JP4619577B2 - セメント分散剤 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、セメント分散剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
セメント分散剤として、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステル系単量体と(メタ)アクリル酸系単量体とから製造された共重合体(以下、アクリル酸系という)が知られている。この種の共重合体においては、アルキレンオキサイド(以下AOという)の付加モル数(以下、nで表す)やモノマー比を変化させることで、特徴的な性能を付与することが可能であることが開示されている(特開昭58-74552号、特開平8-12396号等)。更に、コンクリート製品を製造する際に、フレッシュコンクリートの流動性が混練時間によってばらつきが生じたり保持性が低下したりするのを抑制し、安定した充填性を確保するために、前記アクリル酸系分散剤と芳香族スルホン酸の水溶性塩とを併用することが提案されている(特開平7-247150号、特開平8-59323号等)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、特開平8-59323号はコンクリートの蒸気養生後の強度が不十分であり、また特開平7-247150号はフレッシュコンクリートの増粘抑制と蒸気養生強度の維持は達成されるが、種々のコンクリートの製造条件に対する汎用性が低いため、例えば温度変化のある四季を通じて同一条件で使用が困難である。
【0004】
本発明の課題は、フレッシュコンクリートの増粘抑制、蒸気養生強度の維持、種々のコンクリートの製造条件に対する汎用性の向上を可能とするセメント分散剤を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、下記の一般式(a1)で表される単量体の少なくとも1種(A1)と下記の一般式(a2)で表される単量体の少なくとも1種(A2)とを共重合させて得られ、且つ前記単量体(A1)と(A2)のモル比(A1)/(A2)が反応途中において少なくとも1回変化されている共重合体混合物(A)と、芳香族スルホン酸の水溶性塩(B)とを含有するセメント分散剤に関する。
【0006】
【化3】
【0007】
(式中、
R1,R2:水素原子又はメチル基
m:0〜2の数
R3:水素原子又は-COO(AO)nX
p:0又は1の数
AO:炭素数2〜4のオキシアルキレン基又はオキシスチレン基
n:2〜300の数
X:水素原子又は炭素数1〜18のアルキル基
を表す。)
【0008】
【化4】
【0009】
(式中、
R4〜R6:水素原子、メチル基又は(CH2)m1COOM2であり、(CH2)m1COOM2はCOOM1又は他の(CH2)m1COOM2と無水物を形成していてもよく、その場合、それらの基のM1,M2は存在しない。
M1,M2:水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム基、アルキルアンモニウム基又は置換アルキルアンモニウム基
m1:0〜2の数
を表す。)
【0010】
【発明の実施の形態】
〔共重合体混合物(A)〕
共重合体混合物(A)の製造に用いられる一般式(a1)で表される単量体(A1)としては、メトキシポリエチレングリコール、メトキシポリプロピレングリコール、メトキシポリブチレングリコール、メトキシポリスチレングリコール、エトキシポリエチレンポリプロピレングリコール等の片末端アルキル封鎖ポリアルキレングリコールと(メタ)アクリル酸、マレイン酸との(ハーフ)エステル化物や、(メタ)アリルアルコールとのエーテル化物、及び(メタ)アクリル酸、マレイン酸、(メタ)アリルアルコールへのエチレンオキシド、プロピレンオキシド付加物が好ましく用いられ、R3は水素原子が好ましく、pは1が、mは0が好ましい。より好ましくはアルコキシ、特にはメトキシポリエチレングリコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化物である。
【0011】
一般式(a1)で表される単量体(A1)のAO付加モル数nは小さくなると硬化速度、分散性、粘性が低減される傾向にあり、nが大きくなるとこれらは増加する傾向にある。従って、目的とする性能に合わせてnを選べばよい。
【0012】
例えば、コンクリートの初期強度発現性を重視する場合は、80≦nであることが好ましく、より好ましくは90≦n、さらに好ましくは100≦n、最も好ましくは110≦nであることである。また、300<nでは、分散性が低下し、製造の際の重合性も低下するので、より好ましくはn≦200、さらに好ましくはn≦150、特に好ましくはn≦130である。
【0013】
コンクリートの粘性低減を重視する場合は、2≦n≦100が好ましく、より好ましくは5≦n≦80、さらに好ましくは5≦n≦50、最も好ましくは5≦n≦30である。
【0014】
初期強度発現性と粘性低減を併せ持つことが必要な場合、nの大きなものと小さなものとを共重合することが好ましく、特に単量体(A1)として、下記一般式(a1-1)で表される単量体(A1-1)及び下記一般式(a1-2)で表される単量体(A1-2)とを併用することが好ましい。
【0015】
【化5】
【0016】
(式中、
Ra1:水素原子又はメチル基
AO:炭素数2〜4のオキシアルキレン基又はオキシスチレン基、好ましくは炭素数2〜3のオキシアルキレン基
n1:12〜300の数
X1:水素原子又は炭素数1〜18のアルキル基、好ましくは水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基
を表す。)
【0017】
【化6】
【0018】
(式中、
Ra2:水素原子又はメチル基
AO:炭素数2〜4のオキシアルキレン基又はオキシスチレン基、好ましくは炭素数2〜3のオキシアルキレン基
n2:2〜290の数(ただし、一般式(a1-1)中のn1との関係は、n1>n2且つ(n1−n2)≧10、好ましくは≧30、更に好ましくは≧50である。)
X2:水素原子又は炭素数1〜18のアルキル基、好ましくは水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基
を表す。)。
【0019】
この場合、両者の平均重量比は、好ましくは(A1-1)/(A1-2)=0.1〜8、より好ましくは0.2〜2.5、特に好ましくは0.4〜2の範囲にあることである。なお、この平均重量比は、反応に用いる全単量体の重量比の平均である。
【0020】
また、単量体(A1-1)、(A1-2)と、(A2)との反応モル比[(A1-1)+(A1-2)]/(A2)は、好ましくは、変化前後の該モル比の少なくとも何れかが0.02〜4、さらに好ましくは0.05〜2.5、特に好ましくは0.1〜2の範囲にあることである。最も好ましくは、変化前後の該モル比が共に、これらの範囲にあることである。
【0021】
このような条件の下で、12≦n1≦300、2≦n2≦290、n2+10≦n1であることが好ましく、より好ましくはn2+30≦n1、さらに好ましくはn2+50≦n1であれば、両者の性能が顕著に発現する。さらに好ましくは80≦n1≦300、2≦n2<50、より好ましくは100≦n1≦300、2≦n2<30、特に好ましくは110≦n1≦300、2≦n2<10からn1、n2を選ぶことである。
【0022】
また、共重合体混合物(A)の製造に用いられる一般式(a2)で表される単量体(A2)としては、(メタ)アクリル酸、クロトン酸等のモノカルボン酸系単量体、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸等のジカルボン酸系単量体、又はこれらの無水物もしくは塩、例えばアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、水酸基が置換されていてもよいモノ、ジ、トリアルキル(炭素数2〜8)アンモニウム塩が好ましく、より好ましくは(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、更に好ましくは(メタ)アクリル酸又はこれらのアルカリ金属塩である。
【0023】
共重合体混合物(A)は、上記単量体(A1)、(A2)とを、好ましくは(A1)/(A2)=0.02〜4の範囲のモル比で反応させて得られた共重合体混合物(A)を含有するが、これらのモル比(A1)/(A2)は反応途中において少なくとも1回変化されている。そして、本発明では、共重合体混合物(A)を製造するための全単量体に対する単量体(A2)の平均重量比(XI)と異なる平均重量比(XII)により得られた共重合体混合物(A')を併用することが好ましい。すなわち、共重合体混合物(A')は、上記単量体(A1)、(A2)とを、好ましくは(A1)/(A2)=0.02〜4の範囲のモル比で反応させて得られた共重合体混合物であって、これらのモル比(A1)/(A2)は反応途中において少なくとも1回変化されており、該共重合体混合物(A')を製造するための全単量体に対する単量体(A2)の平均重量比(XII)が、共重合体混合物(A)の平均重量比(XI)とは異なるものである。平均重量比は、〔単量体(A2)の合計量/全単量体量〕×100(重量%)で表され、それぞれ1〜30(重量%)の範囲にあることが好ましい。なお、以下この平均重量比を「(A2)平均重量比」という場合もある。また、この平均重量比(XI)、(XII)は、少なくとも1.0(重量%)、更に少なくとも2.0(重量%)、特に少なくとも3.0(重量%)相違することが好ましい。なお、共重合体混合物(A)と(A')とで、製造に用いる単量体(A1)、(A2)の種類が異なっていても、本発明では平均重量比(XI)、(XII)が異なっていればよいが、単量体(A1)、(A2)として同一の種類のものを用いるのが好ましい。
【0024】
本発明では、共重合体混合物(A)の平均重量比(XI)が、1〜30重量%、更に7〜20重量%、特に8〜16重量%であることが好ましい。そして、この共重合体混合物(A)を主剤として、配合系を組み立てると、各性能のバランスのよいコンクリート減水剤を得られる。
【0025】
本発明においては、共重合体混合物(A')として、(A2)平均重量比の異なる複数の単量体混合物からそれぞれ得られた複数の共重合体を用いることができる。実用的な面から、(A2)平均重量比の異なる1〜3つの単量体混合物からそれぞれ得られた1〜3つの共重合体混合物を用いるのが好ましい。共重合体(A')として1つの共重合体混合物を用いる場合、すなわち全部で2つの共重合体混合物を使用する場合、便宜的にそれらを共重合体混合物(Ai)、(Aii)とし、これらの(A2)平均重量比をそれぞれ(Xi)、(Xii)とすると、
5≦(Xi)<8(重量%)
8≦(Xii)≦16
であることが好ましい。また、共重合体混合物(A')として2つの共重合体混合物を用いる場合、すなわち全部で3つの共重合体混合物を使用する場合、便宜的にそれらを共重合体混合物(Ai)、(Aii)、(Aiii)とし、これらの(A2)平均重量比をそれぞれ(Xi)、(Xii)、(Xiii)とすると、
5≦(Xi)<8(重量%)
8≦(Xii)≦16(重量%)
16<(Xiii)≦30(重量%)
であることが好ましい。
【0026】
(A2)平均重量比が異なる共重合体混合物が多数存在することで広い範囲のW/Cとコンクリート温度で良好な分散性と分散保持性が発現する。特に長時間にわたる分散保持性が安定になる。その結果、W/Cの変動や温度の変動にも十分対応できるセメント分散剤となる。
【0027】
上記の通り、本発明のセメント分散剤は、上記単量体(A1)、(A2)とを、好ましくは(A1)/(A2)=0.02〜4の範囲のモル比で反応させて得られた共重合体混合物(A)、好ましくは更に(A')を含有するが、何れにおいても、これらのモル比(A1)/(A2)は反応途中において少なくとも1回変化されている。該モル比の変化は、増加、減少、それらの組み合わせの何れでもよい良い。該モル比を段階的ないし断続的に変化させる場合は、変化の回数は1〜10回、特に1〜5回が好ましい。また、該モル比を連続的に変化させる場合は直線的な変化、指数関数的な変化、その他の変化の何れでもよいが、変化の度合いは1分あたり0.0001から0.2、更に0.0005から0.1、特に0.001から0.05が好ましい。また、該モル比は、変化前後のモル比(A1)/(A2)の少なくとも何れかが0.02〜4の範囲にあることが好ましく、特に変化前後のモル比(A1)/(A2)が共に0.02〜4の範囲にあることが好ましい。また、前記したようにモル比の変化は種々の態様があるが、何れの場合も、全共重合反応における該モル比(A1)/(A2)の最大値と最小値の差が、少なくとも0.05、特に0.05〜2.5の範囲にあることが好ましい。
【0028】
かかる共重合体混合物は、(A1)/(A2)モル比を少なくとも1回変化させて重合する工程を有する製造方法により得られるが、具体的には、単量体(A1)の水溶液の滴下開始と同時に、単量体(A2)の滴下を開始し、それぞれのモル比が、所定範囲となるように滴下流量(重量部/分)を変化させて所定時間滴下する方法が挙げられる。この方法では、単量体(A1)/(A2)モル比の変化量(最大値と最小値の差)は、0.05〜2.5が好ましく、より好ましくは0.1〜2である。この方法のように反応途中で一回でもモル比を変化させることで得られた共重合体混合物は、一定の(A1)/(A2)モル比で反応させて得られる共重合体より(A1)/(A2)モル比の分布が広い多数の共重合体の混合物であると推測される。
【0029】
なお、単量体の総重量の30%以上、特には50〜100%を上記のように滴下流量を変化させて製造することが好ましい。
【0030】
重合反応は溶媒の存在下で行ってもよい。溶媒としては、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等の低級アルコール;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;シクロヘキサン等の脂環式炭化水素;n−ヘキサン等の脂肪族炭化水素;酢酸エチル等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類等を挙げることができる。これらの中でも、取り扱いが容易で、単量体、重合体の溶解性の点から、水、低級アルコールが好ましい。
【0031】
共重合反応においては、重合開始剤を添加することができる。重合開始剤としては、有機過酸化物、無機過酸化物、ニトリル系化合物、アゾ系化合物、ジアゾ系化合物、スルフィン酸系化合物等を挙げることができる。重合開始剤の添加量は、単量体(A1)、単量体(A2)及び他の単量体の合計に対して0.05〜50モル%が好ましい。
【0032】
共重合反応においては、連鎖移動剤を添加することができる。連鎖移動剤としては、低級アルキルメルカプタン、低級メルカプト脂肪酸、チオグリセリン、チオリンゴ酸、2-メルカプトエタノール等を挙げることができる。共重合反応の反応温度は、0〜120℃が好ましい。
【0033】
得られたポリカルボン酸系重合体は、必要に応じて、脱臭処理をすることができる。特に連鎖移動剤としてメルカプトエタノール等のチオールを用いた場合には、不快臭が重合体中に残存しやすいため、脱臭処理をすることが望ましい。
【0034】
上記の製造方法により得られるポリカルボン酸系重合体は、酸型のままでもセメント用分散剤として適用することができるが、酸性によるエステルの加水分解を抑制する観点から、アルカリによる中和によって塩の形にすることが好ましい。このアルカリとしては、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、アンモニア、モノ、ジ、トリアルキル(炭素数2〜8)アミン、モノ、ジ、トリアルカノール(炭素数2〜8)アミン等を挙げることができる。(メタ)アクリル酸系重合体をセメント用分散剤として使用する場合は、一部又は完全中和することが好ましい。
【0035】
なお、上記の製造方法により得られるポリカルボン酸系重合体の重量平均分子量〔ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法、ポリエチレングリコール換算、カラム:G4000PWXL + G2500PWXL(東ソー(株)製)、溶離液:0.2Mリン酸緩衝液/アセトニトリル=7/3(体積比)〕は、セメント用分散剤として充分な分散性を得るため、10,000〜200,000が好ましく、20,000〜100,000が特に好ましい。
【0036】
なお、更に、アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、スチレン、(メタ)アクリル酸アルキル(水酸基を有していてもよい炭素数1〜12のもの)エステル、スチレンスルホン酸等の共重合可能な単量体を併用してもよい。これらは全単量体中50重量%以下、更に30重量%以下の比率で使用できるが、0重量%が好ましい。
【0037】
〔芳香族スルホン酸の水溶性塩(B)〕
芳香族系スルホン酸の水溶性塩(B)としては、芳香族スルホン酸系重合体の水溶性塩が好ましく、ナフタレンスルホン酸、トリアジン環を有する縮合物、ポリスチレンスルホン酸等の水溶性塩が挙げられる。中でも、トリアジン環を有する縮合物の水溶性塩及びポリスチレンスルホン酸の水溶性塩から選ばれる一種以上が好ましい。本発明の効果からは、トリアジン環を有する縮合物が、更に特にはメラミンスルホン酸ホルマリン縮合物の水溶性塩が好ましい。
【0038】
メラミンスルホン酸ホルマリン縮合物の水溶性塩は、メラミンにホルムアルデヒドを反応させて得られたN-メチロール化メラミンに重亜硫酸塩を反応させてメチロール基の一部をスルホメチル化し、次いで酸を加えてメチロール基を脱水縮合させてホルマリン縮合物とし、アルカリで中和して得られる公知の分散剤である(例えば特公昭63−37058号公報参照)。アルカリとしては、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、アンモニア、モノ、ジ、トリアルキル(炭素数2〜8)アミン、モノ、ジ、トリアルカノール(炭素数2〜8)アミン等を挙げることができる。市販品として、マイティ150V-2(花王(株)製)、SMF-PG(日産化学工業(株))、メルフロー(三井化学(株))、メルメントF-10(昭和電工(株)製)等がある。ポリスチレンスルホン酸塩は、ポリスチレンのスルホン化物やスチレンスルホン酸を重合すること等により製造され、市販品としてグラリオンS-8(ライオン(株)製)が挙げられる。芳香族系スルホン酸の水溶性塩(B)の分子量は、1000〜10万、更に5000〜5万、特に5000〜2万が好ましい(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法、ポリスチレンスルホン酸換算)。
【0039】
〔セメント分散剤〕
本発明のセメント分散剤は、上記共重合体混合物(A)〔以下(A)成分という〕と芳香族スルホン酸の水溶性塩(B)〔以下(B)成分という〕とを任意の比率で併用でき、要求特性によっていずれを主剤とするかを決めればよいが、両者の重量比は、(A)/(B)=100/1〜100/100が好ましく、100/5〜100/50がより好ましく、100/5〜100/30がより好ましい。一般に、(A)成分は、コンクリートの多様な製造条件に対して汎用性は高いが、上記の比率で更に(B)成分を併用することで、混練初期のコンクリートの流動性がより安定となる。
【0040】
(A)成分と(B)成分は、コンクリートに対し、予め両者を混合してから添加しても、別々に添加してもよく、先に混練水で稀釈してから添加してもよい。
【0041】
本発明のセメント分散剤には、前記(A)成分で示した単量体(A1)と単量体(A2)とをモル比を変化させずに共重合して得られた共重合体(C-1)を併用することができる。共重合体(C-1)の製造に用いる単量体は前記単量体(A1)と単量体(A2)で例示したものが挙げられる。共重合体(C-1)は一般式(a1)中のnにより、性能が異なるため、(A)成分と(B)成分の種類や配合量を考慮して、要求特性に適当なnを選定する。具体的には、
(1)一般式(a1)中のnが1以上50未満の単量体を用いた共重合体(C-1-i)
(2)一般式(a1)中のnが50以上110未満の単量体を用いた共重合体(C-1-ii)
(3)一般式(a1)中のnが110以上300以下の単量体を用いた共重合体(C-1-iii)
が挙げられ、それぞれの性能や用途を考慮して(A)成分と(B)成分と併用すればよい。
【0042】
また、本発明のセメント分散剤には、下記の一般式(c1)で表される単量体の少なくとも1種(C')と、マレイン酸又はその塩もしくは無水物(C'')とを共重合させて得られる共重合体(C-2)を併用してもよい。共重合体(C-2)の重量平均分子量は、300〜300,000が好ましく、5000〜100,000がより好ましい。この分子量は共重合体混合物(A)と同様に測定される。共重合体(C-2)は、マリアリムEKM、マリアリムAKM(共に日本油脂社)、スーパー200(電気化学社)の商品名で市販されているものを使用することもできる。
Rc1O(Rc2O)rRc3 (c1)
(式中、
Rc1:炭素数2〜5のアルケニル基、好ましくはビニル基、アリル基、メタリル基、より好ましくはアリル基
Rc2:炭素数2〜3、好ましくは2のアルキレン基
Rc3:水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基、好ましくはメチル基
r:2〜150、好ましくは2〜90、より好ましくは10〜60、更に好ましくは20〜50の数
を表す。)。
【0043】
これら共重合体(C-1)、(C-2)(以下、共重合体(C)という)の使用量は、(A)成分と(B)成分の量を勘案して適宜決定すればよいが、(A)成分の特長を主とする場合は、〔(C)/[(A)+(C)]〕×100が0超50未満(重量%)が好ましく、より好ましくは0超30未満(重量%)、より好ましくは0超20未満(重量%)である。
【0044】
本発明のセメント分散剤は、その他の添加剤(材)を含有することもできる。例えば、樹脂石鹸、飽和もしくは不飽和脂肪酸、ヒドロキシステアリン酸ナトリウム、ラウリルサルフェート、アルキルベンゼンスルホン酸(塩)、アルカンスルホネート、ポリオキシアルキレンアルキル(フェニル)エーテル、ポリオキシアルキレンアルキル(フェニル)エーテル硫酸エステル(塩)、ポリオキシアルキレンアルキル(フェニル)エーテルリン酸エステル(塩)、蛋白質材料、アルケニルコハク酸、α−オレフィンスルホネート等のAE剤;遅延剤;起泡剤;増粘剤;珪砂;AE減水剤;塩化カルシウム、亜硝酸カルシウム、硝酸カルシウム、臭化カルシウム、沃化カルシウム等の可溶性カルシウム塩、塩化鉄、塩化マグネシウム等の塩化物等、硫酸塩、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸塩、チオ硫酸塩、蟻酸(塩)、アルカノールアミン等の早強剤又は促進剤;発泡剤;樹脂酸(塩)、脂肪酸エステル、油脂、シリコーン、パラフィン、アスファルト、ワックス等の防水剤;高炉スラグ;流動化剤;消泡剤;防泡剤;フライアッシュ;高性能減水剤;シリカヒューム;亜硝酸塩、燐酸塩、酸化亜鉛等の防錆剤;水溶性高分子;(メタ)アクリル酸アルキル等の高分子エマルジョンが挙げられる。
【0045】
本発明のセメント分散剤は、生コンクリート、コンクリート振動製品分野の外、セルフレベリング用、耐火物用、プラスター用、石膏スラリー用、軽量又は重量コンクリート用、AE用、補修用、プレパックド用、トレーミー用、グラウト用、寒中用等の種々のコンクリートの何れの分野においても有用である。本発明のセメント分散剤は、セメントに対して0.01〜5.0重量%(固形分として)、特に0.05〜2.0重量%の比率で使用されるのが好ましい。
【0046】
【実施例】
<共重合体混合物(A)>
(1)
表1に示す共重合体混合物を製造した。その際、単量体(A1)と(A2)のモル比(A1)/(A2)を反応途中において変化させた。
【0047】
【表1】
【0048】
(注)
表1中、MPEGMMは、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレートの略であり、( )内の数字はエチレンオキシド平均付加モル数である(以下同様)。また、MAAはメタクリル酸である(以下同様)。
【0049】
(2)
また、以下の製造例に準じて、中和された共重合体混合物を製造した。
【0050】
<製造例1:共重合体混合物A-I-Naの製造>
温度計、撹拌機、滴下ロート、窒素導入管、及び還流冷却器を備えたガラス製反応容器に水423重量部を仕込み窒素置換を行った。続いて窒素雰囲気下で70℃まで昇温した後、MPEGMM(9)を44.9重量部、メタクリル酸18.2重量部を混合した滴下用単量体液(1)と5%−2−メルカプトエタノール酸水溶液14.2重量部と5%過硫酸アンモニウム水溶液13.8重量部の3液を同時に15分間で滴下し、次いで、MPEGMM(9)を250.5重量部、メタクリル酸65.2重量部を混合した滴下用単量体液(2)と5%−2−メルカプトエタノール酸水溶液59.2重量部と5%過硫酸アンモニウム水溶液57.6重量部の3液を75分間で滴下し合計90分間で滴下を終了させた。滴下終了後、同温で1時間熟成し5%過硫酸アンモニウム水溶液21.4重量部を10分かけて滴下した後、70℃で2時間熟成させ重合反応を完結させた。さらに、48%水酸化ナトリウム水溶液57重量部を加えて中和し、表2に示す共重合体混合物A-I-Naを得た。この共重合体混合物A-I-Naの5重量%水溶液のpHは6.0(20℃)であった。
【0051】
なお、表2の共重合体混合物のうち、(A1)/(A2)のモル比を1回変化させたものは、この製造例1に準じて製造した。
【0052】
<製造例2:共重合体混合物A-VI-Naの製造>
ガラス製反応容器に水329.9重量部を仕込み、窒素置換後、窒素雰囲気下で78℃まで昇温した。次に、MPEGMM(120)の60%水溶液216.4重量部、MPEGMM(9)の90%水溶液75.5重量部、メタクリル酸38.3重量部の混合液と5%過硫酸アンモニウム水溶液27.7重量部と5%−2−メルカプトエタノール水溶液30.8重量部とを55分で滴下し、MPEGMM(120)の60%水溶液78.7重量部、MPEGMM(9)の90%水溶液32.1重量部、メタクリル酸9.7重量部の混合液と5%過硫酸アンモニウム水溶液8.2重量部と5%−2−メルカプトエタノール水溶液9.2重量部とを20分で滴下し、更にMPEGMM(120)の60%水溶液59.0重量部、MPEGMM(9)の90%水溶液26.0重量部、メタクリル酸5.6重量部の混合液と5%過硫酸アンモニウム水溶液5.4重量部と5%−2−メルカプトエタノール水溶液6.0重量部とを15分で滴下した。滴下時間ごとのモル比(A1)/(A2)を表2に示す。滴下終了後、60分間78℃で熟成させた後、5%過硫酸アンモニウム水溶液20.7重量部を5分で添加した。更に120分間78℃で熟成し、48%水酸化ナトリウム水溶液20.8重量部を加えて、表2に示す共重合体混合物A-VI-Naを得た。この共重合体混合物A-VI-Naの5重量%水溶液のpH(20℃)は5.9であった。
【0053】
【表2】
【0054】
(注)
表2中、「-Na」はナトリウム塩であることを意味する。
【0055】
<(B)成分>
表3に示す(B)成分を使用した。
【0056】
【表3】
【0057】
<共重合体(C)>
表4に示す共重合体を製造した。その際、単量体(C1)と(C2)の重量比は一定とした。
【0058】
【表4】
【0059】
(注)
表4中、AEはポリエチレングリコール(n=115)モノアリルエーテルの略であり、MAはマレイン酸である。
【0060】
<コンクリート試験条件>
(1)材料
W=水道水
C=普通ポルトランドセメント(比重=3.16)
LC=石灰石微粉末(比重=2.70、ブレーン値=5200)
細骨材=関東君津産(比重=2.63)
粗骨材=茨城産砕骨(比重=2.62)
W/C=(Wの単位重量/Cの単位重量)×100%
s/a=〔細骨材容積/(細骨材容積+粗骨材容積)〕×100%
(2)配合
上記材料により調製したコンクリートの配合を表5に示す。
【0061】
【表5】
【0062】
(3)性能評価
コンクリート30リットル分の材料と分散剤を、強制2軸ミキサー(50リットル)に投入し、90秒間混練し、排出直後の以下の性能を評価した。なお、いずれの試験も室温20℃(コンクリート温度20℃)で実施したが、実施例4-1、8-1と比較例4-1はコンクリート温度20℃と10℃で実施した。結果を表6〜13に示す。表6、7、8、10、11、12は表5のコンクリート配合Aに対して、表9、13は表5のコンクリート配合Bに対して実施した結果である。
【0063】
(3−1)分散性
<配合A>
初期スランプ値(JIS-A1101)が23±1cmになるのに要する分散剤固形分の総粉体に対する添加率を測定する。数値が小さい程、分散性が良い。
【0064】
<配合B>
スランプフロー値650±25mm〔高流動コンクリート施工指針(コンクリートライブラリー93)〕となるのに要する分散剤固形分の総粉体に対する添加率を測定する。数値が小さい程、分散性が良い。
【0065】
(3−2)保持性
初期スランプ値に対する、30分後のスランプ値の百分率。数値が大きい程、分散保持性が良い。
【0066】
(3−3)粘性
<配合A>
スランプコーンを取り外したコンクリート塊の、初期スランプ値を測定後、コンクリート塊の底部の最大広がりL1を測定する。コンクリート塊を載せている鉄板に、スランプ試験用突き棒を、鉄板から10cmの高さより長さに沿って鉛直に落とす。これを10回繰り返した後のコンクリート塊の底部の最大広がりL2を測定する。粘性Cを、C=(L2/L1)×100(%)で算出する。Cが大きい程、粘性が低い。
【0067】
<配合B>
スランプフロー値650±25mm〔高流動コンクリート施工指針(コンクリートライブラリー93)〕のコンクリートから目開き5mmの篩で粗骨材を分離して得たモルタルを、ステンレス鋼(SUS304)を加工して作製した図1の形状の装置に、下部排出開口を閉じた状態で充填し上部投入開口の面で擦り切った後、下部排出開口を開放してモルタルを自然流下させ、上部投入開口から目視で観察したときにモルタルの少なくとも一部に孔が確認されるまでの時間(流下時間)を測定し、これを粘性の評価に用いた。流下時間が短いほどコンクリートの粘性が低い。
【0068】
(3−4)蒸気養生強度
排出後のコンクリートを圧縮試験用型枠(試験体直径10cm、試験体高さ20cm)に充填し、30分間室温に静置後、65℃×4時間の蒸気養生を行った。蒸気養生後1時間20℃に静置した後、試験体の圧縮強度をJIS-A1132/A1108に準じて測定した。
【0069】
【表6】
【0070】
表中、Xは、共重合体混合物(A)の製造の際の全単量体に対する単量体(A2)の平均重量比、Yは、共重合体(C)の製造の際の全単量体に対する単量体(C2)の平均重量比である(以下同様)。
【0071】
【表7】
【0072】
【表8】
【0073】
【表9】
【0074】
比較例1-1〜1-3から、共重合体(C)に(B)成分を併用しても、粘性、保持性、蒸気養生強度の全てを満足するには十分でないことがわかる。一方、実施例1-1〜1-2から、共重合体混合物(A)に(B)成分を併用した場合は、粘性、保持性、蒸気養生強度の何れも良好となることがわかる。
【0075】
実施例2-1〜2-4から、共重合体混合物(A)を複数使用すると、各性能の向上効果が大きいことがわかる。また、実施例3-1〜3-5から、共重合体混合物(A)を複数使用する、あるいは共重合体(C)を適切に併用することにより、保持性、粘性、蒸気養生強度のそれぞれを、他の性能を損なうことなく、高い水準に向上できることがわかる。
【0076】
比較例4-1から、共重合体(C)に(B)成分を併用しても、コンクリート温度が低下すると分散性が低下し、保持性が過度に増大し、粘性も増大することがわかる。一方、実施例4-1から、共重合体混合物(A)と(B)成分を併用すると、コンクリート温度が低下しても、分散性、保持性、粘性の変動が抑制されることがわかる。
【0077】
【表10】
【0078】
【表11】
【0079】
【表12】
【0080】
【表13】
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例で流下時間の測定に用いた装置を示す概略図
【符号の説明】
1…上部投入開口
2…下部排出開口
Claims (5)
- 下記の一般式(a1)で表される単量体の少なくとも1種(A1)と下記の一般式(a2)で表される単量体の少なくとも1種(A2)とを共重合させて得られ、且つ反応系に添加される前記単量体(A1)と単量体(A2)のモル比(A1)/(A2)が反応途中において少なくとも1回変化されており、モル比(A1)/(A2)の最大値と最小値の差が少なくとも0.05である共重合体混合物(A)と、芳香族スルホン酸系重合体の水溶性塩(B)とを含有するセメント分散剤。
R1,R2:水素原子又はメチル基
m:0〜2の数
R3:水素原子又は-COO(AO)nX
p:0又は1の数
AO:炭素数2〜4のオキシアルキレン基又はオキシスチレン基
n:2〜300の数
X:水素原子又は炭素数1〜18のアルキル基
を表す。)
R4〜R6:水素原子、メチル基又は(CH2)m1COOM2であり、(CH2)m1COOM2はCOOM1又は他の(CH2)m1COOM2と無水物を形成していてもよく、その場合、それらの基のM1,M2は存在しない。
M1,M2:水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム基、アルキルアンモニウム基又は置換アルキルアンモニウム基
m1:0〜2の数
を表す。) - 共重合体混合物(A)を製造するための全単量体に対する単量体(A2)の平均重量比(XI)が1〜30(重量%)の範囲にある請求項1記載のセメント分散剤。
- 芳香族スルホン酸系重合体の水溶性塩(B)が、トリアジン環を有する縮合物の水溶性塩及びポリスチレンスルホン酸の水溶性塩から選ばれる一種以上である請求項1又は2記載のセメント分散剤。
- トリアジン環を有する縮合物が、メラミンスルホン酸ホルマリン縮合物である請求項3記載のセメント分散剤。
- 共重合体混合物(A)と芳香族スルホン酸系重合体の水溶性塩(B)の重量比が、(A)/(B)=100/1〜100/100である請求項1〜4の何れか1項記載のセメント分散剤。
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