JP3805423B2 - 部分加飾を有する樹脂成形品の射出成形方法 - Google Patents

部分加飾を有する樹脂成形品の射出成形方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は部分加飾を有する成形品の射出成形方法に関するもので、自動車の内外装品、家具、椅子、建築資材等を成形する際に利用可能である。
【0002】
【従来の技術】
熱可塑性樹脂の成形品においては、意匠性の向上、クッション性・ソフトタッチ性等の質感の付与、あるいは耐候性や耐傷付き性の付与等が要望され、また同時に製品コストの大幅な低減も強く要望されている。
そこで、意匠性向上や機能性付与や製品コストの低減のため、表面にのみ高価な加飾部材を設け、成形品本体は安価な熱可塑性樹脂とした積層成形品が一般に用いられている。その成形方法としては、予め加飾部材を配置しておいた金型内に、溶融樹脂を充填する射出成形で一体成形するのが、生産性の面等から好ましいと言われている。
【0003】
しかし、加飾シ−ト又は布等を積層した成形品を射出成形する際は、溶融樹脂の充填時の剪断力により、加飾部材が損傷を受け、外観が不良となることがある。また、通常の熱可塑性樹脂の成形品は、その取り付けや剛性向上のため、ボス及びリブが設けられており、上記の成形方法ではそれに対応する箇所の成形品の表面にヒケが発生するといった問題もある。
【0004】
また一方、大型の成形品等を射出成形するため、キャビティーに溶融樹脂を充填する射出充填孔を複数個設けた金型を用いて、一点の射出充填孔では溶融樹脂が途中で固化して、キャビティーの隅々まで溶融樹脂を充填することが困難な場合でも、分散して配置した複数の射出充填孔から同時に溶融樹脂を充填することで大型キャビティーのものまで成形できるようにした射出成形方法が知られている。しかし、この方法では、複数の射出充填孔から同時に溶融樹脂が充填されるため、各充填孔からの溶融樹脂が合流する箇所にウェルドラインが発生し、成形品の外観及び強度低下等の問題がある。
【0005】
この改善のため、特開平6-210669号公報には、複数の射出充填孔の各々に流量調整機構を設け、各射出充填孔から充填される溶融樹脂の流量を異なるタイミングで増減させながら溶融樹脂の充填を行い、ウェルドラインの発生を抑える射出成形方法が示されている。また、特開平5-337978号公報には、2セット以上の射出成形装置と、キャビティーに連結したランナーに設けられた2個以上の弁とを操作することにより、キャビティー内に充填された溶融樹脂の少なくとも一部に剪断力を加えながら成形を行う方法が示されている。しかしながら、これらの方法では、ウェルドラインがぼかされて見えにくくなるものの、ウェルドラインは発生するので、上記の問題を完全に解決できていない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、加飾部材が部分的に設けられ、多くの場合は厚肉部を有する熱可塑性樹脂の成形品を射出成形する際に、加飾部材に損傷がなく、またヒケやウェルドラインの発生がない、外観が良好な成形品の成形方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために鋭意検討した結果、複数の射出充填機能を備えた金型を用いた特定の圧縮射出成形方法及び必要により圧縮ガスの注入で上記目的を達成できることを見出し、以下に示す本発明を完成した。
(1)部分加飾および厚肉部を有する樹脂成形品の射出成形方法において、加飾部材を装着し、圧縮代を残して閉じた金型のキャビティーに、加飾部材の裏面に対峙する金型部分に設けられた射出充填孔から溶融樹脂を射出し、金型を閉じながらこれを展延した後、加飾部材の外縁より少し離れた非加飾部に対峙する金型部分に設けられた他の射出充填孔から溶融樹脂を射出し、金型キャビティー内に溶融樹脂を充填し、この非加飾部への溶融樹脂の充填終了後、金型の圧縮力を低減させ、前記厚肉部を形成させる金型部分の表面に設けた圧縮ガス注入口から圧縮ガスを注入し、この圧縮ガスの注入後、再度金型の圧縮力を増大させる成形手順を備え、前記他の射出充填孔が、前記加飾部材の裏面に充填された溶融樹脂が前記金型による圧縮で展延されて到達する位置に設けられ、この射出充填孔からの溶融樹脂の射出充填は前記展延された溶融樹脂が到達した後に開始されることを特徴とする部分加飾を有する樹脂成形品の射出成形方法。
【0008】
)厚肉部がボス又はリブである上記()に記載の部分加飾を有する樹脂成形品の射出成形方法。
)厚肉部が成形品外周の厚肉部である上記()に記載の部分加飾を有する樹脂成形品の射出成形方法。
【0009】
)非加飾部に対峙する金型部分に複数の射出充填孔が設けられており、それらが他の射出充填孔からの溶融樹脂が到達する順に従って溶融樹脂の射出を開始することを特徴とする上記(1)〜()のいずれかに記載の部分加飾を有する樹脂成形品の射出成形方法。
)加飾部材の裏面に対峙する金型部分に設けられた射出充填孔から溶融樹脂を射出する際に加飾部材に加わる剪断力が530MPa/m以下である上記(1)〜()のいずれかに記載の部分加飾を有する樹脂成形品の射出成形方法。
【0010】
剪断力とは、(溶融樹脂充填時の加飾部材の最高樹脂圧力/溶融樹脂の流動厚み)とする。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明について、詳細に説明する。
本発明は、加飾部材が部分的に設けられ、多くの場合は厚肉部を有する熱可塑性樹脂の成形品を対象とするものである。
加飾部材としては、特に制限はなく、繊維により構成された繊維素材シート、熱可塑性樹脂シート、又は、クッション性を有するシート材が好ましく採用できる。
【0012】
ここで、繊維素材シートとは、織布、不織布、編布等の布、繊維により形成されたシート状のもの全てをいう。そして、繊維素材シートは、起毛のあるものや厚みのあるものが高級感の創出性や手触りの良好性に優れているので好ましい。また、熱可塑性樹脂シートとしては、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル等からなるシートが好ましい。
【0013】
また一方、クッション性を有するシート材としては、薄手の表皮層とクッション性を有する厚手のクッション層で構成される多層シート材が好ましい。この薄手の表皮層は、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル等の熱可塑性樹脂が採用できる。また、厚手のクッション層としては、ポリプロピレンやウレタン等を発泡させた発泡体を好ましく採用できる。
【0014】
成形体本体に採用できる樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ABS、ポリカーボネート、ポリアミド等の熱可塑性樹脂またはこれらの熱可塑性樹脂にエチレン・α−オレフィン共重合体エラストマー等のエラストマー、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、ガラス繊維、炭素繊維等の無機充填剤を添加したものが挙げられる。主にポリプロピレン系樹脂を採用する場合が多い。
【0015】
厚肉部を有する樹脂成形品とは、ボス又はリブを有する成形品や外周部に厚肉部を有する成形品等を挙げることができる。このボス又はリブは、成形品の取り付け又は成形品の剛性向上のために設けられるものである。また、成形品の外周の厚肉部は圧縮ガスの注入で中空部を形成することができる部分である。
本発明の射出成形方法に使用できる金型としては、少なくとも複数の射出充填機能を備え、厚肉部を有する樹脂成形品では、さらに圧縮ガス注入機能を備えた金型である。
【0016】
複数の射出充填機能として、複数の射出充填孔の内、少なくとも1つは、加飾部材の裏面に対峙する金型部分に設けられ、他の射出充填孔は加飾部材の外縁より少し離れた非加飾部に対峙する金型部分に設けられる。非加飾部の射出充填孔の数や位置は、成形品の反り等の変形や成形面の転写性のむら等の不良現象が発生しないように、成形品の形状や寸法に応じて適宜設定すればよい。
【0017】
また、充填孔又はこれに繋がる溶融樹脂の流路には、遮断・開放可能な弁及びそれを制御する機構を備えたものが好ましい。弁機構は、充填孔部やランナー部に設けれはよく、弁構造としては、棒状のバルブロッド、ボールバルブ、バタフライバルブ等、これらの弁の駆動装置としては、油圧シリンダ装置、空気シリンダ装置、電動モータ等を採用できる。
【0018】
しかし、特に樹脂の流路を遮断する弁を設けず、射出装置の射出圧又は保圧の制御により、キャビティー内への漏れ出しやその流路への他からの侵入防止を行う方法も採用できる。
加飾部材側の金型には、加飾部材を仮止めするための針、又は真空吸引孔及びその付帯装置等を設けるのがよい。
【0019】
部分的に加飾部材を設ける射出成形品を成形する際、加飾部材に加わる剪断力が大きすぎると、加飾部材の損傷やシワ、加飾部材の一部溶融等の不良現象が発生する。そこで、剪断力を低下させるため、本発明では、圧縮代を有効に利用する成形方法を提案するものである。
具体的には、上記の問題を解決するためには、(溶融樹脂充填時の加飾部材の最高樹脂圧力/溶融樹脂の流動厚み)と定義する剪断力を530MPa/m以下で射出・充填するのが好ましく、さらに好ましくは470MPa/m以下にするとよい。なお、この加飾部材の最高樹脂圧力は、加飾部材の裏面の金型表面に設けた樹脂圧力計の樹脂圧力で代用し、溶融樹脂の流動厚みは(圧縮代−加飾部材の厚み)とした。
【0020】
圧縮ガス注入機能として、一つは、成形品の裏面側のボス又はリブに対応する位置の近傍に圧縮ガス注入口を設け、そこから注入した圧縮ガスで少なくとも一部が溶融状態にある充填された樹脂を成形品の表面側の金型に押圧するためのものであり、もう一つは、成形品の外周部等に設けた厚肉部に中空部を形成するためのものである。
前者は、成形品を離型させる突き出しピンのキャビティー側先端部(キャビティー面に開口された部分)のクリアランスが、1/100〜8/100mmに設定され、このクリアランスを通してキャビティー内に圧縮ガスを供給するよにしたもの、又はキャビティー面に開口した注入口に多孔質部材を設け、キャビティー内に圧縮ガスを供給するよにしたもの等が挙げられる。
【0021】
圧縮ガスの圧力、供給速度、供給タイミング、保圧時間等は、供給装置の制御システムで制御される。これらは、溶融樹脂の溶融粘度やボス又はリブの形状等に依存するので、成形品の表面にヒケが発生しないように適宜設定すればよい。なお、圧縮ガスの制御は、圧縮ガスが薄い固化層を破って樹脂内部に侵入してしまうことがないようにし、ある程度表面層の固化が進んだ状態で圧縮ガスの圧力を高め、十分にボス又はリブの基部及びその付近の溶融樹脂を成形品の裏面側から成形品の表面側の金型成形面に押し当てるのが好ましい。
【0022】
後者は、成形品の外周の厚肉部に効率よく圧縮ガスを注入できるように、前進後退可能なピンを設けるもの等が挙げられる。ピンの形状は特に限定されない。ピンの金型内への突き出し量は、厚肉部の形状等により適宜決定すればよい。
圧縮ガスの圧力、注入量、注入タイミング等は、注入装置の制御システムで制御される。これらは、溶融樹脂の溶融粘度や厚肉部の形状等に依存するので、所望の中空部が成形できるように適宜決定すればよい。
圧縮ガスは、別途に設けた圧縮ガス供給装置から供給する。この圧縮ガスとしては、窒素ガス、ヘリウム等の不活性ガス又は乾燥空気等を圧縮したものが採用できるが、安全面や経済面等から窒素ガスが好ましく使用できる。圧縮ガスの圧力は、通常、3〜10MPaの範囲である。
【0023】
射出成形装置としては、圧縮時に金型の圧縮力を二段階以上制御可能な圧縮成形機又は射出プレス成形機が採用できる。
本発明の内、部分加飾及び厚肉部を有する樹脂成形品の射出成形方法について図1に基づき、その成形手順に従い以下に説明する。
(1) 型開き状態にある金型20の成形品表面側の金型表面22に加飾部材3を装着する。
(2) 圧縮代4を残して金型を閉じ、射出成形機において使用する樹脂を適正な可塑化条件で溶融し、加飾部材の裏面に対峙する金型部分に設けられた射出充填孔25Aから金型キャビティーに射出する。圧縮代4は、通常、10〜50mm、好ましくは、15〜35mmの範囲で設定される。
【0024】
(3) 金型20を閉じながらキャビティーに射出された溶融樹脂を展延する。加飾部材の外縁より少し離れた非加飾部に対峙する金型部分に設けられた他の射出充填孔25B、25Cに到達するまで展延する。
(4) 上記の展延された溶融樹脂が到達した射出充填孔から順次溶融樹脂の射出を開始し、キャビティーに充填させるのがよい。この順次射出される溶融樹脂は、まだ高温高圧を保っているので、展延された溶融樹脂と融合し、ウェルドラインの発生はない。また、この溶融樹脂は成形品の外周部の未充填部分に選択的に進んでいくので、その射出・充填圧は末端部まで作用する。そのため、成形品の中央部と外周部の充填圧の圧力差を小さくでき、また保圧効果の差も小さくできる。
【0025】
(5) 型締めを緩める(型締め装置の油圧低減等)等により圧縮力を低減させ、厚肉部5に対応した金型表面に設けた図示されていない圧縮ガス注入口から圧縮ガスを注入する。
成形品の裏面側のボス又はリブ部周辺の表面側を金型面に圧縮ガスで押圧する場合は、上記の突き出しピンのクリアランス等から圧縮ガスを注入する。
また、成形品の外周部等に設けた厚肉部に中空部を形成する場合は、上記のピンを突き出す等の手段により圧縮ガスを注入する。
圧縮ガスの圧力、注入量等は、上記のように適宜調整する。
(6) 金型20の圧縮力を増大させ、溶融樹脂を冷却・固化させる保圧工程を開始する。必要に応じて、圧縮ガスの保圧も行い、ヒケや転写ムラの防止を行う。
(7) 樹脂が充分に冷却・固化した後、金型20を開いて成形品を取り出して成形を完了する。
【0026】
厚肉部を有しない場合は、上記の圧縮ガス注入機能を省略可能で、その成形手順において、上記の(5) を省略することができる。
また、成形品の形状や加飾部の位置によりウェルドラインを発生しないようにするため、上記の非加飾部に対峙する金型部分に設けられた他の射出充填孔が3以上ある場合は、加飾部材の裏面に充填された溶融樹脂が金型による圧縮で展延され、非加飾部の射出充填孔まで到達したら、その射出充填孔から溶融樹脂の射出充填を開始するとよい。また、その他の充填孔については、前記の圧縮で展延された溶融樹脂又は前記充填孔からの溶融樹脂が到達したものから順に溶融樹脂の射出充填を開始するのがよい。充填孔の位置、射出量等の設定は、成形品の形状や加飾部の位置によりウェルドラインを発生しないように適宜設定する。
【0027】
【実施例】
以下、本発明を具体的な実施例により説明する。
〔実施例1〕
図2に示すような部分加飾を有する自動車用ドアモデルを以下のように成形した。
(1)成形品
部分加飾を有するドアモデルの寸法は、平均肉厚が2.5mm、横が1200mm、縦が700mmのものである。
(2)使用樹脂及び加飾部材
使用樹脂は、出光ポリプロピレン(J−5050HP、MI=40g/10分;230°C、2.16kgf)とした。
加飾部材は、0.5mm厚の塩化ビニル製の表皮を3mm厚のポリプロピレン発泡体の基材(発泡倍率:15倍、東レ製ペフ)に貼り合わせたものを使用する。
【0028】
(3)使用金型
図2の自動車用ドアモデルに対応した金型で、加飾部材の裏面に1つ、また非加飾部に3つの射出充填孔が設けられ、自動車用ドアモデル外周部に対応した金型には圧縮ガス注入口が設けられている。
また、射出充填孔に弁構造として、棒状のバルブロッドを設け、油圧シリンダとその制御装置で駆動できるようになっている。
さらに、加飾部材の裏面に設けた射出充填孔の近くの金型表面に樹脂圧力計が設けられている。
【0029】
(4)使用成形機
汎用の横型射出成形機に射出圧縮成形機構を組み合わせた射出圧縮成形機(スクリュー径 105mm、型締力 850t 三菱重工製)を用いる。
また、圧縮ガス用のガス供給装置が別途設けられている。
【0030】
(5)成形手順と成形条件
上記のように加飾部材を装着し、圧縮代を残して金型を閉じた状態にする。
図2の加飾部材の裏面に対峙する金型部分に設けられた射出充填孔(位置a)から溶融樹脂を充填し、金型による圧縮で射出充填孔(位置b)までその溶融樹脂が展延された後、射出充填孔(位置b)から溶融樹脂の充填を開始する。射出充填孔bからの溶融樹脂が他の射出充填孔(位置c又はd)に到達したら、各々の射出充填孔から溶融樹脂を射出し、非加飾部も充填を完了する。
次いで、上記のように型締めを緩め(型締め装置の油圧低減)、圧縮力を低減させ、成形品の外周部に対応した金型表面に設けた図示されていない圧縮ガス注入口から圧縮ガスを注入する。
その後、金型の圧縮力を増大させ、溶融樹脂を冷却・固化させる保圧工程を開始する。圧縮ガスの保圧も行い、ヒケや転写ムラの防止を行う。
樹脂が充分に冷却・固化した後、金型を開いて成形品を取り出す。
【0031】
以下に主な成形条件を示す。
a)樹脂温度:180°C
b)金型温度: 30°C
c)圧縮開始:加飾部の樹脂充填直後±0.1秒
d)圧縮代 :32.5mm
e)樹脂圧力(加飾部):10.2MPa
f)充填速度(加飾部):550cc/秒
g)充填時間(加飾部): 1.2 秒
h)圧縮ガス: 7MPa
(6)評価結果
成形品の加飾部材に損傷やシワの発生がなく、非加飾部にはウェルドラインの発生がなく、また、外周部にはヒケが見られない良好な成形品が得られた。
(溶融樹脂充填時の加飾部材の最高樹脂圧力/溶融樹脂の流動厚み)で定義する剪断力は、10.2×1000/(32.5−3.5)=352MPa/m であった。なお、3.5は、加飾部材の厚み(mm)である。
【0032】
〔実施例2〜7〕
圧縮代及び充填時間を表1に示すように変化させた以外は、実施例1と同様に成形を行った。
また、評価結果を表1に併記した。
【0033】
〔比較例1〜4〕
圧縮代及び充填時間を表1に示すように変化させた以外は、実施例1と同様に成形を行った。
また、評価結果を表1に併記した。
上記で定義した剪断力が、530MPa/m を超え、成形品の加飾部材に損傷が見られた。
【0034】
【表1】
Figure 0003805423
【0035】
【発明の効果】
本発明によれば、展延された溶融樹脂が到達した射出充填孔から射出される溶融樹脂は、高温高圧を保っているので、展延された溶融樹脂と融合するので、ウェルドラインが発生せず、成形品の外観品質及び強度を向上できる。また、成形品の中央部と周辺部でその充填圧の差が小さく、成形品に反り等の変形がない。
【0036】
厚肉部を有する樹脂成形品の場合は、それを形成させる金型部分の表面に設けた圧縮ガス注入口から圧縮ガスを注入することで、ヒケや転写ムラ等の不良現象をなくすことができる。
加飾部材の裏面に溶融樹脂を充填する際、圧縮代を残した金型のキャビティーに射出することができるので、溶融樹脂による剪断力を低く抑えることができ、加飾部材の損傷、シワ発生等の問題が解消する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に用いる成形装置の概念図を示す。
【図2】自動車のドアモデルの概略図を示す。
【符号の説明】
3 ・・・加飾部材
4 ・・・圧縮代
5 ・・・厚肉部(成形品の外周部等に設けた厚肉部で中空部を形成する部分に相当)
20 ・・・金型
22 ・・・成形品表面側の金型表面
25A・・・加飾部材の裏面に対峙する金型部分に設けられた射出充填孔
25B・・・他の射出充填孔
25C・・・他の射出充填孔
30 ・・・溶融樹脂
31 ・・・圧縮ガス注入部

Claims (5)

  1. 部分加飾および厚肉部を有する樹脂成形品の射出成形方法において、加飾部材を装着し、圧縮代を残して閉じた金型のキャビティーに、加飾部材の裏面に対峙する金型部分に設けられた射出充填孔から溶融樹脂を射出し、金型を閉じながらこれを展延した後、加飾部材の外縁より少し離れた非加飾部に対峙する金型部分に設けられた他の射出充填孔から溶融樹脂を射出し、金型キャビティー内に溶融樹脂を充填し、この非加飾部への溶融樹脂の充填終了後、金型の圧縮力を低減させ、前記厚肉部を形成させる金型部分の表面に設けた圧縮ガス注入口から圧縮ガスを注入し、この圧縮ガスの注入後、再度金型の圧縮力を増大させる成形手順を備え、
    前記他の射出充填孔が、前記加飾部材の裏面に充填された溶融樹脂が前記金型による圧縮で展延されて到達する位置に設けられ、この射出充填孔からの溶融樹脂の射出充填は前記展延された溶融樹脂が到達した後に開始されることを特徴とする部分加飾を有する樹脂成形品の射出成形方法。
  2. 厚肉部がボス又はリブである請求項に記載の部分加飾を有する樹脂成形品の射出成形方法。
  3. 厚肉部が成形品外周の厚肉部である請求項に記載の部分加飾を有する樹脂成形品の射出成形方法。
  4. 非加飾部に対峙する金型部分に複数の射出充填孔が設けられており、それらが他の射出充填孔からの溶融樹脂が到達する順に従って溶融樹脂の射出を開始することを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の部分加飾を有する樹脂成形品の射出成形方法。
  5. 加飾部材の裏面に対峙する金型部分に設けられた射出充填孔から溶融樹脂を射出する際に加飾部材に加わる剪断力が530MPa/m以下である請求項1〜のいずれかに記載の部分加飾を有する樹脂成形品の射出成形方法。
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