JP3598749B2 - 光カチオン硬化性組成物の製造方法及び光カチオン硬化性ハードコート剤組成物 - Google Patents

光カチオン硬化性組成物の製造方法及び光カチオン硬化性ハードコート剤組成物 Download PDF

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光カチオン硬化性組成物の製造方法及びこの方法により得られた光カチオン硬化性ハードコート剤組成物に関する。本発明の方法により製造された光カチオン硬化性組成物は、光硬化性に優れ且つ高硬度の皮膜を形成することから、光カチオン硬化性ハードコート剤組成物として好適である。
【0002】
【従来の技術】
紫外線(UV)開始重合又は紫外線開始硬化の分野においては、多官能アクリレート及び不飽和ポリエステル等を用いた光開始ラジカル重合が広く検討され、また工業的に利用されている。
【0003】
しかし、このラジカル重合は空気中等の酸素によって阻害されるという問題がある。特にコーティング剤組成物をラジカル重合によって硬化させる場合、この組成物の膜厚が薄くなるほど酸素による重合阻害の影響は顕著となり、組成物を速やかに且つ完全に硬化させるためには不活性雰囲気下で硬化させなければならないという制限がある。
これに対して光開始カチオン重合は、上記光開始ラジカル重合とは異なり酸素による重合阻害を受けないため、空気中においても完全に重合させることが可能である。
【0004】
光開始カチオン重合に用いられる代表的なモノマーとしては、エポキシド及びビニルエーテルが挙げられる。特に、モノマーとしてエポキシドを用いた組成物によると、耐熱性が良く、接着力に優れ、且つ耐薬品性の良好な硬化物を得ることが可能である。
【0005】
ところで、一般式(RSi03/2で示されるシルセスキオキサンは、ハシゴ状、カゴ状及び三次元編目状(ランダム状)の構造をとる一連のネットワーク状ポリシロキサンの総称である。このシルセスキオキサンは、完全な無機物質であるシリカとは異なり一般の有機溶媒に可溶であることから、取り扱いが容易であり、製膜等の加工性や成形性に優れるという特長を有する。
従来、エポキシ基が導入されたシルセスキオキサン化合物としては、(3−グリシドキシプロピル)トリメトキシシランや2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等を加水分解させたものが知られている(Chemical Reviews, 1995, Vol.95, No.5)。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、エポキシド型の光硬化性モノマーからなる組成物は、エポキシ基の光重合速度が比較的遅いため、特に紙やプラスチック上にコーティングされる場合のように速やかな光硬化性が要求される用途に対しては、必ずしも好適とはいい難い。
これに対して、通常オキセタニル基の光重合速度はエポキシ基に比べて明らかに速いため、このオキセタニル基をもつ化合物からなる組成物、特に上記のような特長を有するシルセスキオキサン化合物であってオキセタニル基をもつ化合物は、光カチオン硬化性組成物として有用である。
【0007】
本発明の目的は、オキセタニル基を有するシルセスキオキサン化合物からなる光カチオン硬化性組成物の製造方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、上記製造方法により得られた光カチオン硬化性組成物からなる光カチオン硬化性ハードコート剤組成物を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、オキセタニル基及び加水分解性基をもつケイ素化合物を加水分解して得られた組成物は、光カチオン硬化性に優れ且つ硬化によって高硬度な皮膜を形成することを見出して、本発明を完成したのである。
【0009】
即ち、本発明における第1発明の光カチオン硬化性組成物の製造方法は、オキセタニル基をもつシルセスキオキサン化合物からなる光カチオン硬化性組成物の製造方法であって、下記式(I)に示す構造式で表される化合物をpH7以上の雰囲気下で加水分解することを特徴とする。
【0010】
【化3】
Figure 0003598749
【0011】
上記式(I)におけるRは、下記式(II)に示す構造式で表される有機官能基である。
【0012】
【化4】
Figure 0003598749
【0013】
また、上記式(I)におけるXは、アルコキシ基、シクロアルコキシ基又はアリールオキシ基であることが好ましい。
【0014】
発明の製造方法により得られた光カチオン硬化性組成物はオキセタニル基を有するシルセスキオキサン化合物からなり、この化合物は、オキセタニル基を有することから光カチオン硬化性に優れ、更にシルセスキオキサン構造を有することから高硬度の皮膜を形成する。従って、本発明の方法により得られた光カチオン硬化性組成物は、光カチオン硬化性ハードコート剤組成物として好適に用いられる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
尚、本明細書においては、オキセタニル基を有する化合物を「オキセタン化合物」と表す。
【0016】
本発明の光カチオン硬化性組成物の製造方法においては、原料として上記式(I)に示す構造式で表されるケイ素化合物を用い、この化合物をpH7以上の雰囲気下で加水分解する。
ここで、加水分解をpH7以上の雰囲気下で行うのは、酸性雰囲気下で行うとオキセタニル基が開環しやすく、これにより系がゲル化する恐れがあり、またオキセタニル基が消費されて組成物の硬化性が低下するためである。この加水分解はpH9〜13の雰囲気下で行うことが好ましい。pHが9未満であると、上記ケイ素化合物の加水分解・縮合速度が小さいため本発明の組成物の製造効率が低下する。一方、pHが13を超える場合には、アルカリ剤等の使用量が多くなるため経済的ではなく、また反応系からアルカリ剤等を除去する工程が煩雑となる。
【0017】
上記式(I)におけるRは、その一部に少なくとも一つのオキセタニル基をもつ有機官能基であれば特に限定されないが、上記式(II)に示す構造式で表される基であることが好ましい。この式(II)において、Rは水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基であり、Rがエチル基であることが特に好ましい。また、Rは炭素数2〜6のアルキレン基であり、Rがプロピレン基であることが特に好ましい。これは、このようなオキセタン化合物の入手或いは合成が容易なためである。また、この方法により得られた組成物を光カチオン硬化性ハードコート剤組成物として用いる場合には、R又はRの炭素数が7以上であると、この組成物から形成された皮膜の硬度が低下しやすいので好ましくない。
【0018】
上記式(I)におけるXは、加水分解性を有する基であれば特に限定されないが、アルコキシ基、シクロアルコキシ基又はアリールオキシ基であることが好ましい。また、この化合物一分子中には三つのXが含まれるが、これらは全て同じ基であってもよいし二種以上の異なる基であってもよい。
尚、他の加水分解性基としてはハロゲン原子が挙げられるが、この場合には加水分解によりハロゲン化水素が生じるので反応系が酸性雰囲気となりやすく、このためオキセタニル基が開環する恐れがある。
【0019】
上記「アルコキシ基」としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、n−及びi−プロポキシ基、n−、i−及びt−ブトキシ基等が挙げられる。また、「シクロアルコキシ基」の例としてはシクロヘキシルオキシ基等が、「アリールオキシ基」の例としてはフェニルオキシ基等が挙げられる。このうち、アルコキシ基の加水分解性が良好であることから、Xが炭素数1〜3のアルコキシ基であることが好ましい。また、原料の入手が容易であることや、シルセスキオキサン製造における加水分解反応が制御しやすいことから、Xがエトキシ基であることが特に好ましい。
【0020】
上記式(I)に示す化合物を加水分解する際、系をpH7以上の雰囲気とするために通常は系内にアルカリ剤を添加する。このアルカリ剤としては、アンモニア、4級アンモニウム塩、有機アミン類等が使用可能であり、塩基性触媒としての活性が良好であるため4級アンモニウム塩を用いることが好ましい。
加水分解時におけるその他の反応条件については特に限定されないが、好ましい反応温度は10〜120℃(より好ましくは20〜80℃)であり、好適な反応時間は2〜30時間(より好ましくは4〜24時間)である。
また、この加水分解時に用いる有機溶媒は特に限定されず、例えばメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;テトラヒドロフラン、トルエン、1,4−ジオキサン、ヘキサン、リグロインを用いることができる。このうち、反応系を均一に溶解し得るものが好ましい。
【0021】
本発明の製造方法により得られた光カチオン硬化性組成物は、上記式(I)に示す化合物の加水分解によって生成されたものであれば、ハシゴ状、カゴ状及びランダム状のいずれの構造を有するシルセスキオキサン化合物からなるものであってもよい。また、この組成物は、一種類のシルセスキオキサン化合物のみを含有してもよいし、構造又は分子量の異なった二種以上のシルセスキオキサン化合物を含んでもよい。
【0022】
尚、加水分解によって生成されたシルセスキオキサン化合物においては、式(I)に示す化合物における加水分解性基の数のうち90%以上が縮合されていることが好ましく、加水分解性基の実質的に全てが縮合されていることが更に好ましい。残存する加水分解性基の割合が10%を超えると、シルセスキオキサン構造が十分に形成されないため皮膜の硬度が低下したり、組成物の貯蔵安定性が低下したりする恐れがある。
ここで「加水分解性基の実質的に全てが縮合されている」ことは、例えば、得られたシルセスキオキサン化合物のNMRチャートにおいて加水分解性基に基づくピークが観察されないことにより確認できる。
【0023】
この光カチオン硬化性組成物に含まれるシルセスキオキサン化合物は、その数平均分子量が600〜5,000であることが好ましく、1,000〜3,000であることが更に好ましい。数平均分子量が600未満であると、この組成物から形成される皮膜において十分な硬度が得られない場合がある。また、組成物の粘度が低くなるので、この組成物をハードコード剤組成物として用いる場合において塗布面にハジキを生じやすい。一方、数平均分子量が5,000を超えると組成物の粘度が高くなり過ぎて、取り扱い性が困難であるとともにこの組成物をハードコード剤組成物として用いる場合において塗工性が低下する。
特に、この組成物をハードコート剤組成物として用いる場合には、組成物中に含まれる全シルセスキオキサン化合物に対して、数平均分子量1,000〜3,000のシルセスキオキサン化合物の割合が50重量%以上であることが好ましく、70重量%以上であることが更に好ましい。
尚、本明細書中における数平均分子量は、ゲルパーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算の分子量である。
【0024】
上記式(I)に示すケイ素化合物は、例えば下記式(III) に示す構造式で表される化合物に、アルケニル末端をもつオキセタン化合物を付加させることにより得られる。ここで、オキセタン化合物が「アルケニル末端をもつ」とは、オキセタン化合物がその末端にビニル基、アリル基、エチニル基、プロパギル基及びイソプロペニル基等から選択される基を有することをいう。これらの中でも、原料の入手及び合成が容易であること、及び、後述するヒドロシリル化反応が容易に実施しやすいこと等の理由から、アルケニル末端がアリル基であることが好ましい。
【0025】
【化5】
Figure 0003598749
【0026】
上記式(III)に示す化合物とオキセタン化合物との付加反応は、上記式(III)に示す化合物のもつSi−H基とオキセタン化合物のアルケニル末端とのヒドロシリル化反応であって、第8族金属触媒の存在下等において進行する。
この「第8族金属触媒」としては、コバルト、ニッケル、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、イリジウム及び白金等の第8族金属の単体、有機金属錯体、金属塩及び金属酸化物等が挙げられる。これらの中で、触媒活性の高さが適当であるとともに取り扱いが容易であり、且つ比較的安価である等の理由から、白金の金属単体、有機金属錯体、金属塩及び金属酸化物が好ましく、有機白金錯体を用いることが特に好ましい。この触媒は、上記式(III)に示す化合物とオキセタン化合物との合計量に対して1〜1,000重量ppm用いることが好ましい。
ヒドロシリル化反応におけるその他の反応条件については特に限定されないが、好ましい反応温度は20〜100℃であり、好適な反応時間は2〜10時間である。
【0027】
本発明の方法により製造される光カチオン硬化性組成物又は光カチオン硬化性ハードコート剤組成物は、上記式(I)に示す化合物の加水分解により得られたシルセスキオキサン化合物の他に、光開始剤、粘度調節剤、レベリング剤、安定剤、シランカップリング剤等の一般的な添加剤を含むことができる。また、この組成物は有機溶媒を含んでもよいが、その含有量は組成物全体に対して20重量%以下であることが好ましく、10重量%以下であることが更に好ましい。
【0028】
【実施例】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明する。
【0029】
(1)光カチオン硬化性組成物の合成
下記式(IV)に示すケイ素化合物を加水分解して、実施例1〜10の光カチオン硬化性組成物を得た。尚、このケイ素化合物は、3−エチル−3−アリルオキシメチルオキセタンとトリエトキシシランとの付加反応物である。以下において、この式(IV)に示すケイ素化合物を「Oxe−TRIES」という。
【0030】
【化6】
Figure 0003598749
【0031】
(実施例1)
(1)攪拌機、温度計及び冷却機を備えた反応器に、Oxe−TRIES12.37g(38.6mmol)、水酸化テトラメチルアンモニウム(以下、「MeNOH」とも表す)の10%水溶液1.05g(HO;52.5mmol、MeNOH;1.2mmol)、水1.14g(63.3mmol)及び溶媒としての1,4−ジオキサン300mlを仕込み、攪拌しながら16時間加熱還流させた。このとき、反応系のpHは12.1であった。
(2)溶媒200mlを留去して反応系を濃縮し、更に6時間反応を続けた。
(3)反応終了後、減圧下で溶媒等を留去し、200mlのトルエンで溶媒置換した。
(4)分液ロートで数回水洗し、無水硫酸ナトリウムで脱水した後、減圧下でトルエンを留去して目的とする組成物A−1を得た。
【0032】
得られた組成物A−1は高粘稠性であり、トルエン、テトラヒドロフラン、ヘキサン、アセトン等の種々の溶媒に任意の割合で可溶であった。
この組成物A−1につき、下記の条件でGPC測定を行った。
[測定条件]
装 置;HLC−802A(東ソー株式会社製)
カラム;TSK−GEL、2500HXL+1000HXL
溶離液;テトラヒドロフラン(流速;1.0ml/分)
検出器;RI
【0033】
得られたGPCチャートは、図1に示すように、高分子量側に若干のショルダーがみられるものの、ほぼ単峰性であった。このGPC測定結果より求めた組成物A−1の分子量は下記のとおりであった。
数平均分子量 (Mn);1,870
重量平均分子量(Mw);2,450
分散度 (Mn/Mw);1.31
この単峰性のピークは、Oxe−TRIESの8量体であるカゴ構造のシルセスキオキサン(T8)と推察される。また、高分子量側にみられるショルダーは、ランダム構造、ハシゴ構造又は10量体以上のカゴ構造シルセスキオキサン、或いはこれらの混合物と推察される。
【0034】
また、組成物A−1のIRチャートを図2に示す。ここで、981.4cm−1に環状エーテル結合に基づく吸収がみられることから、組成物A−1はオキセタニル基をもつ化合物からなることが判る。1110.8cm−1の吸収は、Si−O−Si結合及びCH−O−CH結合に基づくものである。
【0035】
組成物A−1のH−NMRチャートを図3に示す。4.3〜4.5ppmのピークはオキセタン環におけるCHの水素原子を示す。また、このNMRチャートにおいてエトキシ基(Si−O−C)の水素原子に相当するピークが観察されなかったことから、加水分解反応は良好に進行し、Oxe−TRIESの加水分解性基の実質的に全てが縮合されているものと推察される。
尚、このNMRチャートにおいてブロードなピークと鋭いピークとが同時に観察されたことは、組成物A−1が構造の異なる種々のシルセスキオキサン化合物からなる混合物であることを示している。このうち、鋭いピークはカゴ構造のシルセスキオキサン化合物に、またブロードなピークはハシゴ構造又はランダム構造のシルセスキオキサン化合物に由来すると考えられる。
【0036】
(実施例2〜8)
反応器中に、Oxe−TRIES4.12g(12.9mmol)、MeNOHの10%水溶液0.35g(HO;17.5mmol、MeNOH;0.4mmol)、水0.38g(21.1mmol)及び表1に示す溶媒100mlを仕込み、室温において24時間攪拌することにより反応を進行させた。尚、反応終了時における反応系のpHは、いずれも11.8〜12.5の範囲であった。
反応終了後、実施例1と同様の処理を行って、組成物A−2〜A−8を得た。
【0037】
得られた組成物A−2〜A−8につき、組成物A−1と同様にGPC測定を行った。得られたGPCチャートを図4〜図10に示し、GPC測定から求めた分子量及び組成物の外観を表1に示す。尚、表1中の「MeOH」はメチルアルコールを、「EtOH」はエチルアルコールを、「IPA」はイソプロピルアルコールを、「MEK」はメチルエチルケトンを、「THF」はテトラヒドロフランを表す。また、「ピーク5」は残存したOxe−TRIESである。
【0038】
【表1】
Figure 0003598749
【0039】
表1から判るように、溶媒としてメチルアルコールを用いた実施例2ではGPCチャートが二峰性となり、実施例1に比べて高分子量の化合物が多く生成された。実施例3〜実施例6では、得られた組成物中に含まれる化合物は同程度であったが、溶媒としてアルコール類を用いた場合にはケトン系を用いた場合に比べて組成物の着色が少なくなる傾向であった。これは、アルコール中ではMeNOHが安定に存在できるためと考えられる。
また、テトラヒドロフランを用いた実施例7及びトルエンを用いた実施例8では、未反応のOxe−TRIESがかなり残存した。この理由としては、テトラヒドロフランにはMeNOHが溶けにくいこと、またトルエンには水が溶解しないこと等が考えられる。
【0040】
(実施例9)
上記実施例2においては加水分解を室温で行ったが、この反応温度を溶媒の還流温度とし、他の点については実施例2と同様の条件として組成物A−9を合成した。即ち、反応器中にOxe−TRIES38.6mmol、MeNOH1.2mmol、HO115.8mmol、及びメチルアルコール300mlを仕込み、還流温度で24時間攪拌することにより反応を進行させ、反応液を実施例1と同様に処理して組成物A−9を得た。尚、反応終了時における反応系のpHは12.0であった。
得られた組成物A−9のGPCチャートを図11に、GPC測定から求めた分子量及び組成物の外観を表2に示す。
【0041】
(実施例10)
加水分解時におけるOxe−TRIESの濃度を高くした他は、実施例9と同様の条件により組成物A−10を合成した。即ち、反応器中にOxe−TRIES193.0mmol、MeNOH6.0mmol、HO579.0mmol、及びメチルアルコール300mlを仕込み、還流温度で24時間攪拌することにより反応を進行させ、反応液を実施例1と同様に処理して組成物A−10を得た。尚、反応終了時における反応系のpHは12.0であった。
得られた組成物A−10のGPCチャートを図11に、GPC測定から求めた分子量及び組成物の外観を表2に示す。
【0042】
【表2】
Figure 0003598749
【0043】
図3、図11及び図12の比較、及び表2から判るように、反応温度が低いと低分子量化合物の生成割合が多くなる傾向にあった。これは、低温においては解重合が抑制されるためと考えられる。また、Oxe−TRIESの濃度が高いと分子量が増大する傾向にあり、これは、縮合が起こりやすくなるのでハシゴ構造やランダム構造のシルセスキオキサン化合物が生成しやすくなるためと考えられる。
【0044】
(2)光カチオン硬化性組成物の評価
上記実施例により得られた光カチオン硬化性組成物A−1〜A−10を少量のヘキサンで溶解し、光カチオン硬化性組成物の重量に対して2.5wt%のカチオン系光開始剤を添加した。これをガラス基板上にバーコーターで塗布し、溶剤留去後に下記条件で紫外線を照射したところ、いずれの組成物も良好な光カチオン硬化性を示した。
[UV照射条件]
ランプ:80W/cm高圧水銀ランプ
ランプ高さ:10cm
コンベアスピード:10m/min
照射雰囲気:大気中
パス回数:5回
開始剤:ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート(2.5wt%使用)
【0045】
このうち、実施例1の組成物から形成した硬化膜について、JIS K 5400に準じて表面の鉛筆硬度を測定した。その結果、キズ5H、剥離9H以上という高硬度のコーティング膜であることが判った。
【0046】
尚、本発明においては、前記具体的実施例に示すものに限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更した実施例とすることができる。
【0047】
【発明の効果】
本発明の製造方法によると、オキセタニル基をもつシルセスキオキサン化合物からなる光カチオン硬化性組成物を容易に得ることができる。このシルセスキオキサン化合物は、光カチオン重合速度の大きいオキセタニル基を有するので、エポキシド型のモノマーに比べて光カチオン重合性に優れる。
本発明の製造方法により得られた組成物は、種々の有機溶剤に可溶であるためシリカに比べて取り扱いが容易であり、製膜等の加工性や成形性に優れる。また、高硬度の光カチオン硬化物を形成し得るので、例えばハードコート剤組成物として有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1により製造された光カチオン硬化性組成物A−1のGPCチャートである。
【図2】実施例1により製造された光カチオン硬化性組成物A−1のIRチャートである。
【図3】実施例1により製造された光カチオン硬化性組成物A−1のH−NMRチャートである。
【図4】実施例2により製造された光カチオン硬化性組成物A−2のGPCチャートである。
【図5】実施例3により製造された光カチオン硬化性組成物A−3のGPCチャートである。
【図6】実施例4により製造された光カチオン硬化性組成物A−4のGPCチャートである。
【図7】実施例5により製造された光カチオン硬化性組成物A−5のGPCチャートである。
【図8】実施例6により製造された光カチオン硬化性組成物A−6のGPCチャートである。
【図9】実施例7により製造された光カチオン硬化性組成物A−7のGPCチャートである。
【図10】実施例8により製造された光カチオン硬化性組成物A−8のGPCチャートである。
【図11】実施例9により製造された光カチオン硬化性組成物A−9のGPCチャートである。
【図12】実施例10により製造された光カチオン硬化性組成物A−10のGPCチャートである。

Claims (3)

  1. オキセタニル基をもつシルセスキオキサン化合物からなる光カチオン硬化性組成物の製造方法であって、下記式(I)に示す構造式で表される化合物をpH7以上の雰囲気下で加水分解することを特徴とする光カチオン硬化性組成物の製造方法。
    Figure 0003598749
    (但し、R下記式(II)に示す構造式で表される有機官能基であり、Xは加水分解性基である。)
    Figure 0003598749
    (但し、Rは水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基であり、Rは炭素数2〜6のアルキレン基である。)
  2. 上記式(I)におけるXがアルコキシ基、シクロアルコキシ基又はアリールオキシ基である請求項1記載の光カチオン硬化性組成物の製造方法。
  3. 請求項1又は2に記載の製造方法により得られた光カチオン硬化性組成物からなる光カチオン硬化性ハードコート剤組成物
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