JP3765511B2 - 難燃性ケーブル - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は難燃性ケーブルに関し、詳しくは、燃焼しても有毒ガスが発生せず、発煙量も少ないノンハロゲン難燃剤であって、耐水性及び分散性に優れ、且つ比較的低コストの水酸化マグネシウム系難燃剤を含有する難燃性樹脂組成物を用いている難燃性ケーブルに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
水酸化マグネシウムはポリオレフィン等に用いる優れた難燃剤であることは古くから良く知られており、難燃性ケーブル等用のノンハロゲン難燃材料として既に実用化されている。また、燃焼しても有毒ガスが発生せず、煙りも少ないクリーンな難燃剤であるので、通信線、電線用途だけでなく、例えば、壁紙等の建材等への適用も期待されている。
【0003】
このような難燃剤用途の水酸化マグネシウムとして、大別して、合成品と天然品があり、実際には主として合成品が使用されている。
合成品の製造方法としては、例えば、海水又は苦汁中に苛性アルカリ又は消石灰乳を添加し、反応させて結晶成長させ、固液分離した後に、洗浄し、表面処理し、乾燥して乾粉を得る湿式合成法等が知られている。
【0004】
一方、天然品の水酸化マグネシウム系難燃剤の製造方法としては、天然産水酸化マグネシウム鉱石(ブルーサイト)を水性スラリーとしてから湿式粉砕し、この粉砕品スラリーを脂肪酸のアンモニウム塩又はアミン塩の乳化物で表面処理し、固液分離した後乾燥することを特徴とする湿式表面処理法が特公平7−42461号公報に開示されている。
【0005】
また、吸湿性を抑えた難燃性組成物を得るために、天然産水酸化マグネシウム鉱石(ブルーサイト)を粉砕し、脂肪酸、脂肪酸金属塩、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤より選ばれた少なくとも1種類を主成分とする主成分とする表面処理剤を、上記天然産水酸化マグネシウム鉱石(ブルーサイト)に対して0.5〜5重量%添加して表面処理を施してプラスチック又はゴムに添加し難燃性を付与するとともに吸湿性を抑えたことを特徴とする難燃性組成物が特開平7−161230号公報に開示されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
現在難燃剤として使用されている合成品水酸化マグネシウムについては、品質面では、耐水性、より具体的には、コンパウンド、即ち水酸化マグネシウムを含有する樹脂組成物の耐水試験後の体積抵抗率(電気絶縁性)の更なる向上が望まれており、またコスト面では、上記したようにその製造には比較的多段階の工程を必要とし、比較的コストが高いという欠点がある。
【0007】
また、特公平7−42461号公報に開示されている製造方法では、比較的安価な天然産水酸化マグネシウム鉱石を原料としているが、乾粉を得るためには、表面処理の後、ろ過、洗浄、乾燥等の工程を必要とし、更に、乾燥凝集(乾燥により水分が蒸発するときに凝集が起きる。表面処理がなされている場合には乾燥凝集は低減されるが、十分ではない。)を解くために、最終工程にジェットミルやハンマーミル等の乾式粉砕機による粉砕を実施するのが通例となっている。製造工程に湿式工程が含まれると、乾式工程のみからなる製造方法に比較して工程が多段階となり、製品のコスト高につながる。
【0008】
水酸化マグネシウムを乾式粉砕した場合、その粉砕で生じた新生表面が一般に極めて活性な状態であるので、粉砕粒子は再凝集して凝集塊を生成する傾向が強い。従って、粉砕後の水酸化マグネシウム粒子を特開平7−161230号公報に開示されている乾式表面処理法、即ち、天然産水酸化マグネシウム鉱石(ブルーサイト)を粉砕した粉砕品をスーパーミキサー等の剪断力の比較的小さい高速攪拌機で攪拌しつつシランカップリング剤等の表面処理剤を徐々に投入する乾式表面処理法で処理しても、往々にしてこの再凝集した凝集塊を表面処理していることになり、凝集塊表面は新生表面に比較して活性度が低いので、水酸化マグネシウムとの密着力の低い被覆層しか得られないことが多い。
【0009】
このような乾式表面処理法により得られる水酸化マグネシウム系難燃剤は、押し出し成形機等で樹脂中に溶融混練分散させてコンパウンドを作成する場合に分散性が悪く、またフィルターのメッシュ詰まりを引き起こし易い。また、難燃性コンパウンドを調製する場合も、このような分散性の悪い水酸化マグネシウムではコンパウンド内に均一に分散させることは困難であり、分散が悪い場合には当然のことながらそのようなコンパウンドから得られた製品は難燃性に劣り、また、水酸化マグネシウムの分散が不均一であることにより特定の部位に応力が集中することから引張強さ等の機械的強度にも劣ることになる。また、このような凝集塊からなる難燃剤は樹脂との溶融混練中に解砕され、その結果として表面処理されていない表面が新たに出現したり、混練中に被覆皮膜が剥がれ落ちたり、更にはコンパウンドになった後も浸水などにより難燃剤表面の被覆皮膜が脱離し易く、表面処理剤で被覆されていない露出した水酸化マグネシウム表面が存在することになり、その部分は吸水し易く、耐水性の更なる向上が望まれていた。
【0010】
本発明の目的は、天然産水酸化マグネシウム鉱石粉砕品を、更なる粉砕と表面処理とを同時に実施するメカノケミカル表面処理方法によって形成された水酸化マグネシウム系難燃剤であって、耐水性及び分散性に優れ、難燃性に優れ、また、コンパウンド化した時の機械的強度及び電気絶縁性に優れ、且つ比較的低コストの水酸化マグネシウム系難燃剤を含有する難燃性樹脂組成物を用いている難燃性ケーブルを提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は天然産ブルーサイト粒子を表面処理剤の存在下でのメカノケミカル表面処理法によって処理する処理法について鋭意検討した結果、比較的低コストで、耐水性及び分散性が良く、難燃性に優れ、また、コンパウンド化した時の機械的強度及び電気絶縁性に優れる水酸化マグネシウム系難燃剤の開発に成功した。
【0012】
即ち、本発明の難燃性ケーブルは、導体上に直接に又は他の層を介して絶縁体層が被覆されており、それらの周囲に介在を介して又は介在なしでシースが被覆されているケーブルにおいて、該絶縁体層又は該シースの少なくとも一方が難燃性樹脂組成物からなること、該難燃性樹脂組成物は難燃剤として水酸化マグネシウム系難燃剤を含有していること、該水酸化マグネシウム系難燃剤は、シランカップリング剤及びシランからなる群から選ばれた少なくとも一種の表面処理剤の存在下で天然産ブルーサイト粒子をメカノケミカル表面処理法によって処理することによって形成された被覆粒子であって、該表面処理剤からなる被覆層が該天然産ブルーサイト粒子の表面に化学結合しており、且つ該被覆層を有する粒子の平均粒子径が1〜10μmである被覆粒子からなることを特徴とする。
【0015】
なお、本発明において、平均粒子径はレーザー回折式粒度分布計により測定した値であり、天然産ブルーサイト粒子は天然産ブルーサイトを粉砕して得た天然産ブルーサイト粒子とそれらの粒子の凝集塊を包含するものである。
また、本発明において、メカノケミカル表面処理法とは、表面処理を施す粒子(即ち、天然産ブルーサイト粒子)を表面処理剤(即ち、シランカップリング剤及びシランからなる群から選ばれた少なくとも一種の表面処理剤)の存在下で粉砕し且つ解凝集し、その粉砕で生じる新生表面の活性を利用してその粉砕と同時にその表面処理剤を新生表面に化学結合さて被覆層を形成させる処理法であり、従って、天然産ブルーサイト粒子の再凝集を防止でき、また、活性な粒子表面を表面処理することから粒子表面に強固に化学結合した被覆層が得られる。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明の難燃性ケーブルで用いる水酸化マグネシウム系難燃剤(以下、本発明の水酸化マグネシウム系難燃剤と記載する)においては、シランカップリング剤及びシランからなる群から選ばれた少なくとも一種の表面処理剤が天然産ブルーサイト粒子の表面に化学結合して被覆層を形成している。本発明で用いることのできるシランカップリング剤及びシランとしては下記のものがある。
【0017】
シランカップリング剤の例としてはビニルトリメトキシシラン、ビニルトリクロルシラン等のビニルシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のアクリルシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等のエポキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン等のアミノシラン、その他γ−クロロプロピルトリメトキシシランを挙げることができる。
【0018】
また、シランの例としてはメチルトリクロロシラン、トリメチルクロロシラン等のクロロシラン、デシルトリメトキシシラン、テトラエトキシシラン等のアルコキシシラン、ヘキサメチルジシラザン等のシラザン、その他N,O−(ビストリメチルシリル)アセトアミドを挙げることができる。
本発明においてはシランカップリング剤又はシランの1種を単独で用いても、2種以上を併用しても、或いはシランカップリング剤とシランとを併用しても差し支えない。
【0019】
本発明の水酸化マグネシウム系難燃剤においては、被覆層の量が該粒子と該被覆層との合計重量に基づいて0.1〜10重量%であることが好ましい。被覆層の量が0.1重量%未満の場合には水酸化マグネシウム系難燃剤の撥水性が不十分になる傾向があり、また、10重量%を超える場合には樹脂中への水酸化マグネシウム系難燃剤の分散性が悪くなる傾向があり、十分な難燃性、機械的特性が得られないことがある。
【0020】
本発明の水酸化マグネシウム系難燃剤においては、被覆層を有する粒子の平均粒子径は1〜10μmである。被覆層を有する粒子の平均粒子径を1μm未満にするためには、天然産ブルーサイトの粉砕処理に時間がかかり、かつ必要な表面処理剤の量が多くなりコスト高となるので実用的ではない。また、被覆層を有する粒子の平均粒子径が10μmよりも大きくなると、温度感知によるH2 Oの放出が悪くなり、難燃化特性が劣化し、また機械的特性等の面でも不利となる。
【0021】
水酸化マグネシウム粒子は水分を引き寄せる元となる表面水酸基の存在により本来は親水性であるが、本発明の水酸化マグネシウム系難燃剤においては、シランカップリング剤及びシランからなる群から選ばれた少なくとも一種の表面処理剤が天然産ブルーサイト粒子表面の水酸基と複数のポイントで強固に化学結合し且つ表面処理剤が相互に重合、高分子化して被覆層を形成しているので、本発明の水酸化マグネシウム系難燃剤は撥水性、耐水性になり、従って水分を引き寄せて導電性となることがないので絶縁性が要求される用途に用いることができるようになる。更に、被覆層が天然産ブルーサイト粒子表面に強固に化学結合しているので、樹脂と溶融混練した場合にも熱や剪断力により剥がれ落ちることがなく、又樹脂との分散性が改善され、コンパウンドに適切な難燃性、機械的特性を付与し、更に成形時のコンパウンドの流れ性を改善することができる。
【0022】
本発明の難燃性ケーブルで用いる水酸化マグネシウム系難燃剤の製造方法(以下、本発明の製造方法と記載する)で採用するメカノケミカル表面処理法の処理条件を検討するに当たって、従来、難燃性、機械的特性等の面で好適とされていた水酸化マグネシウムの粒径、即ち、最も多用されている合成品の平均粒径約0.7μmに囚われることなく鋭意検討した結果、平均粒子径が1〜20μmの天然産ブルーサイト粒子を上記の表面処理剤と共に連続式メディアミルに供給し、粉砕、解凝集及び表面処理を同時に行うメカノケミカル表面処理を施すことによって、表面処理剤が天然産ブルーサイト粒子の表面に化学結合して被覆層を形成しており、且つ該被覆層を有する粒子の平均粒子径が1〜10μmである被覆粒子からなる水酸化マグネシウム系難燃剤を得ることができ、このような水酸化マグネシウム系難燃剤は難燃性、機械的特性、電気絶縁性等の品質上の特性のみならず、コスト面においても優れていることを見だした。
【0023】
本発明の製造方法においては、出発原料として平均粒子径が1〜20μmになるように粉砕された天然産ブルーサイト粒子を用いる。このような原料としては、例えば、中国遼寧省産出の高品質鉱石(MgO量が約65〜66重量%であり、灼熱減量が約29〜30重量%である)を粉砕したものがセメント等への混和剤等として比較的安価に市販されているので、それを用いてもよく、或いは天然産ブルーサイト鉱石を平均粒子径が1〜20μmになるように粉砕して用いてもよい。天然産ブルーサイト粒子の平均粒子径を1μm未満にするためには、天然産ブルーサイトの粉砕に時間がかかり、かつ必要な表面処理剤の量が多くなりコスト高となるので実用的ではない。また、天然産ブルーサイト粒子の平均粒子径が20μmよりも大きい場合には、メカノケミカル表面処理に比較的長時間を必要とするので実用的ではない。
【0024】
本発明の製造方法においては、粉砕によって平均粒子径を1〜20μmとした天然産ブルーサイト粒子をメカノケミカル表面処理法により更に粉砕するのであるから、粉砕機(兼表面処理機)としては、例えばヘンシェルミキサーやハイスピードミキサーのような高速攪拌機では剪断力が不十分であるので、理想的には、アトライターのようなメディアミルを用いて十分な剪断力を粉体に与える。また、その粉砕はバッチ式でも可能であるが、生産性の面から連続式がより好ましい。
【0025】
本発明の製造方法においては、シランカップリング剤及びシランからなる群から選ばれた少なくとも一種の表面処理剤の存在下でのメカノケミカル表面処理法によって処理するのであり、粉砕、解凝集及び表面処理を同時に実施するのであるから、上記のような粉砕機兼表面処理機、例えばメディアミルに供給したときに均一な表面処理が期待できるように、常温で液体で且つ比較的低沸点である適切な表面処理剤を適切量供給して処理することが好ましい。
【0026】
表面処理剤を粉砕機兼表面処理機、例えばメディアミルに供給する方法としては、種々の方法が考えられるが、例えば、チューブポンプや二流体ノズルを用いる方法がある。ただし、連続式メディアミルを用いる場合は、表面処理剤の定量供給には特に留意する必要がある。さもないと、天然産ブルーサイト粒子表面に形成される被覆層の量が前記した所望範囲から外れることになる。なお、これらの表面処理剤を不活性ガス等で搬送し、所謂、気相処理する方法も可能であるが、この際には配管詰まり等の対策を工夫する必要がある。
【0027】
本発明の難燃性ケーブルで用いる難燃性樹脂組成物は、難燃剤として前記した水酸化マグネシウム系難燃剤を含有している樹脂組成物である。本発明の水酸化マグネシウム系難燃剤は種々の樹脂に難燃性を付与することができ、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−プロピレンゴム、ナイロン等に添加するのに適している。
本発明の難燃性ケーブルは、導体上に直接に又は他の層(例えば耐火層)を介して絶縁体層が被覆されており、それらの周囲に介在を介して又は介在なしでシースが被覆されているケーブルにおいて、該絶縁体層又は該シースの少なくとも一方が上記の難燃性樹脂組成物からなるものである。耐火層を有するケーブルの場合には、本発明の難燃性ケーブルは難燃性耐火ケーブルとなる。
【0028】
合成品水酸化マグネシウム系難燃剤と比較した場合の本発明の水酸化マグネシウム系難燃剤の最大の品質的優位性は、これを含有するコンパウンドの耐水試験後の体積抵抗率が有意に高く、難燃性ケーブル用材料として特に適していることである。この優位性は、上記のメカノケミカル表面処理法により天然産ブルーサイト粒子表面に表面処理剤が理想的に化学結合して被覆層を形成して天然産ブルーサイト粒子が撥水性となったことにより達成される。ここでいう「理想的」とは、前記したように表面処理剤が粒子表面の水酸基と複数のポイントで化学結合し、溶融混練時の熱や剪断力に対して剥がれ落ちることがないことを意味する。このような状態は、本来は、コンパウンドの耐水試験後の体積抵抗率で確認できることであるが、被覆層を有する粒子の状態に於いても判断できる相関のある代替特性値「C/Si(原子数の比)」を見出したので、以下に簡単に述べる。
【0029】
前記したシランカップリング剤及びシランは正確には反応前駆体であり、酸触媒もしくは塩基触媒の存在下で加水分解を受けて反応体となり、水酸化マグネシウム表面の水酸基もしくは反応体相互の水酸基と反応(脱水縮合)する。即ち、化学結合を形成させるためには加水分解を充分に行うことが重要である。なお、それらの反応の説明を単純化するために、シランカップリング剤としてγ−(メタクリロキシプロピル)トリメトキシシラン、シランとしてデシルトリメトキシシランを取り上げ、以下に具体的に述べる。なお、加水分解が全反応の律速段階であり、脱水縮合反応は加水分解反応に比べて速いと言われている。
【0030】
【化1】
Figure 0003765511
【0031】
C元素とSi元素の比、即ちC/Si(原子数の比)(本明細書においては、これを加水分解指数と呼ぶ)は表面処理の良否を示し、反応が理想的に進行した場合には、γ−(メタクリロキシプロピル)トリメトキシシランの場合は、加水分解指数C/Siが10から7に変わり、デシルトリメトキシシランの場合は、加水分解指数C/Siが13から10に変わる。なお、Cの分析は燃焼法、Siの分析は蛍光X線やアルカリ溶融後のICP分析(プラズマ発光分光分析)などにより定量可能であり、加水分解指数C/Siを求めることができる。発明者等は上記メカノケミカル表面処理条件の検討に当たり、加水分解指数C/Siを極力理想値に近づける努力を行って、優れた体積抵抗率を示し、その結果として電気絶縁性に優れる水酸化マグネシウム系難燃剤の開発に成功した。
【0032】
【実施例】
以下に、本発明の難燃性ケーブルで用いる水酸化マグネシウム系難燃剤の製造方法及び得られた水酸化マグネシウム系難燃剤の評価について具体的に説明する。
実施例1
中国遼寧省で産出された高品質ブルーサイト鉱石(MgO量が約65〜66重量%であり、灼熱減量が約29〜30重量%である)を、平均粒子径が数μm〜10μm程度となるよう粉砕したもの、例えば昭和鉱業社製商品名フォートライトPC−200がセメント等への混和剤等として比較的安価に市販されているので、本実施例においてはフォートライトPC−200を使用し、以下に述べるメカノケミカル処理を実施した。なお、本実施例で用いたフォートライトPC−200は平均粒子径が10.3μmであり、化学組成分析結果が下記の通りのものであった。
【0033】
MgO : 66.90重量%
Fe2 3 : 0.74重量%
CaO : 0.44重量%
SiO2 : 0.44重量%
Al2 3 : 0.28重量%
Na2 O : 0.13重量%
2 O : 0.02重量%
TiO2 : 痕跡量
灼熱減量 : 30.51重量%
【0034】
メカノケミカル表面処理を施す粉砕機兼表面処理機として、生産性も考慮して連続式の乾式アトライターである三井鉱山株式会社製商品名ダイナミックミルMYD−5型を使用した。処理条件の詳細は以下の通りであった。
処理機: ダイナミックミルMYD−5型(内容積5リットル)、ジルコニアボール5mmφを10.1Kg充填。
メディアミル回転数: 620rpm
供給量: 上記フォートライトPC−200を2軸スクリューフィーダーで供給口から流量82g/分で定量供給した。
表面処理剤: γ−(メタクリロキシプロピル)トリメトキシシラン(信越化学工業社製KBM−503)をチューブポンプで供給口から流量1.3g/分で定量供給した。
【0035】
このようにして得られたメカノケミカル表面処理後の水酸化マグネシウム系難燃剤の平均粒径は4.9μmであり、C分析及びSi分析に基づいて計算した表面被覆量は1.6重量%であり、加水分解指数C/Siは6.9であった。この加水分解指数は前記した理想値7.0に極めて近く、表面処理が良好に行われていること示している。
【0036】
実施例2
表面処理剤としてデシルトリメトキシシラン(信越化学工業社製KBM−3103)を用いた以外は実施例1と同様に処理して平均粒径が4.6μmであり、C分析及びSi分析に基づいて計算した表面被覆量は1.9重量%であり、加水分解指数C/Siが9.1(理想値10.0)である水酸化マグネシウム系難燃剤を得た。
【0037】
比較例1
天然産水酸化マグネシウム鉱石であるブルーサイトを水性スラリーとしてから湿式粉砕し、この粉砕品スラリーをステアリン酸ナトリウムの乳化物で表面処理し、固液分離した後乾燥して得られ、現在市販されている平均粒径が0.7μmで表面被覆量が1.4重量%である水酸化マグネシウム系難燃剤を用意した。
【0038】
比較例2
水酸化マグネシウムとして実施例1で用いたフォートライトPC−200を用い、予めダイナミックミルで粉砕し、これをヘンシェルミキサーに装填し、回転数1400rpmで攪拌しながらγ−(メタクリロキシプロピル)トリメトキシシラン(信越化学工業社製KBM−503)を噴霧し、その後熱処理して平均粒径が5.4μmであり、C分析及びSi分析に基づいて計算した表面被覆量は1.7重量%であり、加水分解指数C/Siが8.3(理想値7.0)である水酸化マグネシウム系難燃剤を得た。
【0039】
実施例3
実施例1、実施例2、比較例1及び比較例2で作成した各々の水酸化マグネシウム系難燃剤を用い、下記の配合のコンパウンドを常法により調製した。
Figure 0003765511
【0040】
このコンパウンドから常法によりシート状試験片を作成し、下記の試験方法に従って第1表に示す特性値を求めた。それらの評価結果を、水酸化マグネシウム系難燃剤の粉体特性と共に第1表に示す。
引張試験: JIS K 7113による。
体積抵抗率試験: JIS K 6723による。
酸素指数試験: JIS K 7201による。
【0041】
Figure 0003765511
【0042】
第1表中のデータから明らかなように、実施例1及び実施例2の水酸化マグネシウム系難燃剤を用いたコンパウンドは、従来、鉱石粉砕品では満足できないとされていた機械的特性(引張試験)をクリアし、また、実施例1及び実施例2の水酸化マグネシウム系難燃剤を用いたコンパウンドは、比較例1及び比較例2の水酸化マグネシウム系難燃剤を用いたコンパウンドと比較して難燃性(酸素指数)及び体積抵抗率、特に耐水試験後の値で有意に優れている。
【0043】
次に難燃性耐火ケーブルの重要性について述べる。ビルや劇場、地下街等人が集まる公の閉鎖された空間に於いては、安全性の確保の観点から火災報知機、自動消火装置、非難口案内灯等の設備の設置が義務付けられている。火災発生の際にもこれらの安全装置に所定の時間電力を供給できるよう難燃性耐火ケーブルが使用されているが、その構造は導体上に耐火層を介して絶縁体を被覆した絶縁体コアを介在物を介してシースが被覆している構造をとっている。上述した実施例1及び実施例2の水酸化マグネシウム系難燃剤を用いたコンパウンドはこの絶縁体やシースのいずれか一方、より好ましくはその両方に使用される材料として好適であることは多言を要しない。
【0044】
【発明の効果】
本発明の水酸化マグネシウム系難燃においては、メカノケミカル表面処理法により被覆層を形成しているので、表面処理剤が天然産ブルーサイト粒子表面の水酸基と複数のポイントで強固に化学結合し且つ表面処理剤が相互に重合、高分子化して被覆層を形成しているので、本発明の水酸化マグネシウム系難燃剤は撥水性、耐水性になり、コンパウンドになった後も浸水などにより被覆皮膜が脱離することもないので、絶縁性が要求される用途に用いるのに特に適している。更に、被覆層が天然産ブルーサイト粒子表面に強固に化学結合しているので、樹脂と溶融混練した場合にも熱や剪断力により剥がれ落ちることがなく、又樹脂との分散性が改善され、コンパウンドに適切な難燃性、機械的特性、電気絶縁性を付与し、更に成形時のコンパウンドの流れ性を改善することができる。
このように優れた特性を有する本発明の水酸化マグネシウム系難燃は、燃焼しても有毒ガスを発生することがなく、発煙量も少ないノンハロゲン難燃材料の構成物として用いるのに好適であり、比較的低コストの水酸化マグネシウム系難燃剤である。

Claims (2)

  1. 導体上に直接に又は他の層を介して絶縁体層が被覆されており、それらの周囲に介在を介して又は介在なしでシースが被覆されているケーブルにおいて、該絶縁体層又は該シースの少なくとも一方が難燃性樹脂組成物からなること、該難燃性樹脂組成物は難燃剤として水酸化マグネシウム系難燃剤を含有していること、該水酸化マグネシウム系難燃剤は、シランカップリング剤及びシランからなる群から選ばれた少なくとも一種の表面処理剤の存在下で天然産ブルーサイト粒子をメカノケミカル表面処理法によって処理することによって形成された被覆粒子であって、該表面処理剤からなる被覆層が該天然産ブルーサイト粒子の表面に化学結合しており、且つ該被覆層を有する粒子の平均粒子径が1〜10μmである被覆粒子からなることを特徴とする難燃性ケーブル。
  2. 該表面処理剤からなる被覆層の量が該天然産ブルーサイト粒子と該被覆層との合計重量に基づいて0.1〜10重量%である請求項1記載の難燃性ケーブル。
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