JP3796906B2 - 光カチオン重合性有機ケイ素化合物及びその製造方法、光カチオン重合性塗料組成物、並びに剥離用フィルムコーティング剤 - Google Patents

光カチオン重合性有機ケイ素化合物及びその製造方法、光カチオン重合性塗料組成物、並びに剥離用フィルムコーティング剤 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光カチオン重合性有機ケイ素化合物及びその製造方法、光カチオン重合性塗料組成物、並びに剥離用フィルムコーティング剤に関し、詳しくは、主鎖がシロキサン結合からなり、その両末端ケイ素原子にアルコキシ基及びオキセタニル基を有する有機官能基が結合した、光カチオン重合性有機ケイ素化合物及びその製造方法、光カチオン重合性塗料組成物、並びに剥離用フィルムコーティング剤に関する。本発明の有機ケイ素化合物は、光カチオン重合用マクロモノマー、ポリマー型シランカップリング剤等として有用である。
【0002】
【従来の技術】
紫外線(UV)開始重合又は紫外線開始硬化の分野においては、多官能アクリレート及び不飽和ポリエステル等を用いた光開始ラジカル重合が広く検討され、また工業的に利用されている。
しかし、このラジカル重合は空気中等の酸素によって阻害されるため、モノマーを速やかに且つ完全に重合させるためには不活性雰囲気下で重合を行う必要がある。
【0003】
これに対して光開始カチオン重合は、上記光開始ラジカル重合とは異なり酸素による重合阻害を受けないため、空気中においても完全に重合させることが可能である。
光開始カチオン重合に用いられる代表的なモノマーとしては、エポキシド及びビニルエーテルが挙げられる。特に、モノマーとしてエポキシドを用いた場合には、耐熱性が良く、接着力に優れ、且つ耐薬品性の良好な硬化物を得ることが可能である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、エポキシド型の光硬化性モノマーは、エポキシ基の光重合速度が比較的遅いため、特に紙やプラスチック上にコーティングされる場合のように速やかな光硬化性が要求される用途に対しては、必ずしも好適とはいい難い。
【0005】
一方、通常オキセタニル基の光重合速度はエポキシ基に比べて明らかに速いため、このオキセタニル基をもつ化合物は光開始カチオン重合用のモノマーとして有用である。特開平6−16804号公報にはオキセタニル基を有する種々のモノマーが開示されており、その一例として下記式(IV)に示す化合物、即ちシリコーンの両末端にオキセタニル基が導入された化合物が示されている。
【0006】
【化4】
Figure 0003796906
(但し、R2及びR3のそれぞれは例えば1〜4個の炭素原子を有するアルキル基又はアリール基であり、R4は水素原子、1〜6個の炭素原子を有するアルキル基、フッ素原子、1〜6個の炭素原子を有するフルオロアルキル基、アリル基、アリール基、フリル基又はチエニル基であり、nは0〜2,000の整数である。)
【0007】
しかし、上記化合物からなる組成物の硬化膜は一般に基材との密着性が低く、特に基材が金属等の無機物質である場合には実用上十分な密着性を得ることは困難である。これは、上記化合物はオキセタニル基以外の官能基をもたないので、無機物質との結合能力に劣るためと考えられる。
また、上記公報においては両末端ヒドロシリコーンを原料として上記化合物を製造しているが、この両末端ヒドロシリコーンは高価であるため材料費が嵩む。更に、上記公報においてはオキセタニル基を導入する際の反応触媒としてロジウム触媒を使用しているが、このロジウム触媒も高価なものである。
【0008】
本発明の他の目的は、比較的安価な原料及び触媒を用いて製造可能であり、且つ金属等の無機物質に対する密着性に優れた新規な光カチオン重合性有機ケイ素化合物、並びに該光カチオン重合性有機ケイ素化合物を含有する光カチオン重合性塗料組成物、並びに剥離用フィルムコーティング剤を提供することにある。本発明の更に他の目的は、上記光カチオン重合性有機ケイ素化合物を製造する好適な方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、新規な光カチオン重合性化合物として、シリコーンの両末端にオキセタニル基が導入され且つこのシリコーンの両末端ケイ素原子がアルコキシ基をもつ化合物を合成した。そして、この化合物はオキセタニル基及びアルコキシ基による速い光カチオン重合速度を有すること、及び、上記式(IV)に示す化合物等に比べて基材との密着性等に優れた硬化膜を与えることを見出した。更に、この化合物を比較的安価な原料及び触媒を用いて、しかも容易に製造する方法を見出して、本発明を完成したのである。
【0010】
即ち、本発明の光カチオン重合性有機ケイ素化合物は、下記式(I) に示す構造式で表されることを特徴とする。
【0011】
【化5】
Figure 0003796906
(但し、R下記式(II)に示す構造式で表されるオキセタニル基をもつ有機官能基であり、R、R及びRはいずれもアルキル基、シクロアルキル基又はアリール基であり、nは1〜10,000の正数である。)
【0012】
上記式(I)で表される有機ケイ素化合物は、シリコーンの両末端に光カチオン重合速度の大きいオキセタニル基が導入され、且つこのシリコーンの両末端ケイ素原子にアルコキシ基が結合した構造を有する。この化合物は、光カチオン重合性を有する基に加えてアルコキシ基を有することにより、剥離用フィルムコーティング剤、耐汚染性塗膜剤等として有用である。例えば光カチオン重合性塗料組成物として用いた場合、アルコキシ基をもたない点以外は同様の構造を有する有機ケイ素化合物に比べて基材との密着性に優れた塗膜が得られる。また、硬化前及び/又は硬化後において上記アルコキシ基同士を縮合させることにより、硬化膜の硬度を向上させることができる。更に、このアルコキシ基を利用して化合物又はその硬化物に他の官能基を導入したり、或いはアルコキシ基の加水分解により硬化膜に水酸基を導入して親水性を付与することも可能である。
【0013】
そして、上記は下記式(II)に示す構造式で表される有機官能基である。このような光カチオン重合性有機ケイ素化合物は製造が容易であり、且つ上記用途に好適なためである。
【0014】
【化6】
Figure 0003796906
(但し、R4は水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基であり、R5は炭素数2〜6のアルキレン基である。)
【0015】
本発明の光カチオン重合性有機ケイ素化合物の製造方法は、下記式(I ) に示す構造式で表される光カチオン重合性有機ケイ素化合物を製造する方法であり、下記式(III)に示す構造式で表されるポリシロキサンとアルケニル末端をもつオキセタン化合物とを付加反応させることを特徴とする。
【0016】
【化7】
Figure 0003796906
(但し、 はオキセタニル基をもつ有機官能基であり、、R及びRはいずれもアルキル基、シクロアルキル基又はアリール基であり、nは1〜10,000の正数である。)
【0017】
上記式(III)に示す化合物は、両末端ヒドロシリコーンに比べて安価に製造することが可能であるため、原料費が低減されるという利点がある。また、この化合物を原料とすることにより、これとオキセタン化合物とのヒドロシリレーション反応の際にロジウム触媒等に比べて安価な白金触媒を用いて、上記式(I ) に示す構造式で表される有機ケイ素化合物を得ることができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
尚、本明細書においては、オキセタニル基を有する化合物を「オキセタン化合物」と表す。
本発明の光カチオン重合性有機ケイ素化合物は、上記式(I)におけるR1、R2及びR3がそれぞれアルキル基、シクロアルキル基又はアリール基である。この「アルキル基」としては、例えばメチル基、エチル基、n−及びi−プロピル基、n−、i−及びt−ブチル基等が挙げられる。また、「シクロアルキル基」の例としてはシクロヘキシル基等が、「アリール基」の例としてはフェニル基等が挙げられる。
【0019】
上記式(I)に示す化合物一分子中には四つのR1が含まれるが、これらは全て同じ基であってもよいし二種以上の異なる基であってもよい。また、R2とR3とは同じ基であってもよいし異なる基であってもよい。更に、一分子中に含まれるn個のR2は全て同じ基であっても二種以上の異なる基であってもよく、R3についても同様である。
【0020】
このうち、R1が炭素数1〜3のアルキル基、即ち、−OR1がメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基又はi−プロポキシ基であることが好ましい。この場合には、両末端のケイ素原子に結合したアルコキシ基の加水分解性が良好となるので、このアルコキシ基を、基材との密着性向上や湿気硬化による膜強度向上のために有効に利用することができる。
【0021】
また、R2及びR3はメチル基又はエチル基であることが好ましく、R2及びR3が全てメチル基であることが更に好ましい。この場合には、本発明の有機ケイ素化合物を安価な原料から製造可能であるとともに、この有機ケイ素化合物により剥離性、表面潤滑性及び撥水・撥油性等のいわゆる「シリコーンの特性」を付与しやすいため好ましい。
また、一分子中に存在する四つのR1がそれぞれ同じ基である場合には、本発明の有機ケイ素化合物の合成が容易であるため好ましい。また、−OR1がエトキシ基である場合には、本発明の有機ケイ素化合物の毒性が低いという利点がある。
【0022】
上記式(I)におけるR0は、その一部に少なくとも一つのオキセタニル環を有する有機官能基であれば特に限定されないが、上記式(II)に示す構造式で表される基であることが好ましい。この式(II)において、R4は水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基であり、R4がエチル基であることが特に好ましい。また、R5は炭素数2〜6のアルキレン基であり、R5がプロピレン基であることが特に好ましい。これは、このようなオキセタン化合物の入手或いは合成が容易なためである。
【0023】
また、上記式(I)におけるnは1〜10,000の正数である。nが10,000を超えると、粘度が高すぎて取り扱いが困難となる等の問題を生じる。この問題を防止する観点からは、nは1,000以下であることが好ましく、200以下であることがより好ましい。
nの好ましい範囲はこの有機ケイ素化合物の用途によっても異なり、例えば硬化物に高強度が要求される用途ではnが1〜6であることが好ましく、硬化物に高引張強度が要求される用途ではnが100〜200であることが好ましい。
【0024】
本発明の光カチオン重合性有機ケイ素化合物の製造方法は、上記式(III) に示す構造式で表されるポリシロキサンとアルケニル末端をもつオキセタン化合物とを付加反応させるものである。
ここで、「アルケニル末端をもつ」とは、オキセタン化合物がその末端にビニル基、アリル基、エチニル基、プロパギル基及びイソプロペニル基等のうち少なくとも一つを有することをいう。これらの中でも、原料の入手及び合成が容易であること、及び、後のヒドロシリル化反応が容易に実施しやすいこと等の理由から、アルケニル末端がアリル基であることが好ましい。また、反応時のゲル化等を防止するためには、このオキセタン化合物のもつアルケニル末端の数は一つであることが好ましい。
【0025】
上記式(III) におけるR1、R2、R3及びnの好ましい範囲並びにその理由は、式(I)の説明において上述したとおりである。
【0026】
次いで、上記式(III) に示す化合物とオキセタン化合物とを「付加反応させる」方法について説明する。
これは、上記式(III) に示す化合物の両末端にあるSi−H基とオキセタン化合物のアルケニル末端とのヒドロシリル化反応であり、第8族金属触媒の存在下等において進行する。
【0027】
この「第8族金属触媒」としては、コバルト、ニッケル、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、イリジウム及び白金等の第8族金属の単体、有機金属錯体、金属塩及び金属酸化物等が挙げられる。これらの中で、触媒活性の高さが適当であるとともに取り扱いが容易であり、且つ比較的安価である等の理由から、白金の金属単体、有機金属錯体、金属塩及び金属酸化物が好ましく、有機白金錯体を用いることが特に好ましい。この触媒は、上記式(III) に示す化合物とオキセタン化合物との合計量に対して10〜1,000重量ppm用いることが好ましい。
ヒドロシリル化反応におけるその他の反応条件については特に限定されないが、好ましい反応温度は20〜80℃であり、好適な反応時間は2〜10時間である。
【0028】
ここで、上記式(III) に示す化合物とは異なりシリコーンの両末端ケイ素原子がアルキル基をもつヒドロシリコーン(以下、「両末端アルキルヒドロシリコーン」という。)では、アルケニル末端をもつオキセタン化合物とのヒドロシリレーション反応において白金触媒を用いると、オキセタニル基の開環等の副反応が多く起こるため反応系のゲル化等が生じ、目的の有機ケイ素化合物を得ることができない。このため、両末端アルキルヒドロシリコーンを原料とする光カチオン重合性有機ケイ素化合物の製造においては、触媒として白金触媒に比べて触媒活性の低いロジウム触媒等を用いる必要があり、このロジウム触媒が白金触媒に比べて高価であるという問題を生じていた。更に、反応系内にロジウム触媒を均一に存在させるためには溶媒を用いる必要があった。
【0029】
これに対して、上記式(III) に示す化合物は、シリコーンの両末端ケイ素原子がアルコキシ基を有する「両末端アルコキシヒドロシリコーン」であるので、反応時に白金触媒を用いてもオキセタニル基が開環しにくい。従って、ロジウム触媒に比べて安価な白金触媒を用いて目的の化合物、即ち本発明の有機ケイ素化合物を得ることができる。また、ロジウム触媒とは異なり白金触媒は、溶媒を用いなくても反応系に溶解させるか或いは均一に分散させることができるため、実質的に無溶剤で反応を行うことが可能である。
【0030】
更に、上記式(III)に示す化合物は、例えば下記式(V)に示す化合物と下記式(VI)に示す化合物との縮合反応により好適に製造することができる。下記化合物はいずれも比較的安価であるため、上記式(III)に示す化合物は、両末端アルキルヒドロシリコーンに比べて安価に製造することができる。
この縮合反応は、下記式(VI)に示す化合物が過剰(好ましくは大過剰)となる条件下で行うことが好ましい。また、反応時にはp−トルエンスルホン酸又は三フッ化酢酸等のエステル交換触媒を用いてもよいが、これらの触媒を使用せずに中性雰囲気下で上記縮合反応を進行させることが好ましい。
【0031】
【化8】
Figure 0003796906
(但し、R2及びR3はそれぞれアルキル基、シクロアルキル基又はアリール基であり、nは1〜10,000の正数である。)
【0032】
【化9】
Figure 0003796906
(但し、R1はアルキル基、シクロアルキル基又はアリール基である。)
【0033】
【実施例】
以下、実施例及び比較例により、本発明を更に具体的に説明する。
【0034】
(1)光カチオン重合性有機ケイ素化合物の合成
(合成例1)
これは、本発明の光カチオン重合性有機ケイ素化合物の製造方法における原料として用いる、上記式(III)に示す両末端アルコキシヒドロシリコーンを合成する例である。
下記式(1)に示す反応式により、上記式(III)におけるR1がエチル基であり、R2及びR3のいずれもがメチル基であり、nが約25である両末端エトキシヒドロポリジメチルシロキサンを合成した。
【0035】
【化10】
Figure 0003796906
【0036】
使用した原料は次のとおりである。
〔原料〕
(1) ポリジメチルシロキサン−α,ω−ジオール(チッソ株式会社製、分子量約2,000、商品名「DMS−S15」)
(2) トリエトキシシラン(東亞合成株式会社製、商品名「トリエス」)
【0037】
以下、反応操作を説明する。
▲1▼攪拌機、温度計及び冷却機を備えた反応器に、ポリジメチルシロキサン−α,ω−ジオール157.0g(78.5mmol、水酸基として156.1mmol)を仕込み、真空脱気した後に系内を窒素置換した。
▲2▼反応装置を60℃に昇温してトリエトキシシラン148.9g(908mmol)を加え、系内を60℃に保ちながら攪拌して反応を進行させた。
▲3▼ガスクロマトグラフィーにより反応の進行を追跡し、原料のトリエトキシシランと副生したエタノールとの組成比が変化しなくなった時点で反応を終了した。
▲4▼得られた反応液から、過剰のトリエトキシシラン及び副生したエタノールを減圧下で除去した。更に、加熱真空雰囲気下において揮発性不純物を除去して、目的物である両末端エトキシヒドロポリジメチルシロキサン173.1gを得た。
【0038】
(実施例1)
下記式(2)に示す反応式により、合成例1で得た両末端エトキシヒドロポリジメチルシロキサンに、アルケニル末端をもつオキセタン化合物を付加させて、上記式(I)及び式(II)におけるR1がエチル基であり、R2及びR3のいずれもがメチル基であり、R4がエチル基であり、R5がプロピレン基であり、nが約25である、本発明の光カチオン重合性有機ケイ素化合物を製造した。
尚、「アルケニル末端をもつオキセタン化合物」としては、3−エチル−3−アリルオキシメチルオキセタンを用いた。
【0039】
【化11】
Figure 0003796906
【0040】
以下、その反応操作を説明する。
▲1▼攪拌機、温度計及び冷却器を備えた反応器に、3−エチル−3−アリルオキシメチルオキセタン50.4g(322.6mmol)及び合成例1で得た両末端エトキシヒドロポリジメチルシロキサン114.2g(51.9mmol、但し分子量2,200として)を仕込んだ。
▲2▼系内を70〜80℃に昇温した後、PtCl2(C65CN)2の0.05Mベンゾニトリル溶液500μlを加えた。その後、系内を70〜80℃に保ちながら反応を進行させた。系内の温度上昇により反応の進行を確認した。
▲3▼反応終了後、加熱真空雰囲気下において過剰の3−エチル−3−アリルオキシメチルオキセタン及びベンゾニトリル等の揮発性物質を留去し、更に触媒残渣を除去して、無色透明の目的物、即ち本発明の光カチオン重合性有機ケイ素化合物A−1を得た。
【0041】
この有機ケイ素化合物A−1の構造を下記式(VII)に示す。また、この化合物A−1のIRチャートを図1に、NMRチャートを図2に示す。
尚、図1のIRチャートにおける1260cm-1のピークはジメチルシロキサン鎖のSi−CH3結合に、また1000〜1100cm-1のピークはジメチルシロキサン鎖のSi−O−Si結合に帰属される。また、図2のNMRチャートにおける0.3ppmのピークはジメチルシロキサン鎖のケイ素に結合したメチル基の水素原子に、1.2ppm及び3.8ppmのピークは両末端ケイ素原子に結合したエトキシ基の水素原子に、4.3ppm及び4.4ppmのピークはオキセタン環における−CH2−の水素原子に帰属される。
【0042】
【化12】
Figure 0003796906
【0043】
(比較例1)
下記の方法により、上記式(I)におけるR1、R2、R3及びnは実施例1の有機ケイ素化合物A−1と同じであるが、R0がオキセタニル基ではなくエポキシ基をもつ有機官能基である有機ケイ素化合物B−1を製造した。
即ち、3−エチル−3−アリルオキシメチルオキセタンに代えてアリルグリシジルエーテルを用いた他は実施例1と同様の方法により、シリコーンの両末端にアルコキシ基及びエポキシ基を有する、比較例1の有機ケイ素化合物B−1を得た。
この有機ケイ素化合物B−1の構造を下記式(VIII)に示す。
【0044】
【化13】
Figure 0003796906
【0045】
(比較例2)
実施例1と同様の操作により、両末端にオキセタニル基を有するが、シリコーンの両末端ケイ素がアルコキシ基ではなくアルキル基をもつ有機ケイ素化合物を製造することを試みた。
即ち、窒素置換した反応器に、実施例1で用いた3−エチル−3−アリルオキシメチルオキセタン6.3g(40.3mmol)と、シリコーンの両末端ケイ素原子がアルコキシ基をもたない両末端ヒドロポリジメチルシロキサン(チッソ株式会社製、商品名「DMS−H21」、分子量600)6.0g(10.0mmol)とを仕込んだ。
系内を系内を70℃に昇温した後、PtCl2(C65CN)2の0.05Mベンゾニトリル溶液100μlを加えた。その結果、しばらくすると系内の温度及び粘度が急激に上昇した。最終的に系内はゲル状に固化し、この固化物を分析したところオキセタンの開環重合が観測された。
【0046】
(2)光カチオン重合性有機ケイ素化合物の評価
(2−1)光カチオン重合速度の比較
実施例1により得られたオキセタニル基及びアルコキシ基をもつ有機ケイ素化合物A−1、及び、比較例1により得られたエポキシ基及びアルコキシ基をもつ有機ケイ素化合物B−1について、その不粘着化エネルギー(T.F.E.)を測定した。測定には、コンベア型のUV照射装置(アイグラフィックス株式会社製、機種名「アイ紫外線硬化用電源装置」)を使用した。測定結果を下記表1に示す。ここで、表1における単位「mJ/cm2」は、平方センチメートル当たりの硬化に要する最小エネルギーを表す。即ち、この値が小さいほど光硬化性が高いことを意味する。
【0047】
【表1】
Figure 0003796906
【0048】
表1から判るように、オキセタニル基をもつ有機ケイ素化合物A−1は、エポキシ基をもつ有機ケイ素化合物B−1に比べて光硬化性が著しく高い。
【0049】
(2−2)密着性及び硬度の評価
オキセタニル基及びアルコキシ基をもつ有機ケイ素化合物A−1、及び、オキセタニル基をもつがアルコキシ基をもたない有機ケイ素化合物C−1について、基材との密着性を評価した。
尚、この有機ケイ素化合物C−1は、PtCl2(C65CN)2に代えてロジウム触媒を用いるとともに溶媒としてトルエンを使用し、その他の点については比較例2の方法により製造したものである。
この有機ケイ素化合物C−1の構造を下記式(IX)に示す。
【0050】
【化14】
Figure 0003796906
【0051】
密着性の評価は以下の方法により行った。
即ち、下記表2に示す基材上に各化合物をバーコーターにより塗布し、以下の条件でUVを照射して硬化させた。この硬化膜について、JIS K 5400の「碁盤目テープ法」により密着性を評価した。尚、評価は照射による硬化直後の硬化膜、及び、硬化後50℃、湿度90%の室内において5日間の湿気曝露を行った硬化膜の双方について行った。
[UV照射条件]
ランプ:80W/cm高圧水銀ランプ
ランプ高さ:10cm
コンベアスピード:10m/min
照射雰囲気:大気中
パス回数:5回
開始剤:ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート(2.5wt%使用)
【0052】
また、上記硬化直後及び湿気曝露後の硬化膜について、JIS K 5400に準じて表面の鉛筆硬度を測定した。
これらの測定結果を下記表2に示す。
【0053】
【表2】
Figure 0003796906
【0054】
表2から判るように、本発明の有機ケイ素化合物A−1は、硬化直後においても各種基材に対する密着性が良好であり、特に鉄及びガラスに対する密着性では比較例の有機ケイ素化合物C−1に比べて明らかに優れている。これは、塗布後又は光カチオン重合時等に、化合物A−1の有するアルコキシ基の少なくとも一部が基材表面の水酸基と反応する等の理由によると考えられる。
また、湿気曝露による物性の変化をみると、アルコキシ基をもつA−1は湿気曝露により密着性及び硬度がいずれも向上しているが、アルコキシ基をもたないC−1ではあまり変化していないことが判る。
【0055】
尚、本発明においては、前記具体的実施例に示すものに限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更した実施例とすることができる。
【0056】
【発明の効果】
本発明の光カチオン重合性有機ケイ素化合物は、光カチオン重合速度の大きいオキセタニル基を有するので、エポキシド型のモノマーに比べて光カチオン重合性に優れる。また、オキセタニル基に加えてアルコキシ基を有するので、硬化前及び/又は硬化後において、上記アルコキシ基と基材又は基材表面の水酸基等とを反応させて密着性を向上させたり、或いは上記アルコキシ基同士を縮合させて硬化膜の硬度を向上させたりすることができる。更に、このアルコキシ基を利用して化合物又はその硬化物に他の官能基を導入したり、或いはアルコキシ基の加水分解により硬化膜に水酸基を導入して親水性を付与することも可能である。
更に、本発明の有機ケイ素化合物は、本発明の製造方法により、安価な原料及び触媒を用いて容易に製造可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1により製造された、本発明の光カチオン重合性有機ケイ素化合物のIRチャートである。
【図2】実施例1により製造された、本発明の光カチオン重合性有機ケイ素化合物のNMRチャートである。

Claims (6)

  1. 下記式(I) に示す構造式で表されることを特徴とする光カチオン重合性有機ケイ素化合物。
    Figure 0003796906
    (但し、R下記式(II)に示す構造式で表されるオキセタニル基をもつ有機官能基であり、R、R及びRはいずれもアルキル基、シクロアルキル基又はアリール基であり、nは1〜10,000の正数である。)
    Figure 0003796906
    (但し、R は水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基であり、R は炭素数2〜6のアルキレン基である。)
  2. 上記nが100〜200である請求項1記載の光カチオン重合性有機ケイ素化合物。
  3. 下記式(I ) に示す構造式で表される光カチオン重合性有機ケイ素化合物の製造方法であって、下記式(III)に示す構造式で表されるポリシロキサンとアルケニル末端をもつオキセタン化合物とを付加反応させることを特徴とする光カチオン重合性有機ケイ素化合物の製造方法。
    Figure 0003796906
    (但し、 はオキセタニル基をもつ有機官能基であり、、R及びRはいずれもアルキル基、シクロアルキル基又はアリール基であり、nは1〜10,000の正数である。)
  4. 上記付加反応は、第8族金属の単体、有機金属錯体、金属塩及び金属酸化物から選ばれる第8族金属触媒の存在下で行われる請求項3記載の光カチオン重合性有機ケイ素化合物の製造方法。
  5. 請求項1又は2記載の光カチオン重合性有機ケイ素化合物を含有することを特徴とする光カチオン重合性塗料組成物。
  6. 請求項1又は2記載の光カチオン重合性有機ケイ素化合物を含有することを特徴とする剥離用フィルムコーティング剤。
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