JP3628976B2 - 表皮材一体発泡成形品の成形方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、表皮材と芯材との間に発泡層が一体成形された表皮材一体発泡成形品を成形する方法の改良に関し、特にガス抜き対策に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
上述の如き3層構造の表皮材一体発泡成形品の成形方法として、例えば実公平4−2007号公報(以下、従来例1という)や特開平9−11247号公報(以下、従来例2という)に開示されている方法がある。
【0003】
上記の従来例1の成形方法では、下型にセットされた表皮材上に芯材を載置し、上型を下降させて型締めした状態で、該上型に設置された芯材保持装置により上記芯材を保持して上型にセットし、上記芯材に設けられた注入口から表皮材と芯材との間のキャビティ内に発泡原料を注入して表皮材と芯材との間に発泡層が一体成形された表皮材一体発泡成形品を成形するようにしている。
【0004】
一方、上記の従来例2の成形方法では、表皮材周縁部と芯材周縁部との間のシール対策を講じている。つまり、表皮材がセットされた下型と、芯材がセットされた上型とにより成形型を型締めし、芯材周縁部に突設されたシール用突条を表皮材周縁部に押し付けて発泡原料のキャビティ外への漏出を防止した状態で、表皮材と芯材との間のキャビティ内に発泡原料を注入して表皮材と芯材との間に発泡層が一体成形された表皮材一体発泡成形品を成形するようにしている。この場合、表皮材周縁部と芯材周縁部との間を全周に亘って完全にシールしてしまうと、発泡原料の発泡により発生したガスの逃げ場がなくなり、成形された表皮材一体発泡成形品にボイドが発生して品質が低下するため、上記表皮材周縁部と芯材周縁部との間のシール部における表皮材周縁部の芯材に対する押圧力を部分的に減じて該シール部からキャビティ内のガスを型外に放出するようにしている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、従来例1の成形方法に従来例2のシール対策を採用することが考えられる。しかし、芯材は芯材保持装置で上型に動かないように保持されているため、キャビティ内で発泡した発泡原料の発泡圧が表皮材に強く作用し、特に、表皮材周縁部が折り曲げられてアンダー部等を形成している場合には、当該折曲部周辺の表皮材をこれと当接する芯材から離脱する方向に発泡圧が作用するため、表皮材周縁部の折曲部周辺に変形が生ずる。
【0006】
そこで、上記芯材保持装置による芯材の上型への保持を解除して自由度を持たせれば、発泡圧が一方的に表皮材に作用せず、表皮材周縁部の折曲部周辺に変形が生ずるのを防止することができる。
【0007】
しかし、芯材の上型への保持を解除すると、芯材の注入口と上型に設けられた発泡原料注入用注入ヘッドとの間に隙間ができてこの隙間から上記注入口近傍のガスが急激に抜けるため、成形された表皮材一体発泡成形品は上記注入口に対応する表皮材に凹みが生じて見栄えが悪くなる。
【0008】
この発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、芯材の注入口に対応する表皮材に急激なガス抜けに起因する凹みが生じない見栄えの良い表皮材一体発泡成形品を成形することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、この発明は、発泡原料の発泡過程で表皮材周縁部に沿うように設けられたシール部の一部を弛めて部分的なガス抜きを行った後、芯材の上型への保持を解除して全体的なガス抜きを行うことを特徴とする。
【0010】
具体的には、この発明は、表皮材をセットする表皮材セット面を有する下型と、芯材をセットする芯材セット面を有する上型とからなる成形型の上記上型には、上記芯材を着脱自在に保持する芯材保持装置と、上記上型と下型とによる型締め状態で上記芯材に設けられた注入口から上記表皮材と芯材との間のキャビティ内に発泡原料を注入する注入ヘッドとが設けられ、上記発泡原料を上記注入ヘッドから注入口を経てキャビティ内に注入して表皮材と芯材との間に発泡層が一体成形された表皮材一体発泡成形品を成形する方法を対象とし、次のような解決手段を講じた。
【0011】
すなわち、請求項1に記載の発明は、上記上型と下型とにより成形型を型締めし、表皮材周縁部を芯材に対して押圧してシール部を構成することにより発泡原料のキャビティ外への漏出を防止した状態で、発泡原料を上記注入ヘッドから注入口を経てキャビティ内に注入し、次いで、上記シール部のうち少なくとも上記注入口に近接したシール部における表皮材周縁部の芯材に対する押圧力を部分的に減じて該シール部から注入口周辺のキャビティ内のガスを型外に放出し、その後、上記芯材保持装置による芯材の上型への保持を解除することを特徴とする。
【0012】
上記の構成により、請求項1に記載の発明では、成形型の型締め状態で、発泡原料がキャビティに注入された後、注入口に近接したシール部における表皮材周縁部の芯材に対する押圧力が部分的に減じられるため、上記注入口周辺のキャビティ内のガスは、注入口に近接したシール部から型外に比較的緩やかに放出される。
【0013】
その後、芯材保持装置による芯材の上型への保持が解除され、芯材が自由度を持つことで発泡圧が一方的に表皮材に作用しないようになり、表皮材周縁部の折曲部周辺に対する変形が防止される。この際、芯材の注入口と上型との間に隙間ができるが、この段階では、上述の如く注入口周辺のキャビティ内のガスが既に型外に放出されているため、上記隙間からガスが急激に抜けることはなく、成形された表皮材一体発泡成形品の上記注入口に対応する表皮材に凹みが生じず見栄えを損なわない。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施の形態について図面に基づいて説明する。
【0015】
図10はこの発明の実施の形態に係る成形方法により成形される表皮材一体発泡成形品としての車両用インストルメントパネル101を示すが、これに限らず、ドアトリム等の自動車用内装品や自動車用内装品以外のものにも適用することができるものである。
【0016】
上記インストルメントパネル101は、表皮材103と芯材105との間に発泡層107が一体成形された3層構造のアッパーパネル部109と、芯材105だけの単層構造のロアパネル部111とで構成されている。図10中、105aは上記ロアパネル部111の芯材105に開設されたエア吹出口であり、このエア吹出口105aにはグリル113が装着されている。115はステアリングホイールである。その他の符号については、以下に述べる成形工程の中で説明する。
【0017】
上述の如く構成されたインストルメントパネル101は、図1〜7に示すような下型1と上型3とを備えた成形型5を用いて以下の要領にて成形される。
【0018】
(1) 図1に示すように、上型3(図2〜7に現れる)を上昇させて成形型5を型開きした状態で、上記下型1の一端側(図1左端側)に支持部材7を介して設置された表皮材位置決め用流体圧シリンダ9を伸長作動させ、この表皮材位置決め用流体圧シリンダ9のピストンロッド9a先端に連結された表皮材位置決め用スライドコア11を前進させた後、下型1の表皮材セット面1aに表皮材103の表側が当接するように、かつ表皮材103の折曲部103aが上記表皮材位置決め用スライドコア11の先端当接部11aに当接するようにセットする。これにより、上記表皮材103の折曲部103aを表皮材位置決め用スライドコア11の先端当接部11aにより外方へ倒れないように保持するとともに、表皮材103を下型1の表皮材セット面1aに位置決めする。この状態で、図示しない真空吸引孔からの負圧により表皮材103を下型3に密着させる。
【0019】
(2) 一方、図2に示すように、上記上型3の芯材セット面3aに芯材105の裏側が当接するようにセットする。その際、上記上型3のほぼ中央に設置された芯材保持装置21で芯材105が上型3から落下しないように保持する。
【0020】
その要領は、まず、芯材保持装置21の筒部材23を作動装置(図示せず)で押してコイルスプリング25の付勢力に抗して下方に前進させ、スリット23aが形成された先端係止部23bを芯材105裏面のボス状の係合部105fに挿入する。次いで、上記筒部材23内に嵌挿されたロックピン27を上記作動装置で押してその下端の膨出押圧部(図示せず)で上記筒部材23の先端係止部23bを拡径して上記係合部105fに係止させる。その後、上記筒部材23から手を離すと、上記筒部材23は、先端係止部23bにより芯材105を係止保持した状態のままコイルスプリング25の付勢力によって上方に移動しようとするため、芯材105が上型3の芯材セット面3aに押し付けられてセットされる。
【0021】
その後、上記上型3の一端側(図2左端側)に支持部材29を介して設置された芯材保持用流体圧シリンダ31を伸長作動させ、この芯材保持用流体圧シリンダ31のピストンロッド31a先端に連結された芯材保持用スライドコア33を前進させて、その先端に貼着されたゴム製弾性材35を上記芯材105の端縁部105bに外側方から当接させる。これにより、上記端縁部105bを芯材保持用スライドコア33の弾性材35により保持して芯材105を上型3の芯材セット面3aに固定する。この状態で、上記芯材105の係合部105fに隣接して開口された注入口105gが、上記芯材保持装置21に隣接して上型3に設置された注入ヘッド37に連通されている。
【0022】
(3) 図2に示すように、上記表皮材位置決め用流体圧シリンダ9を収縮作動させて上記表皮材位置決め用スライドコア11を後退させるとともに、上記上型3を図2矢印aで示すように斜め上方から下降させて成形型5を型締めする(図3参照)。これにより、上記芯材105の端縁部105b近傍の縦面105cが上記表皮材103の折曲部103aに外側方から当接し、両者が面接触状態で押圧されて当該箇所がシールされる。
【0023】
その他の箇所、つまり、後述するシール用スライドコア17の設置個所以外の表皮材周縁部103bでは、図8(a)に示すように、表皮材103の表皮材周縁部103bを成形型5の型締め力により芯材105に突設された突条105eに対して線接触状態で押圧することにより当該箇所がシールされる。一方、シール用スライドコア17の設置個所であるアッパーパネル部109の車両後方端縁部に対応する表皮材周縁部103b及びエア吹出口周縁部105dでは、上記下型1のほぼ中央に支持部材13を介して設置されたシール用流体圧シリンダ15を伸長作動させ、このシール用流体圧シリンダ15のピストンロッド15a先端に連結されたシール用スライドコア17を前進させて、その当接面17aで表皮材周縁部103b及び芯材105のをエア吹出口周縁部105dの突条105eに対して押圧することによりシールが行われる。したがって、表皮材103と芯材105との重合部分である表皮材周縁部103b及びエア吹出口周縁部105dによりシール部19が構成されている。
【0024】
このように、上記上型3と下型1とにより成形型5を型締めし、上記シール部19で芯材105に対して上記表皮材周縁部103dを押圧して発泡原料のキャビティ外への漏出を防止するようにしている。
【0025】
(4) 図4、図8(b)及び図9(a)に示すように、発泡原料Rを上記注入ヘッド37から注入口105gを経て上記表皮材103と芯材105との間のキャビティ39内に注入する。
【0026】
(5) 図5及び図9(b)に示すように、上記シール用流体圧シリンダ15を収縮作動させてシール用スライドコア17を下方に後退させ、上記注入口105gに近接したシール部19における表皮材周縁部103bの芯材105に対する押圧力を部分的に減じる。したがって、上記注入口105g周辺のキャビティ39内のガスが注入口105gに近接したシール部19から型外に比較的緩やかに放出される。この段階では、上記注入口105g周辺から遠い箇所のガスの排出までは至っておらず、部分的なガス抜きである。
【0027】
(6) 図6に示すように、上記芯材保持装置21のロックピン27を上記作動装置で引っ張ってその下端の膨出押圧部による筒部材23の先端係止部23bの拡径状態を解除する。これにより、筒部材23がコイルスプリング25の付勢力によって上方に移動し、先端係止部23bが芯材105の係合部105fから離脱して芯材105の上型3への保持が解除される。
【0028】
したがって、芯材105の上型3に対する拘束が解除されて芯材105は自由度を持つようになり、よって、発泡圧が一方的に表皮材103に作用しないようになり、表皮材周縁部103bの折曲部103a周辺に対する変形を防止することができる。この際、芯材105の注入口105gと注入ヘッド37(上型3)との間に隙間ができるが、この段階では、上述の如く注入口105g周辺のキャビティ39内のガスの一部が既に型外に放出されているため、上記隙間からガスが急激に抜けることはなく、成形されたインストルメントパネル101の上記注入口105gに対応する表皮材103に凹みが生じず見栄えを損なわないようにすることができる。
【0029】
(7) 上記上型3を僅かに上昇させて型締め力を低減する。これにより、上記(5)で部分的なガス抜きでは型外に放出されずにキャビティ39内に残っているガスが型外に放出され、全体的なガス抜きが行われる。
【0030】
(8) 図7に示すように、上記(2)の要領にて芯材保持装置21を作動させ、芯材105を再び芯材保持装置21で保持して上型3にセットする。その後、上型3を下降させて成形型5を再び型締めする。これと相前後して、上記シール用流体圧シリンダ15を伸長作動させてシール用スライドコア17を上方に前進させる。これにより、シール部19全体を完全にシールする。
【0031】
(9) 発泡原料Rがキャビティ39内でキュアし、アッパーパネル部109において表皮材103と芯材105との間に発泡層107が一体成形されたインストルメントパネル101が成形される(図8(c)及び図10参照)。
【0032】
(10) 芯材保持用流体圧シリンダ31を収縮作動させて芯材保持用スライドコア33を後退させ、かつ上記(6)の要領にて芯材保持装置21を作動させ、芯材105の芯材保持装置21による保持を解除した後、上型3を上昇させて成形型5を型開きし、しかる後、上記成形されたインストルメントパネル101を下型1から脱型する。
【0033】
なお、上記の実施形態では、表皮材103がアッパーパネル部109のみに設けられている場合であったが、表皮材103がロアパネル部111にまで延出している場合において、表皮材103に予めエア吹出口113に対応して開口部が形成されておらず、インストルメントパネル101を成形した後に表皮材103を切断して開口部を形成する場合には、上記の実施形態でいう表皮材周縁部103bとは、成形後に形成された開口部の開口周縁部をも含む概念である。
【0034】
また、上記の実施形態では、表皮材周縁部103bに対応する芯材105には、表皮材周縁部103bが押圧される突条105eを設けたが、この突条105eは必ずしも設ける必要はない。
【0035】
【発明の効果】
以上説明したように、この発明の方法によれば、成形型の型締め状態で、発泡原料をキャビティに注入した後、注入口に近接したシール部における表皮材周縁部の芯材に対する押圧力を部分的に減じるようにしているので、注入口周辺のキャビティ内のガスを上記注入口に近接したシール部から型外に比較的緩やかに放出することができる。そして、その後、芯材保持装置による芯材の上型への保持を解除して芯材に自由度を持たせるようにするので、発泡圧が一方的に表皮材に作用しないようにすることができ、表皮材周縁部の折曲部周辺、特にアンダー部を有する部分の表皮材の変形を防止することができる。しかも、上記のように注入口周辺のキャビティ内のガスの一部が既に型外に放出されているので、芯材の上型に対する保持解除により芯材の注入口と上型との間にできた隙間からの急激なガス抜けがなく、上記注入口に対応する表皮材に凹みのない見栄えの良い表皮材一体発泡成形品を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】表皮材を下型にセットした状態を示す成形工程図である。
【図2】芯材をセットした上型が下降して型締め状態に移行する直前を示す成形工程図である。
【図3】型締め状態を示す成形工程図である。
【図4】発泡原料をキャビティ内に注入した状態を示す成形工程図である。
【図5】シール用スライドコアが後退して部分的にガス抜きをしている状態を示す成形工程図である。
【図6】芯材の保持状態を解除した状態を示す成形工程図である。
【図7】芯材を再び芯材保持装置で保持して上型にセットするとともに、シール用スライドコアが前進した状態を示す成形工程図である。
【図8】シール用スライドコア設置箇所以外の箇所の成形型の断面図であり、(a)は型締め初期状態、(b)は発泡原料が充填された状態、(c)は発泡原料が発泡してインストルメントパネルが成形された状態をそれぞれ示す。
【図9】シール用スライドコア設置箇所の成形型の断面図であり、(a)は発泡原料が充填された状態、(b)はシール用スライドコアが後退して部分的にガス抜きをしている状態をそれぞれ示す。
【図10】インストルメントパネルの運転席側を示す斜視図である。
【符号の説明】
1 下型
1a 表皮材セット面
3 上型
3a 芯材セット面
5 成形型
19 シール部
21 芯材保持装置
37 注入ヘッド
39 キャビティ
101 インストルメントパネル(表皮材一体発泡成形品)
103 表皮材
103b 表皮材周縁部
105 芯材
105d エア吹出口周縁部
105g 注入口
R 発泡原料
Claims (1)
- 表皮材をセットする表皮材セット面を有する下型と、芯材をセットする芯材セット面を有する上型とからなる成形型の上記上型には、上記芯材を着脱自在に保持する芯材保持装置と、上記上型と下型とによる型締め状態で上記芯材に設けられた注入口から上記表皮材と芯材との間のキャビティ内に発泡原料を注入する注入ヘッドとが設けられ、上記発泡原料を上記注入ヘッドから注入口を経てキャビティ内に注入して表皮材と芯材との間に発泡層が一体成形された表皮材一体発泡成形品を成形する方法であって、
上記上型と下型とにより成形型を型締めし、表皮材周縁部を芯材に対して押圧してシール部を構成することにより発泡原料のキャビティ外への漏出を防止した状態で、発泡原料を上記注入ヘッドから注入口を経てキャビティ内に注入し、
次いで、上記シール部のうち少なくとも上記注入口に近接したシール部における表皮材周縁部の芯材に対する押圧力を部分的に減じて該シール部から注入口周辺のキャビティ内のガスを型外に放出し、
その後、上記芯材保持装置による芯材の上型への保持を解除することを特徴とする表皮材一体発泡成形品の成形方法。
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