JP3776715B2 - 熱転写シート - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はサーマルヘッド等の加熱手段を用いる熱転写プリンターに使用される熱転写シートに関し、更に詳しくは基材フィルムの一方の面に加熱により溶融又は昇華する転写インキ層を設け、サーマルヘッドが接する基材フィルムの他方の面に、特定の材料から背面層を構成し、サーマルヘッドにカスが付着することを防止し、印画安定性、走行安定性に優れた熱転写シートに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
熱転写シートの基材として熱に弱いプラスチックフィルムを用いる場合には、印画時にサーマルヘッドにフィルムが粘着(スティッキング)して、カスが付着することで剥離性、スリップ性が損なわれたり、基材フィルムが破れたりする問題がある。このため耐熱性の高い熱硬化性樹脂等からなる耐熱層を形成する方法が提案されているが、この方法により耐熱性は向上するものの、サーマルヘッドのスリップ性は改善されず、また架橋剤等の硬化剤の使用が必要であることから、塗工液として2液タイプとなってしまう。更に基材が高温処理の出来ないプラスチック薄膜フィルムであることから、充分な硬化皮膜を得るために塗工後に比較的低温度で数十時間に及ぶ長期の熱処理(エージング)が必要とされる。これは、工程上煩雑であるばかりでなく、厳格な温度管理をしないと、熱処理中にシワが発生したり、塗工面と接触する反対面とが接着してしまい、ブロッキングしてしまうという問題がある。
【0003】
スリップ性の向上のためにはシリコーンオイル、低融点WAX、界面活性剤等の比較的低融点の滑剤を添加することが提案されているが、これらの滑剤は低融点であることから、熱転写シートを巻き取った際に反対面に移行したり、印画時にサーマルヘッドを汚染するという問題がある。またこれら付着物を除去するためにフィラーを添加する方法があるが、不適当なものを使用した場合にはサーマルヘッドとの摩擦係数が増加して印画時にシワが発生したり、サーマルヘッドを摩耗させたりする問題がある。
【0004】
これらの問題点を解決するために特開昭61−184717公報及び特開昭62−220385公報ではシリコン変性ポリウレタン樹脂からなる背面層、特開平5−229271公報ではポリシロキサン−ポリアミド系ブロック共重合体からなる耐熱性保護層、特開平5−229272公報ではシリコーン変性ポリイミド樹脂を含む耐熱保護層が提案されているが、樹脂としての耐熱性が低いため高エネルギ一印画でスティックしたり、特殊溶媒を使用するため製造性や対環境性が悪いという欠点があった。また、特開平8−113647公報及び特開平8−244369公報ではポリアミドイミド樹脂組成物、特開平10−297124公報ではポリアミドイミド樹脂に潤滑剤を含む耐熱保護層が提案されているが、いずれも耐熱性が充分でなく高エネルギー印画でヘッドにカスが付着して印画に影響が現れる問題があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
したがって、本発明の目的は、以上の如き従来技術の欠点を解決し、環境性に優れた一般溶剤を使用した1液型塗工液を使用し、エージング等の熱処理を要すること無く、優れた耐熱性、スリップ性を有する背面層を設けた熱転写シートを提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は基材フィルムの一方の面に加熱により溶融又は昇華する転写インキ層を設け、サーマルヘッドが接する基材フィルムの他方の面に背面層を設けている熱転写シートにおいて、該背面層が示差熱分析によるTgが200℃以上であるポリアミドイミド樹脂とポリアミドイミドシリコーン樹脂を、混合比が、1対5から5対1で、混合したものをバインダーとし、更に構造式1(Rは炭素数12以上のアルキル基を、Mはアルカリ土類金属、亜鉛又はアルミニウムであり、nはMの原子価を表す)で表される化合物であるアルキルリン酸エステルの多価金属塩をバインダー100質量部当たり1乃至100質量部の割合で混合し、またタルクを、バインダー100質量部当たり2乃至20質量部の割合で混合したものである。
【化3】
Figure 0003776715
上記のポリアミドイミド樹脂及びポリアミドイミドシリコーン樹脂の示差熱分析によるTgが200℃未満であると、耐熱性が不足してしまう。また、本発明では上記ポリアミドイミド樹脂及びポリアミドイミドシリコーン樹脂を混合して用い、その混合比は1対5から5対1の範囲であり、特に1対2から2対1の範囲が好ましい。1対5よりポリアミドイミドシリコーン樹脂が多いと耐熱性が不足してヘッドカスが生じ易く、5対1よりポリアミドイミドシリコーン樹脂が少ないと滑性が不足してスティッキングを生じる。
【0007】
前記のアルキルリン酸エステルの多価金属塩が、バインダー100質量部当たり1乃至100質量部の割合で混合され、特に好ましくは5乃至20の範囲が良い。アルキルリン酸エステルの多価金属塩の使用量が、上記範囲未満であると熱印加時における充分な離型性を得ることができず、サーマルヘッドにカスが付着しやすくなる。一方、アルキルリン酸エステルの多価金属塩の使用量が上記範囲を越えると、背面層の物理的強度が低下するので好ましくない。また、前記のタルクが、バインダー100質量部当たり2乃至20質量部の割合で混合されていて、背面層の滑性と耐熱性においてバランスがとれ、良好な結果となる
【0008】
前記のアルキルリン酸エステルの多価金属塩に、アルキルカルボン酸の多価金属塩を、混合比が1対9から9対1で、混合することが好ましい。前記のアルキルカルボン酸の多価金属塩が、構造式2(Rは炭素数11以上のアルキル基を、Mはアルカリ土類金属、亜鉛又はアルミニウム、リチウムであり、nはMの原子価を表す)で表される化合物であることが好ましい。
【化4】
Figure 0003776715
【0009】
前記の背面層にポリエステル樹脂を、バインダー100質量部当たり0.5乃至10質量部の配合で混合させて、基材フィルムとの接着性を高めることができる。ポリエステル樹脂の配合量が上記範囲より少ないと、基材フィルムとの接着性が不足し、剥離しやすく、一方その配合量が上記範囲より多いと、耐熱性が低下してくる。
【0010】
【発明の実施の形態】
次に、実施形態を挙げて本発明を更に詳しく説明する。
(基材フィルム)
本発明の熱転写シートを構成する基材フィルムとしては、従来公知のある程度の耐熱性と強度を有するものであればいずれのものでも良く、例えば、0.5〜50μm、好ましくは3〜10μm程度の厚さのポリエリレンテレフタレートフィルム、1,4−ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリフェニレンサルフィドフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリサルホンフィルム、アラミドフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、セロハン、酢酸セルロース等のセルロース誘導体、ポリエチレンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ナイロンフィルム、ポリイミドフィルム、アイオノマーフィルム等の他に、コンデンサー紙、パラフィン紙、等の紙類や不織布等又は紙や不織布と樹脂との複合体であってもよい。
【0011】
(背面層)本発明は基材フィルムの一方の面に加熱により溶融又は昇華する転写インキ層を設け、サーマルヘッドが接する基材フィルムの他方の面に背面層を設けている熱転写シートにおいて、該背面層が示差熱分析によるTgが200℃以上であるポリアミドイミド樹脂とポリアミドイミドシリコーン樹脂を、混合比が、1対5から5対1で、混合したものをバインダーとし、更に構造式1(Rは炭素数12以上のアルキル基を、Mはアルカリ土類金属、亜鉛又はアルミニウムであり、nはMの原子価を表す)で表される化合物であるアルキルリン酸エステルの多価金属塩をバインダー100質量部当たり1乃至100質量部の割合で混合し、またタルクを、バインダー100質量部当たり2乃至20質量部の割合で混合したものである。
【化5】
Figure 0003776715
本発明では、上記ポリアミドイミド樹脂及びポリアミドイミドシリコーン樹脂を混合して用いる。その混合比は1対5から5対1の範囲であり、特に1対2から2対1の範囲が好ましい。1対5よりポリアミドイミドシリコーン樹脂が多いと耐熱性が不足して、ヘッドカスが生じ易く、5対1よりポリアミドイミドシリコーン樹脂が少ないと、滑性が不足してスティッキングを生じる。
【0012】
使用されるポリアミドイミド樹脂及びポリアミドイミドシリコーン樹脂は特開平8−244369公報、特開平8−113647公報に記載されているものと同様で、その中でも特に示差熱分析によるTgが200℃以上のものを用いることが好ましい。また本発明で用いるポリアミドイミドシリコーン樹脂については多官能シリコーン化合物として分子量1000から6000のものを用い、共重合又は変性量をポリアミドイミド樹脂1に対し0.01から0.3にしたものが特に好ましい。
尚、使用するポリアミドイミド樹脂は、アルコール系溶剤に可溶であるものが好ましい。また、ポリアミドイミド樹脂に対して、共重合又は変性させる多官能シリコーン化合物は、水酸基、カルボキシル基、エポキシ基、アミノ基、酸無水物基、不飽和基のいずれかを有するシリコーン化合物が好ましく、用いられる。
ポリアミドイミド樹脂及びポリアミドイミドシリコーン樹脂のTgが200℃未満では耐熱性が不足し、共重合又は変性量が少なすぎると上記混合範囲で充分な滑性が得られず、スティッキングを生じ易くなる。また共重合又は変性量が多すぎると、耐熱性や膜の強度が低下する。
【0013】
本発明では更に上記樹脂バインダーに構造式1(Rは炭素数12以上のアルキル基を、Mはアルカリ土類金属、亜鉛又はアルミニウムであり、nはMの原子価を表す)で表される化合物であるアルキルリン酸エステルの多価金属塩を添加する。アルキルリン酸エステルの多価金属塩は、アルキルリン酸エステルのアルカリ金属塩を多価金属で置換することによって得られる。これ自体はプラスチック用添加剤として公知のものであり、種々のグレードのものが入手可能である。
【0015】
上記アルキルリン酸エステルの多価金属塩の使用量は前記バインダー100質量部当たり1乃至100質量部の割合であり、特に好ましくは5乃至20の範囲が良い。アルキルリン酸エステルの多価金属塩の使用量が上記範囲未満であると、熱印加時における充分な離型性を得ることができず、サーマルヘッドにカスが付着しやすくなる。一方、その使用量が上記範囲を越えると、背面層の物理的強度が低下するので好ましくない。
【0016】
又、本発明では上記の材料から背面層を形成するに当たり、本発明の目的達成を妨げない範囲において、ワックス、高級脂肪酸アミド、エステル、界面活性剤等の熱離型剤や滑剤を包含させることができる。特にリン酸エステルやアルキルカルボン酸の多価金属塩を混合することが好ましく、前記アルキルリン酸エステルの多価金属塩に対し混合比が1対9から9対1、好ましくは2対8から8対2の範囲で添加するのが良い。添加剤量が多すぎると、サーマルヘッドにカスが付着しやすくなり、少なすぎると添加効果は無くなってくる。更に使用するアルキルカルボン酸の多価金属塩は構造式2(Rは炭素数11以上のアルキル基を、Mはアルカリ土類金属、亜鉛又はアルミニウム、リチウムであり、nはMの原子価を表す)で表され、そのRがヘキサデシル基、ドデシル基、ヘプタデシル基等の炭素数11以上のアルキル基、特にドデシル基、ヘプタデシル基であり、Mがバリウム、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属、亜鉛またはアルミニウム、リチウムであるものである。nはMの原子価を示す。Rの炭素数が少ないと、工業用途での入手が困難でコストがかかり、更に全体の分子量が低下することで滑剤の背面層からのブリードや他所への汚染性が問題となるため適当でない。Mは使用する温度条件によって金属種を選択することができる。参考までに融点を示すと、バリウム系195℃以上、カルシウム系140〜180℃程度、マグネシウム系110〜140℃程度、亜鉛系110〜140℃程度、アルミニウム系110〜170℃程度、リチウム系200℃以上である。本用途ではマグネシウム系、亜鉛系、アルミニウム系が特に好ましい。本発明では更に耐熱性を向上する目的から背面層にフィラーを添加する。本発明で使用する耐熱粒子それ自体は種々公知であり、例えばハイドロタルサイトDHT−4A(共和化学工業製)、タルクミクロエースL−1(日本タルク製)、同ミクロエースP−3(日本タルク製)、テフロンルブロンL−2(ダイキンエ業製)、弗化グラファイトSCP−10(三宝化学工業製)、黒鉛AT40S(オリエンタル産業製)、或いはシリ力炭酸カルシウム、沈降性硫酸バリウム、尿素樹脂架橋粉、メラミン樹脂架橋粉、木粉、2硫化モリブデン、窒化ホウ素等の微粒子等が挙げられるが、耐熱性と滑性のバランスからタルクを使用する。
【0017】
フィラーの添加量も重要でありタルクがバインダー100重量部当たり2乃至20重量部の割合で混合されていると、上記の滑性及び耐熱性が良好であり、特に5乃至15の範囲が好ましい。この範囲未満であると耐熱性の向上が認められず、サーマルヘッドに融着が見られ、この範囲を越えると背面のサーマルヘッドとの滑性が低下したり、印画したときにスジが印画面に現れる。
これは物理的にもろくなった背面層がサーマルヘッドに擦られて剥離することで生じるものと考えられる。
本発明では更に背面層にポリエステル樹脂を混合し、基材フィルムとの接着性を高めることができる。その際に好ましいポリエステル樹脂の配合量はバインダー100質量部当たり0.5乃至10質量部であり、この範囲未満では背面層の基材フィルムへの接着性が不足して剥離が生じ、この範囲より多いと耐熱性が低下するので好ましくない。特に好ましい範囲は、1乃至10質量部である。
【0018】
背面層を形成するには、上記の如き材料をバインダーの溶媒であるトルエン/エタノール=1/1溶媒で溶解又は分散させて塗工液を調整し、この塗工液をグラビアコーター、ロールコーター、ワイヤーバー等の慣用の塗工方法で塗工し、乾燥することで形成される。その塗工量、すなわち背面層の塗工量も重要で本発明では乾燥固形基準で0.7g/m2以下、好ましくは0.1乃至0.6g/m2の厚みで充分な性能を有する背面層を形成することができる。
背面層が厚すぎると印画時の感度が低下するので好ましくない。
【0019】
(転写インキ層)
上記基材フィルムの他方の面に形成する転写インキ層としては、昇華型熱転写シートの場合には昇華性の染料を含む層、すなわち熱昇華性の染料層を形成し、一方、熱溶融型の熱転写シートの場合には顔料等で着色した熱溶融性インキ層を形成する。
以下昇華型熱転写シートの場合を代表例として説明するが、本発明は昇華型熱転写シートのみに限定されるものではない。昇華型の転写インキ層に用いられる染料としては、従来、公知の熱転写用シートに使用されている染料はいずれも本発明に使用可能であり特に限定されない。例えば、いくつかの好ましい染料としては、赤色染料として、MS RED G、Macro Red VioretR、Ceres Red 7B、Samaron Red HBSL、Resolin Red F3BS等が挙げられ、又、黄色の染料としては、ホロンブリリアントイエロー6GL、PTY−52、マクロレックスイエロー6G等が挙げられ、又、青色染料としては、カヤセットブルー714、ワクソリンブルーAP−FW、ホロンブリリアントブルー−S−R、MSブルー100等が挙げられる。
【0020】
上記のごとき染料を担持する為のバインダー樹脂として好ましいものを例示すれば、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルヒドロキシセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、酢酸セルロース、酢酪酸セルロース等のセルロース系樹脂、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセトアセタール、ポリビニルピロリドン等のビニル系樹脂、ポリ(メタ)アクリレート、ポリ(メタ)アクリルアミド等のアクリル樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂等が挙げられるが、これらの中では、セルロース系、ビニル系、アクリル系、ウレタン系及びポリエステル系等の樹脂が耐熱性、染料の移行性等の点から好ましい。
【0021】
染料層は、前記基材フィルムの一方の面に、以上の如き染料及びバインダーに必要に応じて添加剤、例えば、離型剤や無機の微粒子などを加えたものを、トルエン、メチルエチルケトン、エタノール、イソプロピルアルコール、シクロヘキサノン、DMF等の適当な有機溶剤に溶解したり、或いは有機溶剤や水に分散した分散体を、例えば、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、グラビア版を用いたリバースロールコーティング印刷法等の手段により塗布及び乾燥して形成することが出来る。この様にして形成する染料層は0.2〜5.0μm、好ましくは0.4〜2.0μm程度の厚さであり、又、染料層中の昇華性染料は、染料層の質量の5〜90質量%、好ましくは10〜70質量%の量で存在するのが好適である。形成する染料層は所望の画像がモノカラーである場合には、前記染料のうちから1色を選んで形成し、又、所望の画像がフルカラー画像である場合には、例えば、適当なシアン、マゼンタ及びイエロー(更に必要に応じてブラック)を選択して、イエロー、マゼンタ及びシアン(更に必要に応じてブラック)の染料層を形成する。
【0022】
上記の如き熱転写シートを用いて、画像を形成するために使用する、被転写材である受像シートは、その記録面が前記の染料に対して染料受容性を有するものであればいかなるものでもよく、又、染料受容性を有しない紙、金属、ガラス、合成樹脂などである場合には、その少なくとも一方の表面に染料受容層を形成すればよい。又、熱溶融型の熱転写シートの場合には、被転写材は特に限定されず、通常の紙やプラスチックフィルムであってもよい。上記の熱転写シート及び上記の如きシートを使用して熱転写を行う際に使用するプリンターとしては、公知の熱転写プリンターがそのまま使用可能であり、特に限定されない。
【0023】
本発明を更に詳細に説明するために、以下実施例を挙げるが、もちろん本発明は実施例によって何等制限されるものではない。
尚、文中、部又は%とあるのは特に断りの無い限り質量基準である。
【実施例】
ポリアミドイミド樹脂(HR−15ET、東洋紡績(株)製)
ポリアミドイミドシリコーン樹脂(HR−14ET、東洋紡績(株)製)
ジンクステアリルホスフェート(LBT1830、堺化学(株)製)
タルク(ミクロエースP−3、日本タルク(株)製)
ポリエステル樹脂(バイロン220、東洋紡績(株)製)
【0024】
上記の材料をそれぞれエタノール/トルエン=1/1溶剤で固形分10%になるように調整した。それぞれ第1、2表の様に混合し、撹絆後、ペイントシェーカーで3時間分散処理を行ない背面層用インキとした。これらのインキを各々ポリエステルフィルム(厚み6μm、ルミラーF53、東レ(株)製)の一方の面にワイヤーバーコーターを用い乾燥時の質量基準で所定のコート量になるように塗工し、80℃のオーブン内で1分間乾燥処理し、背面層を形成した。第1、2表に示す配合量の背面層用インキを作製し、このようにして実施例1〜5、実施例6〜9、実施例14〜17、実施例18〜21、実施例22〜26、比較例1〜8を作製した。
【0025】
【表1】
Figure 0003776715
【表2】
Figure 0003776715
【0026】
本発明の範囲に入る材料のバリエーションとして上記材料からジンクステアリルホスフェートをアルミニウムステアリルホスフェート(LBT1813、堺化学(株)製)に変更し、それ以外は上記と同様の方法で背面層を作製したものを実施例13とした。
上記材料に更にその他の滑剤を添加する例として燐酸エステル系界面滑性剤(プライサーフA−208S、第一工業製薬(株)製)を固形分10%になるように調整して5部及び10部添加したものを上記と同様の方法で背面層としたものをそれぞれ実施例11、12とした。
ヘプタデシル基をもつカルボン酸亜鉛(ジンクステアレートGF−200、日本油脂(株)製)を固形分10%になるように調整して、表1に示す配合量の背面層用インキを作製し、実施例12.1〜12.7を作製した。
ドデシル基をもつカルボン酸亜鉛(ジンクラウレートGP、日本油脂(株)製)を固形分10%になるように調整して、表1に示す配合量の背面層用インキを作製し、実施例12.8、12.9を作製した。
ヘプタデシル基をもつカルボン酸アルミニウム(アルミニウムステアレート#600、日本油脂(株)製)を固形分10%になるように調整して、表1に示す配合量の背面層用インキを作製し、実施例12.9aを作製した。
ドデシル基をもつカルボン酸アルミニウム(アルミニウムラウレート)を固形分10%になるように調整して、表1に示す配合量の背面層用インキを作製し、実施例12.9bを作製した。
ヘプタデシル基をもつカルボン酸マグネシウム(マグネシウムステアレートGF200、日本油脂(株)製)を固形分10%になるように調整して、表1に示す配合量の背面層用インキを作製し、実施例12.9cを作製した。
ヘプタデシル基をもつカルボン酸カルシウム(カルシウムステアレートGF200、日本油脂(株)製)を固形分10%になるように調整して、表1に示す配合量の背面層用インキを作製し、実施例12.9dを作製した。
ヘプタデシル基をもつカルボン酸リチウム(S−7000、堺化学(株)製)を固形分10%になるように調整して、表1に示す配合量の背面層用インキを作製し、実施例12.9eを作製した。
これらについて印画評価を行なったところ第3、4表の様な結果が得られた。
但し、実施例1〜26(実施例12.1〜12.9、実施例12.9a〜12.9eを含む)、比較例1〜9について上記の通り、基材フィルムの一方の面に背面層を設け、該基材フィルムの他方の面には、転写インキ層として、全ての例について、染料層を設けた。染料層は、三菱電機(株)製昇華プリンターCP770用熱転写シートの染料層の条件に合わせた。また、以下の評価で被転写材として使用するものは、三菱電機(株)製昇華プリンターCP770用受像シート(標準タイプ)である。
【0027】
【表3】
Figure 0003776715
【表4】
Figure 0003776715
【0028】
尚、本実施例中の評価は以下の方法、基準で行なった。
(熱融着性)
京セラ製サーマルヘッドKST−105−13FANを用いこれに4KgWの荷重、印画エネルギー0.11W/dotで50%斜線パターンを100m印画した際、サーマルヘッド発熱体上の付着物の量を顕微鏡で観測した。
評価基準は付着物の厚みが5000Åより大きい場合は×、5000から3000Åの場合は△、3000Åより少ない場合は○とした。
【0029】
(動摩擦係数)
京セラ製サーマルヘッドKST−105−13FANを用い、これに4KgWの荷重を掛け、サーマルヘッドと背面層との動摩擦係数を測定した。
評価基準は動摩擦係数0.35より大きい場合を×、0.35〜0.30を△、0.30より下を○とした。
【0030】
(背面層の剥がれ)
三菱電機(株)製昇華プリンターCP770でベタ画像を印画した際に、印画面に現れるスジを観察した。
評価基準は1画面当たりスジが10本より多い場合は×、10〜3本の場合は△、3本より少ない場合を○とした。
【0031】
(印画感度)
三菱電機(株)製昇華プリンターCP770で濃度ステップパターンを印画した際に、印画濃度を反射濃度計マクベスRD918により測定した。
評価基準は反射濃度1.0のステップで濃度低下が従来品のものと比べ0.20より大きいものを×、0.10〜0.20の濃度低下のものは△、0.10より濃度低下が少ない場合を○とした。
【0032】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の背面層は一般溶剤で1液状態の塗工が可能であり、本発明の背面層を設けた熱転写シートは、基材フィルムの一方の面に加熱により溶融又は昇華する転写インキ層を設け、該基材フィルムの他方の面に背面層を設けたもので、背面層が示差熱分析によるTgが200℃以上であるポリアミドイミド樹脂とポリアミドイミドシリコーン樹脂を、混合比が、1対5から5対1で、混合したものをバインダーとし、更に構造式1(Rは炭素数12以上のアルキル基を、Mはアルカリ土類金属、亜鉛又はアルミニウムであり、nはMの原子価を表す)で表される化合物であるアルキルリン酸エステルの多価金属塩をバインダー100質量部当たり1乃至100質量部の割合で混合し、またタルクを、バインダー100質量部当たり2乃至20質量部の割合で混合したことにより、サーマルヘッドの熱によるフィルムの融着を防ぐことが出来、高滑性でしかも高エネルギーに耐え得るため、サーマルヘッドヘのカスの付着を防止し、高速印画が可能で、印画安定性、走行安定性に優れている。

Claims (4)

  1. 基材フィルムの一方の面に加熱により溶融又は昇華する転写インキ層を設け、サーマルヘッドが接する基材フィルムの他方の面に背面層を設けている熱転写シートにおいて、該背面層が示差熱分析によるTgが200℃以上であるポリアミドイミド樹脂とポリアミドイミドシリコーン樹脂を、混合比が、1対5から5対1で、混合したものをバインダーとし、更に構造式1(Rは炭素数12以上のアルキル基を、Mはアルカリ土類金属、亜鉛又はアルミニウムであり、nはMの原子価を表す)で表される化合物であるアルキルリン酸エステルの多価金属塩をバインダー100質量部当たり1乃至100質量部の割合で混合し、またタルクを、バインダー100質量部当たり2乃至20質量部の割合で混合したものであることを特徴とする熱転写シート。
    Figure 0003776715
  2. 前記のアルキルリン酸エステルの多価金属塩に、アルキルカルボン酸の多価金属塩を、混合比が1対9から9対1で、混合することを特徴とする請求項1に記載する熱転写シート。
  3. 前記のアルキルカルボン酸の多価金属塩が、構造式2(Rは炭素数11以上のアルキル基を、Mはアルカリ土類金属、亜鉛又はアルミニウム、リチウムであり、nはMの原子価を表す)で表される化合物であることを特徴とする請求項2に記載する熱転写シート。
    Figure 0003776715
  4. 前記の背面層にポリエステル樹脂を、バインダー100質量部当たり0.5乃至10質量部の配合で混合したことを特徴とする請求項1または3に記載する熱転写シート。
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