JP7318408B2 - 貼り合わせ用粘着シート、多層体および多層体の製造方法 - Google Patents
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Description
また、特許文献2には、23℃における対ガラス180°粘着力をPとし、80℃における対ガラス180°粘着力をQとした場合、Q/Pで表される値が1以上である粘着シートについて開示されている。さらに、前記粘着シートと、前記粘着シートの少なくとも一方の面上にポリカーボネート基材とを有する積層体についても開示されている。
本発明はかかる課題を解決することを目的とするものであって、ポリカーボネートを含む基材と、基材上に設けられた粘着層とを含む粘着シートであって、熱曲げ特性に優れた貼り合わせ用粘着シート、ならびに、前記粘着シートを用いた多層体および多層体の製造方法を提供することを目的とする。
<1>ポリカーボネートを含む基材と、前記基材上に設けられた粘着層とを含み、前記基材の示差走査熱量測定によって測定したガラス転移温度が100~140℃である、貼り合わせ用粘着シート。
<2>前記基材が、式(1)で表される末端構造を有するポリカーボネートを含む、<1>に記載の貼り合わせ用粘着シート。
式(1)
<3>前記粘着層が、アクリル粘着剤を含む、<1>または<2>に記載の貼り合わせ用粘着シート。
<4>前記粘着層が、シリコーン粘着剤を含む、<1>~<3>のいずれか1つに記載の貼り合わせ用粘着シート。
<5>前記粘着層が、ウレタン粘着剤を含む、<1>~<4>のいずれか1つに記載の貼り合わせ用粘着シート。
<6>前記基材のヘイズが1.5%以下である、<1>~<5>のいずれか1つに記載の貼り合わせ用粘着シート。
<7>前記基材の厚みが30μm以上200μm以下である、<1>~<6>のいずれか1つに記載の貼り合わせ用粘着シート。
<8>前記粘着層の厚みが10μm以上70μm以下である、<1>~<7>のいずれか1つに記載の貼り合わせ用粘着シート。
<9>前記シートを、前記粘着層側で、ポリカーボネート製鏡面フィルムにラミネートして、JIS Z0237に準拠した180°の方向に、152mm/分の条件下で剥離させる剥離試験において、剥離試験にて0.001~3N/25mmの剥離力を示す、<1>~<8>のいずれか1つに記載の貼り合わせ用粘着シート。
<10>前記ポリカーボネートがビスフェノール骨格を有するポリカーボネートである、<1>~<9>のいずれか1つに記載の貼り合わせ用粘着シート。
<11>前記基材と前記粘着層の間に、プライマー層を有する、<1>~<10>のいずれか1つに記載の貼り合わせ用粘着シート。
<12>樹脂成形体の表面の少なくとも一部に、<1>~<11>のいずれか1つに記載の貼り合わせ用粘着シートが、前記粘着層側で粘着している、多層体。
<13>前記樹脂成形体が樹脂シートである、<12>に記載の多層体。
<14>前記樹脂成形体がポリカーボネートを含む、<12>または<13>に記載の多層体。
<15>前記樹脂成形体に含まれるポリカーボネートの示差走査熱量測定によって測定したガラス転移温度が100~140℃である、<14>に記載の多層体。
<16><1>~<10>のいずれか1つに記載の貼り合わせ用粘着シートを、樹脂成形体に貼り付けることを含む、多層体の製造方法。
本明細書において、各種物性値および特性値は、特に述べない限り、23℃におけるものとする。
本明細書において、「シート」とは、薄く、その厚さが長さと幅のわりには小さく平らな製品をいい、「フィルム」を含むものとする。また、本明細書における「シート」は、単層であっても多層であってもよい。
本明細書において、(メタ)アクリレートの用語は、アクリレート、および、メタクリレートをそれぞれ包含し得るものである。
本発明の貼り合わせ用粘着シート(以下、「粘着シート」ということがある)は、ポリカーボネートを含む基材と、前記基材上に設けられた粘着層とを含み、前記基材の示差走査熱量測定によって測定したガラス転移温度が100~140℃であることを特徴とする。このような構成とすることにより、熱曲げ特性に優れた貼り合わせ用粘着シートを提供可能になる。さらに、他部材(例えば、後述する樹脂成形体)に対する貼り付け性に優れ、また、再剥離性に優れた貼り合わせ用粘着シートを得ることもできる。このように、ガラス転移温度が100~140℃である基材に粘着層を設けることにより、熱曲げ成形用シートの保護フィルムとして使用することができ、熱曲げ成形時に保護フィルムを貼ったまま、成形加工をすることが可能となる。
本発明では、粘着層12、プライマー層16、基材20は、それぞれ1層であってもよいし、2層以上であってもよい。
プライマー層は、基材と粘着層との間に配置されることが好ましく、プライマー層の一方の面が基材の表面に、他方の面が粘着層の表面になるように設けられていることがより好ましい。しかしながら、プライマー層と基材との間、および/または、プライマー層と粘着層との間にが、他の層が設けられていてもよい。
基材は、ポリカーボネートを含み、示差走査熱量測定によって測定したガラス転移温度が100~140℃である。ガラス転移温度を前記範囲とすることにより、熱曲げ性に優れる貼り合わせ用粘着シートが得られる。
前記基材のガラス転移温度は、105℃以上であることが好ましく、110℃以上であることがより好ましい。また、前記基材のガラス転移温度は、137℃以下であることが好ましく、136℃以下であることがより好ましく、130℃以下、125℃以下であってもよい。ガラス転移温度は、後述する実施例に記載の方法に従って測定される(以下、ガラス転移温度について同じ)。
基材のガラス転移温度を上記範囲とする手段としては、用いるポリカーボネートの種類を選択する、他の樹脂を添加する等が例示される。具体的には、ポリカーボネートの末端構造を所定のものとすることや、非晶性ポリエステルやポリカプロラクトン等のガラス転移温度の低い樹脂を添加する等が挙げられる。これらの詳細は後述する。
なお、本明細書においてヘイズは、後述する実施例に記載の方法に基づき測定した値を採用する。
本発明で用いる基材は、ポリカーボネートを含む。
基材に含まれるポリカーボネートの種類としては、分子主鎖中に炭酸エステル結合を含む-[O-R-OC(=O)]-単位(Rが、炭化水素基、具体的には、脂肪族基、芳香族基、または、脂肪族基と芳香族基の双方を含むもの、さらに直鎖構造あるいは分岐構造を持つもの)を含むものであれば、特に限定されないが、芳香族ポリカーボネートが好ましく、ビスフェノール骨格を有するポリカーボネートがより好ましく、ビスフェノールA骨格および/またはビスフェノールC骨格を有するポリカーボネートがさらに好ましい。このようなポリカーボネートを用いることにより、より優れた耐熱性と靱性が達成される。ビスフェノール骨格を有するポリカーボネートは、全構成単位の90モル%以上がビスフェノール骨格を有する構成単位であることが好ましい。
式(1)
R2は、フッ素原子、塩素原子、メチル基、エチル基、または、フェニル基であることが好ましく、フッ素原子、塩素原子またはメチル基であることが好ましい。
nは、0~2の整数であることが好ましく、0または1であることがより好ましく、0であることがさらに好ましい。
粘度平均分子量(Mv)は、溶媒としてメチレンクロライドを使用し、ウベローデ粘度計を用いて温度25℃での極限粘度[η](単位dL/g)を求め、Schnellの粘度式、すなわち、η=1.23×10-4×Mv0.83、から算出される値を意味する。
2種以上のポリカーボネートを用いる場合は、混合物の粘度平均分子量とする(以下、各種物性について同様に考える)。
他の樹脂成分としては、非晶性ポリエステルおよび/またはポリカプロラクトンが例示される。このような樹脂成分を配合することにより、透明性を維持したまま、得られる基材のガラス転移温度をより低くすることができる。
また、上記の他、他の樹脂成分として、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリイミド(PI)、シクロオレフィンコポリマー(COC)、含ノルボルネン樹脂、ポリエーテルスルホン、セロファン、芳香族ポリアミド等の各種樹脂を含んでいてもよい。
基材における樹脂成分の総量は、全体の90質量%以上であることが好ましく、95質量%以上であることがより好ましく、99質量%以上であってもよい。樹脂成分は、ポリカーボネートを1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。また、ポリカーボネート以外の他の樹脂成分を含む場合、前記他の樹脂成分も1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。
第一の実施形態では、また、Tgが比較的高い(例えば、Tgが141~170℃の)ポリカーボネートと、Tgが比較的低い(例えば、Tgが80~99℃の)ポリカーボネートのブレンド形態であってもよい。
第二の実施形態における非晶性ポリエステルのガラス転移温度は、50℃以上であることが好ましく、55℃以上であることがより好ましく、60℃以上であることがさらに好ましい。また、第二の実施形態において、非晶性ポリエステルのガラス転移温度は、120℃以下であることが好ましく、110℃以下であることがより好ましい。第二の実施形態におけるポリカーボネートのガラス転移温度は、120℃以上であることが好ましく、130℃以上であることがより好ましく、140℃以上であることがさらに好ましい。また、第二の実施形態において、ポリカーボネートのガラス転移温度は、155℃以下であることが好ましく、150℃以下であることがより好ましい。
非晶性ポリエステルとしては、国際公開第2018/074482号の段落0012の記載を参酌でき、これらの内容は、本明細書に組み込まれる。
ポリカプロラクトンとしては、国際公開第2018/074480号の段落0015~0017の記載を参酌でき、これらの内容は、本明細書に組み込まれる。
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤などが挙げられる。中でも本発明においては、リン系酸化防止剤およびフェノール系酸化防止剤(より好ましくはヒンダードフェノール系酸化防止剤)が好ましい。リン系酸化防止剤は、基材の色相に優れることから特に好ましい。リン系酸化防止剤としては、特開2018-178075号公報の段落0098~0106の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
基材における添加剤の総量は、0~10質量%であることが好ましく、0~5質量%であることがより好ましい。
基材は、単層であってもよいが、多層であってもよい。多層とする場合、例えば、ポリカーボネート(PC)の層に、アクリル樹脂、例えば、ポリ(メタ)クリル酸メチル樹脂(PMMA:ポリアクリル酸メチルおよび/またはポリメタクリル酸メチル)等のアクリル系樹脂層を積層させたもの、ポリカーボネート(PC)の層に、さらに、ポリカーボネート(PC)の層を積層させたもの等が挙げられる。本発明で用いる基材は、単層が好ましい。
本発明の粘着シートは、上述の通り、基材上に設けられた粘着層を含む。
粘着層の種類は、特に制限はないが、アクリル粘着剤、シリコーン粘着剤およびウレタン粘着剤の少なくとも1種を含むことが好ましい。これらの粘着剤を用いることにより、より高い粘着性と、例えば、プライマー層に対する適度な密着性を実現できる。
また、粘着層は、再剥離性を有していてもよく、再剥離性を有する粘着層は、一度、貼り付け材から剥離させても再度、粘着させることができる。
シリコーン粘着剤は、シリコーン系高分子を含む粘着剤であり、具体例として、信越化学工業社製のKR-3704(主剤)とCAT-PL-50T(白金触媒)とにより製造されるポリマー等が挙げられる。
ウレタン粘着剤は、ウレタン系高分子を含む粘着剤であり、具体例として、トーヨーケム社製の粘着剤オリパイン等が挙げられる。
本明細書では、高分子とは、数平均分子量が1000以上の化合物をいい、好ましくは2000以上の化合物を意味する。
本発明では、ポリカーボネートを含む基材と、前記基材上に設けられた粘着層とを含み、前記基材の示差走査熱量測定によって測定したガラス転移温度が100~140℃である、貼り合わせ用粘着シートを、前記粘着層側で、厚さ0.1(mm)のポリカーボネート製鏡面フィルムにラミネートして、JIS Z0237に準拠した、180°の方向に、152mm/分の条件下で剥離させる剥離試験において、0.001~4.5N/25mmの剥離力を示すことが好ましい。前記下限値以上とすることにより、粘着強度がより向上する傾向にある。剥離力は、0.005N/25mm以上であることがより好ましく、0.01N/25mm以上であることがさらに好ましい。また、前記剥離力は、3N/25mm以下であることがより好ましく、1N/25mm以下であることがさらに好ましく、0.8N/25mm以下であることが一層好ましく、0.7N/25mm以下であることがより一層好ましく、0.5N/25mm以下であることがさらに一層好ましく、0.2N/25mm以下であってもよい。剥離力を、3N/25mm以下、さらには1N/25mm以下とすることにより、再剥離性にも優れた粘着シートが得られる。
剥離力は、後述する実施例に記載の方法に従って測定される。
また、粘着力の異なる粘着剤を組み合わせることによっても、任意の剥離力を有する粘着層を形成させることが可能となる。
本発明の粘着シートは、上述の通り、プライマー層を有していてもよい。
プライマー層は、ウレタン(メタ)アクリレート樹脂を含むことが好ましい。ウレタン(メタ)アクリレート樹脂を用いることにより、より耐熱性に優れた粘着シートが得られる。
(環状骨格の分子構造を含むウレタン(メタ)アクリレート樹脂)
ウレタン(メタ)アクリレート樹脂としては、環状骨格の分子構造を含むウレタン(メタ)アクリレート樹脂が好ましい。より具体的には、環状骨格を有する、イソシアネート化合物とアクリレート化合物との重合体が、好ましいウレタン(メタ)アクリレートの具体例として挙げられる。なお、環状骨格の分子構造を有していてもよいウレタン(メタ)アクリレート樹脂は、好ましくは、紫外線硬化型である。
上述のイソシアネートとしては、芳香族イソシアネートであることが好ましいものの、脂肪族系、脂環式系等のイソシアネートも用いられる。
また、(メタ)アクリレート化合物として、(メタ)アクリロイルオキシ基とヒドロキシ基とを有する化合物、例えば、ヒドロキシ基を有する単官能性(メタ)アクリル系化合物を用いることもできる。
(A3)-O(O=)CHN-A2-HNC(=O)O-A1-O(O=)CNH-A2-NH-(=O)O-(A3) ・・・(I)
(式(I)において、
A1は、上述のポリオール化合物に由来のアルキレン基であり、
A2は、それぞれ独立して、上述のイソシアネート化合物由来のアルキレン基であり、
A3は、それぞれ独立して、上述の(メタ)アクリロイルオキシ基とヒドロキシ基とを有する化合物に由来のアルキル基である。
ウレタン(メタ)アクリレート樹脂の好ましい具体例として、ウレタン(メタ)アクリレートと(メタ)アクリレート(ウレタン(メタ)アクリレート以外のものをいい、分子量1000以下の(メタ)アクリレートが好ましい、以下、同じ。)とを含むものが挙げられる。このようなウレタン(メタ)アクリレート樹脂のより好ましい具体例として、6官能ウレタン(メタ)アクリレートと2官能(メタ)アクリレートとの混合物を含むものが挙げられる。
プライマー塗料にレベリング剤を添加することにより、乾燥過程の塗膜表面に配向性をもたせ、塗膜の表面張力を均一化かつ低下させ、浮きまだらやハジキを防止し、被塗物への濡れ性を向上させることができる。レベリング剤として、例えば、シリコーン系界面活性剤、アクリル系界面活性剤、フッ素系界面活性剤等が好適に用いられる。
本発明の粘着シートは、上述のとおり、ハードコート層を有していてもよい。ハードコート層を設けることにより、粘着シートの表面硬度が向上する傾向にある。ハードコート層の厚さは、特に制限されないが、好ましくは1~10μmであり、より好ましくは2~8μm、さらに好ましくは3~7μmである。
ハードコート層は、好ましくは、基材の表面のうちプライマー層が積層されていない表面に形成される。
ハードコート層は、基材等の表面に施すハードコート処理により形成されることが好ましい。すなわち、熱硬化または活性エネルギー線による硬化が可能なハードコート材料を塗布後、硬化させることにより、ハードコート層を積層することが好ましい。
活性エネルギー線を用いて硬化させる塗料の一例としては、1官能あるいは多官能の(メタ)アクリレートモノマーあるいはオリゴマーなどの単独あるいは複数からなる樹脂組成物、より好ましくは、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを含む樹脂組成物等が挙げられる。これらの樹脂組成物には、硬化触媒として光重合開始剤が加えられることが好ましい。
また、熱硬化型樹脂塗料としてはポリオルガノシロキサン系、架橋型アクリル系などのものが挙げられる。この様な樹脂組成物は、アクリル樹脂またはポリカーボネート用ハードコート剤として市販されているものもあり、塗装ラインとの適正を加味し、適宜選択すればよい。
ハードコート層としては、特開2013-020130号公報の段落0045~0055の記載、特開2018-103518号公報の段落0073~0076の記載、特開2017-213771号公報の段落0062~0082の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
粘着シートの製造においては、まず、基材が形成されることが好ましい。基材の製造においては、ポリカーボネートを含む基材成形用の樹脂組成物を公知の手法でシート状(フィルム状)に加工する。本発明では、特に、溶剤を含まないポリカーボネートを含む基材成形用の樹脂組成物を溶融し押出成形して、基材とすることが好ましい。具体的には、押出成形、キャスト成形により成形することができる。押出成形の例としては、樹脂組成物のペレット、フレークあるいは粉末を押出機で溶融、混練後、Tダイ等から押出し、得られる半溶融状のシートをロールで挟圧しながら、冷却、固化してシートを形成する方法が挙げられる。また、市販品のポリカーボネートフィルムを用いてもよい。
プライマー層形成工程においては、基材の表面上に、プライマー塗料(プライマー液)を塗布し、硬化させて、プライマー層を形成する。
また、粘着層形成工程においては、形成されたプライマー層における、基材とは反対側の表面上に、粘着剤を塗布して硬化させて粘着層を形成する。
プライマー塗料または粘着剤を硬化させる手法としては、光硬化、および熱硬化などの手法が採用され得る。
本発明の多層体は、樹脂成形体の表面の少なくとも一部に、本発明の粘着シートが、前記粘着層側で粘着していることを特徴とする。ここで、樹脂成形体とは、樹脂から成形されるものであり、本発明の粘着シートが貼り合わされる被粘着体を意味する。樹脂成形体の形状は特に定めるものではなく、部品であっても、完成品であってよく、また、表面が平滑であっても、凹凸やさらに複雑な形状を有していてもよい。本発明では、樹脂成形体が樹脂シートである形態が例示される。
樹脂成形体は、熱曲げ成形加工性や透明性に優れた材料が好ましい。樹脂成形体は、100~140℃のガラス転移温度を示すことが好ましく、ポリカーボネートを含むことが好ましく、さらに主鎖構造や末端構造の変更、他樹脂とのアロイ化により100~140℃のガラス転移温度に調整されたポリカーボネート組成物であることがさらに好ましい。
樹脂成形体と粘着シートの貼り合わせ方法としては、公知の方法が使用可能である。例えば、そのまま手作業で貼り付けを行う他、ロールラミネーター法、水張り法、などが挙げられる。
本発明の粘着シートや多層体は、携帯電話端末、スマートフォン、携帯型電子遊具、携帯情報端末、タブレット機器、モバイルパソコン、ウェアラブル端末などの画像表示装置、液晶テレビ、液晶モニター、デスクトップパソコン、カーナビゲーション、自動車計器など設置型ディスプレイデバイス等の各種素子の構成材料として用いることができる。
特に、前記液晶部材の透明導電膜や各種素子の基板材料や保護材料として好適に用いることができる。
本発明の粘着シートや多層体には、種々の加工方法で加工することもできる。例えば、金型を用いて加熱・加圧する方法のほか、圧空成型法、真空成型法、ロールホーミング法などを成形方法として例示することができる。本発明の粘着シートや多層体を加工することで、曲面を有する素子へ利用することが可能となる。
<原料>
・ビスフェノールAを出発原料とする界面重合法により得られた芳香族ポリカーボネート(E-2000F、三菱エンジニアリングプラスチックス社製、粘度平均分子量27,000)
・ビスフェノールAを出発原料とする界面重合法により得られた芳香族ポリカーボネート(S-3000F、三菱エンジニアリングプラスチックス社製、粘度平均分子量21,000)
・ポリカプロラクトン(プラクセルH1P、ダイセル社製、数平均分子量10,000)
・非結晶性の芳香族ポリエステル樹脂(SKYGREEN S2008、SKケミカル社製、ジカルボン酸成分:テレフタル酸=100mol%、ジオール成分:1,4-シクロヘキサンジメタノール=67mol%、エチレングリコール=33mol%)
・トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト(リン系酸化防止剤、ADEKA社製アデカスタブ2112)
・ビス(2,4-ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイト)、Dover Chemical社製、Doverphos S-9228PC
・ペンタエリスリトールテトラキス[3-3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート](フェノール系酸化防止剤、BASF社製イルガノックス1010)
・オクタデシルホスファイト、ADEKA社製、AX-71
9質量/質量%の水酸化ナトリウム水溶液57.2kgに、新日鐵住友化学社製のビスフェノールA(7.1kg(31.14mol)とハイドロサルファイト30gを加えて溶解した。これにジクロロメタン40kgを加え、撹拌しながら、溶液温度を15℃~25℃の範囲に保ちつつ、ホスゲン4.33kgを30分かけて吹き込んだ。
上記で得られたポリカーボネート粉末1(100質量部)と、アデカスタブ2112(0.03質量部)を計量し、タンブラーにて15分間混合した後、ベント付二軸押出機(日本製鋼所社製、TEX30α)により、シリンダー温度260℃で溶融混練し、ストランドカットによりペレットを得た。
E-2000F(93質量部)と、ポリカプロラクトンH1P(7質量部)、アデカスタブ2112(0.03質量部)を計量し、タンブラーにて15分間混合した後、ベント付二軸押出機(日本製鋼所社製、TEX30α)により、シリンダー温度260℃で溶融混練し、ストランドカットによりペレットを得た。
S-3000F(60質量部)と、SKYGREEN S2008(40質量部)、S-9228PC(0.05質量部)、IRGANOX1010(0.05質量部)、AX-71(0.03質量部)を計量し、タンブラーにて15分間混合した後、ベント付二軸押出機(日本製鋼所社製、TEX30α)により、シリンダー温度260℃で溶融混練し、ストランドカットによりペレットを得た。
S-3000F(100質量部)と、アデカスタブ2112(0.03質量部)を計量し、タンブラーにて15分間混合した後、ベント付二軸押出機(日本製鋼所社製、TEX30α)により、シリンダー温度280℃で溶融混練し、ストランドカットによりペレットを得た。
上記で得られたペレットを、バレル直径32mm、スクリューのL/D=31.5のベント付き二軸押出機(日本製鋼所社製、TEX30α)からなるTダイ溶融押出機を用いて、溶融状に押し出し、第一ロール(鏡面ゴムロール、温度50℃)と第二ロール(剛体鏡面ロール、温度130℃)で圧着した後、冷却固化し、シートを作製した。シリンダー・ダイヘッド温度は270℃で行った。その際、吐出とロール引取速度を調整することにより、100μm厚みのシートを得た。
基材のガラス転移温度(Tg)は、下記のDSCの測定条件のとおりに、昇温、降温を2サイクル行い、2サイクル目の昇温時のガラス転移温度を測定した。
低温側のベースラインを高温側に延長した直線と、変曲点の接線の交点を開始ガラス転移温度とし、高温側のベースラインを低温側に延長した直線と、変曲点の接線の交点を終了ガラス転移温度とし、開始ガラス転移温度と終了ガラス転移温度の中間地点をガラス転移温度(Tg)とした。測定開始温度:30℃、昇温速度:10℃/分、到達温度:250℃、降温速度:20℃/分とした。
測定装置は、示差走査熱量計(DSC、日立ハイテクサイエンス社製、「DSC7020」)を使用した。
ヘイズメーターを用いて、JIS-K-7361およびJIS-K-7136に準拠して、D65光源10°視野の条件にて、基材のヘイズ(%)を測定した。
ヘイズメーターとしては、村上色彩技術研究所社製「HM-150」(商品名)を用いた。
6官能ウレタンアクリレート(根上工業社製、商品名UN-3320HC)90質量部と、2官能アクリレート(日本触媒社製、商品名VEEA)10質量部、および、光重合開始剤Irgacure-184(BASF社製、現在は代替品としてIGM Resins B.V.製よりOmnirad184が販売されている)5質量部を、溶媒であるプロピレングリコールモノメチルエーテルにて、固形分が30質量%となるように調製し、プライマー塗料を得た。
シリコーン化合物(信越化学工業社製、商品名KR-3704)100質量部に、硬化のための白金触媒(信越化学工業社製、商品名、CAT-PL-50T)を0.5質量部、添加し、十分に混合して、溶媒トルエンにて固形分が40質量%となるように希釈し、シリコーン粘着剤塗料1を得た。
主剤(トーヨーケム社製、商品名サイアバインSH-101)100質量部に、硬化剤(トーヨーケム社製、商品名T-501B)を4質量部、添加し、十分に混合して、ウレタン粘着剤溶液塗料1を得た。
主剤(トーヨーケム社製、商品名サイアバインSH-205)100質量部に、硬化剤(トーヨーケム社製、商品名T-501B)を3質量部、添加し、十分に混合して、ウレタン粘着剤溶液塗料2を得た。
主剤(DIC社製、商品名ファインタックCT-3088)100質量部に、硬化剤(DIC社製、商品名D-100K)を1.5質量部、添加し、十分に混合して、アクリル粘着剤溶液塗料1を得た。
・ポリカーボネート(PC)フィルム
ビスフェノールA型ポリカーボネートを用いて作製された100μmの鏡面フィルム(熱曲げ成形用、FS-2000H、MGCフィルシート社製)
表1に示す基材の一方の表面上に、上記プライマー塗料を、乾燥塗膜が3μmになる様に塗装し、熱風循環乾燥機にて100℃で2分乾燥させた。さらに、紫外線硬化装置にて、積算光量200mJ/cm2になるように紫外線を照射して、基材の表面にプライマー層が形成された、プライマー処理シートを得た。
ついで、上記シリコーン粘着剤塗料1を、プライマー処理シートのプライマー層側の表面上に、乾燥塗膜の厚さが50μmになるように塗装し、熱風循環乾燥機にて120℃で1分乾燥し、粘着層を形成した。
こうして、実施例1~3、比較例1の粘着シートを得た。
上記で得られた粘着シートを、粘着層側で、貼り付け先PCフィルムにフィルムラミネーター(エム・シー・ケー社製、MP-630)を用いてラミネートし、引張試験機(島津製作所社製、オートグラフ AGS-X)にてJIS Z0237に準拠した180°方向に152mm/分の条件下で剥離させるピール試験(引張速度)を実施して剥離力(単位:N/25mm)を測定した。
試験方法は、JIS Z0237 に規定されている「粘着テープ・粘着シート試験方法」を参考にした180°剥離試験でポリカーボネート(PC)フィルムに対する粘着層の剥離力を評価した。すなわち、JIS Z0237の規格では、所定の試験板に対する粘着テープの剥離力を測定するが、本実施例等では、基材に貼り合わせて剥離力を測定した。このように、試験板の種類のみが、JIS Z023とは異なる方法で剥離力を評価した。
貼り付け先PCフィルムに、A4サイズにカットした粘着シートをフィルムラミネーター(エム・シー・ケー社製 MP-630)にてラミネート試験を実施し、ラミネート後の多層体の外観を確認した。評価は、10人で行い、多数が評価した方とした。
<<ラミネート条件>>
・ラミネート速度:1.8m/分
・左右ニップ圧:0.3MPa
A:外観に影響を与えることなくラミネート可能であった。
B:上記A以外、例えば、ラミネート時に外観不良が発生した等。
貼り付け先PCフィルムに、上記で得られた粘着シートをフィルムラミネーター(エム・シー・ケー社製、MP-630)にてラミネートし、150mm×150mmの大きさにカットし、23℃、50%相対湿度(RH)の条件にて24時間静置した後、粘着シートを剥離した際の貼り付け先フィルムの外観を確認した。評価は、10人で行い、多数が評価した方とした。
A:外観に影響を与えることなく剥離可能であった。
B:やや外観に影響を与えたが、剥離可能であった。
C:上記A、B以外、例えば、剥離の際に、基材を変形させてしまい、再剥離不可となった等。
貼り付け先PCフィルムに、A4サイズの実施例、比較例の粘着シートをフィルムラミネーター(エム・シー・ケー社製、MP-630)にてラミネート試験を実施し、多層体を得た。得られた多層体を50×150mmのサイズに切り出し、熱プレス機(井元製作所社製、182B)を用いて、図2に示すような断面を有する金型(10mmR、高さ10mmtの金型)載せ、金型温度105℃、2MPa、2分間プレスを行い、自然冷却することにより、熱プレス成形品を作製した。その後、熱プレス成形品を10mmRの円筒に沿わせて、下記の基準で判定を行った。評価は、10人で行い、多数が評価した方とした。
A:円筒に沿っていた(スプリングバック無し)。
B:上記A以外、例えば、円筒に沿っていなかった(スプリングバック有り等)。
上記実施例1において、シリコーン粘着剤塗料1をウレタン粘着剤塗料1に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例4の粘着シートを得た。実施例1と同様に評価した。
[実施例5]
上記実施例1において、シリコーン粘着剤塗料1をアクリル粘着剤塗料1に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例5の粘着シートを得た。実施例1と同様に評価した。
[実施例6]
実施例1において、シリコーン粘着剤塗料1をウレタン粘着剤2に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例6の粘着シートを得た。実施例1と同様に評価した。
12 粘着層
16 プライマー層
20 基材
Claims (14)
- ポリカーボネートを含む基材と、
前記基材上に設けられた粘着層とを含み、
前記基材の示差走査熱量測定によって測定したガラス転移温度が100~140℃であり、
前記基材のヘイズが1.5%以下であり、
前記ポリカーボネートがビスフェノール骨格を有するポリカーボネートである、貼り合わせ用粘着シート。 - 前記粘着層が、アクリル粘着剤を含む、請求項1または2に記載の貼り合わせ用粘着シート。
- 前記粘着層が、シリコーン粘着剤を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の貼り合わせ用粘着シート。
- 前記粘着層が、ウレタン粘着剤を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の貼り合わせ用粘着シート。
- 前記基材の厚みが30μm以上200μm以下である、請求項1~5のいずれか1項に記載の貼り合わせ用粘着シート。
- 前記粘着層の厚みが10μm以上70μm以下である、請求項1~6のいずれか1項に記載の貼り合わせ用粘着シート。
- 前記シートを、前記粘着層側で、ポリカーボネート製鏡面フィルムにラミネートして、JIS Z0237に準拠した180°の方向に、152mm/分の条件下で剥離させる剥離試験において、剥離試験にて0.001~3N/25mmの剥離力を示す、請求項1~7のいずれか1項に記載の貼り合わせ用粘着シート。
- 前記基材と前記粘着層の間に、プライマー層を有する、請求項1~8のいずれか1項に記載の貼り合わせ用粘着シート。
- 樹脂成形体の表面の少なくとも一部に、請求項1~9のいずれか1項に記載の貼り合わせ用粘着シートが、前記粘着層側で粘着している、多層体。
- 前記樹脂成形体が樹脂シートである、請求項10に記載の多層体。
- 前記樹脂成形体がポリカーボネートを含む、請求項10または11に記載の多層体。
- 前記樹脂成形体に含まれるポリカーボネートの示差走査熱量測定によって測定したガラス転移温度が100~140℃である、請求項12に記載の多層体。
- 請求項1~9のいずれか1項に記載の貼り合わせ用粘着シートを、樹脂成形体に貼り付けることを含む、多層体の製造方法。
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