JP3779068B2 - 2方向空転・ロック切替えクラッチ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、各種の機器の機械構造部分、例えば、自然状態では正転・逆転方向共に自由に回転できないが、必要に応じて正転・逆転方向共に同時に自由に回転が可能な機能を必要とする機械構造部分に使用できる2方向空転・ロック切替えクラッチに関する。
【0002】
【従来の技術と発明が解決しようとする課題】
例えば、手押し車の車輪やドアの車輪は、何らかの方法で止めない限り、傾斜面においては水平方向の分力や慣性力のために動くことが可能である。このために、用途によっては、外部から車輪にブレーキ機構を付加して危険の防止を図っているのが現状である。
また、従来、自動車等のマニュアル式のリクライニングシートにおいて、その背もたれ傾き調整装置は、ラチェット機構を利用したものが主流となっている。この他に、遊星ギヤ式のものも一部で使用されている。しかし、ラチェット式のものは、段階的にしか調整できず、操作性も悪い。また、遊星ギヤ式のものは構成が複雑でコストが高くなる。
このため、上記のような各種用途にクラッチを改良して用いることを試みたが、従来のワンウェイクラッチおよびツーウェイクラッチは、いずれも要求される機能を満たすことができない。
【0003】
そこで、本出願人は、新たな機能のクラッチとして、互いに正逆に回転可能な第1の回転部材および第2の回転部材と、常時は前記両回転部材間の正逆両方向の回転をロックするロック手段と、所定の外力が加わることで正逆両方向に回転可能状態に前記ロック手段のロックを解除するロック解除手段とを備えた2方向空転・ロック切替えクラッチを提案した(特願平9−354944号)。これによれば、正逆回転方向のロック保持と空転保持の切替えは期待どうりにできるが、ロック保持状態において、負荷の方向が正逆方向に切り替わる場合に、いわゆる「遊び角度」が生じて不都合が生じる場合があった。
例えば、前記提案例のクラッチを自動車のリクライニングシートに使用した場合、クラッチに構造的に若干の遊び角度があるため、人が着座しないシートが、路面状況によっては前後に振動し、いわゆるガタ音を発する場合があった。
【0004】
この不都合につき、図15〜図17に示す提案例と共に説明する。この提案例は、前記の出願にかかる提案例と同様な構成を有するものであり、本願の実施形態における2方向空転・ロック切替えクラッチと対応する部分には同じ符号を付してある。
同図のクラッチは、内輪1の外径面に形成されたV溝状の保持器カム面6と、外輪2の円周軌道面との間に、保持器4に保持されたころ状の係合子3を介在させたものである。内輪1は保持器係合溝7を有し、保持器4に設けられた係合突部9に密に噛み合うことで、保持器4の内輪1に対する円周方向の位置固定が可能である。保持器4には、外輪2に摺接する共回り用ばね5aが取付けられ、また保持器4と外輪2の内鍔との間に、復帰ばね5bが設けられている。図8に示すリクライニングシートに用いる場合、内輪1はシート側のフレーム31に、外輪2は背もたれ側のフレーム32に固定される。
【0005】
図17は、クラッチ機能の説明図である。同図(A),(D)は、ロック待機状態(中立時)を示し、同図(B),(E)はロック状態を、同図(C),(F)はロック解除状態(自由回転時)を各々示す。同図(A)のロック待機状態では、係合子3はカム面の中央に位置するが、保持器4は内輪1に対して移動可能である。この状態で、外輪2が回転すると、保持器4が共回りし、係合子3はカム面6に達する。これにより、係合子3がカム面6と外輪2の円周軌道面の間に楔状に噛み込み、外輪2の回転がロックされる(同図(B))。このロック状態で、レバー16を操作して保持器4を押すと(同図(F))、同図(C)のように係合子3がカム面6の中立位置に戻る。この状態では、保持器4は内輪1に対して位置固定され、係合子3はカム面6の中立位置に拘束されるため、外輪2の回転ロック機能が無くなる。レバー16を戻すと、同図(A)の待機状態になり、外輪2が回転すると、その回転がロックされる。
【0006】
前記提案例のクラッチは、図17(A),(B)からわかるように、係合子3がカム面6の中立位置にあるときに、カム面6に対して隙間dがあり、外輪2の正逆いずれかの回転に伴って係合子3がカム面6の中立位置から偏り、隙間が零となることで、外輪2の回転がロックされる。このロック状態で、係合子3とカム面6との間には、反ロック側に隙間d2が生じる。この隙間d2があるため、外輪2に加わる負荷の方向が変わった場合、再度ロックするまでに外輪2が若干の角度だけ回転することになる。これが前記の遊び角θである。このため、遊び角θを無くすことが望まれるが、前記の隙間dがなければ、空転を保持することができない。
【0007】
この発明の目的は、正転・逆転方向のいずれの方向にもロック状態を保ち、外部からの操作によって、正転・逆転方向のいずれの方向も同時に回転可能になるという新たな機能を持ちながら、ロック保持の状態において、負荷の方向が変わっても遊び角が生じない2方向空転・ロック切替えクラッチを提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
この発明の2方向空転・ロック切替えクラッチは、互いに正逆に回転可能な第1の回転部材および第2の回転部材と、常時は係合子が前記両回転部材に摩擦接触してこれら回転部材の正逆両方向の回転をロックするロック手段と、所定のロック解除用外力が加わることで正逆両方向に回転可能な状態に前記係合子による回転のロックを解除するロック解除手段と、前記ロック解除用外力が除かれて前記ロック手段がロック待機状態にあるときに前記係合子を前記第1および第2の回転部材に対して正逆の両方向につき隙間無し状態とする両方向隙間排除手段とを備えたものである。なお、この明細書で言う「回転部材」は相対的な回転が可能な部材のことであり、片方の回転部材が常に角度固定状態で用いられるものであっても良い。
この構成によると、第1の回転部材と第2の回転部材とは、常時はロック手段で互いの相対回転が不能なように回転がロックされており、すなわち回転が阻止されており、ロック解除手段に所定の外力を加えることで、前記ロック手段のロックが解除され、第1の回転部材と第2の回転部材間の正逆両方向の回転が可能となる。
前記ロック解除用外力が除かれると、前記ロック手段がロック待機状態となり、両回転部材間の正逆いずれかの方向の回転負荷で再度ロック状態となる。前記のロック待機状態において、前記係合子は、両方向隙間排除手段の作用により、第1および第2の回転部材に対して正逆の両方向につき隙間無し状態とされる。このため、ロック待機状態から、第1および第2の回転部材間に回転負荷が生じると、遊び角を生じることなく、直ちにロック状態となる。また、ロック状態にあるときに、これら第1および第2の回転部材の回転部材に加わる負荷の方向が変わると、正逆いずれか一方向のロック状態から、ロック待機状態を経て、他方向のロック状態となるが、このときのロック待機状態においても、係合子は第1および第2の回転部材に対して正逆の両方向につき隙間無し状態とされているため、直ちに他方向のロック状態となり、遊び角を生じない。
【0009】
この発明において、前記係合子をころとした場合、前記両方向隙間排除手段は、前記係合子をスキューさせるものとしても良い。
このように係合子をスキューさせることにより、第1および第2の回転部材に対して正逆の両方向につき隙間無し状態とすることが容易に実現できる。
【0010】
この発明において、前記ロック手段は、第1および第2の回転部材のうちの一方の回転部材に、回転中心回りに設けた円周軌道面と、他方の回転部材に設けられて前記円周軌道面と対向する複数のカム面と、これら円周軌道面と各カム面との間に各々介在された前記係合子とでなるものとしても良い。
この構成の場合、常時は、一方の回転部材の円周軌道面と、他方の回転部材のカム面とに係合子が摩擦接触し、これら回転部材間の正逆両方向の回転をロックする。
この構成の場合に、前記ロック解除手段は、前記係合子をポケット内に収容して回転部材の回転方向に位置規制状態に保持する保持器と、前記ロック解除用外力が加わることで前記係合子が前記カム面の中立位置となるように前記保持器を前記回転部材に対して拘束状態とする案内手段とでなるものとしても良い。
この案内手段を設けた場合、係合子による回転のロック状態で、保持器に所定の外力を与えると、保持器は案内手段で案内されて若干移動し、その保持している係合子を前記カム面の中立位置に位置させる。前記カム面は、係合子が中立位置に保たれることで前記摩擦接触が解除され、これにより両回転部材の相対回転が両方向に可能となる。すなわち両方向にロック解除状態となる。このロック解除状態からロック解除用外力が除かれてロック待機状態となったとき、またロック状態から反対方向の回転負荷が作用してロック方向が反対方向となる前のロック待機状態において、係合子はカム面の中立位置にあり、かつこの係合子は第1および第2の回転部材に対して正逆の両方向につき隙間無し状態となる。そのため、前記ロック待機状態から、直ちにロック状態となり、遊び角を生じない。前記ロック待機状態において、係合子がスキューするものである場合は、係合子は中立位置にあって、スキューにより、前記カム面におけるロック方向の違うカム面部分に接触すると同時に、円周軌道面にも接触し、前記両方向の隙間無し状態が得られることになる。
【0011】
この発明において、前記両方向隙間排除手段が係合子をスキューさせるものである場合、この両方向隙間排除手段は、前記保持器の形態変更により係合子をスキュー無し状態とスキュー状態とに切り換えるものとしても良い。保持器は、各係合子を各ポケット内に収容して回転部材の回転方向に位置規制状態に保持するものである。
このように、保持器が形態変更するものとし、その形態変更で係合子をスキューさせるものとすることで、係合子のスキューを簡単に行わせることができる。
【0012】
この発明において、前記保持器は、互いに幅方向に分割されて回転方向の微小な位相ずれが可能な一対の保持器分割体を有し、前記位相ずれにより前記スキューを発生させるものとしても良い。この保持器は、前記ロック解除用外力が与えられると、両保持器分割体間の位相ずれが無くなるものとする。具体的には、弾性体の復元力で両保持器分割体に位相ずれを生じさせる位相ずれ発生手段と、前記ロック解除用外力により位相ずれ発生手段に抗して位相ずれを解除する位相ずれ解除案内とを設ける。
このように、保持器を分割構造とし、両保持器分割体に位相ずれを生じさせることで、簡単な構成で、係合子にスキューを与えることができる。
前記位相ずれ解除案内は、例えば、両保持器分割体の柱部に形成されて互いに斜め方向に噛み合う傾斜噛み合い面からなり、隣合う柱部の傾斜噛み合い面は、互いに逆方向に傾斜するものとする。
このように、互いに逆方向に傾斜する傾斜噛み合い面を設けることで、精度良く両保持器分割体の位相ずれを戻すことができる。
【0013】
このように保持器を一対の保持器分割体とした場合に、保持器の各ポケット間の柱部に、係合子をポケット内面に押し付ける個別予圧用弾性体を設けても良い。
このように、個別予圧用弾性体で係合子を個別にポケット内面に押し付けるようにすることで、保持器分割体の位相ずれに伴う係合子のスキューの発生が確実となり、負荷方向の変化による遊び角の発生が一層確実に防止される。
【0014】
この発明において、前記案内手段は、前記カム溝の形成側の回転部材および前記保持器のいずれか一方に設けられた保持器固定溝と他方に設けられた係合突部とでなり、これら保持器固定溝と係合突部とは、前記外力の非付与状態で互いに緩み状態に噛み合い、かつ前記外力の付与状態で密に噛み合うものとしてもよい。
この構成の場合、常時は、保持器固定溝と係合突部とが緩み状態に噛み合っており、この緩み範囲で保持器とカム面側の回転部材との相対回転が可能となる。そのため、保持器で係合子をカム面の中立位置に保持する機能は生じず、前記のように係合子の摩擦接触で両回転部材の両方向の回転がロックされる。保持器に所定の外力を与えると、保持器固定溝と係合突部とが密に噛み合い、保持器はカム面側の回転部材に拘束されて、その保持している転動体をカム面の中立位置に保持する。そのため、回転部材の両方向の回転が可能となる。
【0015】
【発明の実施の形態】
この発明の一実施形態を図1ないし図7と共に説明する。この2方向空転・ロック切替えクラッチは、第1の回転部材である内輪1と、第2の回転部材である外輪2と、ころからなる係合子3と、保持器4と、操作部材16を備え、後述のロック手段12、ロック解除手段13、および両方向隙間排除手段21が設けられている。この2方向空転・ロック切替えクラッチは、いわば2ウェイクラッチの基本構造を応用したものである。
内輪1は、係合子3が摩擦接触するカム面6が円周方向の複数箇所に設けられたものである。外輪2は、その内径面部分を、係合子3が転走可能なように円筒面状の円周軌道面2cとしてある。外輪2の円周軌道面2cと、内輪1のカム溝6と、係合子3とで、内輪1と外輪2との正逆両方向の相対回転を阻止するロック手段12が構成される。保持器4は、各係合子3を保持するポケット8が円周方向の複数箇所に設けられたリング状の部材であり、内輪1と外輪2との間に介在している。
【0016】
内輪1は、一端に内鍔1aを有する円筒状に形成され、その内鍔1aに設けられた中心の孔で主軸41に嵌合し、半径方向に位置決めされている。主軸41は、第1の固定フレーム31に溶接または圧入によって固定される。また、内輪41は、第1の固定フレーム31に対して、内鍔1aを貫通するリベット等の固定具36または溶接で固定される。
内輪1の外径面には、一端部よりも直径が若干小さな円周面部分1bが内鍔1a側の端縁に設けられている。この円周面部分1bに隣接する段面と第1の固定フレーム31との間で構成される円周溝に、外輪2の内鍔2aを、隙間が生じる状態に挟み込むことで、滑り軸受からなるラジアルおよびアキシャル軸受部分38が構成されている。また、内輪2の一端近傍の外径面には、保持器4の端面に接して保持器4の軸方向の移動を止めるストッパリング24が、内輪外径面に形成された円周溝に嵌合して取付けられている。
外輪2は、前記軸受部分38での支持により、内輪1と第1の固定フレーム31に対して、半径方向および軸方向共に位置が規制され、回転方向のみ自由度がある。外輪2は内鍔2aと反対側の端部に外鍔2bを有しており、この外鍔2bを利用して第2の固定フレーム32に、リベット等の固定具または溶接によって固定される。
操作部材16は、ロック解除用外力を加える手段であって、円周方向の一部に半径方向に延びるレバー部16a(図8)を有しており、主軸41の先端に、ワッシャ22および止め輪23を介して回転可能に取付けられている。なお、止め輪23を使用せずに主軸41の加締めで固定しても良い。
【0017】
図4に示すように、内輪1は厚肉円筒状に形成されており、その外径面に前記カム面6が円周方向に等間隔で設けられている。これらカム面6は、円周方向の中央部が深くかつ両側に次第に浅くなるように形成されたものであり、概ねV字状の断面形状とされている。このカム面6は、断面が直線状であっても、また凹円弧状断面などの曲面状であっても良い。カム面6のV字状の開き角度α(図5(B))は、例えば155°〜175°に設定されている。カム面6は、内輪1の軸方向の全長に設けられているが、軸方向の一部に設けたものであっても良い。なお、内輪1は、この例では円筒状としたが、軸であっても良い。
【0018】
内輪1の片側の幅面には、保持器固定溝7が円周方向の複数箇所に設けられている。保持器固定溝7は、溝幅の中心部が深くなる断面形状のものであり、この例では概ねV字状の断面形状とされている。
内輪1の保持器固定溝7は、保持器4に設けられた係合突部9(図1(B),図2)と噛み合うものであり、この係合突部9と保持器固定溝7とで、保持器4を内輪1に対して所定の位置に拘束状態とする案内手段14が構成される。この案内手段14と保持器4とで、前記のロック解除手段13が構成される。保持器4の係合突部9は、この例では保持器4の一端に設けられた内鍔4aの内面に設けられており、保持器固定溝7と軸方向に噛み合う。係合突部9は、三角山形に形成されている。また、保持器4の幅面には、操作部材16から軸方向のロック解除用外力を受ける凸部18が複数設けられている。この凸部18は、係合突部9と同じ周方向位置で内鍔4aに形成されている。
【0019】
操作部材16は、保持器4の幅面に対する対向面の周方向複数箇所に、この操作部材16の回転に伴ってロック解除用の外力Fとなる軸方向力を保持器4に作用させる操作用カム面17が設けてある。この操作用カム面17は、保持器4の凸部18に接触して凸部18を押す面であって、操作部材16の回転方向に沿う勾配を有する山形の断面に形成されている。
【0020】
図2、図3、図6に示すように、保持器4は、前記の両方向隙間排除手段21の構成として、係合子3をスキュー無し状態とスキュー状態とに切り換え可能なように形態変更可能に形成されている。この形態変更を可能にする構成として、保持器4は、互いに幅方向に分割された一対の保持器分割体4A,4Bで構成され、両保持器分割体4A,4Bが、回転方向の微小な位相ずれ、および組立幅の変更が可能に結合されている。両保持器分割体4A,4Bの分割は、各ポケット8間の柱部27の中間で行われる。
【0021】
これら柱部27は3種類のものがあり、その一種類の柱部271 は、片方の保持器分割体4Bに設けられた柱部分割体27Bの外径側面に、フック部品28(図3)の爪状の案内片29aに係合する位相ずらし溝34が形成されている。これら位相ずらし溝34およびフック部品28は、一部のポケット8内に配置される分離ばね39と共に位相ずれ発生手段40を構成する。分離ばね39は、両保持器分割体4A,4Bを幅方向に広げ付勢する弾性体となるものであり、コイルばねが用いられている。
残り2種類の柱部272 ,273 は、いずれも、柱部分割体27A,27Bの先端面が互いに斜め方向に噛み合う傾斜噛み合い面35とされ、この2種類の内の片方の柱部272 ともう片方の柱部273 とは、傾斜噛み合い面35が互いに逆方向に傾斜するものとされている。これら傾斜噛み合い面35は、請求項で言う位相ずれ解除案内となるものである。この先端面が互いに逆方向に傾斜した柱部272 ,273 は隣合って配置され、その隣に前記位相ずらし溝34を有する柱部271 が配置されている。また、これら3種類の柱部27は、両保持器分割体4A,4Bの結合部が印籠継手を構成するように、いずれも柱部分割体27A,27Bの先端部が、内外に重なる相欠状の継手片36a,36bからなる径方向ずれ規制部36とされ、かつ互いに突き合わせ可能な軸方向のストッパ面37が、端面または段面により構成されている。
【0022】
フック部品28は、位相ずらし溝34を有する保持器分割体4Bと反対側の保持器分割体4Aに取付けられる板金部品であり、リング状本体28aから突出した複数のアーム29の先端に、各柱部27の位相ずらし溝34に係合する斜め方向の案内片29aが折曲状態に形成されている。フック部品28は、そのリング状本体28aの周方向複数箇所に形成した孔41を、保持器分割体4Aの突起42に嵌め込み、溶着または加締止めされている。フック部品28は、図3(A)に示すもの代わりに、同図(B)に示すように、リング状本体28aが保持器分割体4Aの外径面に重なるものであって、リング状本体28aから突出させた複数の突片43を、その突片43に形成した孔41で保持器分割体4Aの突起42に取付けるようにしても良い。これら両保持器分割体4A,4Bとフック部品28とにより、組立部品からなる保持器4が構成される。
【0023】
この保持器4は、保持器分割体4Aに対して保持器分割体4Bを軸方向に押し付けたときに、両者4A,4Bは、互いの軸方向のストッパ面37で一定の幅寸法以下にはならないように規制されると共に、周方向にも傾斜噛み合い面35で噛み合って固定される。このとき、両保持器分割体4A,4Bで形成されるポケット8は、位相ずれがないので、ここに挿入された係合子3はスキューを生じない。軸方向の外力を除くと、分離ばね39の復元力とフック28の係合片29aの案内とにより位相ずれを生じる。
【0024】
図8は、この実施形態のクラッチを自動車用のリクライニングシートに応用したシート背もたれ傾き調整装置を示す。第1の固定フレーム31はシート固定フレームとなるものであり、シート33に固定される。第2の固定フレーム32は背もたれ固定フレームとなるものであり、背もたれ34に固定される。背もたれ34は、起立側に付勢するばね部材50が連結してある。
背もたれ34は、後にクラッチ動作を説明するように、操作部材16を操作してこのクラッチ30を自由回転状態としたときは、起倒方向のいずれの方向にも自由に動くことができる。この場合に、背もたれ34を倒すときは、人の背中の力で、背もたれ34を起こすときは、ばね部材50の復元力による。背もたれ34の角度が決まった後、操作部材16を元の位置に戻すと、回転ロック機能が回復して背もたれ34は固定される。
なお、同図の例では、背もたれ起立付勢用のばね部材50をクラッチの外部に配置したが、このばね部材50は、上記実施例のクラッチにおいて、例えば図9に示すように、ゼンマイばね50Aとしてクラッチに内蔵することもできる。このゼンマイばね50Aは、一端は主軸41に結合し、他端は適宜の連結部材(図示せず)を介して背もたれ34側の固定フレーム32に結合する。
【0025】
上記構成のクラッチの作用、特に遊び角が無くなる原理を説明すると共に、構成の補足説明をする。
保持器4には複数個の係合子3と複数個の分離ばね39が組込まれている。保持器分割体4A,4Bの柱部分割体27A,27Bには、軸方向に傾斜のついた傾斜噛み合い面35が設けられており、両保持器分割体4A,4Bが組み合わされたときには、この傾斜噛み合い面35は互いに密着できる関係にある。この面35の傾斜は、隣合った柱部27では互いに方向が逆とされている。両保持器分割体4A,4Bの傾斜噛み合い面35が密着したときには(ほぼ同時にストッパ面37も密着する)、両保持器分割体4A,4Bの位相ずれは零になる。
したがって、ポケット8に装入された係合子3はスキューをすることができない。なお、ポケット8は、係合子3に対して周方向には非常に小さな隙間(例えば0.1mm以下)に設計されている。また、ポケット8は、係合子3の両端の隙間に対して、中央部は大きな隙間が与えられている。一方の保持器分割体4Bには、位相ずらし溝34が形成された柱部分割体27Bが複数有り、他方の保持器分割体4Aに取付けられたフック部品28の係合片29aがこの溝34に噛み合っている。
【0026】
いま、上記のように組み立られた保持器4が、図1(B)のように内外輪1,2の間にあり、保持器4には軸方向の外力が作用していないとする。この状態から操作部材16を回転操作すると、操作用カム面17の作用により、保持器分割体4A,4Bは、ストッパリング24と操作部材16の間で挟まれ、軸方向に押し付けられる(図6(A))。同時に、分離ばね39もポケット8の寸法の変化に従って圧縮される。この状態では、係合子3はスキューができないため、図5(B)に示すように、係合子3は内輪1のカム面6あるいは外輪2の円周軌道面2cとの間に隙間δが確保されており、外輪2は自由に回転できる(図17の提案例のフリー時(C))に相当する。)。
【0027】
次に、操作部材16を戻すと、両保持器分割体4A,4Bは、分離ばね39の復元力で互いに軸方向に離れようとする。しかし、フック部品28の係合片29aが保持器4の位相ずらし溝34に噛み合っているため、両保持器分割体4A,4Bは、素直に軸方向には分離できず、位相ずれを起こしながら分離する。その結果、係合子3は、両端面がそれぞれ保持器分割体4A,4Bに案内されているため(ポケット8の周方向隙間は中央よりも両端部の方が小さくなっている)に、スキューを生じる(図6(B))。
【0028】
係合子3がスキューをすると、その両端部は、図5(A)に示すように、カム面6における互いにロック方向の異なるカム面部分6a,6bに接触すると同時に、外輪2にも接触することになる。符号a〜dは各接触部を示す。したがって、係合子3のカム面6に対するロック待機状態(図17の提案例の中立時(A)に相当する)で、係合子3とカム面6の間には隙間が無いので、基本的にこのクラッチには遊び角度が生じない。
【0029】
この状態において、外輪2に正逆いずれの方向であってもトルク負荷が加わると、即座に係合子3がカム面6に強く摩擦接触し、ロックをすることが可能となる。
このため、図15〜17の提案例で使用していた共回りばね5aは不要となる。これは、係合子3がスキューをする力が常に保持器4から与えられているためである。すなわち、係合子3はカム面6や外輪円周軌道面2cに対して予圧状態となっているためである。
ロック状態にあるときに、負荷の方向が変わっても、係合子3のスキューによりカム面6の両方向のカム面部分6a,6bおよび外輪円周軌道面2cに対して係合子3は隙間零となっているため(図5(A)の接触部a〜dで接しているため)、逆方向のロックも即座に行われ、遊び角度が発生しない。
【0030】
なお、このクラッチは、係合子3をスキューさせるため、負荷が加わればエッジ荷重が加わることになりそうであるが、これは次のように解消され、あるいは緩和される。すなわち、負荷が大きくなると、スキューをしていた係合子3は、その負荷によって荷重が端部だけから徐々に加わるようになる。すなわち、スキューが解消されるような力が作用し、負荷が大きくなるに従って、スキュー角度はほぼ零になる。
【0031】
図7は、上記提案例のクラッチと、この実施形態のクラッチとの負荷トルクに対するクラッチ遅れ角度の関係を示す。この提案例のクラッチは、負荷が極めて小さい時は、クラッチとしての剛性は劣るが、負荷が大きくなるにつれてスキューがなくなっていくため、クラッチの剛性は提案例に近くなる。
【0032】
この実施形態の2方向空転・ロック切替えクラッチ30は、このように、前記提案例のものと同様に、保持器4に外力Fを加えることによって、時計・反時計方向のいずれの方向へも同時に空転可能な状態と、同時に回転ロック機能を生じる状態とに切り替えることができる。そのため、このクラッチは、自動車用リクライニングシートの背もたれ傾き調整装置に応用した場合に、無段階で調整できる操作性の優れたものとなり、また構造が簡単で安価なものとできる。また、このクラッチ30を、手押し車やドア用の軸受と共に使用した場合、手を放せば車輪やドアはその場所に留まっている様な安全な機構が安価に実現できる。
しかも、この実施形態のクラッチ30は、ロック待機状態となる中立状態において、係合子3をスキューさせることによって、係合子3とカム面6および外輪円周軌道面2cとの隙間を零としたため、遊び角度を零とすることができた。したがって、自動車用リクライニングシートの背もたれ傾き調整装置に応用されても、いわゆるガタ音は発生しなくなる。
ただし、係合子3をスキューさせているために、負荷が極めて小さい時は、クラッチとしての剛性は劣るが、負荷が大きくなるにつれてスキューがなくなっていくため、クラッチの剛性は提案例に近くなる。しかし、このように負荷の小さいときに剛性が小さくても、負荷が大きくなると剛性も上がるため、自動車用リクライニングシートの背もたれ傾き調整装置に応用した場合にクラッチとして剛性不足となる問題はない。
また、リクライニングシートに使用した場合、ガタ音が発生するのは、人が着座していない軽負荷の場合であるため、前記のように負荷の増大に従ってスキューがなくなっていっても、負荷の方向が変わった場合のガタ音の問題はない。
【0033】
図10〜図14は、この発明の他の実施形態を示す。この実施形態は、図1に示す2方向空転・ロック切替えクラッチにおいて、その保持器4を図12〜図13に示す保持器54に代えたものであり、その他の構成は図1の実施形態と同じである。
この実施形態に用いられる保持器54は、前記実施形態と同様に、外力を加えたときに係合子3をスキュー無し、外力除去状態でスキュー有りとするものであるが、各係合子3毎に、個別予圧用弾性体55でスキューのための予圧を与える構成とされている。この保持器54も、互いに幅方向に分割された一対の保持器分割体54A,54Bで構成され、両保持器分割体54A,54Bが、回転方向の微小な位相ずれ、および組立幅の変更が可能に結合されている。両保持器分割体54A,54Bの分割は、各ポケット8間の柱部57の中間または端部で行われる。
【0034】
保持器54の位相ずれ発生手段21は、分離ばね69を収容するポケット8Aを保持器54の軸方向に対して斜めに形成し、このポケット8Aに沿って分離ばね69を斜めに収容することで得られるようにしてある。分離ばね69は、弾性体であれば良いが、この例ではコイルばねを用いている。この実施形態も、保持器54の柱部57には複数種類のものがあり、その内の2種類の柱部571 ,572 につき、柱部分割体57A,57Bの先端面に、軸方向に対して傾斜した傾斜噛み合い面65が形成してある。この2種類の柱部571 ,572 のうち、第1の種類のもの571 と第2の種類のもの572 とは、傾斜噛み合い面65が互いに逆方向に向くように形成されている。この傾斜案内面65のうち、面に沿う方向が分離ばね69と同方向に傾斜したものは、分離ばね69と共に位相ずれ発生手段21を構成するものであり、両保持器分割体54A,54Bの位相ずれの程度を規制する。また、両方向の傾斜噛み合い面65は、位相ずれ解除案内となる。
【0035】
柱部57の他の一種類の柱部573 は、片方の柱部分割体57Bに設けられた凸部70が、もう片方の柱部分割体57Aに設けられた凹部71に位相ずれ方向に隙間を持って嵌合し、位相ずれ範囲制限手段72を構成している。
前記柱部57のうち、分離ばね69を収容するポケット8Aを成形した柱部574 の片方に隣合う柱部575 は、片方の保持器分割体54Aのみに設けられて先端でもう片方の保持器分割体54Bと分割されている。
また、前記の傾斜噛み合い面65を有する柱部571 ,572 と、位相ずれ範囲制限手段72を有する柱部573 は、図13(A),(B)に各々示すように、両保持器分割体54A,54Bの結合部が印籠継手を構成するように、いずれも柱部分割体57A,57Bの先端部が、内外に重なる相欠状の継手片66a,66bからなる径方向ずれ規制部66とされ、かつ互いに突き合わせ可能な軸方向のストッパ面67が、端面または段面により構成されている。
【0036】
図14に示すように、個別予圧用弾性体55は、溝形の取付部55aの片方のフランジに、切起し片からなる一対の板ばね片55bを突出させたものであり、溝形の取付部55aは両フランジの内面に溝長さ方向に沿う突条61が形成されている。この個別予圧用弾性体55は、各柱部57に溝形の取付部55aで弾性的に嵌合して取付られ、前記突条61が各柱部57の側面に設けられた溝62に係合することで抜け止め状態とされる。突条61を設ける代わりに、溝形の取付部55aの先端部の溝幅を絞り、この絞りによって抜け止め状態としても良い。溝形の取付部55aは、各柱部57の両柱部分割体57A,57Bに跨がって取付けられる。
【0037】
図10に示すように、この保持器54も、操作部材16(図1)から軸方向のロック解除用外力を受ける凸部18が設けられる。また、この保持器54も、図1の例の保持器4の内鍔4aと同様な内鍔54aが設けられていて、この内鍔54aに図1の例の係合突部9と同様な係合突部9が、内輪1の保持器係合溝7と緩い噛み合い状態で、かつ密に噛み合い可能に設けられている。
【0038】
この例の保持器54を設けた場合も、ロック待機状態では、図12(A)に示すように、分離ばね69の作用で保持器54の両保持器分割体54A,54Bが位相ずれを生じるとともに組立幅が広がっており、係合子3は角度αのスキューを生じている。そのため、係合子3は、図11(A)に示すように内輪1のカム面6の両側のカム面部分6a,6bと、外輪2の円周軌道面2cとに対して接触部a〜dで隙間なく接しており、外輪2に正逆いずれかの回転負荷が作用すると、即座に回転ロック機能が生じる。この状態で、操作部材16を回転操作して保持器54に軸方向の外力Fを加えると、分離ばね69が短縮され、傾斜噛み合い面65の作用で図12(B)のように保持器54の両保持器分割体54A,54Bは、位相ずれが無くなり、また組立幅が所定幅に狭まる。これと同時に、保持器54は内輪1の保持器固定溝7に係合突部9が密に噛み合って内輪1に対して所定位相に固定される。このため、保持器54のポケット8に保持された係合子3は、カム面6の中立位置にスキュー無し状態に保たれて、隙間発生状態となり、回転ロック機能が解除される。すなわち、外輪2は自由に回転できる。
【0039】
このように、この実施形態においても、正転・逆転方向のいずれの方向にもロック状態を保ち、外部からの操作によって、正転・逆転方向のいずれの方向も同時に回転可能になるという新たな機能を持ちながら、ロック保持の状態において、負荷の方向が変わっても遊び角が生じないという効果が得られる。
しかも、この実施形態の場合は、ロック待機時において、各係合子3は個別予圧用弾性体55で個別に予圧されているため、内輪1や外輪2の真円度等が多少低くても、隙間零の状態が確保され、確実なガタツキの防止が行える。
【0040】
なお、前記各実施形態では、保持器4,54を2分割してその位相ずれにより係合子3にスキューを発生させるものとしたが、保持器は、他の形態変更で係合子3にスキューを発生させるものとしても良い。
さらに、前記各実施形態ではカム面6に接触する係合子3としてころを用いたが、ころの代わりに、スプラグやその他の非円形の断面形状の係合子を用いても良い。また、前記各実施形態では、カム面6を内輪1に、円周軌道面2aを外輪2に各々設けたが、これとは逆に内輪1に円周軌道面を、外輪2にカム面を設けても良い。さらに、第1の回転部材および第2の回転部材は、前記各実施形態のように内輪1および外輪2とする代わりに、互いに軸方向に対面する部材とし、カム面および円周軌道面を軸方向に対面させても良い。
【0041】
また、この発明の2方向空転・ロック切替えクラッチは、次の構成を有するものであっても良い。
すなわち、互いに正逆に回転可能な第1の回転部材および第2の回転部材と、常時は係合子が前記両回転部材に摩擦接触してこれら回転部材の正逆両方向の回転をロックするロック手段と、所定のロック解除用外力が加わることで正逆両方向に回転可能な状態に前記係合子による回転のロックを解除するロック解除手段とを備え、前記ロック手段が、第1および第2の回転部材のうちの一方の回転部材に、回転中心回りに設けた円周軌道面と、他方の回転部材に設けられて前記円周軌道面と対向するV字状断面の複数のカム面と、これら各カム面と円周軌道面との間に各々介在されたころからなる係合子とで構成された2方向空転・ロック切替えクラッチであって、次の構成▲1▼を有するクラッチである。
▲1▼前記係合子をスキューさせて、前記カム面の中立位置で、前記カム面における両方向のカム面部分と係合子との間、および係合子と前記円周軌道面との間の隙間を同時に零とし、これにより両回転部材が回転負荷方向の変化により再ロックされるときの遊び角を零とする手段を有する2方向空転・ロック切替えクラッチとする。
▲2▼前記▲1▼で言う保持器は、幅方向に二つの保持器分割体に分割されていて、ポケットに入れられたコイルばねの弾性復元力により、前記ロック解除用外力の解除時に、両保持器分割体の組立幅を大きくするものであっても良い。
▲3▼前記の▲2▼で言う保持器は、組立幅が大きくなると、両保持器分割体が位相ずれを起こすものであっても良い。
▲4▼前記の▲3▼で言う位相ずれは、保持器の片方の保持器分割体における柱部分割体に斜め方向に設けられた位相ずらし溝と、もう片方の保持器分割体に取付けられたフック部品の案内爪との噛み合いを利用して位相ずれを起こすものであっても良い。
▲5▼前記▲2▼〜▲4▼で言う二つの保持器分割体は、幅方向に外力を加えると、位相ずれが解消されるものであっても良い。
▲6▼前記▲2▼〜▲5▼で言う二つの保持器分割体のうちの片方の保持器分割体は、外力を受けることによって、自身の係合突部とカム面形成側の回転部材の保持器固定用溝とが噛み合って、係合子を前記カム面の中央に保持させるものであっても良い。
▲7▼前記▲2▼〜▲6▼で言う保持器は、二つの保持器分割体が、柱部に設けられた噛み合い面の噛み合いによって位相ずれを解消するものであっても良い。
【0042】
【発明の効果】
この発明の2方向空転・ロック切替えクラッチは、正転・逆転方向のいずれの方向にもロック状態を保ち、外部からの操作によって、正転・逆転方向のいずれの方向も同時に回転可能になるという新たな機能を持ちながら、ロック保持の状態において、負荷の方向が変わっても遊び角が生じないという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(A)はこの発明の第1の実施形態にかかるクラッチの破断正面図、(B)は同破断側面図である。
【図2】同クラッチの保持器のフック部品組立前の状態を示す斜視図である。
【図3】(A)は同保持器の部分分解斜視図、(B)は同保持器のフック部品の変形例を示す部分斜視図である。
【図4】同クラッチの内輪の切欠斜視図である。
【図5】(A)は同クラッチのロック待機状態を示す部分断面図、(B)はロック解除状態を示す部分断面図である。
【図6】(A),(B)は各々ロック解除状態およびスキュー発生状態を示す動作説明図である。
【図7】外輪回転角と負荷トルクとの関係を示す説明図である。
【図8】同クラッチを応用した自動車用シート背もたれ傾き調整装置の側面図である。
【図9】この発明の他の実施形態にかかるクラッチの破断側面図である。
【図10】この発明のさらに他の実施形態にかかるクラッチの破断側面図である。
【図11】(A)は同クラッチのロック待機状態を示す部分断面図、(B)はロック解除状態を示す部分断面図である。
【図12】同クラッチの保持器の各動作状態を示す展開図である。
【図13】(A)は同クラッチの保持器の一部の柱部を示す分解斜視図、(B)は他の一部の柱部を示す分解斜視図である。
【図14】同保持器の個別予圧用弾性体を示す斜視図である。
【図15】提案例にかかる2方向空転・ロック切替えクラッチの破断側面図である。
【図16】同提案例のクラッチにおける内輪の切欠斜視図である。
【図17】同提案例のクラッチの動作説明図である。
【符号の説明】
1…内輪(第1の回転部材)
2…外輪(第2の回転部材)
2c…円周軌道面
3…係合子
4…保持器
4A,4B…保持器分割体
6…カム面
7…保持器固定用溝
8…ポケット
9…係合突部
12…ロック手段
13…ロック解除手段
14…案内手段
16…操作部材
21…両方向隙間排除手段
28…フック部品
34…位相ずらし溝
35…傾斜噛み合い面(位相ずれ解除案内)
36…径方向ずれ規制部
37…ストッパ面
39…分離ばね(弾性体)
40…位相ずれ発生手段
55…個別予圧用弾性体
Claims (9)
- 互いに正逆に回転可能な第1の回転部材および第2の回転部材と、常時は係合子が前記両回転部材に摩擦接触してこれら回転部材の正逆両方向の回転をロックするロック手段と、所定のロック解除用外力が加わることで正逆両方向に回転可能な状態に前記係合子による回転のロックを解除するロック解除手段と、前記ロック解除用外力が除かれて前記ロック手段がロック待機状態にあるときに前記係合子を前記第1および第2の回転部材に対して正逆の両方向につき隙間無し状態とする両方向隙間排除手段とを備えた2方向空転・ロック切替えクラッチ。
- 前記係合子がころであり、前記両方向隙間排除手段が、前記係合子をスキューさせるものである請求項1記載の2方向空転・ロック切替えクラッチ。
- 前記ロック手段が、第1および第2の回転部材のうちの一方の回転部材に、回転中心回りに設けた円周軌道面と、他方の回転部材に設けられて前記円周軌道面と対向する複数のカム面と、これら円周軌道面と各カム面との間に各々介在された前記係合子とでなる請求項2記載の2方向空転・ロック切替えクラッチ。
- 前記ロック解除手段が、前記係合子をポケット内に収容して回転部材の回転方向に位置規制状態に保持する保持器と、前記ロック解除用外力が加わることで前記係合子が前記カム面の中立位置となるように前記保持器を前記回転部材に対して拘束状態とする案内手段とでなる請求項3記載の2方向空転・ロック切替えクラッチ。
- 前記各係合子を各ポケット内に収容して回転部材の回転方向に位置規制状態に保持する保持器を設け、前記両方向隙間排除手段は、前記保持器の形態変更により前記係合子をスキュー無し状態とスキュー状態とに切り換えるものとした請求項2ないし請求項4のいずれかに記載の2方向空転・ロック切替えクラッチ。
- 前記保持器は、互いに幅方向に分割されて回転方向の微小な位相ずれが可能な一対の保持器分割体を有し、前記位相ずれにより前記スキューを発生させるものとし、弾性体の復元力で両保持器分割体に位相ずれを生じさせる位相ずれ発生手段と、前記ロック解除用外力により前記位相ずれ発生手段に抗して位相ずれを解除する位相ずれ解除案内とを設けた請求項5記載の2方向空転・ロック切替えクラッチ。
- 前記位相ずれ解除案内が、両保持器分割体の柱部に形成されて互いに斜め方向に噛み合う傾斜噛み合い面からなり、隣合う柱部の傾斜噛み合い面は、互いに逆方向に傾斜するものとした請求項6記載の2方向空転・ロック切替えクラッチ。
- 前記保持器の各ポケット間の柱部に、前記係合子をポケット内面に押し付ける個別予圧用弾性体を設けた請求項6または請求項7記載の2方向空転・ロック切替えクラッチ。
- 前記案内手段が、前記カム溝の形成側の回転部材および前記保持器のいずれか一方に設けられた保持器固定溝と他方に設けられた係合突部とでなり、これら保持器固定溝と係合突部とは、前記外力の非付与状態で互いに緩み状態に噛み合い、かつ前記外力の付与状態で密に噛み合うものとした請求項4ないし請求項8のいずれかに記載の2方向空転・ロック切替えクラッチ。
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