JP3764251B2 - 高速度動的振れ試験装置及び試験方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、整流子電動機に使用される整流子の、高速運転中に発生する機械的歪み、振れの計測方法に主として適用されるものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に整流子電動機、例えば掃除機用高速交流整流子電動機においては、その寿命を決定するものの一つに、整流子の信頼性が挙げられる。高速運転中に整流子全体が偏芯したり、整流子片の一部が浮き出したりすると、整流子に接触しているブラシが真円度に対する歪み分だけ一瞬浮き上がり、その結果火花放電が発生し急速に整流子の寿命を縮めることになる。従って、整流子は高速運転中でも安定した剛性を保持し、長く真円度を保つことが望まれるが、そのためには適正な評価が必要であり、従来より整流子の評価方法の一つとして振れ試験方法がある。
【0003】
以下、従来の振れ試験方法の構成を図4、5を参照しながら説明する。図4は従来の振れ試験方法の回転試験装置の構成例を示すもので、供試整流子11は試験用軸9に取り付けられ、ナット10で固定されている。試験用軸9はチャック5に装着され、チャック5を回転させる主軸4は軸受3で支持され、駆動用電動機1と増速プーリ2でベルト駆動される。この状態で、供試整流子11は試験条件により、10,000r/min〜50,000r/minにて運転される。
【0004】
一方、整流子電動機の実運転時における整流子の温度上昇分に相当した熱ストレスを加えて供試整流子をより実運転状態に近づけるため、チャンバー7の中で、電気ヒーターを備えた送風機6から供試整流子11に熱風を送る。温度計8によってモニターしながら条件により雰囲気温度は200度〜300度に可変される。この状態で一定時間運転の後、供試整流子11を取り出し、常温に戻した後、次に示す振れ計測を行う。
【0005】
図5は従来の振れ試験方法の振れ計測装置の構成例を示すもので、回転試験後の供試整流子11は、計測用軸22に取り付けられている。計測用軸22はVブロック21で支持され、駆動用電動機23及びキャプスタンローラー24によりゆっくりと回転される。この時、供試整流子11の外径部に電気マイクロメータ25をセットし、電気マイクロメータ25の計測針を整流子面に接触させながら、供試整流子11の歪み、振れを計測する。電気マイクロメータ25の検出信号は、増幅器26で増幅され、記録計27で記録される。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら上記の従来の構成では、回転試験と振れ計測は別作業であり、供試整流子11を回転試験後、一旦取り外し、静止状態にて残留歪みを計測するため、高速運転中における供試整流子の挙動を評価することができなかった。又、駆動用電動機1の速度を増速プーリ2で増速する際に発生する振動に加えて、軸受3から発生する振動が加わり、計測しようとする供試整流子11自身の変位以上に振動を伴って回転しているため、計測初期条件が成立しておらず、適正な強度評価及び高速運転中における動的歪み、振れの計測が不可能であった。
【0007】
このため、運転中の供試整流子の真の挙動が分からず、整流子の信頼性を向上させる設計、改善にも限界があった。更に、従来の熱ストレス印加方式では、供試整流子11の高速運転により発生する風損により送風機6からの熱風が攪拌され、一定温度を保持することが困難であった。そして試験の実施にも煩雑な手間と時間を要した。
【0008】
本発明は上記従来の問題点を解決するため、高速運転中に供試物の動的振れを直接高精度に計測することを可能にする試験装置及び試験方法を提供するものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本願の請求項1記載の発明は初期回転とこれより高速の高速回転とを切換え可能な状態で回転する駆動源と、前記駆動源の出力軸と同心に直結して設けられた主軸と、前記主軸を非接触にて回転自在に支持する非接触軸受と、前記主軸の前記駆動源と反対の側に設けられて円筒状供試物を嵌合状態で固定する供試物固定軸部と、前記円筒状供試物の変位計測用の非接触形変位検出器と、前記主軸の変位計測用の非接触形変位検出器とを備え、前記両非接触形変位検出器から得られた初期回転時および高速回転時の円筒状供試物の計測値から円筒状供試物の高速回転時の動的挙動を測定することを特徴とする高速度動的振れ試験装置に係るものであり、駆動源と円筒状供試物を共に主軸に取り付け一体化することにより、円筒状供試物を回転試験装置に取り付けたまま初期計測から回転試験及び後計測ができるため、試験用軸やチャック装脱着時の振れ等による測定誤差をなくすことができ、又、主軸を非接触軸受にて支持することにより軸受の振動成分を除くことができ、超低振動にて安定した高速運転中の円筒状供試物の挙動を計測することができる、という作用を有する。
【0010】
本願の請求項1記載の発明は、主軸の変位計測用の非接触形変位検出器を備えているので、主軸の変位量を計測し、円筒状供試物の測定変位量より主軸の測定変位量を差し引くことによって、高速運転中における円筒状供試物自身の動的な歪み、振れを高精度にかつ安定した状態にて計測することができる、という作用を有する。本願の請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明に加え、円筒状供試物に熱ストレスを印加する熱源を備えたことを特徴とするものである。
【0011】
本願の請求項3記載の発明は請求項1又は2記載の発明に加え、非接触軸受が空気軸受である高速度動的振れ試験装置に係るものであり、軸受の振動成分を取り除き超低振動にて安定した高速運転ができる、という作用を有する。
【0012】
本願の請求項4記載の発明は請求項1又は2記載の発明に加え、非接触軸受が磁気軸受である高速度動的振れ試験装置に係るものであり、軸受の振動成分を取り除き超低振動にて安定した高速運転ができる、という作用を有する。
【0013】
本願の請求項5記載の発明は請求項1又は2記載の発明に加え、非接触形変位検出器がセンサーと供試物間の静電容量変化を検出して変位を測定するものである高速度動的振れ試験装置に係るものであり、非接触にて計測を行うため円筒状供試物の動的歪み、振れを高速運転下にて計測することができる、という作用を有する。
【0014】
本願の請求項6記載の発明は請求項1又は2記載の発明に加え、非接触形変位検出器がレーザードップラー変位計である高速度動的振れ試験装置に係るものであり、非接触にて計測を行うため円筒状供試物の動的歪み、振れを高速運転下にて計測することができる、という作用を有する。
【0015】
本願の請求項7記載の発明は請求項1、2、3、4、5又は6記載の発明に加え、円筒状供試物が円筒状に配置された複数の銅又は銅合金からなる整流子片を有する整流子である高速度動的振れ試験装置に係るものであり、整流子電動機に使用される整流子を駆動源と共に主軸に取り付け一体化することにより回転試験装置に取り付けたまま初期計測から回転試験及び後計測ができるため、試験用軸やチャック装脱着時の振れ等による測定誤差をなくすことができ、又、主軸を非接触形軸受にて支持することにより軸受の振動成分を除くことができ、超低振動にて安定した高速運転中の整流子の挙動を計測することができる、という作用を有する。
【0016】
本願の請求項8記載の発明は請求項2又は7記載の高速度動的振れ試験装置を用いて、円筒状供試物を高速回転させながら赤外線照射装置の熱線を照射することにより熱ストレスを印加し、同時に非接触形変位検出器により円筒状供試物の振れを計測することを特徴とする高速度動的振れ試験方法に係るものであり、円筒状供試物に一定温度の熱ストレスを印加する際、高速で回転する円筒状供試物の風損による温度変動をなくし、又、印加電圧にて熱量を制御することができるため、より正確に安定した設定温度にて高速度動的振れ試験を行うことができる、という作用を有する。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。図中従来例と同じ部材は同番号を付している。
【0018】
図1において11は円筒状供試物、具体的には、円筒状に配置された複数の銅又は銅合金からなる整流子片を有する供試整流子である。31は駆動源である速度調整用電動機、34は空気軸受式主軸装置であり、速度調整用電動機31のローター32は空気軸受式主軸装置34の主軸35の同心軸上に直結されている。
【0019】
速度調整用電動機31は、インバータ33により速度制御され高速運転が行われる。空気軸受式主軸装置34に空気供給源36より空気を供給することにより、主軸35回りに空気軸受39を形成する。空気軸受式主軸装置34の主軸35には更に、供試整流子11を取り付けるための供試物固定軸部37が設けられている。供試物固定軸部37は主軸35とは別体に形成されたものを主軸35と直結するように設けるか、あるいは主軸35と一体化して形成してもよい。供試整流子11は供試物固定軸部37に取付けナット38で固定装着される。試験装置本体にはバイト40を有する刃物台41がスライド可能に取り付けられている。空気軸受式主軸装置34の主軸35自身の固有振れを検出するために、非接触形変位検出器42を設け、又、供試整流子11の歪み、振れを検出するために、非接触形変位検出器43を設ける。非接触形変位検出器42、43としては、センサーと測定対象物との間の静電容量変化を検出して変位を測定する方式か、あるいはレーザードップラー変位計を用いるとよい。非接触形変位検出器42、43の検出信号は増幅器46、47によって増幅され、データ処理装置48に送られる。データ処理装置48にて供試整流子11の変位量から主軸35の変位量が差し引かれ、得られた供試整流子11の真の変位量は記録計49で記録される。
【0020】
試験の実施にはまず、回転試験を行う前に、供試整流子11を装着した主軸35を一定回転数で回転させ、刃物台41を操作して供試整流子11の外径を切削し供試整流子11の初期歪みを矯正する。その後、ある一定回転数で回転させ、非接触形変位検出器42、43にて供試整流子11の初期歪みと、主軸35の振れを検出し、増幅器46、47にて増幅後、データ処理装置48により供試整流子11の変位量から、主軸35の変位量を差し引くことで初期値を得る。その後、インバータ33により試験条件に合わせて10,000r/min〜50,000r/minで速度調整用電動機31を一定時間高速運転する。非接触形変位検出器42、43にて供試整流子11と主軸35の変位量を計測し、データ処理装置48によって供試整流子11の変位量から主軸35の振動成分を差し引き、供試整流子11自身の高速運転中の変位量を記録計49にて記録する。これにより、供試整流子11の初期値と高速運転中の変位量から、整流子の高速回転中の挙動を評価することができる。
【0021】
上記構成において、速度調整用電動機31と供試整流子11を主軸35と一体となるように取り付けたことにより、従来例における試験用軸の振れやチャック装着時の振れが発生せず、低振動状態にて高速運転ができる。又、主軸35と一体とすることで複数の軸受部を設ける必要がなくなり、かつ空気軸受式主軸装置34に空気を供給し主軸35の周囲に空気軸受39が形成される構成としたことにより、玉軸受等で発生する軸受振動がなく、極めて安定した高速運転中での計測が可能となる。更に、供試整流子11を主軸35と同心一体に設けられた供試物固定軸部37に取り付けたまま初期歪みの矯正、回転試験及び計測の一連作業を行うため、従来例における試験用軸、チャック装着時の振動要因、計測時の設定誤差等をなくすことができ、極めて安定した計測を行うことができる。又、非接触形変位検出器42により、主軸35の高速回転中の固有振動成分を取り出し供試整流子11の変位量計測値から差し引くことにより、外的影響を受けない、供試整流子11自身の挙動を精密に計測することができる。
【0022】
図2の(A)は上記構成において、回転試験を行った時の供試整流子11の5,000r/minの初期状態での変位量の計測波形の一例である。
【0023】
図2の(B)は上記構成において、回転試験を行った時の供試整流子11が40,000r/minにて高速回転中の変位量の計測波形の一例である。
【0024】
図2の(C)は供試整流子11を40,000r/minの高速回転から5,000r/minの初期状態に戻した時の変位量の計測波形の一例である。
【0025】
上記計測波形において、一つの凸形状は一つの整流子片を表している。
【0026】
図2の(A)において、初期状態では供試整流子11の外径の変位量は基準値レベル(図中0で示す)にあるが、高速回転状態では図2の(B)に示すように、遠心力等による供試整流子11の径方向の膨張が発生し変位量が増大する。
【0027】
更に供試整流子11の隣り合う整流子片間において、段差が発生し変位量の計測波形に凹凸が発生する。
【0028】
又、高速回転状態から初期状態に戻した時には図2の(C)に示すように供試整流子11の外径の変位量が初期状態に戻る。
【0029】
以上のように、従来技術では計測が困難であった高速回転時における供試整流子11の膨張、振れ、整流子片間の段差等の動的挙動を精密に計測することができる。
【0030】
尚、本実施の形態では空気軸受で説明したが、磁気軸受等の非接触形軸受を使用しても同様の効果を得ることができ、特に磁気軸受の場合は空気軸受のように空気供給源を必要としないメリットがある。
【0031】
図3は上記構成中の回転試験装置の熱ストレス印加方式の一例である。熱ストレス印加用熱源のハロゲンランプ52は電源53により熱量の制御が行われる。
【0032】
非接触形変位検出器43は熱遮蔽板51にて保護される。ハロゲンランプ52により供試整流子11に照射された部分の温度を測定するため赤外線温度計54が設けられ、測定された温度は指示計55により表示される。
【0033】
この構成により、従来の電気ヒーターの熱風照射においては、供試整流子11が高速運転時に発生する風損により設定温度に変動が生じていたのに対し、光エネルギーであるハロゲンランプ52の熱線照射とすることにより、供試整流子11の風損の影響を受けず、安定した設定温度を保つことができる。又、ハロゲンランプ52は電源53により細かな熱量制御が可能となるため、瞬時に供試整流子11の温度を設定値まで上昇させることができ、上昇後は安定した温度制御ができる。更に、供試整流子11のみを加熱することができるため、チャンバー設備が不要となりチャンバーの空間温度を上げる必要がなく、熱エネルギー量を節約することができ、かつ温度設定時間を短縮することができる。又、従来は熱電対によるチャンバー内雰囲気温度計により回転中の供試整流子11の温度を推測していたが、赤外線温度計54により非接触にて高速運転中の供試整流子11の温度を直接計測することにより、より正確な温度を知ることができ、自動制御による温度コントロールが容易にできるので高精度な安定した熱ストレスを印加することができる。
【0034】
【発明の効果】
以上のように本発明の高速度動的振れ試験装置及び試験方法は、速度調整用電動機と供試整流子(一般的には円筒状供試物)を主軸と一体となる構造としたことにより、供試整流子を回転試験装置に取り付けたまま初期計測から回転試験及び後計測ができるため、測定誤差等をなくすことができ、又、主軸を非接触軸受にて支持する構成により、玉軸受等の振動成分を取り除き、超低振動にて安定した高速運転が可能となり、供試整流子の高速運転中の動的な機械的歪み、振れを高精度に計測することが可能となる。又、主軸の高速運転中の変位量を計測し、供試整流子の変位量から差し引く構成とすることにより、供試整流子自身の動的な歪み、振れを高精度に計測することができる。更に、赤外線照射装置の熱線を供試整流子に印加する方式とすることにより、風損による加熱温度変動を低減でき、又、印加電圧にて熱量を細かく制御することにより、より正確な安定した設定温度にて高速度動的振れ試験を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の高速度動的振れ試験装置を示す構成図。
【図2】本発明の高速度動的振れ試験装置により計測された波形図。
【図3】本発明の高速度動的振れ試験装置の熱ストレス印加方式を示す構成図。
【図4】従来の回転試験装置を示す構成図。
【図5】従来の振れ計測装置を示す構成図。
【符号の説明】
11 供試整流子
31 速度調整用電動機
32 ローター
35 主軸
37 供試物固定軸部
39 空気軸受
42 主軸変位計測用非接触形変位検出器
43 供試整流子変位計測用非接触形変位検出器
52 ハロゲンランプ
Claims (8)
- 初期回転とこれより高速の高速回転とを切換え可能な状態で回転する駆動源と、前記駆動源の出力軸と同心に直結して設けられた主軸と、前記主軸を非接触にて回転自在に支持する非接触軸受と、前記主軸の前記駆動源と反対の側に設けられて円筒状供試物を嵌合状態で固定する供試物固定軸部と、前記円筒状供試物の変位計測用の非接触形変位検出器と、前記主軸の変位計測用の非接触形変位検出器とを備え、前記両非接触形変位検出器から得られた初期回転時および高速回転時の円筒状供試物の計測値から円筒状供試物の高速回転時の動的挙動を測定することを特徴とする高速度動的振れ試験装置。
- 円筒状供試物に熱ストレスを印加する熱源を備えたことを特徴とする請求項1記載の高速度動的振れ試験装置。
- 非接触軸受が空気軸受である請求項1又は2記載の高速度動的振れ試験装置。
- 非接触軸受が磁気軸受である請求項1又は2記載の高速度動的振れ試験装置。
- 非接触形変位検出器がセンサーと供試物間の静電容量変化を検出して変位を測定するものである請求項1又は2記載の高速度動的振れ試験装置。
- 非接触形変位検出器がレーザードップラー変位計である請求項1又は2記載の高速度動的振れ試験装置。
- 円筒状供試物が円筒状に配置された複数の銅又は銅合金からなる整流子片を有する整流子である請求項1、2、3、4、5又は6記載の高速度動的振れ試験装置。
- 請求項2又は7記載の高速度動的振れ試験装置を用いて、円筒状供試物を高速回転させながら赤外線照射装置の熱線を照射することにより熱ストレスを印加し、同時に非接触形変位検出器により円筒状供試物の振れを計測することを特徴とする高速度動的振れ試験方法。
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