塗料やインキは、機能性微細粒子が適用された製品の一種であるが、かかる塗料は、主として顔料とビヒクル(溶質である顔料を分散させる溶媒)との混合物である。塗料の場合、ビヒクル中に分散されている顔料は、粒子径が通常0.5μm〜10μmのものが一般的である。これに対しインキは、通常、塗料の場合より粒子径の小さい0.1μm〜0.3μmの粒子径の顔料が使用される。
これら塗料や塗料やインキの製造において、顔料のビヒクル中での混練分散は、所定の方法でビヒクルの体積分率を決め、分散系の粘度を5×105Pa・s以下に調整をして回分式の混練機、バタフライミキサー、ニーダー、加圧ニーダーあるいはロールミル等により行なっていた。そして、塗料やインキ等の着色剤の機能性微細粒子の表面を改質してビヒクル中に分散させ易くするべく、分散溶媒(ビヒクル)中に少量の界面改質剤を分散させ、これによって機能性微細粒子とビヒクルとでゾル状態またはゲル状態を現出させていたのである。
ところで、近年、機能性微細粒子として数ナノメートルの微細粒子を適用することが多くなっている。かかる粒径の微細粒子は、微細化するに伴い熱力学的に表面エネルギーが増大することから、微細粒子は表面エネルギーを少なくすることにより安定化しようとして互いに凝集し、30〜50μmの二次凝集粒子を形成する傾向にある。この二次凝集粒子は、従来の単純に攪拌する機能のみを備えた混練機等では効率的に解砕することができなかった。
すなわち、液相(ビヒクル)一固相(微細粒子)系において、固相である微細粒子のビヒクル中での分散を効率よく行なうためには、当該分散系に係る剪断力をいかに大きくするかが重要である。分散系の剪断応力は、粘性流体に関する非ニュートン流動から次式によって表すことができる。
τn=η・Ds=η・v/t‥‥‥‥‥‥‥‥(1)
但し、式中、τnは剪断応力、ηは分散系の粘度、DおよびV/tは剪断速度勾配またはずり速度、Vは速度、tは剪断断が作用する2面間の距離を表す。
また分散系に機能性微細粒子が含まれているとき、式(1)の粘度は分散液のみの場合の抵抗の他に機能性微細粒子の抵抗が加わってくるため、粘度ηに関しアインシュタインは流体力学の見地から分散系の粘度について次式を導いている。
η=η0(1+2.5φ)・・・‥‥‥‥‥‥‥‥(2)
但し、式中、η0は分散液のみの粘度、φは球形機能性微細粒子の体積分率を表す。
前記式(1)によれば、系に含まれる二次凝集粒子に大きな剪断力てを与えてこれを解砕するには、系の粘度を高め剪断出力を大きくするか、あるいは混練装置の回転速度を高める必要がある。しかしそれには従来の攪拌を主体とした混練機等では限界があり、安全な操業の範囲内では、微細粒子の二次凝集粒子を解砕するまでには至らないというのが現状であった。
ところで本発明者は、かねてより微細粒子の分散や微細粒子の周面に関する技術につき鋭意研究開発を重ねてきた。例えば、特許文献1〜4には本発明者の発明に係る微細粒子の分散や微細粒子の周面に関する技術が開示されている。特許文献1には、機能微細粒子と樹脂との混練分散装置の関する技術が開示され、特許文献2には、有機質高分子粒子と無機質微細粒子との複合粉末の製法が開示され、また、特許文献3には、粒子の粉砕方法が開示されている。さらに、特許文献4に開示の技術では、特許文献3に記載の装置を応用し、超微粉体と樹脂との効率的な混練を達成している。当該技術は、まず、樹脂が固体状態を保つ温度域で超微粉体を解砕し、更に樹脂の溶融温度域に加温してから剪断力を加えることによって、樹脂中に超微粉体を分散させるものである。
特許文献3の技術は、上記式(1)で示したとおり、液相一固相の分散系では効率的に超微細粒子の凝集の解砕と分散は困難であるが、固相一固相の分散系では、より効率的な分散が可能となることを見出した結果得られたものであり、特許文献4の技術は、特許文献3の技術を基礎にしたさらなる新展開の技術である。
詳しくは、粉体と粉体との混練時に作用する剪断力τは、クーロンの摩擦則から次の式(3)で表される。
τ=δtanφi+C=δμi+C‥‥‥‥‥‥(3)
但し、式中、δは圧縮力、φiは内部摩擦角、 μiは摩擦係数、Cは付着力を表す。
ここで、粘性流体の分散系に作用する分散に必要な液相一固相系の剪断力は、先に式(1)に示したように、溶融高分子の粘度ηの影響を強く受けるが、「粉体−粉体」同士の混練時における剪断力は、式(3)で示されるように、粉体同士の摩擦係数と圧縮力によって材料に直接作用させることができる。したがって、特許文献3に開示されている技術は、「固相−固相」系での凝集粒子の解砕工程を経ることによって、より効率的な分散が達成できることを示唆しているのである。
特公平02−000092号公報
特開平10−202653号公報
特開2002−1154号公報
特開2002−347020号公報
しかし、超微細粒子である、いわゆるナノ粒子(例えば前記顔料)を液状あるいはゾル状の溶媒(例えば前記ビヒクル)に均一に分散させるに際し、「固相−固相」系に関する特許文献3および特許文献4の技術がそのまま適用される訳ではなく、当業界においてこれの解決が嘱望されているのが実情であった。
本発明は、かかる状況に鑑みなされたものであって、機能性微細粒子を液状あるいはゾル状を呈する溶媒としての合成樹脂中に極めて効率的に均一に分散させることができる表面改質微細粒子の製造方法、この製造方法を利用した機能性微細粒子分散樹脂チップの製造方法および装置を提供することを目的としている。
そして、本発明は、機能性微細粒子を界面改質するとき、分散溶媒中に機能性微細粒子と界面改質剤が少量に分散しているゾル状態またはゲル状態の複合物にレオロジー的な流動特性を示す剪断を与えて分散する従来の分散方式を採用するものではなく、界面改質剤を採用した上でのトライボロジー的な摩砕剪断処理を前提とした分散処理により2〜4nmの修飾膜で機能性微細粒子の表面を修飾する方法(本発明の基礎となる方法)を提供し得るものである。
請求項1記載の発明は、機能性微細粒子が吸収し得る量に満たない界面改質剤を機能性微細粒子に配合した後、摩砕剪断処理を施す工程を経て機能性微細粒子の外周面に10〜数10オングストロームの膜厚で修飾された表面改質微細粒子を得ることを特徴とする表面改質微細粒子の製造方法である。
かかる構成を採用したことにより、界面改質剤の付与された機能性微細粒子に摩砕剪断工程で摩砕剪断処理が施されるとともに、生成した機能性微細粒子の二次凝集粒子に対しても同様の摩砕剪断処理が施され、これによって機能性微細粒子がさらに微細に摩砕されるとともに、生成した二次凝集粒子も確実、かつ、迅速に解砕され、これによって機能性微細粒子の表面に界面改質剤が所定の厚み寸法(例えばナノ単位の膜厚)で付与された表面改質微細粒子が得られるため、表面改質微細粒子の製造効率が従来の単純に攪拌したり混練するだけの製造方法に比べて格段に向上する。
そして、得られた表面改質微細粒子は、これ自身で機能性を備えた微細粒子(例えば化粧用の微粉体や放香発生用の微粉体、中身と表面とが異なる薬効を備えた薬剤としての微粉体等)として利用することができる他、これらを樹脂中に均一に分散させることによって得られる、いわゆるマトリックス樹脂の機能化原料として好適に使用される。
また、機能性微細粒子あるいは二次凝集粒子の摩砕剪断処理において、機能性微細粒子の表面は、薄層状態の界面改質剤によって修飾されているため、この薄層の界面改質剤が潤滑作用を発揮することで機能性微細粒子等が摩砕剪断用の機器内で詰まって機器の正常な運転が阻害されるような不都合が回避される。
請求項2記載の発明は、請求項1記載の表面改質微細粒子の製造方法において、表面改質微細粒子に所定の合成樹脂を混合し、混練分散することによって前記表面改質微細粒子を前記合成樹脂中に分散させる樹脂チップ製造工程を経ることにより機能性微細粒子分散樹脂チップを得ることを特徴とする機能性微細粒子分散樹脂チップの製造方法である。
かかる構成によれば、樹脂チップ製造工程において、摩砕剪断工程で得られた表面改質微細粒子に、例えば所定の温度に加熱することによって流動性が付与された所定の合成樹脂を混合して混練分散することにより、表面改質微細粒子は、その表面に膜状で付与された界面改質剤の作用で合成樹脂中に迅速、かつ、均一に分散し、これによって機能性微細粒子分散樹脂チップ(いわゆるマトリックス樹脂)が得られる。
そして、界面改質剤として例えば親水基および親油基の双方を備えた液状の物質を採用した場合、界面改質剤の親水基側が例えば炭素等からなる親水性の機能性微細粒子の表面に付着する一方、界面改質剤の親油基側が外方に向いた状態になるため、流動性を備えた合成樹脂はこの親油基となじみ、これによって表面改質微細粒子は合成樹脂中へ迅速に分散し、これによって機能性微細粒子が合成樹脂中に均一に分散した、いわゆる機能性微細粒子分散樹脂チップが容易に得られる。
また、界面改質剤の作用により、請求項1記載の発明と同様に摩砕剪断用の機器内での詰りの発生が防止される。
請求項3記載の発明は、摩砕剪断工程における摩砕剪断処理をそれぞれ複数段で繰り返した後、前記樹脂チップ製造工程を実行することを特徴とする機能性微細粒子分散樹脂チップの製造方法である。
かかる構成によれば、摩砕剪断工程における摩砕剪断処理をそれぞれ複数段で繰り返すことにより、機能性微細粒子の表面に界面改質剤の修飾膜がより確実に形成される。したがって、得られた表面改質微細粒子を樹脂チップ製造工程の原料として使用することにより、機能性微細粒子が合成樹脂中により均一に分散した機能性微細粒子分散樹脂チップが得られる。
請求項4記載の発明は、請求項1記載の表面改質微細粒子の製造方法または請求項2若しくは3記載の機能性微細粒子分散樹脂チップの製造方法に使用される機能性微細粒子分散樹脂チップの製造装置であって、円筒状のケーシング内に同心で内装される環状の固定円盤と、この固定円盤に同心で嵌挿され、かつ、駆動手段によって軸回りに回転する回転円盤とを有し、前記回転円盤と前記固定円盤との対向面にそれぞれ摩砕剪断空間を形成するキャビティ内に、被混練捏和物である前記界面改質剤の付与された機能性微細粒子、前記二次凝集粒子または前記表面改質微細粒子と前記合成樹脂との混合物を連続的に供給する供給装置とを備え、前記キャビティは、前記固定円盤と前記回転円盤との軸回りの相対回転によってキャビティ内の前記被混練捏和物に摩砕剪断処理を施し得るべく構成されていることを特徴とする機能性微細粒子分散樹脂チップの製造装置である。
かかる構成の製造装置によれば、機能性微細粒子、二次凝集粒子または表面改質微細粒子と合成樹脂との混合物(被混練捏和物)を、供給手段を介して円筒状のケーシング内に同心で内装される環状の固定円盤と、この固定円盤に同心で嵌挿され、かつ、駆動手段によって軸回りに回転する回転円盤との間に加圧状態で供給することにより、被混練捏和物は、固定円盤および回転円盤の対向面にそれぞれ形成された摩砕剪断空間であるキャビティ内に導入され、固定円盤と回転円盤との軸回りの相対回転によって各キャビティの境界位置にある被混練捏和物は剪断される状態で摩砕剪断処理が施され、これによって極めて高品質の混練捏和物が迅速に得られる。
具体的には、被混練捏和物が機能性微細粒子である場合は、当該機能性微細粒子が分断されてより細粒化が進行し、被混練捏和物が二次凝集粒子である場合は、当該二次凝集粒子が解砕されてより迅速に解砕物が得られ、被混練捏和物が表面改質微細粒子と合成樹脂との混合物である場合は、マトリックス樹脂の中に機能性微細粒子が均一に分散した機能性複合樹脂が得られる。
このように、固定円盤に対し回転円盤を同心で回転させるという簡単な操作で、それぞれのキャビティ内に加圧状態で供給された被混練捏和物は、各キャビティの境界位置で「固体−固体」系の剪断処理を施されることになるため、従来のように単純に被混練捏和物をすり潰す捏和処理を施す場合に比較し、格段に破砕効率が向上する。
また、摩砕剪断処理の対象物である機能性微細粒子等は、表面改質微細粒子によって修飾されているため、この表面改質微細粒子が潤滑剤としての役割を果たす。
請求項5記載の発明は、請求項4記載の機能性微細粒子分散樹脂チップの製造装置と、機能性微細粒子が前記給油量を満たした状態で運転される装置とが多段に設けられていることを特徴とする機能性微細粒子分散樹脂チップの製造装置である。
かかる構成を採用したことにより、被混練捏和物は、摩砕剪断空間を有する固定円盤および回転円盤を備えてなる請求項4記載の製造装置と、従来の機能性微細粒子が給油量を満たした状態で運転される装置との双方で処理されるため、原料としての被混練捏和物の状況や最終製品の品質等を勘案して、これらの最適の組み合わせを選択し得るようになる。
請求項6記載の発明は、請求項4記載の機能性微細粒子分散樹脂チップの製造装置が多段で設けられていることを特徴とする機能性微細粒子分散樹脂チップの製造装置である。
かかる構成を採用したことにより、チップの製造装置が1段で設けられている場合に比較し、より高品質の機能性微細粒子分散樹脂チップが得られる。
請求項1記載の発明(表面改質微細粒子の製造方法)によれば、摩砕剪断工程を経ることにより得られた表面改質微細粒子は、これ自身で機能性を備えた微細粒子(例えば、微細粒子の機能性として、着色性、導電性、磁性、電熱性、圧電性、制振性、遮音性、放射線防護、紫外線防護等)として利用することができる他、これらを樹脂中に均一に分散させることによって得られる、いわゆるマトリックス樹脂の機能化原料として好適に使用することができる。
請求項2記載の発明によれば、樹脂チップ製造工程において、摩砕剪断工程で得られた表面改質微細粒子に、例えば所定の温度に加熱することによって流動性が付与された所定の合成樹脂を混合して混練分散することにより、表面改質微細粒子は、その表面に膜状で付与された界面改質剤の作用で合成樹脂中に迅速、かつ、均一に分散し、これによって機能性微細粒子分散樹脂チップを容易、かつ、迅速に得ることができる。
請求項3記載の発明によれば、摩砕剪断工程における摩砕剪断処理をそれぞれ複数段で繰り返すことにより、機能性微細粒子の表面に界面改質剤の修飾膜がより確実に形成され、これによって得られた表面改質微細粒子を樹脂チップ製造工程の原料として使用することにより、機能性微細粒子が合成樹脂中により均一に分散した機能性微細粒子分散樹脂チップを得ることができる。
請求項4記載の発明によれば、固定円盤に対し回転円盤を同心で回転させるという簡単な操作で、それぞれのキャビティ内に加圧状態で供給された被混練捏和物に対し各円盤のキャビティの境界位置で「固体−固体」系の剪断処理を施されることになるため、従来のように単純に被混練捏和物をすり潰す捏和処理を施す場合に比較し、格段に破砕効率を向上させることができる。
請求項5記載の発明によれば、原料としての被混練捏和物の状況や最終製品の品質等を勘案して、請求項4記載の製造装置と、従来の混練捏和装置との最適の組み合わせを選択することができる。
請求項6記載の発明によれば、チップの製造装置が複数段で設けられるため、1段で設けられている場合に比較し、より高品質の機能性微細粒子分散樹脂チップを製造することができる。
図1は、本発明に係る表面改質微細粒子の製造方法および機能性微細粒子分散樹脂チップの製造方法についてその概要を説明するための工程図である。図1に示すように、界面改質微細粒子4は、機能性微細粒子1および界面改質剤2の混合物に対して摩砕剪断処理を施す摩砕剪断工程P1および二次凝集粒子解砕工程P2を経ることによって得られる。また、マトリックス樹脂5は、摩砕剪断工程P1および二次凝集粒子解砕工程P2で得られた界面改質微細粒子4に対し引き続き摩砕剪断処理を施すと同時にマトリックス樹脂5に対する分散処理を施す樹脂チップ製造工程P3を経ることによって製造される。
まず、本発明に係る摩砕剪断工程P1および二次凝集粒子解砕工程P2を説明する。これらの工程P1、P2では、二次凝集粒子3の解砕P21と、解砕された粒子への界面改質剤2の表面修飾P22とが行われ、機能性微細粒子1を界面改質剤2でナノ修飾した複合体がつくられる。界面改質剤2の修飾厚さは、2.0〜4.0nm(20〜40オングストローム)に相当する適量を機能性微細粒子1の表面積から計算して配合する。界面改質剤2と機能性微細粒子1との混合系に摩砕剪断処理を施すとき、剪断流動の特性を示すレオロジー的な処理ではなく、トライボロジー的な剪断力を作用させることによって、二次凝集粒子3を一次粒子へ解砕するようにしている。
ついで、樹脂チップ製造工程P3は、摩砕剪断工程P1の機能性微細粒子1を界面改質剤2でナノ修飾した界面改質微細粒子4に、マトリックス樹脂5をさらに5nm前後に相当する微量を配合して機能性微細粒子分散樹脂チップ(以下、粒子分散樹脂チップ6という)を得る工程である。このときの混合系に摩砕剪断処理を施すとき、混合系にはレオロジー的剪断流動特性を示す状態になるが、当該マトリックス樹脂5を熔融させない弾性率が5×105N/m2以上とする温度に制御し混練分散することによって機能性微細粒子1のマトリックス樹脂5に対する混練分散が行われ、これによって粒子分散樹脂チップ6を得ることができる。
本発明で使用する「機能性微細粒子1」は、最終的に得られる機能性微粉体粒子複合樹脂を利用する塗料・インキ・ブラスチック等に様々な機能を付与できる粒子をいう。近年、分散体に含まれる機能性微細粒子1の微細化が求められているが、粒子が小径であるほど凝集する傾向が高いため、この二次凝粒子(二次凝集粒子3)を解砕して界面改質する技術が切望されていた。また、本発明であれば、凝集力の強い小径微細粒子であっても、剪断分散を効率よく行なうことが可能である。
界面改質微細粒子4は、機能性微細粒子1を当該界面改質剤でナノ修飾した状態の複合体であり、コートする修飾厚さを2.0〜4.0nm(20〜40オングストローム)に相当する適量を当該機能性微細粒子1の表面積から計算して配合する。そして、界面改質剤2と当該機能性微細粒子1との混合系に摩砕剪断を付与するとき、当該機能性微細粒子1と当該界面改質剤2との摩砕剪断作用の関係はレオロジー的剪断流動(「固体−液体」系の剪断流動)の特性を示すことがなく、トライボロジー的な剪断力(「固体−固体」系の剪断力)を作用させることによって当該機能性微細粒子1の二次凝集粒子3を一次粒子へ解砕し、同時に機能性微細粒子1に界面改質剤2がコーティングされる。
機能性微細粒子1の種類は特に限定されないが、以下のものを例示することができる。例えば、シリカ、アルミナ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化スズ、酸化アンチモン等の酸化物;水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の水酸化物;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸バリウム、ドーソナイト、ハイドロタルサイト等の炭酸塩;硫酸カルシウム、硫酸バリウム等の硫酸塩;ケイ酸カルシウム(ウォラストナイトやゾノライト)、タルク、クレマイカー、モンモリロナイト、ベントナイト、活性白土、セピオライト、イモゴライセレリサイト等のケイ酸塩;グラファイト、カーボンナノチューフラーレン等の炭素類;その他の金属粉等を挙げることができる。
また、機能性微細粒子1としては、ハンザイエロー、パーマネントイエローHR、トルイジンレッド、キナクリドンレッド、ウオネチングレッド、銅フタロシアニンブルー、銅フタロシアニングリーン、グリンゴールド、ジオキソデインバイオレット等の着色有機顔料;酸化チタン、硫化亜鉛、銅白、リトポン、亜鉛華、カーボンブラック、黒鉛、黒鉄、ベンガラ、鉛丹、朱、モリブデン赤、亜鉛華銅、アンチモン赤、フェロシアン銅、アンバー、酸化鉄、シエナ、黄鉛、ジンククロメート、合成オーカ、チタン黄、ストロンチウム黄、クロム緑、酸化クロム緑、ビリアジン、亜鉛緑、コバルト緑、セルリアン青、エメラルド緑、マンガン青、マンガン紫、紺青、群青等の着色顔料を挙げることができる。
機能性微細粒子1としては、上記の例から1つを選択して使用してもよいし、2以上を選択し混合して用いてもよい。
実施温度を上げない場合や充分な流動性を得たい場合には、樹脂組成物(マトリックス樹脂5)に溶剤を添加する。ここで使用される溶剤としては、マトリックス樹脂5を溶解できるものを選択すればよい。例えばヘキサン等の脂肪族炭化水素類;シクロヘキサン等の環状炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、スチレン、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン等の芳香族炭化水素類;四塩化炭素、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、ジクロロメタン、1,1,1−トリクロロエタン、トリクロロブタン、トリクロロエチレン等のハロゲン化脂肪族炭化水素類;クロロシクロヘキサン等のハロゲン化環状炭化水素類;クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、α−ブロモナフタレン等のハロゲン化芳香族炭化水素類;メタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノール、n−ペンタノール、2−エチルブタノール、2−工チルヘキサノール、メチルイソブチルカルビノール、プロピレングリコール、エチレングリコール、1,3−ブタンジオール、グリセリン等の脂肪族アルコール類;シクロヘキサノール等の環状脂肪族アルコール類;m−クレゾール等の芳香族アルコール類;乳酸エチル、乳酸n−ブチル等の乳酸エステル類;2−ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、2−ブトキシエタノール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等のエーテルアルコール類;2,2−ジクロロジエチルエーテル等のハロゲン化エーテル類;ジアセトンアルコール等のケトンアルコール類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシメタン等のエーテル類、ジエチルスルフィド、二硫化炭素、ジメチルスルホキシド等の硫黄系溶媒;プロピレンカーボネート、7−ブチロラクトン等の環状エステル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルイソアミルケトン、ジイソブチルケトン、メシチルオキシド等の脂肪族ケトン類;イソホロン、シクロヘキサノン等の環状脂肪族ケトン類;アセトフェノン等の芳香族ケトン類;酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸イソアミル、酢酸セロソルブ等の酢酸エステル類;イソ酪酸イソブチル等の酪酸エステル類;アセトニトリル、ブチロニトリル等のニトリル類;ニトロメタン、ニトロプロパン、2一二トロプロパン等のニトロ化脂肪族炭化水素類;ニトロベンゼン等のニトロ化芳香族炭化水素類;アニリン等の芳香族アミン類;エタノールアミン等のアミンアルコール類;ホルムアミド、ジメチルホルムアミド等のアミド類;ジプロピルアミン、ジプロピルアミン、ジエチルアミン、シクロヘキシルアミン等のアミン類;モルホリン、N−メチルー2−ピロリドン等のヘテロサイクル類;ピリジン、フラン等のヘテロアリール類;酢酸、ギ酸、酪酸等の酸類;ベンズアルデヒド等の芳香族アルデヒド類;無水酢酸等の酸無水物類;水;およびこれらから選択される2種以上の混合溶媒を使用することができる。
上記界面改質剤2としては、例えば表1に示すシランカップリング剤を挙げることができる。
また、界面改質剤2として表2に示すアルミネート系カップリング剤を挙げることができる。
さらに、界面改質剤2として表3に示すチタネート系カップリング剤を挙げることができる。
その他、樹脂組成物(マトリックス樹脂5)に高分子分散剤として、味の素株式会社のアジスーパーPB821、PN411、PA111やColours&Fine Chemicals社のSol sperse3000,5000,6000,9000,12000,132400,13940,17000,17240,17940,20000,21000,22000,24000,27000(以上、商品名)を添加してもよいが、添加成分はこれらに限定されるものではない。
本発明による界面改質剤2の機能性微細粒子1に対する配合処理は、「機能性微細粒子1の体積分率」に対して臨界体積分率よりも低い割合で添加した「混合体」とし、当該混合体にトライボロジー的な摩砕剪断力を作用させることにより行われる。
ここで界面改質剤2の「臨界体積積分率」とは、機能性微細粒子1を圧密充填にした場合に生じる空隙に、界面改質剤が吸油量以下に配合された状態における機能性微細粒子1に対する界面改質剤2の体積分率をいう。機能性微細粒子1の圧密充填時の体積分率は、,昭和46年5月1日共立出版株式会社発行の「塗料の流動と顔料分散初版141頁」に記載の以下の式(4)によって行う。
PVC=100ρb/(ρb+0.01OAρp)‥‥‥(4)
但し、式中のPVCは機能性微細粒子1の体積分率、ρbは界面改質剤2の密度(g/cm3)、OAは吸油量(界面改質剤2の体積分率)、ρpは機能性微細粒子1の密度(g/cm3)を示す。なお、OAは、一般の顔料のカタログではDBP給油量(cm3/100g)として示されている。
従来の分散方法では、(4)式から機能性微細粒子1の体積濃度を計算しこれに対する界面改質剤2の吸油量を添加し、混練機等を用いてレオロジー的な剪断分散を行なっていた。ここで「レオロジー的剪断分散」とは、分散系が液体流動挙動を示す状態中に機能性微細粒子1の二次凝集粒子3に剪断分散を行うことをいう。ところが、このレオロジー的剪断分散では、機能性微細粒子1に作用し得る剪断力は極めて低いものであるため、凝集力の高い超微細粒子の二次凝集粒子3自体をマトリックス樹脂5中に分散させることはできても、二次凝集粒子3を微細に剪断分散することはできない。したがって、複数台の分散機を直列、並列で並べて使用しなければならないなど設備コストが嵩むばかりか、分散処理に非常に時間がかかり生産性が劣るものであった。そこで、当該剪断力を高めるべく、上記式(1)に示したように剪断速度や樹脂組成物の粘度を上げると、装置への負担が過度になるために実施が困難であった。
これに対し本発明では、式(2)に示す分散系において二次凝集力の高い機能性微細粒子1を解砕する剪断力を出力するには、式(2)に示す分散系の機能性微細粒子1の体積分率φに関し式(4)からPVC(φ)を求め、
ついで、以下の式(5)
φs<100−PVC ‥‥‥‥‥‥‥‥(5)
から液体(界面改質剤2)の体積分率を100−PVCよりも少ない超臨界体積分率φsとして求めて配合すると(このことが、本発明の「機能性微細粒子が吸収し得る量に満たない界面改質剤を機能性微細粒子に配合」という事項を指している)、分散系の粘度ηが高まり、式(1)の剪断応力すなわち分散系の弾性率が5×105(N/m2)以上になり、機能性微細粒子1の二次凝集粒子3に対してトライボロジー的な剪断力を作用させて剪断と界面改質剤2のコーティングを計ることができる。ここで「トライボロジー的剪断」とは、固体である機能性微細粒子1の二次凝集粒子3を一個の粒子と見なし、その粒子同士を前述の特許文献3の技術により摩砕剪断して解砕処理することをいう。
本発明では、トライボロジー的な剪断分散を可能にするために、摩砕剪断工程P1で機能性微細粒子1の二次凝集粒子3に対する臨界体積率以下に界面改質剤2を添加することによって、機能性微細粒子1の二次凝集粒子3間に適度な摩擦を生ぜしめ、二次凝集粒子3の粒子の剪断解砕を効率的に行う。これは、流動性の界面改質剤2が無い状態では、乾燥した指先で紙を捲ろうとすると指先が滑るように、二次凝集粒子3間の摩擦が充分でないことになる一方、界面改質剤2を臨界体積濃度以上に添加すると、却って潤滑作用を示し、やはり二次凝集粒子3間の摩擦が減少して、二次凝集粒子3が解砕されることなく移動するダイラタンシー現象が起こり易くなることによる。
ついで、図2〜図4を基に、本発明に係る機能性微細粒子分散樹脂チップの製造装置について説明する。図2は、摩砕剪断工程P1および樹二次凝集粒子解砕工程P2に適用される表面改質微細粒子の製造装置の第1実施形態を示す一部断面視の概略側面図である。また、図3は、摩砕剪断工程P1および樹二次凝集粒子解砕工程P2に適用される表面改質微細粒子の製造装置の第2施形態を示す一部断面視の概略側面図である。さらに、図4は、摩砕剪断工程P1、二次凝集粒子解砕工程P2および樹脂チップ製造工程P3に適用される機能性微細粒子分散樹脂チップの製造装置の一実施形態を示す一部断面視の概略側面図である。
まず、図2を基に、表面改質微細粒子製造装置10について説明する。表面改質微細粒子製造装置10は、機能性微細粒子1を供給する機能性微細粒子供給部20と、界面改質剤2を供給する界面改質剤供給部30と、これら機能性微細粒子供給部20および界面改質剤供給部30から供給された機能性微細粒子1および界面改質剤2に対して摩砕剪断処理を施す第1摩砕剪断機40とを備えた基本構成を有している。
前記機能性微細粒子供給部20は、機能性微細粒子1を貯留する貯留ホッパー21と、この貯留ホッパー21の底部から切り出された機能性微細粒子1を第1摩砕剪断機40の受入ホッパー44に送り込むスクリューフィーダ22と、このスクリューフィーダ22を軸心回りに駆動回転させる駆動モータ23とを備えて構成され、駆動モータ23の駆動によるスクリューフィーダ22の回転で予め設定された所定量の機能性微細粒子1が受入ホッパー44に向けて送り出されるようになっている。
前記界面改質剤供給部30は、界面改質剤2を貯留する貯留ホッパー31と、この貯留ホッパー21の底部から切り出された界面改質剤2を第1摩砕剪断機40の受入ホッパー44に送り込むスクリューフィーダ22と、このスクリューフィーダ32を軸心回りに駆動回転させる駆動モータ33とを備えて構成され、駆動モータ33の駆動によるスクリューフィーダ32の回転で予め設定された所定量の界面改質剤2が受入ホッパー44に向けて送り出されるようになっている。
前記第1摩砕剪断機40は、横置きで据え付けられた駆動モータ41と、この駆動モータ41の駆動軸に同心で一体回転可能に連結されたスクリュー軸42と、このスクリュー軸42を同心で覆った筒状ケーシング43と、この筒状ケーシング43の基端側(図2の左方)の上部位置に設けられた受入ホッパー44と、前記スクリュー軸42の先端側に形成された摩砕剪断部45とを備えて構成されている。
前記受入ホッパー44は、貯留ホッパー21から駆動モータ23の駆動によるスクリューフィーダ22の軸心回りの回転によって切り出された機能性微細粒子1と、貯留ホッパー31から駆動モータ33の駆動によるスクリューフィーダ32の回転で切り出された界面改質剤2とを受け入れるものであり、この受入ホッパー44に受け入れられた機能性微細粒子1および界面改質剤2は、その底部から筒状ケーシング43内に供給され、駆動モータ41の駆動によるスクリュー軸42の軸心回りの回転で摩砕剪断部45へ向けて圧送されるようになっている。
前記摩砕剪断部45は、筒状ケーシング43から下流側(図2の左方)に向けてスクリュー軸42と同心で延設された複数の環状の固定円盤451と、隣設された固定円盤451間に同心で僅かの隙間を有して介設された複数の回転円盤452とを備えて構成されている。隣設される固定円盤451間には、内径寸法が回転円盤452の外径寸法より僅かに大きい環状の介設円盤が挟持され、この介設円盤と固定円盤451とが交互に重ね合わされた状態で図略のタイロッドが貫通されることにより一体化して筒状ケーシング43に固定されている。
前記回転円盤452は、スクリュー軸42の先端から同心で図2の左方に向けて延設された図略のスプライン軸に一体回転可能に外嵌され、駆動モータ41の駆動によりスクリュー軸42と同心で一体回転するようになっている。
そして、固定円盤451および回転円盤452の各対向面には、それぞれ機能性微細粒子1および界面改質剤2の混合物が嵌り込む凹部であるキャビティが形成され、前記混合物が各キャにティに圧入された状態で回転円盤452が回転することにより、両キャビティの境界面に位置した混合物がトライボロジー的な摩砕剪断作用を受け、これによって機能性微細粒子1の二次凝集粒子3が解砕されるとともに、機能性微細粒子1の界面改質剤2による表面修飾が行われるようになっている。
かかる摩砕剪断部45において、固定円盤451の外周には図略のジャケットが設けられ、このジャケットに熱媒体を流通させることによって回転円盤452内の温度を調節し得るようになっている。
この実施形態の表面改質微細粒子製造装置10にあっては、摩砕剪断部45から排出された界面改質微細粒子4(図1)は、それ自身が製品として出荷される。
つぎに、図3を基に、摩砕剪断工程P1および樹二次凝集粒子解砕工程P2に適用される表面改質微細粒子の製造装置の第2施形態について説明する。図3に示すように、第2実施形態の表面改質微細粒子製造装置11は、第1摩砕剪断機40と同様に構成された第2摩砕剪断機50が第1摩砕剪断機40の下流端に接続されている点が第1実施形態の表面改質微細粒子製造装置10と相違している。
第2摩砕剪断機50は、第1摩砕剪断機40と同様に構成され、第1摩砕剪断機40のものと同一の機能を備えた駆動モータ51と、スクリュー軸52と、筒状ケーシング53と、受入ホッパー54と、摩砕剪断部55とを備えて構成されている。摩砕剪断部55は、表面改質微細粒子製造装置10の摩砕剪断部45と同様に、固定円盤551と、同心でスクリュー軸52と一体回転する回転円盤552とを備えている。
受入ホッパー54は、第1摩砕剪断機40の下流端から排出された界面改質微細粒子4を受け入れて第2摩砕剪断機50の筒状ケーシング53内の上流端に供給するように配設されている。
第2実施形態の表面改質微細粒子製造装置11によれば、表面改質微細粒子製造装置10の運転で得られた界面改質微細粒子4に対してさらに第2摩砕剪断機50の摩砕剪断部55で摩砕剪断処理が施されるため(すなわち、2段階で摩砕剪断処理が施されるため)、界面改質微細粒子4は、その構成要素である機能性微細粒子1にさらなる解砕処理が施されるとともに、機能性微細粒子1の界面に対する界面改質剤2の修飾処理がさらに進行し、これによって高品質の界面改質微細粒子4を得ることができる。
ついで、図4を基に、摩砕剪断工程P1、二次凝集粒子解砕工程P2および樹脂チップ製造工程P3の全てに適用される(すなわち、粒子分散樹脂チップ6の製造に供される)機能性微細粒子分散樹脂チップの製造装置(以下機能性樹脂チップ製造装置12という)について説明する。図4に示すように、機能性樹脂チップ製造装置12は、前記表面改質微細粒子製造装置11の下流端に摩砕剪断押出機60がさらに接続されることによって構成されている。
前記摩砕剪断押出機60は、マトリックス樹脂5を供給するマトリックス樹脂供給部70と、前記第1および第2摩砕剪断機40,50と同様に構成された混練剪断部80と、この混練剪断部80の下流端(図4の左方)からさらに同心で延設された押出部90とからなっている。
前記マトリックス樹脂供給部70は、表面改質微細粒子製造装置11の第2摩砕剪断機50から導出される界面改質微細粒子4に同伴させてマトリックス樹脂5を混練剪断部80に供給するものであり、マトリックス樹脂5を貯留する貯留ホッパー71と、この貯留ホッパー71の底部から導出されたマトリックス樹脂5を送り出すスクリューフィーダ72と、このスクリューフィーダ72を軸心回りに駆動回転させる駆動モータ73とを備えて構成されている。
したがって、駆動モータ73の駆動でスクリューフィーダ72を回転させることにより、貯留ホッパー71内のマトリックス樹脂5は、スクリューフィーダ72の回転に誘導されて貯留ホッパー71から抜き出され、第2摩砕剪断機50から導出された界面改質微細粒子4と合流されることになる。
前記混練剪断部80は、第1および第2摩砕剪断機40,50のものと同様に構成され、かつ、同一の機能を有する駆動モータ81、スクリュー軸82、筒状ケーシング83、受入ホッパー84および摩砕剪断部85を備えている。前記受入ホッパー84には、第2摩砕剪断機50からの界面改質微細粒子4と、貯留ホッパー71からのマトリックス樹脂5とが同時に払い出され、両者は受入ホッパー84で合流した後、筒状ケーシング83内の上流端に供給されるようになっている。
前記摩砕剪断部85は、第1および第2摩砕剪断機40,50のものと同様の固定円盤851およびスクリュー軸82と同心で一体回転する回転円盤852とを備えて構成されている。これら固定円盤851および回転円盤852の機能は、第1および第2摩砕剪断機40,50のものと同様である。
したがって、第2摩砕剪断機50から供給された界面改質微細粒子4と、マトリックス樹脂供給部70から供給されたマトリックス樹脂5とが受入ホッパー84で合流して混合物となり、この混合物が混練剪断部80に供給されると、当該混合物は、回転円盤852の回転により固定円盤851との間の前記キャビティを介した摩砕剪断処理によって界面改質微細粒子4がマトリックス樹脂5中に効率的に確実に分散していき、これによってマトリックス樹脂5内に界面改質微細粒子4が均等に分散した粒子分散熔融樹脂7が形成される。
前記押出部90は、混練剪断部80で形成された粒子分散熔融樹脂7を外部に押し出すものであり、最下流側の回転円盤852から同心で延設された押出スクリュー91と、この押出スクリュー91に同心、かつ、略摺接状態で外嵌された円筒状の押出ケーシング92と、この押出ケーシング92の下流端(図4の左方)に設けられたギヤポンプ93とを備えている。
前記押出スクリュー91は、摩砕剪断部85で得られた粒子分散熔融樹脂7をギヤポンプ93へ向けて送り出すものであり、前記ギヤポンプ93は、押出スクリュー91によって送り出されてきた粒子分散熔融樹脂7にさらに圧力をかけて外部に排出するためのものである。また、押出ケーシング92の下流側には、押出ケーシング92内の圧力を検出する圧力センサ94と、押出ケーシング92から排出される直前の粒子分散熔融樹脂7の温度を検出する温度センサ95が設けられている。かかる圧力センサ94および温度センサ95が検出した検出信号は、摩砕剪断押出機60の運転制御のために使用される。
前記押出ケーシング92の外周面には、押出ケーシング92内の粒子分散熔融樹脂7の温度を維持するための、加熱媒体が供給されるジャケット96が外嵌され、これによって押出ケーシング92内の粒子分散熔融樹脂7の所定の温度が維持されるようになっている。
そして、機能性樹脂チップ製造装置12においては、摩砕剪断押出機60から導出された粒子分散熔融樹脂7は、気流輸送装置100による輸送で製品として取り出されるようになっている。気流輸送装置100は、押出ケーシング92の下流端に接続されたカッター装置101と、このカッター装置101の下流側に設けられた吸引ブロワ102と、この吸引ブロワ102の下流側に設けられた製品ホッパー103と、吸引ブロワ102を介してカッター装置101と製品ホッパー103との間に配設された送気管104とを備えている。
前記カッター装置101は、押出ケーシング92から連続的に押し出される粒子分散熔融樹脂7に対して切断処理を施し、所定のサイズの粒子分散樹脂チップ6を形成させるものである。かかるカッター装置101には、押出ケーシング92の下流端の粒子分散樹脂排出孔に臨んで所定のカッターが設けられ、このカッターの往復動によって排出孔から排出される粒子分散熔融樹脂7を連続的に所定のサイズに切断して粒子分散樹脂チップ6を形成させるようになっている。
そして、カッター装置101で形成された粒子分散樹脂チップ6は、吸引ブロワ102の駆動による気流に同伴して送気管104を気流輸送され、製品ホッパー103に収納されるようになっている。製品ホッパー103に収納された粒子分散樹脂チップ6は、適宜底部の製品取出し口から取り出されて出荷される。
このように構成された機能性樹脂チップ製造装置12によれば、まず、最上段の表面改質微細粒子製造装置10の第1摩砕剪断機40において機能性微細粒子1と界面改質剤2との混合物に摩砕剪断処理が施され、このとき二次凝集粒子3の解砕が行われるとともに、機能性微細粒子1の表面に界面改質剤2が修飾される(図1に示す摩砕剪断工程P1および二次凝集粒子解砕工程P2)。これによって得られた界面改質微細粒子4は、中断の第2摩砕剪断機50に供給され、ここで再度の摩砕剪断処理が施された後、さらに良好に摩砕剪断処理の施された界面改質微細粒子4にマトリックス樹脂5が添加され、これらの混合物が摩砕剪断押出機60に供給される。
そして、摩砕剪断押出機60に供給された摩砕剪断部45とマトリックス樹脂5との混合物は、筒状ケーシング83内でマトリックス樹脂5の熔融温度まで加熱される。これによってゾル状に軟化したマトリックス樹脂5は、界面改質微細粒子4とともにスクリュー軸82の駆動で混練剪断部80へ送られ、摩砕剪断部85において回転円盤852と固定円盤851とにより摩砕剪断処理が施され、マトリックス樹脂5が熔融しているマトリックス樹脂5内に分散していくことになる。ここで得られた粒子分散熔融樹脂7は、カッター装置101で切断処理が施されて粒子分散樹脂チップ6になり、気流輸送で製品ホッパー103へ収納される。
本発明の効果を確認するために、塗料(ラッカー)を例に挙げて製造試験を実施した。表4は、塗料の原料の配合成分および比較例1、比較例2および実施例についての配合割合を示す一覧表である。また、図5は、製品の塗料における機能性微細粒子1としてのカーボンブラックの粒度分布を示す分布図である。
比較例1は、市販の塗料におけるカーボンブラックの粒度がどの程度のものであるかを調べたものであり、市販の自動車用黒色ラッカー塗料を対象とし、そのカーボンブラックの粒度分布を、出願人の一人である淺田鉄工株式会社が、株式会社堀場製作所製のレーザー解析・散乱式粒度分布測定装置「LA−920」を使用して測定した。カーボンブラックの分散状態は図5に示す通りであり、平均粒子径は0.5μmであった。
比較例2は、従来型のレオロジー流動体中(すなわち、カーボンブラックが吸収し得る給油量を満たした状態における溶媒中でのカーボンブラックの流動中)でカーボンブラックを溶媒中に剪断分散させたときのカーボンブラックの粒度を調べたものである。
比較例2では実施例と比較する目的があるカーボンブラック(a)の配合量は、メーカーのカタログ値の給油量150(cm3/100g)から上記の式(4)によって計算すると表4に示す比較例2に示す分散剤(b)の配合比率となる。因みに、分散剤(a)は、溶剤60%を含む液状のものであり、しかも、この配合比率では、機能性微細粒子(すなわちカーボンブラック)が吸収し得る給油量を満たした状態になる。
そして、カーボンブラック(a)16gと分散剤(b)39gとを株式会社東洋精機製作所製のラボプラストミルを使用して10分間混練分散した(分散後の見かけ粘度は約1,000psのレオロジー的剪断挙動である)。
ついで、溶剤50%を含む液状のアクリル樹脂(c)およびキシレン(f)を必要量加えて淺田鉄工株式会社製のラボ・ディスパーにて分散し塗料にした。その結果の分散状態は図5に示す通りであり、カーボンブラックは、平均粒子径が8.2μmと分散粒子径が大きい凝集粒子になっていることが確認された。通常はこの平均粒子径を比較例1と同じ粒子径に分散するためには、溶剤とアクリル樹脂を追加しデスパーで粘度を調節した後にメディアミルを通して凝集粒子を分散している。このように、従来式の分散操作では多くの装置と工程とが必要になるのである。
そして、実施例は、本発明に係るトライボロジー的摩砕剪断によるナノ修飾に関するものであり、従来型のレオロジー流動体中でカーボンブラックの剪断分散処理を施した比較例2との比較を目的としたものである。
すなわち、実施例においては、カーボンブラック(a)に対して固形状の界面改質剤(d)を同量で配合して、淺田鉄工株式会社製コンバートミキサーで混合した後、本発明装置(上記機能性樹脂チップ製造装置12)である淺田鉄工株式会社製のミラクルKCK32型を50℃で操作して摩砕剪断工程P1における解砕P21および表面修飾P22(図1)を実行し、カーボンブラック(a)および界面改質剤(d)の混合物に固形状の界面改質剤(d)を2.13(nm)の膜厚で表面修飾し、これによってカーボンブラック(a)に対し表面改質処理を施した。この時の見かけ弾性率は約1×106(N/m2)以上であり、トライボロジー的摩砕剪断処理を実行することができる。
これを冷却後粉砕しアクリル樹脂(e)と配合し、ミラクルKCK32型を100℃で操作して混練分散した。分散時の見かけ粘度は約50,000psのレオロジー的剪断挙動である。これを冷却後粉砕して1mm以下の粒子分散樹脂チップ6にした。
つぎに、アクリル樹脂(c)およびキシレン(f)を必要量加えて淺田鉄工株式会社製ラボ・ディスパーにて分散処理し塗料を得た。この塗料におけるカーボンブラックの粒度分布は図5に示す通りであり、平均粒子径が0.248μmであった。
因みに、比較例2および実施例により得られた塗料の粒度分布は、大阪市立工業研究所に測定を委託した。大阪市立工業研究所では、株式会社堀場製作所製のレーザー解析・散乱式粒度分布測定装置「LA−920」を使用して測定している。
これらの測定結果から、機能性微細粒子が吸収し得る給油量に満たない界面改質剤を機能性微細粒子に配合した後、摩砕剪断処理を施す工程を経て機能性微細粒子の外周面に10〜数10オングストロームの膜厚で修飾された表面改質微細粒子を得る本発明方法が優れたものであることを確認することができた。