JP5454761B2 - オキセタニル基を有するケイ素化合物の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、オキセタニル基を有するケイ素化合物の製造方法に関するものである。詳しくは、オキセタニル基を有し2個または3個の加水分解性基を有するケイ素化合物と、4個のシロキサン結合生成基を有するケイ素化合物とを加水分解・縮合させる、オキセタニル基を有する縮合されたケイ素化合物の製造方法に関するものである。
オキセタニル基を有し3個の加水分解性基を有するケイ素化合物と、4個のシロキサン結合生成基を有するケイ素化合物とを、酸性触媒存在下で加水分解・縮合させて、オキセタニル基を有する有機ケイ素化合物を製造する方法およびこの有機ケイ素化合物を含有する組成物は知られている(特許文献1)。しかし、酸性触媒存在下で加水分解・縮合させて得られた化合物は、保存条件によっては保存中にゲル化することもあり、この有機ケイ素化合物またはこの化合物を含有する組成物の使用目的によっては用途が制限される。
また、特許文献1の方法を用いて、オキセタニル基を有し3個のOR基(Rは炭化水素基である)を有するケイ素化合物(s1)と、4個のOR基(Rは炭化水素基である)を有するケイ素化合物(s2)とを、酸性条件下で加水分解・縮合させて、オキセタニル基を有する有機ケイ素化合物を製造した場合、この有機ケイ素化合物中のOR基の割合は、ケイ素化合物(s1)中のOR基およびケイ素化合物(s2)中のOR基の合計量に対して、少なくとも9%と高かった。これにより、ゲルの生成や、硬度、耐摩耗性等が不十分な硬化物を招くこととなった。
また、オキセタニル基を有し3個の加水分解性基を有するケイ素化合物をアルカリ性条件下で加水分解・縮合させて、オキセタニル基を有する有機ケイ素化合物を製造する方法およびこの有機ケイ素化合物を含有する組成物も知られている(特許文献2、3)。しかし、硬度、耐摩耗性等を向上させるために、得られた有機ケイ素化合物において無機部分の割合を高めることについては開示されていない。
なお、特許文献1の実施例1によると、オキセタニル基を有し3個の加水分解性基を有するケイ素化合物と、3個のシロキサン結合生成基を有するケイ素化合物(メチルトリエトキシシラン)とを、酸性条件下で加水分解・縮合させ、ゲル化しない縮合物が得られている。一方、特許文献1の比較例1によると、これらの化合物をアルカリ性条件下で加水分解・縮合させようとしてゲル化したという開示がある。即ち、特許文献1と、特許文献2または3とを組み合わせることの阻害要因を有している。
国際公開パンフレットWO2004/076534 特開平11−029640号公報 特開平11−199673号公報
本発明は、無機部分の割合が大きく、製造時の安定性および保存安定性が良好な、オキセタニル基を有する縮合されたケイ素化合物の製造方法を提供することを課題とする。

上記課題を解決するため、本発明は、以下に示される。
1.本発明は、アルカリ性条件下、下記一般式(1)で表されるケイ素化合物(A)と、下記一般式(2)で表されるケイ素化合物(B)とを、上記ケイ素化合物(A)1モルに対して上記ケイ素化合物(B)0.3〜2.8モルの割合で加水分解・縮合する工程を備える、オキセタニル基を有する有機ケイ素化合物の製造方法である。
Figure 0005454761
[式中、R0はオキセタニル基を有する有機基であり、R1は炭素数1〜6のアルキル基、炭素数7〜10のアラルキル基、炭素数6〜10のアリール基またはオキセタニル基を有する有機基であり、Xは加水分解性基であり、nは0または1である。]
SiY4 (2)
[式中、Yはシロキサン結合生成基である。]
2.上記一般式(1)におけるR0が、下記一般式(3)で表される有機基である上記1に記載のオキセタニル基を有する有機ケイ素化合物の製造方法。
Figure 0005454761
[式中、R3は水素原子または炭素数1〜6のアルキル基であり、R4は炭素数2〜6のアルキレン基である。]
3.上記一般式(1)におけるXがアルコキシ基、シクロアルコキシ基またはアリールオキシ基である上記1または2に記載のオキセタニル基を有する有機ケイ素化合物の製造方法。
4.アルカリ性条件とするための塩基性物質の使用量が、上記ケイ素化合物(A)および上記ケイ素化合物(B)の合計モル数を100モルとした場合に、1〜20モルである、上記1〜3のいずれかに記載のオキセタニル基を有する有機ケイ素化合物の製造方法。
5.上記塩基性物質が水酸化テトラアルキルアンモニウムである上記4に記載のオキセタニル基を有する有機ケイ素化合物の製造方法。
6.上記ケイ素化合物(A)および上記ケイ素化合物(B)の縮合率が92%以上である上記1〜5のいずれかに記載のオキセタニル基を有する有機ケイ素化合物の製造方法。
.式(1)で表されるケイ素化合物(A)と式(2)で表されるケイ素化合物(B)とを、ケイ素化合物(A)1モルに対してケイ素化合物(B)0.3〜2.8モルの割合で、アルカリ性条件において加水分解・縮合させる反応工程、上記反応工程により得られた反応液に酸を添加して、反応工程でアルカリ性条件とするために使用されたアルカリ剤を中和する中和工程、および中和工程を経て得られた処理物を水により洗浄する洗浄工程を含むオキセタニル基を有する上記1〜のいずれかに記載の有機ケイ素化合物の製造方法。
本発明の製造方法によれば、無機部分の割合が高く、製造後、ゲル化することなく安定であり、有機溶剤への溶解性に優れ、組成物とした場合にも保存安定性に優れるのオキセタニル基を有する有機ケイ素化合物を得ることができる。そして、このオキセタニル基を有する有機ケイ素化合物は、表面硬度が大きく耐熱性に優れた硬化物被膜を与えることができる。
尚、「無機部分の割合」とは、化合物を構成する原子として炭素原子を含まない部分が化合物の構造全体に占める割合を意味する。
本発明のオキセタニル基を有する有機ケイ素化合物の製造方法によれば、製造後のゲル化を招くことなく安定な有機ケイ素化合物を製造することができる。特に、上記一般式(1)において少なくとも1個のXがOR基(Rは、アルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基およびアリール基から選ばれた炭化水素基である。)であるケイ素化合物(A)と、上記一般式(2)において少なくとも1個のYがOR基(Rは、アルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基およびアリール基から選ばれた炭化水素基である。)であるケイ素化合物(B)とを、製造原料として用いた場合、得られた有機ケイ素化合物において、ケイ素化合物(A)および(B)に由来するOR基の割合を、製造前のこれらの化合物に含まれるOR基の合計量に対して、例えば、8%以下等とすることができる。そして、この有機ケイ素化合物は、著しく保存安定性に優れる。
1.オキセタニル基を有する有機ケイ素化合物およびその製造方法
本発明のオキセタニル基を有する有機ケイ素化合物(以下、「有機ケイ素化合物(C)」という。)は、アルカリ性条件下、下記一般式(1)で表されるケイ素化合物(A)と、下記一般式(2)で表されるケイ素化合物(B)とを、上記ケイ素化合物(A)1モルに対して上記ケイ素化合物(B)0.3〜2.8モルの割合で加水分解・縮合する工程を備える方法により得られたことを特徴とする。
また、本発明の有機ケイ素化合物(C)の製造方法は、アルカリ性条件下、下記一般式(1)で表されるケイ素化合物(A)と、下記一般式(2)で表されるケイ素化合物(B)とを、上記ケイ素化合物(A)1モルに対して上記ケイ素化合物(B)0.3〜2.8モルの割合で加水分解・縮合する工程を備えることを特徴とする。
Figure 0005454761
[式中、R0はオキセタニル基を有する有機基であり、R1は炭素数1〜6のアルキル基、炭素数7〜10のアラルキル基、炭素数6〜10のアリール基またはオキセタニル基を有する有機基であり、Xは加水分解性基であり、nは0または1である。]
SiY4 (2)
[式中、Yはシロキサン結合生成基である。]
上記ケイ素化合物(A)は、1つのみ用いてよいし、2つ以上を組み合わせて用いることができる。上記ケイ素化合物(B)もまた、1つのみ用いてよいし、2つ以上を組み合わせて用いることができる。
1−1.ケイ素化合物(A)
このケイ素化合物(A)は、上記一般式(1)で表される、オキセタニル基を有する化合物である。このケイ素化合物(A)は、得られる有機ケイ素化合物(C)にカチオン硬化性を付与するための成分である。
上記一般式(1)において、R0はオキセタニル基を有する有機基であり、この有機基は炭素数が20以下であるものが好ましい。
また、特に好ましいR0は、下記一般式(3)で表される構造を有する有機基である。
Figure 0005454761
[式中、R3は水素原子または炭素数1〜6のアルキル基であり、R4は炭素数2〜6のアルキレン基である。]
上記一般式(3)において、R3は、好ましくはエチル基である。R4は、好ましくは直鎖状のアルキレン基であり、特に好ましくはプロピレン基(トリメチレン基)である。その理由は、このような有機官能基を形成するオキセタン化合物の入手または合成が容易なためである。
上記一般式(3)におけるR3またはR4の炭素数が大きすぎると、得られる有機ケイ素化合物(C)において無機部分の割合が高いものになりにくく、得られる硬化物の表面硬度が十分でない場合がある。
また、上記ケイ素化合物(A)を表す一般式(1)において、R1は炭素数1〜6のアルキル基、炭素数7〜10のアラルキル基、炭素数6〜10のアリール基またはオキセタニル基を有する有機基である。R1がオキセタニル基を有する有機基である場合、特に好ましいR1は、上記一般式(3)で表される構造を有する有機基である。
上記一般式(1)におけるXは加水分解性基であり、複数存在するXは、互いに同一であっても異なっていてもよい。Xとしては、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アラルキルオキシ基、アリールオキシ基等が例示される。好ましいXは、アルコキシ基、シクロアルコキシ基およびアリールオキシ基である。Xがハロゲン原子である場合には、後述する加水分解反応においてハロゲン化水素が生じるので、反応液がアルカリ性を維持できるように管理する必要がある。反応液が酸性雰囲気となるのを防ぎアルカリ性を維持できるようにするため、あらかじめXの当量以上の塩基性物質を加えておくこともよい。
アルコキシ基は、好ましくは、炭素数1〜6のアルコキシ基であり、その例としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、iso−プロポキシ基、n−ブトキシ基、iso−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペンチル基、n−へキシル基等が挙げられる。これらのうち、炭素数1〜3のアルコキシ基が特に好ましい。
シクロアルコキシ基は、好ましくは、炭素数3〜8のシクロアルコキシ基であり、その例としては、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等が挙げられる。
アラルキルオキシ基は、好ましくは、炭素数7〜12のアラルキルオキシ基であり、その例としては、ベンジルオキシ基、2−フェニルエチルオキシ等挙げられる。
アリールオキシ基は、好ましくは、炭素数6〜10のアリールオキシ基であり、その例としては、フェニルオキシ基、o−トルイルオキシ基、m−トルイルオキシ基、p−トルイルオキシ基、ナフチルオキシ基等が挙げられる。
アルコキシ基の加水分解性が良好であることから、本発明において、上記一般式(1)のXは、炭素数1〜3のアルコキシ基であることが好ましい。また、原料の入手が容易であり安価であること、加水分解反応が制御しやすいことから、特に好ましいXはメトキシ基である。
上記一般式(1)において、nは0または1である。nが0である場合のケイ素化合物(A)は、加水分解性基Xを3個有しており、「Tモノマー」とも呼ばれる。また、nが1である場合のケイ素化合物(A)は、加水分解性基Xを2個有しており、「Dモノマー」とも呼ばれる。
得られる有機ケイ素化合物(C)において無機部分の割合がより高いものにするためには、nは0であるケイ素化合物(A)を用いることが好ましい。
得られる有機ケイ素化合物(C)を、後述する溶剤への溶解性により優れたものにするためには、nは1であることが好ましい。
上記効果のバランスをとるために、nが0のケイ素化合物(A)と、nが1のケイ素化合物(A)とを併用してもよい。
1−2.ケイ素化合物(B)
このケイ素化合物(B)は、上記一般式(2)で表される、ケイ素原子1個およびシロキサン結合生成基4個を有する化合物である。このケイ素化合物(B)は、シロキサン結合生成基Yを4個有するもの(「Qモノマー」とも呼ばれる。)であり、得られる有機ケイ素化合物(C)における無機部分の割合を高くするための成分である。シロキサン結合生成基は、ケイ素化合物(A)における加水分解性基との反応により、シロキサン結合を生成する。
上記一般式(2)におけるYは、シロキサン結合生成基であり、複数存在するYは、互いに同一であっても異なっていてもよい。シロキサン結合生成基Yとしては、水酸基、加水分解性基等が挙げられる。加水分解性基としては、上記一般式(1)におけるXと同様のものが使用できる。
シロキサン結合生成基Yは、好ましくはハロゲン原子以外のものであり、即ち、水酸基、水素原子、アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等)、シクロアルコキシ基(シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等)、アラルキルオキシ基(ベンジルオキシ基、2−フェニルエチルオキシ基等)、アリールオキシ基(フェニルオキシ基、o−トルイルオキシ基、m−トルイルオキシ基、p−トルイルオキシ基、ナフチルオキシ基等)等である。これらのうち、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アラルキルオキシ基およびアリールオキシ基が好ましく、アルコキシ基が特に好ましい。
尚、シロキサン結合生成基Yがハロゲン原子であるケイ素化合物(B)を用いると、上記一般式(1)における加水分解性基Xの説明と同様に、反応の進行とともに反応液の液性が変化し、管理が煩雑となる場合がある。
上記ケイ素化合物(B)としては、以下に例示される。
(i)シロキサン結合生成基Yの4個が、互いに同一または異なって、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アラルキルオキシ基またはアリールオキシ基であるケイ素化合物
(ii)シロキサン結合生成基Yの1個がアルコキシ基、シクロアルコキシ基、アラルキルオキシ基またはアリールオキシ基であり、3個が、互いに同一または異なって、水酸基または水素原子であるケイ素化合物
(iii)シロキサン結合生成基Yの2個が、互いに同一または異なって、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アラルキルオキシ基またはアリールオキシ基であり、2個が、互いに同一または異なって、水酸基または水素原子であるケイ素化合物
(iv)シロキサン結合生成基Yの3個が、互いに同一または異なって、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アラルキルオキシ基またはアリールオキシ基であり、1個が、水酸基または水素原子であるケイ素化合物
(v)シロキサン結合生成基Yの4個が、互いに同一または異なって、水酸基または水素原子であるケイ素化合物
これらのうち、態様(i)が好ましい。
上記態様(i)のケイ素化合物としては、テトラメトキシシランSi(OCH34、テトラエトキシシランSi(OC254、テトラプロポキシシランSi(OC374、テトラブトキシシランSi(OC494等が挙げられる。アルコキシ基を形成する炭化水素基は、直鎖状でも分岐状でもよいが、分岐したものは立体障害が起きやすくなるので、直鎖状の炭化水素基であることが好ましい。
上記態様(ii)のケイ素化合物としては、H3SiOCH3、H3SiOC25、H3SiOC37等が挙げられる。
上記態様(iii)のケイ素化合物としては、H2Si(OCH32、H2Si(OC252、H2Si(OC372等が挙げられる。
上記態様(iv)のケイ素化合物としては、HSi(OCH33、HSi(OC253、HSi(OC373等が挙げられる。
また、上記態様(v)のケイ素化合物としては、HSi(OH)3、H2Si(OH)2、H3Si(OH)、SiH4、Si(OH)4等が挙げられる。
上記ケイ素化合物(B)としては、すべてのシロキサン結合生成基がアルコキシ基である化合物が好ましく、特に好ましい化合物は、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシランおよびテトラプロポキシシランである。
上記ケイ素化合物(B)としてテトラプロポキシシランを使用すると、有機ケイ素化合物(C)の製造中の増粘、ゲル化等を起こりにくくすることができる。従って、テトラプロポキシシランはケイ素化合物(B)として最も好ましいものである。
1−3.有機ケイ素化合物(C)の製造方法
本発明の有機ケイ素化合物(C)の製造方法は、アルカリ性条件下、上記一般式(1)で表されるケイ素化合物(A)と、上記一般式(2)で表されるケイ素化合物(B)とを、ケイ素化合物(A)1モルに対してケイ素化合物(B)0.3〜2.8モルの割合で加水分解・縮合する工程(以下、「第1工程」という。)を含む。この第1工程では、通常、ケイ素化合物(A)、ケイ素化合物(B)、水、および、アルカリ性条件とするための塩基性物質が用いられる。本発明は、第1工程の後、更に、以下の工程を含むことができる。
(第2工程)第1工程で得られた反応液を、酸により中和する工程。
(第3工程)第2工程で得られた中和液から揮発性成分を除去する工程。
(第4工程)第3工程で得られた濃縮液と、洗浄用有機溶剤とを、混合および接触させて、少なくとも有機ケイ素化合物(C)を洗浄用有機溶剤に溶解する工程。
(第5工程)第4工程で得られた有機系液を水により洗浄した後、有機ケイ素化合物(C)を含む有機溶液を得る工程。
(第6工程)第5工程で得られた有機溶液から揮発性成分を除去する工程。
本発明の有機ケイ素化合物(C)の製造方法は、第1工程、第2工程および第5工程を含むことが好ましい。
1−3−1.第1工程
第1工程は、ケイ素化合物(A)とケイ素化合物(B)とを、上記のように、特定の割合で使用してアルカリ性条件において加水分解・縮合させる工程である。
反応に使用されるケイ素化合物(A)1モルに対するケイ素化合物(B)の割合の下限は、0.3モルであり、好ましくは0.4モル、より好ましくは0.5モル、更に好ましくは0.9モルである。また、反応に使用されるケイ素化合物(A)1モルに対するケイ素化合物(B)の割合の上限は、2.8モルであり、好ましくは2.6モル、より好ましくは2.5モル、更に好ましくは2.1モルである。
上記ケイ素化合物(B)の使用割合が上記範囲にあると、得られる有機ケイ素化合物(C)を含有する組成物が硬化するときの体積収縮が抑制される。尚、上記ケイ素化合物(B)の使用割合が0.9モル以上である場合には、体積収縮の抑制効果のみならず、有機ケイ素化合物(C)を含有する組成物を基材上で硬化させたときに、硬化物と基材との優れた密着性を得ることができる。
上記第1工程において、ケイ素化合物(B)の使用割合が少なすぎると、得られる有機ケイ素化合物(C)において無機部分の割合が低くなり、ケイ素化合物(C)を含有する組成物を用いて得られた硬化物が表面硬度や耐熱性の不十分なものとなる。一方、ケイ素化合物(B)の使用割合が多すぎると、有機ケイ素化合物(C)の製造中に増粘またはゲル化して製造ができなかったり、得られた有機ケイ素化合物(C)が増粘またはゲル化しやすく保存安定性の悪いものになったりする。
第1工程において用いられる水は、原料ケイ素化合物(ケイ素化合物(A)および加水分解性基を有する場合のケイ素化合物(B))に含まれる加水分解性基を加水分解するために必要な成分である。使用される水の量は、上記加水分解性基1モルに対して、好ましくは0.5〜10モル、より好ましくは1〜5モルである。
水の使用量が少なすぎると、反応が不十分となる場合がある。水の使用量が多すぎると、反応後に水を除去する工程が長くなり経済的ではない。
第1工程における反応条件は、反応系をアルカリ性にすることであり、即ち、pHは7を超えることが必須であり、好ましくはpHが8以上、より好ましくはpHが9以上である。尚、上限は、通常、pHが13である。反応系を上記pHとすることにより、保存安定性に優れた有機ケイ素化合物を高い収率で製造することができる。
第1工程における反応条件が、酸性条件下(pHが7未満)である場合には、加水分解・縮合させて得られる有機ケイ素化合物は、保存安定性に劣るものとなり、保存中にゲル化することもある。
また、中性条件下(pHが7付近)では、加水分解・縮合反応が進行しにくく、有機ケイ素化合物を収率よく得ることができない。
尚、pHが13を超える条件で製造する場合には、pHが8〜13の場合と同様、有機ケイ素化合物を高収率で得ることができるが、その条件とするための塩基性物質の使用量が多くなるため、経済的ではなく、また反応終了後に反応液を中和するコストもアップする。
第1工程において、反応系をアルカリ性にするために用いられる塩基性物質は、ケイ素化合物(A)とケイ素化合物(B)との加水分解・縮合反応を円滑に進行させるための反応触媒として作用する。上記塩基性物質の例としては、アンモニア、有機アミン類、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム、コリン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等が挙げられる。これらのうち、触媒活性の良好な第4級窒素原子を有するアンモニウム化合物が好ましく、水酸化テトラメチルアンモニウムがより好ましい。
第1工程における塩基性物質の使用量は、反応系を、上記好ましいpHに調整するために、ケイ素化合物(A)およびケイ素化合物(B)の合計モル数を100モルとして、1〜20モルであることが好ましい。塩基性物質の量が少なすぎると加水分解・縮合反応の進行が遅く、反応時間が長くなる場合もある。塩基性物質の使用量が多すぎても、反応効率の向上効果は顕著でなく、経済的ではない。
第1工程において、反応溶媒として有機溶剤が使用されることが好ましい。反応溶媒として好適な有機溶剤の例としては、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル類;トルエン、ベンゼン、キシレン等の芳香族炭化水素;ヘキサン等の脂肪族炭化水素;リグロイン等が挙げられる。有機溶剤は、1種単独で用いてよいし、2種類以上が併用されてもよい。アルコール類は、原料ケイ素化合物および生成物の溶解性が良好であり、好ましい有機溶剤である。
第1工程における反応温度は、好ましくは0℃〜120℃、より好ましくは10℃〜100℃、更に好ましくは40℃〜80℃である。反応温度が40℃〜80℃である場合には、高分子量成分等の副生を抑制することができるとともに、ゲル化しにくく、後述する数平均分子量を有し且つ分子量分布がよりシャープである有機ケイ素化合物(C)を得ることができる。
また、第1工程における反応時間は、好ましくは1〜30時間、より好ましくは4〜24時間である。
第1工程の加水分解・縮合反応で得られる、本発明の有機ケイ素化合物(C)は、ケイ素化合物(A)における加水分解性基およびケイ素化合物(B)におけるシロキサン結合生成基によって形成されたシロキサン結合を有するポリシロキサンである。上記第1工程において、ケイ素化合物(A)における加水分解性基およびケイ素化合物(B)におけるシロキサン結合生成基の大部分は、シロキサン結合に転化される。
1−3−2.第2工程
第2工程は、第1工程で得られた、有機ケイ素化合物(C)を含む反応液を、酸により、中和する工程である。酸の例としては、リン酸、硝酸、硫酸、塩酸等の無機酸や、酢酸、蟻酸、乳酸、アクリル酸、シュウ酸等のカルボン酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸等のスルホン酸等の有機酸が挙げられる。これらのうち、硝酸および硫酸は、オキセタニル基の安定性に悪影響を及ぼしにくく(オキセタニル基への付加反応が起こりにくく)、水洗により比較的除去されやすいので好ましい酸である。酸の使用量は、有機ケイ素化合物(C)を含む反応液のpHに応じて、適宜、選択されるが、塩基性物質1当量に対して、好ましくは1〜1.1当量、より好ましくは1〜1.05当量である。
1−3−3.第3工程
第3工程は、第2工程で得られた中和液から揮発性成分を除去する工程である。この工程では、常圧(大気圧)または減圧の条件における蒸留が行われる。第3工程において除去される揮発性成分としては、第1工程の反応溶媒として使用された有機溶剤が主である。反応溶媒として、例えば、メタノールのように水と混和する有機溶剤が使用された場合には、後述する水による洗浄(第5工程)に支障があるため、通常、この第3工程が実施される。
尚、第1工程における反応溶媒が、アルコール等の水と混和する有機溶剤であったとしても、中和液の水による洗浄に適した有機溶剤を多量に追加することで有機ケイ素化合物(C)の洗浄を行うことが可能な場合には、この第3工程及び第4工程を省略することができる。
また、第1工程における反応溶媒が、水と混和しないものであり、中和液の水による洗浄に適した有機溶剤である場合、および、上記反応溶媒が、アルコール等の水と混和する溶媒であったとしても、中和液の水による洗浄に適した有機溶剤を多量に追加することで有機ケイ素化合物(C)の洗浄を行うことが可能な場合には、第3工程および第4工程を省略することができる。
1−3−4.第4工程
第4工程は、第3工程で得られた濃縮液と、洗浄用有機溶剤とを、混合および接触させて、少なくとも有機ケイ素化合物(C)を洗浄用有機溶剤に溶解する工程である。洗浄用有機溶剤としては、有機ケイ素化合物(C)を溶解し、水と混和しない化合物を使用する。水と混和しないとは、水と洗浄用有機溶剤とを十分混合した後、静置すると、水層及び有機層に分離することを意味する。
好ましい洗浄用有機溶剤としては、メチルイソブチルケトン等のケトン類;ジイソプロピルエーテル等のエーテル類;トルエン等の芳香族炭化水素;ヘキサン等の脂肪族炭化水素;酢酸エチル等のエステル類等が挙げられる。
上記洗浄用有機溶剤は、第1工程において用いられた反応溶媒と同一であってよいし、異なってもよい。
1−3−5.第5工程
第5工程は、第4工程で得られた有機系液を水により洗浄した後、有機ケイ素化合物(C)を含む有機溶液を得る工程である。尚、この有機系液は、第3工程および第4工程が省略された場合、第2工程で得られた液を意味する。この第5工程によって、第1工程において使用された塩基性物質および第2工程において使用された酸ならびにそれらの塩は、水層に含まれ、有機層から実質的に除かれる。
尚、上記第5工程は、水と有機系液とを混合および接触させる工程、ならびに、水層と有機層(有機ケイ素化合物(C)を含む層)とを分離し、有機層(有機溶液)を回収する工程を含む。これらの工程において、水と有機系液との混合および接触が不十分であったり、水層と有機層との分離が不十分であったりすると、得られる有機ケイ素化合物(C)は、不純物を多く含むものとなったり安定性の劣るものになったりする。
第5工程における、水と有機系液とを混合および接触させる工程の温度は、特に制限されないが、好ましくは0℃〜70℃、より好ましくは10℃〜60℃である。また、水層と有機層とを分離する工程の温度もまた、特に限定されないが、好ましくは0℃〜70℃、より好ましくは10℃〜60℃である。2つの工程における処理温度を40℃〜60℃程度とすることは、水層及び有機層の分離時間の短縮効果があるため、好ましい。
1−3−6.第6工程
第6工程は、第5工程で得られた有機溶液から揮発性成分を除去する工程である。この工程では、常圧(大気圧)または減圧の条件における蒸留が行われる。第6工程において除去される揮発性成分としては、第4工程で用いた洗浄用有機溶剤であるが、他に揮発性成分が含まれていれば、この工程において、すべて同時に除去される。
以上の工程によって、本発明の有機ケイ素化合物(C)は単離される。
尚、この有機ケイ素化合物(C)が有機溶剤に溶解されてなる溶液とする場合には、上記第4工程で用いた洗浄用有機溶剤を、そのまま有機ケイ素化合物(C)の溶媒として使用することができ、第6工程は省略することができる。
本発明の製造方法において、第1工程により得られた有機ケイ素化合物(C)は、その後の各工程における処理中または処理後において、変質又は変性することなく、安定である。
本発明の製造方法において、ケイ素化合物(A)およびケイ素化合物(B)の縮合率は、92%以上とすることができ、より好ましくは95%以上、更に好ましくは98%以上である。シロキサン結合生成基(加水分解性基を含む)は実質的に全てが縮合されていることが最も好ましいが、縮合率の上限は、通常、99.9%である。
上記のように、公知の方法によるQモノマーとTモノマーとの共重縮合反応においては、両者を均一に反応させることは難しく、ゲルが生じやすい。このため、トリメチルアルコキシシランやヘキサメチルジシロキサン等の、シロキサン結合生成基を1つのみ有するケイ素化合物(「Mモノマー」とも呼ばれる)を、末端封止剤として作用させることでゲル化を回避する方法が知られている。
しかしながら、所定量以上のMモノマーを併用することで、ゲル化は回避できても、得られる有機ケイ素化合物の無機的性質は低下する傾向にある。本発明では、アルカリ性条件下、ケイ素化合物(A)であるTモノマー及び/又はDモノマーと、ケイ素化合物(B)であるQモノマーとをゲル化させずに共重縮合させているが、無機的性質を下げない程度の低い割合でMモノマーを併用することは可能である。具体的には、第1工程の際に、Mモノマーの使用量を、ケイ素化合物(A)及びケイ素化合物(B)の合計モル数100モルに対して、10モル以下とすることができる。
1−4.有機ケイ素化合物(C)
本発明の有機ケイ素化合物(C)は、オキセタニル基を有し、シロキサン結合を有するポリシロキサンである。そして、この有機ケイ素化合物(C)は、[SiO4/2]で表されるシリケート単位を含む化合物である。このシリケート単位は、1個のケイ素原子に4個の酸素原子が結合した構成単位であり、ケイ素化合物(B)に由来する構成単位である。
また、本発明の有機ケイ素化合物(C)は、更に、[R0SiO3/2]で表されるシルセスキオキサン単位、および/または、[R01SiO2/2]で表されるジオルガノシロキサン単位を含んでもよい。シルセスキオキサン単位およびジオルガノシロキサン単位は、それぞれ、1個のケイ素原子に3個および2個の酸素原子が結合した構成単位であり、ケイ素化合物(A)に由来する構成単位である。
従って、本発明の有機ケイ素化合物(C)としては、[SiO4/2]で表されるシリケート単位と、[R0SiO3/2]で表されるシルセスキオキサン単位とを含む化合物、[SiO4/2]で表されるシリケート単位と、[R01SiO2/2]で表されるジオルガノシロキサン単位とを含む化合物、および、[SiO4/2]で表されるシリケート単位と、[R0SiO3/2]で表されるシルセスキオキサン単位と、[R01SiO2/2]で表されるジオルガノシロキサン単位とを含む化合物、が挙げられる。各構造単位の含有割合は、ケイ素化合物(A)及び(B)の使用割合によって決定される。
本発明の有機ケイ素化合物(C)は、得られる硬化膜の表面硬度等に優れることから、[SiO4/2]で表されるシリケート単位と、[R0SiO3/2]で表されるシルセスキオキサン単位とを含む化合物であることが好ましい。
また、本発明の有機ケイ素化合物(C)は、その構造中において、有機部分および無機部分を有する。ケイ素化合物(A)を表す上記一般式(1)におけるR0およびR1は有機部分を形成する。また、ケイ素化合物(A)に由来する加水分解性基(アルコキシ基等)、および、ケイ素化合物(B)に由来する加水分解性基(アルコキシ基等)、の少なくとも一方のうちの一部が残存する場合は、これも有機部分である。上記有機部分以外の部分は、炭素原子を含まない無機部分である。
上記のように、本発明の製造方法において、縮合率を92%以上とすることができるので、無機部分の割合が高く、ポリシロキサン構造が十分に形成された有機ケイ素化合物(C)である。縮合率が低い場合、この有機ケイ素化合物(C)を用いて得られる硬化膜の硬度が低下する傾向がある。また、有機ケイ素化合物(C)の貯蔵安定性が低下する傾向がある。
本発明の有機ケイ素化合物(C)が、シロキサン結合生成基(加水分解性基を含む)を有する場合には、その残存割合は、1H NMR(核磁気共鳴スペクトル)チャートから算出することができる。尚、「加水分解性基の全てが実質的に縮合されている」ことは、例えば、得られた有機ケイ素化合物(C)の1H NMRチャートにおいてシロキサン結合生成基に基づくピークがほとんど観察されないことにより確認することができる。
例えば、有機ケイ素化合物(C)の製造に用いられるケイ素化合物(A)が、上記一般式(1)におけるnが0である化合物(加水分解性基を3個有するTモノマー)である場合には、ケイ素化合物(B)(シロキサン結合生成基を4個有するQモノマー)との加水分解・縮合反応の結果、得られる有機ケイ素化合物(C)は、構成単位としてシルセスキオキサン単位およびシリケート単位を有する化合物となる。
上記の場合、有機ケイ素化合物(C)は、部分的にラダー(はしご)状、かご状またはランダム状の構造をとることができる。
本発明の有機ケイ素化合物(C)は、オキセタニル基を有するため、カチオン硬化性を備える。有機ケイ素化合物(C)をカチオン硬化させることにより、表面硬度が大きく耐熱性に優れた硬化膜を与えることができる。
本発明の製造方法で得られる有機ケイ素化合物(C)の数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)分析による標準ポリスチレン換算で、好ましくは1,000〜20,000、より好ましくは1,000〜10,000、更に好ましくは2,000〜6,000である。
本発明において、好ましい有機ケイ素化合物(C)(以下、「有機ケイ素化合物(C1)」という。)は、上記一般式(1)においてR0が上記一般式(3)で表される有機基であり、nが0であり、且つ、少なくとも1個、好ましくは2個、より好ましくは3個のXがOR基(Rは、アルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基およびアリール基から選ばれた炭化水素基である。)であるケイ素化合物(A)と、上記一般式(2)において少なくとも1個、好ましくは2個、より好ましくは3個、特に好ましくは4個のYがOR基(Rは、アルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基およびアリール基から選ばれた炭化水素基である。)であるケイ素化合物(B)とを、アルカリ性条件下、加水分解・縮合して得られた化合物である。そして、この有機ケイ素化合物(C1)に含まれる、製造原料であるケイ素化合物(A)および(B)に由来するOR基の割合は、製造前のこれらの化合物に含まれるOR基の合計量に対して、好ましくは0〜8%、より好ましくは0.1〜6%であり、更に好ましくは0.5〜5%である。上記製造原料を、酸性条件下、加水分解・縮合して得られた有機ケイ素化合物における上記割合は8%を超えることが多く、製造後の安定性が十分ではなく、また、硬化性組成物としたときに得られる硬化物の硬度等も十分ではなかった。
しかしながら、上記有機ケイ素化合物(C1)によると、保存安定性に優れ、上記有機溶剤に対する溶解性が高いことで作業性に優れ、硬化性組成物としたときに得られる硬化物の硬度、耐摩耗性等にも優れる。
実施例1
攪拌機および温度計を備えた反応器に、メタノール400gと、下記式(4)で表される3−エチル−3−((3−(トリメトキシシリル)プロポキシ)メチル)オキセタン(以下、「TMSOX」という。)55.68g(0.2mol)と、テトラメトキシシラン(以下、「TMOS」という。)30.44g(0.2mol)とを仕込んだ後、1.7質量%水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液53.64g(水3mol、水酸化テトラメチルアンモニウム10mmol)を徐々に加えた。この混合物を、攪拌しながら、温度25℃、pHが9で24時間反応させた。その後、10質量%硝酸水溶液を6.61g(10.5mmol)加えて、反応液を中和した。次いで、減圧下で有機溶剤(メタノール)および水を留去して、得られた残渣(反応生成物)をメチルイソブチルケトンに溶解させ、水洗を行うことで塩類や過剰の酸を除去した。その後、減圧下でメチルイソブチルケトン溶液から溶剤(メチルイソブチルケトン)を留去し、無色の半固体の有機ケイ素化合物(C−1)を得た。収量は48.5gであった。
Figure 0005454761
有機ケイ素化合物(C−1)を1H NMR分析およびIR(赤外吸収)分析し、オキセタニル基が存在することを確認した。
1H NMR分析は、有機ケイ素化合物(C−1)約1gおよび内部標準物質であるヘキサメチルジシロキサン(以下、「HMDSO」という)約100mgを、それぞれ精秤して混合し、HMDSOのプロトンを基準として行った。この1H NMR分析により、ケイ素化合物(A)、即ち、TMSOXに由来する構造単位(Tモノマー単位)の含有量および有機ケイ素化合物(C−1)のアルコキシ基の含有量を求め、これらを基にしてケイ素化合物(B)、即ち、TMOSに由来する構造単位(Qモノマー単位)の含有量を計算した。その結果、得られた有機ケイ素化合物(C−1)は、ケイ素化合物(A)およびケイ素化合物(B)が化学量論的に反応して得られた共重縮合物であることが確認された。
有機ケイ素化合物(C−1)の1H NMRチャートから算出したアルコキシ基(ケイ素原子に結合したメトキシ基)の含有量は、仕込み原料に含まれていたアルコキシ基の全体に対して1.0%に相当する量であった。
また、上記有機ケイ素化合物(C−1)において、無機部分の割合は42%であった。
また、上記有機ケイ素化合物(C−1)の数平均分子量(Mn)を、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定したところ、Mn4,000(ポリスチレン換算値)であった(表1参照)。
上記有機ケイ素化合物(C−1)を、大気中、60℃の暗所に3日間保管後、25℃におけるTHF及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(以下、「PGMEA」という。)への溶解性を確認したところ、溶解性はいずれも良好であった。
また、上記有機ケイ素化合物(C−1)を、PGMEAに溶解させて、50質量%の溶液を調製した後、60℃暗所で静置した。一定時間経過後の数平均分子量および粘度は、表2に示すとおりであり、経時変化は、ほとんどなかった。粘度は、東京計器社製E型粘度計「VISCONIC−EMD」(型式名)により測定した。
実施例2
攪拌機および温度計を備えた反応器に、メタノール56.6gと、TMSOX8.35g(0.03mol)と、TMOS2.28g(0.015mol)とを仕込んだ後、2.5質量%水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液4.1g(水0.225mol、水酸化テトラメチルアンモニウム1.13mmol)を徐々に加えた。この混合物を、攪拌しながら、温度25℃、pHが9で、2時間反応させた。その後、10質量%硝酸水溶液を0.72g(1.14mmol)加えて、反応液を中和した。次いで、減圧下で有機溶剤(メタノール)および水を留去して、得られた残渣(反応生成物)を酢酸エチルに溶解させ、水洗を行うことで塩類や過剰の酸を除去した。その後、減圧下で酢酸エチル溶液から溶剤(酢酸エチル)を留去し、無色透明な液体の有機ケイ素化合物(C−2)を得た。収量は7.34gであった。
有機ケイ素化合物(C−2)を1H NMR分析およびIR分析し、オキセタニル基が存在することを確認した。
また、この有機ケイ素化合物(C−2)についても、実施例1と同様にした1H NMR分析により、ケイ素化合物(A)およびケイ素化合物(B)が化学量論的に反応して得られた共重縮合物であることが確認された。
有機ケイ素化合物(C−2)の1H NMRチャートから算出したアルコキシ基(ケイ素原子に結合したメトキシ基)の含有量は、仕込み原料に含まれていたアルコキシ基の全体に対して1.5%に相当する量であった。
また、上記有機ケイ素化合物(C−2)において、無機部分の割合は34%であった。
また、上記有機ケイ素化合物(C−2)の数平均分子量及び粘度並びにこれらの経時変化を、実施例1と同様にして測定し、それぞれ、表1及び表2に示した。
実施例3
攪拌機および温度計を備えた反応器に、メタノール60gと、TMSOX8.35g(0.03mol)と、テトラプロポキシシラン19.8g(0.075mol)とを仕込んだ後、1.2質量%水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液20.5g(水1.13mol、水酸化テトラメチルアンモニウム2.6mmol)を徐々に加えた。この混合物を、攪拌しながら、温度25℃、pHが9で、2時間反応させた。その後、10質量%硝酸水溶液を1.7g(2.7mmol)加えて、反応液を中和した。次いで、減圧下で有機溶剤(メタノールおよびプロパノール)と水を留去して、得られた残渣(反応生成物)をメチルイソブチルケトンに溶解させ、水洗を行うことで塩類や過剰の酸を除去した。その後、減圧下でメチルイソブチルケトン溶液から溶剤(メチルイソブチルケトン)を留去し、無色透明な半固体の有機ケイ素化合物(C−3)を得た。収量は11.4gであった。
有機ケイ素化合物(C−3)を1H NMR分析およびIR分析し、オキセタニル基が存在することを確認した。
また、この有機ケイ素化合物(C−3)についても、実施例1と同様にした1H NMR分析により、ケイ素化合物(A)およびケイ素化合物(B)が化学量論的に反応して得られた共重縮合物であることが確認された。
有機ケイ素化合物(C−3)の1H NMRチャートから算出したアルコキシ基(ケイ素原子に結合したメトキシ基)の含有量は、仕込み原料に含まれていたアルコキシ基の全体に対して3.0%に相当する量であった。
また、上記有機ケイ素化合物(C−3)において、無機部分の割合は56%であった。
また、上記有機ケイ素化合物(C−3)の数平均分子量及び粘度並びにこれらの経時変化を、実施例1と同様にして測定し、それぞれ、表1及び表2に示した。
実施例4
攪拌機および温度計を備えた反応器に、1−プロパノール41gと、テトラメトキシシラン6.23g(0.04mol)とを仕込んだ後、25質量%水酸化テトラメチルアンモニウムメタノール溶液0.3g(メタノール8mmol、水酸化テトラメチルアンモニウム0.8mmol)を徐々に加えた。この混合物を、攪拌しながら、温度25℃、pHが9で1時間反応させた。その後、TMSOX5.52g(0.02mol)を加え、更に水4.07gを加えた。次いで、25質量%水酸化テトラメチルアンモニウムメタノール溶液1.24g(メタノール29mmol、水酸化テトラメチルアンモニウム3.4mmol)を加え、撹拌しながら、温度23℃、pHが9で24時間、そして、60℃で4時間反応させた。その後、10質量%硝酸水溶液2.78g(4.4mmol)加え、反応液を中和した。次いで、この反応液を、酢酸エチル160gと水180gの混合液の中に加え抽出を行い、反応生成物を含む酢酸エチル層を回収した。この酢酸エチル層を水洗することで塩類や過剰の酸を除去した。その後、減圧下で酢酸エチル溶液から溶剤(酢酸エチル)を留去し、無色透明な固体の有機ケイ素化合物(C−4)を得た。収量は6.5gであった。
有機ケイ素化合物(C−4)を1H NMR分析およびIR分析し、オキセタニル基が存在することを確認した。
また、この有機ケイ素化合物(C−4)についても、実施例1と同様にした1H NMR分析により、ケイ素化合物(A)およびケイ素化合物(B)が化学量論的に反応して得られた共重縮合物であることが確認された。
有機ケイ素化合物(C−4)の1H NMRチャートから算出したアルコキシ基(ケイ素原子に結合したメトキシ基)の含有量は、仕込み原料に含まれていたアルコキシ基の全体に対して1.0%に相当する量であった。
また、上記有機ケイ素化合物(C−4)において、無機部分の割合は53%であった。
また、上記有機ケイ素化合物(C−4)の数平均分子量及び粘度並びにこれらの経時変化を、実施例1と同様にして測定し、それぞれ、表1及び表2に示した。
実施例5
攪拌機および温度計を備えた反応器に、メタノール203.41gと、TMSOX27.98g(0.1mol)と、TMOS22.84g(0.15mol)とを仕込んだ後、水酸化テトラメチルアンモニウムの25質量%メタノール溶液6.38g(メタノール0.15mol、水酸化テトラメチルアンモニウム17.5mmol)と、水16.22g(0.9mol)と、メタノール22.6gとからなる混合液を徐々に加えた。この混合物を、撹拌しながら、温度20℃、pHが9で2時間反応させた。その後、10質量%硝酸水溶液11.60g(18.4mmol)を加えて中和した。次いで、減圧下で有機溶剤(メタノール)および水を留去して、得られた残渣(反応生成物)をPGMEAに溶解させ、水洗を行うことで塩類や過剰の酸を除去した。その後、減圧下でPGMEA溶液からPGMEA等を留去し、無色の固体の有機ケイ素化合物(C−5)を得た。収量は27.25g(収率91%)であった。
有機ケイ素化合物(C−5)を1H NMR分析およびIR分析し、オキセタニル基が存在することを確認した。
また、この有機ケイ素化合物(C−5)についても、実施例1と同様にした1H NMR分析により、ケイ素化合物(A)およびケイ素化合物(B)が化学量論的に反応して得られた共重縮合物であることが確認された。
有機ケイ素化合物(C−5)の1H NMRチャートから算出したアルコキシ基(ケイ素原子に結合したメトキシ基)の含有量は、仕込み原料に含まれていたアルコキシ基の全体に対して3.2%に相当する量であった。
また、上記有機ケイ素化合物(C−5)において、無機部分の割合は47%であった。
有機ケイ素化合物(C−5)をGPC分析したところ、カラムの検出限界(分子量40万)を超える成分が含まれていることが分かった。GPCクロマトグラムにおいて、カラムの検出限界を超える成分(保持時間=6〜10分)の面積と、検出限界を超えない成分(保持時間=11〜16分:この範囲のMn=2,900)の面積との比は5:5であった。
また、上記有機ケイ素化合物(C−5)の粘度およびその経時変化を、実施例1と同様にして測定し、それぞれ、表1及び表2に示した。
実施例6
攪拌機および温度計を備えた反応器に、メタノール203.41gと、TMSOX27.98g(0.1mol)と、TMOS22.84g(0.15mol)とを仕込んだ後、水酸化テトラメチルアンモニウムの25質量%メタノール溶液6.38g(メタノール0.15mol、水酸化テトラメチルアンモニウム17.5mmol)と、水16.22g(0.9mol)と、メタノール22.6gとからなる混合液を徐々に加えた。この混合物を、撹拌しながら、温度60℃、pHが9で2時間反応させた。その後、10質量%硝酸水溶液11.60g(18.4mmol)を加えて中和した。次いで、減圧下で有機溶剤(メタノール)および水を留去して、得られた残渣(反応生成物)をPGMEAに溶解させ、水洗を行うことで塩類や過剰の酸を除去した。その後、減圧下でPGMEA溶液からPGMEA等を留去し、無色の固体の有機ケイ素化合物(C−6)を得た。収量は27.55(収率92%)であった。
有機ケイ素化合物(C−6)を1H NMR分析およびIR分析し、オキセタニル基が存在することを確認した。
また、この有機ケイ素化合物(C−6)についても、実施例1と同様にした1H NMR分析により、ケイ素化合物(A)およびケイ素化合物(B)が化学量論的に反応して得られた共重縮合物であることが確認された。
有機ケイ素化合物(C−6)の1H NMRチャートから算出したアルコキシ基(ケイ素原子に結合したメトキシ基)の含有量は、仕込み原料に含まれていたアルコキシ基の全体に対して3.0%に相当する量であった。
また、上記有機ケイ素化合物(C−6)において、無機部分の割合は47%であった。
また、上記有機ケイ素化合物(C−6)の数平均分子量及び粘度並びにこれらの経時変化を、実施例1と同様にして測定し、それぞれ、表1及び表2に示した。
比較例1
攪拌機および温度計を備えた反応器に、メタノール430gと、TMSOX55.68g(0.2mol)と、TMOS30.44g(0.2mol)とを仕込んだ後、0.7質量%塩酸水溶液25.5g(水1.4mol、塩化水素4.8mmol)を徐々に加えた。この混合物を、攪拌しながら、温度25℃、pHが5で18時間反応させた。反応液に酸が残存していなかったため、塩基性物質による中和は行わなかった。その後、減圧下で溶剤(メタノール)を留去し、無色透明な液体の有機ケイ素化合物(C−7)を得た。酸が残存していなかったため、反応生成物の水洗浄は行わなかった。収量は60.2gであった。
有機ケイ素化合物(C−7)を1H NMR分析およびIR分析し、オキセタニル基が存在することを確認した。
また、この有機ケイ素化合物(C−7)についても、実施例1と同様にした1H NMR分析により、ケイ素化合物(A)およびケイ素化合物(B)が化学量論的に反応して得られた共重縮合物であることが確認された。
有機ケイ素化合物(C−7)の1H NMRチャートから算出したアルコキシ基(ケイ素原子に結合したメトキシ基)の含有量は、仕込み原料に含まれていたアルコキシ基の全体に対して9.0%に相当する量であった。
また、上記有機ケイ素化合物(C−7)において、無機部分の割合は39%であった。
また、上記有機ケイ素化合物(C−7)の数平均分子量及び粘度並びにこれらの経時変化を、実施例1と同様にして測定し、それぞれ、表1及び表3に示した。
比較例2
酸触媒である塩化水素の量を10mmolに変えた以外は、比較例1と同様にして、有機ケイ素化合物(C−8)を製造した。
有機ケイ素化合物(C−8)を1H NMR分析およびIR分析し、オキセタニル基が存在することを確認した。
また、この有機ケイ素化合物(C−8)についても、実施例1と同様にした1H NMR分析により、ケイ素化合物(A)およびケイ素化合物(B)が化学量論的に反応して得られた共重縮合物であることが確認された。
有機ケイ素化合物(C−8)の1H NMRチャートから算出したアルコキシ基(ケイ素原子に結合したメトキシ基)の含有量は、仕込み原料に含まれていたアルコキシ基の全体に対して9.1%に相当する量であった。
また、上記有機ケイ素化合物(C−8)において、無機部分の割合は39%であった。
また、上記有機ケイ素化合物(C−8)の数平均分子量及び粘度並びにこれらの経時変化を、実施例1と同様にして測定し、それぞれ、表1及び表3に示した。
比較例3
攪拌機および温度計を備えた反応器に、メタノール60gと、TMSOX8.35g(0.03mol)と、テトラプロポキシシラン23.8g(0.09mol)とを仕込んだ後、1.1質量%水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液24.5g(水1.35mol、水酸化テトラメチルアンモニウム3mmol)を徐々に加えた。この混合物を、攪拌しながら、温度25℃、pHが9で2時間反応させた。その後、10質量%硝酸水溶液を1.92g(3.06mmol)加えて、反応液を中和した。次いで、減圧下で有機溶剤(メタノール)と水を留去して、得られた残渣(反応生成物)をメチルイソブチルケトンに溶解させ、水洗を行うことで塩類や過剰の酸を除去した。その後、減圧下でメチルイソブチルケトン溶液から溶剤(メチルイソブチルケトン)を留去したところ、ゲル化してしまい有機ケイ素化合物は得られなかった。
比較例4
攪拌機および温度計を備えた反応器に、TMSOX133.6g(0.48mol)と、イソプロピルアルコール118.4gとを仕込んだ後、窒素でバブリングし、混合原料の内温を80℃に調整した。その後、この混合原料を、撹拌しながら、25質量%水酸化テトラメチルアンモニウム4.38g(12mmol)および水22.66gを滴下し、温度80℃、pHが9で1時間反応させた。次いで、反応液に、25質量%硫酸2.47gを加えて、反応液を中和した。その後、減圧下で有機溶剤(メタノール)と水を留去して、得られた残渣(反応生成物)をメチルイソブチルケトンに溶解させ、水洗を行うことで塩類や過剰の酸を除去した。次いで、減圧下でメチルイソブチルケトン溶液から溶剤(メチルイソブチルケトン)を留去し、無色透明な粘性液体の有機ケイ素化合物(C−10)を得た。収量は101.3gであった。
上記有機ケイ素化合物(C−10)において、無機部分の割合は25%であった。
また、上記有機ケイ素化合物(C−10)の数平均分子量及び粘度並びにこれらの経時変化を、実施例1と同様にして測定し、それぞれ、表1及び表3に示した。
比較例5
攪拌機および温度計を備えた反応器に、メタノール56.6gと、TMSOX8.35g(0.03mol)と、TMOS2.28g(0.015mol)とを仕込んだ後、0.7質量%塩酸水溶液25.5g(水1.4mol、塩化水素4.8mmol)を徐々に加えた。この混合物を、攪拌しながら、温度25℃、pHが5で18時間反応させた。反応液に酸が残存していなかったため、塩基性物質による中和は行わなかった。その後、減圧下で溶剤(メタノール)を留去し、無色透明な液体の有機ケイ素化合物(C−11)を得た。酸が残存していなかったため、反応生成物の水洗浄は行わなかった。収量は5.44gであった。
有機ケイ素化合物(C−11)を1H NMR分析およびIR分析し、オキセタニル基が存在することを確認した。
また、この有機ケイ素化合物(C−11)についても、実施例1と同様にした1H NMR分析により、ケイ素化合物(A)およびケイ素化合物(B)が化学量論的に反応して得られた共重縮合物であることが確認された。
有機ケイ素化合物(C−11)の1H NMRチャートから算出したアルコキシ基(ケイ素原子に結合したメトキシ基)の含有量は、仕込み原料に含まれていたアルコキシ基の全体に対して9.3%に相当する量であった。
また、上記有機ケイ素化合物(C−11)において、無機部分の割合は31%であった。
また、上記有機ケイ素化合物(C−11)の数平均分子量及び粘度並びにこれらの経時変化を、実施例1と同様にして測定し、それぞれ、表1及び表3に示した。
Figure 0005454761
Figure 0005454761
Figure 0005454761
参考例
実施例1で得られた生成物90重量部、3、4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’、4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート10重量部、カチオン重合開始剤である(トリクミル)ヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート2重量部を溶剤であるPGMEA102重量部に溶解させて、50重量%のPGMEA溶液であるカチオン硬化性組成物Cを調製した。
また、実施例1で得られた生成物に代えて比較例4で得られた生成物を使用すること以外は上記と同じ操作により、比較用カチオン硬化性組成物Eを調製した。
上記組成物Cおよび組成物Eについて、以下の評価を行った。
(1)硬化性試験
バーコーターを用いて、組成物をガラス基板および鋼板上に塗布し、約50℃で5分間加熱して溶剤を揮発させて約15μmの厚さの被膜を形成させた。下記の条件により紫外線照射を行い、表面のタックがなくなるまでの照射回数を測定した。組成物Cおよび組成物Eとも照射回数1回でタックがなくなった。
[紫外線照射条件]
ランプ:80W/cm高圧水銀ランプ
ランプ高さ:10cm
コンベアスピード:10m/min
雰囲気:大気中
(2)鉛筆硬度試験
組成物を、上記(1)硬化性試験と同じ条件で紫外線硬化(紫外線照射回数3回)させて硬化膜を得た。
この硬化膜を温度23℃、湿度60%の恒温室内に24時間静置した後、JIS K 5600−5−4に準じて表面の鉛筆硬度を測定した。下記表4にその結果を示した。
(3)ユニバーサル硬度試験
組成物を、上記(1)硬化性試験と同じ条件で紫外線硬化(紫外線照射回数3回)させて硬化膜を得た。
この硬化膜を温度23℃、湿度60%の恒温室内に24時間静置した後、最大荷重1mN/20secでユニバーサル硬度を測定した。下記表4にその結果を示した。
表4からわかるように、本発明の製造方法により得られた生成物(ケイ素化合物(C))を主成分とする組成物Cは、非常に硬い硬化被膜を与えた。その理由は、ケイ素化合物(C)は、4官能シランの加水分解物(Qモノマー単位)を構成単位として含み、無機部分の割合が大きいためと考えられる。
Figure 0005454761
(4)テーバー磨耗試験
バーコーターを用いて、組成物をガラス基板および鋼板上に塗布し、約50℃で5分間加熱して溶剤を揮発させて約15μmの厚さの被膜を形成させた。上記(1)硬化性試験と同じ条件で紫外線硬化(紫外線照射回数5回)させて硬化膜を得た。
この硬化膜を温度23℃、湿度60%の恒温室内に24時間静置した後、以下の条件においてテーバー磨耗試験を実施した。下記表5にその結果を示した。
試験条件は、磨耗輪としてCS−10Fを使用し、各250gの荷重をかけ、500回転で磨耗を測定した。測定ごとにST−11(砥石)にて磨耗輪のリフェージングを実施した。
表5からわかるように、本発明の製造方法により得られた生成物(ケイ素化合物(C))を主成分とする組成物Cは、非常に耐摩耗性の優れた硬化被膜を与えた。その理由は、ケイ素化合物(C)は、4官能シランの加水分解物(Qモノマー単位)を構成単位として含み、無機部分の割合が大きいためと考えられる。
Figure 0005454761
本発明によって得られた有機ケイ素化合物は、その構造中に占める無機部分の割合が高く、製造後の安定性および保存安定性が良好である。そして、この有機ケイ素化合物は、カチオン硬化性を有する。
また、本発明によって得られた有機ケイ素化合物の硬化物は、表面硬度が大きく、耐摩耗性に優れるので、ハードコート、各種基材の保護膜、レジスト被膜、各種高分子材料の改質剤、プラスチックの強化剤、各種コーティング材料の改質剤、コーティング材料用原料、低誘電率材料、絶縁膜材料、耐熱性付与材料、液晶用原料、半導体封止材料、光導波路用材料、ハードマスク材料等として有用である。

Claims (7)

  1. アルカリ性条件下、下記一般式(1)で表されるケイ素化合物(A)と、下記一般式(2)で表されるケイ素化合物(B)とを、上記ケイ素化合物(A)1モルに対して上記ケイ素化合物(B)0.3〜2.8モルの割合で加水分解・縮合する工程を備えることを特徴とする、オキセタニル基を有する有機ケイ素化合物の製造方法。
    Figure 0005454761
    [式中、R0はオキセタニル基を有する有機基であり、R1は炭素数1〜6のアルキル基、炭素数7〜10のアラルキル基、炭素数6〜10のアリール基またはオキセタニル基を有する有機基であり、Xは加水分解性基であり、nは0または1である。]
    SiY4 (2)
    [式中、Yはシロキサン結合生成基である。]
  2. 上記一般式(1)におけるR0が、下記一般式(3)で表される有機基である請求項1に記載のオキセタニル基を有する有機ケイ素化合物の製造方法。
    Figure 0005454761
    [式中、R3は水素原子または炭素数1〜6のアルキル基であり、R4は炭素数2〜6のアルキレン基である。]
  3. 上記一般式(1)におけるXがアルコキシ基、シクロアルコキシ基またはアリールオキシ基である請求項1または2に記載のオキセタニル基を有する有機ケイ素化合物の製造方法。
  4. アルカリ性条件とするための塩基性物質の使用量が、上記ケイ素化合物(A)および上記ケイ素化合物(B)の合計モル数を100モルとした場合に、1〜20モルである、請求項1〜3のいずれかに記載のオキセタニル基を有する有機ケイ素化合物の製造方法。
  5. 上記塩基性物質が水酸化テトラアルキルアンモニウムである請求項1〜4のいずれかに記載のオキセタニル基を有する有機ケイ素化合物の製造方法。
  6. 上記ケイ素化合物(A)および上記ケイ素化合物(B)の縮合率が92%以上である請求項1〜5のいずれかに記載のオキセタニル基を有する有機ケイ素化合物の製造方法。
  7. 式(1)で表されるケイ素化合物(A)と式(2)で表されるケイ素化合物(B)とを、ケイ素化合物(A)1モルに対してケイ素化合物(B)0.3〜2.8モルの割合で、アルカリ性条件において加水分解・縮合させる反応工程、上記反応工程により得られた反応液に酸を添加して、反応工程でアルカリ性条件とするために使用されたアルカリ剤を中和する中和工程、および中和工程を経て得られた処理物を水により洗浄する洗浄工程を含む、請求項1〜のいずれかに記載のオキセタニル基を有する有機ケイ素化合物の製造方法。
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