JP4205258B2 - 熱収縮性多層フィルム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、包装機械適性、光学特性が良好であり、溶断シール、面シール等の様々なヒートシールに対して良好なヒートシール特性を有し、かつ、フィルムの収縮による内容物変形が少なく、特に高速包装時のヒートシール性や包装仕上がりに優れる熱収縮性多層フィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、収縮包装(シュリンク包装と同義語)は被包装物の形状、大きさに依らず、また同時に複数個の製品を迅速かつタイトに包装する事ができ、得られた包装物の外観が美しく、ディスプレイ効果を発揮し、商品価値を高め、また内容物を衛生的に保ち、視覚による品質管理が容易なことから食品や雑貨等の包装に使用されている。かかる収縮包装は、通常、フィルムに少し余裕をもたせてヒートシールにより内容物を一次包装したのち、シュリンクトンネルの熱風等によりフィルムを熱収縮させる方法が一般的であり、タイトで美しい仕上がりが得られる。この際、ヒートシールの方法としては▲1▼バーシール法、熱ローラー法、熱板シール法等や▲2▼溶断シール法等がある。ここで、上記▲1▼に列挙した方法は、基本的にフィルム面同士で融着シールされる面シールであり、通常シール面直近でヒートシールとほとんど同時にカッターにて切断される、いわゆるシールアンドカット方式や、シュリンク前の一次包装の段階で、被包装物の底部にフィルムが折り込まれた状態で該折り込み部を熱板でヒートシールする方法(以後、オーバーラップシール方式という。)が採用されている。また上記▲2▼の溶断シール法は上記▲1▼の方法のように別にカッターを必要とせず、瞬間的に熱刃により、溶融シールと同時に溶融切断を行う方法であり、簡便な方法として包装用各種フィルムに広く用いられている。
【0003】
一方、シュリンクトンネルの熱風等によりフィルムを熱収縮させる前に、ヒートシール方法を適宣使用して行う内容物の一次包装の形態としては、様々な包装形態があり、代表的な例としてピロー包装、ストレッチ様のオーバーラップ包装等の包装形態がある。いずれの包装形態においても重要なことは、ヒートシール工程を含めてシュリンク中および包装完了後において、ヒートシールの完全性が保たれ、内容物の変形がなく、かつ、タイトな仕上がりが得られることである。
【0004】
上記のように様々な包装形態およびヒートシール方式があり、各々の特長を生かした包装が行われているが、一方でこのように様々な条件に対応可能な良好な包装機械適性および包装仕上がりに優れたフィルムの提供が望まれている。
【0005】
一般に、収縮包装フィルムとして要求される特性としては▲1▼収縮特性、▲2▼ヒートシール特性、▲3▼光学特性、▲4▼機械的強度等がある。更に、上記▲1▼の収縮特性としては、被包装物を変形することなしに、かつ、タイトに仕上げるための適度な収縮力と高収縮性、▲2▼については安定したヒートシールとヒートシールのきれいさ(特に溶断シール時にヒートシール線が細い方が美粧性に優れるため好まれる。)、▲3▼については特に収縮後のフィルムの透明性や光沢がよいこと、▲4▼については包装時、および包装後の輸送や保管を含めて種々の外的負荷に対する強度(裂け、突き破れ等)を有することが求められる。
これまで、上記要求特性を満たす多層フィルムを提供するための種々の検討がなされており、こうした検討の中には、ポリエチレン系樹脂を表面層に配した多層フィルムに関する技術も数多く見られる。
【0006】
例えば、特開平2−283445号公報には、オレフィン成分を有し、相対的に低い融点の樹脂(例えば、エチレン酢酸ビニル共重合体、超低密度ポリエチレン、エチレンアクリル酸ブチル共重合体およびエチレンアクリル酸メチル共重合体)からなるコア層とオレフィン成分もしくはポリエステルを含有し、かつ、相対的に高い融点の樹脂(例えば、ポリエステル、線状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレンおよびエチレンプロピレン共重合)からなる2つの外側層とを含み、最大平均横断方向収縮力が1平方インチにつき300ポンド以下でコア層の材料物質の溶融点よりも少なくとも約10℃高い溶融点を有している多層収縮フィルムが開示されており、得られるフィルムは、低い収縮力と高い自由収縮のためPVCフィルムと同様な包装ができ、かつ、有害な臭いや汚染性の副産物を発生しないことも記載されている。また、特開昭60−240451号公報には線状低密度ポリエチレンを含んで成る架橋された心層および線状低密度ポリエチレン、線状中密度ポリエチレン、エチレン酢酸ビニル共重合体の3成分ブレンドを含んで成る架橋された2表面層からなる収縮フィルムが開示されており、ヒートシール可能で適度の伸びと弾性記憶を伴なう良好な耐引裂性と結びついた高度の配向又は熱収縮のような物理的性質の新規、かつ、改良した組み合わせを有する旨記載されている。また、特開平1−301251号公報には内外層および中間層に密度、メルトインデックス(本発明でいうメルトフローレート(以下MFRと記す。)と同じ)が、特定された線状低密度ポリエチレンからなり、全層に対する中間層の厚み比率、および内外層の厚みを特定した熱収縮フィルムが開示されており、低温ヒートシール性が優れる旨記載されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら上記従来技術のうち、特開平2−283445号公報で得られる熱収縮フィルムは低収縮力のため包装される産物がこわれてしまうのを防止できるが、面シールが困難であり、特に高速包装時のヒートシール性に問題がある。すなわち高速包装(通常、包装速度で50パック/分以上をいう。)においてはヒートシール時間そのものが短くなるため、高温でのヒートシールが採用されるが、そのような場合、フィルムを構成する樹脂の温度特性により、面シールにおいては、両外層に比べコア層、つまり内部層が軟化、溶融しやすいため、フィルムのヒートシール部がシールバーに融着したり、シールアンドカット時にヒートシール部が引き伸ばされてヒートシール破れ等のヒートシール不良を発生しやすい問題がある。また、特開昭60−240451号公報の線状低密度ポリエチレンを含んで成る架橋された心層および線状低密度ポリエチレン、線状中密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体の3成分ブレンドを含んで成る架橋された2表面層からなる収縮フィルムは適度の伸びと弾性記憶を伴なう良好な耐引裂性を有しているが、熱収縮フィルムの収縮応力が高すぎるために、フィルム同士をヒートシールし、タイトに包装するためフィルムを収縮させる一連の流れの中で、高速包装時においてはヒートシールしてから収縮トンネルに入るまでの時間が短くなるため、ヒートシールされた部分が十分に冷えない状態でフィルムの収縮力が引っ張る力として作用するためにヒートシールパンクを発生しやすく、同時にノートや印刷用紙等の枚葉物(およびそれらの束状のものも含む)を包装するときに被包装物が容易に変形してしまうといった問題を有していた。また、特開平1−301251号公報に開示されているフィルムは、透明性、低温ヒートシール性が優れるが、架橋処理を行っていないためフィルムの耐熱性が劣っており、フィルムの収縮温度、ヒートシール温度を高くできない等、高速包装を行うには制約がある。また、特開昭60−240451号公報に開示してあるフィルム同様、熱収縮フィルムの収縮応力が高いために、包装時にヒートシールパンクが発生したり、被包装物が容易に変形してしまうといった問題を有していた。
【0008】
本発明の課題は、従来のポリオレフィン系樹脂を表面層に配した多層の熱収縮フィルムが有する優れた耐引裂性等の機械的強度、収縮特性に加え、従来のフィルムの欠点であったヒートシール特性、すなわち溶断シール、面シールいずれに対しても、ヒートシール性が良好であること(安定したヒートシールができること、きれいにヒートシールできること)、特に高速包装時のヒートシール性に優れ、ノートや印刷用紙の枚葉物等の剛性の弱い被包装物を包装するときに発生していた変形を抑制し、ヒートシール部を含めて外観仕上がりが良い熱収縮性多層フィルムを提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を達成するために鋭意検討した結果、本発明に到達した。すなわち、本発明は、密度0.900〜0.940g/cm3 の線状低密度ポリエチレンを含有する表面層(A)と、(a)密度0.900〜0.940g/cm3 の線状低密度ポリエチレン50〜90重量%、(b)高圧法低密度ポリエチレン5〜40重量%、および(c)エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−脂肪族不飽和カルボン酸エステル共重合体から選ばれる少なくとも一種の共重合体5〜40重量%からなる混合樹脂組成物を含有する少なくとも一つの内部層(B)とを含有する少なくとも3層からなる多層フィルムであって、フィルム全層のゲル分率が0.1〜10重量%であり、表面層(A)および内部層(B)のゲル分率と層比率の関係が下記式(I)を満たすこと、内部層(B)に使用される少なくとも一つの樹脂の融点が表面層(A)の融点以上であること、ASTM D−2838で測定された80〜140℃におけるフィルムの最大平衡熱収縮応力が縦および横方向ともに200g/mm2 以下であること、かつ、ASTM D−2732で測定した140℃でのフィルムの熱収縮率が縦、横少なくとも1方向において30%以上であることを特徴とする熱収縮性多層フィルムである。
GB×TB≧GA×TA (I)
(但し、上記式(I)において、GA、GBは各々表面層(A)、内部層(B)のゲル分率、また、TA、TBは各々表面層(A)、内部層(B)の厚み比率を表わす。)
以下、本発明を詳細に説明する。
【0010】
まず、本発明が従来技術と相違するところは、線状低密度ポリエチレンを含有する表面層(A)に内部層(B)として特定の線状低密度ポリエチレンを含む特定の樹脂組成物の層を組み合わせ、該(A)層および(B)層のゲル分率と層比率の関係を規定し、更にフィルム全体としてのゲル分率と最大平衡熱収縮応力を特定した点にある。上記従来技術と相違するところの本発明の構成要件の役割は、優れた包装機械適性、収縮特性に加えて、従来の課題であった、面シールを行う際のヒートシール性(以下、面シール性という)、溶断シールを行う際のヒートシール性(以下、溶断シール性という)共に優れること、特に高速包装における安定したヒートシール性が十分確保できることであり、さらに被包装物のシュリンク包装時の変形が抑制されることにより良好な仕上がりを実現できることである。
【0011】
本発明の表面層(A)に使用される線状低密度ポリエチレンの密度は0.900〜0.940g/cm3 のものである。ここで、本発明でいう密度は、JIS−K−7112に従って測定される23℃の値である。表面層(A)に用いられるポリエチレン系樹脂の役割は安定した面シール性および溶断シール性を有し、かつ、フィルムにいわゆる腰を付与して高速包装機械適性を発現させることである。表面層(A)に用いられる線状低密度ポリエチレンの密度が0.940g/cm3 を越えるとヒートシールの安定性が低下し、また得られたフィルムの透明性が低下する他、低温収縮性も得にくくなる。一方、密度が0.900g/cm3 未満であるといわゆるフィルムの腰を発現できず、かつ、フィルム表面がベタつくために包装機械適性が劣り、特に高速包装ができなくなる。好ましい密度は0.905〜0.935g/cm3 、より好ましくは0.910〜0.930g/cm3 である。
【0012】
本発明の表面層(A)中の上記線状低密度ポリエチレンの含有量は少なくとも50重量%以上であることが好ましく、より好ましくは70重量%以上であることが好ましい。本発明の効果を損なわない範囲でエチレン−酢酸ビニル共重合体およびその部分ケン化物、エチレン−脂肪族不飽和カルボン酸エステル共重合体、アイオノマー樹脂、高圧法ポリエチレン、低圧法高密度ポリエチレン、遷移金属触媒によって重合された高分岐度ポリエチレンポリマー(分岐度:5〜110基/1000炭素)、結晶性1、2−ポリブタジエンその他、水添ポリテルペン等の石油樹脂、プロピレンとエチレンやブテン−1との共重合体等の他の樹脂を混合して用いることも可能である。
【0013】
内部層(B)中の線状低密度ポリエチレンの役割は延伸製膜時における安定した延伸性を確保し、実用的に十分な引裂強度、突刺強度等の強度物性をフィルム全体に付与することにある。また、表面層(A)に使用する線状低密度ポリエチレン同様、包装機械適性に関する腰を発現させる役割も担っている。
【0014】
本発明の内部層(B)に使用される線状低密度ポリエチレンの密度は0.900〜0.940g/cm3 である。密度が0.940g/cm3 を越えると延伸そのものが困難になり、得られたフィルムの透明性が低下する他、低温収縮性も得にくくなる。一方、密度が0.900g/cm3 未満であるといわゆるフィルムの腰を発現できず、包装機械適性が劣り、特に高速包装ができなくなる。好ましい密度は0.905〜0.935g/cm3 、より好ましくは0.910〜0.930g/cm3 である。また、190℃、2.16kgfの条件下(以下、線状低密度ポリエチレンについては同条件。)で測定されるメルトフローレート(MFR)が0.2〜7g/10分のものが好ましい。7g/10分を越えると延伸安定性が低下して、延伸時にフィルムが破れたり、厚み斑を生じ易くなる他、フィルムが得られても引裂強度や突刺強度等の機械的強度に劣ったものしか得られないことがあり、用途によっては好ましくない。一方、MFRが0.2g/10分未満であると押出成形時の押出動力が上昇する問題と押出動力が上昇することによる押出効率の低下および生産性が低下するといった問題が生ずることがある。より好ましいMFRは0.5〜5g/10分、更に好ましくは0.6〜4g/10分である。
【0015】
上記表面層(A)および内部層(B)に使用される線状低密度ポリエチレンは、エチレンα−オレフィン共重合体として知られており、これらはエチレンとプロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、4−メチル−ペンテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1等の炭素数が3〜18のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種類の単量体との共重合体であるが、耐衝撃性や引裂強度、突刺強度等の機械的強度、および延伸製膜性の点から、α−オレフィンとしては4−メチル−ペンテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1が好ましい。
【0016】
以上の線状低密度ポリエチレンとしては、チーグラー触媒等の従来のマルチサイト触媒を用いて得られた重合体(MSC)、またはメタロセン系触媒等のシングルサイト触媒で重合された分子的(コモノマー分布等)、分子量分布的に従来の方法で重合されたものより、より均一化されたもの(SSC)(例えば、重量平均分子量Mw/数平均分子量Mnで表される値が1.5〜4.0のもの、より好ましくは1.7〜3.5のもの)であり、両者を混合したものでもよく、これらから少なくとも1種が用いられる。上記シングルサイト触媒で重合された線状低密度ポリエチレンには、制御された長鎖分岐を有したものであったり、上記α−オレフィンに加え、極性基を有する単量体やスチレン系モノマー等のその他の単量体が共重合されたものであっても良い。
内部層(B)中の高圧法低密度ポリエチレンは内部層における架橋処理時による主たるゲルの生成役割およびドローダウン現象を防ぐ役割を担っている。
【0017】
高圧法ポリエチレンは線状低密度ポリエチレンに比べ、低い電子線照射密度で比較的架橋しやすい特性を有しており、高圧法低密度ポリエチレンの混合割合によりフィルム架橋成分のゲル分率割合を調整できる。また、高圧法低密度ポリエチレン樹脂の特性である高い溶融張力(メルトテンション)のため、フィルム原反の製膜性を良くする役割をも担っている。すなわち、各層を構成する樹脂をそれぞれの押出機で溶融して、多層ダイより共押出/樹脂の引き落としの作業を行い、即座に急冷固化させてフィルム原反を得るが、樹脂を引き落とした時に、樹脂自身の重さにより予想以上に重力で引き落とされ、フィルム原反の長さ方向に厚さムラを生ずる現象(いわゆるドローダウン現象)を防ぐ役割を担っている。
【0018】
本発明の内部層(B)に使用される高圧法低密度ポリエチレンの密度は特に限定されないが、通常0.910〜0.928g/cm3 のものである。ここで、密度は、JIS−K−7112に従って測定される23℃の値である。密度が0.928g/cm3 を越えると延伸そのものが困難になり、また得られたフィルムの透明性が低下する他、ドローダウン現象を防ぐ役割が低下する。一方、密度が0.910g/cm3 未満であると樹脂が柔らかすぎて、フィルムの剛性低下を招き、いわゆるフィルムの腰不足によるフィルムの滑り特性低下により、包装機械適性が劣り、特に高速包装ができなくなる。好ましい密度は0.912〜0.926g/cm3 、より好ましくは0.914〜0.924g/cm3 である。
【0019】
本発明の内部層(B)に使用される高圧法低密度ポリエチレンの190℃、2.16kgfの条件下で測定される(以下、高圧法低密度ポリエチレンについては同条件。)MFRは特に限定されないが、通常0.2〜7g/10分である。なお、MFRが7g/10分を越えるとドローダウン現象を防ぐ役割が低下し、厚み斑を生じ易くなる他、フィルムが得られても引裂強度や突刺強度等の機械的強度に劣ったものしか得られないことがある。MFRが0.2g/10分未満であると押出成形時の押出動力が上昇する問題と押出動力が上昇することによる押出効率の低下および生産性が低下するといった問題が生ずることがある。より好ましいMFRは0.3〜6g/10分、更に好ましくは0.4〜5g/10分である。
【0020】
内部層(B)中のエチレン−脂肪酸エステル共重合体の役割は、主として、架橋処理時のごく低照射線レベル域のゲル分率生成微調整の役割およびドローダウン現象を防ぐことにある。エチレン−脂肪酸エステル共重合体はその樹脂の特性上、高圧法低密度ポリエチレンおよび線状低密度ポリエチレンに比べ、低い電子線照射密度で比較的架橋しやすく、しかも、低照射線レベル域では高圧法低密度ポリエチレンよりも照射線割合対して穏やかに架橋する特性(製品の品質を安定させる上で、気温や湿度等の外的環境変化の影響を緩和する役割)を有しており、ごく低照射線レベル域でのゲル分率生成微調整の役割を担っている。
【0021】
本発明の内部層(B)に使用されるエチレン−脂肪酸エステル共重合体としては、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−脂肪族不飽和カルボン酸(エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体)およびエチレン−脂肪族不飽和カルボンエステル(エチレン−アクリル酸エステル、エチレン−メタクリル酸エステルで、エステル種としてメチル、エチル、プロピル、ブチル等のC1〜C8のアルコールの成分より選ばれる)共重合体等挙げられる。これらは、さらにその他の成分を加えた多元共重合体(例えば、エチレンと脂肪族不飽和カルボン酸および同エステルより選ばれる自由な共重合体等)であってもよい。共重合する成分が上記の中、またはその他の成分から選ばれる少なくても2種類以上の多元共重合体でもよい。これらのカルボン酸またはカルボン酸エステル基の含有量は、特に限定はされないが、通常3〜35重量%が用いられる。フィルムの透明性より、より好ましくは3〜25重量%、更に好ましくは3〜20重量%である。
【0022】
本発明の内部層(B)に使用されるエチレン−脂肪酸エステル共重合体の190℃、2.16kgfの条件下で測定される(以下、エチレン−脂肪酸エステル共重合体については同条件。)MFRは、特に限定はされないが、通常、0.2〜10g/10分のものである。なお、MFRが10g/10分を越えるとドローダウン現象を防ぐ役割が低下し、厚み斑を生じ易くなることがある。MFRが0.2g/10分未満であると押出成形時の押出動力が上昇する問題と押出動力が上昇することによる押出効率の低下および生産性が低下するといった問題が生ずることがある。より好ましいMFRは0.3〜8g/10分、更に好ましくは0.5〜6g/10分である。
【0023】
本発明において内部層(B)中の線状低密度ポリエチレンと高圧法低密度ポリエチレンとエチレン−脂肪酸エステル共重合体の成分比率を規定するのは、ドローダウンすることなしに均一な厚さのフィルム原反を製膜し、融点以上の温度域で安定した延伸を行うためのゲル分を生成し、さらに得られたフィルムのヒートシール特性を満足させる微妙なゲル分率の生成量を微調整し、かつ、得られたフィルムの物性において引裂強度、突刺強度等の強度物性および包装機械適性に関する腰をフィルムに付与するためである。
【0024】
線状低密度ポリエチレンの内部層(B)における成分比率は50〜90重量%である。内部層(B)における成分比率50重量%未満であると実用的に十分な引裂強度、突刺強度等の強度物性をフィルム全体に付与することができなく、さらに包装機械適性に関する腰を発現することができない場合がある。内部層(B)における成分比率90重量%を越えると他の成分樹脂である高圧法低密度ポリエチレンやエチレン−脂肪酸エステル共重合体の役割を発現でき難くなる。好ましくは55〜85重量%、より好ましくは65〜80重量%である。高圧法低密度ポリエチレンの内部層(B)における成分比率は5〜40重量%である。内部層(B)における成分比率が5重量%未満であるとフィルム原反を製膜するときにドローダウンによる厚みムラを生じてしまう。また、融点以上で延伸するための架橋点が少なく、安定した延伸が困難である。内部層(B)における成分比率が40重量%を越えると他の成分樹脂である線状低密度ポリエチレンやエチレン−脂肪酸エステル共重合体の役割を発現でき難くなる。好ましくは10〜40重量%、より好ましくは15〜30重量%である。エチレン−脂肪酸エステル共重合体の内部層(B)における成分比率は5〜40重量%である。内部層(B)における成分比率が5重量%未満であると溶断特性と延伸特性の微妙なバランスであるゲル分率の微調整ができず、シビアな電子線架橋コントロールをしなければいけない。内部層(B)における成分比率が40重量%を越えると他の成分樹脂である線状低密度ポリエチレンや高圧法低密度ポリエチレンの役割を発現し難くなる。好ましくは5〜35重量%、より好ましくは5〜20重量%である。
【0025】
本発明において熱収縮フィルム全層のゲル分率、かつ、表面層(A)および内部層(B)のゲル分率と層比率の関係、および、内部層(B)に使用される樹脂の融点と表面層(A)に使用される線状低密度ポリエチレン樹脂の融点との関係を規定する目的は、安定した面シールおよび溶断シールを可能にするためである。 本発明の多層フィルムは収縮時およびシール時の耐熱性の点から、架橋されていることが必要であり、フィルム全層のゲル分率が0.1〜10重量%であり、好ましくは0.5〜10重量%、更に好ましくは1〜10重量%である。フィルム全層のゲル分率が10重量%を越えると面シールにおいては、表面層(A)に用いられる樹脂のゲル分率が内部層(B)に用いられる樹脂組成物のそれより低ければ安定したヒートシールが可能であるが、溶断シールにおいては既存の包装機械では安定した熱による溶断が不可能となり、ヒートシール部の改造等が必要になる。特に高速包装時においては更なる熱容量変更等既存包装機械ヒートシール部の改造や専用包装機を使用しなければならない。
【0026】
本発明のフィルムは、全層のゲル分率が0.1重量%以上10重量%以下であっても各層のゲル分率と層比率の関係がGB×TB≧GA×TA(GAおよびGBは各々表面層(A)、内部層(B)のゲル分率、TAおよびTBは各々表面層(A)、内部層(B)の厚み比率)を満たし、かつ、内部層(B)に使用される樹脂の融点と表面層(A)の融点との関係は内部層(B)に使用される樹脂の少なくともいずれかの融点が表面層(A)の融点以上であることを満たさなければ安定した面シールおよび溶断シールが困難になる。例えば、表面層(A)の層比率と内部層(B)の厚み比率が等しく、表面層(A)に用いられる樹脂のゲル分率が内部層(B)に用いられる樹脂組成物のそれより高い場合、内部層の配向よりも表面層の配向が高い状態になり、熱刃とフィルムが接触する前に熱刃より発せられる輻射熱により、フィルムが収縮しはじめ、そのため該フィルムはまるまってしまい、効果的な面シールが困難となる。また、表面層(A)に使用される線状低密度ポリエチレン樹脂の融点が内部層(B)に使用されるいずれの樹脂の融点よりも高い場合、表面層に比べて内部層が軟化、溶融しやすいため、フィルムのヒートシール部がシールバーに融着したり、シールアンドカット時にヒートシール部が引き伸ばされてヒートシール破れ等のヒートシール不良を発生しやすい問題がある。表面層(A)および内部層(B)の各層におけるゲル分率GA、GBは最大70重量%以下が好ましい。各層におけるゲル分率が70重量%を越えると熱容量変更や既存包装機械ヒートシール部の改造を必要とする可能性がある。好ましくは60重量%以下、より好ましくは50重量%以下である。なお、各層の厚み比率TA、TBは全層の厚みを1とした場合の、表面層(A)の合計厚み、内部層(B)の合計厚みの割合をいう。
【0027】
本発明の多層フィルムは、少なくとも片面のシール面である表面層が上記の要件を具備すればよいが、本発明の効果を十分に発揮するには、両表面層が具備することが望ましい。
本発明の多層フィルムは、収縮包装時にタイトな包装を十分に行う点から、140℃における熱収縮率が縦、横少なくとも1方向において30%以上である。多層フィルムの140℃における熱収縮率が縦、横少なくとも1方向において30%未満では収縮性に乏しく、収縮包装時にタイト感のある包装体が得られにくく、小皺や弛みが残った商品価値に問題のあるものしか得られない。より好ましい熱収縮率は140℃における熱収縮率が縦、横少なくとも1方向において35%以上、さらに好ましくは40%以上である。
【0028】
本発明の多層フィルムは、収縮包装時に被包装物が剛性的に弱いもの(例えば、ノートや印刷物等の枚葉物およびそれらの束状の物等)の場合、フィルムの収縮応力によって、容易にソリ等の変形を生じたり、被包装物を破損したりすることを防止する点から、ASTM D−2838で測定された80〜140℃における最大平衡熱収縮応力が縦および横方向ともに200g/mm2 以下である。多層フィルムの平衡熱収縮応力が縦および横方向ともに200g/mm2 を越えるとフィルムの収縮応力によって、容易にソリ等の変形を生じたり、被包装物を破損したりする。好ましくは最大平衡熱収縮応力が縦および横方向ともに190g/mm2 以下、さらに好ましくは最大平衡熱収縮応力が縦および横方向ともに180g/mm2 以下である。
【0029】
本発明の多層フィルムでは、上記表面層(A)、内部層(B)にその本来の特性を損なわない範囲で、1種以上の他の樹脂を50重量%以下、好ましくは40重量%以下、更に好ましくは30重量%以下で混合しても良い。他の樹脂は特に限定されないが、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体およびその部分ケン化物、エチレン−脂肪族不飽和カルボン酸エステル共重合体、アイオノマー樹脂、高圧法低密度ポリエチレン、低圧法高密度ポリエチレン、遷移金属触媒によって重合された高分岐度エチレンポリマー(分岐度:5〜110基/1000炭素)、スチレン−共役ジエン共重合体(ブロック、ランダム)および該共重合体の少なくとも一部を水添したもの、またこれらの樹脂を酸変性等により改質したもの、結晶性1、2−ポリブタジエンその他、水添ポリジシクロペンタジエン、水添ポリテルペン等の石油樹脂、また、混合の対象となる層以外の層に使用されている樹脂等が挙げられる。
【0030】
また、同様に本発明の表面層(A)、内部層(B)にはその本来の特性を損なわない範囲で可塑剤、酸化防止剤、界面活性剤、紫外線吸収剤、無機フィラー、防曇剤、帯電防止剤、アンチブロッキング剤、滑剤、結晶核剤、着色剤等を含んでも良く、樹脂への添加方法としては直接対象樹脂層に練り込み添加するか、場合によってマスターバッチをあらかじめ作製して希釈添加してもよい。
【0031】
本発明の多層フィルムは表面層(A)および内部層(B)の合計少なくとも3層から構成されるが、場合によって、表面層(A)と同一の樹脂を用いた樹脂層を内部層として加えても良い。層の配置としては、例えば、3層の場合:A/B/A、5層の場合:A/B/A/B/A等が挙げられる。他に6層およびそれ以上の場合も含むものとする。また、本発明のフィルムには、本発明の効果を損なわない範囲で、更に内部層として、本発明の表面層(A),内部層(B)に使用可能な樹脂の他、公知の熱可塑性樹脂で構成される別の層を配してもよい。この追加される層には、回収層として、フィルム各層に使用されている樹脂からなる混合組成物層も含まれる。
【0032】
本発明の熱収縮性多層フィルムの厚みは特に限定されないが、通常5〜80μm、好ましくは6〜60μm、より好ましくは7〜40μmの薄肉の領域である。5μm未満ではフィルムの腰が低下し、ヒートシール強度も低下する場合がある。また包装時の作業性に問題が生ずることもある。また80μmを越えるとフィルムの腰が強くなりすぎ、フィット性が悪くなるほか、収縮の応答性が悪くなったり、機械的強度等の性能が過剰となる場合がある。
【0033】
次に、本発明の熱収縮性多層フィルムの製法の一例について述べる。まず、各層(表面層(A)、内部層(B)および必要に応じて用いられるその他の層)を構成する樹脂をそれぞれの押出機で溶融して、多層ダイで共押出・急冷固化してフィルム原反を得る。押出方法としては多層のTダイ法、多層のサーキュラー法等を用いることが出来るが、好ましくは後者がよい。このようにして得た該フィルム原反に電子線照射により樹脂の架橋処理を行い、続いて熱風による伝熱加熱あるいはインフラヒーター等の輻射加熱により、フィルム原反を樹脂の融点以上に加熱した後、フィルム原反を2組のニップロールの間で速度比をつけて機械の流れ方向に延伸しつつ、フィルム原反内にエアーを注入して機械の流れ方向と直角方向にも延伸する。延伸方法としては、ロール延伸法、テンター法、インフレ法(ダブルバブル法を含む)等があるが、同時二軸延伸で製膜される方法が延伸性その他合理性等より好ましい。延伸は少なくとも1方向に面積延伸倍率で4〜81倍、好ましくは6〜64倍さらに好ましくは8〜49倍で延伸し、用途により必要な熱収縮率等に応じて適宣選択される。また、必要に応じ、後処理、例えば寸法安定性のためのヒートセット、コロナ処理やプラズマ処理等の表面処理、印刷処理、他種のフィルム等とのラミネーション等が行われても良い。架橋処理は、電子線(例えば、加速電圧50〜1000kVの照射装置)、紫外線、γ線等のエネルギー線照射やパーオキサイドの利用等の従来公知の方法が用いられる。例えば、電子線による照射は樹脂の種類によって異なるが通常1〜4メガラッドが本発明に用いる包装フィルムには好ましい。架橋処理後のフィルム原反を樹脂の融点以上に加熱するのは延伸後のフィルムの熱収縮応力を調整し、包装時に被包装物に変形が起こらない様にするためである。樹脂の融点未満の延伸では被包装物に変形や破損を生じてしまう。樹脂の融点以上の延伸を安定して行うためには架橋処理が必要である。架橋処理をしないと延伸前のフィルム原反の張力が極端に低下して延伸が困難となる。
【0034】
【発明の実施の形態】
以下、本説明を実施例を用いて更に詳しく説明する。本発明で用いた測定評価方法は、以下の通りである。
(1)光学特性(ヘイズ、グロス)
ヘイズはASTM−D−1003、グロスはASTM−D−2457に各々準じて測定を行った。
(2)熱収縮率
100mm角のフィルム試料を140℃に設定したエアーオーブン式の恒温槽に入れ、自由に収縮する状態で30分処理した後フィルムの収縮量を求め、元の寸法で割った値を百分率で表した。なお、測定は縦方向(MD)、横方向(TD)の各々について行った。
【0035】
(3)溶断シール性
(3−1)溶断シール開始温度
テスター産業(株)製TP701ヒートシールテスターに、表面にテフロンコート処理が施されている0.5mmR×280mmLの溶断刃を取り付け、ヒートシール条件としてエアー圧力3kg/cm2 (エアーシリンダー径:50mmφ)、ヒートシール時間1秒の条件で温度を色々変えて溶断シールを行った。この時の温度は溶断刃の先端の温度を接触式温度計にて実測し、これを各温度条件の値とした。二つ折りにして2枚重ねにされた状態の各測定フィルムは溶断刃に対して余裕を持った幅寸法のもので上記テストを行い、溶断刃の90%以上(252mm以上)が溶断された最低温度を溶断シール開始温度とした。なお、溶断シール開始温度は低温ほど高速包装条件に適し、また省エネルギーの観点からも好ましい。
【0036】
(3−2)溶断シールの仕上がり
上記(3−1)で規定した溶断シール開始温度よりも約10℃高い温度条件で溶断シールしたものについて、その溶断シールの仕上がりを以下の基準で評価した。
○:ヒートシールは完全で欠陥が認められず、また糸引きがほとんど無く溶
断面の仕上がりがきれいな状態。
△:ヒートシールはほぼ完全であるが、若干の糸引きが見られ商品性にやや
問題がある状態。
×:明らかな糸引きが何カ所にも見られるか、もしくはヒートシール部に局
部的な開口部等のヒートシール不良があり、商品として問題がある状態。
【0037】
(4)面シール性
(4−1)面シール開始温度
面シール開始温度測定は実際のトレーを使用し、突き上げ式の包装機械を模して行った。内部底部に100gの金属板を貼りつけた一般市販用のポリプロピレン製トレー(概略寸法;タテ150mm、ヨコ115mm、高さ23mm)のタテ方向に沿って、フィルムを筒状に折り曲げ、このフィルムで両端のフィルムがダブつかずにトレーの底部で約半分の面積が2枚重ねになるようにトレーを包み込み、続いてトレーのヨコ方向に沿って折り曲げられないで残っているフィルムの両端をダブつかないように折り曲げ、トレー底部で重ね合わせた。この時、トレー底部では2枚、5枚重ねの部分ができている。このように準備したトレーを熱板上に2秒間載せてトレー底面の面シールを行った。この時の温度は熱板上を接触式温度計にて実測し、これを各温度条件の値とした。その後、フィルムのヒートシールされた端部を軽く引張って、剥離しない温度を面シール開始温度とした。なお、面シール開始温度は低温ほど高速包装条件に適し、また省エネルギーの観点からも好ましい。
【0038】
(4−2)面シールの仕上がり
上記(4−1)で規定した面シール開始温度よりも約10℃高い温度条件で面シールしたものについて、その面シールの仕上がりを以下の基準で評価した。
○:トレー底面の面シールは2枚部、5枚部ともに完全にヒートシールされ
欠陥が認められず、また面シールの仕上がりがきれいな状態。
△:トレー底面の面シールはほぼ完全であるが、若干5枚部が剥がれやすく
また2枚部がやや白化している状態。商品性にやや問題がある状態。
×:トレー底面の面シールが2枚部ではフィルムが溶融して穴が開いたり、
5枚部では明らかに面シールされていない状態。商品性に問題がある状
態。
【0039】
(5)引裂強度
JIS−P−8116に準じて、軽荷重引裂試験機(東洋精機製)を用いて、縦方向(MD)と横方向(TD)各々について測定した。なお、ここでの測定値の読みは、目盛りの20〜60の範囲になるように測定を行うが、測定レンジによって差のある場合は、高い方の値を測定した。
(6)最大平衡熱収縮応力
熱収縮性フィルムの平衡熱収縮応力はASTM D−2838に準じて測定した。平衡熱収縮応力とは80〜140℃における測定時間開始から60秒後の収縮応力の値であり、最大平衡熱収縮応力とは80℃から20℃刻みで測定された平衡熱収縮応力の最大値である。
【0040】
(7)フィルム全層、表面層(A)、内部層(B)のゲル分率
フィルム全層のゲル分率(重量%)は、フィルム全層を沸騰したp−キシレン中で試料を抽出(12時間)し、不溶解部分に対しての割合を算出した。この値を架橋度の尺度として用いた。
【0041】
ゲル分率(重量%)=(抽出後の試料重量/抽出前の試料重量)x100
表面層(A)のゲル分率GA(重量%)および内部層(B)のゲル分率GB(重量%)はフィルム試料を140℃に設定したエアーオーブン式の恒温槽に入れ、自由に収縮せしめ、フィルム厚さを厚くした状態で各層のフィルムを切り出し、フィルム全層のゲル分率測定と同様、沸騰したp−キシレン中で試料を抽出し、不溶解部分に対しての割合を算出した。
【0042】
(8)融点
測定資料を6〜8mg採取してアルミパンに詰め、パーキンエルマー社製示差走査熱分析装置(DSC−7)を用いてDSC法により、窒素気流下にて10℃/分の昇温速度で一旦200℃まで昇温して1分間保持した後、再度10℃/分の降温速度で0℃まで冷却した。その後、0℃の状態で1分間保持した後、再度10℃/分で昇温して測定を行い、その時最も高温の吸熱ピークを融点とした。
【0043】
(9)高速包装適性
茨木精機(株)製FP−280型万能自動包装機を用いて、直方体の木片(概略寸法:150×100×35mm)を60パック/分の包装速度で2分間、計120個の包装を行った。使用した包装機は、ヒートシール方法として、センターシール部での熱ローラー方式による面シール、次いでカッターシール部での溶断シールを採用しており、以下の評価を行った。なお、収縮は上記の包装に連続して熱風式シュリンクトンネルを約5秒で通過させて行った。また、各ヒートシール部および収縮時の熱風の温度は、各フィルムの最適条件になるように適宣条件変更を行った。
◎:包装中に各ヒートシール部において融着や粘着に基づくフィルムの走行
トラブルが無く、シュリンク後の包装体についても各ヒートシール部に
破れ等の欠陥が無く、また各ヒートシール部の見栄えが良く商品性に優
れる。
○:包装中に各ヒートシール部において融着や粘着に基づくフィルムの走行
トラブルが無く、シュリンク後の包装体についても各ヒートシール部に
破れ等の欠陥が無いものの半数以上の包装体に溶断シール部では糸引き
面シール部では部分欠陥(白化やごく小さな部分的ヒートシール不良)
があり、外観不良が若干認められる。但し、商品性としては許容される
範囲。
△:包装中に各ヒートシール部においてシーラーへのフィルムの融着、粘着
が認められ、フィルムの走行性が不安定である。また、シュリンク後の
ほとんどの包装体には溶断シール部では糸引き、面シール部ではヒート
シール不良があり、外観不良が認められるか、もしくは包装体のヒート
シール部に破れ等の欠陥部を有するものが、1〜10ヶ認められる。
×:包装体に各ヒートシール部においてシーラーへのフィルムの融着、粘着
によるトラブルが発生し、連続してフィルムを走行させることが困難。
または、シュリンク後の包装体にはヒートシール部に破れ等の欠陥を有
するものが、11ヶ以上認められる。
【0044】
(10)断面層構成(各層厚み比率)
100mm角のフィルム試料を140℃に設定したシリコンオイルの恒温槽に入れ、自由収縮により収縮処理した後、フィルムの断面層構成を顕微鏡断面写真(写真撮影機能PM−10AK付きOLYMPUS OPTICAL CO.,LTD.製MODEL CHT)にて求めた。表記方法は各層の厚さをフィルム全体の厚さで割った値を百分率で表し、表記方法は表面層(A)内側/内部層(B)/表面層(A)外側の順で表記した。また、全層の厚みを1とした場合の表面層(A)の合計厚みの比率をTA、内部層(B)の合計厚みの比率をTBとした。
【0045】
次に、実施例および比較例において使用した樹脂を以下に記す。
【0046】
【実施例1】
表面層(A)として、線状低密度ポリエチレン(LL1)を、内部層(B)として、(a)線状低密度ポリエチレン(LL2)70重量%、(b)高圧法低密度ポリエチレン(LD1)20重量%、(c)エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA1)10重量%からなる混合樹脂組成物を用い、各々32φmm押出機(L/D=22)40φmm押出機(L/D=24)を使用して、環状ダイスより2つの表面層と1つの内部層とからなる3層になるように溶融押出した(押出量20Kg/h)。その直後、溶融押出物を冷水にて急冷固化して折り幅200mm、厚み540μmの各層とも均一な厚み精度のチューブ状原反を作成した。その際、各層の厚み比率(%)はチューブ状原反の外側から15/70/15になるように調整した。なお、表面層(A)には、アンチブロッキング剤として、長石微粉砕品(平均粒径4.5μm:白石工業「Minex7」)を0.25重量%、滑剤としてエルカ酸アミド1.0重量%、帯電防止剤としてグリセリンモノステアレート1.0重量%を添加した。得られたチューブ状原反に500KVの加速電圧で加速した電子線を2〜3メガラッド照射し、架橋処理を行い、引き続きインフラヒーターによる輻射加熱を行いチューブ状原反を融点以上までに加熱し、2対の差動ニップロールの速度比により機械の流れ方向(MD)に6倍、チューブ状原反内にエアーを注入することで機械の流れ方向と直角方向(TD)に6倍の同時2軸延伸し、エアーリングにより形成されたバブルに冷風をあて、延伸を冷却固定し、厚みが15μmの多層フィルムを得た。得られたフィルムを上記方法で評価した。その結果を表1に示す。
【0047】
表1より明らかなとおり、得られたフィルムは、面シール性および溶断シール性ともに優れ、抜群の高速包装適性を有した。また、高収縮性および最大平衡熱収縮応力が低いため包装仕上がりを示す他、光学特性や引裂強度等の物性にも優れるものであった。
【0048】
【実施例2】
表面層(A)に使用する線状低密度ポリエチレンをLL3変更した以外は、実施例1と同様な方法で、フィルムを得、これを実施例2とした。
フィルムの層構成ならびに評価結果を表1に示す。得られたフィルムはいずれも実施例1と同様に、面シール性および溶断シール性に優れ、高速包装適性を有する他、高収縮性で、光学特性および引裂強度等の物性にも優れるものであった。
【0049】
【実施例3〜5】
内部層(B)に使用する樹脂混合層の組成を、実施例3として(a)線状低密度ポリエチレン(LL2)80重量%、(b)高圧法低密度ポリエチレン(LD1)10重量%、(c)エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA1)10重量%、実施例4として(a)線状低密度ポリエチレン(LL2)55重量%、(b)高圧法低密度ポリエチレン(LD1)10重量%、(c)エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA1)35重量%、実施例5として(a)線状低密度ポリエチレン(LL2)55重量%、(b)高圧法低密度ポリエチレン(LD1)35重量%、(c)エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA1)10重量%に変更した以外は、実施例1と同様な方法で、フィルムを得、これを実施例3〜5とした。
フィルムの層構成ならびに評価結果を表1に示す。得られたフィルムはいずれも実施例1と同様に、面シール性および溶断シール性に優れ、高速包装適性を有する他、高収縮性で、光学特性および引裂強度等の物性にも優れるものであった。
【0050】
【実施例6〜7】
内部層(B)に使用する線状低密度ポリエチレンLL2を実施例6はLL4に、実施例7はLL5に変更した以外は、実施例1と同様な方法で、フィルムを得、これを実施例6〜7とした。
フィルムの層構成ならびに評価結果を表2に示す。得られたフィルムはいずれも実施例1と同様に、面シール性および溶断シール性に優れ、高速包装適性を有する他、高収縮性で、光学特性および引裂強度等の物性にも優れるものであった。
【0051】
【実施例8〜9】
内部層(B)に使用する線状低密度ポリエチレンLL2を実施例8はLL6に、実施例9はLL7に変更した以外は、実施例1と同様な方法で、フィルムを得、これを実施例8〜9とした。
フィルムの層構成ならびに評価結果を表2に示す。得られたフィルムはいずれも実施例1と同様に、面シール性および溶断シール性に優れ、高速包装適性を有する他、高収縮性で、光学特性および引裂強度等の物性にも優れるものであった。
【0052】
【実施例10】
内部層(B)に使用する高圧法低密度ポリエチレンLD1をLD2に変更した以外は、実施例1と同様な方法で、フィルムを得、これを実施例10とした。
フィルムの層構成ならびに評価結果を表2に示す。得られたフィルムはいずれも実施例1と同様に、面シール性および溶断シール性に優れ、高速包装適性を有する他、高収縮性で、光学特性および引裂強度等の物性にも優れるものであった。
【0053】
【実施例11】
内部層(B)に使用するエチレン−脂肪酸エステル共重合体EVA1をEVA2に変更した以外は、実施例1と同様な方法で、フィルムを得、これを実施例11とした。
フィルムの層構成ならびに評価結果を表3に示す。得られたフィルムはいずれも実施例1と同様に、面シール性および溶断シール性に優れ、高速包装適性を有する他、高収縮性で、光学特性および引裂強度等の物性にも優れるものであった。
【0054】
【実施例12〜13】
チューブ状原反の厚みを実施例12は290μm、同様に実施例13は900μmで調整し、得られるフィルムの厚みを実施例12は8μm、実施例13は25μmと変更した以外は、実施例1と同様にしてフィルムを得た。
得られたフィルムの評価結果を表3に示す。得られたフィルムは、いずれも面シール性および溶断シール性に優れ、高速包装適性を有する他、収縮性、光学特性等の物性にも優れるものであった。
【0055】
【実施例14〜15】
表面層(A)および内部層(B)の厚み比率を実施例14は層構成比(%)A/B/A=7.5/85/7.5、実施例15は層構成比(%)A/B/A=25/50/25と変更した以外は、実施例1と同様にしてフィルムを得た。
得られたフィルムの評価結果を表3に示す。得られたフィルムは、実施例1と同様に面シール性および溶断シール性に優れ、高速包装適性を有する他、高収縮性、光学特性および引裂強度等の物性にも優れるものであった。
【0056】
【実施例16〜17】
表面層(A)に添加した添加剤の種類を変更した以外は、実施例1と同様な層構成、層比率のチューブ状原反を作製し、以下同様な方法でフィルムを得た。実施例16には表面層(A)に対し、長石微粉砕品(平均粒径4.5μm:白石工業「Minex7」)を0.25重量%、エルカ酸アミド1.0重量%およびグリセリン脂肪酸エステルとアルキルジエタノールアミド混合物である帯電防止剤(東邦化学「CB−274」)1重量%を添加し、以下同様に、実施例17にはグリセリンモノオレートとジグリセリンラウレートを重量比で2:1に混合したものを1.5重量%添加した。得られたフィルムの評価結果を表4に示す。得られたフィルムは、実施例1と同様に面シール性および溶断シール性に優れ、高速包装適性を有する他、高収縮性、光学特性および引裂強度等の物性にも優れるものであった。実施例17で得られたフィルムにあっては防曇性に優れるものであった。(防曇性の評価としては20℃の水を入れた上部開放容器をフィルムで密閉状態に覆った後、5℃の冷蔵ショーケースに保管して、フィルム表面への水滴の発生状況を観察し、水滴がなく、透明性の良いものほど防曇性に優れる。)
【0057】
【実施例18】
表面層(A)に使用する線状低密度ポリエチレンをLL1(87.98重量%)+LD1(9.77重量%)の混合系変更した以外は、実施例1と同様な方法で、フィルムを得、これを実施例18とした。
フィルムの層構成ならびに評価結果を表4に示す。得られたフィルムはいずれも実施例1と同様に、面シール性および溶断シール性に優れ、高速包装適性を有する他、高収縮性で、光学特性および引裂強度等の物性にも優れるものであった。
【0058】
【比較例1〜3】
内部層(B)に使用する樹脂を用いて、各樹脂比率のみを本発明の範囲外である樹脂比率に各々置き換えた。比較例1は(a)線状低密度ポリエチレン(LL2)40重量%、(b)高圧法低密度ポリエチレン(LD1)35重量%、(c)エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA1)25重量%、比較例2は(a)線状低密度ポリエチレン(LL2)70重量%、(b)高圧法低密度ポリエチレ(LD1)3重量%、(c)エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA1)27重量%、比較例3は(a)線状低密度ポリエチレン(LL2)75重量%、(b)高圧法低密度ポリエチレン(LD1)22重量%、(c)エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA1)3重量%に変更した以外は、実施例1と同様な方法で、フィルムを得、これを比較例1〜3とした。比較例1は内部層(B)に使用する線状低密度ポリエチレンの樹脂比率が本発明の範囲外であり、比較例2は同様に高圧法低密度ポリエチレンの樹脂比率が本発明の範囲外であり、比較例3は同様にエチレン−酢酸ビニル共重合体の樹脂比率が本発明の範囲外である。
【0059】
フィルムの層構成ならびに評価結果を表4および表5に示す。比較例1で得られたフィルムは、フィルムに腰がなく滑り特性が悪く、包装機械適性に乏しく、高速包装は困難であった。また、引裂強度、突刺強度等の強度物性に劣るものであった。比較例2はフィルム原反を製膜するときにドローダウンが激しく、フィルム原反に厚みムラを生じ、安定した製膜が困難であった。また、フィルム全体が白っぽくやや光学特性の劣るフィルムであった。比較例3はゲル分率の微調整が困難であり、シビアな電子線架橋コントロールを要し、ゲル分率の低いサンプルを製膜する事が困難であった。かろうじて得たフィルムで溶断シール性を測定したがゲル分率の微調整不足でややゲル分の高いフィルムになってしまい、溶断特性に劣るフィルムであった。
【0060】
【比較例4〜5】
内部層(B)に使用する線状低密度ポリエチレンLL2を本発明の技術的範囲外であるLL8,LL9に各々変更した以外は、実施例1と同様な方法で、フィルムを得、これを比較例4〜5とした。比較例4に使用するLL8は内部層(B)に使用する線状低密度ポリエチレンの密度および表面層(A)に使用される樹脂の融点と内部層(B)に使用される樹脂の融点の関係が本発明の技術的範囲外であり、比較例5に使用するLL9は内部層(B)に使用する線状低密度ポリエチレンの密度が本発明の範囲外である。
【0061】
フィルムの層構成ならびに評価結果を表5に示す。比較例4で得られたフィルムは、いわゆるフィルムの腰を発現できず、包装機械適性が劣り、特に高速包装困難であった。比較例5のフィルムは、延伸そのものが困難になり、安定製膜は困難であった。かろうじて得られたフィルムはいわゆる腰のある滑り特性に優れ、高速包装に適したフィルムであったが、白っぽく透明性が劣り、低温収縮性も乏しかった。また、比較例4で得られたフィルムは面シール性において表面層に比べ内部層が軟化、溶融しやすく、フィルムのヒートシール部がシールバーに融着したり、シールアンドカット時にヒートシール部が引き伸ばされてヒートシール破れ等のヒートシール不良を発生しやすかった。また、溶断刃の熱によってフィルムはまるまる傾向があり、効果的な面シールができなかった。
【0062】
【比較例6】
表面層(A)に使用する樹脂を本発明の範囲外であるLL10に各々変更した以外は、実施例1と同様な方法で、フィルムを得、これを比較例6とした。
フィルムの層構成ならびに評価結果を表5に示す。比較例6で得られたフィルムは、いわゆるフィルムの腰を発現できず、包装機械適性が劣り、特に高速包装ができなかった。
【0063】
【比較例7】
表面層(A)、内部層(B)に使用する樹脂はそのままで、延伸温度を樹脂の融点以下で延伸する以外は実施例1と同様な方法で、フィルムを得、これを比較例7とした。延伸温度はフィルムの配向、すなわち熱収縮力と密接な関係があり、延伸温度を融点以下にする目的はフィルムの最大平衡熱収縮応力の値を融点以上の温度で延伸したフィルムよりも、大きくすることが目的である。
【0064】
フィルムの層構成ならびに評価結果を表5に示す。得られたフィルムはいずれも実施例1と同様に、光学特性および引裂強度等の物性にも優れるものであったが、フィルムの最大平衡熱収縮応力の値が大きいため、高速包装時において、包装機械でヒートシールをした後、シュリンクトンネルに入るまでの時間が短くなり、ヒートシール部が十分に冷える前にフィルムの収縮による大きな収縮応力がヒートシール部にかかったためにヒートシールパンクが多発した。かろうじてヒートシールパンクをしなかった包装物を観察してみると被包装物がシュリンク包装時の大きな収縮応力により大きく変形していて商品価値が全く状態であった。
【0065】
【比較例8〜9】
比較例8は電子線照射量を6〜7メガラッドにした以外は実施例1と同様な方法で、フィルムを得た。また、比較例9は実施例1の内部層(B)に酸化防止剤を3500ppm添加したものに比較例8と同様、電子線照射量を6〜7メガラッドにて架橋処理を行った。フィルムの層構成ならびに評価結果を表6に示す。比較例8は面シール性や光学特性や引裂強度等の物性にも優れているが、フィルムのゲル分率が高いために溶断シールができず、溶断シールを採用している包装機械にはかからなかった。また、最大平衡熱収縮応力がゲル分率上昇に伴いやや高いため、シュリンク包装時に被包装物がやや変形していた。但し、商品価値が全くない訳ではなかった。比較例9は内部層(B)に酸化防止剤を多量に添加したために比較例8のフィルム全層のゲル分率よりも低くく、かつ、フィルム内のゲル組成分布が表面層(A)がゲル分率が高く、内部層(B)がゲル分率が低いゲル組成分布になっていた。得られたフィルムはいずれも実施例1と同様に、光学特性および引裂強度等の物性にも優れるものであったが、面シール性において、表面層に比べ内部層が軟化、溶融しやすく、フィルムのヒートシール部がシールバーに融着したり、シールアンドカット時にヒートシール部が引き伸ばされてヒートシール破れ等のヒートシール不良を発生しやすかった。また、溶断刃の熱によってフィルムはまるまる傾向があり、効果的な面シールができなかった。
【0066】
【比較例10〜12】
本発明の効果を従来技術と比較するために、特開平2−283445号公報に対応するものとして、その開示技術に従ってLL11からなる表面層とEVA3からなる内部層からなる3層(25/50/25)の収縮フィルムを得、このフィルムを比較例10とした。特開昭60−240451号公報に対応するものとして、その開示技術に従ってLL11(50重量%)とLL12(25重量%)とEVA3(25重量%)からなる表面層とLL11からなる内部層からなる3層(25/50/25)の収縮フィルムを得、このフィルムを比較例11とした。また、特開平1−301251号公報に対応するものとして、その開示技術に従ってLL13からなる表面層とLL14からなる内部層からなる3層(15/75/15)の収縮フィルムを得、このフィルムを比較例12とした。得られたフィルムの層構成ならびに評価結果を表6に示す。比較例10は低収縮力のため包装される産物をこわれてしまうことを防止できるが、面シール性においては、両外層に比べコア層、つまり内部層が軟化、溶融しやすいため、フィルムのヒートシール部がシールバーに融着したり、シールアンドカット時にヒートシール部が引き伸ばされてヒートシール破れ等のヒートシール不良を発生しやすく、特に高速包装時には面シール部でのトラブルが多かった。比較例11は適度の伸びと弾性記憶を伴なう良好な耐引裂性を有しているが、フィルム同士をヒートシールし、タイトに包装するためフィルムを収縮させる一連の流れの中で、特に高速包装時においてはヒートシールしてから収縮トンネルに入るまでの時間が短くなるため、ヒートシールした部分をフィルムの収縮応力で引っ張り、そのためヒートシールパンクを発生しやすく、うまくヒートシールできた時でも被包装体の剛性が弱いものの場合、被包装物が容易に変形した。また面シール性においても、同様な現象を生じ、安定した面シールは困難であった。比較例12は、透明性、低温溶断シール性が優れるが、架橋処理を行っていないためフィルムの耐熱性が劣っており、フィルムの収縮温度範囲を広くすることができず、包装の温度条件が狭かった。また、比較例11と同様、熱収縮フィルムの収縮応力が高いために、ヒートシールパンクを発生しやすく、被包装物が容易に変形してしまった。
【0067】
【表1】
【0068】
【表2】
【0069】
【表3】
【0070】
【表4】
【0071】
【表5】
【0072】
【表6】
【0073】
【発明の効果】
本発明は上述の構成を有することによって、従来の収縮包装用フィルムにはない極めて総合的にバランスのとれた高性能な熱収縮フィルムを提供できる。即ち、特定な樹脂および混合比率による内部層(B)と特定な樹脂による表面層(A)とフィルムの物性を規定することによって安定したフィルムを製膜することができ、かつ、包装機械適性、光学特性が良好であり、溶断シール性と面シール性等様々なシール形態に対して良好なヒートシール特性を有し、フィルムの収縮力による内容物変形が少なく、特に高速包装時のヒートシール性や包装仕上がりに優れる熱収縮性多層フィルムを提供できる。
Claims (1)
- 密度0.900〜0.940g/cm3 の線状低密度ポリエチレンを含有する表面層(A)と、(a)密度0.900〜0.940g/cm3 の線状低密度ポリエチレン50〜90重量%、(b)高圧法低密度ポリエチレン5〜40重量%、および(c)エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−脂肪族不飽和カルボン酸エステル共重合体から選ばれる少なくとも一種の共重合体5〜40重量%からなる混合樹脂組成物を含有する少なくとも一つの内部層(B)とを含有する少なくとも3層からなる多層フィルムであって、フィルム全層のゲル分率が0.1〜10重量%であり、表面層(A)および内部層(B)のゲル分率と層比率の関係が下記式(I)を満たすこと、内部層(B)に使用される少なくとも一つの樹脂の融点が表面層(A)の融点以上であること、ASTM D−2838で測定された80〜140℃におけるフィルムの最大平衡熱収縮応力が縦および横方向ともに200g/mm2 以下であること、かつ、ASTM D−2732で測定した140℃でのフィルムの熱収縮率が縦、横少なくとも1方向において30%以上であることを特徴とする熱収縮性多層フィルム。
GB×TB≧GA×TA (I)
(但し、上記式(I)において、GA、GBは各々表面層(A)、内部層(B)のゲル分率、また、TA、TBは各々表面層(A)、内部層(B)の厚み比率を表わす。)
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