JP3782533B2 - モータの固定子およびモータフレーム - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
複数個のティースを備えた固定子コアと、この固定子コアの各ティースに巻回された巻線とで構成したモータの固定子に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来における固定子およびモータフレームの従来例を図11〜図15を用いて説明する。図11は、従来におけるフープ材の平面図である。図12は、巻線方法を説明した固定子コアの正面図である。図13は、巻線が巻回された固定子コアの折り曲げ方法を説明した図である。図14は、従来における固定子の正面図である。図15は、従来における固定子コアの軸中心部よりバックヨークを見た際の部分拡大図である。
【0003】
図11において、抜き板31は、鋼板製のフープ材32を打ち抜いて形成されている。また、抜き板31は、帯状に形成されたバックヨーク33と、このバックヨーク33の長辺部側より垂直に延出された複数個のティース34とで構成されている。また、バックヨーク33の長辺部33a側にあって、ティースとこのティースに隣接するティースの間に任意の場所には、切り込み部35が設けられている。
【0004】
抜き板31を前述したような形状にすることにより、抜き板31を打ち抜いた後のフープ材32の廃材の量を抑えることができる。つまり、ティースとティースの間の空間であるスロット36に、もう一つの抜き板31のティース34が配設されるように、この抜き板31をはめ合わせて打ち抜くことにより、従来廃棄していたスロット36のフープ材32を有効に活用することができる。
【0005】
図12において、固定子コア37は、フープ材32を打ち抜いて形成された抜き板31を積層して形成されている。
【0006】
そして、巻線38が通されたノズル39を、固定子コア37のティース本体34のまわりに周回させることにより、巻線38は、ティース34に巻回される。
【0007】
また、固定子コア37と巻線38との間には、電気的絶縁を施すために、絶縁材40が設けられている。
【0008】
図13において、バックヨーク33に設けられた切り込み部35を支点にして、ティース34が、軸中心方向に向くようにバックヨーク33を折り曲げていく。そして、バックヨーク33を輪状に形成して、バックヨーク33の両端を接着剤または溶接などにより固着する。また、V字状の切り込み部35の切り込み角度は、バックヨーク33が輪状に形成された時に切り込み部35の対向する斜面35a、35bが互いに接触できる角度にする。
【0009】
図14において、前述したようにバックヨーク33を折り曲げて、輪状に形成する。そして、バックヨーク33の両端を接着剤または溶接などで固着する。これにより、インナーロータタイプの固定子41を形成する。そして、各々のティース34に巻回されている巻線38が接触する恐れがあるならば、巻線38間に絶縁材42を挿入する。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
以上の従来例のように、同一形状の抜き板31を積層すると、図15で示すように、切り込み部35の接触部が同一直線状に配列される。
【0011】
また、例えば、抜き板31を折り曲げた後、切り込み部に隙間が発生すると、バックヨーク内の磁路の途中に空間ができ、従来の構造では、この空間を通る必要があるため、この空間分の磁気抵抗が大きくなってしまう。
【0012】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明によれば、 帯状に形成したバックヨークと、このバックヨークの片方の長辺部側から垂直に延出した複数個のティースと、これらティースが延出したバックヨークの長辺部側で、ティースとこのティースに隣接したティースとの間の任意の場所に形成したV字状の切り込み部とを有する第一の抜き板と、
帯状に形成したバックヨークと、このバックヨークの片方の長辺部側から垂直に延出した複数個のティースと、これらティースが延出したバックヨークの長辺部側にあって、ティースとこのティースに隣接したティースの間の任意の場所にあって、前記第一の抜き板と異なる場所に設けられたV字状の切り込み部とを有する第二の抜き板とを備え、
かつ、前記第一の抜き板と前記第二の抜き板のV字状切り込み部の支点部が両側のティースの中間点にあり、前記第一の抜き板と前記第二の抜き板とのV字の向く角度が異なっており、
前記第一の抜き板と前記第二の抜き板とを、各々のバックヨークに設けられたV字状の切り込み部を支点にして、ティースが軸中心方向に向く方向に、各々のバックヨークを折り曲げて輪状にして、第一のコア板と第二のコア板を形成し、
これら第一のコア板と第二のコア板を1枚毎に、あるいは任意の枚数毎に交互に積層して固定子コアを形成し、
この固定子コアのティースに巻線を巻回すことにより磁気抵抗を小さくしたことを特徴とするモータの固定子を提供する。
【0013】
そして、このモータの固定子を樹脂またはプリミックスにより、モールド成形して前記固 定子の外周を覆ったことを特徴とするモータフレームを提供する。
【0014】
【作用】
V字状の切り込み部を有する第一の抜き板と、この第一の抜き板の切り込み部の開口部の場所が異なる第二の抜き板とを、任意の枚数後毎に交互に積層して固定子コアを形成し、この固定子コアに巻線を巻回して、切り込み部を支点にバックヨークを折り曲げて輪状にし、モータの固定子を形成する。
【0015】
そして、この固定子を樹脂またはプリミックスでモールド成形して、モータフレームを形成する。
【0016】
【実施例】
本発明におけるモータの固定子およびモータフレームの実施例を図1〜図10を用いて説明する。図1は、本発明における第一の固定子コアの正面図である。図2は、本発明における第二の固定子コアの正面図である。図3は、固定子コアに巻線を巻回す方法を示した図である。図4は、固定子コアの切り欠け部の部分拡大図である。図5は、図4における断面A−A部の拡大側断面図である。図6は、巻線が巻回された固定子コアの折り曲げ方法を示した図である。図7は、本発明における固定子の正面図である。図8は、図7における固定子の切り欠け部の拡大図である。図9は、軸中心部からバックヨークの側面を見た拡大図である。図10は、本発明におけるモールドフレームを用いたモールドモータの部分側断面図である。
【0017】
図1において、第一の抜き板1は、従来例における抜き板と同様に帯状に形成されたバックヨーク2と、このバックヨーク2の長辺部2a側より垂直に延出された複数個のティース3とで構成されている。また、バックヨーク2の一方の長辺部2a側にあって、任意のティースとこのティースに隣接するティースの間、スロット4の任意の場所にV字状の切り込み部5が設けられている。このV字状の切り込み部5の切り込み角度Rは、スロット4の数により決定される。例えば、12スロットの固定子を形成するならば、切り込み角度Rは、30゜の角度を基準にして決定される。すなわち、この切り込み角度Rは、後述するように、抜き板を折り曲げ、輪状にした後に、切り込み部5の対向する斜面5a、5bが接触する角度である。
【0018】
また、V字状の切り込み部5の対向する斜面5a、5bが重なる底部には、逃げ溝5cが設けられている。すなわち、バックヨークを折り曲げた後、V字状の切り込み部の対向する斜面5a、5bが重なる底部は、折り曲げにより、底部周辺の鋼板が盛り上がって突起となる可能性がある。つまり、バックヨークを折り曲げている際に、この突起により、積層されている抜き板と抜き板の間に隙間が発生する可能性がある。そこで、バックヨークを折り曲げる際に発生する突起を逃げ溝を用いて、抜き板間の隙間の発生を防止する。
【0019】
図2において、第二の抜き板6は、第一の抜き板1と同様に、バックヨーク7とティース8とで構成されている。また、第一の抜き板1と同様に、バックヨーク7の一方の長辺部7a側にあって、スロット9の任意の場所に、V字状の切り込み部10が設けられている。この切り込み部10は、第一の抜き板の切り込み部5と同様に、対向する斜面10a、10bと斜面5a、5bが重なる底部に設けられている逃げ溝10cとで形成されている。切り込み部8の開口部が設けられている場所は、第一の抜き板1に設けられている切り込み部5の開口部が設けられている場所とは異なる場所に設けられおり、また、切り込み部5と切り込み部8のそれぞれの底部(あるいはそれぞれの逃げ溝5c、10c)は同じ場所に設けられている。
【0020】
図3において、固定子コア11は、第一の抜き板1と第二の抜き板6とを一枚毎に、あるいは任意の枚数毎に、交互に積層して形成されている。この固定子コアの巻線12が巻回される場所、例えば、積層されたティース13、およびバックヨーク14に絶縁材15が設けられている。そして、この絶縁材15を介して巻線12を積層されたティース13に巻回されている。
【0021】
巻線12を巻回す方法として、ノズル16を使用し、このノズル16の内部に巻線12を通し、ノズル16内を通った巻線12の先端を任意の場所に固定し、ノズル16の先端部をティース13の回りを周回させて、巻線12をティース13に巻回されている。
【0022】
図4および図5において、第一のコア板1と第二のコア板6とを交互に積層していくと、それぞれの切り込み部5、10は、櫛状に形成され、これら櫛状の切り込み部が、互いに噛み合って固定子コア11が形成されている。
【0023】
図6、図7において、第一のコア板1および第二のコア板6の各々の切り込み部5、10を支点にして、ティース13が、軸中心方向に向くようにバックヨーク14を折り曲げて、輪状に形成する。そして、バックヨーク14の両端14aを接着剤、または溶接にて固着し、固定子17を形成する。
【0024】
図8、図9において、固定子17を形成する際に、切り込み部5、10の対向する各々の斜面5a、5b、10a、10bが接触せずに隙間が生じた場合、あるいは、設計上である程度の隙間18が生じるように設計した場合、この隙間18が生じた抜き板に流れる磁気は、この抜き板の上下に積層されている抜き板に迂回して磁路を形成して流れることができる。
【0025】
また、設計上である程度の隙間18が生じるようにすれば、V字状の切り込み部の切り込み角度Rに隙間分の角度を足し合わせることができ、余裕を持って切り込み部の切り込み角度Rの寸法公差を決定することができる。
【0026】
図10において、モータ19は、前述した固定子17をプリミックス20(または樹脂)でモールド成形したモータフレーム21と、このモータフレーム21内に収納されている回転子22と、この回転子22を支持し、回転子22を回転自在にさせる軸受23と、この軸受23を収納、固定するベアリングブラッケット24で構成されている。
【0027】
また、固定子17の内周部を基準にして、つまり、ティース13の先端部を基準にして、固定子17を形成すると、外周部の寸法精度が悪くなってしまう。すなわち、以上のように形成された固定子17を従来からある鋼板製のモータフレームに挿入してモータの組み立てを行おうとしても、固定子17の外周部の寸法精度が悪いため、固定子17の外周部を基準にして、モータの組み立てを行うことが困難となる。つまり、モータフレームに取り付けられる軸受などの取り付け精度が悪くなってしまう。
【0028】
そこで、樹脂またはプリミックスで固定子をモールド成形して、モータフレームを形成する。つまり、固定子の内周部を基準にして、容易にモータフレームを構成することができるため、モータ組み立て時において、組み立て精度の高いモータフレームを構成することができる。
【0029】
本実施例において、第一の抜き板と第二の抜き板の2種類の抜き板を使用して説明をおこなったが、3種類以上の抜き板を使用しても良いし、また、1種類の抜き板を使用し、この抜き板の表裏を逆にすることにより、切り込み部の開口部の場所を異なる場所に配置して、積層してもよい。
【0030】
【発明の効果】
本発明によれば、切り込み部に隙間が生じても、この隙間を迂回して、磁気抵抗が増加しない新たな磁路を形成することができる。
【0031】
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明における第一の固定子コアの正面図。
【図2】 本発明における第二の固定子コアの正面図。
【図3】 固定子コアに巻線を巻回す方法を示した図。
【図4】 固定子コアの切り欠け部の部分拡大図。
【図5】 図4における断面A−A部の拡大側断面図。
【図6】 巻線が巻回された固定子コアの折り曲げ方法を示した図。
【図7】 本発明における固定子の正面図。
【図8】 図7における固定子の切り欠け部の拡大図。
【図9】 軸中心部からバックヨークの側面を見た拡大図。
【図10】 本発明におけるモールドフレームを用いたモールドモータの部分側断面図。
【図11】 従来におけるフープ材の平面図。
【図12】 巻線方法を説明した固定子コアの正面図。
【図13】 巻線が巻回された固定子コアの折り曲げ方法を説明した図。
【図14】 従来における固定子の正面図。
【図15】 従来における固定子コアの軸中心部よりバックヨークを見た際の部分拡大図。
【符号の説明】
1…第一の抜き板
2、7、14、33…バックヨーク
3、8、13、34…ティース
4、9、36…スロット
5、10、35…切り込み部
6…第二の抜き板
11…固定子コア
12、38…巻線
15、40、42…絶縁材
16、39…ノズル
17、41…固定子
18…隙間
19…モータ
20…プリミックス
21…モータフレーム
22…回転子
23…軸受
24…ベアリングブラッケット
31…抜き板
32…フープ材
37…固定子コア

Claims (2)

  1. 帯状に形成したバックヨークと、このバックヨークの片方の長辺部側から垂直に延出した複数個のティースと、これらティースが延出したバックヨークの長辺部側で、ティースとこのティースに隣接したティースとの間の任意の場所に形成したV字状の切り込み部とを有する第一の抜き板と、
    帯状に形成したバックヨークと、このバックヨークの片方の長辺部側から垂直に延出した複数個のティースと、これらティースが延出したバックヨークの長辺部側にあって、ティースとこのティースに隣接したティースの間の任意の場所にあって、前記第一の抜き板と異なる場所に設けられたV字状の切り込み部とを有する第二の抜き板とを備え、
    かつ、前記第一の抜き板と前記第二の抜き板のV字状切り込み部の支点部が両側のティースの中間点にあり、前記第一の抜き板と前記第二の抜き板とのV字の向く角度が異なっており、
    前記第一の抜き板と前記第二の抜き板とを、各々のバックヨークに設けられたV字状の切り込み部を支点にして、ティースが軸中心方向に向く方向に、各々のバックヨークを折り曲げて輪状にして、第一のコア板と第二のコア板を形成し、
    これら第一のコア板と第二のコア板を1枚毎に、あるいは任意の枚数毎に交互に積層して固定子コアを形成し、
    この固定子コアのティースに巻線を巻回すことにより磁気抵抗を小さくしたことを特徴とするモータの固定子。
  2. 請求項1記載のモータの固定子を樹脂またはプリミックスにより、モールド成形して前記固定子の外周を覆ったことを特徴とするモータフレーム。
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