JP3784615B2 - セメント分散剤 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、セメント分散剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
セメント分散剤として、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステル系単量体と(メタ)アクリル酸系単量体とから製造された共重合体(以下、アクリル酸系という)が知られている。
【0003】
この種の共重合体においては、アルキレンオキサイド(以下AOという)の付加モル数(以下、nで表す)やモノマー比を変化させることで、特徴的な性能を付与することが可能であることが開示されている(特開昭58-74552号、特開平8-12396号、特開平7-247150号等)。しかし、これらは単独で使用すると、配合条件が多岐に渡り、年間を通じて広い範囲で温度が変動する実際のコンクリート製造条件に対して、極めて汎用性が低い。
【0004】
そこで、汎用性を広げるために、異なる2種以上の共重合体を配合して、相互の欠点を補い合うことが提案されている。例えば、特開平9-40446号には、nが100〜300と1〜30の単量体を共重合した共重合体を混合したものが開示されている。しかし、併用する共重合体の単量体重量比が互いに接近していると、汎用性の広がりが小さく、逆に単量体重量比があまり離れたものを選択すると、相互の欠点が補えない領域が生じるため、性能が不十分な領域が生じる。
【0005】
更に、本発明者らは、より高い分散性と流れ性を有するセメント分散剤として、特定2種の単量体を共重合させて得られた共重合体混合物であって、単量体モル比が反応途中において少なくとも1回変化されている共重合体混合物を使用することを提案した(特願平11-361108号)。この分散剤は、異なる共重合体を配合する場合に比べ大量生産するには効率的で安価である。
【0006】
また、セメント分散剤として、ポリアルキレングリコールモノ又はジアルキルエーテル系単量体とマレイン酸系単量体とから製造された共重合体(以下マレイン酸系という)が知られている(特開昭63-285140号、特開平5-306152号等)。
しかし、セメントの分散保持性とフレッシュ状態のコンクリートの粘性低減効果を高いレベルで両立できるものであるが、アクリル酸系分散剤に比べて分散力が小さく、特に低いW/Cのセメント組成物においてはこの傾向が顕著となる。
【0007】
更に、本発明者らは、nが2〜300のアクリル酸系分散剤とnが2〜90のマレイン酸系分散剤を併用することを提案した(特願平11-285929号)。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、実際のコンクリート製造条件は、配合条件が多岐に渡り、年間を通じて広い範囲で温度が変動するなど、従来の分散剤では未だ性能が不十分な領域が残り、分散剤の汎用性の更なる向上が求められている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、下記の一般式(a1)で表される単量体の少なくとも1種(A1)と下記の一般式(a2)で表される単量体の少なくとも1種(A2)とを共重合させて得られ、且つ前記単量体(A1)と(A2)のモル比(A1)/(A2)が反応途中において少なくとも1回変化されている共重合体混合物(A)と、
下記の一般式(b1)で表される単量体の少なくとも1種(B1)と、マレイン酸又はその塩もしくは無水物(B2)とを共重合させて得られる共重合体(B)とを含有するセメント分散剤に関する。
【0010】
【化3】
【0011】
(式中、
R1,R2:水素原子又はメチル基
m:0〜2の数
R3:水素原子又は-COO(AO)nX
p:0又は1の数
AO:炭素数2〜4のオキシアルキレン基又はオキシスチレン基
n:2〜300の数
X:水素原子又は炭素数1〜18のアルキル基
を表す。)
【0012】
【化4】
【0013】
(式中、
R4〜R6:水素原子、メチル基又は(CH2)m1COOM2であり、(CH2)m1COOM2はCOOM1又は他の(CH2)m1COOM2と無水物を形成していてもよく、その場合、それらの基のM1,M2は存在しない。
M1,M2:水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム基、アルキルアンモニウム基又は置換アルキルアンモニウム基
m1:0〜2の数
を表す。)
R7O(R8O)rR9 (b1)
(式中、
R7:炭素数2〜5のアルケニル基
R8:炭素数2〜3のアルキレン基
R9:水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基
r:2〜150の数
を表す。)
【0014】
【発明の実施の形態】
〔共重合体混合物(A)〕
共重合体混合物(A)の製造に用いられる一般式(a1)で表される単量体(A1)としては、メトキシポリエチレングリコール、メトキシポリプロピレングリコール、メトキシポリブチレングリコール、メトキシポリスチレングリコール、エトキシポリエチレンポリプロピレングリコール等の片末端アルキル封鎖ポリアルキレングリコールと(メタ)アクリル酸、マレイン酸との(ハーフ)エステル化物や、(メタ)アリルアルコールとのエーテル化物、及び(メタ)アクリル酸、マレイン酸、(メタ)アリルアルコールへのエチレンオキシド、プロピレンオキシド付加物が好ましく用いられ、R3は水素原子が好ましく、pは1が、mは0が好ましい。より好ましくはアルコキシ、特にはメトキシポリエチレングリコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化物である。
【0015】
一般式(a1)で表される単量体(A1)のAO付加モル数nは小さくなると硬化速度、分散性、粘性が低減される傾向にあり、nが大きくなるとこれらは増加する傾向にある。従って、目的とする性能に合わせてnを選べばよい。
【0016】
例えば、コンクリートの初期強度発現性を重視する場合は、80≦nであることが好ましく、より好ましくは90≦n、さらに好ましくは100≦n、最も好ましくは110≦nであることである。また、300<nでは、分散性が低下し、製造の際の重合性も低下するので、より好ましくはn≦200、さらに好ましくはn≦150、特に好ましくはn≦130である。
【0017】
コンクリートの粘性低減を重視する場合は、2≦n≦100が好ましく、より好ましくは5≦n≦80、さらに好ましくは5≦n≦50、最も好ましくは5≦n≦30である。
【0018】
初期強度発現性と粘性低減を併せ持つことが必要な場合、nの大きなものと小さなものとを共重合することが好ましく、特に単量体(A1)として、下記一般式(a1-1)で表される単量体(A1-1)及び下記一般式(a1-2)で表される単量体(A1-2)とを併用することが好ましい。
【0019】
【化5】
【0020】
(式中、
Ra1:水素原子又はメチル基
AO:炭素数2〜4のオキシアルキレン基又はオキシスチレン基、好ましくは炭素数2〜3のオキシアルキレン基
n1:12〜300の数
X1:水素原子又は炭素数1〜18のアルキル基、好ましくは水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基
を表す。)
【0021】
【化6】
【0022】
(式中、
Ra2:水素原子又はメチル基
AO:炭素数2〜4のオキシアルキレン基又はオキシスチレン基、好ましくは炭素数2〜3のオキシアルキレン基
n2:2〜290の数(ただし、一般式(a1-1)中のn1との関係は、n1>n2且つ(n1−n2)≧10、好ましくは≧30、更に好ましくは≧50である。)
X2:水素原子又は炭素数1〜18のアルキル基、好ましくは水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基
を表す。)。
【0023】
この場合、両者の平均重量比は、好ましくは(A1-1)/(A1-2)=0.1〜8、より好ましくは0.2〜2.5、特に好ましくは0.4〜2の範囲にあることである。なお、この平均重量比は、反応に用いる全単量体の重量比の平均である。
【0024】
また、単量体(A1-1)、(A1-2)と、(A2)との反応モル比[(A1-1)+(A1-2)]/(A2)は、好ましくは、変化前後の該モル比の少なくとも何れかが0.02〜4、さらに好ましくは0.05〜2.5、特に好ましくは0.1〜2の範囲にあることである。最も好ましくは、変化前後の該モル比が共に、これらの範囲にあることである。
【0025】
このような条件の下で、12≦n1≦300、2≦n2≦290、n2+10≦n1であることが好ましく、より好ましくはn2+30≦n1、さらに好ましくはn2+50≦n1であれば、両者の性能が顕著に発現する。さらに好ましくは80≦n1≦300、2≦n2<50、より好ましくは100≦n1≦300、2≦n2<30、特に好ましくは110≦n1≦300、2≦n2<10からn1、n2を選ぶことである。
【0026】
また、共重合体混合物(A)の製造に用いられる一般式(a2)で表される単量体(A2)としては、(メタ)アクリル酸、クロトン酸等のモノカルボン酸系単量体、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸等のジカルボン酸系単量体、又はこれらの無水物もしくは塩、例えばアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、水酸基が置換されていてもよいモノ、ジ、トリアルキル(炭素数2〜8)アンモニウム塩が好ましく、より好ましくは(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、更に好ましくは(メタ)アクリル酸又はこれらのアルカリ金属塩である。
【0027】
共重合体混合物(A)は、上記単量体(A1)、(A2)とを、好ましくは(A1)/(A2)=0.02〜4の範囲のモル比で反応させて得られた共重合体混合物(A)を含有するが、これらのモル比(A1)/(A2)は反応途中において少なくとも1回変化されている。そして、本発明では、共重合体混合物(A)を製造するための全単量体に対する単量体(A2)の平均重量比(XI)と異なる平均重量比(XII)により得られた共重合体混合物(A')を併用することが好ましい。すなわち、共重合体混合物(A')は、上記単量体(A1)、(A2)とを、好ましくは(A1)/(A2)=0.02〜4の範囲のモル比で反応させて得られた共重合体混合物であって、これらのモル比(A1)/(A2)は反応途中において少なくとも1回変化されており、該共重合体混合物(A')を製造するための全単量体に対する単量体(A2)の平均重量比(XII)が、共重合体混合物(A)の平均重量比(XI)とは異なるものである。平均重量比は、〔単量体(A2)の合計量/全単量体量〕×100(重量%)で表され、それぞれ1〜30(重量%)の範囲にあることが好ましい。なお、以下この平均重量比を「(A2)平均重量比」という場合もある。また、この平均重量比(XI)、(XII)は、少なくとも1.0(重量%)、更に少なくとも2.0(重量%)、特に少なくとも3.0(重量%)相違することが好ましい。なお、共重合体混合物(A)と(A')とで、製造に用いる単量体(A1)、(A2)の種類が異なっていても、本発明では平均重量比(XI)、(XII)が異なっていればよいが、単量体(A1)、(A2)として同一の種類のものを用いるのが好ましい。
【0028】
本発明では、共重合体混合物(A)の平均重量比(XI)が、1〜30重量%、更に7〜20重量%、特に8〜16重量%であることが好ましい。そして、この共重合体混合物(A)を主剤として、配合系を組み立てると、各性能のバランスのよいコンクリート減水剤を得られる。
【0029】
本発明においては、共重合体混合物(A')として、(A2)平均重量比の異なる複数の単量体混合物からそれぞれ得られた複数の共重合体を用いることができる。実用的な面から、(A2)平均重量比の異なる1〜3つの単量体混合物からそれぞれ得られた1〜3つの共重合体混合物を用いるのが好ましい。共重合体(A')として1つの共重合体混合物を用いる場合、すなわち全部で2つの共重合体混合物を使用する場合、便宜的にそれらを共重合体混合物(Ai)、(Aii)とし、これらの(A2)平均重量比をそれぞれ(Xi)、(Xii)とすると、
5≦(Xi)<8(重量%)
8≦(Xii)≦16
であることが好ましい。また、共重合体混合物(A')として2つの共重合体混合物を用いる場合、すなわち全部で3つの共重合体混合物を使用する場合、便宜的にそれらを共重合体混合物(Ai)、(Aii)、(Aiii)とし、これらの(A2)平均重量比をそれぞれ(Xi)、(Xii)、(Xiii)とすると、
5≦(Xi)<8(重量%)
8≦(Xii)≦16(重量%)
16<(Xiii)≦30(重量%)
であることが好ましい。
【0030】
(A2)平均重量比が異なる共重合体混合物が多数存在することで広い範囲のW/Cとコンクリート温度で良好な分散性と分散保持性が発現する。特に長時間にわたる分散保持性が安定になる。その結果、W/Cの変動や温度の変動にも十分対応できるセメント分散剤となる。
【0031】
上記の通り、本発明のセメント分散剤は、上記単量体(A1)、(A2)とを、好ましくは(A1)/(A2)=0.02〜4の範囲のモル比で反応させて得られた共重合体混合物(A)、好ましくは更に(A')を含有するが、何れにおいても、これらのモル比(A1)/(A2)は反応途中において少なくとも1回変化されている。該モル比の変化は、増加、減少、それらの組み合わせの何れでもよい良い。該モル比を段階的ないし断続的に変化させる場合は、変化の回数は1〜10回、特に1〜5回が好ましい。また、該モル比を連続的に変化させる場合は直線的な変化、指数関数的な変化、その他の変化の何れでもよいが、変化の度合いは1分あたり0.0001から0.2、更に0.0005から0.1、特に0.001から0.05が好ましい。また、該モル比は、変化前後のモル比(A1)/(A2)の少なくとも何れかが0.02〜4の範囲にあることが好ましく、特に変化前後のモル比(A1)/(A2)が共に0.02〜4の範囲にあることが好ましい。また、前記したようにモル比の変化は種々の態様があるが、何れの場合も、全共重合反応における該モル比(A1)/(A2)の最大値と最小値の差が、少なくとも0.05、特に0.05〜2.5の範囲にあることが好ましい。
【0032】
かかる共重合体混合物は、(A1)/(A2)モル比を少なくとも1回変化させて重合する工程を有する製造方法により得られるが、具体的には、単量体(A1)の水溶液の滴下開始と同時に、単量体(A2)の滴下を開始し、それぞれのモル比が、所定範囲となるように滴下流量(重量部/分)を変化させて所定時間滴下する方法が挙げられる。この方法では、単量体(A1)/(A2)モル比の変化量(最大値と最小値の差)は、0.05〜2.5が好ましく、より好ましくは0.1〜2である。この方法のように反応途中で一回でもモル比を変化させることで得られた共重合体混合物は、一定の(A1)/(A2)モル比で反応させて得られる共重合体より(A1)/(A2)モル比の分布が広い多数の共重合体の混合物であると推測される。
【0033】
なお、単量体の総重量の30%以上、特には50〜100%を上記のように滴下流量を変化させて製造することが好ましい。
【0034】
重合反応は溶媒の存在下で行ってもよい。溶媒としては、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等の低級アルコール;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;シクロヘキサン等の脂環式炭化水素;n−ヘキサン等の脂肪族炭化水素;酢酸エチル等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類等を挙げることができる。これらの中でも、取り扱いが容易で、単量体、重合体の溶解性の点から、水、低級アルコールが好ましい。
【0035】
共重合反応においては、重合開始剤を添加することができる。重合開始剤としては、有機過酸化物、無機過酸化物、ニトリル系化合物、アゾ系化合物、ジアゾ系化合物、スルフィン酸系化合物等を挙げることができる。重合開始剤の添加量は、単量体(A1)、単量体(A2)及び他の単量体の合計に対して0.05〜50モル%が好ましい。
【0036】
共重合反応においては、連鎖移動剤を添加することができる。連鎖移動剤としては、低級アルキルメルカプタン、低級メルカプト脂肪酸、チオグリセリン、チオリンゴ酸、2-メルカプトエタノール等を挙げることができる。共重合反応の反応温度は、0〜120℃が好ましい。
【0037】
得られたポリカルボン酸系重合体は、必要に応じて、脱臭処理をすることができる。特に連鎖移動剤としてメルカプトエタノール等のチオールを用いた場合には、不快臭が重合体中に残存しやすいため、脱臭処理をすることが望ましい。
【0038】
上記の製造方法により得られるポリカルボン酸系重合体は、酸型のままでもセメント用分散剤として適用することができるが、酸性によるエステルの加水分解を抑制する観点から、アルカリによる中和によって塩の形にすることが好ましい。このアルカリとしては、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、アンモニア、モノ、ジ、トリアルキル(炭素数2〜8)アミン、モノ、ジ、トリアルカノール(炭素数2〜8)アミン等を挙げることができる。(メタ)アクリル酸系重合体をセメント用分散剤として使用する場合は、一部又は完全中和することが好ましい。
【0039】
なお、上記の製造方法により得られるポリカルボン酸系重合体の重量平均分子量〔ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法、ポリエチレングリコール換算、カラム:G4000PWXL + G2500PWXL(東ソー(株)製)、溶離液:0.2Mリン酸緩衝液/アセトニトリル=7/3(体積比)〕は、セメント用分散剤として充分な分散性を得るため、10,000〜200,000が好ましく、20,000〜100,000が特に好ましい。
【0040】
なお、更に、アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、スチレン、(メタ)アクリル酸アルキル(水酸基を有していてもよい炭素数1〜12のもの)エステル、スチレンスルホン酸等の共重合可能な単量体を併用してもよい。これらは全単量体中50重量%以下、更に30重量%以下の比率で使用できるが、0重量%が好ましい。
【0041】
〔共重合体(B)〕
前記一般式(b1)において、R7はビニル基、アリル基、メタリル基が好ましく、アリル基が最も好ましい。また、R8は炭素数2〜3のアルキレン基であり、エチレンオキシド、プロピレンオキシドの単独、ランダム、ブロック、交差付加によりR8Oが形成され、好ましくはエチレンオキシドの単独付加である。R9は炭素数1〜3のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基が好ましく、特にメチル基が好ましい。また、rはセメント組成物の粘性低減効果の発現性から2〜150の数であり、2〜90の数が好ましく、10〜60の数が更に好ましく、20〜50の数が最も好ましい。
【0042】
共重合体(B)は、公知の方法、例えば特開平2-163108号、特開平5-345647号に記載の方法に準じて製造することができる。
【0043】
共重合体(B)がセメント分散剤として機能するには、該共重合体を製造するための全単量体に対するマレイン酸(B2)の平均重量比(YI)が1〜50(重量%)、更に5〜30(重量%)、特に10〜30(重量%)であることが好ましい。平均重量比は、〔マレイン酸(B2)の合計量/全単量体量〕×100(重量%)で表される。なお、以下この平均重量比を「(B2)平均重量比」という場合もある。共重合体(B)の汎用性をより広くするには、該共重合体(B)の(B2)平均重量比とは異なる平均重量比(YII)により製造された共重合体(B')を併用することが好ましい。すなわち、本発明においては、共重合体(B)として、(B2)平均重量比の異なる複数の単量体混合物からそれぞれ得られた複数の共重合体(B')を用いることができる。
【0044】
共重合体(B)及び(B')は、平均重量比(YI)と(YII)とが2(重量%)以上、特に4(重量%)異なるように選択することが好ましい。また、なお、共重合体(B)と(B')とで、製造に用いる単量体(B1)、(B2)の種類が異なっていても同一であってもよいが、同一の種類のものを用いるのが好ましい。
【0045】
共重合体(B)の重量平均分子量は、300〜300,000が好ましく、5000〜100,000がより好ましい。この分子量は共重合体混合物と同様にして測定される。
【0046】
共重合体(B)は、マリアリムEKM、マリアリムAKM(共に日本油脂社)、スーパー200(電気化学社)の商品名で市販されているものを使用することもできる。
【0047】
〔セメント分散剤〕
本発明のセメント分散剤は、上記共重合体混合物(A)〔以下(A)成分という〕と共重合体(B)〔以下(B)成分という〕とを任意の比率で併用でき、要求特性によっていずれを主剤とするかを決めればよい。一般に、(A)成分は、コンクリートの多様な製造条件に対して汎用性は高いが、更に(B)成分を併用することで、低W/C領域のセメント組成物に対して、フレッシュ状態のコンクリートの粘性抑制効果がより良好に発現する。このような傾向を勘案して(A)成分を構成する単量体(A1)のnや単量体(B1)のrや、或いは(A)成分と(B)成分の併用割合や種類を決めればよく、その一例を挙げれば次の通りである。
【0048】
(1)共重合体混合物(A)を主剤とする場合
共重合体混合物(A)を主剤とする場合、(A)成分の特長を汎用性広く発現させるためには、平均重量比(XI)は前記した範囲を満たすことが好ましい。この場合、共重合体(B)の共重合体混合物(A)と共重合体(B)の合計に対する重量比〔(B)/[(A)+(B)]〕×100は、0超50未満(重量%)、好ましくは0超30以下(重量%)、より好ましくは0超20以下(重量%)である。
【0049】
(2)共重合体(B)を主剤とする場合
共重合体(B)を主剤とする場合、(B)成分の特長を汎用性広く発現させるためには、(B2)平均重量比(Y)は前記した範囲を満たすことが好ましい。この場合、共重合体混合物(A)の共重合体混合物(A)と共重合体(B)の合計に対する重量比〔(A)/[(A)+(B)]〕×100は、0超50未満(重量%)、好ましくは0超30以下(重量%)、より好ましくは0超20以下(重量%)である。
【0050】
また、本発明のセメント分散剤には、前記(A)成分で示した単量体(A1)と単量体(A2)とをモル比を変化させずに共重合して得られた共重合体(C)を併用することができる。共重合体(C)の製造に用いる単量体は前記単量体(A1)と単量体(B2)で例示したものが挙げられる。共重合体(C)の使用量は、共重合体混合物(A)と共重合体(B)の量を勘案して適宜決定すればよいが、(A)成分の特長を主とする場合は、〔(C)/[(A)+(C)]〕×100が0超50未満(重量%)が好ましく、より好ましくは0超30未満(重量%)、より好ましくは0超20未満(重量%)である。また、共重合体混合物(A)と共重合体(C)の相互の効果を勘案して〔(A)/[(A)+(C)]〕×100が0超50未満(重量%)の比率で用いることもでき、この場合、より好ましくは0超30未満(重量%)、より好ましくは0超20未満(重量%)である。
【0051】
本発明のセメント分散剤は、その他の添加剤(材)を含有することもできる。例えば、樹脂石鹸、飽和もしくは不飽和脂肪酸、ヒドロキシステアリン酸ナトリウム、ラウリルサルフェート、アルキルベンゼンスルホン酸(塩)、アルカンスルホネート、ポリオキシアルキレンアルキル(フェニル)エーテル、ポリオキシアルキレンアルキル(フェニル)エーテル硫酸エステル(塩)、ポリオキシアルキレンアルキル(フェニル)エーテルリン酸エステル(塩)、蛋白質材料、アルケニルコハク酸、α−オレフィンスルホネート等のAE剤;遅延剤;起泡剤;増粘剤;珪砂;AE減水剤;塩化カルシウム、亜硝酸カルシウム、硝酸カルシウム、臭化カルシウム、沃化カルシウム等の可溶性カルシウム塩、塩化鉄、塩化マグネシウム等の塩化物等、硫酸塩、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸塩、チオ硫酸塩、蟻酸(塩)、アルカノールアミン等の早強剤又は促進剤;発泡剤;樹脂酸(塩)、脂肪酸エステル、油脂、シリコーン、パラフィン、アスファルト、ワックス等の防水剤;高炉スラグ;流動化剤;消泡剤;防泡剤;フライアッシュ;高性能減水剤;シリカヒューム;亜硝酸塩、燐酸塩、酸化亜鉛等の防錆剤;水溶性高分子;(メタ)アクリル酸アルキル等の高分子エマルジョンが挙げられる。
【0052】
本発明のセメント分散剤は、生コンクリート、コンクリート振動製品分野の外、セルフレベリング用、耐火物用、プラスター用、石膏スラリー用、軽量又は重量コンクリート用、AE用、補修用、プレパックド用、トレーミー用、グラウト用、寒中用等の種々のコンクリートの何れの分野においても有用である。本発明のセメント分散剤は、セメントに対して0.01〜5.0重量%(固形分として)、特に0.05〜2.0重量%の比率で使用されるのが好ましい。
【0053】
【実施例】
<共重合体混合物(A)>
表1に示す共重合体混合物を製造した。その際、単量体(A1)と(A2)のモル比(A1)/(A2)を反応途中において変化させた。
【0054】
【表1】
【0055】
(注)
表1中、MPEGMMは、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレートの略であり、( )内の数字はエチレンオキシド平均付加モル数である(以下同様)。また、MAAはメタクリル酸である(以下同様)。
【0056】
<共重合体(B)>
表2に示す共重合体を製造した。その際、単量体(B1)と(B2)の重量比は一定とした。
【0057】
【表2】
【0058】
(注)
表1中、AEは、メトキシポリエチレングリコールモノアリルエーテルの略であり、( )内の数字はエチレンオキシド平均付加モル数である。また、MAはマレイン酸である。また、B-I、B-III、B-VI、B-VIIの詳細は以下の通りである。
・B-I(スーパー200W):ポリオキシエチレン(以下POEと表記する)メトキシアリルエーテルとマレイン酸を主体とする共重合体、EO平均付加モル数31、(B2)重量比15.9(日本油脂(株)製)
・B-III(スーパー200):POEメトキシアリルエーテルとマレイン酸を主体とする共重合体、EO平均付加モル数31、(B2)重量比10.8(日本油脂(株)製)
・B-VI(AKM60F):POEメトキシアリルエーテルとマレイン酸を主体とする共重合体、EO平均付加モル数32、(B2)重量比12.7(日本油脂(株)製)
・B-VII(EKM60K):POEメトキシアリルエーテルとマレイン酸を主体とする共重合体、EO平均付加モル数27(日本油脂(株)製)。
【0059】
<共重合体(C)>
表3に示す共重合体を製造した。その際、単量体(C1)と(C2)の重量比は一定とした。表3の共重合体は、アクリル酸系の分散剤である。
【0060】
【表3】
【0061】
<コンクリート試験条件>
(1)材料
W=水道水
C=普通ポルトランドセメント(比重=3.16)
細骨材=関東君津産(比重=2.63)
粗骨材=茨城産砕骨(比重=2.62)
W/C=(Wの単位重量/Cの単位重量)×100%
s/a=〔細骨材容積/(細骨材容積+粗骨材容積)〕×100%
(2)配合
上記材料により調製したコンクリートの配合を表4に示す。
【0062】
【表4】
【0063】
(3)混練条件
コンクリート30リットル分の材料と分散剤を、強制2軸ミキサー(50リットル)に投入し、90秒間混練し、排出直後の性能(初期スランプ値)を測定する。スランプ試験はJIS-A1101に準じて実施した。
【0064】
(4)養生条件
排出後のコンクリートを圧縮試験用型枠(試験体直径10cm、試験体高さ20cm)に充填し、30分間室温に静置後、65℃×4時間の蒸気養生を行った。蒸気養生後1時間20℃に静置した後、試験体の圧縮強度を測定する。圧縮強度はJIS-A1132/A1108に準じて測定した。
【0065】
(5)試験方法
表4のコンクリート配合Aに対して表5、6、7はコンクリート温度20℃で、表4のコンクリート配合Bに対して表8はコンクリート温度20℃と10℃で実施した。分散性、保持性及び粘性を以下の方法で測定した。結果を表5〜8に示す。
(i)分散性
初期スランプ値が23±1cmになるのに要する分散剤固形分の総粉体に対する添加率。数値が小さい程、分散性が良い。
(ii)保持性
初期スランプ値に対する、30分後のスランプ値の百分率。数値が大きい程、分散保持性が良い。
(iii)粘性
スランプコーンを取り外したコンクリート塊の、初期スランプ値を測定後、コンクリート塊の底部の最大広がりL1を測定する。コンクリート塊を載せている鉄板に、スランプ試験用突き棒を、鉄板から10cmの高さより長さに沿って鉛直に落とす。これを10回繰り返した後のコンクリート塊の底部の最大広がりL2を測定する。粘性Cを、C=(L2/L1)×100(%)で算出する。Cが大きい程、粘性が低い。
【0066】
【表5】
【0067】
表中、Xは、共重合体混合物(A)の製造の際の全単量体に対する単量体(A2)の平均重量比、Yは、共重合体(B)の製造の際の全単量体に対する単量体(B2)の平均重量比、Zは共重合体(C)の製造の際の全単量体に対する単量体(C2)の平均重量比である(以下同様)。
【0068】
【表6】
【0069】
【表7】
【0070】
【表8】
【0071】
(説明)
比較例1-1は、共重合体混合物(A)単独の粘性を示すものである。比較例1-1〜1-4から、比較例1-1にアクリル酸系分散剤を配合すると、保持性は改善されるが分散性の低下又は粘性の増大を生じることがわかる。
【0072】
実施例1-1〜1-6〜3-1〜3-9から、共重合体混合物(A)に共重合体(B)を併用した場合は、分散性をあまり変えることなく保持性と粘性を改善できることがわかる。特に、実施例2-1〜2-4から、共重合体混合物(A)を複数使用すると性能の向上効果が大きいことがわかる。
【0073】
比較例4-1〜4-2から、共重合体(B)のみでは、コンクリート温度が低下して分散剤のセメントへの吸着性が低下すると、分散性が悪化し、分散保持性は経時増大し、圧縮強度が低下することがわかる。特に、比較例4-2のように、共重合体(B)とアクリル酸系分散性を併用すると、保持性及び圧縮強度の温度依存性は抑制されるが、20℃での保持性が低下し、粘性が増大する傾向にあることがわかる。
【0074】
実施例4-1から、共重合体(B)と共重合体混合物(A)を併用すると、20℃での保持性及び粘性をあまり変化させずに、分散性、保持性、圧縮強度の温度依存性を抑制できることがわかる。
Claims (6)
- 下記の一般式(a1)で表される単量体の少なくとも1種(A1)と下記の一般式(a2)で表される単量体の少なくとも1種(A2)とを共重合させて得られ、且つ反応系に添加される前記単量体(A1)と(A2)のモル比(A1)/(A2)が反応途中において少なくとも1回変化されている共重合体混合物(A)と、
下記の一般式(b1)で表される単量体の少なくとも1種(B1)と、マレイン酸又はその塩もしくは無水物(B2)とを共重合させて得られる共重合体(B)とを含有するセメント分散剤。
R1,R2:水素原子又はメチル基
m:0〜2の数
R3:水素原子又は-COO(AO)nX
p:0又は1の数
AO:炭素数2〜4のオキシアルキレン基又はオキシスチレン基
n:2〜300の数
X:水素原子又は炭素数1〜18のアルキル基
を表す。)
R4〜R6:水素原子、メチル基又は(CH2)m1COOM2であり、(CH2)m1COOM2はCOOM1又は他の(CH2)m1COOM2と無水物を形成していてもよく、その場合、それらの基のM1,M2は存在しない。
M1,M2:水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム基、アルキルアンモニウム基又は置換アルキルアンモニウム基
m1:0〜2の数
を表す。)
R7O(R8O)rR9 (b1)
(式中、
R7:炭素数2〜5のアルケニル基
R8:炭素数2〜3のアルキレン基
R9:水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基
r:2〜150の数
を表す。) - 共重合体混合物(A)を製造するための全単量体に対する単量体(A2)の平均重量比(XI)が1〜30(重量%)の範囲にある請求項1記載のセメント分散剤。
- 共重合体(B)を製造するための全単量体に対する単量体(B2)の平均重量比(YI)が1〜30(重量%)の範囲にある請求項1又は2記載のセメント分散剤。
- 共重合体(B)の共重合体混合物(A)と共重合体(B)の合計に対する重量比が0超50未満(重量%)であるか、又は共重合体混合物(A)の共重合体混合物(A)と共重合体(B)の合計に対する重量比が0超50未満(重量%)である請求項1〜3の何れか1項記載のセメント分散剤。
- 前記単量体 (A1) と (A2) のモル比 (A1) / (A2) の最大値と最小値の差が、少なくとも 0.05 である請求項1〜4の何れか1項記載のセメント分散剤。
- 反応系に同時に添加される前記単量体 (A1) と (A2) のモル比 (A1) / (A2) が反応途中において少なくとも1回変化されている請求項1〜5の何れか1項記載のセメント分散剤。
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