JP2004205315A - 軸受構造体の動作評価方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】固定部材と、この固定部材に対して相対的に回転自在である回転部材と、固定部材と回転部材との間に介在された軸受構造体と、回転部材に対して回転駆動力を発生させるための駆動部とを備えてなる回転動作装置における軸受構造体の動作評価方法である。軸受構造体30を単体で支持し、この軸受構造体30に振動を測定するセンサ54を取り付け、軸受構造体30の回転要素36に外部より回転力を付与し、回転要素36の回転中に軸受構造体30を単体で振動測定する。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、モータ等の回転動作装置に用いられる軸受構造体の振動測定に基づく動作評価方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
評価対象物の振動を計測し、発生頻度、振幅、周波数成分などを解析し、評価対象物の形状機能を損なうこと無しに欠陥の存在を評価し、品質分析などの判定を行う技術がある。
【0003】
一例として、アコースティックエミッション(以下、AEという)センサを用いた技術が知られている。AEとは、固体が変形あるいは破壊される際に、固体がそれまで蓄えていたひずみエネルギーを解放する結果として発生する弾性波として知られている。また、広義には、小さな摩擦や衝突などに起因する固体の高周波微少振動も含んでいる。
【0004】
特許文献1には、モータの備える軸受の摩擦による振動をAEセンサにより測定し、軸受の動作評価を行う動作評価装置が公開されている。この動作評価装置では、モータを定格回転数にて回転させ、AEセンサの測定値を所定の規格値と比較することにより評価を行っている。
【0005】
【特許文献1】
特開平10−307081号公報 (第2頁)
【発明が解決しようとする課題】
一方、評価対象物が軸受、回転機あるいは回転機を用いた装置など回転動作を伴う回転動作装置である場合、回転動作装置が主に使用される動作回転数だけで評価を行うのではなく、低速回転から高速回転までの幅広い回転数において漏れなく評価を行うことが望まれる。具体的には、ハードディスク駆動装置の場合、通常ある一定の動作回転数で動作されるが、起動・停止を繰り返すため、起動時から動作回転時までのすべての回転数において評価を行うことが求められる。
【0006】
しかし、上記従来技術においては、軸受の摩擦による振動をモータの回転時に行うことを基本としており、モータノイズ、つまりモータ電流の切り換えに伴うスイッチングノイズのような電気的ノイズや、ステータとロータマグネットとの間の電磁力によるコギングつまり磁気的ノイズが影響し、正確な軸受部の振動測定に限界を有している。
【0007】
上記特許文献1には、軸受のコスレをAEセンサで検出する一方、モータノイズをAEセンサにより検出し、両センサによる検出信号を演算処理してモータノイズの影響を取り除いた検査方法が示されているが、二カ所にAEセンサを取り付けた上でコンピュータなどでの演算処理を行う必要があり、取り扱い性が悪いだけでなく装置が大掛かりとなり、しかも上記検査により不良と判断された場合にはモータ単体での廃却が余儀なくされ、無駄が大きくなる難点を有している。
【0008】
また、このことは、AEセンサを用いた評価に限らず、振動を測定し回転動作装置の動作評価を行う動作評価装置一般についても当てはまる。
【0009】
そこで、本発明では、モータのような回転動作装置に使用される軸受構造体の振動計測に際し、回転動作装置側の影響を受けることがなく、取り扱い性並びにコストメリットの高い軸受構造体の動作評価方法を提供することを課題とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
請求項1にかかる軸受構造体の動作評価方法は、回転動作装置に使用される軸受構造体を単体で支持し、この軸受構造体にセンサを取り付けた上で、軸受構造体の回転要素に外部回転力を与えて回転し、この状態でセンサによる振動測定を行う。ここで、回転動作装置とは、軸受構造体、軸受構造体を備える回転機および回転機を備える装置など回転動作を伴う装置である。
【0011】
この動作評価方法では、回転動作装置に使用される軸受構造体を単体で振動測定することから、回転動作装置のノイズを含まない軸受構造体それ自身の振動を測定し、振動計測に基づく評価を行うことができる。
【0012】
請求項2にかかる軸受構造体の動作評価方法は、請求項1に記載の軸受構造体の動作評価方法であって、軸受構造体は、動圧軸受を有している。
【0013】
この動作評価方法では、動圧軸受を有している軸受構造体の動作評価を行う。動圧軸受では、回転中の擦れが軸受の性能に影響を与える。この擦れから生じる軸受構造体の振動を測定し、動作評価を行う。
【0014】
請求項3にかかる軸受構造体の動作評価方法は、請求項1に記載の軸受構造体の動作評価方法であって、軸受構造体の回転要素に羽根車が同軸状に連結され、この羽根車に空気流を付与することにより羽根車を回転し回転要素に回転力を付与する。
【0015】
この動作評価方法では、軸受構造体の回転要素に外部から回転力を付与するために、空気流により回転する羽根車が使用され、回転動作装置の駆動に際して発生するスイッチングノイズ等の電気的なノイズがセンサの測定に与える影響を考慮する必要がなく、しかも回転動作装置がモータの場合のステータとロータマグネットとの間に生じるコギングといった磁気的なノイズがセンサの測定に影響を与えることもなく、センサを用いて精度よく軸受構造体の動作評価を行うことができる。
【0016】
請求項4にかかる軸受構造体の動作評価方法は、請求項1ないし3に記載の軸受構造体の動作評価方法であって、振動は、アコースティックエミッション(AE)センサにより測定される。
【0017】
請求項5にかかる軸受構造体の動作評価方法は、請求項1〜4に記載の軸受構造体の動作評価方法であって、回転動作装置の起動時から動作回転時までのすべての回転数において振動測定が行われる。
【0018】
この動作評価装置では、回転動作装置の起動から動作回転時の幅広い回転数において漏れなく振動の計測に基づく評価を行うことができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態につき図面を用いて説明する。この実施の形態では、回転動作装置としてハードディスク駆動装置に用いるハードディスク回転駆動用スピンドルモータの場合を示している。
【0020】
図3は、スピンドルモータ1の概略構造を示した断面図であり、固定部材となるモータブラケット10に対して回転部材となるロータハブ20が軸受構造体30を介して相対的に回転自在に支持されている。モータブラケット10はハードディスク駆動装置のベースにねじ止め等の手段により固定されるが、このベース自体に軸受構造体30を介して回転部材を支持するかたちであってもよく、この場合、ベースが直接固定部材を構成する。
【0021】
モータブラケット10には中央部に円筒状ボス部12が一体的に突設されており、このボス部12の内側に軸受構造体30が内嵌固定されている。ボス部12の外周面にはモータ駆動部の一部を構成するステータ14が外嵌固定されている。ステータ14はステータコア16とこれに巻装されたコイル18とからなる。
【0022】
また、ロータハブ20は逆カップ状に構成され、ロータハブ20の外周筒部にディスクが嵌合されて装着されることによりディスクがロータハブ20と一体となって回転する。ロータハブ20の外周筒部の内周面には、モータ駆動部の一部を構成する円筒状のロータマグネット22が装着され、ステータコア16の外周面に僅かの隙間を介して対向している。
【0023】
軸受構造体30は、動圧軸受を有しており、円筒状スリーブ32と、このスリーブ32の下端開口を閉塞するように取り付けられたスラストカバー34と、スリーブ32及びスラストカバー34で構成する有底円筒体の内側に挿入されたシャフト36と、を備えており、スリーブ32より突出したシャフト36の上端部にロータハブ20が同軸的かつ一体的に連結されている。
【0024】
スリーブ32の円筒内周面は、その大半を占める軸受内周部32aと、下端部に設けられ円筒内周面32aより大径の拡大内径部32bとからなる。シャフト36は、スリーブ32の軸受内周部32aと微小間隙を介して対向する軸部36aと、この軸部36aの下端に一体に設けられ軸部36aより大径に形成された円盤状スラスト板部36bとからなり、スラスト板部36bがスリーブ32の拡大内径部32bに配置されている。スラスト板部36bの上面はスリーブ32の軸受内周部32aと拡大内径部32bとの間の段付き部の下面に微少間隙を介して対向し、スラスト板部36bの下面はスラストカバー34の上面に微少間隙を介して対向している。これらシャフト36とスリーブ32及びスラストカバー34との間の微少間隙にはオイル等の潤滑流体が連続して充填されている。
【0025】
軸部36aの外周面とスリーブ32の軸受内周面32aとの一方若しくは両方にはその上下にヘリングボーン状溝等のラジアル動圧溝が形成されており、これによりシャフト36とスリーブ32との相対回転により両者間の微小隙間に充填された潤滑流体の圧力を高めてラジアル荷重を支持する一対のラジアル動圧軸受部40,42が形成されている。さらに、スラスト板部36bの上面とスリーブ32の段付き部下面との一方若しくは両方、並びにスラスト板部36bの下面とスラストカバー34の上面との一方若しくは両方にはヘリングボーン状或いはスパイラル状のスラスト動圧溝が形成されており、これによりスラスト板部36b回りの潤滑流体の圧力を高めてスラスト荷重を支持する一対のスラスト動圧軸受部44,46が形成されている。
【0026】
このように軸受構造体30においては、スリーブ32及びスラストカバー34に対してシャフト36が一対のラジアル動圧軸受部40,42及び一対のスラスト動圧軸受部44,46を介してラジアル方向及びスラスト方向に回転自在に支持されており、この軸受構造体30のスリーブ32を固定したモータブラケット10に対してシャフト36に連結されたロータハブ20が回転自在に支持されることになる。
【0027】
図1は、上述したスピンドルモータ1に用いられる軸受構造体30を単体で動作評価するための動作評価装置Aを示したものである。この動作評価装置Aは、評価対象としての軸受構造体30を横方向からクランプすることにより固定する固定治具52と、軸受構造体30の底面にスプリング等により押し当てられたアコースティックエミッション(以下、AEという)センサ54と、軸受構造体30の回転要素としてのシャフト36の上端部にねじ55により同軸状に固定された羽根車56と、AEセンサ54からの信号を増幅するアンプ58と、アンプ58からのセンサ信号を演算処理し評価しかつ表示するパーソナルコンピュータ(以下、パソコンという)60とから構成されている。
【0028】
羽根車56には、その外周面に多数の羽根57が周方向等間隔に設けられており、図2に示すように、羽根車56の近傍にエアノズル62をそのエア噴出口を羽根車56の周面(の羽根57)に向けて配置し、エアノズル62より空気流を噴出させることにより羽根車56が回転する。羽根車56の回転速度はエアノズル62からの空気流を調整することにより制御可能である。
【0029】
このように回転する羽根車56の回転力は軸受構造体の30のシャフト36に与えられ、シャフト36がスリーブ32に対して動圧軸受部40,42,44,46により支持されながら回転することになる。シャフト36が回転する際、AEセンサ54は動圧軸受部の擦れ(金属接触)などを原因として発生する微少振動を検出する。AEセンサ54のセンサ信号はアンプ58において処理に必要なレベルにまで増幅され、AE測定信号としてパソコン60に取り込まれ演算処理される。例えば、AE測定信号をアナログ−デジタル変換したのち、微小振動の周波数解析、波形形状解析などの特性解析が行われ、軸受構造体30の動作評価に役立てる。
【0030】
このような動作評価装置Aにあっては、スピンドルモータ1に用いられる軸受構造体30を、スピンドルモータ1とは切り離し単体として振動測定する結果、モータ動作時に発生する電磁気ノイズの影響等を一切排除し得、軸受構造体30自身の振動情報を正確に取得することができ、動作評価の精度を飛躍的に向上させることができる。
【0031】
また、動作評価装置Aは、スピンドルモータ1の一部品である軸受構造体30を単体で取り扱うため、評価対象が小さくなり、取り扱い性が良好になる利点がある。加えて、評価対象が動作評価装置Aによって不良として判定された場合であっても、その対象である軸受構造体Aのみを廃却すればよいことから、スピンドルモータ1への組み込み状態での不良廃却の場合に比べ無駄が極端に少なくなり、省力化への期待が高まるものである。
【0032】
なお、上記実施形態において、空気の噴出圧力に起因する外部振動の影響がある場合は、この空気の噴出圧力による振動周波数帯域が測定帯域と離間していることから、フィルターを用いてその周波数帯域の信号を除去すればよい。
【0033】
また、上述した動作評価において、スピンドルモータ1の起動から定格回転数までの全ての回転数での軸受構造体30の振動測定するには、例えば羽根車56を定格回転数で回転し、その後羽根車56を停止するまで惰性回転させ、その際の軸受構造体30の振動をAEセンサ54で測定するようにすればよい。特に、上述した動圧軸受を有する軸受構造体30では、起動・停止時の金属接触が軸受性能に大きく影響することから、全ての回転数での動作評価は有益である。
【0034】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、評価対象は上述の動圧軸受を有する軸受構造体30に限定されるものではなく、他の方式(構造上他の方式である場合や潤滑流体を磁性流体や他の液体或いは空気とした方式)を採用した動圧軸受を有する軸受構造体でもよく、或いは滑り軸受やころがり軸受を有する軸受構造体であってもよい。
【0035】
さらに、軸受構造体の回転要素に外部から回転力を付与する手段としては、他の風力利用や水力利用等の方式が利用可能である。
【0036】
【発明の効果】
請求項1にかかる発明では、軸受構造体の回転要素に外部より回転力を付与して回転させた状態でこの軸受構造体の振動をセンサにより測定するようにしたので、軸受構造体単体での振動測定が可能となり、軸受構造体をモータ等の回転動作装置に使用した際に回転動作装置の駆動に際して発生する各種電磁気ノイズの影響を全く受けることなく軸受構造体自体の動作評価を正しく実施でき、精度の高い測定が可能になるものである。加えて、軸受構造体を単体で振動測定できるため、測定対象の取り扱い性が格段に向上し、しかも測定対象の不良に対しても軸受構造体のみの対応(廃却)でよくなり、回転動作装置には何ら影響を及ぼすことがなく、省力化が図れるものである。
【0037】
請求項2にかかる発明では、軸受構造体に動圧軸受を有しているため、軸受構成部材同士の擦れに起因する振動を精度よく測定することができる。
【0038】
請求項3にかかる発明では、軸受構造体の回転要素に連結された羽根車に空気流を付与して回転要素を回転させることができ、回転要素を回転動作装置とは関係なく独自に回転させることができる。
【0039】
請求項4にかかる発明では、軸受構造体の振動をAEセンサにより測定するので、高感度での振動測定が実現する。
【0040】
請求項5にかかる発明では、回転動作装置の起動時から動作回転時までの幅広い回転数において漏れなく振動の計測に基づく評価を行うことができる。
【0041】
請求項9にかかる発明では、AE規格値が回転数毎に設定されており、AEセンサの測定値が回転数に依存する場合であっても、各回転数における回転動作装置の動作評価を正確に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態としての動作評価装置1の概略構成図である。
【図2】図1の一部の平面図である。
【図3】軸受構造体を使用するスピンドルモータの断面図である。
【符号の説明】
1 スピンドルモータ(回転動作装置)
10 モータブラケット(固定部材)
16 ステータ(駆動部)
20 ロータハブ(回転部材)
22 ロータマグネット(駆動部)
30 軸受構造体
36 シャフト(回転要素)
40,42 ラジアル動圧軸受部
44,46 スラスト動圧軸受部
54 AEセンサ
56 羽根車
Claims (5)
- 固定部材と、該固定部材に対して相対的に回転自在である回転部材と、前記固定部材と前記回転部材との間に介在された軸受構造体と、前記回転部材に対して回転駆動力を発生させるための駆動部とを備えてなる回転動作装置における軸受構造体の動作評価方法であって、
前記軸受構造体を単体で支持し、該軸受構造体に振動を測定するセンサを取り付け、前記軸受構造体の回転要素に外部より回転力を付与し、該回転要素の回転中に軸受構造体を単体で振動測定することを特徴とする軸受構造体の動作評価方法。 - 前記軸受構造体は、動圧軸受を有している請求項1記載の軸受構造体の動作評価方法。
- 前記軸受構造体の回転要素には羽根車が同軸状に連結され、該羽根車に空気流を付与することにより羽根車を回転し、前記回転要素に回転力を付与することを特徴とする請求項1又は2記載の軸受構造体の動作評価方法。
- 前記振動は、アコースティックエミッション(AE)センサにより測定される請求項1〜3の何れかに記載の軸受構造体の動作評価方法。
- 前記軸受構造体は、当該軸受構造体が搭載される回転動作装置の起動時から動作回転時までのすべての回転数において振動測定が行われる請求項1〜4の何れかに記載の軸受構造体の動作評価方法。
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- 2002-12-25 JP JP2002373872A patent/JP2004205315A/ja active Pending
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