JP3766527B2 - 保護層転写シートおよび印画物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は保護層転写シートおよび印画物に係り、特に基材上に画像を有する印画物の画像に対して優れた耐久性を付与することができる保護層転写シートと、耐久性に優れた画像を有する印画物に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、熱転写方式を用いて基材に階調画像や文字、記号等の単調画像を形成することが行われている。熱転写方式としては、感熱昇華転写方式と感熱溶融転写方式が広く用いられている。
【0003】
このうち、感熱昇華転写方式は、色材として用いる昇華性染料をバインダー樹脂に溶融あるいは分散させた染料層を基材シ−トに担持させた熱転写シートを使用し、この熱転写シートを基材(必要に応じて染料受容層を備えた基材)に重ねてサーマルヘッド等の加熱デバイスに画像情報に応じたエネルギーを印加することにより、熱転写シート上の染料層中に含まれる昇華性染料を基材に移行させて画像を形成する方法である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記の感熱昇華転写方式は、熱転写シートに印加するエネルギー量によってドット単位で染料の移行量を制御できるため、階調性画像の形成に優れているものの、形成された画像は通常の印刷インキによるものとは異なり、色材が顔料でなく比較的低分子量の染料であり、且つビヒクルが存在しないため耐光性、耐候性、耐摩擦性等の耐久性に劣るという欠点がある。
【0005】
上記の欠点を解決する手段として、例えば、形成された画像上に紫外線吸収剤等を含有した保護層を転写形成する方法がある。このような方法により画像の耐久性を改善せしめることは可能であるが、従来の保護層転写シートでは耐光性が充分でなく、特にシアン染料が褪色しやすいため、光照射により画像が濃度低下するとともに、赤く色相変化し画像品質が大きく損なわれるというという問題があった。
【0006】
上記欠点を解決する他の方法として、特にシアン染料の耐光性に優れた芳香族ポリカーボネート樹脂を基材の染料受容層に使用する方法がある(特開昭62−169694号公報、特開平5−131758号公報等)。さらに、ガラス転移温度Tgを低下させることにより、芳香族ポリカーボネート樹脂を使用した染料受容層における染料の転写感度を向上させることが開示されている(特開平2−301487号公報、特開平2−80291号公報等)。
【0007】
このような芳香族ポリカーボネート樹脂を、上記の保護層転写シートの保護層として使用することが考えられる。しかし、この場合、上記の各公報の大部分において好適とされる、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン〔ビスフェノールA〕から誘導された下記一般式で示されるポリカーボネート樹脂や、特開平2−301487号公報に記載の共重合ポリカーボネート樹脂は、溶剤に対する溶解性が低く、保護層転写シートの製造に際して、塩化メチレン、トリクロロメタン等の塩素系溶剤を使用する必要があり、作業環境上好ましくないという問題がある。
【0008】
【化4】
(上記一般式中、nは整数を表す)
また別の問題として、従来の保護層転写シートは、キックバックを生じやすいという問題があった。キックバックとは、保護層と染料層を共通の転写シートに面順次に設けた、一体型の転写シートの製造工程において、複数回の巻き取り、例えば、塗布終了後の巻き取り、その後のスリッター時の巻き取り、製品形態であるボビンへの巻き取り等、保護層と染料層を塗布後に巻き返す各工程において、次の工程まで巻き取り状態で保存している間に、まず、基材シートの背面側に染料層から染料が移行し(キック)、ついで次の工程で巻き返した際にキックした染料が、向かい合う基材シートの表側に再移行(バック)することである。各工程で作成されるロール中において、対向する面は各工程で異なるため、キックバックにより保護層表面に各色の染料が移行するという問題が発生する。
【0009】
このキックバックが透明である保護層に発生すると、画像に保護層を転写した際に、キックバックした染料で画像が着色し、画像品質を大きく損なうという問題があった。
【0010】
本発明は、上述のような事情に鑑みてなされたものであり、画像の各種耐久性、特に耐光性等を長期間維持できる保護層転写シートと、これを用いて耐久性を高めた印画物を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
このような目的を達成するために、本発明の保護層転写シートは、基材シートの一方の面の少なくとも一部に熱転写性の保護層を備え、該保護層は非ハロゲン系溶剤に可溶でガラス転移温度Tgが80℃以上である芳香族ポリカーボネート樹脂を少なくとも含有し、前記芳香族ポリカーボネート樹脂は、下記一般式1で表される構成単位と70モル%以下の範囲で含有される下記一般式2で表される構成単位とのランダム共重合体、または、下記一般式1で表される構成単位のみからなるホモポリマーであり、粘度平均分子量が5,000〜100,000の範囲であるような構成とした。
【0013】
【化5】
【0014】
【化6】
また、本発明の保護層転写シートは、前記保護層が、それぞれガラス転移温度Tgが80℃以上であるアクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂およびポリビニルアセタール系樹脂の少なくとも1種を含有するような構成とした。
【0015】
また、本発明の保護層転写シートは、前記保護層が、反応性紫外線吸収剤とアクリル系モノマーとがランダム共重合したガラス転移温度Tgが60℃以上で分子量が5,000〜250,000の範囲である下記一般式3で表されるランダム共重合体を含有するような構成とした。
【0016】
【化7】
(上記式3中、mおよびnは整数を表す)
さらに、本発明の保護層転写シートは、前記保護層がベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を含有するような構成とした。
【0017】
本発明の印画物は、基材と、該基材の少なくとも一方の面に少なくとも染料で着色された画像と、該画像の少なくとも一部を覆うように設けられた保護層を備え、該保護層は上記のいずれかの保護層転写シートを用いて転写形成されたものであるような構成とした。
【0018】
上記のような本発明では、保護層は作業環境上好ましくない塩素系溶剤を使用することなく形成されるとともに紫外線吸収性と耐久性に優れ、かつ、キックバックが極めて生じ難いものであり、このような保護層を画像上に転写することにより、画像を構成する染料の光による褪色が防止され、印画物の画像に優れた耐久性が付与される。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
熱転写シート
図1乃至図4は本発明の熱転写シートの実施形態を示す概略断面図である。
【0020】
図1に示される本発明の熱転写シート1は、最も単純な層構成の例であり、基材シート11の一方の面に保護層12を熱転写可能に備えるものである。
【0021】
図2に示される本発明の熱転写シート2は、図1に示される熱転写シート1の基材シート11の他方の面に背面層13を備えたものである。
【0022】
図3に示される本発明の熱転写シート3は、基材シート11の一方の面に熱転写可能に保護層12を備え、基材シート11の他方の面に背面層13を備え、上記保護層12が保護性層12aと接着性層12bからなる積層構造を有している。
【0023】
さらに、図4に示される本発明の熱転写シート4は、図3に示される熱転写シート3の基材シート11と保護層12との間に離型層14を設けたものである。この離型層14は、上記の熱転写シート1、2においても、単層タイプの保護層12と基材シート11との間に設けてもよい。尚、離型層14を設ける場合は、熱転写により保護層12が剥離される際に、離型層14自体は基材シート11側に残るように構成する。
【0024】
次に、本発明の保護層転写シートの各層について説明する。
(1)基材シート
本発明の熱転写シートを構成する基材シート11としては、従来の熱転写シートに使用される基材シートを用いることができる。好ましい基材シ−トの具体例は、グラシン紙、コンデンサー紙、パラフィン紙などの薄紙、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルサルホン等の耐熱性の高いポリエステル、ポリプロピレン、ポリカーボネート、酢酸セルロース、ポリエチレンの誘導体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリメチルペンテン、アイオノマー等のプラスチックの延伸あるいは未延伸フィルム、これらの材料の表面に易接着性処理等を施したもの、これらの材料を積層したものが挙げられる。この基材シ−ト11の厚さは、強度および耐熱性等が適切になるように材料に応じて適宜選択することができるが、通常は1〜100μm程度のものが好ましく用いられる。
(2)保護層(保護性層)
本発明の保護層転写シート1,2における保護層12、および、保護転写シート3,4における保護性層12aは、非ハロゲン系溶剤に可溶でガラス転移温度Tgが80℃以上である芳香族ポリカーボネート樹脂を少なくとも含有するものである。
【0025】
本発明において、非ハロゲン系溶剤に可溶な芳香族ポリカーボネート樹脂とは、メチルエチルケトンとトルエンとの1:1混合溶媒に20重量%添加し、室温下で8時間振とうしたときに溶解して透明溶液となるものを意味する。このように非ハロゲン系溶剤に可溶な芳香族ポリカーボネート樹脂を使用することにより、保護層12(保護性層12a)は、作業環境上好ましくない塩素系溶剤を使用することなく形成することができる。
【0026】
また、芳香族ポリカーボネート樹脂を、そのガラス転移温度Tgが80℃以上とすることにより、本発明の保護層転写シートにおいてキックバックが防止される。ここで、キックバックとは、保護層転写シートの製造工程における複数回の巻き取り、例えば、塗布終了時の巻き取り、その後のスリッター時の巻き取り等により、まず、基材シートの裏面に染料層から染料の一部が移行し、この移行した染料がその後の巻き取り時に保護層上に移行することを意味する。
【0027】
上記のような芳香族ポリカーボネート樹脂としては、例えば、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン〔ビスフェノールC〕から誘導された下記一般式1で表される構成単位のみからなるホモポリカーボネート樹脂
【0028】
【化8】
や1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン〔ビスフェノールZ〕から誘導された下記一般式4で表される構成単位のみからなるホモポリカーボネート樹脂
【0029】
【化9】
や上記一般式1で表される構成単位と、2,2−ビス(4−ヒドリキシフェニル)プロパン〔ビスフェノールA〕から誘導された下記一般式2で表される構成単位とのランダム共重合ポリカーボネート樹脂(一般式2で表される構成単位が70モル%以下の範囲で含有される)等を挙げることができる。
【0030】
【化10】
これらの芳香族ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は、5,000〜100,000、より好ましくは10,000〜50,000である。5,000未満であると、得られた塗膜の機械強度に乏しく保護膜として不充分であり、また100,000を超えると、汎用溶剤への溶解性や、他の樹脂とブレンドして用いる際の相容性が損なわれるという問題がある。
【0031】
上記のような芳香族ポリカーボネート樹脂は、特にシアン染料に対する耐光性に優れ、後述するように印画物の画像上に保護層を転写することにより、画像を構成する染料の光による褪色をより効果的に防止し、従来の保護層転写シートにおいて、耐光性が充分でなく、特にシアン染料が褪色しやすいため、光照射により画像が濃度低下するとともに、赤く色相変化し画像品質が大きく損なわれるというという問題を解決し、優れた耐久性を付与することができる。
【0032】
これらの芳香族ポリカーボネート樹脂なかでは、原料コスト等を考慮し、ビスフェノールCから誘導された上記一般式1で表されるホモポリカーボネート樹脂、および、ビスフェノールCから誘導された構成単位とビスフェノールAから誘導された構成単位とのランダム共重合ポリカーボネート樹脂が好ましい。さらに、上記ランダム共重合ポリカーボネート樹脂の場合、ガラス転移温度Tgが120℃以上のものが耐キックバック性の点で特に好ましい。
【0033】
また、本発明の保護層転写シートの保護層12、および、保護性層12aは、上記のような芳香族ポリカーボネート樹脂に加えて、それぞれガラス転移温度Tgが80℃以上であるアクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂およびポリビニルアセタール系樹脂の少なくとも1種を25〜75重量%の範囲で含有してもよい。このような樹脂を含有することにより、保護層12、保護性層12aの耐摩耗性、耐スクラッチ性等の耐久性が更に向上する。
【0034】
また、本発明の保護層転写シートの保護層12、および、保護性層12aは、紫外線吸収性をより向上させるために、反応性紫外線吸収剤とアクリル系モノマーとがランダム共重合したガラス転移温度Tgが60℃以上、好ましくは80℃以上のランダム共重合体を5〜50重量%の範囲で含有してもよい。
【0035】
上記の反応性紫外線吸収剤は、従来公知の有機系紫外線吸収剤であるサリシレート系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、置換アクリロニトリル系、ニッケルキレート系、ヒンダートアミン系等の非反応性紫外線吸収剤に、例えば、ビニル基やアクリロイル基、メタアクリロイル基等の付加重合性二重結合、あるいは、アルコール性水酸基、アミノ基、カルボキシル基、エポキシ基、イソシアネート基等を導入したものを使用することができる。
【0036】
また、上記のアクリル系モノマーとしては、以下のようなものが挙げられる。
【0037】
メチルアクリレート、メチルメタアクリレート、エチルアクリレート、エチルメタアクリレート、プロピルアクリレート、プロピルメタアクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタアクリレート、イソブチルアクリレート、イソブチルメタアクリレート、ターシャリーブチルアクリレート、ターシャリーブチルメタアクリレート、イソデシルアクリレート、イソデシルメタアクリレート、ラウリルアクリレート、ラウリルメタアクリレート、ラウリルトリデシルアクリレート、ラウリルトリデシルメタアクリレート、トリデシルアクリレート、トリデシルメタアクリレート、セリルステアリルアクリレート、セリルステアリルメタアクリレート、ステアリルアクリレート、ステアリルメタアクリレート、エチルヘキシルアクリレート、エチルヘキシルメタアクリレート、オクチルアクリレート、オクチルメタアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタアクリレート、ベンジルアクリレート、ベンジルメタアクリレート、メタクリル酸、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタアクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタアクリレート、ジエチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルメタアクリレート、ターシャリーブチルアミノエチルアクリレート、ターシャリーブチルアミノエチルメタアクリレート、グリシジルアクリレート、グリシジルメタアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルメタアクリレート。さらに、エチレンジアクリレート、エチレンジメタアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジメタアクリレート、デカエチレングリコールジアクリレート、デカエチレングリコールジメタアクリレート、ペンタデカエチレングリコールジアクリレート、ペンタデカエチレングリコールジメタアクリレート、ペンタコンタヘクタエチレングリコールジアクリレート、ペンタコンタヘクタエチレングリコールジメタアクリレート、ブチレンジアクリレート、ブチレンジメタアクリレート、アリルアクリレート、アリルメタアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、ヘキサンジオールジメタアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、トリピロピレングリコールジメタアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタアクリレート、ネオペンチルグリコールペンタアクリレート、ネオペンチルグリコールペンタメタアクリレート、ホスファゼンヘキサアクリレート、ホスファゼンヘキサメタアクリレート等である。これらのアクリル系モノマーは、単独で使用してもよいし、混合して使用してもよい。
【0038】
以上のような反応性紫外線吸収剤とアクリル系モノマーとのランダム共重合体における反応性紫外線吸収剤の量は10〜90重量%、好ましくは30〜70重量%の範囲である。また、このようなランダム共重合体の分子量は5,000〜250,000程度、好ましくは9,000〜30,000程度とすることができる。
【0039】
このような反応性紫外線吸収剤とアクリル系モノマーとのランダム共重合体として、例えば、下記一般式3で表されるランダム共重合体を挙げることができるが、勿論、これに限定されるものではない。
【0040】
【化11】
(上記式3中、mおよびnは整数を表す)
さらに、本発明の保護層転写シートの保護層12、および、保護性層12aは、紫外線吸収性をより向上させるために、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を10〜70重量%、好ましくは30〜60重量%の範囲で含有してもよい。ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の好ましい例としては、下記一般式5で表されるものを挙げることができる。
【0041】
【化12】
(上記式5中、XおよびYは炭素数4から12までの分岐していてもよいアルキル基またはアラルキル基であり、Zは水素原子または塩素原子を表す)
(3)接着性層
接着性層12bは、保護性層12aの被転写体への転写を容易にする作用をなすものである。この接着性層を形成する接着剤としては、アクリル、スチレンアクリル、塩化ビニル、スチレン−塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエステル、ポリアミド等の熱溶融性接着剤を使用することができる。接着性層の形成はグラビアコート、グラビアリバースコート、ロールコート等の公知の手段により行うことができ、厚みは0.1〜5μm程度が好ましい。
(4)背面層
背面層13は、サーマルヘッド等の加熱デバイスと基材シート11との熱融着を防止し、走行を滑らかに行う目的で設けられる。この背面層13に用いる樹脂としては、例えば、エチルセルロース、ヒドロキシセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、酢酸セルロース、酢酪酸セルロース、ニトロセルロース等のセルロース系樹脂、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、ポリビニルピロリドン等のビニル系樹脂、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリルアミド、アクリロニトリルースチレン共重合体等のアクリル系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリビニルトルエン樹脂、クマロンインデン樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン変性又はフッ素変性ウレタン等の天然又は合成樹脂の単体又は混合物が用いられる。背面層13の耐熱性をより高めるために上記の樹脂のうち、水酸基系の反応性基を有している樹脂を使用し、架橋剤としてポリイソシアネート等を併用して、架橋樹脂層とすることが好ましい。
【0042】
さらに、サーマルヘッドとの摺動性を付与するために、背面層13に固形あるいは液状の離型剤又は滑剤を加えて耐熱滑性をもたせてもよい。離型剤又は滑剤としては、例えば、ポリエチレンワックス、パラフィンワックス等の各種ワックス類、高級脂肪族アルコール、オルガノポリシロキサン、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、有機カルボン酸およびその誘導体、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、タルク、シリカ等の無機化合物の微粒子等を用いることができる。背面層6に含有される離型剤や滑剤の量は5〜50重量%、好ましくは10〜30重量%程度である。
【0043】
このような背面層13の厚みは0.1〜10μm程度、好ましくは0.5〜5μm程度とすることができる。
(5)離型層
離型層14は、基材シート11と保護層12の材料の組み合わせによって、保護層12の熱転写時の離型性が十分でない場合に設けるものである。特に易接着処理を施した基材シートでは、保護層を直接設けた場合、基材シートからの転写性が悪くなり、離型層を設けることが重要である。このような離型層は、ワックス類、シリコーンワックス、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂等の離型剤を使用して形成することもできるし、特開平4−142988に記載の親水性樹脂や、各種の硬化性樹脂など、基材シートと保護層の特性に合わせて適宜選択して使用することができ、特に限定されない。離型層の形成は、上記のような離型剤に必要な添加剤を加えたものを適当な溶剤に溶解または分散して調製したインキを、基材シート11上に公知の手段により塗布・乾燥させて行うことができ、厚みは0.1〜5μm程度が好ましい。
【0044】
図5は本発明の保護層転写シートの他の実施形態を示す概略断面図である。図5において、保護層転写シート5は、感熱昇華転写方式に用いる熱転写シートとの一体型であり、基材シート11の一方の面に保護層12と染料層17を面順次に備え、基材シート11の他の面に背面層13を備えたものである。
【0045】
保護層12は、上述の単層構造あるいは積層構造の保護層であり、ここでの説明は省略する。また、基材シート11、背面層13も上述と同様とすることができる。さらに、基材シート11と保護層12との間に上述の離型層14を設けてもよい。
【0046】
染料層17は、イエロー、マゼンタ、シアンおよびブラックの各色相の染料層17Y,17M,17Cおよび17BKからなっている。このような染料層17(17Y,17M,17C,17BK)は、少なくとも染料とバインダー樹脂を含有している。
【0047】
使用する染料としては、従来公知の感熱昇華転写方式の熱転写シートに使用される、アゾ系、アゾメチン系、メチン系、アントラキノン系、キノフタロン系、ナフトキノン系等のあらゆる染料を挙げることができ、特に制限はされない。また、上記の各種染料を組み合わせ、ブラック等の任意の色相の染料層を形成することができる。
【0048】
染料層17において染料を担持するバインダー樹脂としては、従来公知のものがいずれも使用可能であり、例えば、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、酢酸セルロース、酢酪酸セルロース等のセルロース系樹脂、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド等のビニル系樹脂、ポリエステル等が挙げられ、これらの中でセルロール系、アセタール系、ブチラール系、ポリエステル系が耐熱性、染料の移行性等の点から好ましい。
【0049】
さらに、染料層17中には印画時の染料層バインダーと受容層樹脂の熱融着を防止するため、従来公知のあらゆる離型剤を用いることができ、具体的にはポリエチレンワックス、パラフィンワックス等の各種ワックス類、高級脂肪族アルコール、オルガノポリシロキサン、各種界面活性剤、各種のリン酸エステル、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂等を用いることができる。
【0050】
染料層17は、上記のような昇華性染料、バインダー樹脂に必要な添加剤を加えたものを適当な溶剤に溶解または分散して調製したインキを、基材シート上に公知の手段により塗布・乾燥させて形成される。染料層17の厚みは0.2〜5μm、好ましくは0.4〜2μmの範囲で設定でき、染料層17中の昇華性染料の割合は5〜90重量%、好ましくは10〜70重量%の範囲である。
【0051】
上述の保護層転写シート5では、保護層12→17Y→17M→17C→17BKの順序となっているが、これに限定されるものではない。また、ブラックの染料層17BKがないものでもよい。さらに、染料層17(17Y、17M、17C、17BK)の一部あるいは全部が2層構造であってもよい。
【0052】
本発明の保護層転写シートは、上述の態様に限定されるものではく、使用目的等に応じて任意に設定することができる。特に、複合タイプの保護層転写シートとすることによって、熱転写方式による画像形成と、保護層の印画物への転写とを同時に行うことが可能となる。
印画物
次に、本発明の印画物について説明する。
【0053】
図6は本発明の印画物の一例を示す概略断面図である。図6において、印画物21は、染料受容層23を備えた基材22と、この基材22の染料受容層23に感熱昇華転写方式により記録された画像24を有し、この画像24を覆うように設けられた保護層25を備えている。上記の画像24は、イエロー、マゼンタ、シアンの3色、あるいは必要に応じて黒色を加えた4色からなるフルカラー画像24aと、文字、記号等の単調画像24bとからなっている。
【0054】
上述の図6に示される印画物21では、画像24全体が保護層25に覆われている。この保護層25は、上述の本発明の保護層転写シートを用いて画像24を覆うように保護層12を転写することにより形成することができる。したがって、本発明の印画物21は、その画像24が保護層25によって、耐光性、耐候性、耐摩擦性等の良好な耐久性を付与されている。
【0055】
【実施例】
次に、具体的な実施例を示して本発明を更に詳細に説明する。
芳香族ポリカーボネート樹脂の調製
下記のポリカーボネート樹脂(PC−1〜PC−8、PC−1´、PC−1″)を調製し、そのガラス転移温度Tgを下記条件で測定した。また、メチルエチルケトン、トルエンの1対1混合溶媒に各ポリカーボネート樹脂を20重量%添加し、室温下、8時間振とうした状態の溶解性を評価した。結果を下記表1に示した。
【0056】
PC−1:下記一般式1で表される構成単位から成るホモポリマーであるポリカーボネート樹脂
PC−2:下記一般式2で表される構成単位を20mol%、一般式1で表される構成単位を80mol%含むランダム共重合体であるポリカーボネート樹脂
PC−3:下記一般式2で表される構成単位を40mol%、一般式1で表される構成単位を60mol%含むランダム共重合体であるポリカーボネート樹脂
PC−4:下記一般式2で表される構成単位を60mol%、一般式1で表される構成単位を40mol%含むランダム共重合体であるポリカーボネート樹脂
PC−5:下記一般式2で表される構成単位を70mol%、一般式1で表される構成単位を30mol%含むランダム共重合体であるポリカーボネート樹脂
PC−6:下記一般式2で表される構成単位を80mol%、一般式1で表される構成単位を20mol%含むランダム共重合体であるポリカーボネート樹脂
PC−7:下記一般式2で表される構成単位を90mol%、一般式1で表される構成単位を10mol%含むランダム共重合体であるポリカーボネート樹脂
PC−8:下記一般式2で表される構成単位から成るホモポリマーであるポリカーボネート樹脂
PC−1´:下記一般式4で表される構成単位からなるホモポリマーであるポリカーボネート樹脂
PC−1″:下記一般式2で表される構成単位を50mol%、下記一般式6で表される構成単位を50mol%含むランダム共重合体であるポリカーボネート樹脂
【0057】
【化13】
【0058】
【化14】
【0059】
【化15】
【0060】
【化16】
(ガラス転移温度の測定)
示差走査熱量計DSC−5O((株)島津製作所製)を用い、JIS K7121
に基づき測定した。
【0061】
また、ポリカーボネート樹脂として、ガラス転移温度67℃である下記一般式7で表される構成単位からなるホモポリマー(PC−9)を準備し、上記と同様に非ハロゲン系溶剤への溶解性を評価した。
【0062】
【化17】
さらに、ガラス転移温度85℃であるアクリル樹脂(三菱レイヨン(株)製ダイアナールBR−75)、ガラス転移温度65℃である塩化ビニル酢酸ビニル共重合体(電気化学工業(株)製電化ビニル#1000ALK)、及び下記の酸成分とジオール成分から定法により合成したガラス転移温度92℃であるポリエステル樹脂(PEs−1)を用意し、上記と同様に非ハロゲン系溶剤への溶解性を評価した。
【0063】
【0064】
【表1】
表1より、PC−1からPC−5、PC−9、PC−1´、PC−1″およびアクリル樹脂、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体、ポリエステル樹脂(PEs−1)が、非ハロゲン系溶剤に可溶であることが確認された。
保護層塗工液及び離型層塗工液の調製
次に、下記組成の保護層塗工液1〜13、離型層塗工液1〜2を調製した。
【0065】
(保護層塗工液1)
・ポリカーボネート樹脂(PC−1) … 20重量部
・メチルエチルケトン/トルエン=1/1(重量比) … 80重量部
(保護層塗工液2)
・ポリカーボネート樹脂(PC−2) … 15重量部
・紫外線吸収剤アクリル共重合体 … 5重量部
(BASFジャパン(株)製UVA635L)
・メチルエチルケトン/トルエン=1/1(重量比) … 80重量部
(保護層塗工液3)
・ポリカーボネート樹脂(PC−4) … 20重量部
・ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤 … 10重量部
(チバガイギー社製TINUVIN328)
・メチルエチルケトン/トルエン=1/1(重量比) … 80重量部
(保護層塗工液4)
・ポリカーボネート樹脂(PC−3) … 10重量部
・ポリエステル樹脂(PEs−1) … 6重量部
・紫外線吸収剤アクリル共重合体 … 4重量部
(BASFジャパン(株)製UVA635L)
・ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤 … 10重量部
(チバガイギー社製TINUVIN234)
・メチルエチルケトン/トルエン=1/1(重量比) … 80重量部
(保護層塗工液5)
・ポリカーボネート樹脂(PC−5) … 15重量部
・ポリエステル樹脂(PEs−1) … 5重量部
・メチルエチルケトン/トルエン=1/1(重量比) … 80重量部
(保護層塗工液6)
・ポリカーボネート樹脂(PC−1´) … 20重量部
・メチルエチルケトン/トルエン=1/1(重量比) … 80重量部
(保護層塗工液7)
・ポリカーボネート樹脂(PC−1″) … 20重量部
・ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤 … 10重量部
(チバガイギー社製TINUVIN320)
・メチルエチルケトン/トルエン=1/1(重量比) … 80重量部
(保護層塗工液8)
・ポリカーボネート樹脂(PC−6) … 20重量部
・トリクロロメタン … 80重量部
(保護層塗工液9)
・ポリカーボネート樹脂(PC−7) … 15重量部
・紫外線吸収剤アクリル共重合体 … 5重量部
(BASFジャパン(株)製UVA635L)
・トリクロロメタン … 80重量部
(保護層塗工液10)
・ポリカーボネート樹脂(PC−8) … 20重量部
・ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤 … 10重量部
(チバガイギー社製TINUVIN328)
・トリクロロメタン … 80重量部
(保護層塗工液11)
・ポリカーボネート樹脂(PC−9) … 20重量部
・メチルエチルケトン/トルエン=1/1(重量比) … 80重量部
(保護層塗工液12)
・アクリル樹脂 … 20重量部
(三菱レイヨン(株)製ダイアナールBR−75)
・メチルエチルケトン/トルエン=1/1(重量比) … 80重量部
(保護層塗工液13)
・塩化ビニル酢酸ビニル共重合体 … 20重量部
(電気化学工業(株)製電化ビニル#1000ALK)
・ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤 … 10重量部
(チバガイギー社製TINUVIN328)
・メチルエチルケトン/トルエン=1/1(重量比) … 80重量部
(離型層塗工液1)
・アルキルビニルエーテル・無水マレイン酸共重合誘導体
(ダイセル化学工業(株)製VEMA) … 10重量部
・ポリビニルアルコール樹脂((株)クラレ製) … 2重量部
・水/エタノール=2/3(重量比) …100重量部
(離型層塗工液2)
・アイオノマー樹脂(三井化学(株)製) … 10重量部
・水/エタノール=2/3(重量比) …100重量部
熱転写受像シートの作成
次に、下記の熱転写受像シート(受像紙1、2)を作成した。
(受像紙1)
基材シートとして、厚さ150μmの合成紙(王子油化(株)製YUPO FPG#150)を用い、その一方の面に下記組成の受容層用塗工液をワイヤーバーコーティング方式にて塗布(塗布量5.0g/m2 :固形分)後、110℃にて30秒間乾燥して熱転写受像シート(受像紙1)を得た。
【0066】
(受容層用塗工液)
・塩化ビニル酢酸ビニル共重合体 … 10重量部
(電気化学工業(株)製電化ビニル#1000A)
・エポキシ変性シリコーン … 1重量部
(信越化学工業(株)製X−22−3000T)
・メチルエチルケトン/トルエン=1/1(重量部) … 40重量部
(受像紙2)
上記(受像紙1)における受容層用塗工液に代えて下記組成の受容層用塗工液を用いた。それ以外は(受像紙1)と同様にして熱転写受像シート(受像紙2)を得た。
【0067】
(受容層用塗工液)
・ポリカーボネート樹脂(PC−3) … 7重量部
・ポリカプロラクトン … 3重量部
(ダイセル化学工業(株)製PLACCEL H7)
・メチル・フェニルシロキサン …1.5重量部
・メチルエチルケトン/トルエン=1/1(重量部) … 40重量部
保護層転写シートの作成
次に、下記の保護層転写シート(実施例1〜7、比較例1〜6)を作成した。
〈実施例1〉
基材シートとしての厚さ6μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ(株)製ルミラー)の一方の面に、下記組成の背面層用インキをグラビアコート法により塗布、乾燥後、更に加熱熟成して硬化処理を行い背面層(厚さ1μm)を形成した。
【0068】
次に、基材シートの背面層を形成した面と反対の面にグラビアコート法により上記の(保護層塗工液1)を乾燥時2g/m2 になる割合で塗布及び乾燥(110℃/60秒)させて本発明の保護層転写シートを得た。
【0069】
(背面層インキ)
・ポリビニルブチラール樹脂 …3.6重量部
(積水化学工業(株)製エスレックBX−1)
・ポリイソシアネート …19.2重量部
(大日本インキ化学工業(株)製バーノックD750−45)
・リン酸エステル系界面活性剤 …2.9重量部
(第一工業製薬(株)製プライサーフA208S)
・リン酸エステル系界面活性剤 …0.3重量部
(東邦化学(株)製フォスファノールRD720)
・タルク(日本タルク(株)製:Y/X=0.03) …0.2重量部
・メチルエチルケトン … 33重量部
・トルエン … 33重量部
〈実施例2〉
基材シートとしての厚さ6μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(ダイヤホイルヘキスト(株)製6FK203E)の非易接着面に実施例1と同様にして背面層(厚さ1μm)を形成した。
【0070】
次に、背面層を形成した面と反対の易接着面にグラビアコート法により上記の(離型層塗工液1)を乾燥時0.5g/m2 になる割合で塗布及び乾燥(110℃/60秒)した後、更に上記の(保護層塗工液2)を乾燥時2g/m2 になる割合で塗布及び乾燥(110℃/60秒)して、本発明の保護層転写シートを得た。
〈実施例3〉
上記実施例1における保護層塗工液に代えて上記の(保護層塗工液3)を用いた。それ以外は実施例1と同様にして本発明の保護層転写シートを得た。
〈実施例4〉
上記実施例2における離型層塗工液に代えて上記の(離型層塗工液2)、保護層塗工液に代えて上記の(保護層塗工液4)を用いた。それ以外は実施例2と同様にして本発明の保護層転写シートを得た。
〈実施例5〉
上記実施例1における保護層塗工液に代えて上記の(保護層塗工液5)を用いた。それ以外は実施例1と同様にして本発明の保護層転写シートを得た。
〈実施例6〉
上記実施例2における離型層塗工液に代えて上記の(離型層塗工液2)、保護層塗工液に代えて上記の(保護層塗工液6)を用いた。それ以外は実施例2と同様にして本発明の保護層転写シートを得た。
〈実施例7〉
上記実施例1における保護層塗工液に代えて上記の(保護層塗工液7)を用いた。それ以外は実施例1と同様にして本発明の保護層転写シートを得た。
〈比較例1〉
上記実施例1における保護層塗工液に代えて上記の(保護層塗工液8)を用いた。それ以外は実施例1と同様にして比較例の保護層転写シートを得た。
〈比較例2〉
上記実施例2における保護層塗工液に代えて上記の(保護層塗工液9)を用いた。それ以外は実施例2と同様にして比較例の保護層転写シートを得た。
〈比較例3〉
上記実施例1における保護層塗工液に代えて上記の(保護層塗工液10)を用いた。それ以外は実施例1と同様にして比較例の保護層転写シートを得た。
〈比較例4〉
上記実施例2における離型層塗工液に代えて上記の(離型層塗工液2)、保護層塗工液に代えて上記の(保護層塗工液11)を用いた。それ以外は実施例2と同様にして比較例の保護層転写シートを得た。
〈比較例5〉
上記実施例1における保護層塗工液に代えて上記の(保護層塗工液12)を用いた。それ以外は実施例1と同様にして比較例の保護層転写シートを得た。
〈比較例6〉
上記実施例2における保護層塗工液に代えて上記の(保護層塗工液13)を用いた。それ以外は実施例2と同様にして比較例の保護層転写シートを得た。
保護層転写シートの評価
次に、上記のように作成した保護層転写シート(実施例1〜7、比較例1〜6)について、まず、耐キックバック性を下記のように評価し、結果を下記表2に示した。
〈耐キックバック性の評価方法〉
(サンプルの作成方法)
(1)三菱電機(株)製ビデオプリンターCP-700用昇華転写フィルムPK700Lのシアン染料面と背面とを重ね合わせ、2kgf/cm2 の荷重で、50℃/100時間保存することにより、昇華転写フィルムPK700Lの背面にシアン染料をキックさせた。
【0071】
(2)シアン染料をキックさせた背面と、実施例及び比較例の保護層面を重ね合わせ、2kgf/cm2 の荷重で、60℃/4時間保存することにより、保護層面にシアン染料をバックさせた。
【0072】
(定量方法)
シアン染料をバックさせる前と、後の濃度(O.D.値)をサカタインクス(株)製Macbeth反射濃度系RD918にて測定し、下記式にて差(ΔO.D.)を求め、下記の評価基準にて耐キックバック性を評価した。
【0073】
ΔO.D.=(バックさせた後の濃度O.D.値)−(バックさせる前のO.D.値)
評価基準
◎:ΔO.D.≦0.03
○:0.03<ΔO.D.≦0.06
△:0.06<ΔO.D.≦0.09
×:0.09<ΔO.D.
次に、下記のようにして熱転写記録によりグラデーション画像を形成した。
〈熱転写記録〉
熱転写フィルムとして、三菱電機(株)製ビデオプリンターCP−700用転写フィルムPK700Lを使用し、被熱転写シートとして上記の受像紙1または受像紙2を用い、染料層と染料受容面とを対向させて重ね合わせ、Y,M,Cの順番で熱転写フィルムの裏面から下記条件でサーマルヘッドを用い熱転写記録を行い、グレーのグラデーション画像を形成した。
【0074】
(印字条件)
・サーマルヘッド:KGT−217−12MPL20(京セラ(株)製)
・発熱体平均抵抗値:3195(Ω)
・主走査方向印字密度:300dpi
・副走査方向印字密度:300dpi
・印加電力:0.12(w/dot)
・1ライン周期:5(msec.)
・印字開始温度:40(℃)
・階調制御方法:
1ライン周期中に、1ライン周期を256に等分割したパルス長を持つ分割パルスの数を0から255個まで可変できるマルチパルス方式のテストプリンターを用い、各分割パルスのDuty比を60%固定とし、階調によって、ライン周期あたりのパルス数を0ステップでは0個、1ステップでは17個、2ステップでは34個と0から255個まで17個毎に順次増加させることにより、0ステップから15ステップまでの16階調を制御
次いで、上記のように形成したグラデーション画像上に保護層を転写形成した。
〈保護層転写〉
上記の熱転写記録を行った印画物について、実施例及び比較例の保護層転写シートを、保護層面と受像面を対向させて重ね合わせ、下記印字条件でサーマルヘッドにより印画面全面に保護層を転写した。
【0075】
(印字条件)
・サーマルヘッド:KGT−217−12MPL20(京セラ(株)製)
・発熱体平均抵抗値:3195(Ω)
・主走査方向印字密度:300dpi
・副走査方向印字密度:300dpi
・印加電力:0.12(w/dot)
・1ライン周期:5(msec.)
・印字開始温度:40(℃)
・印加パルス:
1ライン周期中に、1ライン周期を256に等分割したパルス長を持つ分割パルスの数を0から255個まで可変できるマルチパルス方式のテストプリンターを用い、各分割パルスのDuty比を60%固定とし、ライン周期あたりのパルス数を210個固定とし、ベタ印画を行い、印画面全面に保護層を転写した。
【0076】
上述のように保護層を形成した印画物について、下記のようにして耐光性を評価し、結果を下記表2に示した。
〈耐光性試験〉
上記で得られた保護層転写済みの印画物について、下記条件のキセノンフェードメーターにより耐光性試験を行った。
【0077】
・照射試験器 :アトラス社製Ci35
・光源 :キセノンランプ
・フィルター :内側=IRフィルター、外側=ソーダライムガラス
・ブラックパネル温度:45℃
・照射強度 :1.2(W/m2 )−−420(nm)での測定値
・照射エネルギー:400(kJ/m2 )−−420(nm)での積算値
次いで、光学濃度計(マクベス社製、マクベスRD−918)を用い、レッドフィルターで、グレー画像のCy成分の光学反射濃度を測定し、照射前の光学反射濃度が1.0近傍のステップについて、照射前後における光学濃度の変化を測定し、下記式により、残存率を算出し、下記の評価基準にて各熱転写受像シートの耐光性を評価した。
【0078】
残存率(%)=(照射後の光学反射濃度/照射前の光学反射濃度)×100
評価基準
◎:残存率が80%以上
○:残存率が70%以上、80%未満
△:残存率が60%以上、70%未満
×:残存率が60%未満
【0079】
【表2】
表2に示されるように、本発明の保護層転写シート(実施例1〜7)は、いずれも耐キックバック性および耐光性に優れるものであった。
【0080】
これに対して、保護層転写シート(比較例1〜3)は、耐キックバック性と耐光性に優れるものの、保護層転写シートの作成時にハロゲン系溶剤を使用する必要があり、作業環境の点から実用に適するものではなかった。
【0081】
また、保護層転写シート(比較例4〜6)は、耐キックバック性と耐光性の少なくとも一方が悪く、実用に供し得ないものであった。
【0082】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明によれば基材シートの一方の面の少なくとも一部に、非ハロゲン系溶剤に可溶でガラス転移温度Tgが80℃以上である芳香族ポリカーボネート樹脂を少なくとも含有する保護層を熱転写可能に設けて保護層転写シートとするので、この保護層は塩素系溶剤を使用することなく形成することができ、作業環境が保全されるとともに、保護層は紫外線吸収性が高く耐久性に優れ、かつ、キックバックが極めて生じ難いものであり、基材上に染料で着色され形成された画像上に保護層を確実に転写形成することができ、画像上に転写された保護層は画像を構成する染料が光により褪色するのを有効に防止し、印画物は耐久性に優れた画像を備えたものとなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の熱転写シートの一実施形態を示す概略断面図である。
【図2】本発明の熱転写シートの他の実施形態を示す概略断面図である。
【図3】本発明の熱転写シートの他の実施形態を示す概略断面図である。
【図4】本発明の熱転写シートの他の実施形態を示す概略断面図である。
【図5】本発明の熱転写シートの他の実施形態を示す概略断面図である。
【図6】本発明の印画物の一例を示す概略断面図である。
【符号の説明】
1,2,3,4,5…熱転写シート
11…基材シート
12…保護層
12a…保護性層
12b…接着性層
13…背面層
14…離型層
17(17Y,17M,17C)…染料層
21…印画物
22…基材
23…染料受容層
24…画像
25…保護層
Claims (5)
- 前記保護層は、それぞれガラス転移温度Tgが80℃以上であるアクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂およびポリビニルアセタール系樹脂の少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項1に記載の保護層転写シート。
- 前記保護層は、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を含有することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の保護層転写シート。
- 基材と、該基材の少なくとも一方の面に少なくとも染料で着色された画像と、該画像の少なくとも一部を覆うように設けられた保護層を備え、該保護層は請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の保護層転写シートを用いて転写形成されたものであることを特徴とする印画物。
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