JP3789539B2 - 多層シュリンクフィルム - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明のフィルムは、包装材料として収縮(「シュリンク」と同義語として使用する。)包装に適した特性を有しており、主として食品包装の用途に使用される多層フィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、収縮包装は、その特徴として、被包装物の形状や大きさによらず、また同時に複数個の製品を迅速かつタイトに包装することができ、得られた包装物は外観が美しく、ディスプレイ効果を発揮し、商品価値を高め、また内容物を衛生的に保ち、視覚による品質管理が容易なことから食品、雑貨等の包装に使用されている。
【0003】
かかる収縮包装には、フィルムに少し余裕をもたせて内容物を一次包装した後、熱風等によりフィルムを熱収縮させる方法や従来のストレッチ包装のようにフィルムをある程度緊張状態で包装し、フィルムの端を被包装物の底部に折り込んで、この折り込み部でのフィルムの重なり部を熱板上で密着(この密着方法を以下、底シールと記す)させた後、同様に加熱収縮処理を施して局部的なフィルムのタルミやシワを除去する(以下、ストレッチシュリンクと記す)等の方法があり、いずれもタイトで美しい仕上がりが得られる。
【0004】
これらの用途のフィルムに必要な特性としては、まずシール性、特にストレッチシュリンクにあっては、底シール性が重要であり、通常底シール温度範囲の広いものが要求される。ここで底シール温度範囲とは、シール温度が低いと密着(ここでは表面層の溶融による熱接着も含む)したりせず、また一見密着しているようでも熱収縮時に容易に密着部が剥がれてしまい、またその後の取り扱い中(例えば、輸送中)に同様に密着部が剥がれてしまうとか、またシール温度が高すぎるとフィルムが局部的に溶融したり、白化を生じるというような、熱収縮処理後のシール状態も含めてのトラブルがない適性なシール温度範囲をいう。
【0005】
また、要求される他の特性としては、一般に被包装物は熱を嫌う場合が多いために低温収縮性であることがあり、このことはエネルギーコスト面からも有効である。また、耐引き裂き性や耐突き破れ性および落錘衝撃強度等の機械的強度、透明性、光沢、防曇性等があり、さらに包装後のフィルムに加わる種々の変形に対して生じる歪み(輸送中の振動、段積みされた時に下段の包装物に加わる荷重や環境温度の変化等による内容物の変形および指で押したりした場合等に、フィルムに生じるタルミやシワ、さらには局部的な凹み)が、できるだけ元の状態に速やかに回復するだけの変形回復性を備え、また包装時における内容物の温度に影響されない安定した包装仕上がりを発揮することであり、これらを総合的に満たすフィルムが強く望まれている。
【0006】
ところで、従来、多層の熱収縮性フィルムとしては、特開昭59−158254号公報に、エチレンー酢酸ビニル共重合体(以下、EVAとも記す)からなる表層と線状ポリエチレンからなる芯層の3層の低温収縮性フィルムが開示されている。しかしながら、このフィルムは透明性や引き裂き強度は優れているが、突き刺し強度が不十分であり、突起を有したもの(例えば、有頭エビ、蟹等)の包装には問題がある。また、底シール性がそのシール温度(熱板表面温度に等しい)範囲が狭いという点で問題がある。更に、このフィルムは包装後の変形回復性も不十分なものである。
【0007】
また、特開昭60−154065号公報には、EVAを表層とし、内層に線状低密度ポリエチレン層およびEVA層を含む5層の収縮フィルムが開示されているが、このフィルムも透明性や引き裂き強度が優れる反面、底シール温度範囲が実用上不十分であり、収縮包装後の変形回復性も不足している。特公平2−14898号公報には、軟質のエラストマーを含む特定の混合組成物層を少なくとも1層含む多層フィルムが開示されているが、透明性や底シール性に優れ、防曇性の付与も容易であるが、引き裂き強度や突き刺し強度が不十分であり、収縮包装後の変形回複性に劣るものである。
【0008】
また、特開平3−215034号公報、特開平3−220250号公報、特開平5−131599号公報には、特定の線状低密度ポリエチレンや特定のエチレンα−オレフィン共重合体を用いた多層の収縮フィルムが開示されており、これらのフィルムは透明性、引き裂き強度は良好であるが、防曇の持続性を付与するために練り込み法によって防曇剤を添加した場合、防曇剤のブリード性に乏しく、防曇性を発揮しにくい欠点がある他、底シール温度範囲も狭く、高精度な包装条件の維持管理が必要である等の問題がある。
【0009】
さらに、特開平5−318682号公報には芯層がエチレンープロピレン共重合体からなり、両外層が特定の直鎖状低密度ポリエチレンであるフィルムが開示されているが、このフィルムは防曇性に劣る他、突き刺し強度や落錘衝撃強度が不十分なものである。特開平6−134945号公報には芯層がエチレンープロピレン共重合体やエチレンーブテンープロピレン共重合体からなり、両外層が直鎖状低密度ポリエチレンとエチレンーエチルアクリレート共重合体の混合物からなる多層フィルムが開示されているが、透明性や光沢が悪く、防曇性も発揮しずらいものであり、突き刺し強度や落錘衝撃強度に劣るものである。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
以上の如く、現状においては収縮包装用フィルムとしての要求を総合的に満たす特性を有したフィルムは得られておらず、また省資源という観点からのフィルムの薄肉化も大きな問題となっており、これらの要求を満足するフィルムの出現が強く望まれている。
【0011】
本発明は、薄肉でも高強度を有し、シール性、特にストレッチシュリンク包装における底シール性に優れ、実用上十分な透明性や光沢、防曇性を発揮し、収縮包装における仕上がりが良好で、包装後のフィルムの変形回復性も良好な低温収縮性に優れたシュリンクフィルムを得ることを課題とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明は、
エチレンー酢酸ビニル共重合体、エチレンー脂肪族不飽和カルボン酸共重合体、エチレン−脂肪族不飽和カルボン酸エステル共重合体から選ばれる少なくとも1種の共重合体樹脂からなる表層(A)と、内層としてエチレンα−オレフィン共重合体からなる層(B)、及びポリプロピレン系樹脂からなる層(C)をそれぞれ少なくとも1層有する、少なくとも4層からなる多層フィルムにおいて、以下の(1)〜(4)を特徴とする多層シュリンクフィルムである。
【0013】
(1)層(B)に使用されるエチレンα−オレフィン共重合体の密度が0.850〜0.935g/cm3 であって、190℃、荷重2.16kgfにおけるメルトフローレートが0.2〜3.5g/10分であること
(2)層(C)がポリプロピレン系樹脂50〜90重量%およびポリブテン−1系樹脂10〜50重量%の混合樹脂からなり、該ポリプロピレン系樹脂は230℃、荷重2.16kgfにおけるメルトフローレートが0.1〜10g/10分であり、かつ該ポリブテン−1系樹脂は190℃、荷重2.16kgfにおけるメルトフローレートが0.2〜10g/10分であって、荷重1.0kgfにおけるビカット軟化点が50〜100℃であること
(3)全層に占める前記各層の厚み比率として、表層(A)が10〜60%、層(B)が15〜80%、層(C)が10〜60%であること
(4)多層シュリンクフィルムの80℃における熱収縮率がタテとヨコの少なくとも1方向において15%以上であり、かつ該フィルムのタテとヨコの平均熱収縮率の80℃と100℃における値の差が30%以下であり、かつ該フィルムの80℃におけるタテとヨコの平均熱収縮応力が90g/mm2 以上であり、かつ該フィルムの80℃におけるタテとヨコの熱収縮力がいずれも110g/15mm幅以下であること
以下、本発明を説明する。
【0014】
まず、本発明の従来技術と相違するところは、以下の4点である。
(1)内層(B)に使用されるエチレンα−オレフィン共重合体の密度が0.850〜0.935g/cm3 であって、190℃、荷重2.16kgfにおけるメルトフローレートが0.2〜3.5g/10分であること。
(2)内層(C)がポリプロピレン系樹脂50〜90重量%およびポリブテン−1系樹脂10〜50重量%の混合樹脂からなり、該ポリプロピレン系樹脂は230℃、荷重2.16kgfにおけるメルトフローレートが0.1〜10g/10分であり、かつ該ポリブテン−1系樹脂は190℃、荷重2.16kgfにおけるメルトフローレートが0.2〜10g/10分であって、荷重1.0kgfにおけるビカット軟化点が50〜100℃であること。
【0015】
(3)全層に占める前記各層の厚み比率として、表層(A)が10〜60%、層(B)が15〜80%、層(C)が10〜60%であること。
(4)多層シュリンクフィルムの80℃における熱収縮率がタテとヨコの少なくとも1方向において15%以上であり、かつ該フィルムのタテとヨコの平均熱収縮率の80℃と100℃における値の差が30%以下であり、かつ該フィルムの80℃におけるタテとヨコの平均熱収縮応力が90g/mm2 以上であり、かつ該フィルムの80℃におけるタテとヨコの熱収縮力がいずれも110g/15mm幅以下であること。
【0016】
これらの4要件を全て満たすフィルムはこれまでになく、本発明により初めて、従来よりも各種物性に優れ、総合的にバランスのとれた画期的なシュリンクフィルムの提供が可能となったのである。
次に、上記従来技術と相違するところの本発明の構成要件の役割について述べる。先ず相違点(1)の役割は、安定した延伸性を確保し、低温収縮性と同時に収縮包装後に実用上十分な変形回復性を発揮するだけの分子配向をフィルムに与える点である。
【0017】
本発明においては、エチレンα−オレフィン共重合体の密度が0.850〜0.935g/cm3 である。本発明でいう密度とは、JIS−K−7112に従って測定される23℃の値である。密度が0.935g/cm3 を越えると透明性が低下したり、延伸性(特に、低温延伸性)が低下する他、収縮後の透明性が悪化する。密度が0.850g/cm3 未満であると、収縮後の変形回復性が低下する他、底シール温度範囲が狭くなる。好ましい密度は、0.870〜0.930g/cm3 、より好ましくは0.900〜0.925g/cm3 である。
【0018】
また、本発明においてはエチレンα−オレフィン共重合体の190℃、荷重2.16kgfにおけるメルトフローレート(以下、MFRとも記す。)が0.2〜3.5g/10分である。本発明でいうMFRとは、JIS−K−7210に従って測定される該条件での値である。MFRが0.2g/10分未満では、押出成形時の押出動力が上昇する問題点と、押し出された原反の表面平滑性が低下する問題点が生ずる。また、MFRが3.5g/10分を越える場合は、延伸そのものが困難になるか、延伸の安定性が低下する。また、フィルムが得られても引き裂き強度、突き刺し強度等の機械的特性に劣るものしか得られない。好ましいMFRは、0.3〜3g/10分、より好ましくは0.5〜3g/10分である。
【0019】
以上のエチレンα−オレフィン共重合体としては、線状低密度ポリエチレン、超低密度(VL、ULと呼ばれているもの)ポリエチレン等があり、これらはエチレンとプロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、4−メチルーペンテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1等の炭素数が3〜18のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種類の単量体との共重合体であるが、引き裂き強度や突き刺し強度、落錘衝撃強度等の機械的強度および延伸性の点から、α−オレフィンとしては4−メチルーペンテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1が好ましい。
【0020】
これには、チーグラー触媒等の従来の触媒を用いて得られた重合体の他に、通称メタロセン系触媒で代表されるシングルサイト系触媒等で重合された分子的(コモノマー分布等)、分子量分布的に従来の方法で重合されたものより、より均一化されたもの(例えば、重量平均分子量/数平均分子量で表される値が1.5〜3.5のもの、より好ましくは1.5〜3.0のもの)、または他の系統の触媒で重合され、上記の特性に加えてランダム性の高い共重合であり、かつ制御された長鎖分岐を有する共重合体(α−オレフィンとして例えば、オクテン−1)も含めるものとする。または、これらのα−オレフィンに加え、極性基を有する単量体、スチレン系モノマー等を加えて共重合したものでも良い。
【0021】
内層(B)は、エチレンα−オレフィン共重合体を50重量%以上含有するものであり、その本来の特性を損なわない範囲で、他の1種又は2種以上の樹脂を含有してもよい。エチレンα−オレフィン共重合体含有量は、好ましくは60重量%以上、より好ましくは70重量%以上である。混合するその他の樹脂の例としては、エチレンー酢酸ビニル共重合体およびその部分ケン化物、エチレンー脂肪族不飽和カルボン酸共重合体、エチレンー脂肪族不飽和カルボン酸エステル共重合体、アイオノマー樹脂、高圧法低密度ポリエチレン、スチレンー共役ジエンブロック共重合体および該ブロック共重合体の少なくとも一部を水添したもの、またこれら樹脂を酸変性等により改質したもの、結晶性1、2−ポリブタジエン、ポリブテン−1系樹脂、石油樹脂、同水添樹脂、テルペン樹脂、同水添樹脂等が挙げられるが、該(B)層以外の層に実際に使用される樹脂そのものも含まれる。
【0022】
次に相違点(2)の役割は、シール性、特に底シール温度範囲を拡大させ、包装条件の選択自由度や包装スピードの向上等、包装作業性を大幅に改良する点、および引き裂き強度や突き刺し強度等の機械的強度を向上させ、包装時のフィルムの破断を防止したり、突起を有したものの包装に対する可能にする点、さらに熱収縮率の温度依存性が大きくなり過ぎることによって生じる、被包装物と接触する部分でのアバタ状の収縮斑を抑制する効果を発揮する点である。
【0023】
本発明においては、内層(C)がポリプロピレン系樹脂50〜90重量%およびポリブテン−1系樹脂10〜50重量%の混合樹脂からなる。ポリプロピレン系樹脂の主たる役割は、シール性、特に底シール温度範囲を拡大させる点、熱収縮率の温度依存性を抑制する点であり、ポリブテン−1系樹脂の主たる役割は、引き裂き強度や突き刺し強度等の機械的強度を向上させる点である。ポリブテン−1系樹脂の含有量が10重量%未満では、引き裂き強度、突き刺し強度、落錘衝撃強度等の機械的特性が低下し、収縮包装後の変形回復性が劣ったものしか得られない。また、ポリブテン−1系樹脂の含有量が50重量%を越え、ポリプロピレン系樹脂の含有量が50重量%未満となると、フィルムの耐熱性が低下するため、シール性、特に底シール温度範囲が狭まり、包装作業性が大幅に悪化してしまう。
【0024】
本発明におけるポリプロピレン系樹脂は、230℃、荷重2.16kgfにおけるMFRが0.1〜10g/10分のものである。MFRが0.1g/10分未満では、押出成型時の押出動力が上昇し、押し出された原反の表面平滑性が低下する。また、MFRが10g/10分を越える場合は、延伸の安定性が低下して偏肉の大きなフィルムになってしまったり、引き裂き強度、突き刺し強度、落錘衝撃強度等の機械的特性が低下し、収縮包装後の変形回復性が劣ったものしか得られない。好ましいMFRは0.3〜8g/10分であり、より好ましくは0.5〜6g/10分である。
【0025】
また、本発明におけるポリブテン−1系樹脂は、190℃、荷重2.16kgfにおけるMFRが0.2〜10g/10分のもので、かつ荷重1.0kgfにおけるビカット軟化点が50〜100℃のものである。本発明でいうビカット軟化点とは、JIS−K−7206に従って測定される該条件での値である。MFRが0.1g/10分未満では、ポリプロピレン系樹脂との相溶性が悪化し、フィルムが白化したり、押し出された原反の表面平滑性が低下する。また、MFRが10g/10分を越える場合は、引き裂き強度、突き刺し強度、落錘衝撃強度等の機械的特性が低下し、収縮包装後の変形回復性が劣ったものしか得られない。好ましいMFRは0.5〜8g/10分であり、より好ましくは0.8〜6g/10分である。
【0026】
ビカット軟化点が50℃未満では、フィルムの耐熱性が低下するため、シール性、特に底シール温度範囲が狭まり、包装作業性が大幅に悪化する。また、ビカット軟化点が100℃を越えると、引き裂き強度、突き刺し強度、落錘衝撃強度等の機械的特性が低下し、収縮包装後の変形回復性が劣ったものしか得られない。
【0027】
上記のポリプロピレン系樹脂としては、ホモのポリプロピレン、プロピレン含有量が70重量%以上のプロピレンと他のα−オレフィン(C2、C4〜C8のもの)の1種または2種以上との共重合体であって、チーグラー・ナッタ触媒のような従来の触媒を用いて重合されたもの以外に、前述のメタロセン系触媒その他等で重合されたシンジオタクチックポリプロピレンやアイソタクチックポリプロピレン等も含まれ、これらのうち少なくとも1種が用いられる。
【0028】
また、同様に、上記のポリブテン−1系樹脂としては、ホモのポリブテン−1、ブテン−1含有量が70重量%以上のブテン−1とエチレンないしプロピレンとの共重合体が用いられる。内層(C)にはポリプロピレン系樹脂およびポリブテン−1系樹脂の他に、機械的強度や耐熱性等に支障のない範囲で、他の1種又は2種以上の樹脂を40重量%未満含有してもよい。
【0029】
混合するその他の樹脂の例としては、エチレンー酢酸ビニル共重合体およびその部分ケン化物、エチレンー脂肪族不飽和カルボン酸共重合体、エチレンー脂肪族不飽和カルボン酸エステル共重合体、アイオノマー樹脂、高圧法低密度ポリエチレン、エチレンα−ポリオレフィン共重合体、スチレンー共役ジエンブロック共重合体および該ブロック共重合体の少なくとも一部を水添したもの、またこれら樹脂を酸変性等により改質したもの、結晶性1、2−ポリブタジエン、石油樹脂、同水添樹脂、テルペン樹脂、同水添樹脂等が挙げられるが、(C)層以外の層に実際に使用される樹脂そのものも含まれる。
【0030】
次に相違点(3)の役割は、機械的強度、シール性、低温収縮性、防曇性、収縮後の変形回復性といったシュリンクフィルムとして必要な性能の全てを、バランス良く満足させる点である。
本発明においては全層に占める各層の厚み比率が、表層(A)が10〜60%、内層(B)が15〜80%、内層(C)が10〜60%である。表層(A)の比率が10%未満であると、防曇性やシール強度が低下し、実用性に乏しくなる。また、60%を越えると引き裂き強度や突き刺し強度、落錘衝撃強度等の機械的強度が低下する。一方、内層(B)の比率が15%未満の場合、延伸性が低下する他、機械的強度や収縮後の変形回復性が大幅に劣化する。また、80%を越えると、延伸前の原反を押し出す時の安定性が低下し、原反の厚みや幅の変動が大きくなって、後の延伸が困難になる傾向にある。また、得られたフィルムは収縮力が強くなり過ぎる傾向にあり、シール作業時にシール部を含めてその周辺が極端に収縮してしまい、包装仕上がりを極端に悪くしたり、底シールの場合には収縮時にシール部が剥がれてしまったりする。
【0031】
また、内層(C)については、該層の比率が10%未満の場合は、底シール温度範囲が狭くなる他、熱収縮率の温度依存性を抑制する効果が発揮できない。一方、(C)層の比率が60%を越えると、延伸性が低下したり、延伸温度の上昇をもたらして結果として低温収縮性が失われる。また、他の層の取り得る層比率が低下し、防曇性やシール性、引き裂き強度等の機械的強度、収縮後の変形回復性等が不十分なものとなる。
【0032】
ただし、(C)層の比率が10%以上であっても、該層の厚みそのものが0.5μm以上でないと上記効果が得にくい場合もあるため、好ましくは(C)層の厚みの下限は0.5μmである。全層に占める(A)層の厚み比率の好ましい値は、15〜50%、より好ましくは20〜40%である。また、内層(B)の好ましい層比率は、20〜70%、より好ましくは25〜60%である。同様に、内層(C)の好ましい層比率は、15〜50%、より好ましくは20〜40%である。
【0033】
次に相違点(4)の役割は、収縮包装時に十分なフィット性と結束力を与え包装不良の発生を防ぎ、優れたシール性を達成し、包装仕上がり不良を抑制し、また実用上十分な包装後の変形回復性を発揮する点である。
本発明においては、多層シュリンクフイルムの80℃における熱収縮率がタテとヨコの少なくとも1方向において15%以上であり、かつ該フイルムのタテとヨコの平均熱収縮率の80℃と100℃における値の差が30%以下である。該フイルムの80℃におけるタテとヨコの少なくとも1方向の熱収縮率が15%未満では、得られるフイルムは基本的に低温収縮性に乏しく、収縮包装時の包装後のフィット性が不十分になり、包装後にシワやタルミが発生する原因となる。また、このフイルムを用いてトレーや容器を包装した時には、角の部分が収縮不良として残りやすく、商品性を低下させる。該フイルムの80℃における好ましい収縮率としては、タテとヨコの少なくとも1方向において20%以上である。その上限は、保管、流通過程における寸法変化(ロール状の巻物の場合、巻き芯と外側での幅寸法の差が問題となる。)に悪影響が生じない範囲でほぼ決まり、通常は60%以下、好ましくは50%以下である。
【0034】
また、該フイルムのタテとヨコの平均熱収縮率の80℃と100℃における値の差が30%を越えると、底シールを行う場合にフィルムの折り重ね部に凹凸が発生し易くなって平面性が得られず、仕上がりが著しく悪化したり、フィルム同士の密着不良を生じやすい。また、収縮包装時に食品等の被包装物と接触する部分でアバタ状の収縮斑が発生しやすい。該フイルムの80℃と100℃との平均熱収縮率の差の好ましい値は25%以下、より好ましくは20%以下である。この差が小さい程、フイルムの温度変化に対する収縮率の変化が小さく、底シール性が良好で、アバタ状の収縮斑が発生しにくく、好ましい。
【0035】
また、本発明においては、多層シュリンクフイルムの80℃におけるタテとヨコの平均熱収縮応力が90g/mm2 以上であって、かつ該フイルムの80℃におけるタテとヨコの熱収縮力がいずれも110g/15mm幅以下である。該フイルムの80℃におけるタテとヨコの平均熱収縮応力が90g/mm2 を下回ると、上記と同様に、フイルムのフィット性と結束力が不十分となる他、特にフイルムの包装後の変形回復性に劣るものとなる。該フイルムの80℃における好ましい平均熱収縮応力は100g/mm2 以上、より好ましくは100g/mm2 以上である。その上限はフィルムの厚み要因が加わったフィルム全体としての収縮力が本発明で規定した値を越えない範囲におのずと制限される。
【0036】
また、該フイルムの80℃におけるタテとヨコの熱収縮力がいずれも110g/15mm幅を越えると、フイルムの溶断シールを行った場合においては、シール直後や収縮時に溶断シール部の熱間剥離性が生じたりしてシール開きが発生してしまったり、また底シールにおけるフィルム折り重ね部が、収縮時にめくれて剥離が起こりやすくなり、また被包装物に対する締め付け力が強くなり過ぎてトレーや容器の変形が生じやすい。この多層シュリンクフイルムの熱収縮力は、タテ、ヨコ共、いずれも110g/15mm幅以下であることが必要であるが、好ましい熱収縮力は100g/15mm幅以下、より好ましくは90g/15mm幅以下である。その下限は上記で規定した熱収縮応力の値を下回らない範囲におのずと制限される。
【0037】
つぎに、上記以外の本発明の構成要件について説明する。
表層(A)は、特に包装用フィルムとして必要な、透明性、光沢、(低温)ヒートシール性等を発揮する役割を有するが、この層に使用される樹脂は、エチレンー酢酸ビニル共重合体、エチレンー脂肪族不飽和カルボン酸共重合体、エチレンー脂肪族不飽和カルボン酸エステル共重合体から選ばれる少なくとも1種の共重合体樹脂である。
【0038】
エチレンー酢酸ビニル共重合体としては、酢酸ビニル基含有量が、5〜26重量%、MFR(190℃、2.16kgf:以下、EVAについては同条件)が0.3〜10g/10分のものが好ましい。酢酸ビニル基含有量が5重量%未満であると透明性に劣り、26重量%を越えると延伸製膜安定性に劣り、酢酸臭が強くなって商品性が低下する他、べたつき現象が生じやすくなり、包装作業時にトラブルが発生しやすくなる。MFRが0.3g/10分未満では、押出成型時の押出動力が上昇する等の溶融加工性に問題がある他、延伸製膜時に表面が荒れやすい。また、MFRが10g/10分を越えると、ホットタック性等のシール強度が低下する他、機械的強度面での特定内層との相乗効果の発現に乏しくなる。さらに好ましい酢酸ビニル基含有量は、7〜20重量%、またさらに好ましいMFRは0.5〜6g/10分である。
【0039】
つぎに、エチレンー脂肪族不飽和カルボン酸共重合体およびエチレンー脂肪族不飽和カルボン酸エステル共重合体としては、エチレンーアクリル酸共重合体、エチレンーメタクリル酸共重合体、エチレンーアクリル酸エステル(メチル、エチル、プロピル、ブチル等のC1〜C8のアルコールの成分より選ばれる。)共重合体、エチレンーメタクリル酸エステル(メチル、エチル、プロピル、ブチル等のC1〜C8のアルコールの成分より選ばれる。)共重合体等が挙げられる。これらは、さらにその他の成分を加えた3成分以上の多元共重合体(例えば、エチレンと脂肪族不飽和カルボン酸および同エステルより選ばれる自由な3元以上の共重合体等あるいは編成されたもの)であってもよい。共重合する成分が上記の中、またはその他の成分から選ばれる少なくとも2種以上の多元共重合体でもよい。これらのカルボン酸またはカルボン酸エステル基の含有量は、通常3〜35重量%が用いられる。フィルムの透明性、ブロッキングや腰の低下等による包装作業性の低下を考慮すれば、好ましくは3〜25重量%、より好ましくは3〜20重量%である。MFR(190℃、2.16kgf)については、エチレンー酢酸ビニル共重合体と同様である。
【0040】
また、該(A)層には、その本来の特性を損なわない範囲内で必要に応じて別の樹脂を混合してもよく、混合する樹脂の例として、エチレンー酢酸ビニル共重合体の部分ケン化物、アイオノマー樹脂、エチレンα−オレフィン共重合体、高圧法低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、上記のエチレンα−オレフィン共重合体とは異なるX線法による結晶化度が30%以下のα−オレフィン共重合体よりなる軟質樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリブテン系樹脂、スチレンー共役ジエンブロック共重合体および該ブロック共重合体の少なくとも一部を水添したもの、またこれら樹脂を酸変性等により改質したもの、結晶性1、2−ポリブタジエン等が挙げられ、これらは50重量%を上回らない範囲で、好ましくは40重量%以下、より好ましくは30重量%以下で適宜使用してもよい。
【0041】
本発明のフィルムは、特に食品包装用途に用いられる場合は少なくとも表層(A)の1つに、防曇剤を0.1〜5重量%(添加する表層に対する重量%)を含むことが好ましく、より好ましくは0.3〜4重量%である。0.1重量%未満では防曇効果が不十分であり、5重量%を越えるとオーバーブリードにより被包装物を汚染したり、場合によってはシール性を低下させる原因となる。使用される防曇剤の例としては、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸コハク酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタンーグリセリン系縮合脂肪酸エステル、ソルビタンージグリセリン系縮合脂肪酸エステル、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステルなどの多価アルコール部分脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステルなどのエチレンオキサイド付加物、さらにソルビトールにプロピレンオキサイドとエチレンオキサイドを付加した後にエステル化して得られるソルビトール誘導体、アルキルアミン、アルキルアミド、アルキルエタノールアミン、脂肪酸ジエタノールアミドなどのアミン、アミド類およびそれらのエチレンオキサイド付加物、ポリアルキレングリコール、その他公知のものの中から1種または2種以上を併用して用いられる。
【0042】
上記添加物は、表面にブリードする他に適当量をコーティング法で表面に保有していてもよい。また、滑剤として公知の無機物、酸アミド類等を含めるかまたは同様に上記の他にシリコーンエマルジョンより選ばれるものをフィルムの片面または両面にコーティングしてもよい。
本発明のフィルムは、表層を形成する(A)層および内層である(B)層、(C)層の合計少なくとも4層から構成されるが、層の配置としては、例えば4層の場合:A/B/C/A、5層の場合:A/C/B/C/A、A/B/C/B/A、A/B/A/C/A等、7層の場合:A/C/B/A/B/C/A、A/C/A/B/A/C/A、A/C/B/C/A/C/A、A/B/A/C/A/C/A、A/B/A/B/A/C/A、A/B/C/A/B/C/A、A/B/C/B/A/C/A、A/C/B/C/B/C/A、A/B/C/B/C/B/A等が挙げられる。他に、6層、8層およびそれ以上の場合も含むものとする。
【0043】
(A)層または(B)層または(C)層をそれぞれ2層以上有する場合は、それらの層を構成する樹脂は、それぞれ同一であっても、また異なっていてもよい。また、(A)層はそれぞれ単量体成分が同一または異なる樹脂の多層、例えばA1/A2等であってもよく、(B)層または(C)層についても同様である。また、本発明のフィルムには、その本来の特性を損なわない範囲で、更に内層として、本発明の(A)、(B)、(C)の各層に使用可能な樹脂の他、公知の熱可塑性樹脂で構成される別の層を配してもよい。この追加される層には、回収層として、フィルム各層に使用されている樹脂からなる混合組成物層も含まれる。これらの別の層に使用されるものには、例えば4メチルーペンテン−1系重合体、ポリプロピレン系樹脂、ポリブテン系樹脂がある。但し、いずれも共重合体を含むものとする。また、アイオノマー樹脂、高圧法低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンや(B)層に使用可能なものとは異なるα−オレフィン共重合体よりなる軟質樹脂、スチレンー共役ジエンブロック共重合体および該ブロック共重合体の少なくとも一部を水添したもの、結晶性1,2ポリブタジエン、ポリアミド、熱可塑性ポリエステル、エチレンービニルアルコール共重合体等が挙げられ、これらのうち少なくとも1種用いられる。
【0044】
これらの樹脂で構成された層は(A)層と(B)層、(B)層と(C)層、(A)層と(C)層の各層間に配置される。また、各層間には必要に応じて別の公知の接着性樹脂よりなる接着層を設けてもよい。かかる接着性樹脂には、エチレンー酢酸ビニル共重合体、エチレンー脂肪族不飽和カルボン酸共重合体、エチレンー脂肪族不飽和カルボン酸エステル共重合体、またはエチレンと上記の共重合する各単量体の自由な組合せの少なくとも2種からなる多元共重合体、エチレンー酢酸ビニル共重合体の部分ケン化物、少なくとも1種の炭素数2以上のα−オレフィンと一酸化炭素および酢酸ビニル、脂肪族不飽和カルボン酸、脂肪族不飽和カルボン酸エステルより選ばれる少なくとも1種の単量体とからなる少なくとも3種の単量体で構成される共重合体、熱可塑性ポリウレタン、その他上記の樹脂およびポリオレフィン系樹脂の酸変性されたもの等が挙げられる。
【0045】
本発明の樹脂層(A)、(B)、および(C)は、それぞれその本来の特性を損なわない範囲で、可塑剤、酸化防止剤、界面活性剤、着色剤、紫外線吸収剤、滑剤、無機フィラー等を含んでもよく、また本発明のフィルムの表面の片面あるいは両面が、防曇性、帯電防止性、滑性および密着性等を付与するために、コーティング処理が施されてもよい。
【0046】
コーティングに用いられる処理剤としては、既に記述した各種防曇剤の他、ショ糖エステル、各種シリコーンエマルジョン、シリコーンオイル、グラニジン誘導体、含リン酸陰イオン活性剤、スルホン酸塩誘導体、第4アンモニウム塩、ピリジニウム塩、イミダゾリン誘導体、ポリビニルアルコール、アクリル酸系の親水性ポリマー、ピロリジウム環を主鎖に有するポリマー、さらにはシリカゾル、アルミナゾル等の他、ミネラルオイル、液状ポリブテン、上記に含まれない油脂類、他に粘性液体(100センチポイズ以上)等、さらに公知の処理剤があり、これらの少なくとも1つまたは2つ以上を組み合わせて使用されるが、適当な溶媒(例えば、水やアルコール等)に希釈して使用してもよい。
【0047】
また、上記の(A)、(B)、(C)層には、石油樹脂、水添石油樹脂、天然ロジン類、エステル化ロジン類、テルペン系樹脂(含同水添樹脂)等を混合して、高分子可塑化効果、延伸性、表面特性、その他性質等を改良してもよい。さらに上記の(A)層にはコロナ処理、プラズマ処理等の表面処理も可能であり、上記コーティング処理とは別に、また組み合わせて用いられる。
【0048】
本発明の熱収縮性多層フィルムの厚みは、通常5〜80μm、好ましくは6〜60μm、より好ましくは7〜40μmであるが、特に本発明の効果がより一層発揮されるのは、7〜20μmの薄肉の領域である。5μm未満では、フィルムの腰が不足し、シール性も低下する等、包装時の作業性に問題を生じる。また、80μmを越えるとフィルムの腰が強くなりすぎ、フィット性が悪くなる他、収縮の応答性が悪くなったり、全体の収縮が強くなりすぎて、トレーや容器が変形して仕上がりが損なわれやすくなる。また、機械的強度等の性能が過剰となる。
【0049】
つぎに、本発明の熱収縮性多層フィルムの製法の一例について述べる。まず、各層((A)、(B)、(C)層および必要に応じて用いられるその他の層)を構成する樹脂をそれぞれの押出機で溶融して、多層ダイで共押出し急冷固化して、多層フィルム原反を得る。押出法は、多層のTダイ法、多層のサーキュラー法等が用いることができるが、好ましくは後者がよい。このようにして得た該多層フィルム原反を加熱して、配向を付与するのに適当な温度条件下で延伸を行う。延伸温度としては、フィルムの延伸開始点(インフレ法の場合は、バブルとして膨張開始する位置)における表面温度で通常120℃以下、好ましくは100℃以下である。ただし、延伸温度の下限は、延伸後のフィルムの寸法安定性の点から40℃がよい。
【0050】
延伸方法としては、ロール延伸法、テンター法、インフレ法(ダブルバブル法を含む)等があるが、同時二軸延伸で製膜される方法が延伸性その他合理性等より好ましい。また、延伸は少なくとも1方向に面積延伸倍率で3〜50倍、好ましくは4〜40倍で延伸し、用途により必要な熱収縮率等に応じて適宜選択される。また、必要に応じての後処理、例えば寸法安定性のためのヒートセット、他種フィルム等とのラミネーションが行われてもよい。
【0051】
さらに、本発明のフィルムは、その少なくとも1つの層が架橋されていてもよく、厚み方向における架橋度がほぼ均一の場合、特定の層が主に架橋されている場合、表層から厚み方向に架橋度が漸次変化する場合、両表層が主として架橋していて厚み方向に適時分布をもつ場合であってもよい。
この架橋処理は、延伸製膜を行う前後に、電子線(例えば、50〜1000kVのエネルギーのもの)、紫外線、X線、α線、γ線等のエネルギー線により片面、両面照射、また厚み方向に架橋の分布が(例えば、片面の表層が架橋)生ずるような照射を行うか、またはパーオキサイド等(場合により、特定層に架橋助剤、特定層に架橋遅延剤等の併用もよい)の添加後に加熱処理を行う方法、または両方法の併用等の他、公知の方法により改質処理を行ってもよく、好ましくは電子線(例えば、50〜1000kVのエネルギーで透過深度を所定にコントロールして)による方法がクリーンでよい。
【0052】
架橋処理により、耐熱性、ヒートシール性、特に高速包装におけるシール性の向上、および延伸製膜安定性(ネッキングの抑制、厚みの均一性、延伸倍率の向上、延伸温度条件幅の拡大等)を向上させることも可能であって、必要に応じて用いられる。
【0053】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を実施例にて更に詳しく説明する。
また、本発明で用いた測定評価方法は、以下の通りである。
(1)延伸製膜安定性
所定の方法において加熱延伸を行った際のフィルムの連続製膜安定性(インフレ法においてはバブルの連続製膜安定性)、および出来上がったフィルムの厚み斑について評価した。
【0054】
ここで、フィルムの厚み斑はダイヤルゲージを用いてフィルムの全幅(ヨコ)方向に、等間隔で最低25点、および流れ(タテ)方向に5cm間隔で最低25点、合計50点以上の厚みを測定し、まずその平均値を算出する。つぎに、最大値と最小値の差の1/2の値を、先に算出した平均値に対する百分率で表し、これに±の符号をつけて表示するものとする。
【0055】
このフィルムの厚み斑に基いて、延伸製膜安定性を以下の基準に従って評価した。
◎:フィルム(インフレ法においては延伸バブル)の延伸開始位置がほぼ一定で、延伸パターンが極めて安定しており(延伸バブルの場合は、揺れがほとんどない)、連続安定性が良好。
【0056】
○:延伸パターンに若干の変動が見られ、フィルムの厚み斑が±15%以内。
△:延伸開始位置に変動があり、または延伸パターンが不安定。
×:フィルム切れ、バブルのパンクが多発。あるいは、延伸が出来ても延伸開始位置の変動が大きく、厚み斑が±25%を越える。
(2)熱収縮率
100mm角のフィルム試料を所定の温度に設定したエアーオーブン式恒温槽に入れ、自由に収縮する状態で10分間処理した後、フィルムの収縮量を求め、元の寸法で割った値の百分比で表した。1軸延伸の場合は延伸方向の値、2軸延伸の場合には、タテ、ヨコ方向の測定値の平均とした。
【0057】
(3)熱収縮力および熱収縮応力(以下、文中にてORSと略す)
フィルムを幅15mmの短冊状にサンプリングし、それをストレインゲージ付きのチャックにチャック間50mmに緩めることなくセットし(初荷重2g)、それを80℃に加熱したシリコーンオイル中に浸漬して発生した収縮力をタテ、ヨコそれぞれについて検出し、浸漬1分後における値を測定し(n=5)、フィルムの収縮力とした。また、この値を浸漬前のフィルムの初期断面積で除した値をORSとした。
【0058】
(4)引き裂き強度
JIS−P−8116に準じて、軽荷重引き裂き試験機(東洋精機製)を用いて測定した。値は、タテ方向とヨコ方向の引き裂き強度の平均値とした。なお、ここでの測定の読みは、目盛りの20〜60の範囲になるように測定を行うが、測定レンジによって測定値に差がある場合は、高い方の値を採用した。
【0059】
(5)突き刺し強度
農林規格第10条に準じて、フィルムを内寸法で125mm×125mmの木枠に固定し、その中心部に直径1.0mm、先端形状0.5mmRの針を50±5mm/分の速度で突き刺し、針が貫通するまでの最大荷重を測定し、その値を突き刺し強度とした。
【0060】
(6)落錘衝撃強度
ASTM−D−1709に準じて測定した。
(7)防曇性
製膜後3日経過したフィルムを用いて、20℃の水が入ったビーカーを覆って密封し、5℃の冷蔵庫で1時間放置後、フィルムに付着した水の状態を以下の基準で目視判定して評価した。
【0061】
5;鏡面状に水膜が形成され、曇りが全く無く透明なもの。
4;ややムラのある水膜であるが、内容物の確認にほとんど支障がないもの。
3;広がった水滴が付着しているが、内容物の確認は可能であり、実用上支障がないもの。
2;小さい水滴が付着しており、内容物の形状が判る程度で、細部の確認が困難なもの。
【0062】
1;白く曇り、内容物の存在が確認できないもの。
(8)底シール温度範囲および収縮後のシール部仕上がり性
内部底部に100gの金属板を貼りつけた一般市販のPP製トレー(概略寸法;タテ150mm、ヨコ115mm、高さ23mm)のタテ方向に沿って、フイルムを筒状に折り曲げ、このフイルムで両端のフイルムがダブつかずにトレー底部で約半分の面積が2枚重ねになるようにトレーを包み込み、続いてトレーのヨコ方向に沿って折り曲げられないで残つているフイルムの両端をダブつかないように折り曲げ、トレー底部で重ね合させた。この時、トレー底部では3枚、5枚重ねの部分ができている。このように準備したトレーを、各温度に調整された熱板上に2秒間載せて底シールを行った。フィルムのシールされた端部を軽く引っ張って剥離しない温度を下限として、一ヶ所でもフィルムが溶融して穴が開いたり、商品性を喪失させる程度の白化が生じたり、フィルムが収縮してシールそのものが困難になるまでの温度を上限として、この下限と上限との範囲を底シール温度範囲とした。また、上記底シール温度範囲のほぼ中間温度で底シールした後、広範囲な温度条件(80〜160℃)で熱風加熱方式のトンネルを通過させて底シール部の仕上がりを以下の条件で評価した。
【0063】
○;シール部の端を軽く引っ張っても剥離せず、部分的なめくれや収縮による凹凸が発生しないトンネル温度範囲が30℃以上を有する。
△;同上の温度範囲が10℃以上、30℃未満の場合。
×;同上の温度範囲が10℃未満の場合。
(9)変形回復性
中がくりぬかれた貫通状態の外寸法が180×180mmの木枠をフィルム支持台とし、該支持台の中心部に外寸法が82×82mmの升状の木型を該支持台の各辺が平行を保たれるようにして、該支持台の下側から該支持台上面より15mm上に突き出させ、この状態でフィルムを該升状の木型に上から覆い被せ、このフイルムの端をフィルム支持台のへりに両面テープで固定した。この際、フィルムの張りは最小限で、かつタルミが生じないように注意深く固定した。ついでこの状態のままで90℃の熱風トンネルを3秒間通過させ、フィルムをシュリンクさせた。トンネル通過後、室温(約23℃)で約3分放置後にフィルム支持台から升状の木型を下側へ抜き取り、その1分後に該支持台に固定されているフィルムの表面の状態を観察した。タルミやシワまたは局部的な凹みがほとんどなく商品性に優れるものを◎、タルミやシワ、または局部的な凹みがわずかに認められるが商品性に問題のないものを○、明らかにタルミやシワ、局部的な凹みが残っており、商品性に問題のあるものを×とし、○と×の中間レベルのものを△とした。
【0064】
(10)アバタ状の収縮斑
底シール性の評価でシュリンク包装したときの鉄片に代えて、約5℃で保存していたムキエビをトレーに若干盛り上がる程度に入れ、同様にシュリンク包装して、ムキエビと接触している部分のフィルムの収縮状態を観察した。アバタ状の収縮斑がほとんどないものを○、アバタ状の収縮斑がほとんどの接触部で発生しており、商品性に問題のあるものを×とした。また、両者の中間を△とした。
【0065】
(11)収縮後HAZE
底シール性の評価で得た包装体のトレー上のフィルムを切り出し、ASTM−D−1003−52に準じて測定した。
(12)実施例、比較例において使用した樹脂
EVA1:エチレンー酢酸ビニル共重合体(酢酸ビニル含有量=15重量%、MFR(190℃、2.16kgf)=2.2g/10分)
EM1:エチレンーアクリル酸メチル共重合体(アクリル酸メチル含有量=9重量%、MFR(190℃、2.16kgf)=3.0g/10分)
EA1:エチレンーアクリル酸共重合体(アクリル酸含有量=6.5重量%、MFR(190℃、2.16kgf)=3.5g/10分)
LL1:エチレンα−オレフィン共重合体(密度=0.912g/cm3 、MFR(190℃、2.16kgf)=0.8g/10分、コモノマー=ヘキセン−1)
LL2:エチレンα−オレフィン共重合体(密度=0.912g/cm3 、MFR(190℃、2.16kgf)=2.0g/10分、コモノマー=ヘキセン−1)
LL3:エチレンα−オレフィン共重合体(密度=0.921g/cm3 、MFR(190℃、2.16kgf)=2.0g/10分、コモノマー=ヘキセン−1)
LL4:エチレンα−オレフィン共重合体(シングルサイト触媒で重合された長鎖分岐を有するもの、密度=0.902g/cm3 、MFR(190℃、2.16kgf)=1.0g/10分、コモノマー=オクテン−1)
LL5:エチレンα−オレフィン共重合体(シングルサイト触媒で重合された長鎖分岐を有するもの、密度=0.870g/cm3 、MFR(190℃、2.16kgf)=1.0g/10分、コモノマー=オクテン−1)
LL6:エチレンα−オレフィン共重合体(密度=0.923g/cm3 、MFR(190℃、2.16kgf)=3.6g/10分、コモノマー=ブテン−1)
LL7:エチレンα−オレフィン共重合体(密度=0.937g/cm3 、MFR(190℃、2.16kgf)=2.0g/10分、コモノマー=ヘキセン−1)
PP1:ポリプロピレン系樹脂(エチレンをコモノマーとする共重合体、MFR(230℃、2.16kgf)=1.8g/10分、mp=140℃)
PP2:ポリプロピレン系樹脂(エチレンとブテン−1をコモノマーとする共重合体、MFR(230℃、2.16kgf)=5g/10分、mp=131℃)
PP3:ポリプロピレン系樹脂(ホモポリマー、MFR(230℃、2.16kgf)=1.8g/10分、mp=160℃)
PP4:ポリプロピレン系樹脂(ホモポリマー、MFR(230℃、2.16kgf)=11g/10分、mp=161℃)
PB1:ポリブテン−1系樹脂(プロピレンをコモノマーとする共重合体、MFR(190℃、2.16kgf)=1.0g/10分、ビカット軟化点(1.0kgf)=59℃)
PB2:ポリブテン−1系樹脂(エチレンをコモノマーとする共重合体、MFR(190℃、2.16kgf)=0.3g/10分、ビカット軟化点(1.0kgf)=70℃)
PB3:ポリブテン−1系樹脂(プロピレンをコモノマーとする共重合体、MFR(190℃、2.16kgf)=4.0g/10分、ビカット軟化点(1.0kgf)=70℃)
PB4:ポリブテン−1系樹脂(エチレンをコモノマーとする共重合体、MFR(190℃、2.16kgf)=12g/10分、ビカット軟化点(1.0kgf)=70℃)
PB5:ポリブテン−1系樹脂(エチレンをコモノマーとする共重合体、MFR(190℃、2.16kgf)=1.0g/10分、ビカット軟化点(1.0kgf)=102℃)
混1:LL1を75重量%、EVA1を10重量%、PP1を10重量%、PB1を5重量%混合したもの
混2:LL1を40重量%、EVA1を24重量%、PP1を24重量%、PB1を12重量%混合したもの
混3:PP1を70重量%、PB1を30重量%混合したもの
混4:PP2を70重量%、PB2を30重量%混合したもの
混5:PP3を70重量%、PB1を30重量%混合したもの
混6:PP4を70重量%、PB2を30重量%混合したもの
混7:PP1を70重量%、PB3を30重量%混合したもの
混8:PP2を70重量%、PB4を30重量%混合したもの
混9:PP1を70重量%、PB5を30重量%混合したもの
混10:PP1を85重量%、PB1を15重量%混合したもの
混11:PP1を60重量%、PB1を40重量%混合したもの
混12:PP1を95重量%、PB1を5重量%混合したもの
混13:PP1を40重量%、PB1を60重量%混合したもの
混14:EVA1を60重量%、LL4を40重量%混合したもの
【0066】
【実施例1】
エチレンー酢酸ビニル共重合体;EVA1(酢酸ビニル含有量=15重量%、MFR(190℃、2.16kgf)=2.2g/10分)にジグリセリンモノラウレエートを1.5重量%含めたものを表層とし(本文中で説明したところの表層(A)に該当)、また内層の1つとして(本文中で説明したところの内層(B)に該当)エチレンα−オレフィン共重合体;LL1(密度=0.912g/cm3 、MFR(190℃、2.16kgf)=0.8g/10分、コモノマー=ヘキセン−1)にジグリセリンオレートとグリセリンモノオレートの1:1混合液を2.0重量%含めたものを、さらに別の内層として(本文中で説明したところの内層(C)に該当)ポリプロピレン系樹脂;PP1(エチレンをコモノマーとする共重合体、MFR(230℃、2.16kgf)=1.8g/10分、mp=140℃)を70重量%、ポリブテン−1系樹脂;PB1(プロピレンをコモノマーとする共重合体、MFR(190℃、2.16kgf)=1.0g/10分、ビカット軟化点(1.0kgf)=59℃)を30重量%混合したものからなる混3を用いて、フイルムの層構成がEVA1/LL1/混3/LL1/EVA1の5層になるように環状5層ダイを用いて押し出した後、冷水にて急冷固化して折り幅190mm、厚み約146μmの各層とも均一な厚み精度のチューブ状原反を作成した。
【0067】
この際、チューブ内部には、6%オレイン酸ナトリウム水溶液を封入し、ニップロールでしごくことにより、内面コーティングを施した。各層の厚みは、チューブの外側から22μm/36μm/29μm/36μm/22μmになるように調整した。ついで、この原反を2対の差動ニップロール間に通し、加熱ゾーンで約80℃(延伸温度に等しい)に加熱したあと、延伸ゾーンで内部に空気を圧入してバブルを形成させて連続延伸を行い、冷却ゾーンで18℃の冷風を吹きつけて、延伸倍率でタテ4.0倍、ヨコ4.5倍に同時二軸延伸したフィルムを得た。
【0068】
このフィルムをさらに2対の差動ニップロール間に通し、60℃に加熱しながら、タテ、ヨコそれぞれ10%収縮させながら熱固定し、厚み10μmのフィルムを得た。該フィルムの評価結果を表1〜2に示すが、フィルムの延伸製膜安定性は極めて良好(◎)であり、引き裂き、突き刺し、落錘衝撃強度等の機械的強度に優れ、低温収縮性で透明性に優れ、また底シール性にも優れ、包装適性についても収縮斑のない仕上がりが良好なフィルムであった。得られた包装体の変形回復性は極めて良好であり、防曇性も5点満点中5点のレベルであり、実用性を十分満たすものであった。
【0069】
【実施例2〜5】
実施例1と同様な方法で、表1〜4に示す5層のフィルムを得た。各表層(A)には実施例1と同じジグリセリンモノラウレエートを1.5重量%含ませ、各内層(B)には実施例1と同じジグリセリンオレートとグリセリンモノオレートの1:1混合液を2.0重量%含ませ、また原反チューブ内部には、6%オレイン酸ナトリウム水溶液を封入して、同様な処理を行った。延伸温度、延伸倍率は表1〜4に示す通りに、それぞれ二軸延伸を行った。結果として、延伸製膜性は良好であり、実施例1と同様に高強度で低温収縮性、透明性に優れ、シール性、包装仕上がり、弾性回復性等に優れるフィルムであった。
【0070】
【比較例1〜2】
実施例1と同様な層構成を基に、本発明の範囲外のMFRや密度をもつ樹脂層を用いて同一厚みの原反を作成し、延伸製膜を試みた。比較例1は、内層(B)に相当する層に用いたエチレンα−オレフィン共重合体のMFRが範囲外であり、比較例2は、エチレンα−オレフィン共重合体の密度が範囲外である。各表層(A)には実施例1と同じジグリセリンモノラウレエートを1.5重量%含ませ、各内層(B)には実施例1と同じジグリセリンオレートとグリセリンモノオレートの1:1混合液を2.0重量%含ませ、また原反チューブ内部には、6%オレイン酸ナトリウム水溶液を封入して、同様な処理を行った。延伸温度、延伸倍率は表3〜4に示す通りに、それぞれ二軸延伸を行った。
【0071】
まず比較例1は延伸が不安定で偏肉が大きく(±21%)、比較的偏肉の少ない部分を選んでフィルムを評価したところ、引き裂き強度等の機械的強度が不十分であった。比較例2は極めて延伸性が悪く、フィルムを得ることができなかった。
【0072】
【実施例6〜8】
実施例1と同様な方法で、表3〜6に示す5層のフィルムを得た。各表層(A)には実施例1と同じジグリセリンモノラウレエートを1.5重量%含ませ、各内層(B)には実施例1と同じジグリセリンオレートとグリセリンモノオレートの1:1混合液を2.0重量%含ませ、また原反チューブ内部には、6%オレイン酸ナトリウム水溶液を封入して、同様な処理を行った。延伸温度、延伸倍率は表3〜6に示す通りに、それぞれ二軸延伸を行った。結果として、延伸製膜性は良好であり、実施例1と同様に高強度で低温収縮性、透明性に優れ、シール性、包装仕上がり、弾性回復性等に優れるフィルムであった。
【0073】
【比較例3〜5】
実施例1と同様な層構成を基に、本発明の範囲外のMFRやビカット軟化点をもつ樹脂層を用いて同一厚みの原反を作成し、延伸製膜を試みた。比較例3は、内層(C)に相当する層に用いたプロピレン系樹脂のMFRが範囲外であり、比較例4は、同じくポリブテン−1系樹脂のMFRが範囲外であり、比較例5は、ポリブテン−1系樹脂のビカット軟化点が範囲外である。各表層(A)には実施例1と同じジグリセリンモノラウレエートを1.5重量%含ませ、各内層(B)には実施例1と同じジグリセリンオレートとグリセリンモノオレートの1:1混合液を2.0重量%含ませ、また原反チューブ内部には、6%オレイン酸ナトリウム水溶液を封入して、同様な処理を行った。延伸温度、延伸倍率は表5〜8に示す通りに、それぞれ二軸延伸を行った。
【0074】
まず比較例3、4は延伸が不安定で偏肉が大きく(±23%)、それぞれ比較的偏肉の少ない部分を選んでフィルムを評価したところ、引き裂き強度等の機械的強度が不十分であり、収縮包装後の変形回復性に劣るものであった。また、比較例5では、延伸製膜性は良好であったが、やはり引き裂き強度等の機械的強度が不十分であり、収縮包装後の変形回復性に劣るものであった。
【0075】
【実施例9、10】
実施例1と同様な方法で、表7〜8に示す5層のフィルムを得た。各表層(A)には実施例1と同じジグリセリンモノラウレエートを1.5重量%含ませ、各内層(B)には実施例1と同じジグリセリンオレートとグリセリンモノオレートの1:1混合液を2.0重量%含ませ、また原反チューブ内部には、6%オレイン酸ナトリウム水溶液を封入して、同様な処理を行った。延伸温度、延伸倍率は表7に示す通りに、それぞれ二軸延伸を行った。結果として、延伸製膜性は良好であり、実施例1と同様に高強度で低温収縮性、透明性に優れ、シール性、包装仕上がり、弾性回復性等に優れるフィルムであった。
【0076】
【比較例6、7】
実施例1と同様な層構成を基に、本発明の範囲外の含有率をもつ樹脂層を用いて同一厚みの原反を作成し、延伸製膜を試みた。比較例6は、内層(C)に相当する層に用いたポリブテン−1系樹脂の含有量が本発明の範囲よりも少なく、また比較例7は、同じくプロピレン系樹脂の含有量が本発明の範囲よりも少ない。各表層(A)には実施例1と同じジグリセリンモノラウレエートを1.5重量%含ませ、各内層(B)には実施例1と同じジグリセリンオレートとグリセリンモノオレートの1:1混合液を2.0重量%含ませ、また原反チューブ内部には、6%オレイン酸ナトリウム水溶液を封入して、同様な処理を行った。延伸温度、延伸倍率は表7〜10に示す通りに、それぞれ二軸延伸を行った。
【0077】
それぞれ延伸製膜性は良好であったが、比較例6では、引き裂き強度等の機械的強度が不十分であり、収縮包装後の変形回復性に劣るものであり、比較例7では、実用的な底シール温度範囲が狭い上に収縮後のシール仕上がりが悪く、またアバタ状の収縮斑の発生が認められた。
【0078】
【実施例11】
実施例1と同様な方法で、表9〜10に示す5層のフィルムを得た。各表層(A)には実施例1と同じジグリセリンモノラウレエートを1.5重量%含ませ、各内層(B)には実施例1と同じジグリセリンオレートとグリセリンモノオレートの1:1混合液を2.0重量%含ませ、また原反チューブ内部には、6%オレイン酸ナトリウム水溶液を封入して、同様な処理を行った。延伸温度、延伸倍率は表5に示す通りに、それぞれ二軸延伸を行った。結果として、延伸製膜性は良好であり、実施例1と同様に高強度で低温収縮性、透明性に優れ、シール性、包装仕上がり、弾性回復性等に優れるフィルムであった。
【0079】
【比較例8】
実施例1と同様な層構成を基に、本発明の範囲外の含有率をもつ樹脂層を用いて同一厚みの原反を作成し、延伸製膜を試みた。内層(B)に相当する層に用いたエチレンα−オレフィン共重合体の含有量が本発明の範囲よりも少ないことである。各表層(A)には実施例1と同じジグリセリンモノラウレエートを1.5重量%含ませ、各内層(B)には実施例1と同じジグリセリンオレートとグリセリンモノオレートの1:1混合液を2.0重量%含ませ、また原反チューブ内部には、6%オレイン酸ナトリウム水溶液を封入して、同様な処理を行った。延伸温度、延伸倍率は表9〜10に示す通りに、それぞれ二軸延伸を行った。
【0080】
結果として、延伸製膜性は良好であったが、引き裂き強度等の機械的強度が不十分であり、収縮包装後の変形回復性に劣るものであった。
【0081】
【実施例12〜13】
実施例1と同様な方法で、表9〜12に示す5層のフィルムを得た。各表層(A)には実施例1と同じジグリセリンモノラウレエートを1.5重量%含ませ、各内層(B)には実施例1と同じジグリセリンオレートとグリセリンモノオレートの1:1混合液を2.0重量%含ませ、また原反チューブ内部には、38%シュガーエステル(ショ糖ラウレート)水溶液20重量%とジメチルシリコーンエマルジョン80重量%との混合液を封入して、同様な処理を行った。延伸温度、延伸倍率は表9〜12に示す通りに、それぞれ二軸延伸を行った。結果として、延伸製膜性は良好であり、実施例1と同様に高強度で低温収縮性、透明性に優れ、シール性、包装仕上がり、弾性回復性等に優れるフィルムであった。
【0082】
【比較例9〜11】
実施例1と同様な樹脂層を用いて、本発明の範囲外の厚み比率をもつ層構成である同一厚みの原反を作成し、延伸製膜を試みた。比較例9は、表層(A)に相当する層の厚み比率が本発明の範囲よりも小さく、比較例10は、内層(B)に該当する層の厚み比率が小さく、比較例11は、内層(C)に該当する層の厚み比率が小さい。各表層(A)には実施例1と同じジグリセリンモノラウレエートを1.5重量%含ませ、各内層(B)には実施例1と同じジグリセリンオレートとグリセリンモノオレートの1:1混合液を2.0重量%含ませ、また原反チューブ内部には、6%オレイン酸ナトリウム水溶液を封入して、同様な処理を行った。延伸温度、延伸倍率は、表11〜12に示す通りに、それぞれ二軸延伸を行った。
【0083】
結果として、比較例9および11の延伸製膜性は良好であったが、比較例9では、実用的な底シール温度範囲が狭い上に収縮後のシール仕上がりが悪く、また防曇性に乏しいものであり、比較例11においても、実用的な底シール温度範囲が狭い上に収縮後のシール仕上がりが悪く、またアバタ状の収縮斑の発生が認められた。比較例10は延伸が不安定で偏肉が大きく(±22%)、比較的偏肉の少ない部分を選んでフィルムを評価したところ、引き裂き強度等の機械的強度が不十分であり、収縮包装後の変形回復性に劣るものであった。
【0084】
【比較例12〜14】
実施例1と同様な層構成、樹脂層を基に、本発明の範囲外の物性を持つようなフィルムを製膜した。まず5層Tダイを用いて各樹脂を共押出し、表面温度20℃の冷却ロールにて急冷固化し、幅200mmの原反を得た。各表層(A)には実施例1と同じジグリセリンモノラウレエートを1.5重量%含ませ、各内層(B)には実施例1と同じジグリセリンオレートとグリセリンモノオレートの1:1混合液を2.0重量%含ませた。原反の厚みは、比較例12では約40μm、比較例13では約250μm、比較例14では約750μmであった。
【0085】
次に、テンターを用いて、延伸温度、延伸倍率は表13〜14に示す通りに、それぞれ逐次二軸延伸を行った。得られた比較例12のフイルムは80℃におけるタテとヨコの平均熱収縮応力が80g/mm2 と小さく、比較例13のフイルムはタテとヨコの平均熱収縮率の80℃と100℃とにおける差が34℃と大きく、また比較例14は80℃における熱収縮力がタテが123g/15mm幅、ヨコが118g/15mm幅と大きい。
【0086】
得られたフィルムを評価したところ、比較例12では、収縮率が不十分のため収縮包装後にシワやタルミが発生し、また収縮包装後の変形回復性が不十分であり、比較例13では、底シール温度範囲が狭い上に収縮後のシール仕上がりが悪く、またアバタ状の収縮斑が発生し、比較例14では底シール温度範囲が狭い上に収縮後のシール仕上がりが悪く、また収縮力が強すぎるため収縮後にトレーの変形が発生した。
【0087】
【実施例14】
実施例1と同様な方法で、表13〜14に示す5層のフィルムを得た。各表層(A)には実施例1と同じジグリセリンモノラウレエートを1.5重量%含ませ、各内層(B)には実施例1と同じジグリセリンオレートとグリセリンモノオレートの1:1混合液を2.0重量%含ませ、また原反チューブ内部には、6%オレイン酸ナトリウム水溶液を封入して、同様な処理を行った。延伸温度、延伸倍率は表13〜14に示す通りに、それぞれ二軸延伸を行った。結果として、延伸製膜性は良好であり、実施例1と同様に高強度で低温収縮性、透明性に優れ、シール性、包装仕上がり、弾性回復性等に優れるフィルムであった。
【0088】
【比較例15〜18】
本発明の効果を従来技術と比較するために、特公平2−14898号公報に対応するものとして、その開示技術に従ってフィルムを得た。これを比較例15とした。また同様に、特開平5−318682号公報の開示技術に従って延伸製膜を行って得たフィルムを比較例16とし、これを表15〜18に示した。なお、比較例15のフイルムの層構成において、混EはEVA1(55重量%)、PP3(30重量%)、TE(15重量%)からなり、TEはエチレンとプロピレン15モル%とエチリデンノルボルネン3重量%のランダム共重合体である。
【0089】
比較例15、16にはいずれも表層に、押出機先端部より、ジグリセリンモノオレートを1.5重量%圧入混合した。また、市販のポリプロピレン系樹脂の多層シュリンクフィルム;市販品1(線状低密度PE/(線状低密度PEとポリプロピレンランダム共重合体の混合物)/ポリプロピレンランダム共重合体/(線状低密度PEとポリプロピレンランダム共重合体の混合物)/線状低密度PEの5層フィルム、厚み12μm)を比較例17とし、同様に市販の線状低密度ポリオレフィン系の多層シュリンクフィルム;市販品2(超低密度線状PE(VL)/線状低密度PE(LL)/VLの3層フィルム、厚み13μm)を比較例18とした。これらのフィルムの評価結果も合わせて表15〜16に示した。
【0090】
まず、比較例15は、低温収縮性で透明性に優れ、包装仕上がりも良好であるが、引き裂き強度や突き刺し強度等の機械的強度や変形回復性に劣るものであり、また比較例16および17は突き刺し強度や耐衝撃性および底シール性に劣り、防曇性に乏しく、変形回復性も不十分である。
また、比較例18も同様に、底シール性と防曇性に問題があり、突き刺し強度も不十分である他、包装後の変形回復性も不十分であった。
【0091】
【表1】
Figure 0003789539
【0092】
【表2】
Figure 0003789539
【0093】
【表3】
Figure 0003789539
【0094】
【表4】
Figure 0003789539
【0095】
【表5】
Figure 0003789539
【0096】
【表6】
Figure 0003789539
【0097】
【表7】
Figure 0003789539
【0098】
【表8】
Figure 0003789539
【0099】
【表9】
Figure 0003789539
【0100】
【表10】
Figure 0003789539
【0101】
【表11】
Figure 0003789539
【0102】
【表12】
Figure 0003789539
【0103】
【表13】
Figure 0003789539
【0104】
【表14】
Figure 0003789539
【0105】
【表15】
Figure 0003789539
【0106】
【表16】
Figure 0003789539
【0107】
【発明の効果】
本発明は上述の構成をもつことによって、従来の収縮包装用フィルムにはない極めて総合的にバランスのとれた高性能なフィルムを得ることができる。すなわち、薄肉でも高強度を有し、シール性、特にストレッチシュリンク包装における底シール性に優れ、実用上十分な透明性や光沢、防曇性を発揮し、収縮包装における仕上がりが良好で、包装後のフィルムの変形回復性も良好な低温収縮性に優れたシュリンクフィルムを得ることができる。

Claims (1)

  1. エチレンー酢酸ビニル共重合体、エチレンー脂肪族不飽和カルボン酸共重合体、エチレン−脂肪族不飽和カルボン酸エステル共重合体から選ばれる少なくとも1種の共重合体樹脂からなる表層(A)と、内層としてエチレンα−オレフィン共重合体からなる層(B)、及びポリプロピレン系樹脂からなる層(C)をそれぞれ少なくとも1層有する、少なくとも4層からなる多層フィルムにおいて、以下の(1)〜(4)を特徴とする多層シュリンクフィルム。
    (1)層(B)に使用されるエチレンα−オレフィン共重合体の密度が0.850〜0.935g/cm3 であって、190℃、荷重2.16kgfにおけるメルトフローレートが0.2〜3.5g/10分であること
    (2)層(C)がポリプロピレン系樹脂50〜90重量%およびポリブテン−1系樹脂10〜50重量%の混合樹脂からなり、該ポリプロピレン系樹脂は230℃、荷重2.16kgfにおけるメルトフローレートが0.1〜10g/10分であり、かつ該ポリブテン−1系樹脂は190℃、荷重2.16kgfにおけるメルトフローレートが0.2〜10g/10分であって、荷重1.0kgfにおけるビカット軟化点が50〜100℃であること
    (3)全層に占める前記各層の厚み比率として、表層(A)が10〜60%、層(B)が15〜80%、層(C)が10〜60%であること
    (4)多層シュリンクフィルムの80℃における熱収縮率がタテとヨコの少なくとも1方向において15%以上であり、かつ該フィルムのタテとヨコの平均熱収縮率の80℃と100℃における値の差が30%以下であり、かつ該フィルムの80℃におけるタテとヨコの平均熱収縮応力が90g/mm2 以上であり、かつ該フィルムの80℃におけるタテとヨコの熱収縮力がいずれも110g/15mm幅以下であること
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