JP6643797B2 - ポリカーボネート樹脂、及びそれを用いて形成されたシート、フィルム及び熱成形体 - Google Patents

ポリカーボネート樹脂、及びそれを用いて形成されたシート、フィルム及び熱成形体 Download PDF

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Description

本発明は、従来のポリカーボネート樹脂と比較して低温においても熱成形性が良好で、かつ熱成形時のシート、フィルムのドローダウンを抑制することが可能なポリカーボネート樹脂、及びそれを用いたシート、フィルム、及びそれを用いた熱成形体に関する。
ポリカーボネート樹脂は、透明性に優れるばかりでなく、ガラスと比較して加工性、耐衝撃性に優れ、他のプラスチック材料に比べて有毒ガスの心配もないため、様々な分野で広く用いられており、シート、フィルム、熱成形体用材料としても使用されている。
熱成形とは、加熱して軟化させた熱可塑性樹脂(プラスチック)のシート、フィルムなどを型を用いて成形することである。加熱したシートを型にかぶせて固定し、型とシートの間を真空にする真空成形と、圧縮空気でシートを加圧する圧縮空気圧成形がある。
熱可塑性樹脂のシートやフィルムを製造するには、熱可塑性樹脂を融点以上に加熱する必要があり、またそのシート、フィルムを熱成形する際には、ガラス転移点又は軟化点以上に加熱しなければならない。
一般的なポリカーボネート樹脂は融点が230〜240℃程度、ガラス転移点が140〜150℃であることから、加熱のためのエネルギー消費量が大きい。
ポリカーボネート樹脂のガラス転移点を下げるには、ポリカーボネート樹脂の分子量を下げる方法が知られている。
非特許文献1には、ポリカーボネート樹脂のガラス転移点と分子量の関係式としてFox−Floryの式、Uberreiter−Kaningの式、Fedorsの式が挙げられている。
これらの式に従って、ガラス転移点を100〜135℃に下げようとすると、分子量が非常に低い値になってしまう。分子量があまりに低くなると、溶融時の流動性が高くなりすぎたり、機械的強度が低くなりすぎて、シートやフィルムを製造できなくなってしまう。
一方、特許文献1〜3には、主骨格はビスフェノールA型そのままに、末端停止剤の種類を変え、分子量を適切な範囲(13,000〜20,000)に収めることによって、ガラス転移点を低下させた、射出成形に適したポリカーボネート樹脂を製造できることが開示されている。
射出成形と、押出成形及びシート、フィルムの熱成形の方法は異なるため、適切な樹脂の溶融粘度の範囲は異なる。
また、シート、フィルムの熱成形時には、ポリカーボネート樹脂の分子量が低すぎると、樹脂の溶融粘度も低いため、シート、フィルムをガラス転移点あるいは軟化点まで加熱した時にシート、フィルムが垂れ下がる、すなわちドローダウンが発生し、成形不良を引き起こす。これらの理由により、熱成形には、射出成形とは異なる制約が存在する。
特開平11−300842 特開2000−153535 WO2007/132874
ポリカーボネート樹脂ハンドブック 本間精一 1992年(第143〜150頁)
本発明者らは、従来の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、特定の末端構造を有し、ガラス転移点と溶融流動性が特定の範囲であるポリカーボネート樹脂は、従来のポリカーボネート樹脂と比較して低温での熱成形性が良好で、かつ熱成形時のシート、フィルムの耐ドローダウン性が高いポリカーボネート樹脂、およびそれを用いたシート、フィルムを提供できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下に示すポリカーボネート樹脂及びそれを用いたシート、フィルム、熱成形体に関する。
1.下記一般式(1)で表わされる1価フェノール、一般式(2)に示す2価フェノール、及び、カーボネート結合剤を反応させて得られるポリカーボネート樹脂であって、ガラス転移点が100℃〜135℃であり、かつ溶融流動性を示すQ値が1×10−2cm/s〜35×10−2cm/sであるポリカーボネート樹脂。
(式中、Rは、炭素数8〜36のアルキル基、又は、炭素数8〜36のアルケニル基を表し、 R〜Rはそれぞれ独立に、水素、ハロゲン、又は、置換基を有してもよい炭素数1〜20のアルキル基若しくは置換基を有してもよい炭素数6〜12のアリール基を表す。)
(式中、R〜Rはそれぞれ、水素、ハロゲン、置換基を有してもよい炭素数1〜5のアルコキシル基、置換基を有してもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数1〜5のアルコキシ基、置換基を有してもよい炭素数6〜12のアリール基、置換基を有してもよい炭素数7〜17のアラルキル基、又は、置換基を有してもよい炭素数2〜15のアルケニル基を表し、
Xは、−O−、−S−、−SO−、−SO−、−CO−、又は、下記式(3)〜(6)で示されるいずれかの構造である。)
式(3)中、R10及びR11はそれぞれ水素、ハロゲン、置換基を有してもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数1〜5のアルコキシ基、置換基を有してもよい炭素数6〜12のアリール基、置換基を有してもよい炭素数2〜5のアルケニル基、又は置換基を有してもよい炭素数7〜17のアラルキル基を表し、
10及びR11はそれぞれ互いに結合して、炭素数1〜20の炭素環又は複素環を形成してもよく、
cは0〜20の整数を表し、 式(4)中、R12及びR13はそれぞれ水素、ハロゲン、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、置換基を有してもよい炭素数6〜12のアリール基、置換基を有してもよい炭素数2〜5のアルケニル基、又は置換基を有してもよい炭素数7〜17のアラルキル基を表し、
12及びR13はそれぞれ互いに結合して、炭素数1〜20の炭素環又は複素環を形成してもよく、
式(5)中、R14〜R17はそれぞれ水素、ハロゲン、置換基を有してもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数1〜5のアルコキシ基、置換基を有してもよい炭素数6〜12のアリール基、置換基を有してもよい炭素数2〜5のアルケニル基、又は、置換基を有してもよい炭素数7〜17のアラルキル基を表し、
14とR15、及びR16とR17は、それぞれ互いに結合して、炭素数1〜20の炭素環又は複素環を形成してもよく、
式(6)中、R18〜R27は、それぞれ水素原子、又は炭素数1〜3のアルキル基である。2.式(1)で表される1価フェノールにおけるRの炭素数が12〜22である、上記1に記載のポリカーボネート樹脂。
3.式(1)で表わされる1価フェノールが、パラヒドロキシ安息香酸2−ヘキシルデシルエステル、及びパラヒドロキシ安息香酸ヘキサデシルエステルから選択される上記1又は2記載のポリカーボネート樹脂。
4.式(2)で表される2価フェノールが、ビス(4−ヒドロキシフェニル)アルカン類である上記1〜3のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂。
5.式(2)で表される2価フェノールが、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンである上記4記載のポリカーボネート樹脂。
4.シート、フィルム用材料である上記1〜3記載のポリカーボネート樹脂。
5.上記1〜4のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂を原料としたシート、フィルム。
6.粘度平均分子量が18,000〜35,000である、上記1〜5のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂。
7.上記1〜6のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂を原料としたシート、またはフィルム。
8.上記1〜6のいずれか一項に記載のポリカーボネート樹脂を用いて成形された熱成形体。
9.上記7に記載のフィルムを用いて成形された熱成形体。
本発明の特定の末端構造と特定の範囲のガラス転移点と特定の範囲の溶融粘度を有するポリカーボネート樹脂は、従来のポリカーボネート樹脂と比較して低温においても熱成形性が良好である。このため本発明によれば、熱成形性用に特に適している上記ポリカーボネート樹脂を用いて、熱成形時のシート、フィルムの耐ドローダウン性が良好なシート、フィルムを提供することができる。
<ポリカーボネート樹脂>
本発明のポリカーボネート樹脂は、下記一般式(1)で表わされる1価フェノール、一般式(2)に示す2価フェノール、及び、カーボネート結合剤を反応させて得られる。
(式中、R〜Rはそれぞれ、水素、ハロゲン、置換基を有してもよい炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜9のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数1〜5、好ましくは炭素数1〜3のアルコキシ基、置換基を有してもよい炭素数6〜12、好ましくは炭素数6〜8のアリール基、置換基を有してもよい炭素数7〜17、好ましくは炭素数7〜12のアラルキル基、又は、置換基を有してもよい炭素数2〜15、好ましくは炭素数2〜5のアルケニル基を表す。有してもよい置換基は、ハロゲン、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基である。Xは−O−、−S−、−SO−、−SO−、−CO−、又は下記式(3)で示されるいずれかの構造である。)
(式中、R10及びR11はそれぞれ水素、ハロゲン、置換基を有してもよい炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜9のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数1〜5、好ましくは炭素数1〜3のアルコキシ基、置換基を有してもよい炭素数6〜12、好ましくは炭素数6〜8のアリール基、置換基を有してもよい炭素数7〜17、好ましくは炭素数7〜12のアラルキル基、又は、置換基を有してもよい炭素数2〜15、好ましくは炭素数2〜5のアルケニル基を表す。有してもよい置換基は、ハロゲン、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基である。
10及びR11はそれぞれ互いに結合して、炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜12の炭素環又は複素環を形成してもよく、
cは0〜20の整数、好ましくは1〜12の整数を表す。
12及びR13はそれぞれ水素、ハロゲン、置換基を有してもよい炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜9のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数1〜5、好ましくは炭素数1〜3のアルコキシ基、置換基を有してもよい炭素数6〜12、好ましくは炭素数6〜8のアリール基、置換基を有してもよい炭素数7〜17、好ましくは炭素数7〜12のアラルキル基、又は、置換基を有してもよい炭素数2〜15、好ましくは炭素数2〜5のアルケニル基を表す。有してもよい置換基は、ハロゲン、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基である。
12及びR13はそれぞれ互いに結合して、炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜12の炭素環又は複素環を形成してもよい。
14〜R17はそれぞれ水素、ハロゲン、置換基を有してもよい炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜9のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数1〜5、好ましくは炭素数1〜3のアルコキシ基、置換基を有してもよい炭素数6〜12、好ましくは炭素数6〜8のアリール基、置換基を有してもよい炭素数7〜17、好ましくは炭素数7〜12のアラルキル基、又は、置換基を有してもよい炭素数2〜15、好ましくは炭素数2〜5のアルケニル基を表す。有してもよい置換基は、ハロゲン、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基である。また、R14とR15及びR16とR17は、それぞれ互いに結合して、炭素数1〜20の炭素環又は複素環を形成してもよい。
そしてR18〜R27は、それぞれ水素原子、又は炭素数1〜3のアルキル基であり、R18〜R27のうち少なくとも一つ、好ましくは3つが炭素数1〜3のアルキル基である。)
上記一般式(2)の2価フェノールとして、例えば、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン[=ビスフェノールA]、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−p−ジイソプロピルベンゼン、4,4'−ジヒドロキシジフェニル、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジエチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−エチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジフェニルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−フェニルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,4’−ジヒドロキシ−ジフェニルメタン、ビス−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)メタン、ビス−(4−ヒドロキシ−3−ニトロフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)エタン、3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン[=ビスフェノールZ]、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、2,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシ−2,5−ジエトキシジフェニルエーテル、1−フェニル−1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)シクロヘキサン、1−フェニル−1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)エタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)ジフェニルメタン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン等を挙げることができるが、好ましくは、ビス(4−ヒドロキシフェニル)アルカン類であり、特に好ましくは、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン[ビスフェノールA]である。これらの芳香族ジヒドロキシ化合物は、単独で、又は、2種以上を混合して使用することができる。
<カーボネート結合剤>
本発明のカーボネート結合剤としては、ホスゲン、トリホスゲン、炭酸ジエステル、及び、一酸化炭素や二酸化炭素と云ったカルボニル系化合物が例示される。
炭酸ジエステルとして、例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ−tert−ブチルカーボネート等の炭酸ジアルキル化合物、ジフェニルカーボネートあるいはジ−p−トリルカーボネート、フェニル−p−トリルカーボネート、ジ−p−クロロフェニルカーボネート等の置換ジフェニルカーボネート等が挙げられる。中でもジフェニルカーボネート、置換ジフェニルカーボネートが好ましく、特にジフェニルカーボネートが好ましい。これらの炭酸ジエステル化合物は、単独で、又は、2種以上を混合して使用することができる。
<1価フェノール>
本発明の1価フェノールは末端停止剤として作用し、一般式(1)で示される。
(式中、Rは、炭素数8〜36のアルキル基、又は、炭素数8〜36のアルケニル基を表す。R〜Rはそれぞれ水素、ハロゲン、置換基を有してもよい炭素数1〜20のアルキル基、又は、置換基を有してもよい炭素数6〜12のアリール基を表す。R〜Rは、好ましくは、水素、ハロゲン、置換基を有してもよい炭素数1〜9のアルキル基、又は、置換基を有してもよい炭素数6〜8のアリール基である。)
好ましくは、一般式(1)の1価フェノールが一般式(7)で表わされる化合物である。
(式中、Rは、炭素数8〜36のアルキル基、又は、炭素数8〜36のアルケニル基を表す。)
一般式(1)又は一般式(7)におけるRの炭素数は特定の数値範囲内であることがより好ましい。
具体的には、Rの炭素数の上限値として36が好ましく、22がより好ましく、18が特に好ましい。
また、Rの炭素数の下限値として、8が好ましく、12がより好ましい。
一般式(1)又は一般式(7)で示される1価フェノール(末端停止剤)の中でも、パラヒドロキシ安息香酸ヘキサデシルエステル、パラヒドロキシ安息香酸2−ヘキシルデシルエステルのいずれか、もしくは両方を末端停止剤として使用することが特に好ましい。
として、例えば、炭素数16のアルキル基である1価フェノール(末端停止剤)を使用した場合、得られるポリカーボネート樹脂のガラス転移点、溶融流動性、成形性、耐ドローダウン性、及びポリカーボネート製造時の1価フェノールの有機溶剤溶解性が優れており、本発明のポリカーボネート樹脂に使用する末端停止剤として、特に好ましい。
一方、一般式(1)又は一般式(7)におけるRの炭素数が増加しすぎると、1価フェノール(末端停止剤)の有機溶剤溶解性が低下する傾向があり、ポリカーボネート樹脂製造時の生産性が低下することがある。
一例として、Rの炭素数が36以下であれば、ポリカーボネート樹脂を製造するにあたって生産性が高く、経済性も良い。Rの炭素数が22以下であれば、1価フェノールは、特に有機溶剤溶解性に優れており、ポリカーボネート樹脂を製造するにあたって生産性を非常に高くすることができ、経済性も向上する。
一般式(1)又は一般式(7)におけるRの炭素数が小さすぎると、ポリカーボネート樹脂のガラス転移点が低い値とはならず、熱成形性が低下することがある。
材料に対する要求特性により、本発明の主旨を逸脱しない範囲で主骨格や末端停止剤を他の構造のものと併用したり、他のポリカーボネート樹脂、更には他の透明樹脂と混合したりすることは許容される。使用する全末端停止剤中の80mol%以上が上記式(1)で表わされる構造であることが好ましく、使用する全末端停止剤中の90mol%以上が上記式(1)で表わされる構造であることがより好ましく、使用する全末端停止剤が上記式(1)で表わされる構造であることが特に好ましい。
他に併用してもよい末端停止剤としては、フェノール、p−クレゾール、o−クレゾール、2,4−キシレノール、p−t−ブチルフェノール、o−アリルフェノール、p−アリルフェノール、p−ヒドロキシスチレン、p−ヒドロキシ−α−メチルスチレン、p−プロピルフェノール、p−クミルフェノール、p−フェニルフェノール、o−フェニルフェノール、p−トリフルオロメチルフェノール、p−ノニルフェノール、p−ドデシルフェノール、オイゲノール、アミルフェノール、ヘキシルフェノール、ヘプチルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノール、デシルフェノール、ドデシルフェノール、ミリスチルフェノール、パルミチルフェノール、ステアリルフェノール、ベヘニルフェノール等のアルキルフェノール及びパラヒドロキシ安息香酸のメチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、ブチルエステル、アミルエステル、ヘキシルエステル、ヘプチルエステル等のパラヒドロキシ安息香酸アルキルエステルが挙げられる。また、上記一価フェノールを2種類以上併用して使用することも可能である。
合成条件によっては、末端停止剤と反応しないフェノール性OH基のまま末端基が形成され得る。このフェノール性OH基は、少ないほど好ましい。具体的には、全末端中の80mol%以上が上記式(1)で表わされる構造で封止されていることが好ましく、全末端中の90mol%以上が上記式(1)で表わされる構造で封止されていることが特に好ましい。
<重合度、1価フェノール(末端停止剤)の使用量>
本発明のポリカーボネート樹脂は、1価フェノール(末端停止剤)の使用量によって分子量が制御される。
主骨格のために使用する2価フェノール(上記一般式(2)で示される)の重合度と、1価フェノール(末端停止剤)の使用量は次式に示される。
この式に基づいて1価フェノールと2価フェノールの使用量が定められるが、2価フェノールの使用量(モル):1価フェノール(末端停止剤)の使用量(モル)の好ましい範囲は、50:1〜15:1であり、さらに好ましくは40:1〜17:1の範囲である。
分岐した芳香族ポリカーボネート樹脂を得るには、フロログルシン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプテン−2、4,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、2,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプテン−3、1,3,5−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン等で表されるポリヒドロキシ化合物、あるいは、3,3−ビス(4−ヒドロキシアリール)オキシインドール(=イサチンビスフェノール)、5−クロルイサチンビスフェノール、5,7−ジクロルイサチンビスフェノール、5−ブロムイサチンビスフェノール等を上述した芳香族ジヒドロキシ化合物の一部として用いればよく、使用量は、0.01〜10mol%、好ましくは、0.1〜3mol%である。
<添加剤>
本発明のポリカーボネート樹脂には、本発明の主旨を逸脱しない範囲で各種添加剤が配合されていてもよい。添加剤としては、熱安定剤、酸化防止剤、難燃剤、難燃助剤、紫外線吸収剤、離型剤及び着色剤から成る群から選択された少なくとも1種類の添加剤が例表される。
また、所望の諸物性を著しく損なわない限り、帯電防止剤、蛍光増白剤、防曇剤、流動性改良剤、可塑剤、分散剤、抗菌剤等を添加してもよい。
熱安定剤として、フェノール系やリン系、硫黄系の熱安定剤を挙げることができる。具体的には、リン酸、ホスホン酸、亜燐酸、ホスフィン酸、ポリリン酸等のリンのオキソ酸; 酸性ピロリン酸ナトリウム、酸性ピロリン酸カリウム、酸性ピロリン酸カルシウム等の酸性ピロリン酸金属塩; リン酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸セシウム、リン酸亜鉛等、第1族又は第10族金属のリン酸塩; 有機ホスフェート化合物、有機ホスファイト化合物、有機ホスホナイト化合物等を挙げることができる。あるいは又、分子中の少なくとも1つのエステルがフェノール及び/又は炭素数1〜25のアルキル基を少なくとも1つ有するフェノールでエステル化された亜リン酸エステル化合物(a)、亜リン酸(b)及びテトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレン−ジ−ホスホナイト(c)の群から選ばれた少なくとも1種を挙げることができる。亜リン酸エステル化合物(a)の具体例として、トリオクチルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリステアリルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリス(モノノニルフェニル)ホスファイト、トリス(モノノニル/ジノニル・フェニル)ホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト、トリス(オクチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリノニルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、ジイソプロピルモノフェニルホスファイト、モノブチルジフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、トリシクロヘキシルホスファイト、ジフェニルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト等を挙げることができる。これらは、単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
有機ホスファイト化合物として、具体的には、例えば、アデカ社製(商品名、以下同じ)「アデカスタブ1178」、「アデカスタブ2112」、「アデカスタブHP−10」、城北化学工業社製「JP−351」、「JP−360」、「JP−3CP」、チバ・スペシャルテイ・ケミカルズ社製「イルガフォス168」等を挙げることができる。
また、リン酸エステルとして、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリス(ノニルフェニル)ホスフェート、2−エチルフェニルジフェニルホスフェート等を挙げることができる。
熱安定剤の添加割合は、配合する場合、芳香族ポリカーボネート樹脂100質量部に対して、例えば0.001質量部以上、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.03質量部以上であり、また、1質量部以下、好ましくは0.7質量部以下、より好ましくは0.5質量部以下である。熱安定剤が少なすぎると熱安定効果が不十分となる可能性があり、熱安定剤が多すぎると、効果が頭打ちとなり、経済的でなくなる可能性がある。
酸化防止剤として、フェノール系酸化防止剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、ビスフェノール系酸化防止剤、ポリフェノール系酸化防止剤等を挙げることができる。具体的には、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、n−オクタデシル−3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、4,4’−ブチリデンビス−(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート]、3,9−ビス{2−[3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]−1,1−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、チオジエチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N'−ヘキサン−1,6−ジイルビス[3 −(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオナミド)、2,4− ジメチル−6−(1−メチルペンタデシル)フェノール、ジエチル[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ホスフォエート、3,3’,3”,5,5’,5”−ヘキサ−tert−ブチル−a,a’,a”−(メシチレン−2,4,6−トリイル)トリ−p−クレゾール、4,6−ビス(オクチルチオメチル)−o−クレゾール、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート]、ヘキサメチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン,2,6−ジ−tert−ブチル−4−(4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2−イルアミノ)フェノール等を挙げることができる。 フェノール系酸化防止剤として、具体的には、例えば、チバ・スペシャルテイ・ケミカルズ社製「イルガノックス1010」(登録商標、以下同じ)、「イルガノックス1076」、アデカ社製「アデカスタブAO−50」、「アデカスタブAO−60」等を挙げることができる。
酸化防止剤の添加割合は、配合する場合、芳香族ポリカーボネート樹脂100質量部に対して、例えば0.001質量部以上、好ましくは0.01質量部以上であり、また、1質量部以下、好ましくは0.5質量部以下である。酸化防止剤の添加割合が下限値未満の場合、酸化防止剤としての効果が不十分となる可能性があり、酸化防止剤の添加割合が上限値を超える場合、効果が頭打ちとなり、経済的でなくなる可能性がある。
難燃剤として、有機スルホン酸金属塩等が挙げられる。有機スルホン酸金属塩としては、脂肪族スルホン酸金属塩及び芳香族スルホン酸金属塩等が挙げられ、これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。また、金属塩としては、アルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩が好ましい。アルカリ金属として、ナトリウム、リチウム、カリウム、ルビジウム、セシウムを挙げることができる。アルカリ土類金属として、カルシウム、ストロンチウム等が挙げられる。本発明で用いる有機スルホン酸金属塩の好ましい金属は、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム等のアルカリ金属であり、より好ましくはナトリウム、カリウムである。このような金属を採用することにより、燃焼時の炭化層形成を効果的に促進し、高い透明性も維持できるという効果が得られる。
脂肪族スルホン酸塩として、好ましくは、フルオロアルカン−スルホン酸金属塩、より好ましくは、パーフルオロアルカン−スルホン酸金属塩を挙げることができる。
また、フルオロアルカン− スルホン酸金属塩として、アルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩を挙げることができ、アルカリ金属塩が好ましい。フルオロアルカンスルホン酸金属塩の炭素数としては、1〜8が好ましく、2〜4がより好ましい。このような範囲とすることにより、高い透明性を維持できるという効果が得られる。好ましいフルオロアルカン−スルホン酸金属塩の具体例として、パーフルオロブタン−スルホン酸ナトリウム、パーフルオロブタン−スルホン酸カリウム、パーフルオロエタン−スルホン酸ナトリウム、パーフルオロエタン−スルホン酸カリウム、等を挙げることができる。
芳香族スルホン酸金属塩として、アルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩を挙げることができ、アルカリ金属塩が好ましい。芳香族スルホンスルホン酸アルカリ金属塩の具体例としては、3,4−ジクロロベンゼンスルホン酸ナトリウム塩、2,4,5−トリクロロベンゼンスルホン酸ナトリウム塩、ベンゼンスルホン酸ナトリウム塩、ジフェニルスルホン−3−スルホン酸のナトリウム塩、ジフェニルスルホン−3−スルホン酸のカリウム塩、4,4′−ジブロモジフェニル−スルホン−3−スルホン酸のナトリウム塩、4,4′−ジブロモフェニル−スルホン−3−スルホン酸のカリウム塩、ジフェニルスルホン−3,3′−ジスルホン酸のジナトリウム塩、ジフェニルスルホン−3,3′−ジスルホン酸のジカリウム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸カリウム塩、p−トルエンスルホン酸カリウム塩、p−スチレンスルホン酸カリウム塩等を挙げることができる。
本発明で用いる有機スルホン酸金属塩は、特に、透明性を向上させる観点から、ジフェニルスルホン−3−スルホン酸のカリウム塩、p−トルエンスルホン酸カリウム塩、p−スチレンスルホン酸カリウム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸カリウム塩が好ましく、ジフェニルスルホン−3−スルホン酸のカリウム塩がより好ましい。尚、芳香族ポリカーボネート樹脂1 0 0 質量部に対する、有機スルホン酸金属塩の添加質量は、上記のとおり、0.005質量部〜0.1質量部であるが、好ましくは0.01質量部〜0.1質量部、より好ましくは0.03質量部〜0.09質量部である。
また、本発明では、有機スルホン酸金属塩以外の難燃剤を配合してもよい。
難燃助剤として、例えばシリコーン化合物を加えることができる。シリコーン化合物としては、分子中にフェニル基を有するものが好ましい。フェニル基を有することによりシリコーン化合物のポリカーボネート中への分散性が向上し、透明性と難燃性に優れる。シリコーン化合物の好ましい質量平均分子量は450〜5000であり、中でも750〜4000、更には1000〜3000、特に1500〜2500であることが好ましい。質量平均分子量を450以上とすることにより、製造が容易になり、工業的生産への適応が容易となり、シリコーン化合物の耐熱性も低下しにくくなる。逆にシリコーン化合物の質量平均分子量を5000以下とすることにより、ポリカーボネート樹脂組成物中での分散性が低下しにくく、芳香族ポリカーボネート樹脂組成物における難燃性の低下や、機械物性の低下をより効果的に抑制できる傾向にある。
難燃助剤の添加割合は、配合する場合、芳香族ポリカーボネート樹脂100質量部に対して、例えば0.1質量部以上、好ましくは0.2質量部以上であり、また、7.5質量部以下、好ましくは5質量部以下である。難燃助剤の添加割合が下限値未満の場合、難燃性が不十分となる可能性があり、難燃助剤の添加割合が上限値を超える場合、デラミ等外観不良が発生し透明性が低下すると共に、難燃性が頭打ちとなり、経済的でなくなる可能性がある。
紫外線吸収剤として、酸化セリウム、酸化亜鉛等の無機紫外線吸収剤の他、ベンゾトリアゾール化合物、ベンゾフェノン化合物、サリシレート化合物、シアノアクリレート化合物、トリアジン化合物、オギザニリド化合物、マロン酸エステル化合物、ヒンダードアミン化合物、サリチル酸フェニル系化合物等の有機紫外線吸収剤を挙げることができる。これらの中では、ベンゾトリアゾール系やベンゾフェノン系の有機紫外線吸収剤が好ましい。特に、ベンゾトリアゾール化合物の具体例として、2−(2'−ヒドロキシ−5'−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2'−ヒドロキシ−3',5'−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−ベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−3',5'−ジ−tert−ブチル−フェニル)−ベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−3'−tert−ブチル−5'−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−3',5'−ジ−tert−ブチル−フェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール)、2−(2'−ヒドロキシ−3',5'−ジ−tert−アミル)−ベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−5'−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2'−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2N−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]−フェノール、2−[4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル]−5−(オクチロキシ)フェノール、2,2’−(1,4−フェニレン)ビス[4H−3,1−ベンゾキサジン−4−オン]、[(4−メトキシフェニル)−メチレン]−プロパンジオイックアシッド−ジメチルエステル、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−p−クレゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルメチル)フェノール、2−[5−クロロ(2H)−ベンゾトリアゾール−2−イル]−4−メチル−6−(tert−ブチル)フェノール、2,4−ジ−tert−ブチル−6−(5−クロロベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラブチル)フェノール、2,2′−メチレンビス[6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラブチル)フェノール]、[メチル−3−[3−tert−ブチル−5−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシフェニル]プロピオネート−ポリエチレングリコール]縮合物等を挙げることができる。これらの2種以上を併用してもよい。上記の中では、好ましくは、2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレン−ビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2N−ベンゾトリアゾール2−イル)フェノール]である。また、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤の具体例として、2,4−ジヒドロキシ−ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシ−ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ドデシロキシ−ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクタデシロキシ−ベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシ−ベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4,4′−ジメトキシ−ベンゾフェノン、2,2′,4,4′−テトラヒドロキシ−ベンゾフェノン等を挙げることができる。また、サリチル酸フェニル系紫外線吸収剤の具体例として、フェニルサリシレート、4−tert−ブチル−フェニルサリシレート等を挙げることができる。更には、トリアジン系紫外線吸収剤の具体例として、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]−フェノール、2−[4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル]−5−(オクチロキシ)フェノール等を挙げることができる。また、ヒンダードアミン系紫外線吸収剤の具体例として、ビス(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)セバケート等を挙げることができる。
紫外線吸収剤の添加割合は、配合する場合、芳香族ポリカーボネート樹脂100質量部に対して、例えば0.01質量部以上、好ましくは0.1質量部以上であり、また、3質量部以下、好ましくは1質量部以下である。紫外線吸収剤の添加割合が下限値未満の場合、耐候性の改良効果が不十分となる可能性があり、紫外線吸収剤の添加割合が上限値を超える場合、モールドデボジット等が生じ、金型や冷却ロール汚染を引き起こす可能性がある。
離型剤として、カルボン酸エステル、ポリシロキサン化合物、パラフィンワックス(ポリオレフィン系)等を挙げることができる。具体的には、脂肪族カルボン酸、脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステル、数平均分子量200〜15000の脂肪族炭化水素化合物、ポリシロキサン系シリコーンオイルの群から選ばれる少なくとも1種の化合物を挙げることができる。脂肪族カルボン酸として、飽和又は不飽和の脂肪族1価、2価又は3価カルボン酸を挙げることができる。ここで、脂肪族カルボン酸とは、脂環式のカルボン酸も包含する。これらの中でも、好ましい脂肪族カルボン酸は、炭素数6〜36の1価又は2価カルボン酸であり、炭素数6〜36の脂肪族飽和1価カルボン酸が更に好ましい。脂肪族カルボン酸の具体例として、パルミチン酸、ステアリン酸、吉草酸、カプロン酸、カプリン酸、ラウリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、メリシン酸、テトラリアコンタン酸、モンタン酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸等を挙げることができる。脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステルの具体例として、蜜ロウ(ミリシルパルミテートを主成分とする混合物)、ステアリン酸ステアリル、ベヘン酸ベヘニル、ベヘン酸ステアリル、グリセリンモノパルミテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート、グリセリントリステアレート、ペンタエリスリトールモノパルミテート、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリトールトリステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート等を挙げることができる。数平均分子量200〜15000の脂肪族炭化水素として、流動パラフィン、パラフィンワックス、マイクロワックス、ポリエチレンワックス、フィッシャートロプシュワックス、炭素数3〜12のα−オレフィンオリゴマー等を挙げることができる。ここで、脂肪族炭化水素には脂環式炭化水素も含まれる。また、これらの炭化水素化合物は部分酸化されていてもよい。これらの中では、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス又はポリエチレンワックスの部分酸化物が好ましく、パラフィンワックス、ポリエチレンワックスが更に好ましい。数平均分子量は、好ましくは200〜5000である。これらの脂肪族炭化水素は単一物質であっても、構成成分や分子量が様々なものの混合物であってもよく、主成分が上記の範囲内であればよい。ポリシロキサン系シリコーンオイルとして、例えば、ジメチルシリコーンオイル、フェニルメチルシリコーンオイル、ジフェニルシリコーンオイル、フッ素化アルキルシリコーン等を挙げることができる。これらの2種類以上を併用してもよい。
離型剤の添加割合は、配合する場合、芳香族ポリカーボネート樹脂100質量部に対して、好ましくは0.001質量部以上、より好ましくは0.01質量部以上であり、また、2質量部以下、より好ましくは1質量部以下である。離型剤の添加割合が下限値未満の場合、離型性の効果が十分でない場合があり、離型剤の添加割合が上限値を超える場合、耐加水分解性の低下、射出成形時の金型汚染等が生じる可能性がある。
着色剤としての染顔料として、例えば、無機顔料、有機顔料、有機染料等を挙げることができる。無機顔料として、例えば、カーボンブラック、カドミウムレッド、カドミウムイエロー等の硫化物系顔料;群青等の珪酸塩系顔料;酸化チタン、亜鉛華、弁柄、酸化クロム、鉄黒、チタンイエロー、亜鉛−鉄系ブラウン、チタンコバルト系グリーン、コバルトグリーン、コバルトブルー、銅−クロム系ブラック、銅−鉄系ブラック等の酸化物系顔料;黄鉛、モリブデートオレンジ等のクロム酸系顔料;紺青等のフェロシアン系顔料等を挙げることができる。また、着色剤としての有機顔料及び有機染料として、例えば、銅フタロシアニンブルー、銅フタロシアニングリーン等のフタロシアニン系染顔料;ニッケルアゾイエロー等のアゾ系染顔料;チオインジゴ系、ペリノン系、ペリレン系、キナクリドン系、ジオキサジン系、イソインドリノン系、キノフタロン系等の縮合多環染顔料;キノリン系、アンスラキノン系、複素環系、メチル系の染顔料等を挙げることができる。そして、これらの中では、熱安定性の点から、酸化チタン、カーボンブラック、シアニン系、キノリン系、アンスラキノン系、フタロシアニン系染顔料等が好ましい。尚、染顔料は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていてもよい。また、染顔料は、押出時のハンドリング性改良、樹脂組成物中への分散性改良の目的のために、ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂とマスターバッチ化されたものも用いてもよい。
着色剤の添加割合は、配合する場合、芳香族ポリカーボネート樹脂100質量部に対して、例えば5質量部以下、好ましくは3質量部以下、より好ましくは2質量部以下である。着色剤の添加割合が多すぎると耐衝撃性が十分でなくなる可能性がある。
<製造方法>
本発明で用いるポリカーボネート樹脂の製造方法としては、例えば、界面重合法、ピリジン法、エステル交換法をはじめとする各種合成方法を挙げることができる。
界面重合法による反応にあっては、反応に不活性な有機溶媒、アルカリ水溶液の存在下で、通常pHを10以上に保ち、芳香族ジヒドロキシ化合物及び末端停止剤、必要に応じて芳香族ジヒドロキシ化合物の酸化防止のための酸化防止剤を用い、ホスゲンと反応させた後、第三級アミン若しくは第四級アンモニウム塩等の重合触媒を添加し、界面重合を行うことによって芳香族ポリカーボネート樹脂を得ることができる。末端停止剤の添加は、ホスゲン化時から重合反応開始時までの間であれば、特に限定されない。尚、反応温度は0〜35℃であり、反応時間は数分〜数時間である。
ここで、反応に不活性な有機溶媒として、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼン等の塩素化炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素等を挙げることができる。重合触媒として、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリプロピルアミン、トリヘキシルアミン、ピリジン等の第三級アミン類;トリメチルベンジルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムクロライド、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド等の第四級アンモニウム塩等を挙げることができる。
ポリカーボネート樹脂のフレークは、例えば、界面重合法にて得られた芳香族ポリカーボネート樹脂を含んだジクロロメタン溶液を45℃に保った温水に滴下し、溶媒を蒸発除去することで得ることができるし、あるいは又、界面重合法にて得られた芳香族ポリカーボネート樹脂を含んだジクロロメタン溶液をメタノール中に投入し、析出したポリマーを濾過、乾燥して得ることができるし、あるいは又、界面重合法にて得られたポリカーボネート樹脂を含んだジクロロメタン溶液をニーダーにて攪拌下、40℃に保ちながら攪拌粉砕後、95℃以上の熱水で脱溶剤して得ることができる。
エステル交換法による反応は、炭酸ジエステルと芳香族ジヒドロキシ化合物とのエステル交換反応である。通常、炭酸ジエステルと芳香族ジヒドロキシ化合物との混合比率を調整したり、反応時の減圧度を調整したりすることによって、所望の芳香族ポリカーボネート樹脂の分子量と末端ヒドロキシル基量が決められる。末端ヒドロキシル基量は、芳香族ポリカーボネート樹脂の熱安定性、加水分解安定性、色調等に大きな影響を及ぼし、実用的な物性を持たせるためには、好ましくは1000ppm以下であり、より好ましくは700ppm以下である。芳香族ジヒドロキシ化合物1モルに対して炭酸ジエステルを等モル量以上用いることが一般的であり、好ましくは1.01〜1.30モルの量で用いられる。
炭酸ジエステルとして、例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ−tert−ブチルカーボネート等の炭酸ジアルキル化合物、ジフェニルカーボネートあるいはジ−p−トリルカーボネート、フェニル−p−トリルカーボネート、ジ−p−クロロフェニルカーボネート等の置換ジフェニルカーボネート等が挙げられる。中でもジフェニルカーボネート、置換ジフェニルカーボネートが好ましく、特にジフェニルカーボネートが好ましい。これらの炭酸ジエステル化合物は、単独で、又は、2種以上を混合して使用することができる。
エステル交換法により芳香族ポリカーボネート樹脂を合成する際には、通常、エステル交換触媒が使用される。エステル交換触媒としては、特に制限はないが、主としてアルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物が使用され、補助的に塩基性ホウ素化合物、塩基性リン化合物、塩基性アンモニウム化合物、あるいは、アミン系化合物等の塩基性化合物を併用することも可能である。このような原料を用いたエステル交換反応では、2価フェノール、1価フェノール(末端停止剤)、炭酸ジエステルの混合物を、溶融下に、反応器に供給し、100〜320℃の温度で反応を行い、最終的には2.7×102Pa(2mmHg)以下の減圧下、芳香族ヒドロキシ化合物等の副生成物を除去しながら溶融重縮合反応を行う方法が挙げられる。溶融重縮合は、バッチ式、又は、連続的に行うことができるが、本発明で用いる芳香族ポリカーボネート樹脂にあっては、安定性等の観点から、連続式で行うことが好ましい。エステル交換法において、芳香族ポリカーボネート樹脂中の触媒の失活剤として、触媒を中和する化合物、例えばイオウ含有酸性化合物、又は、それより形成される誘導体を使用することが好ましく、その量は、触媒のアルカリ金属に対して0.5〜10当量、好ましくは1〜5当量の範囲であり、芳香族ポリカーボネート樹脂に対して通常1〜100ppm、好ましくは1〜20ppmの範囲で添加する。
上記のように、従来の方法に準じて本発明のポリカーボネート樹脂を製造でき、本発明は産業上有用な発明である。
本発明のポリカーボネート樹脂には、必要に応じて、本発明ポリカーボネート樹脂以外の樹脂が含まれていてもよい。このような他の樹脂としては、例えば、本発明で用いるポリカーボネート樹脂以外のポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET樹脂)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT樹脂)、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT樹脂)等の熱可塑性ポリエステル樹脂;ポリスチレン樹脂(PS樹脂)、高衝撃ポリスチレン樹脂(HIPS)、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、メチルメタクリレート−スチレン共重合体(MS樹脂)等のスチレン系樹脂;メチルメタクリレート−アクリルゴム−スチレン共重合体(MAS)等のコア/シェル型のエラストマー、ポリエステル系エラストマー等のエラストマー;環状シクロオレフィン樹脂(COP樹脂)、環状シクロオレフィン(COP)共重合体樹脂等のポリオレフィン樹脂;ポリアミド樹脂(PA樹脂);ポリイミド樹脂(PI樹脂);ポリエーテルイミド樹脂(PEI樹脂);ポリウレタン樹脂(PU樹脂);ポリフェニレンエーテル樹脂(PPE樹脂);ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS樹脂);ポリスルホン樹脂(PSU樹脂);ポリメタクリレート樹脂(PMMA樹脂);ポリカプロラクトン等を挙げることができる。
本発明のポリカーボネート樹脂中における、他の樹脂成分の配合割合は、全樹脂成分の10質量%以下であることが好ましく、1%以下がさらに好ましい。他樹脂の成分割合が10質量%を超えると諸物性を損なう可能性がある。
本発明のポリカーボネート樹脂に種々の添加剤を任意の割合で添加し、周知のストランド方式のコールドカット法(一度溶融させた芳香族ポリカーボネート樹脂組成物をストランド状に成形、冷却後、所定の形状に切断してペレット化する方法)、空気中ホットカット方式のホットカット法(一度溶融させた芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を、空気中で水に触れぬうちにペレット状に切断する方法)、水中ホットカット方式のホットカット法(一度溶融させた芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を、水中で切断し、同時に冷却してペレット化する方法)によって、ポリカーボネート樹脂ペレットを得ることができる。得られたポリカーボネート樹脂ペレットは、熱風乾燥炉、真空乾燥炉、脱湿乾燥炉を用いた乾燥といった方法に基づき乾燥させることが好ましい。
<分子量>
本発明のポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(Mv)は以下の測定条件に基づいて測定される。
<粘度平均分子量(Mv)測定条件>
測定機器:ウベローデ毛管粘度計
溶媒:ジクロロメタン
樹脂溶液濃度:0.5グラム/デシリットル
測定温度:25℃
上記条件で測定し、ハギンズ定数0.45で極限粘度[η]デシリットル/グラムを求め、次式により算出する。
本発明のポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量としては、18,000〜35,000が好ましく、20,000〜30,000がさらに好ましく、22,000〜28,000が特に好ましい。
ガラス転移点、溶融流動性、耐ドローダウン性は分子量に影響を受ける物性であり、ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量が上記範囲にある場合、これらの特性全てがシート、フィルム、熱成形体の製造に好ましい。すなわち、本発明のポリカーボネート樹脂は、熱成形の用途に特に適しているといえる。
粘度平均分子量が35,000より大きい場合、溶融流動性が低下することがある。また、ポリカーボネート樹脂のガラス転移点が低い値とはならず、熱成形性が低下することがある。
粘度平均分子量が18,000より小さい場合、耐ドローダウン性が低下することがある。
ガラス転移点
本発明のポリカーボネート樹脂のガラス転移点は示差走査熱量計を用い、以下に示す条件にて測定する。
<ガラス転移点の測定条件>
測定機器:示差走査熱量測定機(DSC)
加温速度:10℃/min
ガスフロー環境:窒素20ml/min
試料前処理:300℃加熱融解
本発明のポリカーボネート樹脂は熱成形性の観点から、ガラス転移点が100℃〜135℃の範囲であることが好ましい。本発明のポリカーボネート樹脂のガラス転移点は110℃〜130℃の範囲であることがさらに好ましく、115℃〜130℃の範囲であることが特に好ましい。
ガラス転移点が100℃未満であると、ポリカーボネート樹脂の製造上、造粒、乾燥工程においてポリカーボネート樹脂粉末が凝集し、著しく生産性が低下することがある。
上記の理由により、ガラス転移点の高い方がポリカーボネート樹脂製造上のプロセスマージンが広く、高品質のポリカーボネート樹脂を効率的、安定的に製造できる。このため、本発明のポリカーボネート樹脂のガラス転移点は105℃以上であることがさらに好ましく、110℃以上であることが特に好ましい。
ガラス転移点が135℃より高い場合、熱成形時に樹脂を高温で軟化する必要があり、エネルギー消費量が増加することがある。
本発明のポリカーボネート樹脂の溶融流動性は高化式フローテスターを用い、以下に示す条件にて測定したQ値にて評価する。Q値が高いと溶融流動性が高いことを示し、Q値が低いと溶融流動性が低いことを示す。
<Q値測定条件>
測定機器:流動特性評価装置フローテスター
荷重:160kgf/cm
オリフィス:直径1mm×長さ10mm
測定温度:280℃
上記測定条件で測定したポリカーボネート樹脂のQ値が1×10−2cm/s未満となると、たとえガラス転移点が低くても、溶融流動性が低すぎるために、通常より高温条件でシート、フィルム、熱成形体を製造する必要があり、エネルギー消費量が増加したり、樹脂が分解することがある。
シートフィルムの生産安定性や製造時のエネルギー消費量の観点から、Q値は1×10−2cm/s以上であり、2×10−2cm/s以上であることがより好ましい。
逆に、ガラス転移点が100℃〜135℃の好ましい範囲であっても、上記測定条件で測定したポリカーボネート樹脂のQ値が35×10−2cm/s以上となると、溶融流動性が高すぎるために耐ドローダウン性が低く、熱成形時に著しいドローダウンが発生し、成形不良を引き起こすことがある。ガラス転移点が100℃〜135℃であり、かつQ値が30×10−2cm/s以下であれば、熱成形時にドローダウンはほとんど観察されないため、特に好ましい。
上記の理由により、本発明のポリカーボネート樹脂のQ値は1×10−2cm/s〜35×10−2cm/sの範囲であることが好ましく、2×10−2cm/s〜35×10−2cm/sの範囲であることがより好ましく、2×10−2cm/s〜30×10−2cm/sの範囲であることが特に好ましい。
<シート、フィルム>
本発明のシート、フィルムの製造方法は、特に限定されないが、押出成形、キャスト成形が好ましい。
押出成形の例としては、本発明のポリカーボネート樹脂あるいは、これに添加剤を加えた樹脂組成物のペレット、フレークあるいは粉末を押出機で溶融、混練後、Tダイ等から押出し、得られる半溶融状のシートをポリッシングロール等で挟圧しながら、冷却、固化して製品とする方法が挙げられる。押出機は1軸でも2軸でもよく、またベント付き、ノンベントのいずれも使用出来る。
<熱成形体>
本発明の熱成形体とは、ポリカーボネート樹脂の熱成形によって製造された成形体である。具体的な製造方法としては、真空成形や圧縮空気圧成形が挙げられる。
<熱成形性>
本発明のポリカーボネート樹脂の熱成形性は、本発明のポリカーボネート樹脂フィルムを圧空成形して評価する。具体的には、ポリカーボネート樹脂フィルムを、200mm×300mm×180μmに裁断し、得られたサンプルフィルムを圧空成形機の型枠に取り付け、赤外線ヒーターにより、所定の温度に予熱し、2.5MPaの高圧空気により、金型(キューブ型)へ圧空成形を実施する。なお、絞り高さは、金型5mmの高さのものを使用する。
<耐ドローダウン性>
本発明のポリカーボネート樹脂フィルムを圧空成形機の型枠に取り付け、赤外線ヒーターにより、所定の温度に加熱し、耐ドローダウン性を目視にて観察する。
<用途>
本発明のシート、フィルム、熱成形体は、上述した各種の好ましい形態、構成を含む本発明のポリカーボネート樹脂を含有する熱成形体である。熱成形体の形状、模様、色彩、寸法等に制限はなく、その用途に応じて任意に設定すればよい。熱成形体として、具体的には、電気電子機器、OA機器、情報端末機器、機械部品、家電製品、車輌部品、建築部材、各種容器、レジャー用品・雑貨類、照明機器等の部品、各種家庭用電気製品等の部品、電気器具のハウジング、容器、カバー、収納部、ケース、照明器具のカバーやケース等を挙げることができる。電気電子機器として、例えば、パーソナルコンピュータ、ゲーム機、テレビジョン受像機、液晶表示装置やプラズマ表示装置等のディスプレイ装置、プリンター、コピー機、スキャナー、ファックス、電子手帳やPDA、電子式卓上計算機、電子辞書、カメラ、ビデオカメラ、携帯電話、スマートフォン、タブレット、電池パック、記録媒体のドライブや読み取り装置、マウス、テンキー、CDプレーヤー、MDプレーヤー、携帯ラジオ・オーディオプレーヤー等を挙げることができる。また、成形体として、電飾看板、液晶バックライト、照明ディスプレイ、交通標識、サインボード、スクリーン、反射板やメーター部品等の自動車部品、玩具、装飾品等も挙げることができる。
以下、実施例に基づき本発明を説明するが、本発明は実施例に限定されるものではなく、実施例における種々の数値や材料は例示である。
本発明のポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(Mv)は以下の測定条件に基づいて測定した。
<粘度平均分子量(Mv)測定条件>
測定機器:ウベローデ毛管粘度計
溶媒:ジクロロメタン
樹脂溶液濃度:0.5グラム/デシリットル
測定温度:25℃
上記条件で測定し、ハギンズ定数0.45で極限粘度[η]デシリットル/グラムを求め、次式により算出した。
本発明のポリカーボネート樹脂のガラス転移点は示差走査熱量計を用い、以下に示す条件にて測定した。
<ガラス転移点の測定条件>
測定機器:示差走査熱量測定機(DSC)(株)島津製作所製DSC−50
加温速度:10℃/min
ガスフロー環境:窒素20ml/min
試料前処理:300℃加熱融解
本発明のポリカーボネート樹脂の溶融流動性は高化式フローテスターを用い、以下に示す条件にて測定したQ値にて評価した。
<Q値測定条件>
測定機器:流動特性評価装置フローテスター(株)島津製作所製CFT−500D
荷重:160kgf/cm
オリフィス:直径1mm×長さ10mm
測定温度:280℃
<押出成形条件>
本発明のポリカーボネート樹脂の押出成形によるフィルム化は、二軸押出機を使用し、以下に示す条件にて実施した。
押出機:東芝機械(株)製TEM26DS
押出機温度:280℃
ダイス幅:330mm
ダイス温度:260℃
<熱成形性>
本発明のポリカーボネート樹脂の熱成形性は、本発明のポリカーボネート樹脂フィルムを圧空成形して評価した。具体的には、ポリカーボネート樹脂フィルムを、200mm×300mm×180μmに裁断し、得られたサンプルフィルムを(株)NK・エンタープライズ製圧空成形機VAP−30MT(送り速度900mm/s)の型枠に取り付け、赤外線ヒーターにより、150℃、170℃、190℃に予熱し、それぞれ2.5MPaの高圧空気により、金型(キューブ型)へ圧空成形を実施した。なお、絞り高さは、金型5mmの高さのものを使用した。
得られた熱成形体の表面状態(クラック、シワ、ムラ、形状)を観察し、以下に示す3段階で評価した。形状を賦型し、クラック、シワ、ムラのいずれも観察されない場合、「特に良好」と評価し、キューブ型の角がやや丸く形状賦型されている場合、「良好」と評価し、キューブ型の角が丸く形状賦型されている場合、「不良」と評価した。
<耐ドローダウン性>
本発明のポリカーボネート樹脂フィルムを圧空成形機の型枠に取り付け、赤外線ヒーターにより、150℃、170℃、190℃に加熱し、それぞれ耐ドローダウン性を目視にて観察した。
ドローダウンがほとんど観察されなかった場合、「特に良好」と評価し、ややドローダウンが観察された場合、「良好」と評価し、著しいドローダウンが観察された場合、「不良」と評価した。
<製造例1>
有機化学ハンドブックP143〜150に基づき、東京化成工業(株)製4−ヒドロキシ安息香酸と東京化成工業(株)製1−ヘキサデカノールを用いて脱水反応によるエステル化を行い、パラヒドロキシ安息香酸ヘキサデシルエステル(CEPB)を得た。
<製造例2>
製造例1において、1−ヘキサデカノールを新日本理化(株)製2−ヘキシルデカノール(商品名:エヌジェコール 160BR)に変更した以外は、製造例1と同様に操作して、パラヒドロキシ安息香酸2−ヘキシルデシルエステル(HDPB)を得た。
<実施例1>
9w/w%の水酸化ナトリウム水溶液57.2kgに、新日鉄住金化学(株)製ビスフェノールA(BPA)7.1kg(31.14mol)とハイドロサルファイト30gを加えて溶解した。これにジクロロメタン40kgを加え、撹拌しながら、溶液温度を15℃〜25℃の範囲に保ちつつ、ホスゲン4.33kgを30分かけて吹き込んだ。
ホスゲンの吹き込み終了後、9w/w%の水酸化ナトリウム水溶液6kg、ジクロロメタン11kg、及び前記のCEPB443g(1.22mol)をジクロロメタン10kgに溶解させた溶液を加え、激しく撹拌して乳化させた後、重合触媒として10mlのトリエチルアミンを加え約40分間重合させた。
重合液を水相と有機相に分離し、有機相をリン酸で中和し、洗液のpHが中性になるまで純水で水洗を繰り返した。この精製されたポリカーボネート樹脂溶液から有機溶媒を蒸発留去することによりポリカーボネート樹脂粉末を得た。
得られたポリカーボネート樹脂粉末を、スクリュー径35mm の2軸押出機を用い、シリンダー温度260℃で溶融混錬して、ストランド状に押出してペレタイザーでペレット化した。
得られたポリカーボネート樹脂ペレットを用いて、粘度平均分子量、ガラス転移点、Q値測定を実施した結果、粘度平均分子量27600、ガラス転移点(Tg)127℃、Q値7.7×10−2cm/sであった。
さらに、Tダイを有する40mm単軸押出機を用い、得られたポリカーボネート樹脂ペレットを吐出量40kg/h、シリンダー温度260℃で溶融押出し、Tダイからフィルム状にして押し出した後、120℃の鏡面ロールを用いて冷却し、厚み180μmのフィルムを得た。
得られたポリカーボネート樹脂フィルムを用いて、熱成形性及び耐ドローダウン性を評価した結果、熱成形性については150℃、170℃、190℃いずれの温度条件においても形状を賦型し、クラック、シワ、ムラのいずれも観察されず、「特に良好」であり、耐ドローダウン性については150℃、170℃、190℃いずれの温度条件においてもドローダウンがほとんど観察されず、「特に良好」であった。
<比較例1>
三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製の商品名「ユーピロン(登録商標)S−3000(末端構造はパラターシャリーブチルフェノール(PTBP))を用いて、実施例1と同様に操作してポリカーボネート樹脂ペレット及びフィルムを得た。
得られたポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は21500、ガラス転移点(Tg)は146℃、Q値は10×10−2cm/sであり、熱成形性については150℃ではキューブ型の角が丸く形状賦型されており、「不良」であり、170℃ではキューブ型の角がやや丸く形状賦型されており、「良好」であり、190℃では形状を賦型し、クラック、シワ、ムラのいずれも観察されず、「特に良好」であった。耐ドローダウン性については150℃、170℃、190℃いずれの温度条件においてもドローダウンはほとんど観察されず、「特に良好」であった。
表1より、本発明のポリカーボネート樹脂は、従来の一般的なポリカーボネート樹脂と比較して、低温での熱成形性が良好で、かつ熱成形時の耐ドローダウン性に優れたシート、フィルムを与えるものであると言える。
<実施例2>
実施例1において、CEPBの量を551g(1.52mol)に変更した以外は、実施例1と同様に操作してポリカーボネート樹脂ペレット及びフィルムを得た。
得られたポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は23600、ガラス転移点(Tg)は119℃、Q値は17×10−2cm/sであり、熱成形性については形状を賦型し、クラック、シワ、ムラのいずれも観察されず、「特に良好」であり、耐ドローダウン性についてはドローダウンがほとんど観察されず、「特に良好」であった。
<実施例3>
実施例1において、CEPBの量を502g(1.38mol)に変更した以外は、実施例1と同様に操作してポリカーボネート樹脂ペレット及びフィルムを得た。
得られたポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は25000、ガラス転移点(Tg)は123℃、Q値は13×10−2cm/sであり、熱成形性については形状を賦型し、クラック、シワ、ムラのいずれも観察されず、「特に良好」であり、耐ドローダウン性についてはドローダウンがほとんど観察されず、「特に良好」であった。
<実施例4>
実施例1において、CEPBを前記のHDPBに変更し、HDPBの量を383g(1.05mol)とした以外は、実施例1と同様に操作してポリカーボネート樹脂ペレット及びフィルムを得た。
得られたポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は27100、ガラス転移点(Tg)は130℃、Q値は8.7×10−2cm/sであり、熱成形性については形状を賦型し、クラック、シワ、ムラのいずれも観察されず、「特に良好」であり、耐ドローダウン性についてはドローダウンがほとんど観察されず、「特に良好」であった。
<実施例5>
実施例4において、HDPBの量を452g(1.25mol)とした以外は、実施例4と同様に操作してポリカーボネート樹脂ペレット及びフィルムを得た。
得られたポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は24600、ガラス転移点(Tg)は126℃、Q値は12×10−2cm/sであり、熱成形性については形状を賦型し、クラック、シワ、ムラのいずれも観察されず、「特に良好」であり、耐ドローダウン性についてはドローダウンがほとんど観察されず、「特に良好」であった。
<実施例6>
実施例4において、HDPBの量を525g(1.45mol)とした以外は、実施例4と同様に操作してポリカーボネート樹脂ペレット及びフィルムを得た。
得られたポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は22000、ガラス転移点(Tg)は122℃、Q値は25×10−2cm/sであり、熱成形性については形状を賦型し、クラック、シワ、ムラのいずれも観察されず、「特に良好」であり、耐ドローダウン性についてはドローダウンがほとんど観察されず、「特に良好」であった。
<実施例7>
実施例1において、CEPBを東京化成工業(株)製パラヒドロキシ安息香酸ドデシルエステル(PODB)に変更し、PODBの量を443g(1.45mol)とした以外は、実施例1と同様に操作してポリカーボネート樹脂ペレット及びフィルムを得た。
得られたポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は20700、ガラス転移点(Tg)は128℃、Q値は21×10−2cm/sであり、熱成形性については形状を賦型し、クラック、シワ、ムラのいずれも観察されず、「特に良好」であり、耐ドローダウン性についてはドローダウンがほとんど観察されず、「特に良好」であった。
<実施例8>
実施例1において、CEPBを東京化成工業(株)製パラヒドロキシ安息香酸2−エチルヘキシルエステル(EHPB)に変更し、EHPBの量を376g(1.50mol)とした以外は、実施例1と同様に操作してポリカーボネート樹脂ペレット及びフィルムを得た。
得られたポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は22700、ガラス転移点(Tg)は132℃、Q値は11×10−2cm/sであり、熱成形性についてはクラック、シワ、ムラのいずれも観察されないが、キューブ型の角がやや丸く形状賦型されていたため、「良好」であり、耐ドローダウン性についてはドローダウンがほとんど観察されず、「特に良好」であった。
<実施例9>
実施例8において、EHPBの量を426g(1.70mol)とした以外は、実施例8と同様に操作してポリカーボネート樹脂ペレット及びフィルムを得た。
得られたポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は20100、ガラス転移点(Tg)は128℃、Q値は28×10−2cm/sであり、熱成形性については形状を賦型し、クラック、シワ、ムラのいずれも観察されず、「特に良好」であり、耐ドローダウン性についてはドローダウンがほとんど観察されず、「特に良好」であった。
<実施例10>
実施例8において、EHPBの量を445g(1.78mol)とした以外は、実施例8と同様に操作してポリカーボネート樹脂ペレット及びフィルムを得た。
得られたポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は19200、ガラス転移点(Tg)は127℃、Q値は34×10−2cm/sであり、熱成形性については形状を賦型し、クラック、シワ、ムラのいずれも観察されず、「特に良好」であり、耐ドローダウン性についてはややドローダウンが観察され、「良好」であった。
<比較例2>
実施例7において、PODBの量を630g(2.06mol)とした以外は、実施例7と同様に操作してポリカーボネート樹脂ペレット及びフィルムを得た。
得られたポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は16700、ガラス転移点(Tg)は120℃、Q値は64×10−2cm/sであり、耐ドローダウン性については著しいドローダウンが観察されたため、「不良」であった。熱成形性については、著しいドローダウンが発生したために熱成形できず、「不良」であった。
<比較例3>
実施例8において、EHPBの量を514g(2.06mol)とした以外は、実施例8と同様に操作してポリカーボネート樹脂ペレット及びフィルムを得た。
得られたポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は16500、ガラス転移点(Tg)は124℃、Q値は60×10−2cm/sであり、耐ドローダウン性については著しいドローダウンが観察されたため、「不良」であった。熱成形性については、著しいドローダウンが発生したために熱成形できず、「不良」であった。
<比較例4>
比較例2において、PODBを東京化成工業(株)製パラヒドロキシ安息香酸ブチルエステル(POBB)とし、POBBの量を241.5g(1.24mol)とした以外は、比較例2と同様に操作してポリカーボネート樹脂ペレット及びフィルムを得た。
得られたポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は24300、ガラス転移点(Tg)は141℃、Q値7.1×10−2cm/sであり、熱成形性についてはキューブ型の角が丸く形状賦型されており、「不良」であり、耐ドローダウン性についてはドローダウンがほとんど観察されず、「特に良好」であった。
<比較例5>
比較例2において、PODBを東京化成工業(株)製パラヒドロキシ安息香酸プロピルエステル(POPB)とし、POPBの量を224g(1.24mol)とした以外は、比較例2と同様に操作してポリカーボネート樹脂ペレット及びフィルムを得た。
得られたポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は23900、ガラス転移点(Tg)は141℃、Q値は7.3×10−2cm/sであり、熱成形性についてはキューブ型の角が丸く形状賦型されており、「不良」であり、耐ドローダウン性についてはドローダウンがほとんど観察されず、「特に良好」であった。
<比較例6>
実施例1において、CEPBの量を188g(0.52mol)とした以外は、実施例1と同様に操作してポリカーボネート樹脂ペレット及びフィルムを得た。
得られたポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は46800、ガラス転移点(Tg)は146℃、Q値は0.5×10−2cm/sであり、熱成形性についてはキューブ型の角が丸く形状賦型されており、「不良」であり、耐ドローダウン性についてはドローダウンがほとんど観察されず、「特に良好」であった。
<比較例7>
比較例6において、CEPBをHDPB188g(0.52mol)に変更した以外は、比較例6と同様に操作してポリカーボネート樹脂ペレット及びフィルムを得た。
得られたポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は47000、ガラス転移点は146℃、Q値は0.5×10−2cm/sであり、熱成形性についてはキューブ型の角が丸く形状賦型されており、「不良」であり、耐ドローダウン性についてはドローダウンがほとんど観察されず、「特に良好」であった。
<比較例8>
実施例7において、PODBの量を159g(0.52mol)とした以外は、実施例7と同様に操作してポリカーボネート樹脂ペレット及びフィルムを得た。
得られたポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は47700、ガラス転移点は147℃、Q値は0.5×10−2cm/sであり、熱成形性についてはキューブ型の角が丸く形状賦型されており、「不良」であり、耐ドローダウン性についてはドローダウンがほとんど観察されず、「特に良好」であった。
<比較例9>
実施例1において、CEPBの量を732g(2.39mol)とした以外は、実施例1と同様に操作してポリカーボネート樹脂ペレット及びフィルムを得た。
得られたポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は16900、ガラス転移点は112℃、Q値は67×10−2cm/sであり、耐ドローダウン性については著しいドローダウンが観察されたため、「不良」であった。熱成形性については、著しいドローダウンが発生したために熱成形できず、「不良」であった。
<比較例10>
比較例9において、CEPBをHDPB732g(2.39mol)に変更した以外は、比較例9と同様に操作してポリカーボネート樹脂ペレット及びフィルムを得た。
得られたポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は16800、ガラス転移点は112℃、Q値は67×10−2cm/sであり、耐ドローダウン性については著しいドローダウンが観察されたため、「不良」であった。熱成形性については、著しいドローダウンが発生したために熱成形できず、「不良」であった。
表2に示すように、本発明のポリカーボネート樹脂は、従来のポリカーボネート樹脂と比較して、低温での熱成形性および耐ドローダウン性が良好である。
すなわち、各実施例のポリカーボネート樹脂においては、末端停止剤として、炭素数が8であるEHPB、または炭素数が16であるCEPB、HDPB等を用いてガラス転移点を100℃〜135℃、かつQ値を1×10−2cm/s〜35×10−2cm/sの範囲内に調整することにより、優れた熱成形性および耐ドローダウン性が実現されている。
一方、Q値が大きく高温での流動性が高すぎる比較例1、2、9、および10のポリカーボネート樹脂は耐ドローダウン性に劣り、末端停止剤として、炭素数が4と少ないPOBB、またはPOPBを用いた比較例4および5を含む比較例4〜8においては、ガラス転移点が141℃以上と高く、熱成形性に劣る結果となった。
また、上述のように熱成形性および耐ドローダウン性に優れている本発明のポリカーボネート樹脂により、耐ドローダウン性が良好な、シート、フィルムおよび成形体を提供することができる。

Claims (6)

  1. 下記一般式(1)で表わされる1価フェノール、一般式(2)に示す2価フェノール、及びカーボネート結合剤を反応させて得られるポリカーボネート樹脂を用いて成形された熱成形体であって、
    前記ポリカーボネート樹脂のガラス転移点が100℃〜135℃であり、かつ溶融流動性を示すQ値が1×10−2cm/s〜35×10−2cm/sであり、
    粘度平均分子量が18,000〜35,000であり、
    前記2価フェノールが、少なくとも2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンを含む熱成形体
    (式中、Rは、炭素数8〜36のアルキル基、又は炭素数8〜36のアルケニル基を表し、
    〜Rはそれぞれ独立に、水素、ハロゲン、置換基を有してもよい炭素数1〜20のアルキル基、又は置換基を有してもよい炭素数6〜12のアリール基を表す。)
    (式中、R〜Rはそれぞれ独立に、水素、ハロゲン、置換基を有してもよい炭素数1〜5のアルコキシル基、置換基を有してもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数1〜5のアルコキシ基、置換基を有してもよい炭素数6〜12のアリール基、置換基を有してもよい炭素数7〜17のアラルキル基、又は置換基を有してもよい炭素数2〜15のアルケニル基を表し、
    Xは、−O−、−S−、−SO−、−SO−、−CO−及び下記式(3)〜(6)から選択される群のうち、いずれかの構造である。)
    (式中、R10及びR11はそれぞれ水素、ハロゲン、置換基を有してもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数1〜5のアルコキシ基、置換基を有してもよい炭素数6〜12のアリール基、置換基を有してもよい炭素数2〜5のアルケニル基、又は置換基を有してもよい炭素数7〜17のアラルキル基を表し、
    10及びR11はそれぞれ互いに結合して、炭素数1〜20の炭素環又は複素環を形成してもよく、
    cは0〜20の整数を表す)
    (式中、R12及びR13はそれぞれ水素、ハロゲン、置換基を有してもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数1〜5のアルコキシ基、置換基を有してもよい炭素数6〜12のアリール基、置換基を有してもよい炭素数2〜5のアルケニル基、又は置換基を有してもよい炭素数7〜17のアラルキル基を表し、
    12及びR13はそれぞれ互いに結合して、炭素数1〜20の炭素環又は複素環を形成してもよい。)
    (式中、R14〜R17はそれぞれ水素、ハロゲン、置換基を有してもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数1〜5のアルコキシ基、置換基を有してもよい炭素数6〜12のアリール基、置換基を有してもよい炭素数2〜5のアルケニル基、又は置換基を有してもよい炭素数7〜17のアラルキル基を表し、
    14及びR15、並びにR16及びR17は、それぞれ互いに結合して、炭素数1〜20の炭素環又は複素環を形成してもよい。)
    (式中、R18〜R27はそれぞれ水素原子、又は炭素数1〜3のアルキル基である。
  2. 下記一般式(1)で表わされる1価フェノール、一般式(2)に示す2価フェノール、及びカーボネート結合剤を反応させて得られるポリカーボネート樹脂を原料としたフィルムを用いて成形された熱成形体であって、
    前記ポリカーボネート樹脂のガラス転移点が100℃〜135℃であり、かつ溶融流動性を示すQ値が1×10 −2 cm /s〜35×10 −2 cm /sであり、
    粘度平均分子量が18,000〜35,000であり、
    前記2価フェノールが、少なくとも2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンを含む、熱成形体
    (式中、R は、炭素数8〜36のアルキル基、又は炭素数8〜36のアルケニル基を表し、
    〜R はそれぞれ独立に、水素、ハロゲン、置換基を有してもよい炭素数1〜20のアルキル基、又は置換基を有してもよい炭素数6〜12のアリール基を表す。)
    (式中、R 〜R はそれぞれ独立に、水素、ハロゲン、置換基を有してもよい炭素数1〜5のアルコキシル基、置換基を有してもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数1〜5のアルコキシ基、置換基を有してもよい炭素数6〜12のアリール基、置換基を有してもよい炭素数7〜17のアラルキル基、又は置換基を有してもよい炭素数2〜15のアルケニル基を表し、
    Xは、−O−、−S−、−SO−、−SO −、−CO−及び下記式(3)〜(6)から選択される群のうち、いずれかの構造である。)
    (式中、R 10 及びR 11 はそれぞれ水素、ハロゲン、置換基を有してもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数1〜5のアルコキシ基、置換基を有してもよい炭素数6〜12のアリール基、置換基を有してもよい炭素数2〜5のアルケニル基、又は置換基を有してもよい炭素数7〜17のアラルキル基を表し、
    10 及びR 11 はそれぞれ互いに結合して、炭素数1〜20の炭素環又は複素環を形成してもよく、
    cは0〜20の整数を表す)
    (式中、R 12 及びR 13 はそれぞれ水素、ハロゲン、置換基を有してもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数1〜5のアルコキシ基、置換基を有してもよい炭素数6〜12のアリール基、置換基を有してもよい炭素数2〜5のアルケニル基、又は置換基を有してもよい炭素数7〜17のアラルキル基を表し、
    12 及びR 13 はそれぞれ互いに結合して、炭素数1〜20の炭素環又は複素環を形成してもよい。)
    (式中、R 14 〜R 17 はそれぞれ水素、ハロゲン、置換基を有してもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数1〜5のアルコキシ基、置換基を有してもよい炭素数6〜12のアリール基、置換基を有してもよい炭素数2〜5のアルケニル基、又は置換基を有してもよい炭素数7〜17のアラルキル基を表し、
    14 及びR 15 、並びにR 16 及びR 17 は、それぞれ互いに結合して、炭素数1〜20の炭素環又は複素環を形成してもよい。)
    (式中、R 18 〜R 27 はそれぞれ水素原子、又は炭素数1〜3のアルキル基である。
  3. 前記式(1)で表される1価フェノールにおけるRの炭素数が12〜22である、請求項1または2に記載の熱成形体
  4. 前記式(1)で表される1価フェノールが、パラヒドロキシ安息香酸2−ヘキシルデシルエステル及びパラヒドロキシ安息香酸ヘキサデシルエステルから選択される、請求項に記載の熱成形体
  5. 前記式(2)で表される2価フェノールが、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンである、請求項1〜のいずれか一項に記載の熱成形体
  6. 前記ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量が20,000〜30,000である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の熱成形体
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