JP3779097B2 - 電動機の回転子 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、複数個の永久磁石を外周部に備えたインナーロータ型電動機の回転子に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、インナーロータ型の各種電動機においては、外周側に配置された固定電機子の内部側空間に、複数個の永久磁石を外周部に備えた回転子(ロータ)が回転自在に支持されている。このような回転子では、例えば図8に示されているように、略円筒状の積層体からなる回転子コア1の外周部に、複数の永久磁石2が軸方向に挿入するように装着され、それらの各永久磁石2の端面が、上記回転子コア1の外周面から突出するように設けられた磁石支持部3に受けられることより機械的な保持が行われている。
【0003】
より具体的には、上記回転子コア1の全体は、複数枚の磁性コア板の積層体から構成されているが、それらの各磁性コア板には、上述した磁石支持部3を構成している部分の形状によって二種類のものが用いられている。その一つは、磁石支持部3に相当する部分が略矩形状をなす周方向支持部3aを備えたものであり、他の一つは、磁石支持部3に相当する部分が略T字形状をなす半径方向支持部3bを備えたものである。そして、上記周方向支持部3aを有する磁性コア板積層体を、軸方向両端側から挟むようにして、半径方向支持部3bを有する磁性コア板積層体が配置されていて、永久磁石2の周方向端面2aは、上記周方向支持部3aを有する磁性コア板積層体に受けられて周方向に支持され、永久磁石2の外周面2bは、上記半径方向支持部3bを有する磁性コア板積層体に受けられて半径方向に支持されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、このような従来の回転子では、特に、外方に向かって略T字形状にて突出する半径方向支持部3bの積層体が、磁性体から構成されていることから、その磁性体からなる半径方向支持部3bの積層体に回転磁界の磁束が集磁される状態がしばしば発生し、その結果、回転磁界が乱されて、コギングトルクが大きくなる等の問題を生じている。
【0005】
なお、図8に示されている従来例では、上述したように磁界を乱す半径方向支持部3bを出来るだけ少なくするように、軸方向両端部分の二カ所に分割して配置してはいるが、磁界への影響は依然として残存している。
【0006】
加えて、従来の回転子コアには、永久磁石2の周方向端面2a及び外周面2bを保持する周方向支持部3a及び半径方向支持部3bが設けられているのみであって、永久磁石2の軸方向端面を保持する部材が設けられていないので、永久磁石2を軸方向に支持する係止部材を別途必要としており、その分、部品点数が多くなっている上に、永久磁石2の支持構造の信頼性に欠ける傾向もある。
【0007】
そこで本発明は、簡易な構成で、回転特性を向上させつつ、永久磁石の支持を良好に行わせることができるようにした電動機の回転子を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために本願請求項1記載の発明では、軸部材に固定された複数枚の磁性コア板の積層体からなる略円筒状の回転子コアと、その回転子コアの外周側に周方向に並ぶように固定された複数個の永久磁石とを有する電動機の回転子において、上記回転子コアの円筒状外周面には、前記各永久磁石の周方向端面を受けるように半径方向外方側に突出する周方向支持部が、軸方向に沿って延在するように設けられているとともに、上記回転子コアの少なくとも軸方向一端面には、非磁性材からなる端板が配設され、上記端板の外周縁には、前記各永久磁石の各々に対応した位置から半径方向外方および軸方向に向かって略L字状に突出する係止部が、前記回転子コアの周方向支持部と周方向のほぼ同一位置において対面するように設けられ、該係止部には、前記端板の外周縁から半径方向外方に向かって一体的に突出して前記回転子コアの周方向支持部よりも大きな周方向幅を備えていることにより前記各永久磁石の周方向に隣接する一対の軸方向端面を跨るように受ける軸方向支持部と、この軸方向支持部の外端側から軸方向に折れ曲がるように延出して前記各永久磁石の外周面を受ける半径方向支持部とが設けられ、前記回転子コアの周方向支持部と、上記端板の軸方向支持部及び半径方向支持部とによって、前記各永久磁石を、周方向、軸方向及び半径方向の三方向に支持する構成になされている。
【0011】
さらにまた、請求項2記載の発明では、前記請求項1記載の回転子コアに設けられた周方向支持部は、軸方向に直交する方向の横断面形状が、略矩形状に形成されている。
【0012】
さらにまた、請求項3記載の発明では、前記請求項1記載の端板と、回転子コアと、各永久磁石との間の隙間には、接着剤が充填されている。
【0013】
さらにまた、請求項4記載の発明では、前記請求項1記載の端板及び各永久磁石の外周側に、接着テープが巻回して固定されている。
【0014】
さらにまた、請求項5記載の発明では、前記請求項4記載の接着テープが、樹脂テープからなる。
【0015】
さらにまた、請求項6記載の発明では、前記請求項1記載の回転子コアの軸方向一端部に配設された端板の半径方向支持部が、上記回転子コアの軸方向中央部から他端部の範囲まで延設されている。
【0016】
このような構成を有する本発明によれば、永久磁石を支持するように半径方向外方に突出する部分が、非磁性材からなる端板の係止部により構成されていることから、回転磁界への影響が大幅に低減される。
また、上記非磁性材からなる端板の係止部は、従来では支持されていなかった軸方向に関しても永久磁石を支持する構成になされていることから、別部品を用いることなく永久磁石の支持性が向上されるようになっている。
【0017】
また、本発明のように、端板と回転子コアと各永久磁石とを、接着剤や接着テープで結合させる構成を採用すれば、永久磁石の支持性がより一層向上されることとなる。
【0018】
さらに、本発明のように、回転子コアの一端側に設けられた端板の半径方向支持部を、他端側に向かって軸方向に延ばした構成とすれば、永久磁石の支持性がさらに向上され、特に、一方の端板の半径方向支持部を、他端側まで延ばした場合には、一方側の端板のみ設ければよくなり、他方側を省略することによって部品点数の低減が図られる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて詳細に説明するが、まず本発明を適用するインナーロータ型電動機の一例の全体構造を説明しておく。
図2に示されているように、略中空円筒状に形成されたモータケース11の内周壁面に、固定電機子12が取り付けられているとともに、その固定電機子12の内部側には、回転子13が配置されている。この回転子13の中心軸14は、上記モータケース11の軸方向両端部分に配置された一対の軸受けベアリング15,16によって回転自在に支承されているとともに、その中心軸14の軸方向略中央部分には、図1、図3、図4及び図5にも示されているような回転子コア17がネジ固定されている。
【0020】
上記回転子コア17は、電磁鋼板等からなる複数枚の磁性コア板(図5中の符号171参照)を軸方向に積層した略円筒状の積層体から構成されており、当該回転子コア17の外周面には、複数個の永久磁石172,172,・・・が、周方向に並ぶようにして装着されている。
【0021】
このとき、特に図5に示されているように、上記回転子コア17を構成している各磁性コア板171の外周縁には、半径方向外方に向かって突出する略矩形状の突部171a,171a,・・・が、上記各永久磁石172の周方向幅に対応したピッチ間隔で一体的に設けられている。そして、これらの各突部171aが、軸方向に積層状に集合されることによって、軸方向に延在する周方向支持部173,173,・・・が、上記回転子コア17の外周面に各永久磁石172の周方向幅に対応したピッチ間隔で形成されている。
【0022】
すなわち、上記各周方向支持部173は、周方向に隣接する一対の永久磁石172,172どうしの間部分において軸方向に延在するように設けられており、当該周方向支持部173の周方向両側の壁面に、各永久磁石172の周方向端面172a(図6参照)が当接されることによって、当該永久磁石172が周方向に支持されるようになっている。
【0023】
また、上記回転子コア17の軸方向の両端面には、非磁性材からなる薄板状の端板174,174がそれぞれ配設されている。これらの各端板174の中心部分には、前記中心軸14を貫通させるための通穴174aが形成されているとともに、当該端板174の外周縁には、前記各永久磁石172の各々に対応した位置から半径方向外方に突出する複数の係止部175,175,・・・が設けられている。
【0024】
上記各係止部175は、前記回転子コア17側の周方向支持部173と周方向の位置がほぼ同一の位置にそれぞれ配置されており、略L字形状をなして外方に突出されている。すなわち、当該係止部175は、前記端板174の外周縁から半径方向外方に向かって一体的に突出する軸方向支持部175aと、その軸方向支持部175aの外端側から軸方向中心側に向かって略直角に折れ曲がるようにして延出する半径方向支持部175bとを備えている。
【0025】
このような端板174に設けられた各係止部175は、特に図5に示されているように、前記回転子コア17側の周方向支持部173よりも大きな周方向幅を備えており、周方向に隣接する一対の永久磁石172,172の各軸方向端面172b(図6参照)が、一つの軸方向支持部175a上に跨るようにして当接されていて、これによって、上記一対の両永久磁石172,172が軸方向に支持されている。また、上記一つの半径方向支持部175bに対しては、前記一対の両永久磁石172,172の各外周面172c(図6参照)が当接されており、これによって上記一対の両永久磁石172,172が半径方向に支持されている。
【0026】
このように、回転子コア17側に設けられた周方向支持部173と、前記端板174側に設けられた軸方向支持部175a及び半径方向支持部175bとによって、前記複数の永久磁石172,172,・・・は、周方向、軸方向及び半径方向の三方向に受けられて保持される構成になされている。
【0027】
また、本実施形態においては、前記端板174と、回転子コア17と、各永久磁石172との間の隙間には接着剤(図示省略)が充填されているともに、前記端板174及び各永久磁石172の外周には、接着テープ176が巻回して固定されている。前記接着テープ176としては、例えば、エポキシ樹脂等を含浸させた樹脂テープ等が用いられる。
【0028】
このような構成を有する本実施形態によれば、各永久磁石172を支持するように半径方向外方に突出した部分、すなわち端板174の係止部175が、非磁性材によって構成されていることから、その端板174の係止部175による回転磁界への影響はほとんど皆無となり、回転磁界の形成状態が大幅に改善される。
また、上記非磁性材からなる端板174の係止部175は、従来では別部品で支持していた軸方向に関しても支持を行う構成になされているため、簡易な構成を実現しつつ、永久磁石172の支持性が向上されるようになっている。
【0029】
また、本実施形態では、端板174と回転子コア17と各永久磁石172とを、接着剤及び接着テープ176(図1参照)で結合させる構成を採用しているので、永久磁石172の支持はより一層確実に行われるようになっている。
【0030】
一方、図7に示されている実施形態では、端板174に設けられた係止部177の半径方向支持部177bが、回転子コアの軸方向中央部分まで延設されている。このような構成とすれば、永久磁石の支持性を更に高めることができる。
【0031】
また、図示は省略したが、回転子コアの一端側に設けられた端板174の半径方向支持部177bを、軸方向中央部分から更に軸方向に延ばして、回転子コアの軸方向他端側に達するように構成すれば、他方側の端板を省略することが可能となり、部品点数が低減される。
【0032】
以上、本発明者によってなされた発明の実施形態を具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形可能であるというのはいうまでもない。例えば、上述した各実施形態は、モータに対して本願発明を適用したものであるが、モータ以外の発電機等に対しても本発明は同様に適用することができる。
【0033】
【発明の効果】
以上述べたように本発明は、複数の永久磁石の各々を支持するように半径方向に突出する部分を、非磁性材からなる端板の係止部により構成することによって、回転磁界への影響を大幅に低減させるとともに、上記非磁性材からなる端板の係止部によって、従来では支持していなかった軸方向に関しても永久磁石を支持する構成とし、別部品を用いることなく永久磁石の支持を良好に行うようにしたものであるから、簡易な構成で、回転特性の安定化及び向上を図ることができるとともに、永久磁石を良好に支持することができ、従って、電動機の性能向上を図りつつ磁石支持構造の信頼性を高めることができる。
【0034】
また、本発明は、端板と回転子コアと各永久磁石とを、接着剤や接着テープで結合させる構成とすることによって、永久磁石の支持性をより一層向上させるようにした構成を含むものであり、このような構成を採用することによって上述した効果をさらに高めることができる。
【0035】
さらに、本発明は、端板に設けた半径方向支持部を軸方向に延ばした構成とすることによって、永久磁石の支持性をさらに向上させ、特に端板の半径方向支持部を他端側まで延ばすことによって、他方側の端板を省略可能とし、部品点数の低減を図るようにした構成を含むものであり、このような構成を採用することによって、上述した効果をさらに高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態にかかる回転子コアのみを表した外観斜視説明図である。
【図2】図1に表された回転子を備えたインナーロータ型の電動機の一例を表した横断面説明図である。
【図3】図1に表された回転子コアを軸部材に固定した回転子の側面説明図である。
【図4】図3に表された回転子の正面説明図である。
【図5】係止部を拡大して表した正面説明図である。
【図6】永久磁石の組立状態を表した部分分解斜視図である。
【図7】本発明の他の実施形態における係止部を拡大して表した外観斜視説明図である。
【図8】従来構成における永久磁石の組立状態を表した部分分解斜視図である。
【符号の説明】
11 モータケース
12 固定電機子
13 回転子
17 回転子コア
171 磁性コア板
172 永久磁石
173 周方向支持部
174 端板
175 係止部
175a 軸方向支持部
175b 半径方向支持部
176 接着テープ
177 係止部
177b 半径方向支持部
Claims (6)
- 軸部材に固定された複数枚の磁性コア板の積層体からなる略円筒状の回転子コアと、その回転子コアの外周側に周方向に並ぶように固定された複数個の永久磁石とを有する電動機の回転子において、
上記回転子コアの円筒状外周面には、前記各永久磁石の周方向端面を受けるように半径方向外方側に突出する周方向支持部が、軸方向に沿って延在するように設けられているとともに、
上記回転子コアの少なくとも軸方向一端面には、非磁性材からなる端板が配設され、
上記端板の外周縁には、前記各永久磁石の各々に対応した位置から半径方向外方および軸方向に向かって略L字状に突出する係止部が、前記回転子コアの周方向支持部と周方向のほぼ同一位置において対面するように設けられ、
該係止部には、前記端板の外周縁から半径方向外方に向かって一体的に突出して前記回転子コアの周方向支持部よりも大きな周方向幅を備えていることにより前記各永久磁石の周方向に隣接する一対の軸方向端面を跨るように受ける軸方向支持部と、この軸方向支持部の外端側から軸方向に折れ曲がるように延出して前記各永久磁石の外周面を受ける半径方向支持部とが設けられ、
前記回転子コアの周方向支持部と、上記端板の軸方向支持部及び半径方向支持部とによって、前記各永久磁石を、周方向、軸方向及び半径方向の三方向に支持する構成になされていることを特徴とする電動機の回転子。 - 前記回転子コアに設けられた周方向支持部は、軸方向に直交する方向の横断面形状が、略矩形状に形成されていることを特徴とする請求項1記載の電動機の回転子。
- 前記端板と、回転子コアと、各永久磁石との間の隙間には、接着剤が充填されていることを特徴とする請求項1記載の電動機の回転子。
- 前記端板及び各永久磁石の外周側に、接着テープが巻回して固定されていることを特徴とする請求項1記載の電動機の回転子。
- 前記接着テープが、樹脂テープからなることを特徴とする請求項4記載の電動機の回転子。
- 前記回転子コアの軸方向一端部に配設された端板の半径方向支持部が、上記回転子コアの軸方向中央部から他端部の範囲まで延設されていることを特徴とする請求項1記載の電動機の回転子。
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