JP3788199B2 - 多官能オキセタン化合物およびその製造方法、ならびに該オキセタン化合物からなるカチオン硬化性組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐熱性、硬化性、耐薬品性、低皮膚刺激性等に優れた硬化物を与えるカチオン硬化性の多官能オキセタン化合物およびその製造方法、ならびに該化合物からなるカチオン硬化性組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
紫外線や電子線で硬化する活性エネルギー線硬化性樹脂の分野でオキセタン化合物が用いられている。オキセタン化合物はラジカル硬化性のアクリレート化合物と比べ、酸素阻害を受け難いため、薄膜硬化性に優れ、その硬化物が強靭性、低収縮性、低い皮膚刺激性などの特徴を持っている。さらに、汎用エポキシ樹脂との共重合性にも優れているため、機械的強度や接着性の良い硬化物を容易に得ることができる(例えば、特開平8−85775号公報、特開平8−134405号公報など参照)。
しかしながら、オキセタン化合物は、柔軟なポリエーテル骨格を持つ重合体を与えるため、柔軟性に優れる反面、耐熱性に劣るという欠点がある。
また、現在市販されているオキセタン化合物は分子量が低いため、低粘度で作業性に優れる特徴を持つ反面、沸点が比較的低いため揮発し易いという問題がある。そのため、熱硬化性樹脂として利用した際に硬化過程で揮発したり、常温においても高速ロール塗工時に揮発減量が問題になる場合がある。
耐熱性を向上させるために、ラジカル硬化型アクリレートでは、3官能以上の多官能アクリレートを使用し、硬化物の架橋密度を高める方法が一般的であり、架橋密度の向上により、耐熱性に加えて耐薬品性や硬化性が向上する。従って、オキセタン化合物において、多官能体が工業的に容易かつ安価に製造できれば、高性能の硬化性組成物を得ることができると考えられる。
【0003】
【本発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、液体状態での揮発性が低く、かつ耐熱性に優れる硬化物を与える多官能オキセタン化合物を提供することである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、3−アルキル−3−(ヒドロキシメチル)オキセタンとテトラアルコキシシランまたはその縮合体から、特定な方法で製造した多官能オキセタン化合物が、液体状態で揮発性が低く、かつ耐熱性に優れる硬化物を与えることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は下記式(1)で表される多官能オキセタン化合物である。
【0005】
【化3】
【0006】
(式中、Xは下記式(2)で表されるオキセタンアルコール単位を示し、Yはメトキシ基またはエトキシ基を示し、lは0〜2の整数、mは0〜3の整数およびnは0〜10の整数を示す。但し、m=3かつn=0の場合は除く。)
【0007】
【化4】
(式中、Rはメチル基またはエチル基を示す。)
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について、更に詳しく説明する。
1.多官能オキセタン化合物
本発明における多官能オキセタン化合物は、前記式(1)で表される化合物であり、縮合度の異なる多官能オキセタン化合物の混合物であってもよい。
前記式(1)におけるXとYのモル比は100:0〜50:50である化合物が好ましく、また、重量平均分子量が300〜3,000である化合物が好ましい。この分子量領域において、比較的低粘度の液状を呈し、取り扱いが容易となる。なお、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定したポリスチレン換算の分子量を意味する。
【0009】
前記多官能オキセタン化合物の代表的な製造方法は、生成するアルコールを留去させながら、次の2成分を反応させることである。
(A)テトラアルコキシシランまたはその縮合体
(B)3−アルキル−3−(ヒドロキシメチル)オキセタン
なお、(A)成分にテトラアルコキシシランを用いる場合には、さらに反応中に水を添加することが望ましく、この場合は、テトラアルコキシシランと水とのアルコール交換反応で生成するアルコールを留去しながら、反応を行なうことになる。
さらに前記反応では、経時的に反応液の温度を上昇させて行なうことが好ましく、また、得られる多官能オキセタン化合物が前記で示した好ましい重量平均分子量になるように、添加する水の量を調節することが好ましい。
上記多官能オキセタン化合物の製造方法において、得られる化合物の物性および収率の面から、(A)成分にテトラメトキシシラン、また、(B)成分に3−エチル−3−(ヒドロキシメチル)オキセタンまたは3−メチル−3−(ヒドロキシメチル)オキセタンを用い、さらに反応中に水を添加する方法が好ましい。
【0010】
前記(A)成分であるテトラアルコキシシランとしては、反応性の点から、テトラメトキシシランおよびテトラエトキシシランが好ましく、テトラメトキシシランが特に好ましい。また、(A)成分として、テトラアルコキシシランの縮合体、即ちテトラアルコキシシランに水を添加して縮合させたオリゴマーも使用できる。テトラアルコキシシラン縮合体としては、メトキシおよびエトキシタイプの化合物が市販されており、これらを使用することも可能である。
【0011】
前記(B)成分である3−アルキル−3−(ヒドロキシメチル)オキセタンとしては、3−エチル−3−(ヒドロキシメチル)オキセタンおよび3−メチル−3−(ヒドロキシメチル)オキセタンが好ましく用いられる。
【0012】
また、前記反応に用いる水としては、イオン性不純物の少ない脱イオン水や蒸留水であることが好ましい。使用する水中に酸またはアルカリ成分が含まれると、反応速度が上昇する反面、得られる多官能オキセタン化合物やその硬化物の耐水性・耐酸性・耐アルカリ性を損ねる恐れがある。
【0013】
前記反応において、(B)成分の3−アルキル−3−(ヒドロキシメチル)オキセタンの添加量は、(A)成分の多官能オキセタン化合物のアルコキシ基の量から、添加する水のOH量を差し引いた有効アルコキシ基に対して、40〜150モル%であるが好ましく、60〜120モル%であることが更に好ましい。3−アルキル−3−(ヒドロキシメチル)オキセタンの添加量が40モル%より少ないと多官能オキセタン化合物の架橋性が低下し、150モル%を超えると未反応3−アルキル−3−(ヒドロキシメチル)オキセタンが増加して収率が低下する。
さらに、(A)成分にテトラアルコキシシランを使用する場合の水の添加量は、(A)成分と水のモル比が3:1〜5:4であることが好ましく、2:1〜4:3であることが更に好ましい。水の添加量がこの範囲より少ないと結晶化し易く、固形化や経時的な白濁が起こり易い。一方、水の添加量がこの範囲より多いと分子量が大きくなり、高粘度化による作業性の低下が起こる恐れがある。
【0014】
また、前記反応において、酸性触媒や塩基性触媒を使用することができるが、触媒除去工程による製造コストアップや、微量の残存触媒による安定性不良の可能性を考慮し、無触媒で反応するのが好ましい。また、反応に水を添加する場合には、反応初期に(A)成分と(B)成分の反応行い、脱アルコール反応率が少なくとも10%以上になった段階で水を反応液に添加するのが好ましい。理由は定かでないが、水を初期一括に仕込むと反応速度が低下し、収率が低下する傾向にある。なお、ここでいう脱アルコール反応率は、(A)成分に由来するアルコキシ基が脱離して生ずるアルコールの理論生成量に対する、留出したアルコールの量で計算した値である。
【0015】
反応温度は80〜250℃の範囲が好ましく、90〜230℃の範囲が更に好ましい。反応温度が80℃より低いと反応速度が低くなり、また、250℃を超えると生成物が着色し易い。反応条件としては、反応の前半(アルコール反応率50%程度まで)は90〜110℃の比較的低温で反応させ、後半は反応を促進するため反応温度を経時的に上昇させる方法が望ましい。(A)成分にテトラアルコキシシラン、特に、テトラメトキシシランを使用する時は、留出温度をメタノールの沸点(64−65℃)に保持して、原料の留出によるロスがないよう留意する。
反応時間はアルコールの留出速度に依存し、留出が効率的に行える場合は数時間で終了する。好ましい反応時間は2〜20時間である。反応時間が2時間より短いと反応率が低く、20時間を超えると生成物が着色し易くなる。
各成分の仕込比率や反応条件にもよるが、生成物中には未反応の(B)成分が数%〜10%程度残存する。この残存分を除去する必要がある場合は、過熱下で反応系を減圧除去すれば良い。
【0016】
2.カチオン硬化性組成物
本発明におけるカチオン硬化性組成物は、下記(1)〜(3)から構成されるものである。
(1)前記多官能オキセタン化合物
(2)エポキシ化合物または前記多官能オキセタン化合物以外のオキセ タン化合物
(3)光カチオン開始剤または熱カチオン開始剤
上記3成分の好ましい割合は、組成物全体を100重量部として、(1)2〜95重量部、(2)98〜5重量部および(3)0.2〜10重量部であり、更に好ましい混合比率は(1)5〜80重量部、(2)95〜20重量部および(3)0.5〜5重量部である。なお、特に好ましい混合比率は(1)10〜50重量部、(2)90〜50重量部および(3)1〜3重量部である。
(1)の割合が2重量部より少ないと耐熱性や耐薬品性の改良効果が低く、95重量部を超えると密着性や耐水性が低下する。また、(2)の割合が5重量部より少ないと密着性や強靭性に劣り、98重量部を超えると耐熱性や耐薬品性の改良効果が低い。さらに、(3)の割合が0.2重量部より少ないと硬化性が低く、10重量部を超えると塗膜物性が低下する。
【0017】
前記エポキシ化合物としては、分子内に少なくとも一個のエポキシ基を有する化合物であれば、限定なく用いることができ、脂環式エポキシ化合物、脂肪族エポキシ化合物、芳香族エポキシ化合物が挙げられる。これらの中でも、硬化物の耐熱性を損なわず硬化性も比較的良いという理由から、脂環式エポキシ化合物および芳香族エポキシ化合物が好ましい。
脂環式エポキシ化合物の例としては、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレートおよびビス−(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペート等のエポキシ化シクロヘキシル基を1つ以上有する化合物が挙げられる。これらの化合物は、米国ユニオンカーバイド社製CYRACUREレジン(商品名)として市販されており、これらを使用することができる。
芳香族エポキシ化合物としては、ビスフェノールAのグリシジルエーテル、ビスフェノールAのグリシジルエーテル縮合物、ノボラック樹脂やクレゾール樹脂のエピクロルヒドリン変性物等が挙げられる。
【0018】
また、前記多官能オキセタン化合物以外のオキセタン化合物としては、分子中に1個以上のオキセタニル基を有する化合物であれば特に制限なく使用できる。具体的には、特開平8−85775号公報および特開平8−134405号公報などに記載された各種のオキセタン化合物が挙げられ、これらの中でも、オキセタニル基を1個または2個有する化合物が好ましい。
オキセタニル基を1個有する単官能オキセタン化合物の例としては、3―エチル―3−(ヒドロキシメチル)オキセタン、3―エチル―3−[(フェノキシ)メチル]オキセタン、3―エチル―3−(ヘキシロキシメチル)オキセタン、3―エチル―3−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタンおよび3―エチル―3−(クロロメチル)オキセタン等が挙げられる。
オキセタニル基を2個有する2官能オキセタン化合物の例としては、1,4−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼンおよびビス{[1−エチル(3−オキセタニル)]メチル}エーテル等が挙げられる。
これらの化合物については、アロンオキセタンOXT−101、OXT−121、OXT−211、OXT−221およびOXT−212{いずれも商品名、東亞合成(株)製}の市販品として入手可能である。
【0019】
さらに、カチオン硬化性組成物の必須成分である光カチオン開始剤は、活性エネルギー線の作用によって開裂し強酸を放出する化合物であり、また、熱カチオン開始剤は、熱の作用すなわち温度の上昇によって開裂し強酸を放出する化合物である。
光カチオン開始剤としては、例えば、UV・EB硬化材料[(株)シーエムシー、1992年発行]の3.1.5項63−65頁に記載されているような化合物が挙げられ、これらの中でも、下記式(3)に代表されるトリアリールスルホニウムヘキサフロロホスフェート塩、リン原子をアンチモン原子で置換されたトリアリールスルホニウムヘキサフロロアンチモネート塩、下記式(4)で表される化合物に代表されるジアリールヨードニウム塩が好ましく用いられる。
【0020】
【化5】
【0021】
【化6】
【0022】
熱カチオン開始剤としては、例えば、SbF6、−SbF4、−AsF6、−PF6−などの陰イオン成分とする窒素、イオウ、リンまたはヨードのオニウム塩が挙げられる。具体的には、四級アンモニウム塩型化合物、スルホニウム塩型化合物、ホスホニウム塩型化合物、ヨードニウム塩型化合物などが有り、旭電化工業(株)製アデカオプトンCP−66、CP−77(いずれも商品名)、三新化学工業(株)製サンエイドSI−60L、SI−80L、SI−100L(いずれも商品名)などの市販品があり、これらを使用することができる。
なお、前記カチオン硬化性組成物には、さらに、必要に応じて充填剤、カップリング剤、難燃剤、可塑剤、低収縮化剤、潤滑剤、表面改質剤、染料・顔料等の添加剤を配合することができる。
【0023】
【実施例】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。各例における成分配合の部は、全て重量部である。
【0024】
実施例1 多官能オキセタン化合物の製造(1)
300mLの四つ口ガラスフラスコに、攪拌機、温度計および蒸留装置を設置し、3―エチル―3−(ヒドロキシメチル)オキセタン{東亞合成(株)製アロンオキセタンOXT−101、商品名}100.0g(0.86モル)、テトラメトキシシランオリゴマー{三菱化学(株)製 MKCシリケート MS56、商品名、平均縮合度3.62のオリゴマー}43.4g(0.112モル)を仕込んだ。このフラスコを150℃のオイルバスで加熱攪拌し、メタノールを留出させながら5時間反応させた。生成物中には未反応の3―エチル―3−(ヒドロキシメチル)オキセタンが約8%含まれていたので、150℃で30分減圧して、未反応3―エチル―3−(ヒドロキシメチル)オキセタンを留去した。最終生成物の収量は103g(88.9%)であり、残存オキセタン化合物は1.6%であった。
また、E型粘度計から求めた粘度は5,200mPa・sであり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーから求めた数平均分子量は810、重量平均分子量は1,460であった。また、熱分析(TG:昇温速度20℃/分、窒素中)から求めた200℃における重量減少は約2%であり、揮発性が極めて低いことが分かった。また、1H−NMRから確認したオキセタニル基とメトキシ基のモル比は90:10であった。
図1、図2および図3に、実施例1で得られた化合物の1H−NMR、13C−NMRおよびIRスペクトルを示す。
【0025】
実施例2 多官能オキセタン化合物の製造(2)
300mLの四つ口ガラスフラスコに、攪拌機、温度計および蒸留装置を設置し、実施例1と同じ3―エチル―3−(ヒドロキシメチル)オキセタン152.6g(1.32モル)およびテトラメトキシシラン{正珪酸メチル、多摩化学(株)製}78.6g(0.52モル)を仕込んだ。このフラスコを110℃のオイルバスで加熱攪拌し、メタノールを留出させながら(留出蒸気温度64〜65℃)1時間反応させた。この時点での脱アルコール反応率は28%であった。ここに蒸留水4.6g(0.26モル)を少しずつ添加し、更に1時間反応した。この時点での脱アルコール反応率は48%であった。また、反応開始後2時間での反応液温度は92〜105℃であった。その後オイルバスを徐々に昇温し、2時間かけて200℃まで上げ、反応を終了した。脱アルコール反応率は94%であった。また、反応終了時点での反応液温度は192℃であった。生成物中には未反応の3―エチル―3−(ヒドロキシメチル)オキセタンが約6%含まれていたため、150℃で30分減圧留去した。最終生成物の収量は169g(95.3%)であり、残存オキセタン量は、2.0%であった。また、E型粘度計から求めた粘度は440mPa・sであり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーから求めた数平均分子量は590、重量平均分子量は810であった。また、熱分析(TG:昇温速度20℃/分、窒素中)から求めた200℃における重量減少は約3%であり、揮発性が極めて低いことが分かった。また、1H−NMRから評価したオキセタニル基とメトキシ基のモル比は、87:13であった。
図4、図5および図6に、実施例2で得られた化合物の1H−NMR、13C−NMRおよびIRスペクトルを示す。
【0026】
比較製造例1 多官能オキセタン化合物の製造(3)
300mLの四つ口ガラスフラスコに、攪拌機、温度計および蒸留装置を設置し、実施例2と同じ3―エチル―3−(ヒドロキシメチル)オキセタン100.0g(0.86モル)およびテトラメトキシシラン39.3g(0.26モル)を仕込んだ。このフラスコを110℃のオイルバスで加熱攪拌し、メタノールを留出させながら(留出蒸気温度64〜65℃)2時間反応させた。その後、オイルバスを徐々に昇温し、4時間かけて200℃まで上げ、反応を終了した。反応終了時点での反応液温度は195℃であった。生成物中には未反応の3―エチル―3−(ヒドロキシメチル)オキセタンが約7%含まれていたため、150℃で30分減圧留去した。最終生成物の収量は103g(92.2%)であり、残存オキセタン化合物は3.2%であった。ガスクマトグラフィーの面積比から計算した各置換体の生成比は以下の通りであった。
4置換体 79.4%(メトキシ基がすべてオキセタニル基で置換されたもの)
3置換体 11.8%(メトキシ基の3つがオキセタニル基で置換されたもの)
2置換体 6.6%(メトキシ基の2つがオキセタニル基で置換されたもの)
1置換体 2.1%(メトキシ基の1つがオキセタニル基で置換されたもの)
また、1H−NMRから計算したオキセタニル基とメトキシ基のモル比は、87:13であった。ゲルパーミエーションクロマトグラフィーから求めた数平均分子量は360、重量平均分子量は430であった。生成物は室温保存中に徐々に結晶化した。
【0027】
結晶化は主成分である4置換体に起因すると予想されたので、確認のため4置換体の単離を行った。即ち、生成物をメタノールで2回再結晶し、高純度の4置換体を得た(メタノールに溶解後−20℃で4時間保持し析出した結晶を濾過・乾燥)。ガスクマトグラフィーから計算した各置換体の生成比は以下の通りであった。
4置換体 98.2%
3置換体 1.7%
2置換体 0.1%
1置換体 なし
1H−NMRから計算するとメトキシ基はほぼ消失しており、ほぼ100%キセタニル基を持つ4置換体と推定された。このもののDSC(昇温速度10℃/分)による融点は62.4℃であった。
【0028】
実施例3〜4および比較例1〜4 光カチオン硬化性組成物の調整と硬化(1)下記表1に示す組成で光カチオン硬化性組成物を秤量し、混合して均一透明な配合液とした。以下に記載の方法で配合物を硬化させ、得られた硬化膜の薄膜物性(膜厚約10μ)と厚膜物性(膜厚100−200μ)を測定した。
[薄膜物性(膜厚約10μ)]
クロメート処理アルミニウム板上に、バーコーター#10を用いて配合液を塗装し、120W/cmのメタルハライドランプを設置したコンベアタイプの紫外線照射装置(ランプ高さ=10cm、コンベアスピード=10m/min)を用いて2パス通し硬化させた。硬化塗膜を室温で一日静置した後、鉛筆硬度、屈曲性(10mmφ)、耐アルカリ性(5%NaOH液を塗膜上に0.1gのせて1日間自然乾燥し、塗膜を水洗後塗膜面を観察した)を評価した。その結果を表1に示す。
屈曲性の評価基準(180°折り曲げたときの割れるか否かの試験)
○:割れない、×:割れた
耐アルカリ性
◎:変化なし、○:表面がやや白くなる程度、×:白濁した
【0029】
[厚膜物性(膜厚100−200μ)]
PETフィルム上に作成した型枠(10cm×2cm、厚さ約0.5mm)に配合液を流し込み、気泡が入らないように上面をPETフィルム覆った。120W/cmのメタルハライドランプを設置したコンベアタイプの紫外線照射装置(ランプ高さ=10cm、コンベアスピード=10m/min)を用いて6パス通し硬化させた。硬化フィルムを室温で一日静置した後、アセトン抽出率と粘弾性スペクトルを測定した。
アセトン抽出率:硬化フィルムを1cm×5cmにカットし、アセトン中に1日間浸漬した。浸漬後のフィルムを真空乾燥器にて、90℃×3時間乾燥し、重量減少からアセトン抽出率を計算した。その結果を表1に示す。
粘弾性スペクトル:硬化フィルムを剥がして幅0.6cm、長さ4.5cmにカットし、セイコーインスツルメンツ(株)製粘弾性測定装置DMS6100(引張り変形モード、正弦波振動、周波数10Hz、昇温速度4℃/分)を使用して、粘弾性挙動を調べた。転移温度(tanδmax)と、tanδmax温度+40℃での弾性率から計算した架橋密度を表1に示した。
【0030】
【表1】
【0031】
表1における略号は、下記化合物を表わす。
・UVR6110:3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(脂環式エポキシ化合物、ユニオンカーバイド社製)
・XDO:2官能オキセタン化合物 1,4−ビス{[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ]メチル}ベンゼン{東亞合成(株)製、アロンオキセタンOXT−121(商品名)}
・DOX:2官能オキセタン化合物 ジ[1−エチル(3−オキセタニル)]メチルエーテル{東亞合成(株)製、アロンオキセタンOXT−221(商品名)}
・UVI6990:トリアリルスルホニウムヘキサフロロホスフェート塩 純分50%(ユニオンカーバイド社製)
【0032】
実施例5〜8および比較例5〜6 光カチオン硬化性組成物の調整と硬化(2)
下記表2に示す組成で光カチオン硬化性組成物を秤量し、混合して均一透明な配合液を得た。実施例1〜2に記載した方法に従って硬化物の厚膜物性を評価した。なお、耐熱性の目安として、粘弾性スペクトルにおける150℃での貯蔵弾性率を表中に記した。
【0033】
【表2】
【0034】
表2において、略号は以下の化合物を表わす。
YD−701:クレゾールノボラックエポキシ樹脂{東都化成(株)製}
【0035】
実施例9〜10および比較例7 表面硬化性の評価
下記表3に示す組成で光カチオン硬化性組成物を秤量し、混合して均一透明な配合液を得た。クロメート処理アルミニウム板上に、バーコーター#10を用いて配合液を塗装し、80W/cmの高圧水銀ランプを設置したコンベアタイプの紫外線照射装置(ランプ高さ=10cm、コンベアスピード=10m/min)を用いて表面硬化性を評価した。表面硬化性は、タックの消失するパス回数で評価した。その結果を表3に示す。
【0036】
【表3】
【0037】
表3において、略号は以下の化合物を表わす。
・OXA:単官能オキセタン 3―エチル―3−(ヒドロキシメチル)オキセタン{東亞合成(株)製、アロンオキセタンOXT−101(商品名)}
【0038】
【発明の効果】
実施例の結果からも分かるように、本発明の多官能オキセタン化合物は硬化性に優れ、また、架橋効率が高いため、硬度・耐熱性・耐薬品性に優れた硬化物を容易に得ることができる。これらの特長を利用して、本発明の多官能オキセタン化合物は塗料・コーティング材料、インキ、成形材料、接着剤、電気・電子材料等の幅広い分野に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1で得られた多官能オキセタン化合物の1H−NMRスペクトルを示す。
【図2】実施例1で得られた多官能オキセタン化合物の13C−NMRスペクトルを示す。
【図3】実施例1で得られた多官能オキセタン化合物のIRスペクトルを示す。
【図4】実施例2で得られた多官能オキセタン化合物の1H−NMRスペクトルを示す。
【図5】実施例2で得られた多官能オキセタン化合物の13C−NMRスペクトルを示す。
【図6】実施例2で得られた多官能オキセタン化合物のIRスペクトルを示す。
Claims (4)
- 生成するアルコールを留去させながら、下記(A)および(B)を反応させることを特徴とする、請求項1記載の多官能オキセタン化合物の製造方法。
(A)テトラアルコキシシランまたはその縮合体
(B)3−アルキル−3−(ヒドロキシメチル)オキセタン - 前記(A)成分がテトラメトキシシランであり、前記(B)成分が3−エチル−3−(ヒドロキシメチル)オキセタンまたは3−メチル−3−(ヒドロキシメチル)オキセタンであり、さらに反応中に水を添加することを特徴とする、請求項2記載の多官能オキセタン化合物の製造方法。
- 下記(1)〜(3)からなるカチオン硬化性組成物。
(1)請求項1記載の多官能オキセタン化合物
(2)エポキシ化合物または(1)以外のオキセタン化合物
(3)光カチオン開始剤または熱カチオン開始剤
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