JP3895024B2 - 2方向同時空転・ロック切替えクラッチ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、各種の機器の機械構造部分、例えば、自然状態では正転・逆転方向共に自由に回転できないが、必要に応じて正転・逆転方向共に同時に自由に回転が可能な機能を必要とする機械構造部分に使用できる2方向同時空転・ロック切替えクラッチに関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば、手押し車の車輪やドアの車輪は、何らかの方法で止めない限り、傾斜面においては水平方向の分力や慣性力のために動くことが可能である。このために、用途によっては、外部から車輪にブレーキ機構を付加して危険を防止を図っているのが現状である。
図14に、従来から知られているワンウェイクラッチの代表的な構造例を示す。このクラッチは、軸81、外輪82、ころ83、保持器84、およびばね85で構成されている。外輪82には、傾斜カム面86が設けられており、ばね85は、ころ83をカム面の狭い側に押し付けて、軸固定時には外輪82の時計方向への回転に対しては即座にロックする構造となっている。
図13は、従来のスプラグ式のワンウェイクラッチを示す。このクラッチは、外輪101と内輪102との間に、外径面がカム面となるスプラグ103を介在させ、ばね104でスプラグ103を規制したものである。
また、図15にツーウェイクラッチの代表的な構造例を示す。このクラッチの特徴は、外輪92に、互いに対向する2つの傾斜カム面97を持つことと、保持器94を必要に応じて周方向に移動させるための手段(この例ではレバー98)を持つことである。これによって、時計方向あるいは反時計方向に外輪92のロック方向を切り替える機能を持つことができる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
前記各ワンウェイクラッチは、名前のとおり一方向への回転のみをロックするだけである。ツーウェイクラッチはレバー等の操作によって、時計方向あるいは反時計方向だけにロックする機能があるが、両方向回転共にロックする機能は持っていない。したがって、いずれも、安全性を要求する手押し車の車輪やドア用の車輪等が要求するクラッチとしての機能はなかった。
【0004】
この発明の目的は、正転・逆転方向のいずれの方向にもロック状態を保ち、外部からの操作によって、正転・逆転方向のいずれの方向も同時に回転可能になるという新たな機能を持った2方向同時空転・ロック切替えクラッチを提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
この発明の2方向同時空転・ロック切替えクラッチは、内輪の外径面および外輪の内径面のいずれか一方に、円周方向に揺動自在に複数のスプラグを配置し、前記外径面および前記内径面の他方を、円筒面状のスプラグ接触面としたものである。前記スプラグは、中立角度で前記スプラグ接触面に非接触状態となって内外輪の相対回転を許し、かつ正逆の任意方向に傾くことで前記スプラグ接触面に摩擦接触して内外輪間の相対回転をロックするものとする。また、前記スプラグを前記中立角度に保持する状態と揺動自在な状態とに切り替えるスプラグ角度規制手段を設ける。前記スプラグ角度規制手段は、内外輪間に介在して前記各スプラグの内外輪半径方向の中間部分を円周方向に対してほぼ隙間なく嵌合させるポケットを有する保持器と、内輪または外輪のうちのスプラグ揺動支点側輪と前記保持器とのいずれか一方に設けられた保持器固定用溝と他方に設けられた係合突部とでなり、これら保持器固定用溝と係合突部とは、外力の非付与状態で互いに緩み状態に噛み合い、かつ外力の付与状態で密に噛み合うものとする。前記保持器と前記スプラグ接触面との間に所定の摩擦力を与える弾性体を設ける。なお、前記内輪は、リング状のものに限らず、軸であっても良い。
この構成によると、スプラグ角度規制手段で角度保持しない状態では、スプラグは正逆の両方向に揺動自在であり、内外輪間に相対回転が生じかけると、その回転に伴ってスプラグが傾き、内輪または外輪のスプラグ接触面に摩擦接触する。そのため、内外輪間の相対回転がロックされる。スプラグ角度規制手段でスプラグを中立角度に保持させると、スプラグはスプラグ接触面に非接触状態となって内外輪の相互間の正逆任意方向の回転を許す。このように、この2方向同時空転・ロック切替えクラッチは、正転・逆転方向のいずれの方向にもロック状態を保ち、外部からの操作によって、正転・逆転方向のいずれの方向も同時に回転可能になる。保持器固定用溝と係合突部とは、外力の非付与状態で互いに緩み状態に噛み合い、かつ外力の付与状態で密に噛み合うので、常時は、保持器固定用溝と係合突部とが緩み状態に噛み合っており、この緩み範囲で保持器とスプラグ揺動支点側輪との相対回転が可能となる。そのため、保持器でスプラグを中立角度に保持する機能は生じず、前記のようにスプラグの摩擦接触で内外輪間の両方向の回転がロックされる。保持器に所定の外力を与えると、保持器固定用溝と係合突部とが密に噛み合い、保持器は前記揺動支点側輪に拘束されて、その保持しているスプラグを中立角度に保持する。そのため、回転部材の両方向の回転が可能となる。弾性体は、ロック解除後に外力を除いて再度ロック状態とするときに、内外輪の回転位相のずれに連れて摩擦力で即座に揺動させるものであり、これにより確実に回転ロックが生じる。
【0006】
この構成の2方向同時空転・ロック切替えクラッチにおいて、前記スプラグは、側面形状が略T字状とされ、内輪の外径面および外輪の内径面のいずれか一方に形成された揺動支点溝に基端が揺動自在に係合したものである。
このようにスプラグの側面形状を略T字状とすることで、正逆いずれの方向に傾いた場合にも内外輪間の相対回転をロックする機能が得易い。また、内輪または外輪に形成された揺動支点溝にスプラグの基端を揺動自在に係合させることにより、スプラグの揺動自在な支持を簡単な構造で行える。
【0008】
また、前記構成において、前記保持器固定用溝および係合突部が、互いに軸方向に噛み合うものであり、前記内外輪の回転中心と同芯上で回転可能な操作部材を前記保持器の側面と対面して設け、この操作部材と前記保持器とに、操作部材の回転に伴って前記外力となる軸方向力を前記保持器に作用させる操作用カム面を各々設け、前記操作部材を保持器から離れる方向に付勢する復帰用弾性体を設けても良い。
この構成の場合、回転ロック状態から、操作部材を回転させると、操作用カム面の作用で、保持器に軸方向力が与えられ、保持器固定用溝と係合突部とが密に噛み合う。これより、前記のようにスプラグが中立角度に保持され、内外輪の両方向の相対回転が可能となる。
【0009】
この保持器固定用溝および係合突部は、互いに径方向に噛み合うものとしても良い。この場合に、前記保持器は前記外力で弾性変形可能な材質とし、前記内外輪の回転中心と同芯上で回転可能な操作部材を設け、この操作部材と前記保持器とに、操作部材の回転に伴って前記外力となる径方向力を前記保持器に作用させる操作用カム面を各々設ける。
この構成の場合、回転ロック状態から、操作部材を回転させると、操作用カム面の作用で、保持器に径方向力が与えられ、この径方向力で保持器が弾性変形して、保持器固定用溝と係合突部とが密に噛み合う。これより、前記のようにスプラグが中立角度に保持され、回転部材の両方向の回転が可能となる。
【0010】
【発明の実施の形態】
この発明の第1の実施形態を図1ないし図7と共に説明する。この2方向同時空転・ロック切替えクラッチは、内輪1と、外輪2と、スプラグ3と、保持器4と、板ばね等の弾性体5と、操作部材16Aとで構成される。
内輪1は、図2に示すように厚肉円筒状に形成されており、その外径面にはスプラグ3の揺動支点溝6が円周方向の複数箇所に設けられている。各揺動支点溝6は円弧溝とされ、等間隔に配置されている。内輪1の片側の幅面には、保持器固定用溝7Aが円周方向の複数箇所に設けられている。例えば、保持器固定用溝7Aは揺動支点溝6と交互若しくは1個とびに設けられている。保持器固定用溝7Aは、溝幅の中心部が深くなる断面形状のものであり、この例では概ねV字状の断面形状とされている。なお、内輪1は、この例では円筒状としたが、軸であっても良い。すなわち、軸に直接にカム溝6や保持器固定用溝7Aが加工されていても良い。
【0011】
図1に示すように、外輪2は、その内径面部分を円筒面状のスプラグ接触面2aとしてある。外輪2は、この例では厚肉円筒状の部品としてあるが、外径面は円筒面に限らず、車輪形状や、プーリ形状、あるいはその他の目的に応じた任意形状であっても良い。
スプラグ3は、側面形状が略T字状に形成され、各先端部分が円弧状に丸められたものであり、その脚片部分の基端が内輪1の揺動支点溝6に嵌合して揺動自在に支持されている。このスプラグ3は、直立姿勢となる中立角度でスプラグ接触面2aに非接触状態となって内外輪1,2の相互間の回転を許し、かつ正逆の任意方向に傾くことで前記スプラグ接触面2aに摩擦接触して内外輪1,2間の相対回転をロックするものとしてある。
【0012】
保持器4は、図3に示すように円筒状に形成され、円周方向の複数箇所に、スプラグ3を保持するポケット8が内外径に貫通して形成されている。保持器4の内径面の一側部には鍔部19が形成され、この鍔部19の内面における周方向複数箇所に、内輪1の各保持器固定用溝7Aと噛み合う係合突部9Aが設けられている。係合突部9Aは三角形状の山形とされている。保持器4における係合突部9Aのある幅面と反対側の幅面には、複数のばね固定用ピン10が設けられている。保持器4の係合突部9Aと、内輪1の保持器固定用溝7Aとで、案内手段14Aが構成される。この案内手段14Aと保持器4とで、スプラグ角度規制手段13が構成される。
保持器4のポケット8の断面形状は、図7に拡大して示すように、保持器4の厚み方向の中間部分がスプラグ3の脚片部分の幅と略同じ幅であって、この中間部分よりも外径側に大きく次第に広がり、かつ内径側にも若干広がる形状とされている。この内径側の広がり部分はなくし、図10のようなポケット断面形状としても良い。
【0013】
図4は、保持器4に弾性体5を取付けた状態を示す。弾性体5は、リング状の側板5aと、この側板から放射状に延びるアーム状の複数のばね片5bとからなる板ばねで構成される。ばね片5bは、側板5aから斜め外径側に延びて先端部分が軸方向と略平行となるように折り曲げられており、その先端部分が外輪2の内径面であるスプラグ接触面2aに押し付け状態に接触する。弾性体5は、保持器4に設けられたばね固定用ピン10を側板5aの孔に挿通し、加締ることで保持器4に固定されている。弾性体5の固定は、加締による他に、溶着やねじ止め、あるいは鋲止め、または接着でも良い。
【0014】
弾性体5は、外輪2の回転に対して保持器4が一定の摩擦力を保持して連れ回る機能が得られれば良いのであるから、ばね部材の他にゴム等の弾性体を用いても良い。例えば、図9(A)に変形例を示すように、保持器4の外径面に設けた円周溝にOリング等からなるリング状の弾性体5Aを埋め込むか、あるいはこれとは逆に外輪2の内径面に円周溝を形成してリング状の弾性体を埋め込んでも良い。リング状の弾性体には、Oリングの代わりに、波形に屈曲した線ばねまたは板ばね(図示せず)を用いても良い。また、同図(B)に示すように、保持器4の外径面に局部的に設けた凹部に弾性体5Bを埋め込むようにしても良い。さらに、このような弾性体を設ける代わりに、保持器4を多角形にするか、保持器4の外径面に突部を設けるなどして、保持器4の周方向の複数箇所が外輪2の内径面に当たり、保持器4自体の弾性で外輪2に対して連れ回りが生じる程度の一定の摩擦力が得られるようにしても良い。
【0015】
図1において、操作部材16Aは、円周方向の一部にレバー部16aを有するリング状の部材であり、内輪1を取付けた軸20の外径面に回転自在に嵌合させてある。内輪1は、軸20の小径部と大径部との間の段差面20aから若干離れてその小径部に嵌合状態に固定してあり、また保持器固定用溝7Aのある幅面を前記段差面側に向けて配置してあり、操作部材16Aは、内輪1と前記段差面20aとの間に介在している。
また、図5に示すように操作部材16Aは、保持器4の幅面と対向する面の周方向複数箇所(図示では4か所)に、操作部材16Aの回転に伴って外力FA となる軸方向力を保持器4に作用させる操作用カム面17Aを設けてある。また、これら操作用カム面17Aに各々接する複数の操作用カム面18Aを、保持器4の幅面に形成してある。これら操作用カム面17A,18Aは、緩い勾配のV字状の山形としてある。隣合う操作用カム面17A間の部分は、平坦面部17Bとされている。なお、この緩い勾配のV字状の山形は、操作用カム面17A,18Aのいずれか一方にのみにあっただけでも良く、他は部分的な凸部でもよい。また、保持器4に、前記外力FA と反対方向の外力Pを得る復帰用弾性体21を内蔵状態に取付けてある。この復帰用弾性体21は板ばねからなり、保持器4の内径面に径方向に沿って設けて取付溝22に嵌め込み状態に取付けてある。
【0016】
上記構成のクラッチ機能の説明をする。図1に示す自然状態では、スプラグ3は中立角度となっているが、保持器4は操作部材16Aで押し付けられておらず、内輪1の保持器固定用溝7Aと保持器4の係合突部9Aとは緩み状態で嵌まりあっている。そのため、この保持器固定用溝7Aと係合突部9Aとの隙間分だけ、保持器4は内輪1に対して位相のずれが自在であり、その範囲でスプラグ3は正逆の任意方向に自由に傾動できる。したがって、図6(B)のように外輪2が時計方向に回転しかけ、保持器4が弾性体5による摩擦力で若干の連れ回りを生じると、保持器4でスプラグ3が傾けられ、スプラグ3が外輪2に内径面であるスプラグ接触面2aに強く摩擦接触し、外輪2のそれ以上の時計方向の回転が阻止される。図1の自然状態から、図6(C)のように外輪2が反時計回りに回転しかけたときも、時計回りのときと同様に、スプラグ3で回転が阻止される。このように、操作部材16Aの保持器4に対する非作用状態では、内外輪1,2間の正逆両方向の相対回転がロックされる。
【0017】
図1の状態から、レバー16aの操作により操作部材16Aを略45°回転させると、操作部材16Aと保持器4の操作用カム面17A,18Aの突部同志が当たり、保持器4は内輪1に押し付けられる。そのため、内輪1の保持器固定用溝7Aと保持器4の係合突部9Aとが隙間なく噛み合い、保持器4が内輪1と同じ位相に拘束される。この状態で、保持器4のポケット8に保持されているスプラグ3は中立角度となり、保持器4の位相が拘束されていることから、スプラグ3は中立角度に保持される。スプラグ3は、中立角度では外輪2のスプラグ接触面2aに非接触状態となっており、内外輪1,2の相互間の任意方向の回転を許す。
操作部材16Aを元の角度に戻すと、操作部材16Aによる保持器4の押し付けが解除され、また復帰用弾性体21の付勢力で保持器固定用溝7Aと係合突部9Aとの噛み合いが即座に緩み状態となり、スプラグ3が揺動自在となる。そのため、元の回転ロック状態に戻る。
このように、常時は正転・逆転方向のいずれの方向にもロック状態を保ち、外部からの操作によって、正転・逆転方向のいずれの方向も同時に回転可能になるという従来に例の無い機能を得ることができる。このため、例えば、このクラッチを、手押し車やドア用の軸受と共に使用した場合、手を放せば車輪やドアはその場所に留まっている様な安全な機構が安価に実現できる。
【0018】
この場合に、図7からも分かるように、保持器4はスプラグ3の揺動中心に近い箇所をポケット内面で押すため、僅かな変位wでスプラグ3がロックをする。そのため、図8(A)に示すローラ3Aを用いた比較参考例に比べて、変位wの値は数分の一になり、クラッチ遅れ角が小さくできる。
図8(A)に示す比較参考例の2方向同時空転・ロック切替えクラッチは、スプラグ3に代えてローラ3Aを用い、内輪2にV溝状のカム面6Aを設けたものである。その他の構成はこの実施形態と同じである。このようにローラ3Aを用いても、常時は正転・逆転方向のいずれの方向にもロック状態を保ち、外部からの操作によって、正転・逆転方向のいずれの方向も同時に回転可能になるという機能が得られる。
【0019】
クラッチ遅れ角につき、図8(A)の参考例と比較して計算例を説明する。なお、計算を簡単にするため、途中計算は直線型クラッチとして説明する。各部の実寸は、図8(B)および同図(C)に示すものとする。
図8(B)のローラ式の例において、
δ:径方向隙間
α0 :カム面角度
w1 :ロックまでの移動距離
である。
図8(C)のスプラグ式の例において、
δ:径方向隙間
α1 :中立時のストラト角
α0 :ロック時のストラト角
h1 :回転中心Oから作用点Qまでのスプラグ中心長さ
h2 :作用点Qから先端までのスプラグ中心長さ
である。
▲1▼ローラ3Aの移動量:w1 (中立時からロック時までの移動量)
w1 =δ/ tanα0
▲2▼スプラグの移動量:w2
w2 =h1 ( sinα1 − sinα0 )
これよりα1 を求めると、
α1 = cos -1 〔(h1 +h2 ) cosα0 −δ〕/(h1 +h2 )
▲3▼実用的な値での計算
ここで、δ =0.03
α0 =10°
h1 =2.5
h2 =7.5
とした場合、
w1 =0.170
w2 =0.0406
▲4▼遅れ角度θ(半径R=32,R=35として)
a.ローラの場合
θ= tan -1 (0.17/32)=0.304
b.スプラグの場合
θ= tan -1 (0.046/35)=0.0665
以上のように、スプラグクラッチとすることで、遅れ角θは、ローラ式とした場合の0.0665/0.304倍であり、約1/4.6となる。このように遅れ角θを大幅に小さくすることができる。
【0020】
図11はこの発明の第2の実施形態を示す。この例は、図1〜図8の実施形態に対して、内輪1と保持器4との間に設ける案内手段14、および外力付与用の操作部材16と保持器4との関係を変えたものであり、その他の構成は図1〜図8の実施形態と同じである。
この例では、保持器固定用溝7を内輪1の片側の幅面の外径面に設け、これに噛み合う係合突部9を保持器4の内径面に設けている。操作部材16は、円周方向の一部にレバー部16aを有するリング状の部材であり、内輪1を取付けた軸20の外径面に回転自在に嵌合させてある。内輪1は、軸20の小径部と大径部との間の段差面20aから若干離れてその小径部に嵌合状態に固定してあり、また保持器固定用溝7のある幅面を前記段差面20a側に向けて配置してあり、操作部材16は、内輪1と前記段差面との間に介在している。
操作部材16は、保持器4の外周に位置する鍔状のリング部16bを有し、このリング部16bの内径面の1か所または周方向複数箇所(図示では4か所)に操作部材16の回転に伴って径方向の外力Fを保持器4に作用させる操作用カム面17が設けてある。操作用カム面17は、リング部16bの内径面となる円の一部の弦となる直線に形成してある。また、これら操作用カム面17に各々接する複数の操作用カム面18を、保持器4の外径面に円弧状断面の突部によって形成してある。
この実施形態の場合、操作部材16を略45°回したり、戻したりるすことにより、保持器4に径方向に外力Fが与えられたり、外力Fが解除されたりし、回転ロック状態とそのロックの解除状態とに切替えられる。
【0021】
図12は、この発明の2方向同時空転・ロック切替えクラッチAを車両用のシート背もたれ傾き角度調整装置として利用した例を示す。シート30の背もたれ31は、背もたれ支持部材32に係合自在に支持されており、この背もたれ21の傾動中心と中心位置が一致するように、2方向同時空転・ロック切替えクラッチAが配置される。このクラッチAは、その内輪1および外輪2のいずれか一方が背もたれ支持部材32に固定され、他方が背もたれ31に固定される。なお、背もたれ31には、起立側に付勢する復帰ばね33を設けておく。クラッチAは、前記いずれの実施形態のものであっても良い。
【0022】
【発明の効果】
この発明の2方向同時空転・ロック切替えクラッチは、正転・逆転方向のいずれの方向にもロック状態を保ち、外部からの操作によって、正転・逆転方向のいずれの方向も同時に回転可能になるという従来に例のない機能を持ったものとできる。保持器固定用溝と係合突部とは、外力の非付与状態で互いに緩み状態に噛み合い、かつ外力の付与状態で密に噛み合うので、常時は、保持器固定用溝と係合突部とが緩み状態に噛み合っており、この緩み範囲で保持器とスプラグ揺動支点側輪との相対回転が可能となる。そのため、保持器でスプラグを中立角度に保持する機能は生じず、前記のようにスプラグの摩擦接触で内外輪間の両方向の回転がロックされる。保持器に所定の外力を与えると、保持器固定用溝と係合突部とが密に噛み合い、保持器は前記揺動支点側輪に拘束されて、その保持しているスプラグを中立角度に保持する。そのため、回転部材の両方向の回転が可能となる。弾性体は、ロック解除後に外力を除いて再度ロック状態とするときに、内外輪の回転位相のずれに連れて摩擦力で即座に揺動させるものであり、これにより確実に回転ロックが生じる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(A)はこの発明の第1の実施形態にかかるクラッチの破断正面図、(B)は同図(A)のI−I線断面図である。
【図2】同クラッチの内輪の斜視図である。
【図3】同クラッチの保持器の斜視図である。
【図4】同保持器に弾性体を取付けた状態の斜視図である。
【図5】(A)はその保持器と操作部材の関係を示す斜視図、(B)は同保持器にばね部材および復帰用弾性体を取付けた状態の斜視図、(C)はその復帰用弾性体の斜視図である。
【図6】作用説明図である。
【図7】スプラグ部分の拡大断面図である。
【図8】(A)は比較提案例となる2方向同時空転・ロック切替えクラッチの要部の断面図、(B)はその寸法関係の説明図、(C)は前記実施形態にかかるクラッチの寸法関係の説明図である。
【図9】(A)は保持器と弾性体との組み合わせの変形例の部分断面図、(B)は他の変形例の部分断面図である。
【図10】スプラグと保持器のポケット部の変形例との関係を示す拡大断面図である。
【図11】(A)はこの発明の第2の実施形態にかかるクラッチの破断正面図、(B)はその断面図である。
【図12】この発明の2方向同時空転・ロック切替えクラッチを応用したシート背もたれ傾き角度調整装置の側面図である。
【図13】従来例の断面図である。
【図14】他の従来例の断面図である。
【図15】さらに他の従来例の断面図である。
【符号の説明】
1…内輪
2…外輪
3…スプラグ
4…保持器
5…弾性体
7A…保持器固定用溝
9A…係合突部
13…スプラグ角度規制手段
14A…案内手段
16A…操作部材
17,18…操作用カム面
17A,18A…操作用カム面
21…復帰用弾性体
Claims (4)
- 内輪の外径面および外輪の内径面のいずれか一方に、円周方向に揺動自在に複数のスプラグを配置し、前記外径面および前記内径面の他方を、円筒面状のスプラグ接触面とし、前記スプラグは、中立角度で前記スプラグ接触面に非接触状態となって内外輪の相対回転を許し、かつ正逆の任意方向に傾くことで前記スプラグ接触面に摩擦接触して内外輪間の相対回転をロックするものとし、前記スプラグを前記中立角度に保持する状態と揺動自在な状態とに切り替えるスプラグ角度規制手段を設け、
前記スプラグ角度規制手段は、内外輪間に介在して前記各スプラグの内外輪半径方向の中間部分を円周方向に対してほぼ隙間なく嵌合させるポケットを有する保持器と、内輪または外輪のうちのスプラグ揺動支点側輪と前記保持器とのいずれか一方に設けられた保持器固定用溝と他方に設けられた係合突部とでなり、これら保持器固定用溝と係合突部とは、外力の非付与状態で互いに緩み状態に噛み合い、かつ外力の付与状態で密に噛み合うものとし、前記保持器と前記スプラグ接触面との間に所定の摩擦力を与える弾性体を設けた2方向同時空転・ロック切替えクラッチ。 - 前記スプラグは、側面形状が略T字状とされ、内輪の外径面および外輪の内径面のいずれか一方に形成された揺動支点溝に基端が揺動自在に係合したものである請求項1記載の2方向同時空転・ロック切替えクラッチ。
- 前記保持器固定用溝および係合突部が、互いに軸方向に噛み合うものであり、前記内外輪の回転中心と同心上で回転可能な操作部材を前記保持器の側面と対面して設け、この操作部材と前記保持器とに、操作部材の回転に伴って前記外力となる軸方向力を前記保持器に作用させる操作用カム面を各々設け、前記操作部材を保持器から離れる方向に付勢する復帰用弾性体を設けた請求項1または請求項2記載の2方向同時空転・ロック切替えクラッチ。
- 前記保持器固定用溝および係合突部が、互いに径方向に噛み合うものであり、前記保持器は前記外力で弾性変形可能な材質とし、前記内外輪の回転中心と同芯上で回転可能な操作部材を設け、この操作部材と前記保持器とに、操作部材の回転に伴って前記外力となる径方向力を前記保持器に作用させる操作用カム面を各々設けた請求項1記載の2方向同時空転・ロック切替えクラッチ。
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---|---|---|---|
JP35494797A JP3895024B2 (ja) | 1997-12-24 | 1997-12-24 | 2方向同時空転・ロック切替えクラッチ |
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JP35494797A JP3895024B2 (ja) | 1997-12-24 | 1997-12-24 | 2方向同時空転・ロック切替えクラッチ |
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Publication Number | Publication Date |
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JPH11182589A JPH11182589A (ja) | 1999-07-06 |
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