引っ込んでいるので、そこに部分的な厚肉部が形成される。 射出充填完了から0.5秒後、窒素ガスからなる圧縮ガスを、管状ピンから上記の条件で供給する。この圧縮ガスが図4(b)に示すように部分的な厚肉部を押し延ばし、ボス部の基部付近の溶融樹脂を成形品の裏面側から外表面側の金型成形面に押し当てるように作用する。
圧縮ガスを20秒間保持し、保圧しながら、溶融樹脂を冷却・固化させ、ボス部の基部付近の成形品の外表面のヒケを防止できる。その後、脱圧する。
離型を円滑にする程度に圧縮ガスの加圧を残し、型開して成形品を金型から取り出す。
(6)評価結果
ヒケによる成形品の外表面の凹部の発生がなく、外観が良好な成形品が得られた。
【0023】
〔比較例1〕
実施例1と比較するために、ボス部の管状ピンの内側ピンの引っ込み量をゼロにして成形した。その結果、圧入されたガスがボス部の基部から一般面に漏れ込んで、ボス部の強度が低下した。また、外表面に僅かな凹部が発生した。
【0024】
【発明の効果】
本発明により、ボス部の有する外表面にヒケが発生しやすい樹脂成形品において、ボス部の基部付近の薄肉化を抑えるとともにヒケの発生を防止でき、外観が良好な成形品が得られる。
本発明のボス部に嵌合し、ボス部の基部の内側に厚肉部を形成できる管状ピンを有する金型を用いると、上記の薄肉化の抑制及びヒケ防止を効率よく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明における管状ピンの概略断面図を示す。
【図2】ガス注入射出成形機及びガス供給装置の概略図を示す。
【図3】自動車のインストルメントパネルの概略図を示す。
【図4】本発明の製造方法による成形品のボス部の概略断面図を示す。
【図5】比較例における成形品のボス部の概略断面図を示す。
【符号の説明】
101・・・管状ピン
102・・・外管
103・・・内側ピン
104・・・ボス部
105・・・ボス部の高さ
106・・・圧縮ガスの通路となる内側ピンと外管の間隙
107・・・厚肉部
108・・・成形品の金型
109・・・成形品の裏面側の金型
110・・・成形品の外表面側の金型
111・・・充填された溶融樹脂
112・・・ガスチャンネル
Claims (2)
- ボス部を有する樹脂成形品の射出成形法において、成形品のボス部に嵌合するように内側ピンの先端が外管より引き籠もる位置にある管状ピンを設けた金型を用い、成形品をなす溶融樹脂が冷却・固化しつつある時に、内側ピンと外管の間隙から圧縮ガスを供給し、そのガスにより内側ピンの先端部の溶融樹脂を圧延するとともに成形品のボス部の基部付近を金型に押圧し、前記内側ピンの先端の前記外管からの引っ込み量は、成形品の肉厚の10〜60%であることを特徴とするボス部を有する樹脂成形品の製造方法。
- ボス部を有する樹脂成形品を射出成形する金型において、成形品のボス部に嵌合するように管状ピンが設けられ、その内側ピンの先端が外管より引き籠もる位置にあり、かつ、その内側ピンと外管の間隙から圧縮ガスを供給できる機能を有し、前記内側ピンの先端の前記外管からの引っ込み量は、成形品の肉厚の10〜60%であることを特徴とする樹脂成形品に用いる金型。
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