JP3764162B2 - 超音波送受波器およびその製造方法、ならびに超音波流量計 - Google Patents

超音波送受波器およびその製造方法、ならびに超音波流量計 Download PDF

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Description

【技術分野】
【0001】
本発明は、音響整合層を有する超音波送受波器およびその製造方法に関する。また、本発明は、当該超音波送受波器を備えた超音波流量計に関している。
【背景技術】
【0002】
近年、超音波が伝搬路伝達する時間を計測し、流体の移動速度を測定して流量を計測する超音波流計がガスメータ等に利用されつつある。図1は、このようなタイプの超音波流量計の主要部断面図構成を示している。超音波流量計では、流量を測定すべき被測定対象流体が管内を流れるように配置されている。管壁102には、一対の超音波送受波器101a、101bが相対して設置されている。超音波送受波器101a、101bは、電気エネルギー/機械エネルギー変換素子として圧電セラミック等の超音波送受波器を用いて構成されており、圧電ブザー、圧電発振子と同様に共振特性を示す。
【0003】
なお、図1に示されている状態では、超音波送受波器101aが超音波送波器として用いられ、超音波送受波器101bが超音波受波器として用いられている。
【0004】
超音波送受波器101aの共振周波数近傍の周波数を持つ交流電圧を超音波送受波器101a内の圧電体(超音波送受波器)に印加すると、超音波送受波器101aは超音波送波器として機能し、流体中に超音波を放射する。放射された超音波は、経路L1に伝搬して、超音波受波器101bに到達する。このとき、超音波送受波器101bは受波器として機能し、超音波を受けて電圧に変換する。
【0005】
次に、今度は超音波送受波器101bが超音波送波器として機能し、超音波送受波器101aが超音波受波器として機能する。すなわち、超音波送受波器101bの共振周波数近傍の周波数を持つ交流電圧を超音波送受波器101b内の圧電体に印加することにより、超音波送受波器101bから流体中に超音波を放射させる。放射された超音波は、経路L2を伝搬して、超音波送受波器101aに到達する。超音波送受波器101aは伝搬してきた超音波を受けて電圧に変換する。
【0006】
このように、超音波送受波器101aおよび101bは、送波器としての機能と受波器としての機能を交互に果たすために、一般に超音波送受波器と総称される。
【0007】
図1に示す超音波流量計では、連続的に交流電圧を印加すると超音波送受波器から連続的に超音波が放射されて伝搬時間を測定することが困難になるので、通常はパルス信号を搬送波とするバースト電圧信号を駆動電圧として用いられる。
【0008】
以下、上記超音波流量計の測定原理をより詳細に説明する。
【0009】
駆動用のバースト電圧信号を超音波送受波器101aに印加することにより、超音波送受波器101aから超音波バースト信号を放射すると、超音波バースト信号は経路L1を伝搬してt時間後に超音波送受波器101bに到達する。経路L1の距離は、経路L2の距離と同様にLであるとする。
【0010】
超音波送受波器101bは、伝達して来た超音波バースト信号のみを高いSN比で電気バースト信号に変換することができる。この電気バースト信号を電気的に増幅して、再び、超音波送受波器101aに印加して超音波バースト信号を放射する。この装置を「シング・アラウンド型装置」と呼ぶ。
【0011】
また、超音波パルスが超音波送受波器101aから放射された後、超音波送受波器102bに到達するまでの時間を「シング・アラウンド周期」という。「シング・アラウンド周期」の逆数は「シング・アラウンド周波数」と呼ばれる。
【0012】
図1において、管の中を流れる流体の流速をV、流体中の超音波の速度をC、流体の流れる方向と超音波パルスの伝搬方向の角度をθとする。超音波送受波器101aを超音波送波器、超音波送受波器101bを超音波受波器として用いたときに、超音波送受波器101aから出た超音波パルスが超音波送受波器101bに到達する時間であるシング・アラウンド周期をt1、シング・アラウンド周波数f1とすれば、次の(式1)が成立する。
【0013】
f1=1/t1=(C+Vcosθ)/L ・・・(式1)
【0014】
逆に、超音波送受波器101bを超音波送波器として、超音波送受波器101aを超音波受波器として用いたときのシング・アラウンド周期をt2、シング・アラウンド周波数f2とすれば、次の(式2)の関係が成立する。
【0015】
f2=1/t2=(C−Vcosθ)/L ・・・(式2)
【0016】
両シング・アラウンド周波数の周波数差Δfは、次の(式3)で示される。
【0017】
Δf=f1−f2=2Vcosθ/L ・・・(式3)
【0018】
(式3)によれば、超音波の伝搬経路の距離Lと周波数差Δfとから、流体の流速Vを求めることができる。そしてその流速Vから、流量を決定することができる。
【0019】
このような超音波流量計では、高い精度が求められる。精度を高めるためには、超音波送受波器内の圧電体の超音波送受波面に形成される音響整合層の音響インピーダンスが重要となる。音響整合層は、特に、超音波送受波器が気体に超音波を放射(送波)する場合、および、気体を伝搬してきた超音波を受け取る場合に重要な役割を果たす。
【0020】
以下、図2を参照しながら、音響整合層の役割を説明する。図2は、従来の超音波送受波器103の断面構成を示している。図示されている超音波送受波器103は、センサケース105の内側に固定された圧電体106と、センサケース105の外側に固定された音響整合層104とを備えている。音響整合層104は、エポキシ系の接着剤によってセンサケース105に接着されている。同様にして、圧電体106もセンサケースに接着されている。
【0021】
圧電体106の超音波振動は、接着層を介してセンサケース106に伝わり、更にもう一つの接着層を介して音響整合層104に伝わる。この後、超音波振動は、音響整合層104と接する気体(超音波伝搬媒体)に音波として放射される。
【0022】
音響整合層104の役割は、圧電体の振動を効率良く気体に伝搬させることにある。以下、この点をより詳細に説明する。
【0023】
物質の音響インピーダンスZは、その物質中の音速Cと物質の密度ρとを用いて次の(式4)によって定義される。
【0024】
Z=ρ×C ・・・(式4)
【0025】
本明細書では、音響インピーダンスの単位を、[kg/m3]と[m/秒]の積である[kg/m2/秒]で表現することとする。
【0026】
超音波の放射対象となる気体の音響インピーダンスは、圧電体の音響インピーダンスと大きく異なっている。一般的な圧電体であるPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)等のピエゾセラミックスの音響インピーダンスZ1は、2.9×107kg/m2/秒程度である。これに対して、空気の音響インピーダンスZ3は4.0×102kg/m2/秒程度である。
【0027】
音響インピーダンスの異なる境界面では、音波が反射しやすく、境界面を透過する音波の強度が低下する。このため、圧電体と気体の間に、(式5)で示す音響インピーダンスZ2を持つ物質を挿入することが行われている。
【0028】
Z2=(Z1×Z3)1/2 ・・・(式5)
【0029】
このような音響インピーダンスZ2をもつ物質を挿入すると、境界面での反射が抑えられ、音波の透過率が向上する事が知られている。
【0030】
音響インピーダンスZ1を2.9×107kg/m2/秒、音響インピーダンスZ3を4.0×102kg/m2/秒とした場合、(式5)を満たす音響インピーダンスZ2は、1.1×105kg/m2/秒程度となる。1.1×105kg/m2/秒の値を持つ物質は、当然に、(式4)、すなわち、Z2=ρ×Cを満足しなければならない。このような物質を固体材料の中から見出すことは極めて難しい。その理由は、固体でありながら、密度ρが十分に小さく、かつ、音速Cが低いことが要求されるからである。
【0031】
現在、音響整合層の材料としては、ガラスバルーンやプラスチックバルーンを樹脂材料で固めた材料が広く用いられている。また、このような音響整合層に適した材料を作成する方法として、中空ガラス球を熱圧縮する方法や溶融材料を発泡させる等の方法などが、例えば特許文献1などに開示されている。
【0032】
しかし、これらの材料の音響インピーダンスは、5.0×105kg/m2/秒より大きな値であり、(式5)を満足しているとは言い難い。高感度な超音波送受波器を得るためには、音響インピーダンスの更に小さな材料から音響整合層を形成することが必要である。
【0033】
このような要望に応えるため、本出願人は、(式5)を十分に満足する音響整合材料を発明し、特許文献2に開示している。この材料は、耐久性を付与した乾燥ゲルを用いて作製され、密度ρが小さく、かつ、音速Cも低い。このように音響インピーダンスが極めて低い乾燥ゲルなどの材料から形成した音響整合層を備えた超音波送受波器は、気体との間で効率的かつ高感度で超音波の送受波を行うことができる。その結果、気体の流量を高い精度で測定することのできる装置が実現する。
【0034】
また、本出願人は、2層の音響整合層を有する超音波送受波器の発明を特許文献3に開示している。この音響整合層は、乾燥ゲルと多孔質セラミックスなどとを組み合わせた多層構造を有しており、単層の音響整合層をもつ超音波送受波器に比較して、更に高感度、広帯域な超音波の送受波が可能な超音波送受波器を提供できる。そして、そのような超音波送受波器を用いて流量計を作製すれば、気体の流量を高い精度で測定することが可能となる。
【特許文献1】
特許第2559144号明細書
【特許文献2】
特開2002−262394号公報
【特許文献3】
特願2003−136327号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0035】
乾燥ゲルから形成した音響整合層を備える超音波送受波器は、従来のガラスバルーンやプラスチックバルーンを樹脂材料で固めた材料から形成した音響整合層を備える超音波送受波器に比較して、著しく高い送受波感度を得ることができる。しかし、パルスまたはバースト状の超音波を送受波する場合には、従来の超音波送受波器に比べ、周波数帯域が狭く、時間的に短い超音波の送受波には必ずしも適していなかった。
【0036】
また、乾燥ゲルを他の材料と接合した2層の音響整合層を有する超音波送受波器の場合、2層の整合層を構成する材料が異なるため、密着性が悪く、また異なる材料であるため熱に対する線膨張率が異なり、長期信頼性を確保することが困難であった。更に、異なる部材をそれぞれ用意し、2つの部材を結合させる工程、または、成形したセラミックなどの多孔質体の上に乾燥ゲルからなる音響整合層を形成する工程が必要である。このため、工程が煩雑で、歩留まりおよびコストの観点から問題があった。
【0037】
なお、多孔質セラミックスは、平均径が数十μm程度の比較的大きな空孔を多数含んでいる。このため、多孔質セラミックスが伝搬する超音波の周波数が高くなり、その波長が平均空孔径に近づくと、空孔により反射や減衰が生じるため、音響整合層としての性能が悪くなる。このため、乾燥ゲルおよび多孔質セラミックスの2層の音響整合層を備えた超音波送受波器には、使用できる超音波振動子の周波数帯域が制限されるという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0038】
本発明の超音波送受波器は、圧電体と、前記圧電体上に設けられた音響整合部材とを有する超音波送受波器であって、前記音響整合部材は、音響インピーダンスの異なる少なくとも2つの音響整合層を含んでおり、前記2つの音響整合層は、いずれも、乾燥ゲルから形成されている。
【0039】
ある好ましい実施形態において、前記各音響整合層は、いずれも、2μm以上の厚さを有している。
【0040】
ある好ましい実施形態において、前記乾燥ゲルから形成された各音響整合層は、いずれも、平均空孔径が1μm以下の多孔質構造部分を有している。
【0041】
ある好ましい実施形態において、前記各音響整合層の音響インピーダンスは、前記圧電体から伝搬媒体に向かって順次、小さくなる。
【0042】
ある好ましい実施形態において、前記音響整合部材に含まれる各音響整合層の音響インピーダンスは、いずれも、2.5×103kg/m2/秒以上1.2×107kg/m2/秒以下である。
【0043】
ある好ましい実施形態において、前記音響整合部材に含まれる音響整合層の数は2である。
【0044】
ある好ましい実施形態において、前記音響整合部材に含まれる各音響整合層の厚さは、送受波される超音波の波長の1/8以上1/3以下の範囲内にある。
【0045】
ある好ましい実施形態において、前記音響整合部材に含まれる各音響整合層は無機系材料から形成されている。
【0046】
ある好ましい実施形態において、前記無機系材料は無機酸化物である。
【0047】
ある好ましい実施形態において、前記無機酸化物は撥水化された固体骨格部を有している。
【0048】
本発明の超音波流量計は、被測定流体が流れる流量測定部と、前記流量測定部に設けられ、超音波信号を送受波する一対の超音波送受波器と、前記一対の超音波送受波器の間を超音波が伝搬する時間を計測する計測回路と、前記計測回路からの信号に基づいて流量を算出する流量演算手段とを備えた超音波流量計であって、前記一対の超音波送受波器の各々が、上記いずれかの超音波送受波器である。
【0049】
ある好ましい実施形態において、前記超音波送受波器の圧電体は、前記被測定流体から遮蔽されている。
【0050】
ある好ましい実施形態において、前記被測定流体は、気体である。
【0051】
本発明の装置は、上記いずれかの超音波送受波器を備えている。
【0052】
本発明の超音波送受波器の製造方法は、(a)第1の面および前記第1の面とは反対側の第2の面を有し、前記第1および第2の面に電極が形成された圧電体を用意する工程と、(b)前記圧電体における前記第1および第2の面の少なくとも一方の側に、音響インピーダンスの異なる少なくとも2つの音響整合層を乾燥ゲルから形成する工程とを含む。
【0053】
ある好ましい実施形態において、前記工程(b)は、(b1)前記圧電体の第1および第2の面の少なくとも一方に第1のゲル原料を供給する工程と、(b2)前記第1のゲル原料液をゲル化させて第1の湿潤ゲル層を形成する工程と、(b3)前記第1の湿潤ゲル層の上に第2のゲル原料を供給する工程と、(b4)前記第2のゲル原料液をゲル化させて第2の湿潤ゲル層を形成する工程と、(b5)前記第1および第2の湿潤ゲル層を乾燥させることにより、前記第1および第2の湿潤ゲル層から、それぞれ、第1音響整合層および第2音響整合層を形成する工程とを含む。
【0054】
ある好ましい実施形態において、前記工程(b4)において、前記第1音響整合層の音響インピーダンスを変化させるように前記第1の湿潤ゲル層を改質する。
【0055】
ある好ましい実施形態において、前記工程(b)は、更に、(b6)前記第2の湿潤ゲル層の上に第3のゲル原料を供給する工程と、(b7)前記第3のゲル原料液をゲル化させて第3の湿潤ゲル層を形成する工程とを含み、前記工程(b5)において、前記第3の湿潤ゲル層を乾燥させて第3音響整合層を形成する。
【0056】
ある好ましい実施形態において、前記工程(b5)の前に、前記湿潤ゲル層に対する撥水化処理を行う。
【発明の効果】
【0057】
本発明によれば、乾燥ゲルからなる複数層の音響整合層を持たせることにより、高感度で広帯域な超音波送受波器を実現することが可能となる。また同じ材料から複数層の整合層を構成しているため各層での剥離が起こらず、製造時の歩留まり、使用時の信頼性が向上する。
【0058】
また同じ素材を用いて任意の音響インピーダンスを有する音響整合層を形成できるため、設計通りの超音波送受波器を実現し、また音響整合層の材料開発・探索を省くことができるという有利な効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0059】
以下、図面を参照しながら、本発明による超音波送受波器の実施形態を説明する。
(実施形態1)
【0060】
図3は、本発明による超音波送受波器の第1の実施形態の断面を示している。本実施形態の超音波送受波器1は、圧電体2と、圧電体2の両面に設けられた一対の電極4a、4bと、電極4aを介して圧電体2の一方の面に設けられた第1音響整合層3aと、第1音響整合層3a上に形成された第2音響整合層3bとを備えている。
【0061】
圧電体2は、圧電性を有する材料から形成され、厚さ方向に分極されている。圧電体2の上下面に設けられた電極4a、4bに電圧が印加されると、電圧信号に基づいて圧電体2から超音波が放射され、音響整合層3a、3bを介して超音波伝搬媒体(気体など)5へ放射される。また、超音波伝搬媒体5を伝播してきた超音波は音響整合層3a、3bを介して圧電体2へ伝播する。入射してきた超音波によって圧電体2は変形し、電極4aと電極4bとの間に電圧信号が発生する。
【0062】
圧電体2の材料は任意であり、種々の公知材料から形成したものを用いることができる。圧電体2の代わりに公知の電歪体を用いてもよい。電極4は、好ましくは金属から形成されるが、金属以外の導電材料から形成されていても良い。
【0063】
2層の音響整合層3a、3bは、圧電体2で発生した超音波振動を伝搬媒体5へ効率よく伝搬させ、また、超音波伝搬媒体5を伝搬してきた超音波を効率よく圧電体2へ伝える機能を有している。
【0064】
本実施形態の音響整合層3a、3bは、いずれも、乾燥ゲルから形成され、音響整合層3aの音響インピーダンスと音響整合層3bの音響インピーダンスは異なる値を示すように調節されている。
【0065】
乾燥ゲルは、ゾルゲル反応によって形成される多孔質体であり、密度ρと音速Cとの積(ρ×C)で規定される音響インピーダンスを極めて小さくすることが可能な材料である。このため、乾燥ゲルから形成した音響整合層3a、3bを用いることにより、空気などの気体に対する超音波の送受波効率を極めて高くすることができる。
【0066】
乾燥ゲルは、湿潤ゲルを形成した後、この湿潤ゲルを乾燥することによって得られる。湿潤ゲルは、まず、ゲル原料液を用意し、このゲル原料液の反応によって湿潤ゲルを作製することができる。湿潤ゲルは、ゲル原料液の反応によって固体化した固体骨格部を有しており、この固体骨格部が溶媒を含んだ状態にある。
【0067】
湿潤ゲルを乾燥することによって得られる乾燥ゲルは、多孔質体であり、数nm〜数μm程度の固体骨格部の隙間に連続した気孔を有している。気孔の平均サイズは1nm〜数μm程度と極めて小さい。
【0068】
作製条件を調節して乾燥ゲルの密度を小さくしてゆくと、乾燥ゲルの固体部分における音速が極端に小さくなるとともに、細孔内の気体部分における音速も極端に小さくなる。そのため、乾燥ゲルの音速は、低密度状態で500m/秒以下の低い値を示し、極めて低い音響インピーダンスを示すことになる。特に固体骨格部および細孔径が数nm程度と小さいサイズを持つ乾燥ゲルは極めて低い音速を示す。また、ナノメートルサイズの細孔部では気体の圧損が大きいため、乾燥ゲルから音響整合層を形成した場合、音波を高い音圧で放射できる。
【0069】
後述する製造方法によれば、同じ原料を用いても製造プロセス条件を調節することにより、乾燥ゲルの音響インピーダンスを広い範囲内で任意の値に制御することができる。また、製造プロセス条件を変えることにより、密度が略同程度の大きさでありながら、音速だけを変化させた音響整合層を作製することも可能である。このため、乾燥ゲルから形成した音響整合層を積層することにより、所望の音響インピーダンス分布を持った音響整合部材を作製することが可能になる。
【0070】
圧電体2と超音波伝搬媒体5との間には、音響インピーダンスの不整合が存在する。特に、超音波伝搬媒体5が気体である場合は、その音響インピーダンスが通常の圧電体の音響インピーダンスよりも著しく小さいため、大きな不整合が存在する。音響インピーダンスの不整合が存在すると、音波の内部反射が生じるため、超音波の効率的な送受信が妨げられる。このような音響インピーダンスの不整合を低減する効果を音響整合層3a、3bは提供する。音響整合層3a、3bを設けることにより、音波の内部反射を抑え、効率よく圧電体2から超音波伝搬媒体5へ超音波を放射させることができる。
【0071】
なお、単一周波数を有する超音波(連続波の超音波)を送受波する場合は、その超音波の波長に基づいて決定される厚さの音響整合層を1層設けるだけで充分である。しかし、通常の超音波送受波器では、パルスまたはバースト状の超音波を送受波することが一般的である。パルスまたはバースト状の超音波は、単一の周波数成分でなく、広範囲の周波数成分を含んでいる。このような超音波の送受波を高感度に行うためには、圧電体3と超音波伝搬媒体5との間で、音響整合層の音響インピーダンスを徐々に変化させることが好ましい。音響インピーダンスを徐々に変化させるには、複数の音響整合層を積層して、音響整合層ごとに音響インピーダンスを徐々に変化させてゆけばよい。
【0072】
音響整合層の音響インピーダンスは、超音波送受波器の性能に大きく影響する。単層の音響整合層における音響インピーダンスは、(式5)に示す関係を満足するように設定することが一般的であるが、2層の音響整合層におけるそれぞれの音響インピーダンスは、例えば、以下の(式6)および(式7)の関係を満足するように設定される。
【0073】
Z1=(Z04×Z331/7 ・・・(式6)
Z2=(Z0×Z361/7 ・・・(式7)
【0074】
(式6)および(式7)において、Z0は圧電体の音響インピーダンス、Z1は第1音響整合層の音響インピーダンス、Z2は第2音響整合層の音響インピーダンス、Z3は伝搬媒体の音響インピーダンスである。
【0075】
ここで、伝搬媒体5が空気であると仮定し、超音波を送受波する場合を考える。約20℃において、空気の密度は約1.18kg/m3であり、音速は約340m/秒であるので、空気の音響インピーダンスZ3は約4.0×102kg/m2/秒になる。
【0076】
また、圧電体2として、チタン酸ジルコン酸鉛系のセラミックスを用いる場合は、その密度が約7.7×103kg/m3であり、音速が約3800m/秒であるので、圧電体2の音響インピーダンスZ0は2.9×107kg/m/秒程度となる。
【0077】
以上の値を、(式6)に代入することによってZ1およびZ2を算出すると、Z1は約2.40×105kg/m2/秒となり、Z2は1.98×103kg/m2/秒となる。
【0078】
このような音響インピーダンスを持つ材料を用いて2層の音響整合層を形成することが理想であるが、第2音響整合層3bに求められる上記音響インピーダンス値Z2は、固体材料としては非常に低い。このように低い音響インピーダンス値Z2を実現するには、例えば、密度が5×10kg/m2/秒、音速が40m/秒となるような固体材料から音響整合層を形成する必要がある。しかし、上記の密度および音速を示す既存の固体材料を見つけること難しく、仮に見つかったとしても、その強度は極めて低く、実用に適さないと考えられる。このため、上記の音響インピーダンス値に近い値を示す材料として、本実施形態では、密度が150kg/m3、音速が100m/秒、音響インピーダンスが1.5×104kg/m2/秒である乾燥ゲル層を用い、第2音響整合層3bを形成している。
【0079】
また、第1音響整合層3aとしては、密度が800kg/m3、音速が1000m/秒、音響インピーダンスが8.0×105kg/m2/秒である乾燥ゲル層を用いる。第1音響整合層3aの音響インピーダンス値は、1次元の計算機シミュレーションにより、送受波感度の高くなる音響インピーダンス値を設定した。
【0080】
第1音響整合層3aの好ましい音響インピーダンス値は、圧電体2、第2音響整合層3b、および伝播媒体5の各々の音響インピーダンス値によって異なる。第2音響整合層3bに用いる乾燥ゲルの音響インピーダンス値を低くするほど、乾燥ゲルの機械的な強度が低下するため、ある値以下に低くすることは好ましくない。このため、本実施形態では、第2音響整合層3bの音響インピーダンスを理想値よりも大きな値に設定している。これに対して、第1音響整合層3aの音響インピーダンス値の設定範囲は、機械的強度の観点からの制約は無く、相対的に広い。
【0081】
後述する製造方法によれば、乾燥ゲルの音響インピーダンスを広範囲の中から任意の大きさに設定できる。このため、本実施形態では、設計通りの所望の性能を超音波送受波器に与えることが可能である。
【0082】
以下、上記音響整合層を有する超音波送受波器1の製造方法の一例を説明する。
【0083】
まず、送受波する超音波の波長に合わせた圧電体2を用意する。圧電体2は、圧電セラミックスや圧電単結晶など圧電性の高い材料から形成することが好ましい。圧電セラミックとしては、チタン酸ジルコン酸鉛、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、ニオブ酸鉛などを用いることができる。また、圧電単結晶としては、チタン酸ジルコン酸鉛単結晶、ニオブ酸リチウム、水晶などを用いることができる。
【0084】
本実施形態では、圧電体2としてチタン酸ジルコン酸鉛系セラミックスを用い、送受波する超音波の周波数を500kHzに設定している。このような超音波を圧電体2が効率よく送受波できるようにするため、圧電体2の共振周波数を約500kHzに設計する。
【0085】
圧電体2の音速は、上述のように約3800m/秒であり、圧電体2の厚さを超音波の波長の1/2に設定したときに、強く共振することが知られている。本実施形態では、500kHzの超音波の送受波に適した圧電体2を得るため、圧電セラミックスから、直径が12mm、厚さが約3.8mmの円柱形状を有する圧電体2を作製し、これを使用している。圧電体2の厚さ方向に離間した2つの面(上面および底面)には、焼付けによる銀製の電極4が設けられ、圧電体2は厚さ方向に分極処理されている。
【0086】
本実施形態では、このような圧電体2の一方の面に対して、乾燥ゲルからなる音響整合層3a、3bを形成する。上述のように、第1音響整合層3aの音速は約1000m/秒とし、第2音響整合層3bの音速は約100m/秒に設定しているため、第1音響整合層3aにおける超音波の波長は2mmであり、第2音響整合層3bにおける超音波の波長は0.2mmである。
【0087】
音響整合層3a、3bは、その厚さをそれぞれの波長の1/4とした時に最も超音波の内部反射が少なく、感度が高くなることが知られている。このため、第1音響整合層3aの厚さを500μmとし、第2音響整合層3bの厚さを50μmに設定する。
【0088】
なお、音響整合層の好ましい厚さは、超音波の波長に1/4に限定されるわけではない。周波数帯域を広げるためには、音響整合層の厚さを超音波波長の1/4よりも小さくすることが有効である。音響整合層の特に好ましい厚さ範囲は、超音波波長の1/8以上1/3以下であり、更に好ましい厚さ範囲は1/8以上1/4以下である。なお、音響整合層として機能するには2μm以上の厚さが必要である。
【0089】
音響整合層3a、3bを構成する乾燥ゲルは、無機材料、有機高分子材料などを用いて形成することができる。無機材料の固体骨格部としては、酸化ケイ素(シリカ)、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化チタンなどを用いることができる。また有機材料の固体骨格部としては、一般的な熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂を用いることができ、例えば、ポリウレタン、ポリウレア、フェノール硬化樹脂、ポリアクリルアミド、ポリメタクリル酸メチルなどを用いることができる。
【0090】
本実施形態では、コスト、環境安定性、および製造のしやすさなどから、固体骨格部として酸化ケイ素を持つ乾燥ゲルを採用する。このような乾燥ゲルからなる第1音響整合層3aおよび第2音響整合層3bを、順次、圧電体2の主面上に直接形成していく。
【0091】
次に、これらの音響整合層3a、3bの製造方法を説明する。
【0092】
2層以上の音響インピーダンスが異なる乾燥ゲルを形成するため、本実施形態では、通常のゲル化工程から乾燥工程を経る従来方法とは異なり、通常のゲル化工程(以下、「第1ゲル化工程」と称する。)の後に第2ゲル化工程を行う。
【0093】
第2ゲル化工程では、第1ゲル化工程で形成された湿潤ゲルの固体骨格部を含む領域に、ゲル原料液が重合しながら新たな固体骨格を形成する。このように新たなゲル骨格が形成されることにより、湿潤ゲルの密度および音速、すなわち音響インピーダンスを変化させることが可能となる。
【0094】
第2ゲル化工程には、大きく分けて、以下に説明する2つの工程がある。
【0095】
(1)第2−1ゲル化工程
第1ゲル化工程で形成された湿潤ゲルの外側で、ゲル原料液がゲル化しないようにゲル原料液の配合を調整し、第1ゲル化工程で形成された湿潤ゲルの密度および音速を変化させる工程(以下、「第2−1ゲル化工程」と称する。)
【0096】
第2−1ゲル化工程では、湿潤ゲルの外側においてゲル原料液自体がゲル化することは無い。しかし、第1ゲル化工程で形成されたゲル内部では、ゲル原料液が、第1ゲル化工程で形成された骨格に付着していくように成長する。このため、ゲル原料液自体がゲル化しない条件においても、この反応は進行する。
【0097】
この第2−1ゲル化工程は、第1ゲル化工程で得られた湿潤ゲルの形状を変化させること無く、密度や音速を特に高くする必要がある場合に有効である。
【0098】
(2)第2−2ゲル化工程
第1ゲル化工程で形成された湿潤ゲルの外側でも、ゲル原料液がゲル化するように原料液の配合を調整する。この工程を、以下、「第2−2ゲル化工程」と称する。
【0099】
この第2−2ゲル化工程では、第1ゲル化工程で得られたゲルの密度および音速を変化させながら、その外側部分に他のゲル層を同時に形成することができる。
【0100】
多層の乾燥ゲル層を形成するのには、第2−2ゲル化工程は、不可欠であり、必要に応じて第2−1ゲル化工程を行うこととなる。第1ゲル化工程で得られた層(第1層)と、その層の外側に第2−2ゲル化工程で形成される層(第2層)との間には明確な界面は存在しない。この第1層と第2層とは化学的な結合によって連続している。また、第1層および第2層の熱膨張率が極めて近く、両者の密着性が向上する。このため、下層に多孔質セラミックスなどの材料からなる音響整合層を用いる場合に比べて長期信頼性を向上させることができる。
【0101】
なお、本明細書では、「第2−1ゲル化工程」および「第2−2ゲル化工程」を総称して、「第2ゲル化工程」と称することとする。
【0102】
本実施形態では、第1ゲル化工程の後に第2ゲル化工程を行うことにより、2層以上の音響整合層の各々の音響インピーダンスを好ましい大きさに設定する。
【0103】
本実施形態では、以下の工程を行うことにより、2層の乾燥ゲルからなる音響整合層を形成する。2層の音響整合層における各層の音響インピーダンスは、下記の通りに設定する。
【0104】
[第1音響整合層3a]
密度:800kg/m3
音速:1000m/秒
音響インピーダンス:8.0×105kg/m2/秒
[第2音響整合層3b]
密度:150kg/m3
音速:100m/秒
音響インピーダンス:1.5×104kg/m2/秒
【0105】
本実施形態の超音波送受波器における音響整合層は、第1音響整合層3aの音響インピーダンスが比較的高く、また第2音響整合層3bの音響インピーダンスから大きく異なる。このため、第1ゲル化工程とおよび第2−2ゲル化工程だけでは、上記の音響整合層を形成することが困難である。
【0106】
乾燥ゲルから音響整合層を形成する場合、各音響整合層の音響インピーダンスを2.5×103kg/m2/秒以上1.2×107kg/m2/秒以下の範囲から任意の値を設定することが可能である。
【0107】
第1ゲル化工程で形成する乾燥ゲルおよび第2−2ゲル化工程で新たに形成される乾燥ゲルの音響インピーダンスは、ゲル化反応の安定性などの点から、2×105kg/m2/秒程度以下とすることが望ましい。第1音響整合層3aとなる乾燥ゲルの音響インピーダンスは、第1ゲル化工程および第2−2ゲル化工程を行うだけでは、必要な大きさにまで上昇しない。
【0108】
このため、本実施形態では、第1ゲル化工程の後に、まず、第2−1ゲル化工程を行うことにより、第1音響整合層3aの音響インピーダンスを高くする。その後、第2−2ゲル化工程を行うことにより、第1音響整合層3aの音響インピーダンスを高くするとともに、第2音響整合層3bを形成する。こうして、適切な音響インピーダンスを示す2層の音響整合層3a、3bを形成することができる。
【0109】
図4は、ゲル化工程を行うことによって第1音響整合層の音響インピーダンスがどのように変化するかを模式的に示している。図4からわかるように、第1ゲル化工程によって形成した層の音響インピーダンスは、その後に行う第2ゲル化工程で増加する。また、第1ゲル化工程の後に行う第2−1ゲル化工程の条件は、第2−2ゲル化工程で生じる音響インピーダンスの増加を見込んで設定する。
【0110】
なお、2つの音響整合層の音響インピーダンスに大きな差を設ける必要が無い場合などには、第2−1ゲル化工程を省略して、工程を単純にすることも可能である。
【0111】
以下、図5(a)から(f)を参照しながら、本実施形態における乾燥ゲルの形成方法を具体的に説明する。
【0112】
工程1: 第1ゲル化工程(ゲル原料液の用意)
テトラエトキシシラン/エタノール/水/塩化水素を、モル比で1/2/1/0.00078で混合し、65度の恒温槽中で3時間、テトラエトキシシランの加水分解を進行させる。更に、テトラエトキシシランに対するモル比で2.5/0.0057の割合の水/NH3を加え、第1ゲル原料液が得られる。
【0113】
工程2: 第1ゲル化工程(第1音響整合層の形成)
上記の方法を用いて用意した第1ゲル化原料液を圧電体2の一方の面に滴下する。具体的には、まず図5(a)に示すように、第1音響整合層3aの厚さを規定する筒状の枠体6aを圧電体2の外周に設けておく。次に、圧電体2と枠体6aとによって囲まれた空間内にゲル原料液を滴下する。その後、フッ素樹脂板7により、余分なゲル原料液をすり切り除去し、そのまま、フッ素樹脂板7で蓋をする。
【0114】
このような枠体6aを設けることにより、音響整合層3aの厚さを高精度に制御することが可能となる。音響整合層3aの厚さは、超音波送受波器の特性に大きく影響を与えるので、高精度の制御は特性向上に寄与する。
【0115】
上記の状態のまま、50℃で約1日放置する。これにより、圧電体2および枠体6aによって形成された空間内でゲル原料液がゲル化し、湿潤ゲルが形成される。こうして、図5(b)に示すように、圧電体2と湿潤ゲル8からなる構造体が形成される。
【0116】
圧電体2の上面から突出する枠体6aのサイズは、第1音響整合層での超音波(周波数500kHz)の波長の約1/4となるように設定している。本実施形態の場合、第1音響整合層3aとなる乾燥ゲルの音速が約1000m/秒であるため、圧電体2の上面から突出する枠体6aのサイズは500μmに設定している。
【0117】
工程3: 第2−1ゲル化工程(第1音響整合層の音響インピーダンス調整)
工程2で得られた湿潤ゲルをエタノールで洗浄する一方で、第2−1ゲル原料液を準備する。第2−1ゲル原料液として、テトラエトキシシラン/エタノール/0.1規定アンモニア水を、体積比で60/35/5を混合したものを用いる。
【0118】
図5(b)に示す圧電体2、枠体6a、および湿潤ゲルからなる構造体を、図5(c)に示すように、密閉容器10の第2−1ゲル原料液中に浸漬させる。この密閉容器10を70℃の恒温槽中で約1日放置する。この処理により、第1音響整合層の音響インピーダンスが増加する。
【0119】
工程4: 第2−2ゲル化工程(第2音響整合層の形成)
次に、図5(d)に示すように、第2−1ゲル原料液の中から構造体を取り出し、枠体6aを取り除く。その後、第2音響整合層3bの厚さを規定する筒状の枠体6bを取り付ける。枠体6bは、第1音響整合層3aの上に、更に第2音響整合層3bを形成するためのものである。枠体6bのうち第1音響整合層3aの上面からの上方に突出する部分のサイズは、第2音響整合層3bの厚さを規定する大きさに設定される。本実施形態では、第2音響整合層3bとして機能する乾燥ゲルの音速が100m/秒程度であるため、第2音響整合層3bにおける超音波の波長は約200μmである。このため、第2音響整合層3bの厚さを、その波長の約1/4となるように50μmに設定している。
【0120】
次に、第1音響整合層3aと枠体6aによって形成される空間に、第2−2ゲル化原料液を充填する。第2−1ゲル化工程で使用したゲル原料液が第1音響整合層3aとなる湿潤ゲルに残っているため、第2−2ゲル化原料液の充填を行う前に、エタノール/水の混合液によって洗浄を行うことが好ましい。
【0121】
第2−2ゲル化原料液としては、テトラエトキシシラン/エタノール/0.05規定アンモニア水をモル比で1/4/3の割合で混合した液を用いることができる。第2−2ゲル化原料液を上記の空間内において枠体6aの上端まで充填する。この充填により、第1音響整合層3aとなる湿潤ゲル内のエタノールは第2−2ゲル化原料液によって置換される。
【0122】
その後、フッ素樹脂板によって余分なゲル原料液をすり切り除去した後、そのフッ素樹脂板により蓋をする。このままの状態で、室温にて約1日放置することにより、圧電体2と枠体6aで形成された空間でゲル原料液がゲル化し、湿潤ゲルが形成する。
【0123】
更に、第1音響整合層となる部分の湿潤ゲル内においても、新たなゲル化が起こり、その部分の音響インピーダンスが高くなる。
【0124】
こうして、図5(e)に示すように、圧電体2の上面に音響インピーダンスの異なる2層の湿潤ゲル層が形成される。
【0125】
工程5: 疎水化工程
疎水化工程は必須の工程ではないが、吸湿によって性能が劣化する場合があるため、行うことが好ましい。疎水化工程は、次のようにして行う。まず、第2−2ゲル化工程を行った後、音響整合層となる湿潤ゲル内に残留している第2−2ゲル原料液をエタノールによって置換・洗浄する。次に、ジメチルジメトキシシラン/エタノール/10重量%アンモニア水を重量比で45/45/10の割合で混合して得られた疎水化液に、前記構造体を40℃で約1日間浸漬する。
【0126】
工程6: 乾燥工程
以上の工程で得られた湿潤ゲルから乾燥ゲルを得るために、乾燥工程を行う。本実施形態では、乾燥方法として、超臨界乾燥法を用いる。乾燥ゲルは、前述のように非常に小さなナノメートルサイズ程度の多孔質体である。骨格部分の太さや、結合の強さ、空孔の大きさによっては、湿潤ゲルから乾燥ゲルへの溶媒乾燥の際に、溶媒の表面張力によって破壊されてしまうことがある。
【0127】
このような破壊を防止するため、表面張力の働かない超臨界乾燥法を用いることが好ましい。具体的には、疎水化液をエタノールで置換した後、図5(f)に示すように、圧電体/湿潤ゲルの構造体を耐圧容器に入れ、ゲル内のエタノールを液化二酸化炭素で置換する。更に、ポンプで容器内に液化二酸化炭素を送り込むことにより、耐圧容器内の圧力を10MPaまで上昇させる。その後、50℃まで昇温し、耐圧容器内を超臨界状態とする。次に、温度を50℃に保ったまま、圧力をゆっくり低下させることにより、乾燥を完了する。
【0128】
次に、このようにして得られた2層の音響整合層を有する超音波送受波器の音響特性を評価した。図3(a)および(b)を参照しながら、評価結果を説明する。
【0129】
図6(a)は、本実施形態の超音波送受波の送受波波形を示す。これに対して、図6(b)は、ガラスバルーンをエポキシ樹脂でモールドした材料を音響整合層として用いた比較例の送受波波形を示す。いずれのグラフにおいても、横軸は時間(Time)であり、縦軸は信号振幅(Amplitude)である。横軸の例えば「3.E−0.5」の数値は、「3.0×10-5」を意味しており、単位は秒(s)である。
【0130】
比較例と本実施形態との差異は、音響整合層の構成にあり、それ以外の点は同一である。なお、比較例におけるガラスバルーンを樹脂でモールドした材料は、密度が520kg/m3、音速が2500m/秒、音響インピーダンスが1.3×106kg/m2/秒である。
【0131】
図6(a)および(b)に示すように、本実施形態の超音波送受波器によれば、従来の整合層を用いた超音波送受波器に比較して、50倍以上の送受波感度を得ることができる。
【0132】
なお、本実施形態の超音波送受波器では、2層の音響整合層が同じ酸化シリカから形成されているため、剥離などの不良が起こりにくく、歩留まり良く製造されるという利点がある。また、使用時においても長期信頼性に優れ、安定した動作を継続することができる。
【0133】
本実施形態の製造方法によれば、同じ原料を用いながら、ゲル原料液の配合、処理温度、または時間を調節することにより、所望の音響インピーダンスを得ることができる。このため、求められる特性を有する音響整合層を容易に製作することができ、設計上の要求を満足する材料の探索に手間取られることがない。
【0134】
なお、本実施形態の超音波送受波器は、2層の音響整合層を有しているが、3層以上の音響整合層を備えていてもよい。この場合も、同様の製造方法で音響整合層を作製することができる。ただし、3層以上の音響整合層の全ての乾燥ゲルから形成する必要は無い。設計上、乾燥ゲルから作製した方が好ましい音響特性が得られる層だけを乾燥ゲルから形成しても良い。
【0135】
本実施形態の製造方法では、圧電体2に対して、第1音響整合層3aおよび第2音響整合層3bを順次形成しているが、第1音響整合層3aと第2音響整合層3bを別に形成して、後に圧電体2に対して接合させてもよい。
【0136】
また、本実施形態では、圧電体に形成した電極上に音響整合層を形成しているが、音響整合層は電極の上に限らず、電極の側面側に形成しても良い。また、音響整合層は圧電体と直接的に接触する必要はなく、圧電体と音響的に結合するように配置されていればよい。ここでいう「音響的な結合」とは、音響整合層と圧電体との間で超音波振動が伝搬しえる配置関係にあることを意味するものとする。従って、音波の送受信の阻害要因になりにくい部材が圧電体と音響整合層との間に介在していてもよい。このような部材には、後に説明する実施形態2の構造支持体(ケース)が含まれる。
【0137】
次に、図面を参照しながら、本実施形態で用いる2層の音響整合層の構造を説明する。
【0138】
図7(a)は、本実施形態の音響整合層3a、3bを模式的に示す断面図であり、図7(b)は、多孔質セラミックから形成した第1音響整合層3aと乾燥ゲルから形成した第2音響整合層3bとを模式的に示す断面図である。
【0139】
図7(b)の構造では、多孔質セラミックからなる第1音響整合層3aの空孔径が大きいため、超音波が伝搬する際に第1音響整合層3aの内部における反射や減衰が発生しやすい。このため、多孔質セラミックから形成した音響整合層の特性は良くない。多孔質セラミックは、通常、平均粒径が1μm以上の粉末粒子を焼結することによって作製され、平均空孔径は数十μm以上である。
【0140】
一方、図7(a)に示す本実施形態の構成では、各音響整合層3a、3bを構成している乾燥ゲルは、数nm〜数μm程度の微細な空孔部分を持つ多孔質体である。このため、周波数が比較的高い超音波であっても、その波長が空孔部分よりも充分に大きいため、内部で超音波の反射や減衰が生じにくく、超音波の伝達性能が高い。
【0141】
空孔によって超音波の反射や減衰が生じないようにするには、平均空孔径を超音波の波長の10分の1程度以下にすることが好ましい。多孔質セラミックの場合、空孔径をナノメートルオーダーに小さく形成することは、ほとんど不可能である。多孔質セラミックの音速が2000m/秒程度、平均空孔径が50μm程度であるとすると、4MHz以下の超音波は効率的に送受信することは可能であるが、4MHzを超える周波数の超音波を送受信することは実用的ではない。これに対して、乾燥ゲルの平均空孔径は数nmであるため、4MHzを超える高い周波数の超音波でも効率的な送受信が可能である。
(実施形態2)
【0142】
図8を参照しながら、本発明による超音波送受波器の第2の実施形態を説明する。
【0143】
本実施形態の超音波送受波器は、圧電体2と第1音響整合層3aとの間に構造支持体を有している点を除けば、実施形態1の超音波送受波記録媒体の構成と同様の構成を有している。
【0144】
構造支持体13は音響整合層3aなどが固定される円盤状支持部と、この円盤状支持部から軸方向に連続的に伸びる円筒部とを備えている。円筒部の端面は、断面がL字型に折れ曲がり、圧電体2の遮蔽のためのプレート(不図示)や、他の装置などに固定しやすくなっている。
【0145】
構造支持体13の表面には音響整合層3a、3bが配置されており、支持部裏面には圧電体2が配置されている。このような構造支持体13を用いることにより、超音波送受波器の取り扱いが極めて容易となる。
【0146】
構造支持体は、密閉可能な容器(センサケース)から構成することができる。この場合、構造支持体13の円筒部の開放端を遮蔽プレートなどで塞ぎ、かつ、構造支持体13の内部を不活性ガスで満たせば、流量測定の対象とする流体から圧電体2を遮断することができる。
【0147】
圧電体2には電圧が印加されるため、可燃性ガスなどと圧電体が接すると、可燃性ガスに引火する危険性もある。しかし構造支持体13を密閉性の容器から構成し、圧電体のある内部を外部流体などと遮断することによって、そのような引火を防止して、可燃性ガスなどに対しても安全に超音波を送受波することができる。
【0148】
また可燃性ガスでなくとも、圧電体2と反応し、圧電体2に特性の劣化を与える可能性のあるガスとの間で超音波を送受波する場合でも、圧電体2が外部ガスから遮断することが好ましい。そうすることにより、圧電体2の劣化を防止し、長期間に渡って信頼性の高い動作を実現することが可能となる。
【0149】
構造支持体13のうち、圧電体2と第1音響整合層3aとの間に位置する部分は音響整合層として機能しない。このため、構造支持体13がが音響的な阻害として働かないようにするため、構造支持体13のうち、圧電体2と第1音響整合層3aとの間に位置する部分の厚さを、送受波する超音波の波長の1/8程度以下とすることが望ましい。
【0150】
本実施形態では、構造支持体13をステンレスから形成し、上記部分の厚さを0.2mmに設定している。
【0151】
ステンレスの音速は約5500m/秒であり、超音波の500kHzにおける波長は約11mmとなる。0.2mmの厚さは波長の約1/55に相当するため、構造支持体13の存在は殆ど音響的阻害要因にはならない。
【0152】
構造支持体13の材料は、ステンレスなどの金属材料に限定される物ではなく、セラミック、ガラス、樹脂などから目的に応じた材料が選択される。本実施形態では、外部の流体と圧電体を確実に分離し、構造支持体に何らかの機械的な衝撃が加わったとしても、圧電体と外部流体との接触を防止できる強度を与えるため、金属材料から構造支持体13を作製している。これにより、例えば可燃性や爆発性を有するガスを対象として超音波の送受波を行っても高い安全性を確保することができる。
【0153】
なお、安全な気体に対して超音波の送受波を行う場合には、コスト低減を目的として、樹脂などの材料からなる構造支持体を用いても良い。
(実施形態3)
【0154】
図9を参照しながら、本発明による超音波流量計の実施形態を説明する。
【0155】
本実施形態の超音波流量計は、流量測定部51として機能する管内を被測定流体が速度Vで流れるようにして設置される。流量測定部51の管壁52には、本発明の超音波送受波器から形成した超音波送受波器1aおよび1bが相対して配置されている。
【0156】
ある時点では、超音波送受波器1aが超音波送波器として機能し、超音波送受波器1bを超音波受波器として機能するが、他の時点では、超音波送受波器1aが超音波受波器として機能し、超音波送受波器1bが超音波送波器として機能する。この切り替えは切替回路53によって行われている。
【0157】
超音波送受波器1aおよび1bは、切替回路53を介して、超音波送受波器1aおよび1bを駆動する駆動回路54と、超音波パルスを検知する受波検知回路55とに接続されている。受波検知回路55の出力は、超音波パルスの伝搬時間を計測するタイマ56に送られる。
【0158】
タイマ56の出力は、流量を演算する演算部57に送られる。演算部57では、測定された超音波パルスの伝搬時間に基づいて、流量測定部51内を流れる流体の速度Vが計算され、流量が求められる。駆動回路54およびタイマ56は、制御部58に接続され、制御部58から出力された制御信号によって制御される。
【0159】
以下、この超音波流量計の動作をより詳細に説明する。
【0160】
被測定流体として、例えばLPガスが流量測定部51を流れる場合を考える。超音波送受波器1aおよび1bの駆動周波数を約500kHzとする。制御部58は、駆動回路54に送波開始信号を出力すると同時に、タイマ56の時間計測を開始させる。
【0161】
駆動回路54は送波開始信号を受けると、超音波送受波器1aを駆動し、超音波パルスを送波する。送波された超音波パルスは流量測定部51内を伝搬して、超音波送受波器1bで受波される。受波された超音波パルスは超音波送受波器1bで電気信号に変換され、受波検知回路55に出力される。
【0162】
受波検知回路55では受波信号の受波タイミングを決定し、タイマ56を停止させる。演算部57は、伝搬時間t1を演算する。
【0163】
次に、切替回路53により、駆動回路54および受波検知回路55に接続する超音波送受波器1aおよび1bを切り替える。そして、再び、制御部59は駆動回路54に送波開始信号を出力すると同時に、タイマ56の時間計測を開始させる。
【0164】
伝搬時間t1の測定フローとは逆に、超音波送受波器1bで超音波パルスを送波し、超音波送受波器1aで受波し、演算部57で伝搬時間t2を演算する。
【0165】
ここで、超音波送受波器1aと超音波送受波器1bの中心を結ぶ距離をL、LPガスの無風状態での音速をC、流量測定部51内での流速をV、非測定流体の流れの方向と超音波送受波器1aおよび1bの中心を結ぶ線との角度をθとする。
【0166】
伝搬時間t1、t2は、それぞれ、測定によって求められる。距離Lは既知であるので時間t1とt2を測定すれば流速Vが求められ、その流速Vから流量を決定することができる。
【0167】
このような超音波流量計において、伝搬時間t1、t2はゼロクロス法と呼ばれる方法によって測定される。この方法では、図10(a)に示すような受波波形に対して、適切なスレッショルドレベルを設定し、そのスレッショルドレベルを超えて、次に振幅が0になる点の時間を計測する。
【0168】
受波信号のS/Nが悪い場合、ノイズレベルによっては振幅が0となる点が時間的に変動するため、正確にt1、t2を測定することが出来ず、正確な流量を測定することが困難になる場合がある。
【0169】
このような超音波流量計の超音波送受波器として、本発明の超音波送受波器を用いると、受波信号のS/Nが向上して、t1、t2を高い精度で測定することが可能となる。
【0170】
図10(b)に示すように、図10(a)の場合に比べて受波信号の立ち上がりが遅い(狭帯域である)と、スレッショルドレベルの設定値に対して、t1、t2を測定する受波信号の山の位置が変動し、測定誤差となる可能性がある。
【0171】
しかし、本発明による超音波送受波器は広帯域で適切に動作するため、受波信号の立ち上がりがよく、正確な流量測定を安定的に行うことが可能となる。なお、t1、t2の値としては、複数回の測定によって得られた値の平均値を用いることが好ましい。
【0172】
広帯域の超音波を送受波できるということは、信号の立下りも早いことを意味する。このため、測定の繰り返しを早くした場合にも、前の送受波信号の影響を受けることが無い。その結果、測定の繰り返し周波数を高くして、瞬時の計測を可能とするものであり、ガス漏れなどを瞬時に計測する流量計を実現することが可能となる。
【0173】
なお、本実施形態では、図9に示すように、いわゆる「Zパス」と呼ばれる形態で超音波送受波器を配置している。本発明は上記の配置に限定されなず、図11(a)〜(c)に示す各種の配置を採用しても良い。図11(a)〜(c)は、それぞれ、「Vパス」、「Wパス」、および「Iパス」と呼ばれる配置形態を示している。いずれの配置によっても、本発明の超音波送受波器は前述の効果を発揮することができる。
【0174】
以上の各実施形態では、最上層の音響整合層(第1音響整合層)の上面は露出しているが、この面を厚さ10μm以下程度の保護幕でカバーしてもよい。このような保護膜は、大気と音響整合層の直接的な接触を避け、音響整合層の特徴を長期に渡って保持するのに寄与する。保護膜は、例えば、アルミニウム、酸化ケイ素、低融点ガラス、高分子などの材料からなる膜(単層に限定されない)によって構成される。保護膜は例えばスパッタリングやCVD法などによって堆積される。
【産業上の利用可能性】
【0175】
本発明によれば、乾燥ゲルからなる複数層の音響整合層を持たせることにより、高感度で広帯域な超音波送受波器を実現することが可能となる。また同じ材料から複数層の整合層を構成しているため各層での剥離が起こらず、製造時の歩留まり、使用時の信頼性が向上する。
【0176】
また同じ素材を用いて任意の音響インピーダンスを有する音響整合層を形成できるため、設計通りの超音波送受波器を実現し、また音響整合層の材料開発・探索を省くことができるという有利な効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0177】
【図1】従来の超音波流量計を示す断面図である。
【図2】従来の超音波送受波器を示す断面図である。
【図3】本発明による超音波送受波器の第1の実施形態を示す断面図である。
【図4】ゲル化工程を行うことによって第1音響整合層の音響インピーダンスがどのように変化するかを模式的に示すグラフである。
【図5】(a)から(f)は、本発明の実施形態1における超音波送受波器の製造方法を示す工程断面図である。
【図6】(a)は、本発明の実施形態1における超音波送受波器の送受信波形を示すグラフであり、(b)は、比較例における送受信波形を示すグラフである。
【図7】(a)は、本実施形態の音響整合層を模式的に示す断面図であり、(b)は、多孔質セラミックから形成した第1音響整合層と乾燥ゲルから形成した第2音響整合層とを示す断面図である。
【図8】本発明の超音波送受波器の第2の実施形態を示す断面図である。
【図9】本発明による超音波流量計の実施形態を示す図である。
【図10】(a)および(b)は、図5の超音波流量計による伝搬時間測定方法を示す図である。
【図11】(a)から(c)は、それぞれ、超音波流量計におけるVパス、Wパス、およびIパスの配置例を示す図である。

Claims (3)

  1. (a)第1の面および前記第1の面とは反対側の第2の面を有し、前記第1および第2の面に電極が形成された圧電体を用意する工程と、
    (b)前記圧電体における前記第1および第2の面の少なくとも一方の側に、音響インピーダンスの異なる少なくとも2つの音響整合層を乾燥ゲルから形成する工程と、
    を含み、
    前記工程(b)は、
    (b1)前記圧電体の第1および第2の面の少なくとも一方に第1のゲル原料を供給する工程と、
    (b2)前記第1のゲル原料液をゲル化させて第1の湿潤ゲル層を形成する工程と、
    (b3)前記第1の湿潤ゲル層の上に第2のゲル原料を供給し、前記第2のゲル原料によって前記第1の湿潤ゲルを改質し、前記第1の湿潤ゲルの音響インピーダンスを変化させる工程と、
    (b4)前記第1の湿潤ゲル層の上に前記第2のゲル原料を更に供給し、前記第1の湿潤ゲルの外側で前記第2のゲル原料液をゲル化させることにより、前記第1の湿潤ゲルの音響インピーダンスを変化させるとともに前記第1の湿潤ゲル上に第2の湿潤ゲル層を形成する工程と、
    (b5)前記第1および第2の湿潤ゲル層を乾燥させることにより、前記第1および第2の湿潤ゲル層から、それぞれ、第1音響整合層および第2音響整合層を形成する工程と、
    を含む、超音波送受波器の製造方法。
  2. 前記工程(b)は、更に、
    (b6)前記第2の湿潤ゲル層の上に第3のゲル原料を供給する工程と、
    (b7)前記第3のゲル原料液をゲル化させて第3の湿潤ゲル層を形成する工程と、
    を含み、
    前記工程(b5)において、前記第3の湿潤ゲル層を乾燥させて第3音響整合層を形成する、請求項1に記載の製造方法。
  3. 前記工程(b5)の前に、前記湿潤ゲル層に対する撥水化処理を行う請求項1または2に記載の製造方法。
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